模擬国連世界大会参加報告書

模擬国連世界大会参加報告書
2015 年 11 月 22 日から 28 日までの 7 日間、模擬国連世界大会(National Model United Nations)が、チェ
コ共和国オモロウツ市で開催されました。立木ドナ教授と玉井健教授、ローリーゼネック西出准教授引率のもと、
本学からは 12 名の学生が大会に出場しました。学生は 6 名ずつチームに分かれ、ヨルダン・ハシミテ王国と大
韓民国を代表し、設定された 4 つの国際会議に担当国大使としてそれぞれ参加しました。会場には世界各地から
300 名を超える大学生や大学院生が集まり、それぞれが担当国の大使として、現代の国際社会が抱える諸問題に
ついて熱い議論を交わしました。
閉会式では、本学の学生代表が来年 2016 年に本学を主催校として開催する NMUN-Japan に向けた意気込み
を述べ、会場は大いに盛り上がりました。文化視察や会議進行など、大会を運営する点においても学ぶべき点が
多く見受けられ、来年の開催に向け、多くの実りある経験を得られました。
【今回の受賞】
ヨルダンチーム(6 名) Honorable Mentioned Delegation 賞
○NMUN の大まかな流れ
【準備期間】
【準備期間】
【議場にて】
議題に関するリサーチ開始
担当国・担当会議の決定
議題設定に向けた交渉
Position Paper 執筆
仮決議案の執筆
政策立案
会議に向けた交渉・スピーチの練習
修正案などを通して、決議案の採択
○NMUN における会議の構成 (Formal Debate と Informal Debate を交互に行う)
Formal Debate
•各国のスピーチ
•会議の進方を全体で決める
(Informal Debateへ移る、採択
を行う、休憩に移るなど)
•決議案の採択
Informal Debate
•Working Groupでの作業
•仮決議案の執筆、提出、
併合
•Ammendmentの作成
下記では、模擬国連の流れを簡単に説明した図とチェコ大会において活躍した 12 名の学生の報告書を一部抜粋
して紹介します。○所属学科
○国際関係学科 谷幸穂
氏名 参加会議 担当国 採択議題(左から)
安全保障理事会(SC) ヨルダン代表 議題:移民と安全保障
現在私が思う最大の懸念として、学内での認知度の低さが依然挙げられます。ホスト校として恥ずかしくない
出迎えをするためにも、学生・先生方・職員の方に広くこれまでの取り組みと、このNMUNがどれだけ素晴ら
しい機会になるのか周知しなければいけません。今回のチェコでのホスト校だったパラツキ大学は、地域の活性
化に大いに寄与し、大学の知名度も国際的にぐんと上げている印象を受けました。本学でも、他の 70 周年記念
事業との相違点として、他大学の学生-しかも国内外を問わず-を迎えての大きなイベントであることはもっと
認識されるべきです。外国人参加者には日本の文化と歴史に触れる機会を提供し、また国際都市としての神戸の
活性化に寄与するだけでなく、国内他大学の学生にも会議参加の機会を十分に用意しています。それら全ての価
値を提供する中心に本学があり、提供と享受の両側面においてもまた本学学生が中心にあるということは認識さ
れるべきです。国際の平和と安全の維持を担う国際連合との直接的な関わりを持ち、またこれまでの国際的なイ
ベントに広く門戸を開放している大学がほかにあるのか…神戸市外国語大学はNMUNを開催することでさら
にその存在価値を高めることができると確信しています。
この一大プロジェクトは、派遣大使団の渡航準備すべてを担ってくださる外大職員の皆さま、授業の欠席に理
解を示してくださる先生方、そして応援してくださる多くの方々がいるからこそ成し得ているものです。本学で
11 月に開催される大会にはまだまだ力が必要であり、学生ボランティアとして多くの外大生に関わってほしいと
切に望んでいます。全ての方々への感謝と外大生への期待を添えて、また何よりも私自身の外大生としての誇り
をかけて、残された一年間で事務総長としての役職を精一杯全うし、NMUNJapan の成功に全力を尽くします。
