イーサネットによる長距離リアルタイム動画伝送システム

イーサネットによる長距離リアルタイム動画伝送システム
イーサネットによる長距離リアルタイム動画伝送システム
Long-distance Real-time Moving Picture Communications System on the Ethernet Network
*1
三 原 慎一郎
S. Mihara
栄 永 清 志
*2
K. Einaga
*1
辻 貢 司
*2
N. Moriyama
酒 井 直 人
K. Tsuji
守 山 直 志
*3
N. Sakai
平 嶋 利 洋
*2
T. Hirashima
要 約
我々は,シングルモード光ファイバケーブルに対応した,イーサネットによる長距離リアルタイム動画伝送シス
テムを開発した。
本システムでは,シングルモード光ファイバケーブルに対応した通信機器を用いて,最も汎用的な LAN(Local
Area Network)であるイーサネットでネットワークを構築し,ネットワーク上で MPEG2 方式によりデジタル圧縮
した動画データを IP マルチキャストにより伝送する。閲覧したい動画の選択,カメラの操作などは全てディスプレ
イ上の GUI(Graphic User Interface)を用いて行い,手軽に動画の閲覧が行えるようになっている。
本報では本システムのネットワークの構成,システムを構成する機器について述べ,システムについての概説を
行う。
キーワード: イーサネット,MPEG2,動画伝送,長距離伝送,光ファイバ,IP マルチキャスト
Summary
We have developed a long-distance real-time moving picture communications system on the Ethernet network.
Moving picture is transmitted through the Ethernet network, a LAN (Local Area Network) which is most widely used.
On this system, moving picture is encoded by MPEG2 (Moving Picture Experts Group 2), and multicast through the
Ethernet network consisting of SMF (Single Mode Optical Fiber) and communication equipment.
This system has easy access to moving picture by GUI (Graphic User Interface).
This paper describes the network architecture and the function of device.
Key words: Ethernet, MPEG2, Moving picture transmission, Long-distance transmission, Optical fiber, IP multicast
1.まえがき
そこで我々は,当社のネットワーク技術を応用し,上記
特長を有する“イーサネットによる長距離リアルタイム動
イーサネットは全世界で使用されている最も汎用的な
画伝送システム”を開発したので報告する。
LAN(Local Area Network)であるが,QoS を保証しない
本報では本システムのネットワークの構成,システムを
伝送方式であるためリアルタイム性を要求されるデータ,
構成する機器について述べ,システムについての概説を行
特に動画データの伝送には対応が難しいとされていた。
う。
しかし,イーサネットは以下に示すような特長を有して
おり,これを動画伝送に適用できればそのメリットは非常
2.ネットワーク構成
に大きなものとなる。
汎用性が高いため低コスト
IP ネットワークに対する適用度が非常に高い
本システムのネットワークを構成する各機能について
以下に示す。
システムの増設が容易
技術進歩が最も速い
2.1 ネットワーク構成概要
世界標準の統一規格によるオープンシステム
2.1.1 システム構成
分散型システムに対応
本システムのシステム構成を Fig. 1 に示す。
*1 電線ケーブル事業本部 公共システム営業部 *2 光・電子事業部 ネットワーク機器部
*3 光・電子事業部 通信システム部
−7−
平成13年1月
