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鳥取大学教育センター広報アゴラ No.35
2012. 12
《グローバル人材育成特集》
《 目 次 》
「世界と日本」
をしっかり学ぼう ………………………… 教育担当理事・副学長・教育センター長
本名
俊正 ………… 1
学生は本当に
「内向き」か? …………………………………… 国際交流センター長・副学長・教授
若 良二 ………… 3
乾燥地をフィールドにした農学部・農学研究科に ………………………… 農学部副学部長 教授
山本 定博 ………… 5
―グローバル人材育成推進事業に採択される―
おけるグローバル人材育成
グローバル化と言語、問題意識 …………………………………………… 教育センター 准教授
小林 昌博 ………… 8
12入学) 畠中 恵美 ………… 10
Bonjour! Comment allez vouz? ……………………………… 医学部 保健学科(’
12入学) 三澤 和樹 ………… 12
My Experience in Canada …………………………………… 医学部 生命科学科(’
11入学) 橋口 未迪 ………… 14
My Summer Vacation in Boston ……………………………… 農学部 獣医学科(’
11入学) 大智 宏祐 ………… 16
オーストラリアでの三週間 ………………………………………… 農学部 獣医学科(’
祝・グローバル人材育成推進事業(平成24年∼28年度)採択 ……………………………………………………………… 18
10入学) 窪田恵里花 ………… 19
鳥取大学「人生論」講座に参加して ………………………… 地域学部 地域文化学科(’
シリーズ 彫刻創作の現場から
《いのちのかたちの章》
… 地域学部附属芸術文化センター長 教授
石谷
孝二………… 21
2012. 12
「世界と日本」をしっかり学ぼう
―グローバル人材育成推進事業に採択される―
理事・副学長(教育担当)
・教育センター長
ほん
な
とし
まさ
本 名 俊 正
鳥取大学は、文部科学省のグローバル人材育成推進事業(平成 24 〜 28 年度)に採択されました。
これまでも乾燥地を中心に先進国から開発途上国まで世界各国に学生・大学院生を海外に派遣してき
ましたが、今後さらにグローバル教育を強化し「タフで実践力のあるグローバル人材」の育成を積極
的に推進することになりました。
標題は「開発途上国・新興国をフィールドにした実践教育によるグローバル人材の育成」で、海外
体験と豊かなグローバルマインドを根底として、
「グローバルマネジメント能力」と「タフで健全な
心身」を有し、
「広い教養と深い専門知識 ( 理論 ) と高い技術力 ( 実践力 )」を体系的に修得すること
により、進展しつつあるグローバル社会の中核として日本でも世界でも活躍できる積極的な人材の育
成を目指しています。
る
経
験
考え
もっと
1
No.35
そのために次のような新しい取り組みを推進します。
1. 教育課程の国際通用性の向上
グローバル教育に関する授業科目を「グローバル教育科目群」として体系的に位置づけ、教養教育
の「グローバル教育基礎科目群」と専門教育の「グローバル教育強化科目群」に分け、
「グローバル
人間力」、「グローバルリテラシー」、「グローバルコミュニケーション力」の3つの教育を体系的に実
施し、「世界と日本」をしっかりと学び、
「タフで実践力のあるグローバル人材」を育成します。
2. グローバル人材として求められる能力の育成
また、本学の特色でもある短期、中期的な海外派遣により、①気づく(Awareness)
、②自ら変わる
(Change)
、③行動する(Trial)というプロセス(ACT サイクル)を繰り返すことにより、学生自身
が主体的に取り組み、経験と気づきのなかで自らの成長を実感しながら能力をスパイラルアップさせ
ることを目指します。
3. 語学力を向上させるための入学時から卒業時までの一体的な取組
全学の学生を対象に、グローバルコミュニケーション能力の向上を目標とし、トリリンガルを目指
した外国語教育の強化を推進します。 英語教育の強化とともに TOEIC や TOEFL 対策や中国語、韓国
語、スペイン語、フランス語、ドイツ語などの能力検定試験を実施するなど、全学的な観点から語学
力強化の取組を実施します。
4. 教員のグローバル教育力の向上
可能な学部やカリキュラムからクォーター制に移行し、全学的に柔軟で体系的なカリキュラムの構
成により、学生がグローバル教育に係る科目群を履修しやすくするとともに、教職員の語学力の向上
を進め、教職員が学生の海外派遣プログラムの引率や研修などに積極的に参加できるよう教育体制の
グローバル化を推進します。
5. 日本人学生の留学を促進するための環境整備
「鳥取大学グローバル人材育成推進室」を組織し、各部局と連携した海外留学プログラム開発や入
学試験の在り方、広報活動、カリキュラム開発、キャリア支援及び危機管理など、日本人学生の留学
を促進するための環境改善を一元的かつ全学的に検討推進します。
6. 未来に向かって世界に向かって一緒に前進しましょう
あらゆる分野でグローバル化が急速に進んでいます。私達の毎日の生活も経済も産業も教育も環境
問題もあらゆることが日本だけで完結できる時代ではなくなりました。世界全体、地球全体との関連
がますます強まってきています。また、世界の人口は昨年 70 億人 (2011 年 ) を超え、さらに急増し
ています。一方、日本の人口は 1 億 2,806 万人 (2010 年 ) をピークに年々減少し、少子高齢化社会
を迎えると予想されており、これからの新しい社会のあり方を考え、魅力ある日本社会を実現し、世
界に貢献していくことが重要な課題となってきています。それには私たち鳥取大学の構成員、学生、
教職員一人一人が、しっかりと考え、学び、一歩一歩足元を固め、未来に向かって前進する事が大切
です。
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2012. 12
学生は本当に「内向き」か?
国際交流センター長・副学長・教授
わか
りょう
じ
若 良 二
これまで、鳥取大学からは、数多くのグローバル人材が育っていきました。彼らは一体どのように
してグローバル人材として育っていったのでしょうか?
勿論、入学当初から海外で仕事がしたい、グローバル人材として世界で活躍したいと言う意欲に溢
れた学生もいたかもしれません。しかしながら、そのような学生は必ずしも多くはなかったのではな
いかと思っています。
鳥取大学に入学後、本学の国際交流活動や国際戦略事業など、海外との関わりの深さを知り、その
楽しさや面白さ、そして日本社会がグローバル人材を求めていることを見聞きし、さらに、外国人留
学生との交流や留学経験のある先輩や友人からの示唆等をとおして、自らの将来像の中に「多様性」
、
「国際性」、
「グローバル化」等のグローバル人材としてのキーワードが次第に摺り込まれて行ったに
違いありません。
ところで、現在の日本人学生は、
「内向き」傾向が強いと言われていますが本当にそうでしょうか?
