臨床病理学 - 日本獣医がん学会

2014/7/5
第11回日本獣医がん学会(東京) 2014. 7. 5.
総合教育講演 A-1
症例から採取した検体に臨床検査を行い、異常を検出する
臨床病理学
(日本獣医がん学会 獣医腫瘍科認定医Ⅱ種講習会対応)
伊藤 哲郎
腫瘍症例においては腫瘍の検出、腫瘍随伴症候群の検出
、全身状態の評価が重要項目
2
本講演の内容
日本獣医がん学会 監修 「獣医腫瘍学テキスト」に準拠
- 各論 - 総論 腫瘍随伴症候群
血液検査(CBC)
ー 白血球系、赤血球系、血小板、血漿
腫瘍溶解症候群
成分
化学療法に関連した臨床病
血液凝固系検査
理学的変化
骨髄検査
血液 / 骨髄の腫瘍
血液化学検査(Blood chemistry)
ー 白血病
ー
ー
ー
血液化学スクリーニング検査
蛋白
肝臓、腎臓
内分泌系(副腎、甲状腺、上皮小体)
検査結果を適切に解釈し、以下の項目を明らかにする
1. 客観的根拠に基づいた診断
2. 病態の把握、進行度決定
3. 治療の効果判定、予後判定
適切な検体採取法、取扱い法、検査精度を明らかにして検
査の選定に論理的基盤を与える
麻布大学附属動物病院 小動物臨床研究室
一般内科 診療担当
ー
臨床病理学 Clinical pathology
ー 急性骨髄性白血病(AML)
ー 急性リンパ芽球性白血病 (ALL)
ー 慢性リンパ性白血病 (CLL)
尿検査
貯留液の検査
Complete blood count : CBC
全血球計算
CBCの検査項目
RBC
Plat
PCV
WBC
Band-N
Hb
Seg-N
MCV
Lym
MCH
Mon
MCHC
Eos
TP
Bas
II* *icterus index:黄疸指数
赤血球系、白血球系、血小板、
血漿成分の情報を含む
常に一定の方法で、一定の範
囲について検査
リンパ球数 >1,000,000/µLのHct管
3
CBC 白血球系の評価
症例
一般スクリーニング
12歳 キャバリア
主訴:発熱 元気消失 食欲廃絶 下痢
炎症の検出、分類
杆状核好中球(Band-N)の増加
ー
ー
> 300 µL 化膿性炎症の存在
Seg-Nが正常-低値の場合は< 300 µLでも炎症の存在を考慮
Mon の増加
ー
単球性または慢性炎症、壊死・ストレスでも増加
Eos の増加
ー
4
アレルギー性炎症、ただし特異的所見では無い
壊死の検出
Mon の増加
ストレス/グルココルチコイドの影響
WBC (/μl)
36,590
Band-N
1,401
Seg-N
31,169
RBC (×103/μl) 3,590
Hb (g/dl) 8.3
PCV (%)
24.9
Lym
2370
MCV (fl) 69.4
Mon
1530
MCHC (g/dl) 33.3
Eos
100
Plat (×103/μl)
146
Bas
20
TP (g/dL)
6.9
リンパ球数(Lym) < 1,500 µL、一般にEos は減少
犬では軽度のSeg-N、Mon増加を伴うことが多い
5
6
1
2014/7/5
CBC 白血球系の評価
症例:キャバリア 主訴:発熱 元気消失 食欲廃絶 下痢
好中球増加症
心臓超音波検査、血液培養検査
細菌性炎症
僧帽弁前尖に
羽毛状の可動性集塊付着
好中球の中毒性変化 重度感染症、中毒、炎症、悪液質、尿毒症などで出現
- 中毒性顆粒
濃紫ー赤紫の微細細胞質顆粒
粘液多糖体の遺残物
- Döhle小体 (矢頭)
細胞質辺縁にみられる青い封入体
リボゾーム内のRNAが染色されたもの
他に細胞質の空胞など
血液培養検査
1時間の時間差で別部位の静脈から血液採取、培養
2検体とも Staphylococcus intermedius を検出
非細菌性(免疫介在性)炎症
貧血に対する反応 (赤芽球系増殖のためのGM-CSFに対する反応)
ストレス/ステロイド
7
興奮(エピネフリン)
診断:細菌性心内膜炎(修正Duke診断基準の確定項目を満たす)8
CBC 白血球系の評価
CBC 白血球系の評価
腫瘍に関連した好中球増加症
好中球減少症
術前CBC
WBC (/μl)
腫瘍産生性G-CSF様物質
112,000
Band-N
Seg-N
450
105,620
造血系腫瘍による骨髄機能障害
WBC (/μL)
Band-N
摘出組織病理診断
肺乳頭状腺癌
症例提供:信田卓男 先生
ー
Seg-N
術後正常化
Lym
他に膀胱腫瘍、腎臓癌、転移性線維肉腫 等でも発生
Mono
リンパ腫 (IL異常の可能性)
初診時CBC
WBC (/μl)
症例提供:久末正晴 先生
148,910
Band-N
44,673
Seg-N
104,237
腹水沈渣塗抹
9
末梢血塗抹
症例:慢性リンパ性白血病(CLL)
133,280
60
2,950
128,250
RBC (×106/μl)