三 菱 電 線 工 業 時 報
第97号
2.2 ネットワーク形態
MPEG2
デコーダ
ユニット
エンコーダユニット
本システムのネットワーク形態を Fig. 2 に示す。
TVモニタ
MPEG2
エンコーダ
CCTVカメラ ユニット
イーサネット・ネットワーク
エンコーダユニット
MPEG2
エンコーダ
CCTVカメラ ユニット
MPEG2
デコーダ
ユニット
TVモニタ
MPEG2
デコーダ
ユニット
TVモニタ
CCTV
カメラ
CCTV
カメラ
CCTV
カメラ
CCTV
カメラ
CCTV
カメラ
MPEG2
エンコーダ
ユニット
MPEG2
エンコーダ
ユニット
MPEG2
エンコーダ
ユニット
MPEG2
エンコーダ
ユニット
MPEG2
エンコーダ
ユニット
データ送受信
ユニット
データ送受信
ユニット
データ送受信
ユニット
データ送受信
ユニット
データ送受信
ユニット
エンコーダユニット
MPEG2
エンコーダ
CCTVカメラ ユニット
動画サーバ
ネットワーク構成部分
Fig. 1
System configuration
シングルモード
光ファイバ
システム構成
動画を撮像するカメラの信号は通常,NTSC 相当のアナ
Fig. 2
ログ信号であるため,イーサネット・ネットワーク上を伝
Network topology
ネットワーク形態
送するためには信号の符号化(デジタル化)が必要となる。
ネットワーク形態は,将来,システムの増設が容易に行
そこで本システムでは符号化の方法として,動画性能,画
質などを考慮し MPEG2 方式を採用した。
えるよう,通信機器(データ送受信ユニット)をカスケー
従って,動画映像は MPEG2 方式によりデジタル信号に
ド接続することで構成するバス型を採用した。
符号化されてネットワーク上を伝送され,閲覧する場所に
おいて NTSC 相当のアナログ信号に復号化され TV モニタ
2.3 動画データの伝送
本システムでは,収集した動画データを効率良く配信す
に出力される。
システム構成としては,現地の動画を撮像するカメラを
るために動画データの伝送に I P マルチキャスト技術を適
符号化装置である“MPEG2 エンコーダユニット”を通じ
用した。通常のデータ通信は,ユニキャストと呼ばれ,電
て,また撮像した動画を閲覧するTVモニタは復号化装置で
話あるいはファックスに見られるような 1 対 1 の通信を基
ある“MPEG2デコーダユニット”を通じてそれぞれイーサ
本としている。このため,複数の受信を希望する配信先に
ネット・ネットワークに接続するシステム構成とした。
データを送るためには,同じデータを複数回送信する必要
また,撮像した動画データを蓄積する動画サーバは独自
があり,配信先数の増加は通信帯域の増加につながる。こ
のような方式で,動画のように大きな帯域を必要とする
にイーサネット・ネットワークに接続する。
データを配信する場合,リアルタイムの通信は困難とな
2.1.2 システム伝送容量
り,ファイル転送のような方式を採用せざるを得なくな
イーサネット・ネットワークの伝送容量は,現状の段階
る。本システムで採用した IP マルチキャスト技術は,放送
で 10Mbps,100Mbps,1Gbps の 3 種類の選択肢がある。 に見られるような通信方式で,ユニキャストにみられるよ
本システムでは,システムを構成する通信機器のコスト,
うな配信先の増加に伴う通信帯域の増加が無くなり,将来
性能,実績,伝送容量などを考慮して 100Mbps(ファスト・
のシステム拡張に対応した柔軟なシステム構成が可能と
イーサネット)を採用した。
なる。Fig. 3 に IP マルチキャストのイメージ図を示す。
MPEG2
エンコーダ
ユニット
2.1.3 長距離対応
イーサネットでは全 2 重通信が行える媒体占有型の通信
エンコーダユニット
機器(スイッチングハブ)に100BASE-FXの光インタフェー
MPEG2
(動画)
マルチキャストデータ
スを適用することにより長距離伝送が可能となる。
100BASE-FX では長距離伝送に関する規格を定めていない
イーサネット・ネットワーク
が,使用する光部品の仕様を長距離伝送に適応するものに
することにより,イーサネットによる長距離伝送が可能に
なる。
そこで,イーサネットのデータ信号仕様(IEEE802.3)
,
光インタフェース(100BASE-FX)にそれぞれ適合し,シ
ングルモード光ファイバに対応した長距離通信が可能な
通信機器である“データ送受信ユニット”を開発し,本シ