確かに、海外に留学する日本人学生がアメリカを中心に減少していることは事実ですが、私自身は、
本学の学生は必ずしも「内向き」ではないと思っています。
事実、本学が海外に派遣している学生は年々増加しており、
「留学」や「海外研修」等の相談で国
際交流センターを訪れる学生も次第に増えてきています。しかしながら、我が国全体でみれば、海外
に留学する学生は明らかに減少傾向にあり、このことは学生の国を超えたモビリティが急激な高まり
を見せる国際的な動きと逆行するものです。果たして、我が国で学生の国際的なモビリティが低下し
ているのはなぜでしょうか?
要因としては幾つか考えられると思いますが、先ず、現在、我が国が直面している「社会の閉塞感」
が挙げられるのではないでしょうか。特に、
「就職」に関して、学生は社会の閉塞感を意識してか、
早く就職を決めたいとの「焦り」さえ感じる時があります。学生にとって、就職は自分の一生に関わ
る大きな問題です。このため、学生が留学を考える場合、留学によるメリットとデメリットを「就職」
という観点から考えているようです。すなわち、学生が、自分自身の将来が見通せない事に一抹の不
安を感じ、何よりも就職戦線に乗り遅れることを恐れているように感じられます。すなわち、海外に
留学することにより留年を余儀なくされるため、結果的に就職活動に遅れ、これが就職に不利になる
と考え、敢えて留学を避けるようになっています。
さらに、語学力や経済的な問題、及び外国に対する理解不足も大きな要因として挙げられます。海
外留学に耐えられる十分な語学力が身に付いていないため、多くの場合、留学と言っても「語学研修」
の場合が多く、いわゆる、「専門科目の単位」や「学位」を取得する留学は、交換留学を含め、極め
て少ないのが現状です。さらに、長引く不況や経済の低迷により、家計に「ゆとり」のない家庭が増
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No.35
えていることも一因と考えられます。さらに、開発途上国や新興国に関する情報が乏しく、学生がそ
れらの国々の実情を正しく理解することが困難なことや、学生の海外派遣に対する危機管理やリスク
管理が十分になされて来なかったことも学生が留学を躊躇する要因になっていると考えています。
この様に、最近の学生が海外留学や海外研修に積極的にならない、いわゆる「内向き」と言われる
要因には幾つか考えられますが、開発途上国や新興国の急激な経済発展やグローバル化の進展により、
今や、我が国は国内で全てが完結するような自己完結的な社会ではなくなりました。我が国が社会の
持続可能な発展を維持し、今後も世界に誇れる国家としてあり続けるためには、自国のみに目を向け
ているのではなく、先進国はもとより、広く新興国や開発途上国にも目を向け、これらの国々とより
良い関係を構築する必要があります。
このためには、例えば、入学や卒業時期の検討や単位の認定及び就職時期と就職支援の在り方など、
学内規則や社会制度の見直しを含めた制度改革、意識改革により学生の海外留学を促進するための施
策を具体的に実施することが必要です。
この度の「グローバル人材育成推進事業」は、正にこのような改革を「大学教育」において行おう
とするものです。
自然環境問題から始まった「グローバル化」の波は、今や大きなうねりとなって金融や経済から高
等教育にまで及んでいます。鳥取大学は高等教育機関として「グローバル化」のうねりを乗り越える
べく独自の戦略に基づき、学生のグローバルマインドの確立とグローバル人材の育成を目的にした 5
年間にわたる構想を「グローバル人材育成推進事業」として提案し、
文部科学省より採択を受けました。
本構想では、国際水準の大学として国際通用性のある教育を通して、精神的、肉体的に「タフ」で
現場に強い「実践力」のある人材をグローバル人材として育成することとしています。本学の「グロー
バル人材育成事業」の概要や具体的な「グローバル人材像」については、本号に詳しく記載されてい
ますので、そちらをご覧頂ければ幸いです。 国際交流センターは、鳥取大学の学生は必ずしも「内向きではない」
、
「我が国が世界に誇れる資源
は人材である」をモットーに、「グローバル人材の育成」に向けて今後も様々な国際事業や学生の海
外派遣を積極的に支援していきます。グローバル人材を目指す学生の皆様、
「閉塞感」を乗り越える
のは皆さん自身の「気持ちと意欲と努力」です。国際的に活躍できる「グローバル人材」を目指し、
国際交流センターを思う存分活用して下さい。皆さんの「グローバル人材への挑戦」を心より期待し
ています。
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2012. 12
乾燥地をフィールドにした農学部・
農学研究科におけるグローバル人材育成
農学部副学部長 教授
やま
もと
さだ
ひろ
山 本 定 博
鳥取大学の特徴であり強みである乾燥地の研究は、教育、すなわち人材育成と一体となって展開さ
れている。研究成果の具現化の一つは人材養成であり、乾燥地での農業開発や砂漠化問題などに対処
でき、国際的に活躍できる人材を育成するために、鳥取大学は、わが国で唯一、学部から博士課程まで、
乾燥地科学について一貫した教育課程(農学部国際乾燥地科学コース、農学研究科国際乾燥地科学専
攻、連合農学研究科国際乾燥地科学専攻)を提供している。
これら一連の教育成果として、乾燥地問題に直接的に関わる人材ばかりでなく、グローバルな視野
とマインドを持ったタフで実践的な人材(本学のグローバル人材育成プログラムが目指している人材
像そのもの)が育ち、国内外を問わず、さまざまな方面で活躍をしている。いずれの課程でも途上国
や新興国において乾燥地をフィールドとした実践的教育を重視しており、これが人材育成において大
きな効果を上げている。ここでは農学部の授業科目である国際乾燥地農学実習、
農学研究科のインター
ナショナルトレーニングプログラム(ITP)を活用した学生の長期派遣を事例として紹介したい。
国際乾燥地農学実習:初めての乾燥地体験。現場で本物を見る、現場の状況を知る。
国際乾燥地科学コースの 2 年生後期開講の授業科目(4 単位、選択)である。メキシコとタイを実
