硫化水素(H2S)の生理機能と医療応用

〔生化学 第8
5巻 第2号,pp.6
3―7
5,2
0
1
3〕
総
説
硫化水素(H2S)の生理機能と医療応用
木
村
英
雄
硫化水素(H2S)と言えば,「卵の腐敗臭」と「毒ガス」というキーワードがまず思い
浮かぶ.「生理活性物質」とはつながりそうにない.しかし,地球にはその昔このガスで
満たされていた時期があり,その名残とも言うべきか,H2S が噴出する海底火山にはこれ
を利用する生物がいる.メチオニン,システイン,グルタチオン,コエンザイム A など
に含まれる硫黄は生物界において極めて重要な働きを担っている.この硫黄を他の化合物
に転移する酵素 sulfurtransferase の研究が1
9
5
0年代から1
9
7
0年代にかけて精力的に行わ
れた.これら一連の研究で酵素活性マーカーとして登場したのが H2S であり,あくまで
も代謝経路の副産物としてしか捉えられていなかった.1
9
8
9年から翌年にかけて,哺乳
類の脳に内在性 H2S が存在することが報告され,H2S が何らかの生理活性を持つことが予
想された.ここでは,生理活性物質としての H2S とその医療応用への取り組みについて
概説する.
1. は
じ
め
に
した3).この研究は,心筋保護作用の発見へとつながっ
た4).このような研究の流れの中で,私たちは最近,第3
1
9
9
6年に私たちは,シスタチオニン β-シンターゼ(cys-
番目の生合成酵素として3-メルカプトピルビン酸硫黄転
tathionine β-synthase:CBS)が 脳 で H2S を 生 産 し,H2S が
移 酵 素(3-mercaptopyruvate sulfurtransferase:3MST)が 神
記憶のシナプスモデル,海馬長期増強(long-term potentia-
経細胞や血管内皮に局在することを見いだした5,6).
tion:LTP)の誘導促進を行うことか ら,神 経 調 節 物 質
ここ数年,H2S 研究論文数は年々増加し,抗炎症7),イ
(neuromodulator)として機能していることを提案した1).
ンスリン分泌調節8,9),血管新生10,11),酸素センサー12,13),小
翌9
7年に,H2S のもう一つの生産酵素シスタチオニン γ-
胞体ストレス調節14),NF-κB 調節を介した抗アポトーシス
リアーゼ(cystathionine γ-lyase:CSE)が血管平滑筋,門
作用15),さらには,細菌の抗生物質抵抗性も H2S によって
脈,回腸などの平滑筋組織に局在し,H2S がこれらの組織
調節されているという報告が出るほどである16).すなわ
を弛緩させることから,平滑筋弛緩因子としての働きを提
ち,H2S の細胞保護機能は細菌から哺乳類に至るユニバー
案した2).これらは H2S のシグナル分子としての局面であ
サルな自己防御機構であることを示している.生物研究に
る.それに加えて私たちは,H2S の細胞保護作用を見つけ
おいては,細菌で得られた結果を哺乳類で検証するという
た.「毒ガス」としての印象が強いために見落とされてい
のが一般的な流れである.しかしここでは,哺乳類で見つ
た機能である.H2S は神経細胞を酸化的ストレスから保護
かった三つの生産酵素 CBS,CSE,3MST を細菌で欠失さ
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研
究所 神経薬理研究部(〒1
8
7―8
5
0
2 東京都小平市小川
東町4―1―1)
Physiological functions of hydrogen sulfide(H2S)and its
therapeutic applications
Hideo Kimura (Department of Molecular Pharmacology,
National Institute of Neuroscience, National Center of Neurology and Psychiatry,4―1―1Ogawahigashi, Kodaira, Tokyo
1
8
7―8
5
0
2, Japan)
せると,細菌の抗生物質抵抗性が失われた.哺乳類での発
見が細菌でも成立したという逆の流れになっている.この
ような,さまざまな働きを持つ H2S の細胞内動態をリア
ルタイムで観察しようと,H2S 蛍光プローブも昨年数種類
開発された17∼21).
2. H2S の 性 質
0℃ では水3
1
4ml に1g 溶解す
H2S は水溶性であり,3
6
4
〔生化学 第8
5巻 第2号
る.その上,脂溶性でもある.水溶液中では H+と HS−に
が HS−を通過することはないと結論付けている23).ところ
解 離 し,生 理 的 条 件 下(3
7℃,pH7.
4)で は,約4/5が
が,今年に入って,細菌の HS−チャネルが同定された.
HS−に解離し,残り1/5は解離せず H2S として存在する.
このチャネルは細胞内から細胞外へ HS−を通す24).細菌に
2−
S まで解離することはほとんどない.
H2S →
−
HS
→
+
−
H +HS(pK1=7.
0
2)
+
2−
H +S (pK2=1
3.
9)
おいては,H2S は細胞外から脂質二重膜を通過して細胞内
へ入り,細胞内からは HS−チャネルを通過して細胞外に
出るというのである.遺伝子の相同性などから判断すると
細胞内では,細胞質の pH は7.
0∼7.
2で,細胞外より pH
このチャネルは哺乳類には存在しないらしい.もっとも,
が低いために,細胞外に比べて非解離 H2S の HS−に対す
アミノ酸配列上相同性はないが HS−を通過させる機能を
る存在比率が高くなるため,約半分が非解離 H2S として
持つチャネルが哺乳類にも存在する可能性がないとは断言
存在する22).さらに ゴ ル ジ 体 で は pH は6.
0∼6.
7,リ ソ
できない(図1)
.
ゾームで pH4.
7であり,このような細胞内小器官では非
解離 H2S の存在比率がさらに高くなると考えられる.
3. 内在性 H2S 濃度
H2S 分子と H2O 分子とを比較してみると,H-S 間距離は
遊 離 の H2S に 加 え て,細 胞 に は H2S を 放 出 す る 硫 黄
0.
1
3
4nm であるのに対して H-O は0.
0
9
5
7nm,H-S-H の
プールが少なくとも2種類存在する.一つは酸不安定型硫
結合角度が9
2度,H-O-H は1
0
4.
