一人一人がベースボール型ゲームの楽しさを 味わえる指導の工夫

一人一人がベースボール型ゲームの楽しさを
味わえる指導の工夫
―「かがやきルール」を取り入れた活動を通して―
研究 員
研
究
の
概
藤岡第 一小学 校
笹澤
智子
要
本 研 究 は 、 ベ ー ス ボ ー ル 型 ゲ ー ム に お い て 、「 か が や き ル ー ル 」( 児 童 相 互 の 言 葉 か け な ど の マ
ナー や ゲー ムの ルー ル を自 分た ちで 考え 工 夫し た もの )を 取り 入れ る こと で、ゲ ームの 楽しさ を味
わうこ とがで きるよ う指導 の工夫 を行う もので ある。
Ⅰ
主題設定の理由
生涯 学習 の 視点 から 考え て 、体 育の 学 習で 大切 にし たい こ とは 、運 動 の楽し さを体 験し、 運動の 楽
し み方 を知 り 、自 ら運 動に 親 しん でい こ うと する 態度 を育 て るこ とで あ る。特 に小学 校の体 育科学 習
で は、 その 運 動自 体の 楽し さ や、 技の 習 得・ 向上 の喜 び、 個 人や 集団 で の競い 合い、 協力し 合うこ と
に 楽し さを 味 わわ せる こと を 大切 にし た いと 考え る。 本学 級 の児 童の 多 くは休 み時間 になる と外で 元
気 に遊 んで い る。 しか し遊 び の様 子を 見 てい ると 、遊 びの 内 容や 仲間 が 固定し ていた り、室 内での 遊
び を好 む児 童 もみ られ る。 ま た体 育の 授 業で は、 個人 の技 能 や記 録に こ だわり すぎた り、集 団や仲 間
と上 手くか かわる ことが できな い児童 もみら れる。
体育 の学 習 領域 「ゲ ーム 」 は集 団対 集 団で 勝敗 を競 うこ と 、勝 敗が は っきり してい ること 、仲間 と
力 をあ わせ て 競争 する こと な どか ら、 児 童に とっ ては 好き な 領域 の一 つ である 。実際 にゲー ムをす る
と きに は、 蹴 る、 打つ 、捕 る 、投 げる な どの ボー ル操 作が あ るた め運 動 が得意 な児童 は多く の場面 で
活 躍で きる 。 しか し運 動が 不 得意 な児 童 にと って はボ ール に 触れ る場 面 が少な かった り、仲 間との か
か わ り の 中 で 失 敗 を 指 摘 さ れ て 嫌 な 思 い を し た り す る こ と も あ る 。 し た が っ て 、「 ゲ ー ム 」 は 児 童 に
と って 好き な 学習 のひ とつ で はあ るも の の、 どの 児童 もそ の 運動 の楽 し さや喜 びを味 わうこ とがで き
てい るとは 言い難 い現状 である 。
児 童 に ゲ ー ム の 学 習 に つ い て ア ン ケ ー ト を 実 施 し た とこ ろ 、「 楽し い 」 と 答 えた 児 童 が 35 人 中 33
人 と圧 倒的 に 多か った 。児 童 は自 分が 上 手に でき たり 、チ ー ムと して 作 戦がう まくい ったり して得 点
で きる など の 結果 に結 びつ い たと きに そ の楽 しさ を味 わっ て いる 。し か し、自 分の失 敗を責 められ る
な ど、 チー ム が共 感、 協力 的 な雰 囲気 で ない とき には 楽し く ない と感 じ ている 。児童 は、ゲ ームの 学
習 を楽 しく す るた めに は、 練 習を した り 、友 達の よい とこ ろ を見 つけ た り、作 戦やル ールを 工夫し た
り する こと が 大切 であ ると 考 えて いる 。 自分 が練 習し て上 手 くな るこ と に加え て、互 いに認 め合い 、
励 まし 合い な がら 取り 組む こ との 大切 さ を体 験し 、作 戦や ル ール を工 夫 するこ との必 要性も 感じて い