ステムに採用した。
−8−
MPEG2
デコーダ
ユニット
MPEG2
デコーダ
ユニット
Fig. 3
MPEG2
デコーダ
ユニット
Multicast
マルチキャスト
イーサネットによる長距離リアルタイム動画伝送システム
I P マルチキャストは,一斉同報型の通信方式となるた
め,本技術を適用し,ネットワーク上に全動画データ
台数が多い場合,動画データの伝送容量が,ネットワーク
の許容伝送容量を超えてしまう。
(MPEG2 データ)を常時配信することにより,ネットワー
そこで,1 つのネットワーク(系統)内を伝送する最大動
ク上の位置,接続する動画閲覧端末(MPEG2 デコーダユ
画データ数を 6 画像(カメラ 6 台)と制限し,画像数が増
ニット)の数量に制限を受けることなく,どの動画閲覧端
えるごとにネットワーク(系統)を増やし,動画閲覧場所
末からでも全カメラの動画が閲覧可能なシステムが実現
でこれらを束ねる構成とした。
Fig. 5 に動画系ネットワークの構成を示す。
できる。
カメラ
カメラ
2.4 伝送データの分散
イーサネットでは伝送する各データの帯域を保証しな
カメラ
カメラ
カメラ
カメラ
い。しかし,本システムで取り扱うデータは動画データで
動画系ネットワーク
カメラ(動画):6台
あるため,本データの容量がネットワークの許容容量を超
えると,データのリアルタイム性の欠如,パケットの損失
動画系ネットワーク
カメラ(動画):6台
などが生じ,正常なシステム運用ができなくなる。
動画系ネットワーク
カメラ(動画):6台
そこで,本システムではシステム設計の段階から,以下
に示す方法で伝送データの分散を計り,ネットワーク中の
MPEG2
デコーダ
ユニット
動画データ
配信装置
動画系ネットワーク
カメラ(動画):6台
データ伝送容量が,許容容量を超えないような設計を行っ
た。
Fig. 5
Configuration of moving picture network
動画系ネットワークの構成
2.4.1 動画系とデータ系のネットワーク分割
ネットワークを,動画データが伝送される動画系ネット
なお,最大動画データ数(6画像)は,イーサネット・ネッ
ワークと,カメラ,MPEG2エンコーダユニットなどの各機
トワークが快適に使用できるデータ伝送容量が総伝送容
器を操作する信号が伝送されるデータ系ネットワークに
量の 40%(本システムの場合,40Mbps)であることを基
分割する。
準とし,以下の式より算出した。
40(Mbps)÷ 6(Mbps /画像)≧ 6(画像)
データ系ネットワークでは,本システムで取り扱う以外
のデータ(例えば,音声信号,センサ信号,静止画信号な
ど)も伝送でき,システム全体としてマルチメディア伝送
2.5 ネットワーク構成例
Fig. 6 に上述の項目を考慮して設計したシステムのネッ
を達成する。
Fig. 4 に分割したネットワークに伝送する各データの伝
トワーク構成を示す。
送経路を示す。
凡例
動画(MPEG2)データ
CCTV
CM ENC
DATA
動画系ネットワーク
CCTV
CM ENC
DATA
データ系ネットワーク
CCTV
CM ENC
DATA
CCTV
CM ENC
DATA
CCTV
CM ENC
DATA
CCTV
CM ENC
DATA
エンコーダユニット
MPEG2
エンコーダユニット
MPEG2
デコーダユニット
カメラ操作信号
Fig. 4
Transmission route
各データの伝送経路
2.4.2
DATA
DATA
DATA
DATA
DATA
DATA
CCTV
CM ENC
DATA
DATA
監視所
CCTV
CM
CCTVカメラ
運台
観測地
DATA
データ送受信ユニット
DEC
MPEG2デコーダユニット
映像系
ネットワーク
ENC MPEG2エンコーダユニット
データ系
ネットワーク LAN-A LAN配信装置
LAN-B 動画データ配信装置
TV TVモニタ M-SV 動画サーバ
CCTV
CM ENC
DATA
CCTV
CM ENC
DATA
CCTV
CM ENC
DATA
LAN-A
M-SV
DATA
DATA
LAN-B
DEC
TV
CCTV
CM ENC
DATA
DATA
LAN-B
DEC
TV
CCTV
CM ENC
DATA
DATA
DATA
DATA
DATA
監視所
DATA
動画データの圧縮レートの固定と動画系ネット
ワークの分割
Fig. 6
MPEG2方式では動画データの圧縮レートを,1画像当た