4.29
PCV (%)
27.9
PLT (×103/μl)
90
TP (g/dL)
7.4
1,730
Eos
80
Baso
210
重篤な細菌感染
10
抗がん剤による骨髄抑制(< 2,500/µLで要注意)
CBC 白血球系の評価
CBC 白血球系の評価
リンパ球数の変化
好酸球増加症
リンパ球数の減少
一般的な好酸球増加症の原因疾患
ーⅠ型アレルギー、猫のアレルギー性皮膚疾患
ー
ー 好酸球増多症候群:HES
ー
ストレス、クッシング症候群の一部
リンパ球系腫瘍の一部
好酸球性胃炎、好酸球増加を伴う肺浸潤、好酸球性筋炎
リンパ球数の増加
ー
腫瘍に関連した好酸球増加
肥満細胞腫
T細胞性リンパ腫
卵巣・骨・漿膜の腫瘍
ー
免疫刺激
著しい増加はリンパ球系腫瘍を疑う
リンパ腫 stageⅤ
急性リンパ芽球性白血病(ALL)
慢性リンパ性白血病(CLL)
リンパ腫 stageⅤの末梢血塗抹
11
12
2
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CBC 白血球系の評価
CBC 赤血球系の評価
異常細胞の出現
赤血球増加症
核小体を持つ白血球
末梢血に認められた核小体を持つ白血球
急性白血病(急性骨髄性白血病、ALL)
リンパ腫 stageⅤ を疑う
検査所見:PCV、赤血球数(RBC)、ヘモグロビン濃度(
Hb)の増加
鑑別疾患
ー
ー
肥満細胞
ー
猫では主に内臓型肥満細胞腫に出現
Piviani M, et al. Significance of mastcytemia in cats. Vet Clin Pathol. 2013;42(1):4-10.
ー
相対的増加症:脱水、出血性胃腸炎
二次性多血症:心疾患、呼吸器疾患
腎臓腫瘍 → 腫瘤の圧迫に伴う腎臓組織低酸素、EPO↑
腫瘍のEPO産生
犬ではMCT以外の疾患でも出現
非再生性貧血における赤芽球
高グロブリン血症時の形質細胞
ー
真性多血症(Polycytemia vera: PV) = 慢性骨髄増殖性疾患
13
CBC 赤血球系の評価
14
CBC 赤血球系の評価
貧血
再生性貧血と非再生性貧血の鑑別
一定量の血液における酸素運搬物質減少
検査所見:PCV、RBC、Hbの低下
再生性貧血と非再生性貧血
網赤血球の絶対数
⇒治療法、予後が全く異なる
ー 再生性貧血
赤血球の喪失(=出血)または破壊(=溶血)を原因
とし通常は骨髄造血機能には異常がない
ー 非再生性貧血
造血因子(鉄、トランスフェリン、EPO)の不足、枯渇
上記が除外されれば骨髄での造血機能障害が原因
再生性貧血
動物種
犬
猫
なし
<60,000
<15,000
再生の程度
軽度
150,000
50,000
中等度
300,000
100,000
高度
>500,000
>200,000
網赤血球生産指数(RPI)
網状赤血球(%)×PCV
RPI =
(犬) RPI>2であれば再生性貧血
(猫) RPI >1であれば再生性と考える
45* * 猫では 37
{ (45 *– PCV)×0.05 ※} + 1
※
猫では 0.07
15
CBC 赤血球系の評価
CBC 赤血球系の評価
再生性貧血
再生性貧血と非再生性貧血の鑑別 MCV、MCHC
平均赤血球容積 MCV:mean corpuscular volume
① 出血を除外する
(体表、口腔、便、尿、腹腔・胸腔 ... )
⇒ 末梢血で再生が確認できるのは出血が始まってから48~72時間後
MCV = { PCV (%) / RBC (106/μl) } ×10 ( f l )
平均赤血球ヘモグロビン濃度 MCHC:mean corpuscular
hemoglobin concentration
MCHC = { Hb (g/dl) / PCV (%) } ×100 (%)
MCHC
MCV
正色素性
低色素性
大球性
正球性
成熟障害
一般的な
• FeLV、腫瘍関連
(VitB12、葉酸欠乏)
② 出血が除外されたら一般的には溶血性貧血
ー
小球性
ー
自己免疫性溶血(原発性)
続発性自己免疫性溶血 腫瘍性疾患(リンパ腫、白血病など)
薬剤誘発性(セフェム系抗生剤、ST合剤など)
ー
非再生性貧血
ー
鉄欠乏性貧血
再生性貧血全般
16
•
•
ー
慢性出血
重篤な肝障害
(PSSなど)
ー
ー
17
感染症 犬:バベシア、猫:ヘモプラズマ
ネギ、アセトアミノフェン、亜鉛などによる酸化的障害 ハインツ小体の形成
微小血管障害性溶血 DIC、血管肉腫、フィラリア症のVCS
低リン血症 ⇒糖尿病性ケトアシドーシスの治療中
先天性酵素欠損、肝疾患によるRBC膜の脆弱化
18
3
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CBC 赤血球系の評価
CBC 赤血球系の評価