る 。し たが っ て、 うま く仲 間 とか かわ り なが ら学 習を 進め る こと によ り 、技能 の向上 が図ら れると と
もに 、学ぶ ことの 楽しさ を実感 できる と考え る。
ベ ース ボー ル型 ゲ ーム は、 攻守 の場 面 がは っ きり して おり 、ゲ ー ムの 構成が 比較的 単純な ため、 児
童 にと って も わか りや すく 、 言葉 かけ や ルー ルが 工夫 しや す いゲ ーム で ある。 また必 ず一人 一人が 活
躍 でき る場 面 が保 障さ れて い る。 さら に 本学 級の 児童 は、 ベ ース ボー ル 型ゲー ムの経 験は他 のゲー ム
-1-
に比 べると 少なく 、比較 的技能 の差を 感じる ことな く活 動でき るゲー ムであ る。
そ こ で 本 研 究 で は 、 ベ ー ス ボ ー ル 型 ゲ ー ム に お い て 、「 か が や き ル ー ル 」( 児 童 相 互 の 言 葉 か け な
ど のマ ナー や ゲー ムの ルー ル を自 分た ち で考 え工 夫し たも の )を 取り 入 れたゲ ームを 行うこ ととし 、
児 童一 人一 人 が友 達と のか か わり や、 自 分た ちの 作戦 で勝 敗 を競 う中 で ゲーム の楽し さを味 わえる こ
と がで きる と 考え た。 友達 と 仲よ く運 動 をす るこ とや 、運 動 の楽 しさ を 味わえ るよう 互いに 話し合 っ
て ルー ルを 考 えた り工 夫し た りす る経 験 を通 し、 生涯 にわ た って 運動 に 親しむ 資質や 能力の 基礎を は
ぐく むこと ができ ると考 えて本 主題を 設定し た。
Ⅱ
研究のねらい
ベ ー ス ボ ー ル 型 ゲ ー ム の 活 動 に お い て 、「 か が や き ル ー ル 」( 児 童 相 互 の 言 葉 か け な ど の マ ナ ー や
ゲ ーム のル ー ルを 自分 たち で 考え 工夫 し たも の) を取 り入 れ るこ とで 、 児童一 人一人 がゲー ムの楽 し
さを 味わう ことが できる ことを 実践を 通して 明らか にす る。
Ⅲ
研究の見通し
1
導 入の 段 階に おい て、 試 しの ゲー ム を行 いな がら 「か が やき ルー ル 」をみ んなで 考え、 学習を
進 めてい けば、 児童の やる気 を高め 、みん なで協 力し たプレ ーがで きるよ うにな るであ ろう。
2
「 打 つ 、 捕 る 、 投 げ る 、 走 る 」 の 技 能 習 得 の 場 面 で 、「 か が や き ル ー ル 」 が 活 か せ る よ う な 簡
単 な得点 競争ゲ ームを 行えば 、児童 の意欲 が高ま り、 技能が 向上す るであ ろう。
3
ま とめ の ゲー ムを 行う 場 面に おい て 、一 人一 人の 力量 が 発揮 でき る ように 、自分 たちで 「かが
やき ルー ル 」を 考え 、選 択 しな がら ゲ ーム を行 えば 、作 戦 の工 夫が 見 られゲ ームの 楽しさ が味わ え
る であろ う。
Ⅳ
研究の内容と方法
1 研究の 内容
(1)
「ゲー ムの楽 しさを 味わえ る」に ついて
ベー スボ ー ル型 ゲー ムの 中 で、 ゲー ム の楽 しさ を味 わえ る とは 、仲 間 とのよ いかか わりの 中で、 簡
単 な技 能を 身 に付 け、 一人 一 人が その 技 能を 発揮 し、 友達 と ルー ルを 工 夫して 協力し ながら 、勝敗 を
競 うこ とで あ る。 ベー スボ ー ル型 ゲー ム にお ける ゲー ムの 楽 しさ を味 わ う児童 の具体 的な姿 を次の よ
うに 考える 。
○友 達と協 力して 互いに 教え合 ったり 励まし 合った り賞 賛した りする ことが できる 。
○打 つ、捕 る、投 げる、 走るな どの動 きがで き、規 則や ゲーム の型、 作戦に 応じた 動きが できる 。