○英米学科 田中秀和
総会(GA) ヨルダン代表 議題:テロリズム撲滅に向けた国際協力
これまでは 2 人や 4 人といった小規模なチームで大会に参加してきたのに対し、今回は 12 人というかなり大
きなチームで大会に臨みました。学生団のサブリーダーとして準備の段階から苦労することもありましたが、そ
れぞれが自ら積極的に準備を進めてくれ、引率の先生や職員の方のお力添えもあったおかげで、全員が満足でき
るような経験を得られたと感じています。また、来年の日本開催に向けて、運営の点でも学ぶべき点が多く見受
けられました。そうした点でも今回の経験は非常にためになり、来年の開催に向けた良い追い風となりました。
○国際関係学科 浦町 直弘
経済社会理事会(ECOSOC) 韓国代表 議題:女性のエンパワーメント
会議の中には相手の考えを変化させる手段が幾つも存在します。議論、交渉、何気ない挨拶の中にもチャンス
があります。その中でも、私がもっとも重要だと感じたのがパブリックスピーチの機会です。他の誰にも邪魔さ
れることなく、その議場にいる全ての大使に自分たちの考えを伝えることができるからです。私は三日間を通し
て二度スピーチをしましたが、反対国の考えを変えるには至りませんでした。内容の構成、情報のパッケージの
仕方など、スピーチの奥深さと重要性を改めて肌で感じました。<中略> 私は、NMUN は国際社会の縮図と
も表現できると思いました。一方で、その場での行動は各国のスタンスに基づいた各大使によって異なり、そこ
から得られるものもまた、人それぞれなのだと思います。来年(2016 年)の NMUN・JAPAN でも、今回のよう
な刺激的な舞台にひとりでも多くの外大生が参加し、それぞれの学びを得ることを願います。
○英米学科 茂野涼一
総会(GA) 韓国代表 議題:テロリズム撲滅に向けた国際協力
模擬国連に参加する意義は人によって大きく異なると思います。もちろん語学力の上達にもなり、国際関係へ
の理解も深まりました。しかし個人的には、社会のグローバル化が叫ばれる中で、それを学生の内から体験でき
るということに大きな価値があると思います。優秀な学生が集まる模擬国連は、予想していた以上に厳しい環境
でした。自分を奮い立たせ、積極的に行動していかなければ、グループを見つけることができない、議論に入っ
ていけない、するべきことが見つからないという事態になりかねません。しかしそれが、社会に出て、世界を相
手に活躍しようとしたときに身を置く環境のはずです。模擬国連を通して、そんな状況下で自分ができる最大限
のパフォーマンスは何かを知り、精神的な強さを養うことができたのは私にとっての財産となりました。本物の
グローバル社会を持ち込むという点で、来年に NMUN が日本で初開催されるのは、とても大きな意味を持つと
考えます。
○国際関係学科 石原優花
総会(GA) 韓国代表 議題:テロリズム撲滅に向けた国際協力
4日間の会議を通して感じたのは、国際社会の中で、声をあげないものは存在しないも同然だということです。
自分から伝えようとすれば、誰かが必ず聞いてくれましたが、黙っていて、誰かがくみ取って代弁してくれる、
ということは決してありませんでした。模擬ではありますが、自分の躊躇や恥じらいで、大きな問題を解決する
ことや、世界を変えるチャンスを逃してしまうことは本当にもったいないことだという風に感じました。英語の
運用能力や、伝え方、など、まだまだ改善すべきことはたくさんありますが、国際社会のなかで生きるためには、
自ら主体的に行動し、多様な視点を持つ必要があるということに実感として気づくことができたのはとても貴重
な経験になったと感じています。
○国際関係学科 澤出華奈
経済社会理事会(ECOSOC) 韓国代表 議題:女性のエンパワーメント
会議中は、自分の英語力の至らなさに歯がゆい思いをしてばかりいましたが、その一方で、自分がこのような
貴重な場にいるということに常に喜びも感じていました。日本にいても、国際的問題についてこれほど真剣に考
え、そして議論をする機会は、なかなか経験できることではありません。さらに NMUN に参加している学生は