再生性貧血
非再生性貧血
溶血の鑑別における赤血球形態
• 腎性貧血 – EPO産生の減少
• 甲状腺機能低下症
• 慢性炎症に伴う貧血 anamia of chronic disease: ACD
球状RBC
ー
直径が小さく、セントラルペーラーが存在しない
(抗体に覆われたRBCの一部をマクロファージが貪食して形成)
30~50%の出現はIMHAに特徴的
犬のIMHA症例の89~95%に出現
ー
ー
軽度の小球-正球性正色素性貧血、多くの腫瘍で生じる
炎症に関連した酸化障害による鉄代謝障害および赤芽球成熟障害
• 鉄欠乏性貧血 iron deficiency anemia: IDA
ー
ー
その他
-
ー
犬:バベシア 通常はBabesia canis 感染、西日本、九州に多い
猫:ヘモプラズマ Mycoplasma haemofelis 感染、犬では脾臓摘出または免疫抑制状態時のみ
酸化的障害 ハインツ小体 犬ではネギ中毒、猫ではアセトアミノフェン中毒、まれに亜鉛中毒など
小球性低色素性貧血
消化管持続出血に起因、まれに鉄吸収または摂取不足
腫瘍:リンパ腫、肥満細胞腫、腺癌、播種性組織球肉腫など
• セルトリー細胞腫によるエストロジェン中毒
ー
骨髄低形成により血球3系統が減少(汎血球減少)
RBCの弾力性減少による物理的溶血、免疫学的溶血、ニューメチレンブルーで染色される
上記が除外されれば骨髄での造血機能障害が原因 = 骨髄検査の適応
←エキセントロサイト
(ヘルメット cell)
-
ー
細血管障害性溶血 破砕RBC DIC、フィラリア症のVCS
19
ー
CBC 赤血球系の評価
測定項目
血清鉄(Fe) 、不飽和鉄結合能(UIBC)
血小板減少症
TIBC(総鉄結合能)
30%
UIBC
Fe
Fe
UIBC
UIBC
Fe
骨髄での産生低下
ー
消費・破壊の亢進
ー
分布異常
70%
腫瘍の大量出血、免疫介在性血小板減少症(IMT)
脾腫、高体温、門脈圧亢進
非再生性貧血の原因によるFe、UIBC、TIBCの変化
UIBC
ー
腫瘍性骨髄癆、MDS、感染症、中毒、化学療法
Tf-sat(トランスフェリン飽和度)= Fe / TIBC
Fe 30%
20
CBC 血小板の評価
非再生性貧血の鑑別におけるFe、TIBC
Fe
造血障害: NRIMA、PRCA、AA、MDS、骨髄線維症など
腫瘍性骨髄癆: 急性 & 慢性白血病、転移性骨髄腫瘍
血小板増加症
70% 正常
ー
鉄欠乏性貧血 Fe↓
ー
慢性炎症による貧血 主にTIBC↓
UIBC
骨髄での造血障害 Feが利用されない
ー
急性出血に対する反応
脾臓悪性腫瘍による脾機能低下
骨髄増殖性疾患
22
巨核芽球性白血病(AML M7)、本態性血小板血症(ET)
21
血液凝固機構の概略
CBC 血漿成分の評価
黄疸指数 肝前性、肝性、肝後性
高脂血症 生理的、犬種特異的、内分泌疾患、代謝性疾患、肝疾患
溶血 免疫介在性(原発、二次性)、感染症、中毒物質による酸化障害、
微小血管障害、低リン血症
高タンパク血症
脱水、炎症(ポリクローナルガンモパシー)、リン
パ球系腫瘍(モノクローナルガンモパシー)
血管内皮損傷
コラーゲン露出
Ⅻ
血小板粘着
一次止血
組織損傷
組織因子+Ⅶa
Ⅻa
Ⅺ Ⅺa
二次止血(凝固系)
Ca2+
Ⅸ Ⅸa
Ca2+, PL Ⅷa
Ⅹ
顆粒放出
Ⅹa
Ⅴa Ca2+, PL
トロンビン
プロトロンビン
(Ⅱa)
(Ⅱ)
Ca2+
血管収縮 血小板凝集
フィブリノーゲン
(Ⅰ)
プラスミノーゲン
t-PA
プラスミン
XIIIa
フィブリン 安定化
フィブリン
FDP
23
線溶系
D-ダイマー
24
4
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二次止血の評価
一次止血の評価
血管内皮
損傷
コラーゲン露出
血小板粘着
顆粒放出
血管収縮
血小板凝集
PT、APTT
事前に一次止血を評価しておく
血小板の数と形態
ー 血球計算器(測定方式に注意)
ー 血液塗抹での確認
油浸1視野に血小板10個= 250,000/µL
ー 血小板形態 大小不同、巨大血小板
持続的に Plat <100,000/µL であれば原因を精査
ー 消費性減少、DICの原因となる基礎疾患の探索
ー 上記が除外されたら骨髄検査
血小板数が正常でも出血傾向がある場合は頬粘膜出
血時間(BMBT)を測定
ー 一次血栓形成に関わる因子の機能を総合的に反映
ー 延長の場合:血小板機能異常、フォン・ヴィルブラン
ド病(vWD)、血管壁の異常
内因系
血管内皮
損傷
コラーゲン露出
活性化部分トロンボプラスチン時間:APTT
外因系
Ⅻa
Ⅻ
ー
組織損傷
組織因子+Ⅶa
ー
ー
ー
プロトロンビン時間:PT
Ca2+
Ⅺ Ⅺa
ー
PT
Ⅸ Ⅸa
Ca2+, PL Ⅷa
Ⅹ