習地として(学生はどちらかを選択)、2 ~ 3 月の 1 ヶ月間、現地機関の協力を得て、講義・実験、
圃場実習、生態・環境調査、農村調査、学生交流、成果発表会等、多岐わたる内容の実習を実施して
いる。湿潤地域の日本では、学生にとって乾燥地はイメージの世界である。まず乾燥地でのリアルな
体験が必要であり、その名のとおり乾燥地での農業を肌で感じ、汗を流しながら学ぶことを目的とし
ている。実習はフィールドワークが主体であるが、最後に現地で成果発表会があり、学生は英語(メ
キシコ実習組はスペイン語)でプレゼンテーションを行う。帰国後は英語によるレポート提出も待っ
ている。実習効果を高めるために、外国人教員によるコミュニケーションを重視した英語授業、ディ
ベート形式の講義を必修科目として取り入れ海外でも臆することなくコミュニケーションできるマイ
ンドセットアップを事前に行っている。
この実習は、国際乾燥地科学コースの前身である実践農学コース砂地乾地農学サブコースの授業科
目(乾燥地農学実習)として、平成 13 年からメキシコ・カリフォルニア半島(ラパス、ゲレロネグロ)
で開始し、本年で 12 年目になる。この間 200 名近い学生が自習を行ったことになる。当初は夏季の 2 ヶ
月間のプログラムで、実習内容を始めすべてが手探り状態であった(自習の立ち上げに関わった先生
方の苦労たるやこの紙面では語り尽くせない)
。鳥取大学といえば
「メキシコ海外実践教育プログラム」
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No.35
というほど学内外に定着しているが、実はメキシコでの学生教育プログラムの元祖はこちらである。
「百聞は一見にしかず」というが、講義で 100 回語るより、1 回の現地体験である。現場での実体
験に基づく教育効果の高さを実感する。実習中の学生の顔は実に生き生きとしている。そして、学生
は見事に変身する。実習前の 2 年生と実習を経験した 3 年生はすべてが違う。一連の実習を通じて、
学生たちは専門知識や語学力はもとより、様々な異文化適応力、コミュニケーション能力を高めてい
る。また、学びに対するモチベーションを高め、
学びたい専門領域の方向性が明確になってくる。また、
実習経験学生の多くは、さらなる海外経験を希望しており、毎年 5 名以上のコース学生が 3 年生後期
にメキシコ海外実践教育プログラムに参加している。
海外をフィールドにした教育は、高い効果を有するが、実施にあたっての課題は多い。まずは学生
の渡航費である。昨年より SSSV による支援を受けているが、高額な渡航費は学生にとって大きな負
担である。また、実習担当教員に対して、膨大かつ煩雑な渡航前準備(航空券の手配から始まり、実
習機関との調整等々)、現地での実習・学生の管理等、多くの時間、労力、そして心労を強いている。
今後、部局単位で実施する学生海外派遣プログラムの内容を充実させ、安全かつ効果的に実施するた
めには、まずは学生派遣にかかる体制整備が喫緊の課題といえよう。
ITP による MS プログラムへの学生派遣:乾燥地の国際研究機関で 1 年間の武者修行!
農学研究科は、より高い専門性と国際通用性を身につけ、国際的に活躍できる人材を養成するため
に、鳥取大学が平成 20 年度から実施している ITP「乾燥地における統合的資源管理のための人材育成」
を活用している。
具体的には、国連大学ほか鳥取大学を含む 5 機関の共同による「乾燥地における統合的管理に関す
る共同修士号プログラム(MSプログラム)
」に参加し、
最長1年間、
海外の国際研究機関(チュニジア、
シリア、中国、イタリア)に滞在して、乾燥地に関する高度かつ広範な学びと乾燥地をフィールドと
した研究を行うものである。
専門性はもちろん、全て英語で行われる講義や研究指導、多国籍の学生との共学によって、豊かな
国際感覚と語学力も磨かれてゆく。MS プログラム修了のためには、研究成果を英語で論文作成、口
頭発表し、厳しい論文審査をパスしなければならない。相当ハードな内容である。これまで農学研
究科では MS プログラムに 14 名(内女性 7 名)が学内選考、MS プログラム国際選考を経て、中国、
シリア、チュニジア、イタリアに派遣された。
文化、習慣、環境の大きく異なる新興国、途上国での長期の研究・生活は、学生を別人のように作
り替えてしまう。専門的な知識・経験に加えて、
そのような場所で研究を行おうとする意欲と行動力は、
異なる環境(宗教、文化、自然)への適応力を高め、骨太なタフで実践力のある人材へと変身させる。
「化ける」という表現が適当である。
農学という分野は、気まぐれな自然や植物を相手にするため、思い通りに進まないことが多々ある。
ましてや、考え方や文化が異なり、勝手の全く異なる海外での研究活動は思い通りに進まないことの
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2012. 12
連続である。学生はどうすれば物事が進むのかを必死で考えることになる。大手のコンサルタント会
社に就職した学生は、最初はネガティブに捉えていたこの経験が、海外での仕事に大いに活かされて
いることを強調していた。
このようなこともあり、参加学生のコミュニケーション能力は非常に高い。研究のために英語を使
うため、TOEIC スコアは 150 ~ 200 点アップするが、点数以上の英語での高いコミュニケーション
能力を有している。また、研究機関の外はローカルな環境であり、フィールドでの調査・研究、日常
の生活では現地の文化や言語の理解が不可欠である。そのため、アラビア語、クルド語、中国語など
現地の言語についても高めていた。学生の真剣に取り組む姿勢は派遣先機関で高く評価されており、
鳥取大学の学生なら受け入れたい、といううれしい言葉を耳にしている。
プログラム参加によって実力と自信を付けた学生は、学部学生の頃、漠然と夢としてとらえていた
方面(例えば JICA 職員、国内最大手の国際開発コンサルタント会社など)に就職しており、自らの
力で夢を実現させ、生き生きとグローバルに活躍している。就職先の企業からは、即戦力として使え
る人材として高く評価されている。
学生派遣にあたって心配材料になる、学生の物心両面でのケア、危機管理において、ITP 推進会議