5
2度で,両者の構造は
黄で,その主なものは,呼吸鎖を構成する酵素の活性中心
酷似している.そのため,H2S は水チャネル(aquaporin)
に存在し,酸化還元反応をつかさどっている鉄硫黄クラス
を通過するのではないかと多くの研究者が予想した.とこ
ター中の硫黄原子である25).この硫黄原子は,酸性条件下
ろが,Mathai らの研究によると,脂溶性でもある H2S は
で H2S として放出されることから,このように呼ばれて
人工脂質二重膜を自由に通過し,コレステロールやスフィ
いる.もう一つの硫黄プールは結合型硫黄である.これは
ンゴミエリンといった膜拡散性を減少させる物質が存在し
タンパク質のシステイン残基などのチオール基にさらに硫
ていても何ら妨害を受けずに通過できる23).一方,脂質二
黄が結合したもので,還元条件下で H2S を放出する25,26).
重膜に再構築した水チャネルは,水分子を良く通すものの
H2S 通過については脂質二重膜の単純拡散と同程度であっ
1)酸不安定型硫黄
た.先にも述べたように,細胞外に比べて,細胞内に H2S
初期に測定された内在性 H2S は,基本的にメチレンブ
が多く存在することから,H2S は存在比率の高い細胞内か
ルー法で測定された.これは HCl 存在下で,N,
N-ジメチ
ら細胞外に向かって脂質二重膜を通過し,その逆が起こる
ル-p-フェニレンジアミン硫酸と FeCl3 とを H2S と反応させ
率は低いと考えられている(図1)
.
るとメチレンブルーを形成する反応を利用しており,でき
Mathai らはま た,生 理 的 条 件 下 で の 主 た る 存 在 形 態
−
たメチレンブルーを分光光度計で測定し,H2S を定量する
HS が陰イオンチャネルを透過する可能性について理論的
測定法である.酵素的に産生される H2S 量を測定するた
な検討を行っており,現在知られている陰イオンチャネル
めに,細胞ホモジネートを過剰の基質存在下で反応させ,
生産されてくる大量の H2S をメチレンブルー法で測定す
る場合は,酸不安定型硫黄から同時に放出される H2S 量
と酵素反応で産生される H2S の両者を測定する. そこで,
基質を除いたコントロール,すなわち組織ホモジネートに
存在する酸不安定型硫黄から放出される H2S 量,を全体
H2S 量から差し引けば酵素によって産生された H2S を算出
することができる.しかし,この方法で,内在性 H2S を
測定しようとすると,内在性遊離 H2S に加えて,はるか
に大量の酸不安定型硫黄由来の H2S をも測定してしまう
ことになる.初期に測定された内在性 H2S が,実際に存
在する濃度より高かったのはこの理由による27∼29).
酸不安定型硫黄量を,肝臓,心臓,脳で比較すると,心
臓で最も高く,4
0
0nmol/g タンパク質を超える.肝臓と
図1 H2S の脂質二重膜透過性
H2S は脂質二重膜を自由に通過する.生理的条件下では,約
8
0% が解離した HS−で,残り2
0% が解離していない H2S ガス
である.現在知られている陰イオンチャネルは H2S を通さな
い.しかし,最近,細菌で HS−チャネルが発見された.
脳がほぼ同程度で,1
5
0nmol/g タンパク質前後である25).
では,生体内でこの酸不安定型硫黄から遊離 H2S に移行
することがあるか,という疑問が湧いてくる.前述のよう
に,酸不安定型硫黄は主として呼吸鎖を構成する酵素中の
6
5
2
0
1
3年 2月〕
鉄硫黄クラスターとして存在するが,これらの酵素はミト
傾く30).このような条件下では約1割のアストロサイトの
コンドリアに局在する.酸不安定型硫黄から H2S が放出
pH が8.
4に達したが,放出量が低いこともあり,H2S 測
されるのは pH5.
4以下の酸性条件下であるが,ミトコン
定は成功していない25).
ドリア内は pH8付近であり,酸不安定型硫黄から H2S が
生理的に放出されることはないと思われる25).
3)遊離 H2S
遊離 H2S 測定には銀―硫黄電極が汎用されている.しか
2)結合型硫黄
し,この方法も組織や血液などタンパク質含有サンプルの
結合型硫黄量を,肝臓,脳,心臓で比較すると,酸不安
測定には適していない.なぜなら,この電極では,解離し
定型とは対照的に,肝臓で最も高く約6μmol/g タンパク
−
た S2(解離定数
pKa=1
3.
9)を測定するため,サンプルを
質,脳 で 約2μmol/g タ ン パ ク 質,心 臓 が 最 も 低 く,約
アルカリ性にする必要があるが,このとき,タンパク質中
2
5)
0.
1μmol/g タンパク質程度である .それでは,結合型硫
の SH 基から H2S が発生してしまい,遊離 H2S 濃度をはる
黄から遊離 H2S が放出される可能性はあるのだろうか.
かにしのぐ値が観察されてしまうからである31).最近,タ
結合型硫黄は,還元条件下で H2S を放出するので,細胞
ンパク質から放出される H2S の混入を防ぐ工夫を凝らし
内還元状態が強くなると放出されると考えられる.細胞内
た三つの方法が開発された.第1の方法は,三方コックに
に豊富に存在する還元物質として,グルタチオンやシステ
連結した2本のシリンジで組織をホモジナイズし,遊離し
インがあるが,これらの還元力はアルカリ性で強くなる
た H2S をコックから採取し,ガスクロマトグラフィーで
(図2)
.実際,生理的濃度のグルタチオンやシステインの
測定する方法で,この方法では1
0数 nM という値が得ら
存在下で,pH8.
4までアルカリ側に持っていくと,神経
れた32,33).ここでは組織非存在下で Na2S から放出された
細胞やグリア細胞のホモジネートから H2S が放出される.
H2S をコントロールとしているが,遊離 H2S は即時に組織
それでは,生理的条件下で細胞内がアルカリ性に傾くこと
に吸収されるため,サンプル値が低めに補正されてしま
はあるだろうか.もちろんここで考える pH 変化は全身性
う.第2の方法は,チオールに結合する蛍光色素であるモ
のものではなく,あくまでも細胞局所における変化であ
ノブロモビマン(monobromobimane)と質量分析を組み合
る.ちなみに,アシドーシスやアルカローシスにおける全
わせた方法である34).組織ホモジネートにモノブロモビマ
身性の pH 変動はたかだか0.
2である.神経細胞が興奮す
ンを加え,チオールと結合したモノブロモビマンを回収す
ると Na+が細胞内に流入し,K+が細胞外に放出される.