内因系+共通経路
Ⅶ因子を除く全ての凝固因子を評価
代表的な先天異常:血友病A (Ⅷ因子の欠如)
血友病B (Ⅸ因子の欠如)
ー
外因系+共通経路
肝疾患、ビタミンK欠乏で延長
共通経路
Ⅹa
Ⅴa Ca2+, PL
プロトロンビン
プロトロンビン
(Ⅱa)
(Ⅱ)
Ca2+
APTT
XIIIa
フィブリン 安定化
フィブリン
フィブリノーゲン
(Ⅰ)
25
骨髄検査
播種性血管内凝固
disseminated intravascular coagulation, DIC
血液凝固活性の亢進
主な適応
骨髄造血障害を疑う非再生性貧血
末梢血における白血病を疑う異常細胞の出現
リンパ腫 stageⅤと ALL の鑑別
感染症、免疫介在性疾患が除外された不明熱
血管内微小血栓形成
手技
基礎疾患の存在
感染、腫瘍、炎症、広範な火傷・外傷など
④
初期
後期
毛細血管分布臓器を
中心とした多臓器不全
血小板・凝固因子の消費
線溶系の亢進 → 出血傾向
①
②
⑥ 骨髄コア生検
27
骨髄コア生検
細胞充実度 正常では脂肪と細胞成分がおよそ1:1
吸引により骨髄液が採取できない(dry tap):細胞充実度が極めて高い(packed
marrow)、再生不良性貧血(aplastic anemia, AA)、骨髄線維症(myelofiblosis) な
ど
サンプルを挫滅しないようにタッチスメアを作製し、ホルマリン固定して
病理組織検査に提出
骨髄塗抹
再生不良性貧血
28
骨髄塗抹標本の評価(低倍率)
サンプル吸引後、生検針をさらに刺入して骨髄をくり抜く
ルーチンで実施するが、下記の場合に有効な情報が得られる
ー
⑤
③
DIC検出のための検査
血小板減少、Fibn減少
塗抹上での赤血球断片化検出
PT、APTTは一定ではない
信頼性が高く、院内で実施可能な検査はFDP
D-ダイマーは院内検査ができないために結果が初期対応には間に合わない
26
骨髄球系と赤芽球系の比 (M/E比)
骨髄巨核球の有無、増減
骨髄コア 病理
(左写真と同症例)
29
充実度:低
充実度:正常
30
充実度:高い
5
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血液化学検査
骨髄塗抹標本の評価(高倍率)
主な目的とスクリーニング項目
ある系統の過形成または低-無形成
成熟分化過程
最終生産物(杆状核好中球、多染性赤芽球)の十分な存在
分化・成熟異常、異形成所見
異型細胞の有無
芽球比率は30%未満か
マクロファージ、リンパ球、形質細胞、肥満細胞などの増加
ヘモジデリン量
存在してはならない細胞の有無
主な目的
血液化学スクリーニング検査の項目
腫瘍自体の検出
BUN (mg/dl)
TP (g/dL)
Cre (mg/dl)
全身または多臓器疾患の Alb (g/dL)
検出
UN/Cr
Glob (g/dL)
麻酔、手術前検査
Na (mmol/L)
ALT (U/L)
腫瘍随伴症候群の検出
ALP (U/L)
K (mmol/L)
化学療法禁忌症例の検出 GGT(U/L)
Cl (mmol/L)
副作用のモニター
TCho (mg/dL) Ca (mg/dL)
T-Bil (mg/dL)
P (mg/dL)
Glu (mg/dL)
Amy (U/L) 犬のみ
Lip (U/L) 犬のみ
31
32
血液化学検査
血液化学検査
タンパクの検査
形質細胞・リンパ球系腫瘍によるGlob上昇
Glob上昇
評価項目はTP、Alb、Glob(=TP-Alb)
ー
ー
Alb
ー
ー
上昇:脱水
低下:肝臓 / 腎臓 / 消化管の障害、出血
複数の免疫グロブリン増加 ポリクローナルガンモパチー
単一免疫グロブリンの増加:モノクローナルガンモパチー
β-γ分画にアルブミンより幅が狭くスパイク状のピークが存在する
→ 主に形質細胞腫瘍またはリンパ球腫瘍によるグロブリン産生
(鑑別疾患:エールリッヒア感染、免疫介在性疾患)
ー Albのみの低下 肝機能障害、腎臓からの漏出
ー Alb、Glob両者の低下 タンパク漏出性腸症、出血、広範な皮膚欠損
ー
ー
モノクローナルガンモパチー
γ分画:多発性骨髄腫症例
ポリクローナルガンモパチー
Glob
上昇 脱水、慢性炎症、形質細胞・リンパ球系腫瘍
低下 免疫異常
33
(+) Alb
α1 α2 β
γ
(−)
(+) Alb
α1
α2
β
γ
(−)
34
血液化学検査
症例:肝不全
肝臓の検査
肝細胞
ー
ー
ALT 肝細胞傷害、膜透過性亢進時に障害細胞数に応じて上昇
AST ALTと同様だが、肝臓特異性に乏しい
胆道系
ー
ALP 胆道系疾患で上昇
グルココルチコイド・ストレスにより上昇する
クッシング症候群を疑う臨床徴候、CBCを同時に確認
ー
ー
GGT 胆道系疾患で上昇
T-Bil 上昇時は肝前性、肝性、肝後性の鑑別が必要