による全学的支援体制がしっかりと機能していたため、安心して学生を送り出すことができた。例え
ば、2 年前のアラブの春による政変時、チュニジア、シリアに派遣した学生を安全に緊急帰国させる
ことができたのも、この体制があってのものである。
学生の(将来の自分のありたい姿を具体的にイメージできる)意欲と学生を効果的に教育する場と
それを支援する(教職員が一体となった)体制が整うと、学生は見違えるように成長することが実証
されたと思う。鳥取大学が目指しているグローバル人材像の具体的な事例がまさに ITP 参加学生であ
る。まずは、学生の意欲を目覚め、高めさせ、その気にさせることが重要であるが、この点が今後教
職員に求められることではないかと思う。また、ITP を通じてできあがった各国の研究機関との強固
な連携関係、また、全学的な支援体制、学生派遣や危機管理に関する経験とノウハウは、鳥取大学の
グローバル教育推進のための貴重なリソースである。ITP は事業としては本年度で終了するが、これ
らのリソースを活用した継続的な学生の長期派遣教育を望みたい。
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No.35
グローバル化と言語、問題意識
教育センター 准教授
こ
ばやし
まさ
ひろ
小 林 昌 博
学生の皆さんは将来どのような人生を送りたいと考えているでしょうか。学生時代から将来的な展
望を持って日々を過ごすというのは、なかなか難しいことかもしれませんが、10 年後あるいは 15 年
後の自分は、明らかに「現在の自分」の延長上にあることも想像に難くありません。現在、日本は震
災からの復興、長引く不況、国内の諸問題、近隣諸国との摩擦など方向性が見えない閉塞感に苦しん
でいるように見えます。10 年後、15 年後の自分をデザインするのはもちろん皆さん自身ですが、15
年後、20 年後の日本をデザインするのも皆さんなのではないかと思います。
さて、本学は本年度「グローバル人材育成推進事業」に採択され、グローバル・マインドとスキル
を有した人材を輩出することを目指す大学となりました。すでに日本も他国との関わりなしには成り
立たない社会になっていますが、人口と労働力の減少が進んでいる日本では、まさに今後ますます「地
球規模」で物事を考えていく必要がでてくるでしょう。
グローバル社会を生きていくためには、
「たくましさ」と「コミュニケーション力」は必須の能力
と言ってよいと思います。この二つの概念は両方とも広い内容を含んでいますが、ここで「コミュニ
ケーション力」とは、具体的には「言葉」として、
「たくましさ」とは例えば「外国(異文化)への
慣れ(親しみ)」であるとして考えてみます。
◆海外で生活する「たくましさ」
空港カウンターなどでも感じることがありますが、例えば海外に行くと人々の接客態度が日本のそ
れとは大きく違って感じることが多くあります。慣れないうち(知らないうち)は驚いて萎縮してし
まうこともあるかもしれません。さらにこのような体験が積み重なると、異文化に対してネガティブ
なイメージを持ってしまいがちですし、外国に行きたくないと内向きな人間になってしまうこともあ
りえます。ここで大切なことは、海外生活にアレルギー反応を示さない程度に外国(異文化)を知っ
ておく、あるいは慣れておくことです。この例では、
「サービス」という概念が日本と海外では大き
く違うことを認識することで、自分の中のショックを客観視することができます。このように、海外
アレルギーを発症せずに本来集中すべきことに心を傾けることができるようにするためにも文化・習
慣の違いを知って慣れる、つまりたくましさを身に着けることが大事です。
先日、台湾にある銘傳 ( めいでん ) 大学を訪問して大学が提供する英語研修プログラムについて話
をしてきました。参加者を募集して、2013 年 2 月末には英語研修プログラムに学生の皆さんを派遣
する予定です。TOEIC 対策を組み込んだ 4 技能育成プログラムに参加しながら、同年代の外国の学生
さんと交流して刺激を受けるにはいい機会でしょう。台湾の学生さんは、積極的に外国語を学び意識
も外に向いているようです。同じ年代の外国の学生さんと将来について語るときに皆さんは何を思う
でしょうか。
8
2012. 12
銘傳大学・同時通訳トレーニングルーム 銘傳大学・応用英語学科の教室
◆ 「コミュニケーション力」の基礎となる言語
「言葉」とは、人間のコミュニケーションにおける基本的なツールです。特に英語は
「世界の共通言語」
として認識されています。学生の皆さんにとって英語は大学生活で必要なものでもあるので、ここで
簡単にスキルアップに関してアドバイスをしたいと思います。
❖ 読む:
主に大学で英語を読む力が必要な状況は、英語のテキストや論文を読む場合だと思います。テキスト
が読めるようになるためには、簡単な内容で薄いものを 1 冊取り上げて、知らない専門用語をすべて
書き出してとりあえず 1 冊読み終えることです。専門用語を覚えて 1 冊読み込めばそれなりに読める
ようになります。
❖ 聞く・話す: リスニングとスピーキング用のトレーニングは密接に関連しています。基本的な重要構文を数百暗
記すればある程度話せるようになれます。数学の問題を解くにはある程度公式を覚えておかなければ
いけないのと同じ感覚です。数百の構文を覚えるには、どうしても数か月間 CD を聞きながら構文を
音読する必要があり、数百の構文を音読して覚える頃には耳が英語のリズムに慣れているのでリスニ
ングの能力もかなり伸びているはずです。聞き流すタイプの勉強法はすでにハイレベルの人でない限
り、経験上あまり効果はないです。
❖ 書く:
これは、とりあえず書いて先生に添削してもらう練習をするしかないと思います。ゼミのレポート
を英語で書いて先生に添削してもらうことから始めてみてはいかがでしょうか。
結局、大学とは勉強をする(できる)ところです。たくさん勉強しておきましょう。学生の皆さんが
社会に出てから素晴らしい人生、そしてこれからの日本をデザインすることができればと思っていま
す。
9
No.35
Bonjour! Comment allez vous?
(Hello! How are you?)