る.これを質量分析で解析し,H2S と結合したモノブロモ
これによって神経細胞とそれを取り囲むアストロサイトと
ビマン量から,H2S 量を決定する.この方法では数 μM の
+
の細胞間 K 濃度は1
0∼1
2mM に達し,アストロサイトの
H2S が検出された.第3の方法は,組織ホモジネートに銀
膜電位が脱分極する.Brooks と Turner によると,これに
粉を混ぜ,遊離 H2S が銀粒子表面に硫化銀として補足さ
続いてアストロサイトの Na+/HCO3−トランスポーターが
れるという反応を利用するものである.銀粉を界面活性剤
活性化され,細胞内 HCO3−濃度が上昇し,アルカリ性に
で洗浄し,表面に付着したタンパク質を除去した後,硫化
図2 H2S 合成,貯蔵,放出
H2S は CBS,CSE,3MST/CAT 経路により生合成される.その後,シグナ
ル分子として働き,結合硫黄プールに貯蔵される.細胞内がアルカリ側に
傾くと貯蔵された H2S が放出される.
6
6
〔生化学 第8
5巻 第2号
銀をチオ尿素と硫酸で H2S に変換してガスクロマトグラ
たりの改善が待たれる.
フィーで測定する25).この測定法の検出限界は,組織内濃
5. H2S 合成酵素
度に換算して9.
2μM となり,組織内遊離 H2S は検出限界
以下であった.前述のように,遊離 H2S は組織に即座に
合成酵素には CBS,CSE,
3MST の三つが知られている.
吸収されてしまうため,これらの方法で測定された H2S
は吸収されきれずに残った余剰 H2S が定常状態量として
測定されたものである.
H2S の生産,代謝,酸化,蒸発,そして結合型硫黄への
1)CBS
CBS はピリドキサル5′
-リン酸(pyridoxal 5′
-phosphate:
PLP)依存性酵素で,多くの組織に発現しており,肝臓,
取り込みは,いずれも速やかに行われるため,これらの測
腎臓に特に多く, 脳ではアストロサイトに局在する1,35∼38).
定法では,細胞内 H2S 動態をリアルタイムで測定するこ
小脳のプルキンエ細胞や海馬の錐体細胞などの神経細胞に
とはできない.そこで開発されたのが,次に述べる H2S
も局在するという報告もあるが,私たちのグループでも同
感受性蛍光プローブである.
じ抗体で検討を行ってはみたが,相変わらずアストロサイ
4. H2S 感受性蛍光プローブ
トにしか検出できなかった.CBS はシステインあるいは
システインとホモシステインを基質として,H2S 合成を行
H2S 感受性蛍光プローブの開発は最近になって急速に進
う39).酵素活性は S-アデノシルメチオニン(S-adenosyl me-
み,2
0
1
1年に相次いで報告された.H2S との反応様式から
thionine:SAM)によって増強されるため,SAM の細胞内
3種類に分類される.1)アジ化物と H2S からアミンがで
濃度変化が,CBS による H2S 合成を調節していると考え
きる反応により電子が移動し,蛍光発光体が蛍光を発す
られる1).この早い調節に加えて,上皮増殖因子(epider-
る.SF1,SF2や DNS-Az な ど の プ ロ ー ブ が こ れ に 属 す
mal growth factor:EGF)
,トランスフォーミング増殖因子
1
7,
1
9)
る
.2)H2S が電子親和性基と反応しチオールを有する
(transforming growth factor:TGF)α,環状アデノシンリン
中間体を形成し,これが隣接するエステル基と反応して環
酸(cyclic adenosine monophosphate:cAMP)やデキサメタ
状になる.このとき,蛍光発光体が遊離し,脱クエンチン
ゾンなどによる発現上昇により CBS のレベルがゆっくり
グにより蛍光を発する.または,電子が蛍光発光体に移動
増加する36).阻害剤としてはヒドロキシルアミンとアミノ
し,発光を発する.Probe1,SFP-1,SFP-2がこれに属す
オキシ酢酸が知られているが,いずれも特異性が低く,新
る18,19).3)銅イオンは環状のアザマクロ環と安定な複合体
しい阻害剤の開発が待たれる.
を形成して,蛍光発光体が発光しないように抑制をかけて
いるが,H2S が銅イオンを追い出すと脱抑制により蛍光を
発する.HSIP-1がこれに属する21).
2)CSE
CSE は肝臓,腎臓をはじめ胸部大動脈,回腸,門脈,
チオールを検出するプローブは早くから開発されてい
子宮,膵島など多くの組織に認められる2,9,35,40).この酵素
た.このプローブは,生体内で最も安定で,しかも mM
の発現は各種刺激に応じて変化する.例えば,インスリン
オーダーで存在するグルタチオンと真っ先に反応する.シ
分泌を刺激する濃度のグルコースにより CSE の発現が誘
ステインも約1
0
0μM 存在するため,それ以下の濃度で存
導される.CSE はシステインとホモシステインから H2S
在する物質はほとんど検出できない.もし検出されても両
を合成するが,その使用比率は,細胞内の両アミノ酸の量
物質による大きなバックグラウンドのなかに埋没してしま
に応じて異なる.正常な状態では,7
0% がシステインか
う.そこで,H2S 蛍光プローブの開発では,特に,グルタ
ら,残りの3
0% がホモシステインから生産されるが,ホ
チオンやシステイン存在下においても H2S を明確に区別
モシステイン血症など,ホモシステイン濃度が上昇する疾
して測定できることに重点が置かれた.どのプローブも
患では,ホモシステインからの生産が多くなる41).私たち
H2S に対する親和性がグルタチオン,システインに対して
を含む複数のグループによるノーザンブロットやウェスタ
高く,特に,HSIP-1では1,
0
0
0倍の差があり,1
0μM H2S
ンブロットによる解析の結果から,脳には CSE が発現・
と1
0mM グルタチオンとの区別ができる.ただ,これら
局在しないことが示されたが,あるグループからの報告で
七つのプローブ間では,H2S との反応終了時間が大きく異
は脳にも CSE 酵素活性が認められるという1,42∼44).CSE と
なり,2
5秒から1時間と幅広い.反応終了時間が長いも
のアミノ酸配列相同性がなく,CSE 活性を示す酵素が存
のはリアルタイムの検出とは言いがたい.また,どのプ
在するのかもしれない.
