会報誌「かながわ」 2009年10月号

株式会社CIJの取組み
「仕事と生活の調和推進事業地方版プロジェクト」
(平成21年度全国労働基準関係団体
連合会事業)に参加している株式会社CIJ(Computer Institute of Japan:代表取
締役社長 堀 信一:横浜市西区平沼1-2-24 、2004年東証1部上場、システム開発・
コンサルテーション等、労働者数654人《男性528人、女性126人》)でワーク・ライ
フ・バランスを推進している野木秀子執行役員副社長に最上健三推進コンサルタントが
導入経過などを伺いました。地方版プロジェクトは、県内で先進的にワーク・ライフ・
バランスを進めている企業に参加していただき、推進コンサルタントがアクションプログ
ラムの策定を支援するとともに、実現に向けて具体的な取組みを支援する事業です。
た。ここで、もう一度CIJを活力ある企業に戻
さなければ、という危機感を強く持っています。
時間制約が効率的な働き方を生む
− 野木さん自身は結婚してお子さんを育てて
こられましたが、仕事か家庭かということで悩
むことはなかったですか。
野木 ありませんでしたね。結婚や子育てをして
も魅力ある人間でいたかったし、仕事が自分を
地方版プロジェクトに取り組んだ動機
−
今年 4月に本社にW L B 課(ワーク・ライ
フ・バランス課)を立上げ、さらに、地方版プ
ロジェクトに参加した動機はどんなところにあり
ますか。
育ててくれると思ってきました。子育てなどで
時間がなければ、何をしなければならないかい
つも考え、効率的に仕事を進めようとします。
仕事と家庭の切替は上手にできますよ。
− 野木さんが自らの専門性に目を向け始めた
のはいつ頃からですか。
野木 危機感からです。CIJが設立された1976年
野木 もともと研究所で専門家として育ち、社内
当時は、会社の規模も小さく自分から提案すれ
論文は書いていましたが、仕事も子育ても忙し
ば何でもできました。また、社長の方針で、男
い30代の頃から、日本科学技術連盟などに、社
女差別が全くなく、出産しても働き続ける団塊
外論文を投稿し始めました。
世代の女性社員が、私も含め、何人かいまし
た。そこでわれわれの子育てが一段落した20年
ほど前に、そのときのノウハウを生かし、育児
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ワーク・ライフ・バランスの取組み
− これまで女性活用や従業員満足度を高める
や介護をしながらでも仕事を続けられるように、
活動などに取り組んできましたが、その狙いは
男女ともに働きやすい職場環境を整えてきまし
どんなところにありますか。
た。今では他社の環境が整ってきたこともあり
野木
普通の会社になってきつつあります。また、創
決案を提案する「アドホック」という組織横断的
業時のメンバーがリタイアを迎える頃となり、そ
な活動があり、その中に、女性活用や従業員満足
の後ろ姿を見て育ってきた人も少なくなりまし
度の向上などのテーマもあり、2年間、ワーキン
かながわ 2009.10
5〜6年前から、会社の問題点を考え解
ググループとして、検討を進めてきました。今回、
ランドについてはどんなお考えをお持ちですか。
この活動を発展させるためにWLB課を立ち上げま
野木 技術力による差別化がブランドを創ります。
した。働き方の見直しをさらに進めるため、最上
社員一人ひとりが技術力を高め、自分の会社に
さんの指導を受けながら、ターゲットを女性から
誇りを持って働けるようにしたいと思っていま
全社員に広げています。
す。また、CIJの良さを広く知ってもらいたい。
− スローガンなどを決めましたが、これから
ワーク・ライフ・バランスの取組を契機に、全
どのように進めていきますか。
野木 これまで議論を重ねてスローガンと取組事
項を決めました。
eしごとは、いいバランスで!
〜自分らしさを活かし、伸ばす〜
社レベルのものにもっていけると思います。
WLBを進めてWin-Winの関係に
−
野木さんは執筆された本の中で、「サイバ
ー社会の実現は会社生活、家庭生活、地域生
このスローガンの下、両立支援、メリハリのある
活をそれぞれ大切にする、本来人間誰でもが求
働き方、キャリア・アップなど5つの取組事項を
めているバランスを取り戻せる社会への環境整
決めました。さらに実務ベースにおとし優先順位
備になるかもしれない。」と述べられています。
や目標などを決めていきます。
その思いについてお話いただけますか。
− 女性活用にもずいぶん取り組んでこられま
野木 とにかくやることですね。やることによっ
したが、どこに問題があると考えていますか。
て皆元気になる、社員が元気になれば企業も元
野木 当社の女性管理職比率は18%で男女の人数
気になります。上場後は制約も多くあり、社員
比に一致しています。ただ、管理職を目指す主
の自由度は狭くなってきています。だからこそ、
任クラスの層が薄いためこの層を育てなければ
仕事に楽しさ、遊び心を入れようとしているの
なりません。さらに、男性に比べ管理職への昇
です。いろいろな賞にチャレンジするのもその
進をためらう女性比率は高くなっています。男
一つです。ワーク・ライフ・バランスを進めて、
女問わず従業員満足度を高める必要性がありま
社員も会社もWin-Winの関係になれば、仕事
すね。
もそれ自体が楽しくなります。
− なぜ、管理職を目指そうとしない社員がい
るのでしょうか。
野木 頑張ろうと思う社員が減ってきたことや忙
しい管理職の姿をみているからでしょう。管理
− 野木さんは今年副社長、執行役員を退任さ
れると伺っていますが、社員にどんなメッセー
ジを伝えたいですか。
野木
まず実績を作ること、仕事のABC(あた
職や客先で働く社員の長時間労働を減らすこと
り前のことを、ばかにしないで、ちゃんとや
が課題です。
る)
、プラスαのアウトプットを出す、この3つ
社員の能力を最大限生かす
− 社員のモチベーションを高めるためにどん
なことに取り組んでいますか。
野木 社員の持っている能力を最大限活かす…こ
をいつも意識して仕事に向かえばステップアッ
プにつながります。そんなに難しく考えること
はありません。私自身は役員退任後も顧問とし
てワーク・ライフ・バランスが定着するように
取り組んでいくつもりです。
のことが大切ですね。技術力を高める良い仕事
− 今日はお忙しい中、貴重なお話を伺うこと
を与える、3年目に全社員に論文を書かせ、ま
ができ、ありがとうございました。エンジニア
た資格ポイント制などを導入しています。論文
として、いつも外に目を向け自分を高めるだけ
作成や資格ポイント制は仕事の見直しをさせる
でなく、若い人を育ててこられた野木さんの生
こと、外に目を向けて仕事をする気持ちを育て
き方は素晴らしいと思います。これからもご活躍
るためです。
ください。
− ワーク・ライフ・バランスの取組みの中に
ブランド価値を高めるとありますが、企業のブ
文責: 全国労働基準関係団体連合会
神奈川県支部
中山
かながわ 2009.10
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