はた
なか
え
み
医学部 保健学科(’12 入学) 畠 中 恵 美
9月2日、「Bonjour.」の挨拶と共にフランスでの生活が始まりました。大学での初めての夏休み。
読書感想文や受験勉強に追われることなく、今までで一番充実した夏休みを過ごすことができたと思
います。優しいホストマザー、フランス語を一緒に学んだベトナム人やサウジアラビア人、日本語を
学んでいる日本が大好きなフランス人など、様々な人に出会うことができ、この一か月、私は素晴ら
しい経験をすることができました。
私は入学したときから、夏休みに語学研修に参加すると心に決めていました。約二か月もある長い
休みを無駄にしたくなかったからです。私は高校生の時にも語学研修に参加し、New Zealand に行き
ました。二週間という短い期間でしたが、日本にいては分からないことをたくさん学びました。その
ため、大学生になったら必ずまた語学研修に参加しようと決めていました。私は第二外国語として、
フランス語を学んでいます。入学前はスペイン語を選択するつもりでした。スペイン以外にも南米を
はじめ世界で広く使えると思ったからです。しかし医学部の学生はスペイン語を選択することができ
ないと知り、同じく世界で広く使えるフランス語を選択しました。そして大学生活にも慣れてきた頃、
グルノーブル語学研修の張り紙を見つけました。その瞬間、私は「行くしかない」と思いました。私
がフランス語を選択したのは、この語学研修に参加するためで運命だったのだと感じました。そして
9月2日、私は関西国際空港からフランスに向けて飛び立ちました。
フランスでも生活の中心は大学の授業でし
た。しかし、授業は午前8時半から 12 時半
までか、12 時半から4時半までかのどちらか
だったので、空いている時間に街に行ったり
と充実した生活を送ることができました。電
子黒板を使ったり、パソコンで自分のペース
に合わせて勉強したり、授業が楽しくなる工
夫が多かったです。そのため授業中、
静かだっ
たことはありませんでした。日本の授業では
なかなか見られない「積極性」がそこにはあ
りました。クラスメイトの人とは一週間ほど
で仲良くなることができました。「Bonjour! ça va?」と挨拶だけはフランス語で、あとは英語で会話
をしていました。フランス語よりも英語の方が上手になったような気もしました。ようやくフランス
10
2012. 12
語に慣れてきた頃に日本に帰らなければならなかったのが、本当に残念でした。
週末を利用して Paris と Lyon にも行きました。Paris ではメ
トロを使ってルーブル美術館やオルセー美術館、エッフェル塔
と凱旋門を見ました。美食の街と言われる Lyon で食べた料理
は本当に美味しかったです。そこで学んだことは、観光は週末
に行くものではないということです。日本では、週末を利用し
て買い物などに出かけますが、私が行ったのはフランス!日曜
日は休むための日なのです。大きなデパートも街中のお店もほ
とんど閉まっていて、開いているお店を探す方が大変でした。これからヨーロッパに旅行に行くとき
は気を付けようと思いました。
一か月グルノーブルで生活をして、私は街全体が優しいなと思いました。トラムという路面電車で
偶然出会った、日本語を学んでいるフランス人は街中の漫画ショップや洋服店、そして日本人の方が
経営されている「お膳や」というお店を紹介してくれました。まさか、グルノーブルで「バーモント
カレー」を見るとは思っていませんでした。また、レジでお会計をするとき「Bonjour.」そして帰る
ときには「Au revoir.」のやり取りがありましたし、それはバスに乗った時も同じでした。人が優しい
だけでなく、トラムやバスもいいなと感じるところがありました。トラムの乗り場は、車いすの人や
ベビーカーを押している人に乗りやすいよう高さが揃えられてありました。バスでは、運転席のボタ
ン一つでスロープが出てきました。トラムを使えば、街中どこでも行くことができ、どんな人にも暮
らしやすい街だなと思いました。本当はもっと書きたいのですが、用紙に限りがあるので、写真を貼
りたいと思います。グルノーブルで学んだことを忘れず、学んだことを日々の生活に生かしていきた
いと思います。そしていつか、またフランスに行きたいです。
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No.35
My Experience in Canada
み
さわ
かず
き
医学部 生命科学科(’12 入学) 三 澤 和 樹
今年の八月にわたしは、カナダに行ってきました。とてもすてきなところでした。英語を勉強する
ためにカナダへ来たわたしは、平日は大学で勉強し、休日は遠出をし、たくさんの経験をしました。
そのうちのいくつかをご紹介します。ひとつは、あるすてきな朝の話。もうひとつは、乗馬体験をし
たときの話です。
カナダでの滞在の間中、わたしは大学近くの寮の一室で寝泊まりをしていました。三階の芝生の広
場に面する二人部屋でした。ルームメイトは、工学部の中村くんでした。部屋には東の広場に面する
窓が一つあり、そこから目の前には大きな木、そして遠くには大学の建物が見えます。朝食の時間あ
たりになると、気持ちの良いくらいまぶしい光が部屋に入ってくる窓です。ある朝、わたしは宿題を
残していたので、それを終わらせるために、少し早起きをしました。前の晩、早寝のわたしが寝るとき、
部屋にいなかった中村くんは、朝起きてみると隣のベッドでぐっすり寝ていました。それを確認した
後、布団から出て、机に向かったときはちょうど地平線がうすぼんやりとし始めたところで、少し肌
寒いくらいの気温でした。宿題のエッセイがひと段落ついて、机から窓の外を見るとだいぶ外は明る
くなっていました。窓の向こうすぐ近くにある広場の大きな木の枝の葉の緑が光で透けていてきれい
だなと、ぼんやり眺めていると、視界のすみで何か小さなものが枝の上を動いたのです。なんだろう
と思い、じっと目を凝らしているとまたすぐに何かが動きそして止まりました。その正体は一匹のリ
スでした。ただそのリスが枝から枝へ忙しそうに動いているのを見つけただけなのですが、そのとき
の感動はなんとも言葉で表現できないものがありました。まるで、その朝、その時は、自分とそのリ
スだけが起きていてこの時間を共有しているかのような(そんなことはないと思いますが)
、幸せな
時間でした。その後、頑張って一気にエッセイの残りを書きあげたころには、まぶしい朝の光が部屋
に入ってきており、遠くでグースの群れが元気に鳴いているのが聞こえました。心なしか朝ごはんも
いつにも増しておいしかったです。
ある気持ちのいい晴れた休日の午前中に、乗馬体験をしに牧場まで出かけました。牧場では体格の
いいおじさんと元気のいい女性たちが出迎えてくれまし
た。牧場にいる男性は、そのおじさん一人でした。ほかは
全員が女性で、小さい子から大柄なおばさんまでが協力し