ローブも非可逆反応で一旦 H2S と反応すると元に戻らな
いため,周りの H2S が消滅してしまった後も,蛍光を発
3)3MST/CAT
し続けていることになる.また,H2S が刺激により減少す
つい最近まで,H2S 合成酵素としては CBS と CSE の二
る場合は,H2S の減少を測定できないことになる.このあ
つの酵素が研究の中心であった.ところが私たちは,CBS
6
7
2
0
1
3年 2月〕
ノックアウトマウス脳も H2S を産生し得ることを見つけ,
6. シグナル分子としての機能
3MST/システインアミノトラ ン ス フ ェ ラ ー ゼ(cysteine
aminotransferase:CAT)経路に行きついた5,45,46).
1)シナプス活動の修飾
神経細胞は,シナプスに神経伝達物質を放出することに
この合成経路ではまず,CAT によって,
より,次の神経細胞に情報を伝達する.神経細胞をある条
システイン+α-ケトグルタル酸
→ 3-メルカプトピルビン酸+グルタミン酸
件で頻回刺激するとシナプス電位が増幅され,刺激後数時
の反応が進み,続いて,
3MST によって H2S が生産される.
間以上その状態が継続する.シナプスにおける記憶形成モ
デルとして理解されている海馬の長期増強(LTP)である.
3-メルカプトピルビン酸
→
ピルビン酸+H2S
H2S 作用として初めて私たちが報告したのが,この LTP
脳においては,嗅球マイトラル細胞,小脳プルキンエ細
誘導促進であった1).頻回刺激も刺激が弱い場合は LTP 誘
胞,大脳及び海馬錐体細胞などの神経細胞に局在してお
導には至らないが,このような弱い刺激条件でも,H2S が
り,CBS がアストロサイトに局在するのとは対照的であ
同時に存在すると LTP が誘導される.同時に存在するこ
る5).眼では視神経に,血管系では内皮細胞に局在してい
とが重要で,頻回刺 激 の 前 後 に H2S が 存 在 し て い て も
6,
4
7∼5
0)
LTP は誘導されない.二つの刺激が同時に入力された場
3MST/CAT 経路が H2S を生産し得ることは,1
9
7
0年代
合にその効果が大きくなるという Hebb のルールに従って
る
.
にすでに報告があった.ただ,)反応に使われた基質濃度
いる.
が非生理的に高かったことや,*3MST が3-メルカプトピ
LTP の誘導には N-メチル-D-アスパラギン酸(N-methyl-
ルビン酸(3MP)から H2S を生産するときに,還元剤ジチ
D-aspartate:NMDA)受容体の活性化が必要であることは
オトレイトール(DTT)が必要であったこと(すなわち,
良く知られている.H2S は単独では NMDA 受容体に何ら
DTT に対応する内在性物質がわからなかったこと)
,ま
作用を及ぼさないが,神経伝達物質によって活性化された
た,+3MP の代謝物が尿中に存在することは確認されて
NMDA 受容体の反応を増強 す る.一 方,活 性 化 さ れ た
いたが,実際に3MP が生体内に存在するかどうかが確認
AMPA 受容体の反応性には影響を与えず,NMDA 受容体
されていなかったことから,3MST/CAT 経路が生理的な
に特異的な作用である.その機序として考えられるのは,
H2S 合成経路とは考えられていなかった.そこで私たち
NMDA 受容体にあるシステイン残基のジスルフィド結合
は, DTT に対応する内在性の還元性補助因子を探索した.
の還元である53).NMDA 受容体ではこのジスルフィド結
そして生体内濃度である2
0μM のチオレドキシンが同濃
合が還元され開裂すると活性が上昇し,酸化されジスル
度の DTT の4倍の効率で3MST から H2S 生産を促進する
フィド結合を形成すると活性が減少することが知られてい
こと,また,4
0μM ジヒドロリポ酸(dihydrolipoic acid:
る.この機序は,最初は還元剤 DTT による作用として見
DHLA)が同濃度の DTT とほぼ同程度に促進することを
つかった.私たちは,この作用が NMDA 受容体の反応性
明らかにした51).また,3MP の測定法を確立し,中間体と
のみならず,LTP の誘導についても当てはまることを明
して3MP が存在していることを確認し,3MST/CAT 経路
らかにした.DTT 共存下で頻回刺激を行うと LTP が誘導
が生理的に機能し得ることを示した.
される.ところが,面白いことに,DTT による増強後,
2+
この研究の途上,CAT 活性が細胞内 Ca によって調節
DTT の1/1
0濃度の H2S を加えるとさらに大きな増強が起
されることを発見した47).これは,3MST/CAT 経路によ
こった1).DTT の方が H2S よりも還元力は強い.では,こ
る H2S 合成が細胞内 Ca2+によって制御されることを示し
の違いは何に由来するのだろうか.H2S はジスルフィド結
ている.この H2S 合成経路は,細胞内 Ca2+濃度が低いと
合を還元して開裂後,チオール基に S を結合させ,過硫
2+
きに活性が高く,細胞内 Ca 濃度が上昇すると酵素活性
化する.スルフヒドリル化である54,55).一方,DTT はスル
が抑制される.カルモジュリンやその阻害剤 W7は活性に
フヒドリル化を起こさず,ジスルフィド結合開裂で反応が
は影響を及ぼさなかったため,カルモジュリンはこの経路
終了する(図3)
.ここで,スルフヒドリル化について少
2+
調節に関与していない.CAT には Ca 結合モチーフやカ
し補足しておきたい.これは Kato らによって初めて報告
ルモジュリン結合部位などは見つかっていない.ミトコン
された機構で,最近になって Snyder らによって再提案さ
ドリアに局在する三つの脱水素酵素でも同様の現象が報告
れた.酵素や受容体のセリン,トレオニン,チロシンがリ
されている52).これらの酵素でもカルモジュリン結合部位
ン酸化され,その活性が変調することはよく知られてい
2+
2+
や Ca 結合モチーフなどが認められていないが,Ca に
る.同じように,タンパク質のシステインに硫黄が付加す
よって活性が制御されている.
ると,その活性が変調するという機構である.
他のガス性伝達物質である一酸化窒素(NO)や一酸化
炭素(CO)でも LTP の誘導が起こるが,その機序は H2S
6
8
〔生化学 第8
5巻 第2号
図3 H2S による NMDA 受容体活性化メカニズム
H2S は NMDA 受容体のシステインジスルフィド結合を還元して開裂させ,受容体のグルタ
ミン酸感受性を上昇させる.さらにスルフヒドリル化により,より一層感受性を高める.