○ ゲー ムを よ り楽 しく おも し ろく する ル ール を考 え自 分た ち がゲ ーム を つくっ ている という 思いを も
つ ことが できる 。
(2) 「か がやき ルール 」につ いて
「か がや き ルー ル」 とは 児 童相 互の 言 葉か けな どの マナ ー やゲ ーム の ルール を自分 たちで 考え工 夫
し たもの である 。
○言 葉や態 度のマ ナーに ついて
・ ゲー ムを 進 めて いく 中で 、 一人 一人 が 気持 ちよ くプ レー し たり 、協 力 したり できる ような 言葉か け
や 、ゲー ムに臨 む態度 を考え る。
-2-
○ゲ ームに 関する ルール につい て
・試 しのゲ ームな どを行 いなが ら、自 分たち にあっ たル ールを 考えて いく。
・基 本のル ールよ りもレ ベルが 高いも の、レ ベルが 低い ものの 両方を 考えて いく。
2 研究の 方法
(1) 授業 の実践 計画
対象
藤岡第 一小学 校4年 3組3 6名( 男子1 6名 女子 18名 )
(わ かく さ児童 男子 1名
期間
10月 上旬~ 下旬 (全 10 時間予 定)
単 元名
ベース ボール 型ゲー ム
女子1 名)
(2) 抽出 児童
A(男 子)
体を動かすことが大好きで、グループの中心になり運動を楽しむことができる。し
かし、自分が楽しめることや、自分が活躍できることを優先させる場面が目立ち、
友達が失敗したりすると、相手を中傷するような言葉を言ったり、相手チームを挑
発す る よう な言 葉を 言 うこ とが ある 。 そこ でみ んな が気 持 ちよ くプ レ ーする ために
自分の役割を考え、みんなで協力してプレーすることの大切さを理解させるように
したい 。
B(女子)
真面目に学習に取り組むが、運動が苦手だという意識をもっている。休み時間も室
内遊びを好み、ドッジボールなどのゲームでも消極的になりがちである。励まし合
ったり、認 め合 ったり する活 動を通 して、運動 の楽し さを実 感でき るよう にした い。
Ⅴ
研究の実践と考察
1
本研究 で考え た「か がやき ルール 」につ いて
本単 元の 学 習を 進め なが ら 、児 童と と もに 自分 たち に必 要 なル ール に ついて 話し合 いを取 り入れ な
がら 考えた もので ある。 内容は 以下の 通りで ある。
<言葉や態度のマナーについて>
言葉かけ
元気が出る言葉を言おう。(ナイスプレー、ナイスバッティング、ドンマイ、いいぞ、すごい、は
やい、うまい、おしい、次がんばれ)など
ゲームに臨む
真剣にゲームに取り組む。あきらめないで走る、とる、なげる。
態度
最後までプレーを続ける。集中する。負けてもふてくされない。
思いやりのある態度(拍手など)をする。
<ゲームに関するルール>
ゲームの中に教師からの基本ルールと、チーム間の話し合いで選べるルールを提示する。また必要に応じてルールを新しく作るな
ど創意工夫を行うこととする。
○ 1 チーム(6 人)男女混合
場
道具
三振
チェンジ
得点
アウト
ピッチャー
その他
塁間 15m
バット
1 度振った 3アウト
ホームに帰 高 度 な プ レ ー ( ダ ブ ピ ッ チ ャ ー の ノ ー バ ウ ン
A
ら交替
って1点
ルプレーなど)が発
距離を近づけ ド で 越 え た
生したら高得点
る。
ら高得点
三 角 ベ ー バット
あり
3アウト
ホームに帰 フライの捕球
相手チームが ホ ー ム ラ ン
ス
って1点
バ ッターが1 塁に 投げる
ラインをゴ
基
塁間 15m
い くまでに1 塁に
ロでこえた
本
ボ ールを送れ ばア
ら2塁打
ウト
塁間 10m
バット
なし(何回 打者一巡で 打って走っ 打 ったボール をワ 見 方 チ ー ム が ゴ ロ で こ え
B
振ってもよ チェンジ