て馬やロバの面倒や牧場の案内をしていました。団体で乗
馬体験に来たわたしたちは、人数が多かったので二つのグ
ループに分かれ、天井のない大きめの馬車から牧場のまわ
りの道をゆっくりと見てまわるのと、乗馬とを入れかわり
で体験させてもらいました。馬車は道路をゆっくりと進み、
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2012. 12
乗客たちは広い牧草地から吹く心地よい風を感じることができました。わたしたち乗客は途中、ラン
ニングをしている二人組が馬車とすれ違ったとき、わけもなく手を振りあったり、馬車を追い越して
いく自動車を見ては馬車の遅さを笑ったりしました。乗馬では、馬の頭数が乗る人数とちょうど同じ
で、わたしはひとまわり大きい、馬車や農作業用の馬に乗らせて
もらいました。牧場のおばさんにきくと、わたしの乗った馬は、
マケンジッドという名前のメスの馬で、
「木が好きだから、道の
真ん中を歩かないと、木の枝にぶつかるよ」といわれました。実
際、馬に乗ってみると、たしかに木に向かって行こうとします。
しかし、そもそもマケンジッドは背が高いので、道の真ん中に行
かせても、わたしは枝との格闘になかなか決着をつけられず、苦
戦しました。馬車と乗馬のどちらの体験も終わり、それぞれが自
由に牧場を見学しているとき、わたしはおばさんがちょうどマケ
ンジッドの世話をしているのを見つけ、そちらへ行きました。お
ばさんは、マケンジッドが自分のいちばんお気に入りの馬だとか、
いちばんたくましくて美しいだとかいろいろ話してくれました。
近くで作業をしていた高校生くらいの女の子にも話しかけてみる
と、彼女も自分のお気に入りの馬を教えてくれ、毎日しているよ
うに自然にそして元気に馬に話しかけ、なで、キスをしました。
彼女の顔は幸せそうで、その馬が本当に大好きなのだなと思いました。わたしがその馬をなでようと
したら、手をかまれました。わたしは彼女に「この牧場にいる人たちは、ひとつの家族ですか」とき
いてみました。彼女は「ううん、わたしはすぐそこの家に住んでいて、向こうの家に住んでいる家族
もいる。でもまあひとつの家族みたいなもの。わたしはここが大好き。
」と語ってくれました。この
ときの彼女の言葉がとても印象に残っています。彼女たちの生活がとてもかけがえのないものに感じ
られました。
先にも述べましたが、わたしはこのカナダの生活でた
くさんの経験や体験をしました。それらはどれも新鮮で、
印象に残るもので、カナダの人、文化、自然を肌で感じ
ることができました。おそらく、世界のどこへ行っても、
そのような新鮮な驚きと感動が得られるのだと思いま
す。カナダからの帰り、またどこかへ旅に出たいなと思
いながら、ぼんやり飛行機から雲を見下ろしていました。
この研修を支えてくださったすべての方に感謝してい
ます。ありがとうございます。
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No.35
My Summer Vacation in Boston
はし
ぐち
み
てき
農学部 獣医学科(’11 入学) 橋 口 未 迪
三週間―。ほんの三週間ではありましたが、今年の夏は今までで最も濃い体験が出来た夏だったよ
うに思います。9月1日。私は成田空港へと向かっていました。成田発の飛行機でボストンへと向か
うためです。学生のうちに海外へ出ていろんな人に出会い、多様な考えや文化に触れてみたいという
希望のもと、ボストンで三週間の短期留学プログラムに申し込んだのです。このプログラムは大学生
協が取り扱っているもので、滞在様式としては現地の家庭にホームステイもしくはレジデンスが選
べ、必要に応じて語学学校に参加することもできるというものでした。ボストンはアメリカ独立の先
駆けとなった都市でもあり、また数多くの大学があるためアカデミックかつエネルギッシュな雰囲気
を持った魅力的な都市です。そんな憧れのボストンではありましたが、実際に日本を発つ前は様々な
不安がありました。初めての海外一人旅、初めてのホームステイ、何もかもが非日常となる世界で自
分の拙い英語力でちゃんとやっていけるのか。しかし、ホストファミリーに出迎えられたとき、私の
心の大半を占めていた不安が一気に吹き飛びました。初対面でも人懐っこい子どもたち、親切なホス
トペアレンツ、海外からボストンの大学に学びに来ているルームメイト、みんながとびっきりの笑顔
で私の無事の到着を喜んでくれたのです。ついに私のボストン生活が幕を開けました。平日の午前中
は英語を母国語としない人たちが通うLSIという語学学校で英語のクラスに参加しました。ここで
も日本との違いを実感することとなりました。最も衝撃を受けたのが授業の受け方です。私のクラス
には、韓国やタイなどのアジア出身の生徒もいればチェコやノルウェーなどのヨーロッパ出身の生徒
もいましたが、特にヨーロッパ圏の学生の積極的な発言に驚かされました。日本では学生は静かに先
生の話を聞いてノートを取るというのが一般的な授業形態ですが、LSIでは、先生が説明している
そばから、学生が質問をしたり自分の意見を述べ始めるというのはよくある光景でした。初めはただ
ただ彼らの迫力に圧倒されてしまいましたが、私も自分の意見があったら発信していくよう努めまし
た。しかしそれは決して簡単なことではありませんでした。この質問って変じゃないかなという躊躇
があったり、思いついた意見があっても日本語がすぐに英語にならなかったり、反省の毎日でした。
と同時に「学ぶ」ということの本質が少しわかったような気もしました。自分の知らないことを知り
たいという知的好奇心こそが学ぶという行為の根本にあるもので、それは能動的な行為であるものだ
と。アメリカに行くまで私は本当には学んだことが無かったといえるかもしれません。椅子に座って
話を聞いてノートを取って…、いかに自分が受動的に学んでいたかを痛感させられました。このこと
は日本を出て初めて気づけたことです。これと同じく海外に出てもう一つ強く思ったことがあります。
それは国境を越えて、英語という共通のツールを用いてコミュニケーションをとることの面白さです。
私のホームステイ先には、私も含めて四人の留学生が来ていましたが、台湾、韓国、タイ、日本と
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いうように全員国籍が異なりました。にもかかわらず、英語を用いればコミュニケーションをとるこ
とが出来るのです。英語は国際言語であるから当たり前といってしまえばそれまでですが、私はこの
ことにひどく感動したのを覚えています。私の英語力は十分なものではありませんでしたが、ルーム
メイトたちと遊びに出かけたり、一緒に日本料理を作ったり、お互いの国の言葉を教えあったりとと
ても有意義な時間を過ごすことが出来ました。英語を学んでいなければ一生知り合うことが無かった