と は 異 な る56∼58).NO は ア ル ギ ニ ン か ら NO 合 成 酵 素
については他の組織でいくつか報告がある.たとえば,排
(NOS)によって,また,CO はヘムからヘムオキシゲナー
尿筋では H2S により TRP チャネルが活性化されると収縮
ゼ(heme oxygenase:HO)によって,後シナプス性に生
が起こるし,気道の収縮も H2S による TRPV1チャネルの
産される.両者とも,前シナプスに拡散し,グアニル酸シ
活性化によることが報告されている60,61).
ク ラ ー ゼ を 活 性 化 し,cGMP 合 成 を 促 す.こ れ が G-キ
アストロサイトによる LTP 誘導調節に話を戻そう.
ナーゼを活性化し,神経伝達物質グルタミン酸の放出量を
LTP 誘導に対するアストロサイトの関与は,アストロサ
増大する.H2S が後シナプスにおいて NMDA 受容体の活
イトの細胞内 Ca2+を上昇させないようにする,あるいは,
性促進を行うのに対して,NO や CO は後シナプスで合成
アストロサイトからの伝達物質放出を阻止すると LTP 誘
され,前シナプスに拡散して,伝達物質放出量を増大す
導が起こらないことからも支持される62).
る.逆行性神経伝達物質と呼ばれるゆえんである.
面白いことに,成熟していないアストロサイトには H2S
H2S によるもう一つのシナプス伝達修飾はグリアの一種
反応性がなく,成熟したアストロサイトのみに H2S 反応
であるアストロサイトを介して行われる.シナプスの周り
性が認められる63).また,EGF,TGFα,cAMP,インター
は,アストロサイトが取り巻いている.かつてアストロサ
ロイキン1β などによって活性化されたアストロサイトに
イトは神経細胞に栄養を与えたり,支えたりするだけの細
も反応性がない.脳が損傷を受けると,これら EGF など
胞と考えられていた.しかし,現在では,神経伝達物質受
の因子が神経やグリアから放出され,アストロサイトが活
容体を持ち,神経伝達物質に反応することがわかってい
性化される.そのような状況下では,神経系が誤ったシグ
る.また,反応したアストロサイトは,今度は逆にシナプ
ナルを伝搬しないように,アストロサイトの H2S 反応性
ス伝達を調節する.H2S は NMDA 受容体においては,単
がなくなるのかもしれない.
独では作用を示さず,グルタミン酸の作用を増強するだけ
であった.これに対して,アストロサイトでは H2S 単独
2)視神経における Ca2+制御
で Ca2+流入を誘起する59).この作用は La3+,Gd3+,ルテニ
脳の神経細胞では H2S によって,NMDA 受容体を介し
ウムレッドなどの transient receptor potential(TRP)チャネ
た Ca2+流入の増大が誘導され,アストロサイトでは TRP
ル阻害剤で抑制される.すなわち,H2S は TRP チャネル
チャネルを介した Ca2+流入が起こる64,65).一方,視神経で
を活性化することにより,アストロサイトに Ca2+流入を
は H2S によって Ca2+流入が抑制される47).私たちが視神経
2+
起こす.一旦 Ca 流入が起こると隣り合うアストロサイ
2+
に興味をもったのは,3MST と CAT が視神経に共存して
wave として次々と伝搬していく.このように
いたこと,3MST/CAT 経路が低濃度の Ca2+によって活性
H2S によって活性化されたアストロサイトがシナプス伝達
化されることによる.光照射により光受容細胞内 Ca2+濃
を修飾するという機序が,もう一つのシナプス伝達修飾機
度は1
0nM まで減少し,暗闇では,Ca2+濃度が6
0
0nM に
序である.ちなみに,H2S による TRP チャネルの活性化
上昇する66).これは,脳の神経細胞では活性化状態によ
トに Ca
6
9
2
0
1
3年 2月〕
り,Ca2+濃度が2∼3μM に上昇し,定常状態では1
0
0nM
弛緩する拡散性物質が放出されると提案し,この物質を
に低下するのとちょうど正反対である.しかも,視神経に
endothelium-derived relaxing factor(EDRF)と名付けた67).
おける Ca2+濃度変化は脳の神経細胞と比較して低濃度側
これが後に,NO として同定されたことはご存じのとおり
にシフトしている.視神経ではこの低い Ca2+濃度範囲内
である.その後,Garthwaite らによって EDRF が脳にも存
で,3MST/CAT 経路の H2S 生産が大きく変化する.私た
在することが確認され,Bredt と Snyder によってアルギニ
ちの得た結果から,視神経において,H2S は次のような役
ンから NO を合成する NO 合成酵素(NOS)が脳で同定さ
割を果たすと考えられている.光受容細胞が光照射される
れ,NO が脳においても生理作用を持つことが提案され
と cGMP 調節性チャネルが閉じて,Ca2+流入が抑えられ,
た68,69).多くの研究者によりその機能の探索が行われ,海
細胞内 Ca2+濃度が低く抑えられる.これにより,光受容
馬長期増強を促進する逆行性神経伝達物質として機能する
細胞から水平細胞への神経伝達物質グルタミン酸の放出が
ことが明らかになったことはすでに述べた.NO は平滑筋
抑えられる.一方,水平細胞では,グルタミン酸受容体が
弛緩因子として発見され,脳においても神経伝達物質とし
閉じた状態が継続されるため,細胞内 Ca2+濃度が低く抑
て機能することが確認された.それなら,脳で LTP の誘
えられる.かくして,光受容細胞と水平細胞において,
導を促進する H2S は, 平滑筋でも機能するのではないか,
3MST/CAT 経 路 が 活 性 化 さ れ,H2S の 合 成 が 促 進 さ れ
という,大胆を行き過ぎた(ほぼ科学的根拠のない)仮定
る.水平細胞にある液胞型(vacuolar-type H+-ATPase:V-
を立てた.実際,胸部大動脈,門脈,回腸では,CBS や
ATPase)の活性化部位にはシステインジスルフィド結合
CSE が発現しており,これらの組織は H2S によって弛緩
が存在し,これが還元されると V-ATPase は活性化され,
した2).ただ,NO と違い H2S は酸化されやすいため,酸
酸化されると不活性状態になる.H2S により V-ATPase が
素分圧の高い太い動脈では主に NO が弛緩作用を示し,酸
活性化されると H+が放出され,光受容細胞の Ca2+チャネ
素分圧の低い末梢血管では H2S が作用すると考えられて
2+
ルを抑制し,細胞内 Ca 濃度が低く保たれる.視神経細
いる70).末梢血管の方が,抵抗が大きく,血圧への影響が
2+
胞では,他の細胞に比べ Ca 濃度が低く保たれているこ
大きいため,H2S の調節によって血圧調節ができるのでは
とを先に述べたが,この機構により,他の細胞に比べてさ
ないかという期待がもたれている.面白いことに,NO と
らに Ca2+濃度を低く保つことが可能になる.この役割を
H2S の効果には相乗作用があり,低濃度でも強い弛緩が引
4
7)
H2S が担っていると考えている (図4)
.
