セラミックスモールド法による電磁波発熱体の開発(第2報)

セラミックスモールド法による電磁波発熱体の開発(第2報)
資源環境部:伊吹
●
目
哲・河野敏夫・山本
順
的
電子レンジは、2.45GHz のマイクロ波を用いて誘電損失の大きい水分子を振動させ、その水分子
の自己発熱によって、食品全体を加熱することを目的とした調理器具である。しかし、水分を加熱す
るという性質上、100℃以上に加熱することができない。そのため、食品に焦げ目を付けるといった
高温調理が不可能であり、焼き物調理等にはオーブン機能が必要であった。
そこで、従来はオーブンまたはガスグリル等で行われていた調理方法を電子レンジ単体で可能にす
ることを目標として、マイクロ波の照射によって 100℃以上に発熱する皿の開発を行った。
電子レンジで美味しい焼
き魚はできるのか???
● 内
容
前年度までの研究過程において、調理用発熱皿は急激な加熱によって割れが生じるという問題が発
生していた。そこで、熱衝撃に強い材質を検討し、意匠性を付与した発熱皿を試作した。さらに、実
際に電子レンジでの調理について検討した。
① 熱衝撃性の向上
低熱膨張材料としてペタライト及びスポジュメンを選択し、木節粘土と任意の割合で配合した
原料を用いてテストピースを作成した後、そのテストピースを用いて熱膨張率の測定を行った。
② 調理用発熱皿の試作
様々な形状の石膏型を作成し、排泥鋳込み及び圧力鋳込みの二通りで鋳込み成形を行い、脱型
乾燥後、電気炉を用いて仮焼、施釉、本焼を行った。
③ 調理用発熱皿による調理
一般家庭では、焼き魚はグリルで調理されていることがほとんどである。そこで、魚焼きグリ
ル調理と同じ仕上がり(焼き色などの外観)となるように、発熱皿による電子レンジ調理法につ
いて検討を行った。また、魚焼きグリルとの調理方法を比較検討した。なお、本実験は高知女子
大学の協力を得て行った。
● 結
果
及び
考
察
図1からペタライトの場合、熱膨張係数の配合比への依存が大きい(量をたくさん入れないと熱膨
張係数が下がらない)ため、調理用発熱皿の熱膨張係数を低下させるための原料として、スポジュメ
ンを選択した。木節粘土とスポジュメンを同一重量比で配合し、木炭を加え焼成したものは、マイク
ロ波による急激な発熱及び水中投下による急冷においても、熱衝撃による割れやクラックは発生しな
かった。
図2に試作した発熱皿を示す。排泥鋳込み及び圧力鋳込みのいずれでも良好な成形体が得られ、従
来行っていたプレス成形では困難だった様々な形状が作成可能となった。また試作皿は、焼成時の割
れやクラックはなく、電子レンジを用いた発熱試験においても良好な発熱結果が得られ、熱衝撃によ
る割れやクラックも発生しなかった。
表1に塩鮭の発熱皿と魚焼きグリルによる調理比較を示す。魚焼きグリルと同等の仕上がりを得る
ためには、発熱皿単体で3分 30 秒の予備加熱が必要となるが、合計の加熱時間では従来のグリル調
理時間を半分以下に短縮することができた。
図3に発熱皿調理とガスグリル調理の比較を示す。発熱皿で調理した魚はガスグリルで調理したも
のと同様に焦げ目が付き、外観はほとんど同じであった。
発熱皿を用いた電子レンジ調理と従来のグリル調理による焼塩鮭を比較・検討するために、嗜好検
査を行った。その結果を表2に示す。A を好ましいと答えた人 21 人、Bを好ましいと答えた人8人。
危険率5%未満で A、B 間に有意差があった。
45
7.0
-6
-1
K )
6.0
熱膨張係数(×10
表1
ペタライト系列
スポジュメン系列
塩鮭の発熱皿と魚焼きグリルによる調理比較
5.0
加熱方法
予備加熱
4.0
焼き時間
3.0
合計加熱
A.発熱皿
電子レンジ500W
3分30秒
表
約1分30秒
裏
約1分
6分
B.魚焼きグリル
魚焼きグリル(上火強)
なし(0秒)
表
約9分
裏
約4分
13分
2.0
表2
1.0
A.発熱皿 B.グリル
検定
21
8
*
(n=30:うち無回答1、単位は人)
100
* p<0.05
美味しさもウリ
0.0
0
図1
20
40
60
配合比(wt%)
塩鮭の嗜好検査結果
80
配合比と熱膨張係数の関係
のひとつ!
平皿
角皿
どんぶり
グラタン皿
図2
図3
様々な形状の試作発熱皿
発熱皿調理とグリル調理の比較
電子レンジで見た目も美
味しそうに焼けました!
※本報告は平成 16~17 年度経済産業省地域新生コンソーシアム研究開発事業
「セラミックスモールド法による電磁波発熱材料・吸収材料の開発」の研究成果の一部である。
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