プロジェクト名 島嶼など隔絶地域対応の小型、低 DXNs医療廃棄物処理炉

プロジェクト名
研究背景
研究目的
及び目標
島嶼など隔絶地域対応の小型、低 DXNs医療廃棄物処理炉の開発
(研究背景)
沖縄県の離島など、人口過疎地域(広域化困難な地域)では安全で低価格の小型医療
廃棄物処理炉(小型焼却炉:処理量 200kg/H 未満、ダイオキシン類(DXNs)の発生
量 5ng-TEQ/Nm3 以下)は不可欠な施設である。
焼却法について概観すると、大都市向け大型施設では各種方式が商業化され稼働中で
ある。しかし、小型焼却炉分野は大手メーカーが参入しにくいため、中小規模のプラン
トメーカーがばらばらに独自の方式で設計製作しているのが現状である。
本コンソーシアムの主力メンバーである㈱開邦工業は沖縄に本拠を置く中堅プラン
トメーカーで、小型焼却炉の燃焼改善に関し琉球大学と共同研究を行っている。共同研
究の結果、主燃焼室と大きな再燃焼室を有する焼却炉構造を考え、両室の燃焼状態を適
正に管理することで、ダイオキシン類の飛躍的削減効果が確認されている。このシーズ
を更に発展させて、燃焼管理のみによる小型医療廃棄物焼却炉のダイオキシン類と煤塵
を削減する基盤技術の構築と、その技術を応用した製品の実用化が求められている。
(研究目的及び目標)
本コンソーシアムではこれらの燃焼改善に関して以下のテーマを研究目的として、共
同研究開発を実施した。
処理量 200kg/H 未満の小型医療廃棄物焼却炉について
①排ガス目標値(DXNs:0.5ng-TEQ/Nm3 以下、煤塵:0.1g/Nm3 以下)の確認
②燃焼パラメター(火炎速度、雰囲気、温度など)の把握
③燃焼条件とダイオキシン類、NOX、CO の発生状況の確認
④燃焼の理論解析及びシミュレーションによる確性
⑤システム統合によるプラント効率向上策の検討
⑥以上の結果をもとに事業化を目標として小型医療廃棄物焼却炉の実機設計
成果概要
本研究開発により、次の様な成果を得ることができた。
(1)平成14年度
既存の小型ゴミ焼却炉(焼却能力 50kg/H)を改造し確性試験を実施、さらに数値シ
ミュレーションによる燃焼解析及びプラント効率向上策を検討した。
①通常の医療廃棄物を模擬した試料では DXNsは目標値(0.5ng-TQE/Nm3)を達
成出来るが、注射針、筒、チューブ等を模したプラスチック 100%(うち塩ビ 5%)
の廃棄物では目標値達成は困難で、排気塔内での DXNs再合成抑制対策が必要。
②排ガス中の DXNsは投入塩素量と密接な関係がある。
③CO、NOX、SOX の発生はいずれも低く問題ない。
④サイクロンで集塵された煤塵は微量であり、サイクロンは撤去出来る。
⑤燃焼数値シミュレーション解析では実際現象を的確に記述出来る事が判明、今後の
解析と実機設計に有効な手段である。
⑥システム統合化に小型ガスタービンを組込むプラント効率向上の可能性がある。
上記結果をもとに、平成15年度試験炉改造計画および実機設計のための設計諸元
を設定した。
(2)平成15年度
試験炉に以下の改造を加えて最終性能確認試験を実施。さらに今年度改造に合わせ燃
焼数値シミュレーション解析とシステム統合化の再検討、及び実機設計を行った。
1
改造項目
①排ガス急冷化による DXNs 再合成抑制のための排気塔とブロワーの設置
②再燃焼室での完全燃焼を促進するためのバーナー空気量の増加
③主燃焼室で廃棄物密閉容器を熱分解させるためロストルの撤去
④廃棄物投入時の安全確保のために炉内外を遮断する二重扉式投入口の設置
改造後試験炉全体図
1
14
制御盤
13
エゼクタ送風機
12
二次燃焼 バーナー№2
B‑3
1
11
二次燃焼 バーナー№1
B‑2
1
10
主燃焼バーナー
B‑1
1
壁掛型
1
09
08
07
SGP
1
SS400
1
06
燃料配管部分組立
05
頂部排気管部分組立
04
排ガス冷却装置部分組立 SGP
03
投入装置部分組立
SS400
1
02
副燃焼室部分組立
SS400
1
ケーシング+耐火材
01
主燃焼室部分組立
SS400
1
ケーシング+耐火材
図番
部
品
名
材
1
質 素
材
仕
1.型 式 名 称
10
12
13
数量 重量
備
高熱量1型
医療 系廃棄物
医療系廃棄物
考
高熱量2型
医療系廃棄物
max 15 kg/H
max 30 kg/H
max60 kg/H
4.焼却室容積
0.63 m3
1.4 m3
3.1 m3
5.二次燃焼室容積
1.8 m3
4.6 m3
9.2 m3
6.炉床面積
0.45 m2
0.90 m2