たベースの ン バウンドで とっ 投げる
てもホーム
い)
数だけ得点 たらアウト
ティーを使う
ラン
○プレーに応じて話し合いの時間をとり、ルールを相談することができる。
○基本のルールを中心に、A はレベルの高いもの、B はレベルの低いものである。
2
時間
1
指導・ 評価計 画(計 10時間 予定)
ねらい と主な学習活動
指導上の留意点
具 体の評価規準
○ オリエンテーション を行う。
○学習計画 、活動内容の説明をす る。
関心・意欲・態度
・ 学 習 の ね ら い を 理 解 し 、 学 習 の 進 め ○ 学 習 の 進 め 方 や 学 習 カ ー ド の 使 い 方 な ど を ○学習の進め方を理 解しグル
方 を見通す。
学習資料を 活用し説明する。
ープ活動をしてい る。
○ サ ー キ ッ ト 運 動 の 仕 方 を 伝 え 安 全 に 活 動 を ◎学習の進め方を理 解し進ん
行わせる。
でグループ活動をしてい
○ サーキット運動をす る。
る。(行動の観察)
-3-
サーキット運動(基礎的な運動・感覚づくり)
2
3
4
5
タイヤを使って全身運動
やさしくキャッチボール
ごろごろキャッチボール
トスバッティング
フライキャッチ
手のひらバッティング
○
基本的なルールを知り、試しの
ゲームを行い自分たちのルール
の必要性 をを考える。
○自分たちのルールの土台となる
ものを 考える。
( 見通し1)
ジグザグへびじゃんけん
ボールを相手に優しく投げる。
転がるボールを腰を落としてしっかりキャッチする。
軽く投げ上げたボールを打ち返す。
高く上がったボールを落とさずにキャッチする。
投げてもらったボールを手のひらで打ち返す。
思考・判断
○試しのゲームをもとに「か
がやきルール」を考えるこ
とができる。。
◎試しのゲームをもとに率先
して意見を述べ「かがやき
ルール」を考えることがで
○ サーキット運動をす る。
○ 1 チーム 6 人、男女混合で どのチームも技
き る 。( 行 動 の 観 察 ・ 学 習
○ 基本的なルールを知 る。
能的に均等 になるように編制する 。
カードの記述)
○ 試しのゲームを行う 。
○審判はセ ルフジャッジで行わせ る。
○自分たちにあったルールを考えてい ○みんながゲームを楽しむためにはゲームの
く。
ルールだけでなく、言葉やマナーのルールも
考えていく ことが必要であること を助言する。
○考えたルールは固定ではなく自分たちの力
量に応じて変化させていくということを伝え
る。
技能
○投げる、捕る、打つ、走るなどの
○「かがやきルール」を活かせるよう
○ボールを投げる、捕る、打
簡単な得点競争のゲームを楽し
な得点競争ゲーム を行う。
つ、そして走るなどして楽
む。
(見通 し2)
○ 自分やチームの向 上に目を向け意欲
しくゲームをすることがで
をもってがんばれ るように結果をポ
きる。
イント制にして技 能の向上が感じら
◎ボールを遠くまで投げる、
れるようにする。
(見通し 2)
上手く捕る、強く打つ、そ
○ サーキット運動をす る。
して思いっきり走るなどし
○ 得点競争のゲームを する。
て楽しくゲームをすること
○「かがやきルール」を意識させながらいろ
ができる。
いろなゲー ムに取り組ませるよう にする。
(行動の観察・学習 カード
○ゲームを通して基本的な動き方のポイント
の記述)
がつかめる ようにする。
○基本のルールで試しのゲーム
を行わせ、「 かがやきルール」
の土台となるものを考えさせ
ていくようにする 。
( 見通し1)
得点競争のゲーム
30 秒キャッチボール
的当てストライクゲーム
バッティングゲーム
ベースランニング競走
チームで二人組になり 30 秒を 3 セットで何回キャッチボールを続けられるかというゲーム
的に向かってボールを投げ 10 球中どれだけボールを的に当てられるかというゲーム
バットでボールを打ちボールがピッチャーに戻るまで何回コーンに行けるかというゲーム
