立命館大学・アルバータ大学共同によるゲームスタディー ズ国際

年次活動報告書 2013
立命館大学・アルバータ大学共同によるゲームスタディー
ズ国際カンファレンス
立命館大学ゲーム研究センター
センター長
上村
雅之
顔写真
1.目的、趣旨
欧米では、技術・産業・文化・シミュレーションなど
様々な視点からデジタルゲームに関する研究が展開して
おり、デジタルゲーム学会(DiGRA)
、国際ゲーム&シ
ミュレーション学会(ISAGA)などの国際学会なども設
立され国を超えた研究交流が活発に行われている。さら
に産学連携を主眼とした情報交流の場として「ゲームデ
ベロッパーズカンファレンス」が開催されており、デジ
タルゲームに関わる研究者・デザイナー・企業などの国
際的なネットワークが急速に広がりつつある。さらに、
デジタルゲームのローカリゼーションや、デジタルゲー
ム保存、リハビリテーションやエイジングとデジタルゲ
ームなどのように、国際的・学際的な視野が必要となる
デジタルゲーム研究は、増加の一途を辿っている。
このような中で、日本国内においては、2007 年に東京
大学において同学会主催の国際カンファレンスが、2012
年には Gameon Asia が立命館大学で開催されてはいる
ものの、デジタルゲームを研究対象とした研究者間の国
際交流は限られている。また欧米の研究者からは、日本
のゲーム産業が世界的に影響を与えているにも関わらず、
言語的な壁もあって日本国内におけるデジタルゲーム研
究の現状を知る手段が少なく、また日本のゲーム開発者
とのネットワーク構築にも困難を感じているという指摘
がなされてきた。
このような背景から申請者らは、国内外のデジタルゲ
ームに関する研究者・開発者が一同に集まり、それそれ
ぞれの知見を共有するとともに、国際ネットワークの拡
大を進めるきっかけを日本国内に生み出すことで、日本
のデジタルゲーム研究の更なる可能性を追求することを
目指して、
「国際日本ゲームスタディーズカンファレンス
2013」を開催した。
2.国際日本ゲームスタディーズカンファレンス2013
申請者らは、本財団の支援を受け、2013 年5 月24 日
~26日の3日間にわたり、
立命館大学衣笠キャンパス
(京
都市)創思館カンファレンスホールにおいて、デジタル
ゲーム、とりわけ日本のゲームをテーマとした国際カン
ファレンス「国際日本ゲームスタディーズカンファレン
ス(Japan Game Study Conference 2013)
」を開催した。
(1) カンファレンス企画・運営: 本カンファレンスの特
徴の1つは、その募集に当たって、日本語で呼びかけ日
本語で査読を行う日本側の窓口(立命館大学ゲーム研究
センター)と、主として英語圏を対象に募集と査読を担
当する窓口を置いたことである。英語圏の窓口は、カナ
ダのアルバータ大学高円宮日本センター(Prince
Takamado Japan Center)
、および同大学コンピューテ
ィング・イン・アート研究所(Canadian Institute for
Research Computing in the Arts, University of Alberta)
が担当した。査読で受理された日本語での投稿者に対し
ては、査読終了後に発表要旨の英訳をお願いした。さら
に提出された英訳は、アルバータ大学の学生ボランティ
ア(日英バイリンガル話者)が日本語の元原稿を元に英
文チェックを行った。最終的にチェックされた発表資料
は、カンファレンス当日に製本された冊子として参加者
に配布された。
このような手順で募集、査読、資料作成を行ったこと
で、日本語を母語とする研究者・技術者、英語を母語と
する研究者の参加に対する敷居を下げることができ、か
つ国際カンファレンスとしてクオリティの高い英文発表
資料集を作成することができたと考えている。
本カンファレンスでの日本からの発表・講演は計18件、
海外
(主にカナダと米国)
からの発表は計12件であった。
3日間の参加者計はのべで約50 名であった。
(2) カンファンレンスの概要: 以下に、3日間に渡って
行われた本カンファレンスの主なプログラムと概要を示
す。なおカンファレンス当日は日英同時通訳者を雇用し、
発表および質疑応答の通訳サービスを提供した。
第1 日(2013 年5 月24 日)
オープニングセッション
立命館大学ゲーム研究センター・稲葉光行氏による開