肝機能不全
ー
ー
Alb、BUN、T-Choの低下、末期にはGlu低下
上記項目に異常が見られた場合、食前・食後のTBA(0、2時間)、
NH3(0、2、6時間)を測定
35
TP (g/dL)
5.3
BUN (mg/dl)
8.0
Alb (g/dL)
2.2
Cre (mg/dl)
0.4
Glob (g/dL)
3.1
UN/Cr
20
ALT (U/L)
650
Na (mmol/L) 146
ALP (U/L)
6792
K (mmol/L)
4.4
GGT(U/L)
91
Cl (mmol/L)
109
TCho (mg/dL)
65
Ca (mg/dL)
9.3
T-Bil (mg/dL)
1.0
P (mg/dL)
4.6
Glu (mg/dL)
69
組織診断:肝硬変
36
6
2014/7/5
血液化学検査
反応性「肝障害」
腎臓
他臓器の疾患に関連した肝酵素値上昇
ALT軽度増加、ALP 3-4倍増加
TBAは高値を示さない
肝機能に関連する項目:Alb、BUN、TCho、Gluに低値が見られない
十二指腸病変:組織診断 腺癌
十二指腸病変部
TP (g/dL)
6.5
BUN (mg/dl) 11.5
Alb (g/dL)
3.3
Cre (mg/dl)
Glob (g/dL)
3.4
UN/Cr
28.7
ALT (U/L)
211
Na (mmol/L)
146
ALP (U/L)
1036
K (mmol/L)
4.0
GGT(U/L)
21
Cl (mmol/L)
111
Ca (mg/dL)
9.8
P (mg/dL)
3.2
TCho
(mg/dL)
285
T-Bil (mg/dL)
0.2
Glu (mg/dL)
113
0.4
尿検査、特に尿比重との同時評価が重要
BUN:腎疾患により上昇、消化管出血や蛋白摂取量増加で
も上昇
Cre:腎疾患により上昇、腎機能以外に影響されにくい
BUN/Cre 比:10-20の範囲にあればBUN上昇は主に腎機能
を反映
P:腎臓排泄減少によりBUN、Creより遅れて上昇
Na、Cl:遠位尿細管の再吸収不全により低下
K:腎不全の乏尿期に上昇
Ca:腎性二次性上皮小体機能亢進症の評価
38
膵十二指腸リンパ節
血液化学検査
血液化学検査:内分泌系
内分泌系:副腎
症例:副腎皮質機能亢進症(左側副腎皮質腺癌)
低用量デキサメサゾン抑制試験
副腎皮質機能亢進症
ALP、GGTの上昇、TChoの上昇
胆管系の評価としてTBilを評価、CBCではリンパ球数減少を伴う
十分な疑いがある場合は低用量デキサメサゾン抑制試験に進む
TP (g/dl)
6.0 BUN (mg/dl) 13.9
Alb (g/dl)
3.5 Cre (mg/dl)
Glob (g/dl)
2.5 UN/Cr
46.3
ALT (IU/L)
385 Na (mmol/L)
149
ALP (IU/L)
540 K (mmol/L)
3.4
56 Cl (mmol/L)
106
GGT (IU/L)
TCho (mg/dl)
609 Ca (mg/dl)
9.2
TBil (mg/dl)
0.01 P (mg/dl)
3.8
Glu (mg/dl)
東京大学生命科学教育用画像集より引用
粘液水腫昏睡 (myxedema coma)
犬での発生頻度は低いが、ヒトと同様に死亡率は高いと考えられている
ー
3.6
3.4
Post 8hr
3.5
術中所見
左副腎腫瘍
左腎臓
40
血液化学検査 内分泌系:甲状腺
猫の甲状腺機能亢進症
TCho:50%以上の症例で上昇
sick euthyroid syndrome:非甲状腺疾患の存在による血清T4値低下
⇒ ホルモン測定の前に他の疾患を正確に診断、除外しておく
診断にはT4、fT4、TSHを測定
ー
Pre
Post 4hr
90
39
血液化学検査 内分泌系:甲状腺
犬の甲状腺機能低下症
血清コルチゾール
(μg/dl)
0.3
Atkinson K, Aubert I. Can Vet J. 2004;45(4):318-20.
Henik RA, Dixon RM. JAVMA. 2000;216(5):713-7.
重篤な甲状腺機能低下症の存在下でに何らかの誘因により生理的代
償機構が破綻し、低体温、呼吸不全、循環不全、脳浮腫を起こす
臨床徴候:意識レベルの低下、震えの無い低体温、非陥凹性浮腫(皮
下へのグリコアミノグリカン蓄積による浮腫)
全身麻酔も誘発要因となり得る
41
ALT、ALPの軽度上昇
主に10歳以上の猫が対象
ー
発症年齢:中央値13歳、25th percentile 11歳 - 75th percentile 15歳 / 2096例
Peterson ME, Broome MR. Vet Radiol Ultrasound. 2014. doi: 10.1111/vru.12165.