四角のコースを 2 チームごとにリレーをして勝敗を競うゲーム
○ サーキット運動をす る。
○ ゲームをする。
・ 対戦相手の確認をす る。
6
7
○ 自分たちの力量に あったルー
ルを考え選択するようにさせ
る。
( 見通し3)
○自分たちで考えた「かがやきル
ール」でゲーム(試合)をして、
-4-
8
9
10
ゲーム の楽しさを味わう 。
○ゲームを行いながらルールの改
善を行 っていく。 ( 見通し3)
・対戦相手とルールについて話し合い
を する。
・自分たちの選んだルールに合わせて
コ ート作りをする。
・ ルールにしたがって ゲームをする。
○児童の実態とルールや活動の場が合ってい
るかを観察 し確認する。
○審判はセ ルフジャッジで行わせ る。
○チームで「かがやきルール」を守ってゲー
ムが進めら れるように声かけをす る。
○バットを振るときや、打った後は周りに気
をつけさせバットを放り投げないようにさせ
る。
○上手なプ レイはどんどんほめて いく。
思考・判断
○ルールや活動の場を選んだ
り、工夫したりすることが
できる。
◎ゲームが楽しくできるよう
にルールや活動の場を選ん
だり、工夫したりすること
が で き る 。( 行 動 の 観 察 ・
学習カードの記述 )
関心・意欲・態度
○ルールを守り互いに協力し
て楽しくゲームをしようと
する。
◎ルールを守り互いに協力し
たり励まし合ったりして最
後まで楽しくゲームをしよ
う と す る 。( 行 動 の 観 察 ・
学習カードの記述 )
・学習カードに記入し、ゲームの反省
を する。
・ 全体でルールについ て考える。
「 か がや き タ イ ム 」
3 結果と 考察
(1) 導入の段階において、試しのゲームを行いながら「かがやきルール」をみんなで考え、学
習 を進 めて い った こと は、 児 童の やる 気 を高 め、 みん なで 協 力し たプ レ ーがで きるよ うにな ること に
有効 であっ たか。 (見 通し1 )
本 単元を 通して 、授業 終了時 に、図 1のア ンケー
ト を 行 った 。 その 結 果、 第 1 時 間目 終 了時 の子 ども
の ア ン ケ ー ト の 「 関 心 ・ 意 欲 」 の 項 目 は 2.8 で あ っ
た 。 第 2 時 終 了 時 に は 2.8 で あ っ た が 、 第 3 時 間 目
の終 了時に は落ち 込みが みられ た。( 図2)これは、
児童の感想をみると、初めの段階では「ルールがわ
からないから不安」などの記述が見られたように、
試しのゲームを行いながら「かがやきルール」を考
えていく段階で、自分たちに合ったルールを考える
こと ができ ず、意欲の 低下 がみら れたと 考えら れる。
しか し、そ の後、自分た ちで、自 分たち に合っ た「か
がやきルール」を選択しながら学習を進めていくこ
とで、「 関心・ 意欲」 の項目 は、図 2のよ うに徐 々に
-5-
かがやきベースボール学習アンケート
4の3(
)
1 深く心に残ることや、感動することがありましたか。
2 今までできなかったことができるようになりましたか
3 「あっ、わかった!」とか「あっ、そうか」と思った
ことがありましたか。
(毎時間3段階の自己評価)
「成果」の項目
1,2,3
「関心・意欲」の項目
4,5
4 せいいっぱい、全力をつくして運動することができ
「学び方」の項目
ましたか。
6,7
5 楽しかったですか。
「協力」の項目
8,9
6 自分から進んで学習することができましたか。
7 自分のめあてにむかって何回も練習できましたか。
はい3 点
8 友達と協力して、なかよく学習できましたか。
どちらでもない2 点
9 友達とおたがいに教えたり、助けたりしましたか。
いいえ1 点
図1
授業 後に行 ったア ンケー ト
で得点化
右 肩 上 が り に 上 昇 し て い っ た 。 授 業 終 了 時 の 感 想 に は 、「 自 分 た ち
