平成27年度卒業証書授与式

第 25 回卒業証書授与式式辞
校長 冨永六郎
卒業生の皆さん,卒業おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。
皆さんは,この度晴れて卒業証書を手にしました。この間,自学自習を原則とする通信制の学
習の基本を大切にして学業に励み,スクーリングやレポート提出,試験などを自らの努力と先生
方の支援,友人同士の励まし合いなどにより乗り越え,高校卒業に必要な単位を修得することが
できました。様々な苦労があるなかで,決して平坦ではなかった道を,まずは高校卒業を大きな
目標とし,
着実に歩みを進めて今日のこの佳き日を迎えた皆さんの努力に改めて敬意を表します。
皆さんが身に付けてきた「自学自習」の精神は,今後苦境や試練に直面したときに,必ず皆さん
の目標に向けての道筋を照らし出す,頼りとなる灯火になるものと思います。自分に自信を持っ
てこれからの新たな世界に乗り出していってほしいと願っています。
さて,これから新たな世界に一歩踏み出し,さらに成長を目指す皆さんに,はなむけとしてこ
れからの自分の人生との向き合い方について示しておきたいと思います。
皆さんは,
「マネジメントの父」と呼ばれ,経営学の第一人者であるピーター・ドラッカーを知
っているでしょうか。知らない人でも,今から六年ほど前,作家の岩崎夏海氏が書いた「もし高
校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」
,いわゆる「もしドラ」
がベストセラーとなり,その後,NHKでアニメ化されたり,元AKB48 の前田敦子さんを主役
として映画化されたりもしたことが記憶にないでしょうか。この物語は,高校野球の女子マネー
ジャーが,ドラッカーの「マネジメント」という本を間違って買ってしまうというところから始
まり,この本を読み込んで弱小野球部をマネジメントしながら甲子園を目指すというストーリー
です。
このドラッカーが著した「マネジメント」という本の中に,三人の石切職人の話が出てきます。
掻い摘んで説明すると,彼らは何をしているのかと聞かれたとき, 第一の男は,
「これで暮らし
を立てているのさ」と答えました。次に,第二の男は,槌で打つ手を休めず,
「国中で一番上手な
石切りの仕事をしているのさ」と答えました。そして,第三の男は,その目を輝かせ夢見心地で
空を見あげながら「国で一番の教会を建てているのさ」と答えたというものです。
この三人の違いがわかるでしょうか。そして,ドラッカーは,この例え話を通して何を伝えた
かったのでしょうか。それは,仕事を通して自分は「こうありたい」という目指す姿を実現する
大切さについてではなかったのでしょうか。
我々は,このことから,仕事をするとは,さらには人生とは,収入を得るといった単に経済的
な価値観を追い求めることに留まらず,仕事や毎日の生活を通じて自分が「どう生きるか」とい
う課題に取り組み,それによって自分自身が成長していることを実感するとともに,社会に貢献
しているという達成感や自己有用感を得ていくことだと気づかされます。それが人生や仕事の醍
醐味なのではないでしょうか。
我が国は,いま,生産年齢人口の急減,労働生産性の低迷,グローバル化・多極化の荒波に挟
まれた厳しい時代を迎えており,世の中の流れは我々大人が予想するよりもはるかに早く,将来
は職業の在り方も様変わりしている可能性が高いと考えられています。
これから新たなステージに飛び立つ皆さんには,これからの厳しい時代に負けず,高校時代に
抱いた志や夢,目標を,強い信念と真摯な努力で花開かせ,自分の人生を豊かにすることを心か
ら期待しています。
また,皆さんがこれから歩む道が,生まれ育ち,ともに学んだこの広島県や地域社会,さらに
は,我が国の発展に貢献するものであってほしいと願っています。
最後になりましたが,卒業生の皆さんにとって,この西高校は学んで良かったと思える学校で
あったでしょうか。もし皆さんにそう思ってもらえる学校であったのであれば,私をはじめ教職
員一同これ以上の喜びはないですし,これからもそう思ってもらえるような学校づくりに引き続
き取り組んで参ります。
卒業生の皆さん一人一人の大いなる未来に幸あれと心より祈り,式辞と致します。