1.80 m2
3.処 理 能 力
05
法
様
高熱 量0型
2.焼却対象物
寸
ケーシング+耐火材
11
04
02
14
03
06
01
COP開発炉
納先
製図
設計
検図
M.Y
M.Y
Y.N
尺
承
認
第 3 角 法
度 1/20
A 2
入
09‑18
庫
株式会社
標準 図
番
号
小型医療廃棄物焼却炉
開 邦 工 業 出図
図面
番号
15‑09‑20
医廃‑15‑02‑003‑01
確性試験結果
平成15年6月と8月に実施した確性試験の結果を下表に示す。塩ビ5%を含むプラ
スチック 100%の模擬医療廃棄物の DXNs(測定値 1.6)では目標値を超えたが、いず
れも基準値はクリアーしており、小型焼却炉の基準を満たしている。
排ガス中の煤塵濃度は目標値以下であり、サイクロンは不要であることを示してい
る。一方燃え殻中の DXNs は試験終了後の燃焼がまだ十分でなかったため基準値を超
えているが、焼却作業後の燃焼管理(燃え殻が白色になるまで燃焼持続)により基準値
はクリアー出来ると考えている。炉内燃焼ガスの滞留時間は今回の確性試験では約2秒
であったが、実機では再燃焼室容積の設定と燃焼管理で2.5秒を確保する設計である。
排ガス中 DXNsと媒塵及び燃え殻中 DXNsの基準値との比較
項
目
目標値
基準値
測 定 値
5
排ガス中 DXNs(ng-TEQ/Nm3)
0.5 以下
0.087〜1.6
3
0.1
排ガス中媒塵濃度(g/Nm )
0.1 以下
0.011〜0.034
3
27
燃え殻中 DXNs(ng-TEQ/g)
−
シミュレーション解析及びシステム統合化
今回開発できた燃焼数値シミュレーションは試験炉の燃焼状況を的確に表現でき、今
後の実機の設計あるいは性能評価に十分応用可能なシステムであることが確認出来た。
また実機焼却炉のエネルギー効率向上のためのシステム統合化として再燃バーナーの
代替に小型ガスタービン使用が可能と結論でき、従来に無い独創的で競争力のある商品
開発の可能性が提示出来た。
2
実機設計
平成14年度、15年度の研究開発成果をもとに、処理能力 200 kg/H 未満の小型医
療廃棄物焼却炉の実機設計を行った。設計した焼却炉は小規模病院、都市郊外や僻地に
ある老人福祉・保険施設等への導入を想定し、そこで廃出される感染性医療廃棄物及び
産廃分類の紙おむつ等の施設内処理を目的とする、簡易型の医療廃棄物焼却処理炉であ
る。廃出される多種多様な廃棄物に対応するため下表の様に発熱量と発生量に応じて機
種のシリーズ化を図り、ユーザーニーズに的確に答えられる商品展開とした。
廃棄物低位発熱量
高熱量型
低熱量型
今後の展望
構成、内容等
処理量 シリーズ名称
注射針・筒・チューブ等
15kg/hr
高0型
7,500
(プラスチック密閉容器入り)
30kg/hr
高1型
kcal/kg 検体、血液等(赤ビニール袋入り) 60kg/hr
高2型
その他
ガーゼ・包帯等
45kg/hr
低0型
2,500
紙おむつ等(産廃分類)
90kg/hr
低1型
kcal/kg
180kg/hr
低2型
市場展開
本研究により、前述の様な研究成果を得ることができた。今後、以下により市場展開
を図り事業化を進める。
①対象市場:沖縄県内の離島や都市近郊の小規模病院、老人福祉施設を当面の対象と
し、体制が整い次第、全国に広げる。
②コスト低減:シリーズの共通部品化・ユニット化等による製造方式、製品輸送方式、
現地での設置工事の簡易化等によるトータルコスト低減。
③販売体制:代理店網の整備、メンテナンス・サービス要員の教育・育成、定期的ダ
イオキシン測定込みの販売。
④可搬式焼却炉の開発:バリエーションの一つとして、廃棄物発生場所に移動、その
場処理が出来るような可搬可能な車載式焼却炉の開発。
なお、事業化に於いても(株)開邦工業が主体となり、本コンソーシアムメンバー
は協力体制を維持する。
研究体制
研究組織及び管理体制
管理法人
再委託先
スリーアールシステムズ(株)
代表取締役社長
矢﨑
(株)開邦工業
陽一
PL 玉寄英一(開邦工業)
SPL 肥田行博(日鐵テクノリサーチ)
アドバイザー
新岡 嵩
(東北大学流体科学研究所教授)
直井 久
(株)日鐵テクノリサーチ
琉球大学
沖縄県工業技術センター
独立行政法人産業技術総合研究所
(法政大学工学部機械工学科教授)
連絡窓口
東京都千代田区有楽町 1-10-1 有楽町ビル7階
スリーアールシステムズ株式会社
代表取締役社長 矢﨑 陽一 yazaki @3r-systems.co.jp
3
TEL 03-3214-3636