で ル ー ル を 決 め る と こ ろ が よ か っ た 」「 か が や き ル ー ル を 使 っ て 試
3
合ができて楽しかった」という記述があった。次に「協力」の項目
を 見 て み る と 、 第 1 時 間目 終 了 時 には 2.7 で あ っ た 評 価 が、 第 3 時
の感 想の中 にも 7 割 の児 童が「 失
敗しても励ましてもらってうれし
関心・意欲
協力
2.5
第 10時
第7時
2.4
第5時
力してゲームに臨むことができて
いったと考えられる。これは児童
2.6
第3時
くにつれて、応援をしたり、励ま
したりすることで、気持ち良く協
2.7
第1時
分があったようである。しかしその後、徐々に右肩上がりに上昇し
たということは、回数を重ねてい
2.8
得点
間目には落ち込みがみられた。原因としては、言葉かけなどのルー
ルを自分たちで考えたものの、恥ずかしさもあり上手くいかない部
2.9
時間
「 図 2 関 心 意 欲 」「 協 力 」 の 項 目 の 変 化
かった」や、8 割の児童が「みんなと仲良くゲームができた」な
どと記述しており「かがやきルール」を使い活動を行ったことの
効果 である と考え られ る。
抽 出児童 Aの「 協力 」の項 目は 3.0 と高 い評価 が得ら れた。 感想
に は 、「一 番 う れ し か っ た こ と は 、 チ ー ム 一 丸 と な っ て 練 習や 試 合
がで きたこ とです 」と いう記 述がみ られた 。
さらに児童Bについては「関心・意欲」の項目で第1時間目終
了時 には 2.3 であ ったが 、第 10 時間目 終了時 には 3.0 と いう 高い
評価が得られた。また左の図3の感想から、運動があまり好きで
ない児 童Bが 、楽し く活動 ができ たとい う様子 が伺え る。
以 上 の こ と か ら 、 導 入 の 段 階 に お い て 、「 か が や き ル ー ル 」 を み ん な で 考 え て 、 学 習 を 進 め た こ と
図3
児童Bの感想
は 、児 童の や る気 を高 め、 意 欲的 に楽 し くゲ ーム を進 めた り 、相 手を 思 いやる 言葉か けや、 みんな で
協力 したプ レーを するこ とに有 効であ ったと 考えら れる 。
(2)
打 つ 、 捕 る 、 投 げ る 、 走 る の 技 能 習 得 の 場 面 で 、「 か が や き ル ー ル 」 が 活 か せ る よ う な 簡
単な 得点競 争ゲー ムを行 ったこ とは、児童 の意欲 を高め、技能 が向上 するこ とに 有効で あった か。
(見
通し 2)
「打 つ、 捕 る、 投げ る」 の 技能 は図 4 ・5 ・6 から もわ か るよ うに ほ とんど の児童 に向上 が見ら れ
1回
107
82 83
92
86
82
77
1回目
3.2回
2回目
3.9回
91
87
69
65
3回
107
102
94
86
2回
119
112
63
図5
1はん
2はん
3はん
4はん
5はん
1回目
1.5点
2回目
2.2点
6はん
図6
図4
的当て記録の伸び(投げる)
30秒 キ ャ ッ チ ボ ー ル の 記 録 の 伸 び
-6-
バッティング競争の記録の伸び
(打つ・打った距離によるポイント)
た 。ま た図 2 から も「 関心 ・ 意欲 」の 項 目が 上昇 して いる こ とが わか る 。これ は、た だ技能 習得の た
め の 練 習 で は な く 、「 か が や き ル ー ル 」 が 活 か せ る よ う に 、 ゲ ー ム 的 要 素 も 取 り 入 れ た こ と に よ り 、
友 だち との 励 まし 合い の中 で 意欲 が高 ま り、 時間 いっ ぱい 全 力で がん ば り取り 組めた という ことが 考