き起こされる2).一方,NO によって H2S が酸化され,相
乗作用が認められないという,相反する報告もある71).最
3)平滑筋弛緩
胸部大動脈を低濃度のアセチルコリンで刺激すると弛緩
する.この時,内皮を取り除くと弛緩は起こらない.この
ことから,Furchgott と Zawadzki は内皮から血管平滑筋を
近,NO と H2S との相乗効果を狙って,両者を放出する
「NOSH 化合物」が開発された72).この化合物は強い抗が
ん作用を示し,治療への応用が期待されている.
EDRF に話を戻そう.EDRF が NO と同定された後,い
くつかの矛盾点が浮上した.そのうちの一つは,EDRF は
平滑筋を弛緩し,平滑筋の膜電位を過分極する一方,NO
は弛緩を起こすが,過分極効果は極めて弱いことであ
る73).これより,EDRF には NO 以外のコンポーネントが
存在するだろうと考えられている.そのうちの一つ,過分
極 を 誘 起 す る 物 質 は,endothelium-derived hyperpolarizing
factor(EDHF)と命名された.候補物質として,アラキド
ン酸代謝物,プロスタサイクリンやエポキシエイコサトリ
エン酸,過酸化水素やカリウムイオンなどが挙げられてい
るが,まだ同定には至っていない74).H2S は平滑筋を弛緩
+
し,ATP 依存性 K(K
ATP)チャネルを活性化し,膜を過分
極する.私たちのグループを含め他のグループも CSE は
血管平滑筋に存在することを確認している.しかし,CSE
は内皮には存在しないという自らの当初の結果を覆し,再
精査により CSE は内皮にも存在することが確認されたの
図4 視神経における H2S の働き
H2S は水平細胞の V-ATPase を活性化し,H+を放出させる.こ
れが,光受容細胞の L-型 Ca2+チャネルを抑制し,細胞内 Ca2+
濃度を低く保つ.
で,H2S は EDHF で あ る と 主 張 し て い る グ ル ー プ が あ
る75,76).私たちも Olson らも,CSE が内皮に存在すること
は否定的である6,77).私たちは,もう一つの生産経路の酵
7
0
〔生化学 第8
5巻 第2号
図5 血管平滑筋弛緩因子としての H2S
血管内皮に局在する3MST/CAT 経路によって H2S が生合成され,血管平滑筋を弛緩させる.
また,血管平滑筋に局在する CSE も H2S を合成し,弛緩作用に寄与していると考えられる.
素3MST と CAT が内皮に共存しており,内皮ライセート
に基質システインと α-ケトグルタル酸を加えると H2S が
生産されることを確認した.一方,CSE はシステインの
よって制御されているとは考えにくい.
7. 細胞保護因子としての機能
みから H2S を生産し,α-ケトグルタル酸を必要としない.
薬もさじ加減で毒になる.であれば,毒も薬になり得る
内皮ライセートからの H2S 生産には α-ケトグルタル酸が
はずである.H2S はシトクロム c オキシダーゼを阻害して
不可欠であることを確認した.これより,内皮では CSE
細胞死を引き起こす,とされている.そこで,H2S を発生
ではなく,3MST/CAT 経路によって H2S が生産されると
させる NaHS を培養神経細胞初め各種の細胞に加えてみ
考えている.Olson らも内皮における3MST の局在を確認
た.ところが,1
0
0μM まで濃度を上げても,細胞はいっ
している.これらの結果から,内皮の3MST/CAT 経路に
こうに死ななかった.逆に,酸化毒性に対して強い抑制作
よって生産された H2S が,EDRF の一つのコンポーネント
用が認められた3).ここでは,1,減少したグルタチオンレ
として働く可能性があると考えている.一方,EDHF によ
ベルの回復,2,活性酸素(ROS)スカベンジャーとして
2+
+
る過分極はアパミンによって阻害される Ca 依存性 K
の働き,3,抗アポトーシス効果,4,小胞体(ER)スト
チャネルが担うという報告があり,KATP チャネルに依存し
レス応答の調節,5,細胞内カルシウム濃度調節,6,K+
ないことからも,H2S は EDHF ではないだろうと考えてい
チャネル,Cl−チャネルの活性化による異常興奮の抑制,
る(図5)
.
について概説する(図6)
.
CSE ノックアウトマウスで は,血 圧 上 昇 が 報 告 さ れ
た75).H2S は血管平滑筋を弛緩するので,それを生産する
1)減少したグルタチオンレベルの回復
CSE が欠損すれば,血圧は上昇することは予想される.
H2S を培養細胞に投与すると,MTT や WST-8などのテ
ところが,他グループの作製した CSE ノックアウトマウ
トラゾリウム塩を還元して青色を呈し,細胞の代謝活性を
スでは血圧の変化は観察されなかった78).前述のように,
上昇させているように見える.このような現象は神経細胞
3MST/CAT が血管内皮に共局在しているため,平滑筋に
で特徴的に観察された80).これは H2S の還元性物質として
局在している CSE のみが欠損しても影響が見られないと
の効果と思われるかもしれないが,H2S は培養皿に加え
思 わ れ る.NO に お い て も,血 管 内 皮 か ら 放 出 さ れ る
て,数分で半減し,1時間もするとほとんど蒸散して消失
EDRF に 加 え,NO 様 の 物 質 が 血 管 平 滑 筋 に 存 在 し,
する.MTT や WST-8などのテトラゾリウム塩を加えるの
7
9)
muscle-derived relaxing factor(MDRF)と呼ばれている .
はその後である.この現象は当初,H2S によってシトクロ
このように H2S の場合も,内皮と平滑筋の両者から弛緩
ム c オキシダーゼが阻害され呼吸鎖が抑制されることに
因子が放出され血管の収縮・弛緩を調節しているものと考
より,細胞内が還元状態に傾いたためと考えられた.とこ
えられる.Wang らのグループは CSE ノックアウトマウス
ろが,アジ化物によりシトクロム c オキシダーゼを阻害
の論文に,CSE の活性が Ca2+/カルモジュリンによって制
しても,このような現象は見られなかった.これより,こ
7
5)
2+
御されることを報告している が,1∼2mM Ca という非
の現象はシトクロム c オキシダーゼ阻害によるものでは
生理的濃度で検討している.これは細胞外濃度であり,細
ないと結論付けた.