Configuration of network
ネットワーク構成例
り 2 ∼ 30Mbps 程度の範囲で設定できる。本システムでは,
ネットワーク容量,画質などを考慮し,復号化した際に
カメラ 12 台により撮像を行い,監視所の TV モニタ 2 台
NTSC 相当の画質を得ることができる 6Mbpsを圧縮レート
で動画の閲覧を行う。TVモニタはそれぞれ全カメラの動画
として採用した。
を選択して閲覧でき,閲覧しているカメラの操作が行え
本システムでは常時全ての動画データを伝送すること
る。
を基本としているため,ネットワークに接続するカメラの
−9−
平成13年1月
三 菱 電 線 工 業 時 報
第97号
3.システム構成機器
本システムを構成する機器の概要を以下に示す。
3.1 データ送受信ユニット
Fig. 7, Table 1 にそれぞれデータ送受信ユニットの外観
および主仕様を示す。
Appearance of the data distributor
Fig. 8
動画データ配信装置 外観
Table 2
Specification of the data distributor
動画データ配信装置 主仕様
仕様
項目
ANSI/IEEE Std. 802.3
適合規格
Fig. 7
Appearance of the communication unit
データ送受信ユニット 外観
Table 1
Specification of the communication unit
データ送受信ユニット 主仕様
仕様
項目
ANSI/IEEE Std. 802.3
適合規格
10BASE-T
ANSI/IEEE Std. 802.3 u 100BASE-TX
10BASE-T
ANSI/IEEE Std. 802.3 u 100BASE-TX
データ伝送速度
10Mbps,100Mbps
ポート構成
10BASE-T/100BASE-TX:8ポート
適合ケーブル
10BASE-T/100BASE-TX:UTP ケーブル
通信モード
半 2 重通信,全 2 重通信
管理プロトコル
SNMP,TELNET
その他機能
VLAN
外形寸法,質量
440
(W)
× 64
(H)× 305
(D)
mm,
5.5kg
動作温度範囲
0 ∼ 40°C
駆動電源,消費電力
100V,80W 以下
ANSI/IEEE Std. 802.3 u 100BASE-FX
ポート構成
適合ケーブル
よび主仕様を示す。
10Mbps,100Mbps
データ伝送速度
10BASE-T/100BASE-TX:6 ポート
動画データ配信装置は,分割された動画系ネットワーク
100BASE-FX:2 ポート
を束ね,MPEG2 デコーダに対して必要な動画データを選
10BASE-T/100BASE-TX:UTP ケーブル
100BASE-FX:シングルモード光ファイバ
択して伝送する機能を保持している。それぞれのネット
通信モード
半 2 重通信,全 2 重通信
ワークが接続されている各ポートの開閉をデコーダユ
光送信,光受信レベル
− 5dBm 以上,− 35dBm ∼ 0dBm
ニットからの指令に従い能動的に行うことにより,デコー
最大許容伝送路損失
30dB
管理プロトコル
SNMP,TELNET
その他機能
VLAN,スパニングツリー・アルゴリズム
外形寸法,質量
440(W)
× 64
(H)
× 305
(D)
mm,
5.5kg
動作温度範囲
0 ∼ 40°C
駆動電源,消費電力
100V,80W 以下
ダユニットに伝送される動画データ数を調整する。
3.3 MPEG2 エンコーダユニット
Fig. 9, Table 3 にそれぞれエンコーダユニットの外観お
よび主仕様を示す。
データ送受信ユニットは,本システムにおいてイーサ
ネット・ネットワークを構築する通信機の機能を保持して
いる。本装置は全 2重通信の媒体占有型の通信機器であり,
光インタフェースがシングルモード光ファイバにおける
光通信に適応し,イーサネット形式によるデータの長距離
伝送を実現する。
10BASE-T/100BASE-TX インタフェース部分に MPEG2
エンコーダユニットなどの現地機器を接続し,シングル
モード光ファイバへは100BASE-FXインタフェースを用い
て接続する。
個々のシステム要求に応じて,VLAN,スパニングツリー・
Fig. 9
アルゴリズムなどの機能を使い分け,ネットワーク上を伝
Appearance of the MPEG2 encoder unit