え ら れ る 。 児 童 の 感 想 の 「 キ ャ ッ チ ボ ー ル が た く さ ん で き る よ う に な っ て う れ し か っ た 」「 た く さ ん
的 に 当 て ら れ る よ う に が ん ば っ た 」「 ボ ー ル が ま っ す ぐ 投 げ ら れ る よ う に な っ て う れ し い 」「 な る べ
くポ イント がたく さんと れるよ うに遠 くへと ばして がん ばった 」など の記述 からも 伺える 。
「 走る 」の 技 能は 、当 初出 塁 する 時に は 、塁 に向 かっ て直 線 的な 走り を する児 童が多 かった が、ベ ー
ス ラン ニン グ 競走 を行 った こ とに より 、 コー ナー を利 用し て 上手 くカ ー ブを曲 がろう とする 児童の 姿
もみ られた 。
運動 が苦 手 な抽 出児 童B に つい ては 、 的当 ては 1回 目の 1 回か ら2 回 目は3 回に、 バッテ ィング 競
争 では 1回 目 0点 から 2回 目 は2 点へ と 記録 が伸 びて いる 。 さら に同 じ チーム の他の 児童の 感想の 中
に も「 Bが フ ライ をキ ャッ チ でき てす ご かっ た」 など の記 述 がみ られ た り、初 めはぎ こちな かった 投
球動 作がな めらか な動き ででき るよう になっ たこと から も技能 が向上 したこ とが伺 える。
以上 のこ と から 「打 つ、 捕 る、 投げ る 、走 る」 の技 能習 得 の場 面で 「 かがや きルー ル」を 活かせ る
よう な簡単 な得点 競争ゲ ームを 行った ことは 、技能 が向 上する ことに 有効で あった と考え られる 。
( 3) まと めのゲ ームを 行う場 面にお いて、一 人一人 の力量 が発揮 できる ように、自 分たち で「 か
が やき ルー ル 」を 考え 、選 択 しな がら ゲ ーム を行 った こと は 、作 戦の 工 夫が見 られゲ ームの 楽しさ を
味わ うこと に有効 であっ たか。 (見 通し3 )
前 ページ の図2 からも わかる ように、ゲ ームを 行う 場面(6、
3
7、 8、 9、 10 時 )の ア ン ケ ー ト の 「 関 心 ・ 意 欲 」 の 項 目 は 高
い評価であった。これは、自分たちで考えたルールを選択
2.5
2.4
ームの段階ではルール
を選択しそれを楽しむ
2.3
ことに夢中であった児
童が、ゲームの回数を
2.1
2.2
った作戦を考えるチー
ムが多く出てきたこと
5
第6時
第7時
第8時
第9時
第10時
図7
第10時
第7時
2
重ねるにつれて、チー
ムごとに、ルールにあ
6
成果
第5時
7
2.6
第1時
得点
2.7
第3時
の評価が高くなってい
る。これは、初めのゲ
8
2.8
得点
し、自分たちの力に合わせてゲームを行うことができた、
というところに大きく起因していると考えられる。図7か
ら ア ン ケ ー ト の 「 成 果 」 の 項 目 で は 、 特 に 第 9 時 ・ 第 10 時
2.9
「成果」の項目
に 関係が あると 考えら れる。
児童の 感想の 中にも 第9時 ・第 10 時 の感想 には「 作戦が 考え
ら れ た 」「 作 戦 が う ま く い っ た 」 な ど の 記 述 が 数 多 く 見 ら れ る
ようになってきた。児童が考えた具体的な作戦は「人がいない
図 8 ル ー ル の 選 択 の 変 化 の 様 子 所 に ね ら っ て 打 つ」「 打 っ た ら 全 力 で 走 る 」「 ラ イ ン を ね ら っ て
打 つ 」「 ち ら ば っ て 守 る 」「 遠 く ま で 打 て る 人 の 時 は 後 ろ に 下 が る 」「 打 順 を 工 夫 す る 」 な ど の 作 戦 で
あ る。 ゲー ム の回 数を 重ね る につ れて 楽 しさ が増 した とい う こと は、 そ のルー ルに合 わせた 作戦を 自