胞内では細胞が興奮したときでも高々3μM に達する程度
グルタミン酸による神経細胞毒性には,)興奮毒性と*
である.これより,CSE 活性が Ca2+/カルモジュリンに
酸化毒性の2種類がある81,82).)は NMDA 受容体から流
7
1
2
0
1
3年 2月〕
のうち,γ-GCS の活性が H2S によって上昇するが,GS の
活 性 に は 影 響 し な い.こ の H2S の 作 用 は,細 胞 の ラ イ
セートに加えても効果はなく,あくまで細胞外に投与した
ときのみに認められる.これは,H2S の作用が細胞表面の
感受性分子を活性化することによって起こることを示して
いる.ポプラなどの植物は大気中から H2S を吸収して,
グルタチオン合成を上昇させるが,ここでも γ-GCS 活性
が上昇しており,動物・植物を通して,共通の機構が働い
ているようである84).また,酵母では,酸化ストレスによ
り H2S が生産されることが報告されており,酸化ストレ
図6 H2S の細胞保護機能
H2S はシステイントランスポーターとシスチントランスポー
ターを活性化して,細胞内システイン濃度を上昇させ,また,
生合成酵素を活性化することによりグルタチオン合成を促進す
る.ER ストレスの制御,NF-κB を制御することにより,細胞
死を抑制する.また,細胞内 Ca2+濃度を低く保ち,抑制性チャ
ネルを活性化することにより,細胞の異常興奮を抑制する.こ
れらの働きにより,細胞をストレスから保護している.
スを回避するために H2S が機能しているようである85).
この H2S による抗グルタミン酸酸化毒性作用は H2S 投
与後1
6時間から2
4時間後に顕著に見られる.培養皿に添
加した H2S はすぐに消失するが,この短い時間の間に細
胞保護に関わるシグナルが伝搬し,細胞を酸化ストレス抵
抗性にする.細胞内の H2S 濃度は低く,グルタチオンは
mM オーダーで存在する.H2S 自身還元性物質であるが,
入した Ca2+や,AMPA 受容体の活性化に伴う脱分極によ
より大量に存在するグルタチオン濃度を上昇させる方がよ
り膜電位依存性 Ca2+チャネルから流入した過剰の Ca2+に
り効率良く抗酸化を実現することができる.この項の最初
2+
よって細胞内 Ca 濃度が異常に上昇して引き起こされる.
に述べた,MTT や WST-8などのテトラゾリウム塩を還元
一方,*では高濃度のグルタミン酸により,グルタミン
する効果には,この上昇したグルタチオンが関与している
酸・シスチンアンチポーターが抑制され,細胞内へのシス
のではないかと考えられる.
チンの取り込みが減少し,細胞内で還元されてできるシス
テイン量が減少する.その結果,これを基質として生産さ
2)ROS スカベンジャー
れる細胞内主要還元性物質であるグルタチオンの濃度が下
海藻において,含硫化合物ジメチルスルホニオプロピオ
がり,細胞は酸化ストレスに脆弱性を示すようになる.胎
ナート(dimethylsulfoniopropionate:DMSP)やその代謝産
生1
7日目の胎児脳から調製した培養神経細胞で興奮毒性
物ジメチルスルフィド(dimethylsulfide:DMS)が ROS ス
が見られるのはイオンチャネル型グルタミン酸受容体が発
カベンジャーとして機能していることが発見された86).
現する培養2週間後である.一方,グルタミン酸・シスチ
H2S も還元性物質であることから,グルタチオンを介する
ンアンチポーターは,調製直後の細胞でもすでに機能して
抗酸化作用に加え,直接 ROS スカベンジャーとして機能
8
2)
いるため,グルタミン酸酸化毒性の良いモデルとなる .
しているのではないかと考えた.確かに,3MST/CAT を
グルタミン酸によって神経細胞は死滅するが,H2S 共存在
発現した細胞では,グルタミン酸や過酸化水素による酸化
下では生き生きとしている.細胞内グルタチオンの濃度
ストレスに抵抗性を示す83).3MST/CAT は ROS が最も多
は,グルタミン酸投与により減少するが,H2S によって還
く生成される細胞小器官ミトコンドリアに共局在してお
3)
元型グルタチオンが増加する .血液中ではシステインは
り,ここでは,H2S もスカベンジャーとして機能している
酸化型のシスチンとして存在すると考えられていた.しか
と考えられる.また,アルツハイマー病,パーキンソン
し最近では,2
0μM 程度ではあるが,システインとして
病,ハンチントン病などの神経疾患では,ペルオキソ亜硝
も存在することがわかり,グルタミン酸・シスチンアンチ
酸(ONOO−)や次亜塩素酸(HOCl)が増加するが,これ
ポーターによって取り込まれるシスチンよりもシステイン
らによる細胞死に対しても H2S が有効であると報告され
トランスポーターによるシステインの取り込みの方が効率
ている87,88).
8
3)
が良いことがわかった .H2S はこのようにシスチン・シ
ステインの取り込みを増加させる.
細菌が抗生物質に対して抵抗性を示すようになることは
良く知られているが,この作用に H2S が関わっているら
グルタチオン合成には,グルタミン酸とシステインから
しいことが最近報告された16).抗生物質によってバクテリ
ジペプチドを合成する律速酵素 γ-グルタミルシステインシ
アの呼吸鎖が活性化され,硫黄鉄クラスターから鉄が遊離
ンターゼ(γ-glutamylcysteine synthase:γ-GCS)と,このジ
し,フェントン反応により ROS が生産される.これ に
ペプチドにグリシンを付加するグルタチオンシンターゼ
よって DNA が損傷を受ける.細菌は,スーパーオキシド
(glutathione synthase:GS)の二つの酵素が関与す る.こ
ジスムターゼ(superoxide dismutase:SOD)
,カタラーゼ,
7
2
〔生化学 第8
5巻 第2号
NOS を活性化して,ROS に対抗することは良く知られて
保護するスカベンジャーとしての働きがあることも加えて
いる.最近の報告では,哺乳類の CBS,CSE,3MST に対
おきたい.