MPEG2 エンコーダユニット 外観
送するデータの流れを制限する。
MPEG2エンコーダユニットは,FA用PCベースのマシー
3.2 動画データ配信装置
ンに MPEG2 方式での符号化などの各種機能を付加したも
Fig. 8, Table 2 にそれぞれ動画データ配信装置の外観お
ので,カメラなどから出力される NTSC 相当のアナログ信
− 10 −
イーサネットによる長距離リアルタイム動画伝送システム
Table 3
Specification of the MPEG2 encoder unit
法で,エンコーダユニットの稼動管理,構成管理,障害解
MPEG2 エンコーダユニット 主仕様
析などを行なうことが可能となった。従って,ネットワー
クを構成する通信機器,エンコーダユニットなどを含めた
仕様
項目
システム全体を一括管理することが可能となっている。
MPEG2 ビデオ ISO/IEC 13818-2 MP@ML 準拠
MPEG1 オーディオ レイヤ 2 ISO/IEC 11172-3 準拠
エンコード機能
MPEG2 SYSTEM ISO/IEC 13818-1 準拠
FTP ファイル転送制御
720(pel)× 480(line)/ 352 × 480
ファイル転送は,TCP/IP で一般的な FTP(File Transfer
トランスポートストリーム
Protocol)を採用し,蓄積したファイルをファイルサーバな
入力信号:NTSC コンポジット,S 映像 UDP,IP マルチキャスト
伝送方式
外部インタフェース
どへ転送する機能を付加している。
10BASE-T:1 ポート,100BASE-TX:1 ポート
さらに,本機能をデコーダユニットなどから遠隔操作で
RS232C:2 ポート,接点信号(I/O):16 点
制御できるようにし,蓄積ファイルの回収を,ネットワー
CPU:Pentium- Ⅱ 350MHz 以上
クを介して実行できるようになっている。
メインメモリ:265MB 以上
中央処理装置
ハードディスク空き容量:3.0GB 以上
遠隔操作対応機能
カメラ制御
カメラ操作機能
その他機能
R S 2 3 2 インタフェース経由でカメラおよびカメラ旋回
動画データ蓄積機能
自己診断機能
台を制御する機能を備えている。本機能は,デコーダユ
適用 OS
Windows-NT
外形寸法,質量
431
(W)
× 176
(H)
× 416
(D)
mm,20kg
ニット上の管理ソフトウェアから利用可能で,デコーダユ
動作温度範囲
0 ∼ 40°C
駆動電源,消費電力
100V,150W 以下
ニットでカメラ映像を確認しながら,カメラ姿勢や照明な
どが遠隔操作可能となっている。
号を MPEG2 方式によりデジタル圧縮し,イーサネット・
蓄積制御
ネットワークに適合したデータ形式で I P マルチキャスト
デコーダユニットからの遠隔制御および外部信号に
よって録画を開始する機能を備えている。例えば,侵入セ
配信を行う装置である。
さらに,MPEG2 デコーダユニットからのカメラ操作信
ンサや警報信号をエンコーダユニットに送ることで,セン
サ連動録画を行なうことができる。録画時間は,標準で1時
号をカメラ側に中継する機能も備えている。
また,動画データの符号化と同時に,常時蓄積,上書き
間としているが,ハードディスク容量に合わせて変更可能
を行う機能を装備することができ,さらに外部からの制御
となっており,さらに長時間の録画も行なえるシステムと
信号を受信することで,常時蓄積,上書きを繰り返してい
なっている。
また,ストリームの蓄積と送信を同時に行なうことが可
るデータについて,制御信号受信時から以降の保存を行う
能となっているので,エンコーダユニットは,標準で 1 分
ことができる。
MPEG2 エンコーダユニットは専用のソフトウェアによっ
間の常時録画を行なっている。この機能により,録画開始
て制御され,WindowsNT をベースに以下に示す機能を備え
を指示した時点よりも前の画像を確認できる。例えば,セ
ている。
ンサ連動により録画を行なった場合,センサが働く前の状
況とセンサが働いた時点,そしてセンサが働いた後の状況
MPEG2 ストリーム制御
を記録できることになる。常時録画の画像は,デジタル方
MPEG2エンコーダカードを制御して,動画の符号化(エ
ンコード)を行い,作成された動画ストリームの蓄積およ
式なので繰返し録画を行なっても全く劣化がなく,常に安
定した画質の動画を記録できる。
び送信の制御を行う。