出会いを果たせたということ、そしてこれから英語を学んでいけばもっと多くの人と知り合うことが
出来るという無限の可能性。ここに私は英語を学ぶことの醍醐味があると思います。さらに、今回ボ
ストンに行ってみて、考えることと行動することは全くの別物だということも感じました。英語に関
して言えば、頭で考えることと口に出して実際に話してみることの間には大きなギャップがあるとい
うことです。中学から英語の授業が始まったことを考えると何年も英語の学習を続けていることにな
りますが、その学習のほとんどがインプットに費やされており、アウトプットについてはあまり目を
向けていませんでした。そのため、実際に英語を話そうとすると簡単な文でもすぐに言えなかったり、
もどかしい思いをすることが多々ありました。このことを踏まえて、これからはただ知識を増やすだ
けでなく、コミュニケーションとしての英語だということを意識しながら学習していく必要があると
思います。最後に、このような経験をさせてくれた両親にはただただ感謝の気持ちでいっぱいです。
日本を離れることで、海外をふまえての日本、そして自分を見つめる良いきっかけとなりました。今
回の経験を糧に、今後どのように生きていきたいか自分なりのビジョンを確立していけたらと思いま
す。
~ステイ先にて ( 台湾とタイからのルームメイトと ) ~
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No.35
オーストラリアでの三週間
おお
ち
こう
すけ
農学部 獣医学科(’11 入学) 大 智 宏 祐
この夏、私は長期休暇を利用して、オーストラリアで三週間ファームステイをしました。日本で
はあまり知られていませんが、向こうでは Wwoof(ウーフ)という活動が盛んです。Wwoof とは、
Wwoof に登録しているファームに自分で連絡を取り、そこへ行き、労働力を提供する代わりに、ファー
ム側はホストファミリーとして、食事と寝る場所を提供します。このように Wwoof を利用して、働
く人たちのことを Wwoofer と呼び、世界には多くの Wwoofer がいます。オーストラリアは特に
Wwoof が盛んな国なので、実際に私が行った時も何人かの Wwoofer に会いました。
私が行った 80 エーカーのファームは、夫婦二人が営んでいるものでした。動物が多く飼われてい
たので、仕事は動物に関するものがメインでした。毎朝6時半ごろに起床して、7時から軽く朝食を
済ませ、8時前から仕事が始まります。まず、朝のエサやりです。鶏、あひる、牛、馬、羊、山羊、
がちょうが飼われているので、全ての動物にエサをやるのも一苦労です。その後の仕事は、日によっ
て違いますが、例えば、馬や牛のために新しい放牧場を作るため、放牧地に転がっている岩や石を拾い、
柵を立てるといった仕事をした日もあれば、その家では野菜や植物を育てていたので、新しい植物を
植える準備や、草取りや水やりをした日もありました。ステイの初めの一週間は、旅行で不在の隣人
のために、そちらのファームを手伝いました。夕方になると、その仕事を切り上げて、朝と同様に動
物たちにエサをやって一日の仕事が終わります。初めの頃は、ホストファミリーが言っていることが
分からないことが多く、また、自分の言いたいこともなかなか伝えられず、苦労しました。日本にい
た時、英語の授業中に、自分の発音などほとんど気にしていませんでしたが、実際に向こうで話をす
ると、通じないことが多く大変困りました。さらに、日常会話の英語と授業で習う英語の違いを感じ
ました。難しい文法など必要なく、簡単な文で会話は成り立ちます。私は英語の語彙力がないと日本
にいる時から感じていたのですが、実際に会話をする時、それが如実に現れ、困る場面が何度もあり
ました。さらに、オーストラリア人同士の会話になると、会話のスピードが速すぎて、本当に驚きま
した。それでも向こうで出会った人は、親切な人ばかりで、私が話をすると、真剣に耳を傾け、たく
さん質問をしてくれました。会話の最中に知らない言葉が出た時、
「その単語って何?」
「もう一回言っ
て!」と言っても嫌な顔せず、丁寧に話をしてくれました。そのお蔭で、帰国するころには、初めの
頃に比べ、会話も弾むようになり、楽しく話をすることができるようになっていました。
毎日料理の手伝いをしていて、向こうの料理から学ぶこともありました。オーストラリアは移民の
国で歴史も浅く、約 200 年程度です。そのため、彼らの伝統料理といったものはあまりなく、いろ
いろな食文化が混ざっています。晩ご飯はイギリス料理だったり、中華料理だったり、メキシコ料理
だった日もありました。昔はヨーロッパ系の移民が多かったのですが、最近ではアジア圏からの移民
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が多いため、それが食文化にも大きく影響しています。外から入ってくるものを拒絶するのではなく、
快く受け入れる、これが、私の感じたオーストラリアの雰囲気です。オーストラリアは、面積は広大
ですが、人口は 2300 万人と少なく、労働力が足りないため、多くの外国人を受け入れているそうです。
そのためか、外からの人や物に対して、友好的で、実際、私が直接会った人たちも、親切な人ばかり
でした。
オーストラリア滞在中には、日本の豊かさに気付くことも多々ありました。ステイ先の個々の部屋
には暖房器具はなく、休憩の時などは、暖炉のあるリビングでホストファミリーと一緒に過ごしてい
ました。日本のように、24 時間空いているコンビニのようなものは全くなく、日本の生活しか知ら
なかった私は、外国、特に田舎の生活は質素なのだと身を持って知りました。最も驚いたことは、水
です。私が滞在した8月は冬だったので、まだましでしたが、夏になると水不足がオーストラリアで
は深刻になります。雨は降らず、周りの草木は枯れてしまい、気温も 40 度以上になるため、生活す
るだけでも大変だそうです。そのような、厳しい環境の中でもたくさんの動物が生息しています。カ
ンガルー、コアラは日本でも有名ですが、その他にもたくさんの野鳥をみました。野生のカンガルー
は家の周りにはどこにでもいるし、色鮮やかな野鳥たちは、仕事中に何度も見かけました。特に驚い
たのは敷地内を一人で散歩していた時、コアラに出会ったこと!向こうも私に気が付くと、木に登っ
て逃げていきましたが、なかなか会えない野生のコアラを見たときは感動しました。
異文化を体験すると、その文化だけではなく、自分の文化がどのようなものかが見えてくるとよく
耳にしますが、本当にそうなのだと今回のファームステイで学びました。日本とオーストラリアのそ
れぞれの国の様々なことを考えさせられた三週間でした。
今回のファームステイをするにあたり、英語だけでなく、旅行のことなど普段の授業から大変お世
話になっている和田先生、ステイ先を決める際や英会話について指導して下さったシャーリー先生、
