中国留学を終えて(グローバル・コミュニケーション学科 現3年

グローバル・コミュニケーション学科3年
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渡邉稚奈
中国留学を終えて
私は去年の8月末から中国広東省の広州市で生活し、今年の7月上旬に帰国を果たしまし
た。私にとって今回の留学は、
『挑戦』でした。衝動的に留学に行かなくては、と思い、得
意としていた中国語を伸ばしたいために中国留学を決めました。
留学が決まり、よく周りの人から言われた言葉があります。それは、
「どうして中国へ行く
のか。
」という一言です。中国といえば、反日デモ、中国人旅行客の態度の悪さ、PM2.5 な
どの空気汚染問題等、私たち日本人の中ではマイナスイメージが強いかと思われます。け
れど私は、この目で近隣国である中国という国を実際に見てみたいと思いました。
留学当初、得意としていた中国語は中国人を目の前にすると何も出てきませんでした。し
かし、先生方やほとんどの留学生たちは英語が堪能なので、分からないときは英語で話し
てもらっていました。中国留学では中国語はもちろん、ネイティブではないものの英語を
使う機会もあることがとてもプラスな点だと思います。しかも、主に使うのはスピーキン
グ能力なので、日本で英語の授業を取っている時よりも英語を話したような気がします。
なんせ中国語が通じなければ英語を話すしかないので、拙いながらも話す力が身に付きま
す。これはどの言語に於いても言えることですが、綺麗な文法で話せなくても、相手が理
解してくれればコミュニケーションは成立します。自分の文法に間違いがあるから話さな
い、という考え方は捨てて、とりあえず話すことが何より大切なのだと留学を通じて痛感
しました。
中国語のクラスは耳が慣れれば授業内容も理解できるようになり、クラスメートたちとも
徐々に話せるようになったので日々充実していて楽しかったです。先生方は恐らく話を聞
いている限りではほとんどが北の方出身で、発音がとても綺麗です。聞き取りやすく教え
方も丁寧で、どの先生もとても印象が良かったです。大学の周りに住む人々や中国人学生
の中国語の方が聞き取りにくいと思うこともありましたが、それもリスニングの練習と思
えば苦ではありませんでした。また、日常的に使っていた言葉が実は広東の方言だったと
いうこともあり、とても興味深かったです。
このように生活は順調でしたが、私はこの留学生活で一番ショックだった出来事を、留学
生活二ヶ月目にして体験することになります。同じく留学に来ていた日本人の友人と、行
き当たりばったりで旅行をしようということになり、海南島へ行きました。海南島は中国
南部でも有名なリゾート地で、海岸がとても綺麗です。中国語も堪能というわけではない
時期に友人と二人で行き、もちろん苦労が耐えませんでしたが楽しかったです。
しかし、とある飲料店で私は差別を受けました。飲料店の店員に飲み物を注文すると、「あ
なたは中国人ではないですよね?」と聞かれたので、私は「はい、日本人です。
」と答えま
した。すると、
「じゃあ、売らない。
」と言われてしまったのです。私は納得が行かず、何
故か問いました。すると、大きな声で何かを一言叫ばれてしまったので、私は逃げるよう
に友人のいる所へ戻りました。何を言われたのかは聞き取れませんでしたが、恐ろしいと
思ったことは確かです。私はその時相当ショックを受けてしまい、旅行中だというのにし
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渡邉稚奈
ばらく気分が沈んでしまいました。
連日テレビやネットなどで騒がれていた反日を、まさか自分が目の当たりにするとは思わ
なかったという気持ちや、何故差別をされなければならないのかが理解できない、私は何
か悪いことをしたのかと、悔しい気持ちなどでいっぱいになりました。しかし、今となっ
てはこれも大切な経験の一部だと思いました。そして私はこの日から、一人でも多くの中
国の方に『日本は良いところだ』と思って欲しいという夢を持つようになりました。
私が通っていた广东外语外贸大学はいわゆる外国語大学で、たくさんの外国人留学生たち
が中国語、または英語によるビジネスを学びに来ています。特に韓国人とロシア人が多く、
彼らと接する機会はたくさんありました。また、カザフスタンやウクライナなどロシア付
近の国の人たちも多かったです。他にも東南アジア、アフリカ、ヨーロッパなど、本当に
多国籍でした。
文化も言語も違う私たちに必ず共通するものは、中国語です。中国語を使いお互いの文化
を紹介し合ったりするのは、本当に楽しいですし、自分の中の世界が広がっていくのを感
じられます。授業では上のクラスになるほどディスカッションの時間が多いので、現代社
会での問題についてそれぞれの国の視点からの意見が聞けて興味深く、そして視野が広が
ります。
中国語の授業だけでなく、私は英語の授業も取っていたのですが、英語の授業は私にとっ
て一週間の中で一番嫌いな時間でした。なぜなら、クラスに日本人は私一人な上に、ろく
に英語もしゃべれないからです。クラスメートたちは全員ビジネス英語を学びに留学しに
来ている学生たちで、既に母国で大学を卒業しているという学生もいるくらいでした。ビ
ジネスに触れたこともない私はまず日本語でのビジネス用語の学習から始め、予習をして
授業に臨んでいました。
そして毎回緊張感を持ちながら授業に参加します。日本は言うなれば発展している国です。
特に電化製品や車などは世界的に有名で、先生やクラスメートたちまでもが日本の企業を
例に出し、実際にはどうなのか、と質問をしてくるのです。私は度々緊張せずにはいられ
ませんでした。しかし、本当に日本は発展していて便利な物に囲まれて生活のできる豊か
な国だということを実感させられました。日本の企業について調べる時間も、こういった
授業のおかげで多かったです。
今思えば些細な出来事ではありましたが、差別のようなものをされたと先ほど述べました。
しかし、全ての人がそうではありません。外国語大学なのでもちろん日本語学科もあり、
そこの学生たちは本当に熱心に日本語を勉強していました。留学をしたことがないという
学生たちでさえ、生活していく上で支障がないくらいには日本語を喋れていました。彼ら
は日本の文学や歴史、漫画アニメ、ドラマや音楽など様々な文化を好んでいて、自ら積極
的に日本語を学ぶ姿勢を常に作っていました。私は彼らと一緒に過ごすことで、こうして
日本に興味を持ち、好いていてくれる人もいるのだということを知り、心の底から嬉しく
思いました。
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渡邉稚奈
社会的、政治的には不仲だと言われている日中関係。しかし、私たちのような学生たちが
そんな現状を少しでも変えることができれば、というのが中国留学を終えて一番強く思っ
たことです。
※修了式後の晩餐会にて