会挨拶の後、上村センター長によるオープニングリマ
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年次活動報告書 2013
命館大学ゲーム研究センターの細井教授の司会のもと、
ゲーム研究の基盤としてのアーケードとゲームアーカ
イブの可能性についての議論が行われた。
セッション6:ゲーム開発とローカライゼーション
特定のゲームを取り上げ、それぞれのゲームに関する
言語や文化の次元でのローカライゼーションに関わる
研究発表と議論が行われた。
第3 日(2013 年5 月26 日)
セッション7:日本のゲーム文化
ビジュアル・ノベル、日本のゲーム音楽、日本のイン
ディーゲーム、日本的なゲーム制作など、日本のゲー
ム文化に関わる4件の発表と議論が行われた。
クロージングディスカッション
パネルディスカッションの形で、上村センター長、吉
田事務局長、およびGeoffrey Rockwell 教授が登壇し、
日本ゲーム研究のコミュニティ形成の必要性と今後の
展望に関する議論が行われた。
ークが行われた。上村センター長は、文化現象として
の遊びを解明する緒としてのゲーム研究の重要性を指
摘した。
セッション1:シリアスゲームと社会
カードゲーム教材が協力行動意図にもたらす効果、協
働作業とロールプレイングゲーム、行政機関における
ドキュメントアーカイブとしてのゲーム保存、などに
関する3件の発表と議論が行われた。
招待講演
『ゼビウス』の生みの親である遠藤雅伸氏による招待
講演
『日本ゲームの特異性に関するいくつかのヒント』
が行われた。遠藤氏は日本文化の視点から、日本のゲ
ームプレイヤー/デザイナーの特性や、日本型ゲーミ
フィケーションについて議論した。
セッション2:ゲームデザイン
ゲームのストーリー性の評価、ゲームプレイにおける
創造性、インタラクティブ・ナラティブとゲームメカ
ニズム、ゲームデザインの評価、などに関する5件の
発表と議論が行われた。
またカンファンレンス開催中の3日間を通じて、会場
と同じ建物の別室において、
「スーパーマリオ・エクスペ
リエンス」と題したイベントを開催した。このイベント
には約50名程度の参加者ほぼ全員が訪れた。参加者は
3種類のコンソールゲームをプレイしながら、ゲームの
技やゲームデザインについて意見交換を行った。
これらのセッションに加えて、カンファレンス第1日
の夕方にウェルカムレセプション、第2日の終了後にバ
ンケットを開催した。また、各セッションの間にはコー
ヒーブレークの時間を設定した。これらの時間で、発表
者、および一般のゲーム研究者や開発者、ライターなど
の間で、日本ゲーム研究に関する国際的な情報交換が行
われた。
第2 日(2013 年5 月25 日)
セッション3:アジアゲームと産業
東アジア各国(中国、韓国、日本)のゲームコンテン
ツ、ゲームのインフラ、ゲーム産業などに関する事例
紹介、国別比較研究、およびゲーム産業の動向に関す
る4件の発表と議論が行われた。
セッション4:教育とシリアスゲーム
初等教育におけるゲーム制作の授業、教師のメンタリ
ング教育のためのゲーム、仮想空間におけるネットワ
ークを用いた文化学習、などのテーマに関する3件の
研究発表と議論が行われた。
セッション5:
(パネル)アーケードと保存
ゲームセンターとアーケードゲーム、ゲーム産業のパ
チンコへの影響、エミュレーション、ゲームアーカイ
ブなどに関する4件の発表が行われた。発表後に、立
3.カンファレンスの成果発信
本カンファレンスの成果は、以下の Web ページで発
信・公開されている。前述した通り、日英バイリンガル
話者がチェックした英文も含めて、すべての英文発表要
旨も公開されている。
・カンファレンス公式ページ http://mcaf.ee/asuqh
・英文発表要旨
http://mcaf.ee/piv37
また、カンファレンス当日に参加したライターや発表者
自身によって、以下のWeb ページでカンファレンスが紹
介されている。
・ビジネスファミ通BLOG
http://mcaf.ee/g96cal
・ゲームズパーク
http://mcaf.ee/aheik
・Grand
http://mcaf.ee/tubim
・Technoculture, Art & Games http://mcaf.ee/0uikv
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