臨床徴候、身体検査(頚部触診、血
圧測定など)において疑わしい所見
が存在した場合にT4測定
fT4測定は他疾患が存在した際に
偽陽性率が高いため、スクリーニン
グテストとしては推奨されない
ー
偽陽性率:T4 1-2%、fT4 最大30%
Peterson ME. J Feline Med Surg. 2013;15(9):765-77.
42
7
2014/7/5
血液化学検査
尿検査
内分泌系:上皮小体(副甲状腺)
血清総Ca濃度(Ca)の内訳
採尿法:禁忌で無ければ膀胱穿刺
理学的性状:色調、臭気、清濁
尿比重
クエン酸、リン酸、炭酸と複合体形成 10%
イオン化Ca:iCa 50%
上皮小体ホルモン (parathyroid hormone, PTH)
蛋白結合型
(主にAlb)
40%
iCaの低下に対して分泌、下記の作用によりiCa↑
骨からの動員
腎臓での iCa再吸収促進 ・ P排泄増加
消化管吸収増加 (活性型ビタミンDを経由)
異常高値
犬
猫
≧1.050
≧1.060
正常 1.030 – 1.049 1.035 – 1.059
濃縮不十分 1.013 – 1.029 1.013 – 1.034 → 持続する場合は原因精査
CaはAlb、Pと必ず同時に評価
ー Alb↓:結合蛋白の減少に伴うCa低下(みかけの低下)
ー P↑:主に腎不全によるP排泄減少、続発する二次性高Ca
上記以外であれば、鑑別診断リストに従って除外検査に進む
等張尿
1.008 – 1.012
希釈尿
≦1.007
→ 慢性腎不全に特徴的
(CKDステージ1-2以上に相当)
43
尿検査:蛋白
貯留液の検査
正常では陰性、尿比重 >1.050では痕跡 - +1
低比重尿では希釈されているため重大なこともある
ー
ー
ー
ー
ー
細菌感染、炎症・出血による腎後性蛋白尿を除外
尿蛋白/クレアチニン比(U p/c)を算出して有意な蛋白増加かどうかを
判定
U p/c:正常 < 0.3、有意な蛋白尿 > 1.0
原因は糸球体からのアルブミン漏出 または 尿細管での再吸収異常
形質細胞腫瘍によるBence Jones蛋白は試験紙法では検出されない
ことが多い
Bence Jones蛋白
ー
ー
44
TP、比重、細胞数 + 細胞診
漏出液
変性漏出液
浸出液
<1.017
1.017 – 1.025
>1.025
TP(g/dL)
<2.5
2.5 – 5.0
>3.0
細胞数( /µL)
<1,000
<5,000
>5,000
単核球、中皮
血液由来細胞
好中球、単核球
血液由来細胞
比重
主な細胞成分 単核球、中皮細胞
心タンポナーデ
心臓左側壁冠状動脈損傷を
回避する目的で右側穿刺が推奨
ー 超音波+ECG ガイド下で
16-20G側孔付きカテーテルを使用
ー
尿遠心上清に2M酢酸緩衝液を添加後、56℃ 15分加温 → 沈殿形成
したら3分煮沸 沈殿消失の場合、Bence Jones蛋白陽性
κ、λ抗血清を用いた尿蛋白免疫電気泳動
45
腫瘍随伴症候群
46
腫瘍随伴症候群:高Ca血症
高Ca血症の最も多い原因疾患は悪性腫瘍
定義
悪性腫瘍の存在が原因で、腫瘍の発生部位か
ら離れたところに発現する全身性疾患
ー 原発腫瘍のサイズ、発生部位、転移の有無、発
生母地の生理機能には無関係
ー
ー
腫瘍細胞が
正常細胞にない物質を産生
正常細胞が産生するレベルを超えて産生
することが直接の原因
47
ー
ー
高Ca(13.57±2.39mg/dL)の犬109例において58%は悪性腫瘍が原因
J Vet Intern Med. 2009;23(3):514-9.