分た ちで考 え、そ れが成 功した という 要素も あると 考え られる 。
-7-
次に 各チ ー ムが 選択 した 「 かが やき ル ール 」に つい て調 べ てみ た。 図 8は、 レベル の高い ルール A
を 2 点 、基 本のル ールを 1 点 、レベ ルの低 いル ールB を 0 点と して得 点化し 、合計 したも のの変 化の
様 子で ある 。 これ を見 ると 、 初め の段 階 では ゲー ムの レベ ル を落 とさ ず に活動 してい る児童 が、後 半
で は、 レベ ル を下 げて ゲー ム を進 めて い る様 子が わか る。 こ れは 高い 技 術で行 うゲー ムより も、ど の
児 童も 楽し く 行え るよ うに 、 低い レベ ル で設 定し 、作 戦を 工 夫し なが ら ゲーム を進め ようと した結 果
であ ると考 えられ る。
以上 のこ と から 、ゲ ーム ( 試合 )を 行 う場 面に おい て、 一 人一 人の 力 量が発 揮でき るよう に、自 分
た ちで ルー ル を考 え、 選択 し なが らゲ ー ムを 行っ たこ とは 、 作戦 の工 夫 が見ら れゲー ムの楽 しさを 味
わう ことに 有効で あった と考え られる 。
Ⅵ
1
研究の成果と今後の課題
研究の 成果
○ 単元 のは じ めの うち は、 自 分た ちに あ った ルー ルを 考え る こと が難 し かった り、互 いに言 葉をか け
合う こと に 戸惑 いが みら れ たり した 。 授業 が進 むに つれ て 、み んな が 楽しく 学習す るため の「か が
や きルー ル」を工夫 するこ とや、ルー ルを自 分たち で決定 し、実践す ること により、意欲が 高まり、
協 力して プレー するこ とがで きた。
○ 技能 習得 の 場面 でも 、ゲ ー ム的 要素 を 取り 入れ 、こ れま で に工 夫し た ルール の中で 、身に 付けて き
た技 能を 生 かせ る学 習場 面 を設 定し た こと によ り、 意欲 を 持続 させ な がら技 能の向 上をは かるこ と
が できた 。
○ま とめの ゲーム(試 合)を行う 場面に おいて、一 人一人 の力量 が発揮 できる ように、自分た ちで「 か
がや きル ー ル」 を進 化さ せ なが らゲ ー ムを 行う こと を取 り 入れ た。 そ の結果 、だれ もが活 躍でき る
よ うなル ールの 選択や 、作戦 の工夫 が見ら れ、さ らに ゲーム の楽し さを味 わうこ とがで きた。
2
今後の 課題
○ ベー スボ ー ル型 ゲー ムは 他 のゲ ーム に 比べ て運 動量 の確 保 が課 題と な る。今 回は運 動量の 確保を サ
ーキ ット 運 動を 取り 入れ る こと によ り 補お うと した が十 分 では なか っ た。コ ートの 大きさ や1チ ー
ム の人数 を工夫 するこ とによ り、ゲ ームそ のもの の運 動量を 確保し ていく ように したい 。
○ 本単 元は 、 人間 関係 や集 団 づく りに 深 くか かわ る学 習内 容 であ るの で 、年度 当初の 学級づ くりと 関
連さ せて 計 画し たほ うが よ り効 果的 な 単元 にな る。 学級 づ くり 等を 意 識した 時期に 、教科 と領域 と
の 横断的 な単元 構想を 検討し ていき たい。
<主 な参考 文献>
○高 橋健夫
○東 根明人
編著 『体 育授業 を観察 評価す る』明 和出 版(2003)
監修 『 子ど ものつ まずき がみる みる解 決する コーデ ィネー ション 運動』明治 図書(2010)
○藤 崎
編著
敬
『図 解体育 授業』 東洋館 出版社 (2005)
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