みな熱意があり、彼らのその真剣な姿勢からは「私たちが国際社会の一員である」という強い自覚と責任を感じ
ました。私は日本で暮らしていてこれを感じたことはありません。しかし、昨今の混沌とした世界情勢を見ると、
日本で暮らそうと暮らすまいと、これから生きていく上でこの二点は欠かせないものであると思います。これは
NMUN に参加したからこそ感じられたことでした。また、NMUN Czech に参加するにあたり、航空券の手配等
さまざまなサポートに尽力してくださった外大職員の方々にも改めてお礼を述べたいです。チェコ大会への参加
が正式に決まるまでは、海外留学先からの参加が認められるとは想像していませんでした。
今回の NMUN Czech での経験は、自分の人生において二度とない貴重な経験でした。そのような経験を、来
年の NMUN Japan の参加者にも感じてもらえるように、これからは NMUN Japan の運営メンバーとして、そ
の成功のために最善を尽くしていこうと思います。
○国際関係学科 岸本崇司
教育科学文化機関(UNESCO)ヨルダン代表 議題:教育、文化、科学に関するI
CTの利用の促進
模擬国連は誰にでもできます。準備して会議に参加することは難しくありません。友達も増えますし会議終了
後は達成感と楽しさで溢れるでしょう。しかし、それは「参加者のうちのひとり」であるあなたの自己満足に過
ぎません。私の考える模擬国連での最終ゴールは参加者全員から「あの人」と認識されることだと思います。そ
のためには、①会議を熟知すること②大使という役を演じきること③例えば、
「冗談を理解する・冗談が言える」
くらいの英語能力があること。以上の 3 点が重要だと私は感じます。今後私は、自身の経験を通じて、模擬国連
という教材の普及活動に携わっていきたいと考えています。
○英米学科 岡本佳奈
教育科学文化機関(UNESCO)韓国代表 議題:教育、文化、科学に関するICTの利
用の促進
実際に会議に参加し、私は、参加者には、主に 2 つのタイプのコミュニケーションスキルを持っている人がい
ることに気づきました。まず多かったのは、どのような話し合いの際にも、先陣を切り発言する人々であり、こ
れは、私が NMUN に参加する以前に会議に対して抱いていたイメージでもありました。次に私の目に飛び込ん
できたのは、必ずしもいつも積極的に前に出ているわけではなく、話すべき時に確実に発言し、周囲からもそれ
を求められる人でした。<中略>
日本の学生の中には、自分たちの目指す、また、目指すことを求められる「国際社会」という場が、英語の飛び
交う戦場のような場だと感じている人も少なくありません。この認識が間違いだと言い切るわけではありません
が、この戦場には多様な戦い方があるのではないかと思います。受動的であることは意味を成さずとも、相手を
適切に受けることは十分意味を持ちます。英語の流暢さはもちろん武器となりますが、いかなる人も目指すこの
点以外に、いかに自分を表現する方法を勝ち取るか、その探求こそが、外国語として英語を学ぶ我々が将来、英
語母語話者と肩を並べ、生きる社会を目指すため、怠ってはいけない努力ではないかと思います。
○国際関係学科 吉松紗恵子
安全保障理事会(SC) ヨルダン代表 議題:移民と安全保障
私は今までペアで大使の役目を務めたことがなかったので、難しくもありもどかしくも感じました。反省点は
事前にペアの方とじっくり各議題について話し合い、政策を練っておくべきだったことです。私がメインで調べ
ていたトピックが採択されなかったということもあり、余計に自分のリサーチ不足を痛感しました。
会議を通して学んだことは発言する際は要点をおさえてハキハキと話さないと誰も聞いてくれないというこ
とです。初めて世界模擬国連大会に出場することと、英語が母語話者に比べて達者に話せないという要素が自信
の低下につながってしまいました。自信がないまま話すと声は小さく、伝えたいことがまとめられないまま相手
に話すことになります。そうすると相手が聞いてくれているのにもかかわらず、意味のない無駄な会話に終わっ
てしまいます。<中略>
全大使の前でほかの大使が意見を発言する中、私はなかなか発言することができませんでした。しかし、私が