ステイ中大変親切にして下さったホストファミリー、本当にお世話になりました。
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No.35
祝・グローバル人材育成推進事業
(平成 24 年~ 28 年度)採択
12 月 13 日、グローバル人材育成推進室の看板上掲式が行われました。
(左から、山本農学部教授、ケイツ地域学部教授、本名理事・副学長(教育担当)、能勢学長、若国際交流センター長)
12 月 12 日、メキシコ海外実践教育プログラムに参加した 18 名の学生が3ヶ月間のメキシコ・ラ
パス市での実習を無事に終えて帰国し、広報センターで帰国報告を行いまし
た。今後は、現地での活動について、学内外で発表会が開催されます。
鳥取大学では、今後もグローバルな舞
台に積極的に挑戦できる人材の育成を図
り、さまざまなフィールドでの教育・研
究支援を行っていきます。
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鳥取大学「人生論」講座に参加して
くぼ
た
え
り
か
地域学部 地域文化学科(’10 入学) 窪 田 恵里花
「人生論」というテーマの教養特別講義が、9月 24 日から9月 27 日までの四日間に開催された。
個性豊かな講師陣が「生き方」というあまりにも広大なテーマについて、自らの経験に重ね合わせ具
体的に、かつ豊かに語った。
株式会社イエローハットの創業者であり、
「日本を美しくする会」相談役の鍵山秀三郎氏は、自ら
が終始一貫して取り組んでいる「掃除」の大切さを語られた。鍵山氏の取り組む「掃除」は、普段私
たちがイメージする「物理的に汚いものを綺麗にする」という意味合いに留まらず、心の土台を築き、
人との縁をつなぐ「掃除道」として深遠な意義を持っていた。取り組む年月の長さと国外にまで繋が
る縁の広がりは、地道な努力の大きな力を感じさせるものであった。受講生からは「掃除なら自分で
も取り組めそう」
「トイレ掃除は後回しにしてしまいがちだけど、
、
やらなくちゃ」などの声が聞かれた。
清水克哉副学長は、人の生きる原動力となる感動と共鳴感を得るには読書が最適だとし、自らの人
生観に大きな影響を与えた山本周五郎の作品を取り上げ、講義を行った。山本周五郎作品から、特に
感銘を受けたれた。とりわけ『ながい坂』の「人間のすることに、むだなものは一つもない」という
ことを強調された。山本周五郎作品を読んだことのある受講生はいなかったようだが、非常に感心す
る部分が多く、これから読んでみたいと思わせる講義であった。
広島大学大学院教授の町田宗鳳氏は、
「自己との和解」をテーマに、近代文明のかたちや、人生周期、
意識構造など広い視点から現在を捉え直し、
「自分の限界を決めず、自分に感謝することで大きな力
を発揮できる」と説いた。ディスカッションでは、受講生からの真剣な問いに、みずからの経歴を明
かしながら丁寧に答えていき、場内はほどよく緊張感とリラックス感のある良い雰囲気に包まれた。
終わりには全員で「ありがとう」と声をだす呼吸法を実践し、町田氏のユニークな講義に多くの受講
生は惹き付けられたようだった。
(平成 24 年度鳥取大学インターンシップ実習生)
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No.35
講演「不安の時代を生き抜く知恵」
講師 鍵山 秀三郎 氏
講義「ヴィクトール・フランクルの人生
観について」
講師 武田 修志 教授
「これからいかに生くべきか」をテーマに、
鳥大生と市民とが机を並べて、ユニーク
な講師陣の話に耳を傾けた。
(会場:共通教育棟 A 20講義室)
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彫刻創作の現場から
《いのちのかたちの章》
いし
たに
こう
じ
地域学部附属芸術文化センター 教授 石 谷 孝 二
学生時代に「彫刻」と出会い、今日まで創作活動を継続してきたのは「かたち」をとおして生きい
きした本質的な何ものかを生み出す可能性があることを実感しているからです。
試行錯誤しながら固まりや空間によって自分自身の思考を具現化していく充実感は得がたいもので
す。それは同時に触覚的な感性の喜びであり、丸ごと捉える手ごたえでもあります。
彫刻を意識した当初から、単なる人体の再現描写に留まった彫刻ではなく、人形(ひとがた)を通
して「いのち」の形を模索している作品に強く引かれました。私は人体を再構成した実験的な作品を
試み、その過程の中で独自な造形の発想法を取り入れて、
「見立て」と名づけました。
「見立て」は創
造への呼び水となり、私の造形世界を広げてくれました。
やがて作品の主題は自然の生命的構造へと向かい、その範囲は人体を超えて広がっていきました。
樹木や鳥や月そして湖や山や砂丘も主役として現れています。それらの彫刻化の試みは同時に時代を
超えた「いのちのかたち」の模索でもあります。
森羅万象の根源的なフォルムを抽出し、素材の特性と造形の意図とが融合した普遍的で生命感ある
造形を今後も目指したいと思います。
「森の譜」 木彫 H110cm (1994 年 ) 「樹下美人」 木彫 H120cm (1995 年 )
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No.35
MEMO
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平成 24 年度 教育センター 職員構成
センター長 本 名 俊 正
センター専任教員
教 授 教 授 教 授 教 授 教 授 教 授 教 授 准教授 准教授 准教授 筏 津 成 一
田 畑 博 敏
福 元 和 行
福 安 勝 則
武 田 修 志
サージャント・トレバー
橋 本 隆 司
後 藤 和 雄
松 本 雅 弘
井 上 順 子
[アゴラ]
(agora、アゴラ)とはギリシア
語で「人の集まり」「人の集まる場所」
「広場」
「市場」を意味します。この大学
教育センター広報誌には、全学の学生
に共通に関わること(=一般教育・教
養教育)の広場となることを願って、
「アゴラ」という名称が採られました。
准教授 准教授 准教授 准教授 准教授 准教授 准教授 准教授 准教授 助 教 和 田 綾 子
永 松 利 文
桐 山 聰
武 田 元 有
上 野 耕 平
小 林 昌 博
小 林 勝 年
大 谷 直 史
柿 内 真 紀
リーン・シャーリー
平成 24 年 12 月 No.35 発行 鳥取大学教育センター
〒680-8550 鳥取市湖山町南 4 丁目 101 番地
TEL 0857-31-5795(学生部教育支援課)
FAX 0857-31-6762
E-mail [email protected]
http://www.uec.tottori-u.ac.jp/index.html