MPEG2 ストリームは蓄積と同時にネットワークへ IP マ
リダンダントハードディスク制御
FA 用 PC をベースとしていることから,ハードディスク
ルチキャストされ,放送型配信システムを実現している。
が故障すると致命的な障害となる。この対策としてエン
遠隔監視制御サービス
コーダユニットは,ミラーディスク構成(RAID0)を用い
本システムは長距離に対応したシステムとなるため,遠
てハードディスク故障時の耐障害性を高めている。
隔監視制御機能は,必須のものとなる。そのため遠隔監視
さらに,シリコンディスク版のエンコーダユニットも開
制御を行うプロトコルとして,今回のシステムでは,TCP/
発済みであり,エンコーダ自身で蓄積を行なわないシステ
I P 通信で一般的な監視管理プロトコルとして利用されて
ムの場合,ディスクレス型のエンコーダを提供している。
いる SNMP(Simple Network Management Protocol)を
Fig.10 に MPEG2 エンコーダユニットのソフトウエア構
成を示す。
採用した。
TCP/IP 標準の SNMP を採用したことで,SNMP 管理装
置を用いて,通信機器(LAN 機器)の管理手法と同様の手
− 11 −
平成13年1月
三 菱 電 線 工 業 時 報
第97号
3.4 MPEG2 デコーダユニット
MPEG2デコーダユニットは,FA用PCベースのマシーン
Fig.11, Table 4 に MPEG2 デコーダユニットの外観およ
び主仕様を示す。
に MPEG2 データの復号化などの各種機能を付加したもの
で,ネットワーク上を伝送するMPEG2形式のIPマルチキャ
ストデータを,選択的に取り込み,復号化して NTSC 相当
のアナログ動画信号を出力する装置である。動画データの
エンコーダカード
エンコード制御
選択は動画データ配信装置と連動して行い,動画データ配
カメラ制御
動画蓄積制御
信装置が選択した数個の動画データの中から任意の 1 画像
を抽出し復号化する。
遠隔制御サービス
RAID制御
ファイル転送制御
外部アラーム検知
IPマルチキャストサービス
さらに,カメラ操作信号をネットワーク上に送信し,閲
覧している動画データを撮像しているカメラおよびそれに
付随する MPEG2 エンコーダユニットの操作を行う機能も
FTP
SNMP
備えている。
TCP/UDP
MPEG2 デコーダユニットの操作は専用ディスプレイ上
IP
制御データ
ストリーム
の GUI(Graphic User Interface)により行う。Fig.12 に
MPEG2 デコーダユニットの操作画面例を示す。
Fig.10 Software architecture
MPEG2 エンコーダユニットのソフトウェア構成
カメラ
アイコン
Fig.11 Appearance of the MPEG2 decoder unit
MPEG2 デコーダユニット 外観
Table 4
Specification of the MPEG2 decoder unit
カメラ選択部
MPEG2 デコーダユニット 主仕様
項目
Fig.12 Example of monitor display
仕様
MPEG2 デコーダユニットの操作画面例
MPEG2 ビデオ ISO/IEC 13818-2 MP@ML 準拠
MPEG1 オーディオ レイヤ 2 ISO/IEC 11172-3 準拠
デコード機能
伝送方式
外部インタフェース
中央処理装置
MPEG2 SYSTEM ISO/IEC 13818-1 準拠
720(pel)× 480(line)/ 352 × 480
図中のカメラ選択部で地図上のカメラを選択する。選択
されたカメラが撮像する動画は,ディスプレイ上に表示さ
トランスポートストリーム
れる。また,動画は別途,NTSC 相当のアナログ信号が外部
出力信号:NTSC コンポジット,S 映像 出力される。さらに,選択しているカメラはカメラ制御部に
UDP,IP マルチキャスト
10BASE-T:1 ポート,100BASE-TX:1 ポート
より操作が可能である。
デコーダユニット上では,
「MPEG動画監視システムコン
RS232C:2 ポート
CPU:Pentium- Ⅱ 350MHz 以上
ソール」と呼ばれる統合型の操作用ウィンドウと動画表示
メインメモリ:265MB 以上
ウィンドウの 2 つを使用してカメラ映像の選択とカメラ遠
ハードディスク空き容量:3.0GB 以上
隔操作,動画蓄積遠隔制御,蓄積ファイル転送遠隔制御など