犬:原因として多い順にリンパ腫、肛門嚢腺癌、多発性骨髄腫
猫:頭部扁平上皮癌、リンパ腫
高Ca血症を誘発する代表的な腫瘍産生物質
ー
PTH-rP:動物検体で測定可能
高Ca血症の同一検体を専用採血管で検査機関に提出
通常、PTH-rP高値 かつ PTH低値であれば腫瘍性高Ca血症
ー
ー
OAF(破骨細胞活性化因子):臨床検査としては測定不可
PTH-rPが検出されなくても腫瘍誘発は否定できない
48
8
2014/7/5
腫瘍随伴症候群:高Ca血症
症例:猫鼻腔節外型リンパ腫
腫瘍随伴症候群:高Ca血症
症例:犬の血管周皮腫
第3病日
第1病日
Ca (mg/dl)
IP (mg/dl)
BUN (mg/dl)
Cre (mg/dl)
19.4
5.9
35.2
1.6
参照範囲
iCa (mmol/L)
L-Asparaginase
2.4 ↑ (1.0‐1.4)
6.9 ↓ (8-35)
( 400 IU/kg sc)
PTH (pg/ml)
Prednizolone
PTH-rP (pmol/L) 5.7 ↑ (<1.1)
左上腕 6cm大皮下腫瘤
(2 mg/kg sc)
Ca 13.5mg/dl
Ca 10.4mg/dl
49
高Ca血症
原発性上皮小体機能亢進症
腫瘍随伴症候群
高ガンマグロブリン血症
PTHが高値を示すのは症例の1/3程度
高Ca血症の原因疾患について、原発性上皮小体機能亢進症以外が十
分に除外
頚部超音波検査において上皮小体が通常 6mm以上に腫大
異所性上皮小体腫瘍は極めてまれ
Ca
(mg/dl)
14.1
IP
(mg/dl)
2.2
BUN (mg/dl)
8.5
(mg/dl)
0.7
Cre
主に多発性骨髄腫、リンパ腫およびCLLの一部でも発生
診断:血清蛋白電気泳動 ⇒ モノクローナルガンモパチー
過粘稠度症候群 (hyperviscosity syndrome, HVS)
分子量の大きいIgA、IgMモノクローナルガンモパシ−で発生し易い
過剰グロブリンによる血液粘稠度増加 ⇒ 主に末梢循環障害を誘発
主な症状
ー 網膜障害
ー 中枢神経障害、腎不全、うっ血性心不全
ー 血小板粘着機能障害:粘膜持続出血、紫斑
重篤な症例に対しては血漿交換が必要となる場合もある
参照範囲
iCa (mmol/L)
1.73 ↑ (1.0‐1.4)
PTH (pg/ml)
10.8
(8-35)
PTH-rP (pmol/L) <1.1
(<1.1)
51
52
腫瘍随伴症候群
症例:高ガンマグロブリン血症、HVS
WBC (/μL)
Seg-N
Lym
Mono
133,280
精巣腫瘍、卵巣腫瘍、副腎腫瘍などの転移巣ホルモン産生
胸腔内に存在する甲状腺腫瘍
2,950
128,250
1,730
Eos
80
Baso
210
RBC (×106/μl)
4.29
PCV (%)
27.9
PLT (×103/μl)
腫瘍随伴症候群
異所性ホルモン産生
症例:セルトリ−細胞腫切除1年半後の腰下リンパ節転移
(+)
Alb
β
γ (−)
90
TP (g/dL)
11.4
Alb (g/dL)
2.6
Glob (g/dL)
8.8
右外腸骨リンパ節:11×6 cm
血清エストラジオール値:33pg/ml
眼底血管のソーセージ様変化
53
54
9
2014/7/5
腫瘍随伴症候群:低血糖
腫瘍溶解症候群
腫瘍細胞のインスリン、インスリン様成長因子(IGF
)産生が原因
腫瘍組織の糖消費も影響
ー
ー
インスリン分泌腫瘍:膵島β細胞腫癌
インスリン非分泌腫瘍:肝細胞癌、リンパ腫、血
管肉腫、平滑筋腫・肉腫、多発性骨髄腫など
tumor lysis syndrome, TLS
治療感受性の高い大型腫瘍に対する治療時
ー
リンパ腫の導入治療にL-アスパラギナーゼなどの急速に効果を発揮する
薬物で治療した場合
多量の腫瘍細胞壊死により血中P、Kなどが急速に増加
重度の電解質異常、リン酸塩の尿細管・心筋沈着に関
連して腎機能障害、不整脈などを誘発
対策
導入治療 - 48時間後に注意
十分な静脈輸液による水和、モニタリング
55
56
化学療法に関連した臨床病理学的変化
化学療法に関連した臨床病理学的変化
①消化器障害
②骨髄抑制
脱水による電解質異常、タンパク濃度、PCVの変化を誘発
化学療法剤による催吐
CTZの刺激、消化管粘膜損傷による末梢受容体刺激、大脳
皮質刺激などが原因
ー 重度:シスプラチン、ダカルバジン、プロカルバジン
ー 中等度:シクロフォスファミド、ドキソルビシン、カルボプラ
チン、メソトレキセート
早いものでは投与4-6時間、遅いものでは数日で発生
積極的な制吐剤使用による抑制
末梢血滞在時間の長さに関連し、最初に好中球が減少する
骨髄抑制を起こしやすい薬剤
ー
ドキソルビシン、シクロフォスファミド、ビンブラスチン
カルボプラチン、CCNU
好中球最下点は多くの薬剤が7日前後
週1回CBCを実施、好中球数< 2,500/µLを検出する
例外:CCNU、シスプラチン、カルボプラチン
好中球最下点の時期が予測しにくい
投与間隔が3週に1回でも初期は週1回CBCを実施
57
化学療法に関連した臨床病理学的変化
好中球減少症への対応
③ P糖蛋白
臨床徴候を伴う場合、敗血症を考慮
ー
ー
58
敗血症 = 感染による全身性炎症反応症候群(SIRS)
DIC、多臓器不全へと進行する
血管内皮、腸、腎臓などの上皮細胞表面
に存在し、細胞内から毒性分子を排出す
るポンプ機構
outside
ー
membrane
ー
敗血症早期検出のための家庭でのモニター項目
ー
ー
ー
ー
ー
体温の変化:<37.8℃ または >39.7℃