作成した文言を話し合う場面では意見を述べることができました。そして無事に文言が決議案の中に留まること
になりました。決議案は全会一致で採択され、議場が閉会されました。
○国際関係学科 植田奈菜子
教育科学文化機関(UNESCO)韓国代表 議題:教育、文化、科学に関するIC
Tの利用の促進
二日目は会議時間が 9:30 から 22:00 におよぶ一番の山場でした。達成できたこととしては、マスター(文言を
まとめる係り)を務めたこと、自分の意見を発信できたこと、多くの大使との議論、交流です。確かに韓国で先進
的に普及している平和教育、人権教育を既存の Best Practice ネットワークに導入し、促進するというような、
人権教育に関する文言は最後まで、消されることなくとどまりましたが、前の NY 大会から改善できなかったこ
ともあります。それは大きなグループをまとめること、自分の居心地のよいところから抜け出すこと、印象に残
るスピーチをすることです。なぜ達成できなかったのかというとやはり自信と勇気がなかったことがあります。
議題のリサーチ不足が主な原因だと思いますが、それに加え、自分の考えが否定されたり理解されなかったりす
ることが怖かったのです。
<中略>
こうやって振り返ってみるとできなかったことだらけです。しかし、一回目の NMUN よりはうまく行動する
ことができたのかなとも感じています。それに自信がないという欠点を克服させるためには自分ができなかった
ことを引きずるのではなく、できたことに目を向けることも大切であると考えます。今回感じた悔しさをバネに
NY、Japan に向けて更なる努力をしていこうと思います。
○国際関係学科 水野綾香
総会(GA) ヨルダン代表 議題:テロリズム撲滅に向けた国際協力
私はこのNUMNを通して、リサーチした情報を整理して自分のことばで伝えることの大切さを学びました。
どれだけリサーチしてもその情報を頭の中で整理して組み立てなおすことができないと、ただやみくもに調べて
も意味がありません。しかも、実際の会議ではそれを短く簡潔に伝えることができなければ、相手にしてもらえ
ません。準備期間も、自分の考えを英語でいかにうまく伝えることができるかに焦点を置いて練習しました。そ
のおかげで、実際の会議では、ヨルダンの議題に対する立場を各国の大使にわかりやすく伝えることができたと
思います。
また、私は来年行われる NMUN Japan では文化視察(Cultural Visit)の運営を担当するので、今回のチェ
コ大会では、文化視察の運営やガイドの方法を学ぶことにも焦点を置いていました。今回の文化視察では、来年
に向けて取り入れたい点、改善したい点などたくさん見つけることができました。これから先、たくさんの困難
が立ちはだかると思いますが、
「世界中から集まる学生に日本のこと、神戸、京都、広島のことをもっともっと
知ってもらいたい!」この気持ちを忘れずに準備を進めていきたいと思います。
○イスパニア学科
森春奈
教育科学文化機関(UNESCO)ヨルダン代表
議題:教育、文化、科学に関す
るICTの利用の促進
私はユネスコのコミティーで、ヨルダンの代表としてこの模擬国連会議に出席しました。今回が初めての模擬
国連会議の私にとって、多くの出来事において何が待ち受けているのかも定かでなく、全てが学習の連続でした。
<中略> 会議本番が始まる前にカルチュラルビジットでアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所と、お城、そ
して洞窟を訪れました。来年の本校で開催される模擬国連会議でカルチュラルビジットを担当し、今回視察も兼
ねてチェコに行っていた私にとっては非常に重要な二日間でした。どのような段取りで行われているのかを観察、
メモし、参考にできるものを吸収しましたが、身も心も凍ってしまいそうな、そんな貴重な体験でした。負の世
界遺産であるこの強制収容所を訪れた私達、そして同じく負の世界遺産である原爆ドームを訪れる来年のデリゲ
ート達、いかに心に響く経験にすることができるかということが大きな課題であると感じられました。
○大会の様子