遠隔操作対応機能
その他機能
カメラ制御部
カメラ操作機能
を行なっている。動画表示機能を独立したソフトウェアと
エンコーダ操作機能,デコーダ操作機能
して作成し,遠隔制御可能な構成とすることでデコーダユ
自己診断機能
適用 OS
Windows-NT
外形寸法,質量
431
(W)
× 176
(H)
× 416
(D)
mm,17kg
動作温度範囲
0 ∼ 40°C
駆動電源,消費電力
100V,150W 以下
ニットの遠隔操作を可能としている。
3.5 LAN 配信装置
Fig.13 に LAN 配信装置例の外観を示す。
− 12 −
イーサネットによる長距離リアルタイム動画伝送システム
る。
今後の課題として,以下に示すようなものがあり,これ
らの開発を行っていく予定である。
大容量伝送(ギガビット・イーサネットへの移行)
MPEG2 方式での符号・復号化の高速化(低遅延)
無線化
耐環境性(高温,多湿など)の強化
低容量の符号化技術(MPEG4 など)の取り込み
次の名称は,それぞれの会社の登録商標です。
イーサネット : 富士ゼロックス社
Fig.13 Appearance of the height-end LAN-SW
Ethernet
: 米国ゼロックス社
Windows
: 米国マイクロソフト社
LAN 配信装置 外観
LAN 配信装置は,ネットワーク上を伝送される動画デー
タを選択して動画サーバに送る,W A N (W i d e
Area
Network)または他の LAN ネットワークに選択したデータ
三原慎一郎(みはら しんいちろう)
電線ケーブル事業本部 公共システム営業部 システ
ム技術グループ
ネットワーク・システムの設計・開発に従事
を送るなどの機能を保持する装置であるが,個々のシステ
ムに要求される仕様によりその機能は大きく異なるため,
各システムによって使用する機器を変更する。従って,こ
栄永清志(えいなが きよし)
こでは代表的な装置の仕様について述べる。
装置としては,高機能で多様なフィルタリング機能,高
速伝送,プロトコル変換などを求められるので,レイヤ3に
光・電子事業部 ネットワーク機器部 LAN機器課
LAN (イーサネット)機器および応用システムの設
計・開発に従事
対応するハイエンド LAN スイッチが望ましい。Table 5 に
代表的な装置の仕様を示す。
Table 5
Specification of the height-end LAN-SW
守山直志(もりやま なおし)
LAN 配信装置 主仕様
項目
適合規格
光・電子事業部 ネットワーク機器部 LAN機器課
LAN・MPEG2 画像伝送システム(イーサネット方式)
仕様
ANSI/IEEE Std. 802.3
の研究・開発に従事
10BASE-T
早稲田電気工学会会員
ANSI/IEEE Std. 802.3 u 100BASE-TX
データ伝送速度
10Mbps,100Mbps
ポート構成
10BASE-T/100BASE-TX:36 ポート
適合ケーブル
10BASE-T/100BASE-TX:UTP ケーブル
管理プロトコル
SNMP,TELNET
辻 貢司(つじ こうじ)
電線ケーブル事業本部 公共システム営業部 システ
ポート,MAC アドレス,レイヤ 3,プロトコル
VLAN 機能
ム技術グループ
マルチキャスト
ネットワーク・システムの総合的提案に従事
ユーザ定義による決定
その他機能
スパニングツリー・アルゴリズム
管理部(制御部)
,電源部の 2 重化(冗長機能)
外形寸法,質量
436
(W)
× 312
(H)
× 340
(D)
mm,25kg
動作温度範囲
0 ∼ 40°C
駆動電源,消費電力
100V,250W 以下
酒井直人(さかい なおと)
光・電子事業部 通信システム部 通信システム第三
課
ネットワーク設計・提案から機器インストール業務に
4.む す び
従事
以上,我々が開発した“イーサネットによる長距離リア
ルタイム動画伝送システム”の概要について述べた。本シ
ステムはイーサネットの特長を有し,なおかつ長距離リア
ルタイム伝送を実現している。また,用途として広域監視
システム,遠隔映像配信システム,などへの幅広い適用が
考えられ,すでに実機を出荷・納入し,運用も行われてい
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平嶋利洋(ひらしま としひろ)
光・電子事業部 ネットワーク機器部
ネットワーク機器の開発および技術統括に従事
電子情報通信学会会員