心拍数:犬 >160/分、猫 >250/分
呼吸数:>20回/分
ー
ー
ー
上記異常を認めたら、速やかに受診するよう伝え
ておく
59
inside
ー
ー
Molecule of the Month. doi:
10.2210/rcsb_pdb/mom_2010_3. より
引用
ー
D oxorubicin
V incristine
M itoxantrone
A ctinomycin-D
T axol
E toposide
D aunorubicin
V inblastine
M itomycin-C
P rednisolone
コリー、ボーダーコリーではP糖蛋白をつく
るMDR-1遺伝子が高率に欠損
60
10
2014/7/5
血液 / 骨髄の腫瘍
急性骨髄性白血病(AML)
骨髄異形成症候群(MDS)
白血病
白血球、赤血球、リンパ球、血小板の骨髄における腫瘍性
増殖疾患
ー
ー
ー
急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)
幼若細胞(芽球)が腫瘍性増殖
骨髄異形成症候群(MDS)
骨髄全有核細胞に対する芽球比率が低い(<30%)
造血機能障害による持続性血球減少が主な病態
慢性リンパ性白血病(CLL)
成熟リンパ球の腫瘍性増加
臨床徴候は非特異的
多くの症例が肝脾腫大、軽度の全身性リンパ節腫大を示す
貧血および2-3系統の血球減少(重度)を示す
AML症例は多くが末梢血塗抹に異常な白血病細胞を認める
骨髄吸引塗抹をFAB分類アルゴリズム(下図)に従って評価
発生頻度
ー
ー
犬 白血病:リンパ腫 = 1:10
自験例(過去5年) 白血病:リンパ腫 = 9:53
猫 主にFeLV感染に関連して発生
61
急性リンパ芽球性白血病(ALL)
62
急性白血病
骨髄におけるリンパ芽球増殖腫瘍をALLと呼んでいた
現在の新WHO分類では、前駆BまたはT細胞腫瘍:ALL/リン
パ芽球性リンパ腫として扱われる
犬急性白血病38例の免疫表現型解析 (flow cytometry + 化学染色)
Moore PF, Vernau W. Vet Immunol Immunopathol 69:145–164, 1999.
ー
ー
ー
骨髄所見
ー
ー
ー
ANC*の赤芽球系細胞 <50%
ANC + リンパ系細胞における芽球数 >50%
芽球中ペルオキシダーゼ染色陽性細胞 <3%
*ANC (all nucleated bone marrow cells):非造血細胞(リンパ球、形質細胞、肥満細胞
、マクロファージ)を除外した骨髄有核細胞数
63
AML 21/38 (55%)
ALL 13/38 (34%) ⇒ B cell 6、T cell 3、NK cell 4
AUL (急性未分化白血病) 4/31(11%)
治療反応と予後
AML
ー シトシンアラビノシド 等 による化学療法
ー 反応性は極めて乏しい、多くは診断から2~6週で死亡
ALL
ー 腫瘍性骨髄癆による血球減少を伴うため、L-アスパラギナーゼ、ビ
ンクリスチンとプレドニゾロンを併用した導入治療が推奨
ー 骨髄機能造血回復後にシクロフォスファミド、アドリアマイシンを追加
64
ー 生存期間は多くの症例で1-2か月、まれに6か月程度
症例:急性リンパ芽球性白血病(ALL)
5歳、雌、シェットランド・シープドッグ
2週間前から急性発症、活動性著減・食欲不振
WBC (/μL)
36,860
Band-N
20
Seg-N
2,490
Mono
1,245
Baso
20 • PO(-)、CD3(+)、PARRにおいて TCR クローン性を検出
40 • L-asp、VCR 導入後 に CPM、ADMを追加した化学療法
Others
14,135
RBC
(×106/μl)
4.83
PCV (%)
34.1
PLT
(×103/μl)
新WHO分類では、成熟TまたはBリンパ球腫瘍:CLL/リンパ
腫に分類され、高分化型リンパ腫の病型の一つと考えられる
腫瘍性リンパ球は骨髄内で高度分化傾向を示し、末梢血に
分化型リンパ球が多数出現
犬で多数報告されているが、猫では極めてまれ
18,910
Lym
Eos
慢性リンパ性白血病 CLL
46
• 6か月間寛解維持後、脳浸潤を伴う鼻咽頭病変を形成
診断
ー
ー
ー
末梢血:成熟リンパ球の持続性高度増加 >10,000/µL 、3か月以上
骨髄:成熟リンパ球数増加、総有核細胞 >30%
リンパ球単クローン性の証明
(免疫染色、フローサイトメトリー、PCR、血清蛋白電気泳動のモノクローナルガン
モパチーなど)
65
66
11
2014/7/5
症例:CLL
症例:CLL
10歳、雄、ポメラニアン
3か月前から緩徐に体重減少、リンパ球数の持続性増加
骨髄塗抹
総有核細胞に対する
成熟リンパ球比率 66.5%
WBC
339,000 /μL
– Band-N
356 /μL
– Seg-N
13,543 /μL
– Lym
322,050 /μL
– Mon
678 /μL
– Eos
678 /μL
– Bas
0 /μL
RBC
2.87×106/μL
PCV
22.3 %
Plat
275×103 /μL
TP
5.7 g/dL
末梢血リンパ球遺伝子再構成解析
PCR産物の電気泳動
67
本講演のまとめ
Take Home Messages
検査結果を適切に解釈することで下記の情報が得られる
1. 客観的根拠に基づいた診断
2. 病態の把握、進行度決定
3. 治療の効果判定、予後判定
他の検査(画像、細胞診など)との整合性、矛盾を確認
常に一定の方法、範囲で検査を繰り返すことが判断精度、
速度の向上につながる
69
12