1.生物の不思議 - 弘前大学農学生命科学部

農学生命科学部・国際園芸農学科
鈴
木
裕 之
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1.生物の不思議
Creation of Adam アダムの創造
ミケランジェロ
システィーナ礼拝堂
1)生命論の変遷
・無性生殖と有性生殖
・雄が精子,雌が卵子
・2つが融合して受精卵
・新しい個体へと発生
人間の命の一番最初の段階-生命の萌芽-
ウィリアム・ハーべー(1578–1657)
1628年 血液循環説
「生まれるとはどういうことか」
「生きているとはどういうことか」
そして
「人間とは何か」
・
1651年に《動物の発生に関する研究 Exercitationes de
generatione Animalium》を出版し,〈すべての動物の
発生は卵から omne animal ex ovo〉という考えを主張
1
顕微鏡の発達と生物学
顕微鏡の原型
1590年から1609年ころ オランダの眼鏡師ヤンセン父子
(ハンスおよびザカライアス・ヤンセン)
ホムンクルス
特筆すべき成果
1665 イギリスのロバート・フックによる細胞の発見
ぜんせいせつ
コルク薄片や木炭の断面を観察して,
そこに細胞を発見し,詳細な描写を
《ミクログラフィア 》に公表した。
せいしびじん
すべての生物は卵から
精子微人
・・・
左図:Micrographia(1665)の扉
上図:この本の中に載せられている
フック自身の手になるノミのスケッチ
ノミ
『顕微鏡図譜』の図版
『顕微鏡図譜』の図版 ブヨ
シラミ
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レーウェンフック(1632‐1723)
アントニ・ファン・レーウェンフック
(Antoni van Leeuwenhoek
(1632‐1723)
1674年 微生物を発見
1677年 精子を発見
レーウェンフックが作製した顕微鏡(1673年)
「微生物学の父」
小型の単一レンズ装置
レーウェンフックの単式顕微鏡と口内細菌のスケッチ
マルチェロ・マルピーギ
Marcello Malpighi (1628-1694)
ニワトリの胚の初期発生を顕微鏡で
追跡した。
ヤン・スワンメルダム
Jean Swammerdam(1637~1680)
マルチェロ・マルピーギ
「昆虫学総論」の中で彼は,蝶の蛹を解剖すると,完成された身
体の蝶が翅と肢を折りたたんで眠っていることを発見した。
ヤン・スワンメルダム
(Jan Swammerdam)
1637~1680
デ・グラーフ
Regnier(Reinier) de Graaf (1641‐1673)
卵細胞を発見した(1668)。
1658年 顕微鏡下で赤血球を観察した。
デ・グラーフ
オランダの A. van レーウェンフックは小型の単一レンズ装置で
赤血球や原生動物を観察し,細菌や精子を発見していた。
グラーフ『女性の
生殖器について』
ハム Johan Ham ヒト精子の発見者?(1675)
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18世紀
歴史のなかでも個体発生(一頭の動物や一人の人間の誕生)
のメカニズムは長い間ベールに包まれた「神秘」の領域で
あった。
精子に成体の原型が確認できないので,寄生微生物とされる。
顕微鏡という革命的な機器が現れたばかりの17世紀,人間は
「それまで見えなかったもの」が「見えた」ことによって誤り,
さらには「無いもの」をも「見た」のである。
アブラハム・トランブレーがヒドラの再生現象を実証(1744),
前成説が正しければ,失われた部分が再生するはずはない。
シャルル・ボネによってアリマキの単為生殖が発見(1745),
精原説は完全に権威を失った。
淡水産の腔腸動物。触手
は4~7本,ミジンコな
ど触手にふれた物を刺胞
を打ち込み麻痺させたも
のを食べる。消化管に
入った餌は養分を吸収さ
れた後,口から放出され
る。ふつう出芽により増
殖する。写真では3個の
出芽が見られる(矢印)。
しゅつが
ヒドラ
17世紀から18世紀
個体発生という生命現象の解明が困難であった。
人間の場合で言えば,
19世紀
1. 「男性の分泌物の中に,やがて形成されるはずの人間の体の
全器官が閉じ込められており,そのまま拡大成長して生まれ
てくる 」(前成説)
科学的な
はドイツの
ベーア Karl Ernst von Baerに
よって確立。
2. 「母胎内で,胎児が徐々に形態を変化させながら人間らしい形
がつくられていく」(後成説)
格段に進歩した顕微鏡が大きく寄
与した。
2)発生学の発展
19世紀から20世紀初頭
発生学に最も影響力を及ぼした動物学者
生殖細胞質の普遍性と連続性の原理
は,ドイツの動物学者アウグスト・ワイ
スマンによって唱えられた。
1892 生殖質説
1902 進化論講義
細胞の最終的な運命を決定するのは何なのか
どのようにしてすべての細胞が調和するのか
.
すべての細胞の核は等しいのか
・・・
アウグスト・ワイスマン(1834-1914)
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1892年 アウグスト・ワイスマン
『生殖質説-遺伝理論』
 ヴィルヘルム・ルー(カエル)
 ハンス・アドルフ・エドゥアルト・ドルーシュ(ウニ)
ルー(カエル)
ドルーシュ(ウニ)
・
実験発生学の創始者
ルー [Wilhelm Roux]
(1850-1924)
ハンス・ドリーシュ
[Hans Adolf Edauard Driesch]
(1867-1941)
ハレ大学病院マクデブルク通り南
東の離れたところにあるウィルヘ
ルム・ルーの記念碑
1902年 ハンス・シュペーマン
(サンショウウオ)
ハンス・シュペーマン
[Hans Spemann ]
(1869 – 1941)
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5
・
ブリッグスとキング(1952)
1938年 ハンス・シュペーマン『胚発生と誘導』
分化した細胞の核は新しい個体への発生能をもつのか
核移植
1.分化した細胞から核を取り出し,
○
2.あらかじめ核を取り除いておいた卵子の中に入れる
×
1952年 ロバート・ブリッグス(カエル)
トーマス・J・キング
1966年 ジョン・ガードン(カエル)
・
・・・・
ガードン(1966)
自然界における一卵性双生児
が生まれるプロセスを人工的
につくられたもの
1986年 スティン・ウィラードセン
同じ胚細胞からヒツジのクローン
哺乳動物にける
はじめてのクローン
1995年 イアン・ウィルマットら
長期間培養した同じ胚細胞からヒツジのクローン
(核移植)
分化した体細胞を核移植
発生の結果にバラツキ
1996年 イアン・ウィルマットら
体細胞からヒツジのクローン
ミーガンとモーラグ,1995年8月
・
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大人のヒツジ
乳腺細胞
完全なヒツジ
ドリー
ドリーの名前は米国の歌手・女優のDolly Parton に
ちなんで名づけられました。
・
一世代
個体
配偶子(精子)
死亡
発生
配偶子形成
受精卵
配偶子(卵子)
接合子
生殖細胞
胚盤胞
原腸胚
精子
中胚葉
(中層)
内胚葉
(内層)
中間
側面
消化管 咽頭 呼吸管
腎尿細管
赤血球
外胚葉
(外層)
卵子
未分化
中枢
外面 神経系 神経堤
背側
沿軸
頭部
分化
肺細胞
甲状腺細胞
すい臓細胞
顔面筋
骨格筋細胞
脊索
色素細胞
ニューロン
皮膚細胞
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