応する細菌の酵素を欠損させると,細菌の抗生物質感受性
が高くなり,抵抗性が見られなくなる.このような細菌に
5)細胞内 Ca2+濃度の制御
H2S を投与すると,抵抗性が回復するというのである.細
先にも述べたが,視神経において H2S は細胞内 Ca2+濃
菌は NO と H2S を生産し,両物質間には抗生物質抵抗性に
度を低く抑えるように働く.これは視神経の光に対する感
対して相乗効果があることも報告されている.このことか
受性を上げるのに役立っている.また,この機構のおかげ
ら,H2S の細胞保護作用は種を超えた防御機構であると考
で,Ca2+濃度上昇による細胞障害からも守られていること
えられる.細菌の CBS,CSE,3MST の構造は進化により
になる.視神経は酸素消費も多く,常に光にさらされてお
哺乳類のそれとはかなり異なっており,これをターゲット
り,酸化ストレスを受けやすい.強烈な光に曝露された場
にすることにより,効果の高い新しい抗生剤が開発できる
合は,H2S による細胞内 Ca2+濃度を低く抑える細胞保護機
のではないかと期待されている.
構が破たんし,視細胞が障害を受ける.多くの視細胞が死
滅し,ROS による DNA の損傷も観察される.このような
3)アポトーシス抑制
状況下で,H2S 投与が視神経障害を軽減することがマウス
虚血再還流によって,心筋に障害が残ることは良く知ら
で示された47).酸化ストレスや光による視神経の障害の
れている.神経細胞保護作用に続いて,H2S 投与によって
際,H2S 投与あるいは H2S 合成酵素を調節することで,視
虚血再還流障害を極力抑えられることが明らかになった.
神経障害を治療できると期待される.
ミトコンドリアの構造と機能も良く保たれ,TUNEL 陽性
細胞の数も減少し,カスパーゼ活性も抑えられる4).また,
6)膜電位の安定化
心筋に CSE を高レベルで発現するトランスジェニックマ
+
ATP 依存性 K(K
ATP)チャネルを活性化すると,グルタ
ウスでは,虚血再還流に抵抗性を示し,障害が抑えられる
ミン酸による興奮毒性が弱められることは良く知られてい
ことがわかった. これらの結果から H2S を外から補うか,
る.
酸化毒性においてもこれはあてはまるようである.
KATP
あるいは,H2S 生合成系を活性化することによって,虚血
チャネルや cystic fibrosis transmembrane receptor(CFTR)Cl
再還流障害による疾患の治療が可能になるのではないかと
チャネルを阻害すると,H2S によるグルタミン酸酸化毒性
期待されている.また,H2S はチオレドキシンなどの抗酸
抑性効果が減弱する91).これは,神経細胞の異常な興奮を
化物質の発現を制御する転写因子 Nrf2の核内移行を促進
抑えることによる効果であろうと考えられる.虚血再還流
し,抗酸化物質量を増加することによって,心筋障害を抑
による心筋障害においても KATP チャネルが保護的に働く
えると報告されている89).最近,Snyder らは H2S が NF-κB
という報告もある.これに対し,KATP チャネルは関与して
をスルフヒドリル化することによって,アポトーシスを調
おらず,
H2S による心筋保護作用は,
L-型 Ca2+チャネルの阻
1
5)
節すると報告している .
4)小胞体ストレス応答の調節
害によるという報告もあり,
統一見解は得られていない92,93).
8. 疾 患 へ の 関 与
タンパク質は小胞体(ER)で合成され,システインジ
良い面ばかりを書き連ねたが,H2S はやはり毒かと再確
スルフィド結合を形成し,機能を持つ立体構造を構成し
認する面もある.H2S 代謝が障害を受け恒常的に H2S 濃度
て,ゴルジ体へと運ばれる.このシステインジスルフィド
が上昇する疾患も見つかっている.生成された H2S は感
結合形成の際に,ROS が発生する90).タンパク質が適切な
受性分子あるいは受容体に働きさまざまな作用を発揮す
立体構造を形成し損ねて,ER に蓄積すると,細胞ではア
る.一部は結合型硫黄として細胞に貯蔵され,それ以外は
ポトーシスに向けてのカスケードが始動する.ER ストレ
ミトコンドリア膜上にあるスルフィド―キノンオキシドレ
スにより H2S の生産が促進され,生成した H2S はチロシ
ダクターゼ(sulfide-quinone oxidoreductase:SQR)とそれ
ンホスファタ ー ゼ(protein tyrosine phosphatase:PTP)を
に続く経路によって代謝される.ま ず,SQR-ペ ル ス ル
スルフヒドリル化し,その活性を抑制する,と Tonks らは
フィドができ,硫黄ジオキシゲナーゼによって亜硫酸
1
4)
報告している .
PTP は protein kinase-like ER kinase(PERK)
(H2SO3)と な り,さ ら に ロ ダ ネ ー ゼ に よ り チ オ 硫 酸
を抑制する.つまり,H2S は多くのタンパク質合成を調節
(H2S2O3)に代謝される94).エチルマロン酸脳症では,硫黄
することによって ER ストレスを制御することになる.
ジオキシゲナーゼをコードした遺伝子 ETHE1に変異が起
ER ストレスと酸化ストレスは密接な関係にあり,ここで
こる.ETHE1ノックアウトマウスでは,この疾患同様に
の H2S のもう一つの重要な働きとして,酸化ストレスが
H2S が代謝されずに常に高濃度で存在するため,脳と骨格
強くかかる ER において,タンパク質を酸化ストレスから
筋に障害が現れ,ETHE1 欠損患者と良く似た症状を示
7
3
2
0
1
3年 2月〕
す95).同一グループの続報では H2S の供給源として酵素に
症性サイトカインの放出を抑え,グルタチオン濃度を上昇
よって生産されるものと,腸内細菌によって生産されたも
させることによって酸化ストレスを軽減する効果,さらに
のとを考えており(ただし,粘膜上皮がバリアーとなるた
はモノアミンオキシダーゼ(monoamineoxydase:MAO)を
め H2S は消化管からは吸収されず,血中にはほとんど入
抑制することによってドーパミンのシナプス滞留時間を延
らないとされている)
,腸内細菌を抑えるメトロニダゾー
長する効果がある.パーキンソン動物モデルでは良い成績
ルとグルタチオン合成を上昇させる N-アセチルシステイ
が得られている.H2S の心筋保護作用を利用して,心臓の
ンを投与すると,ETHE1ノックアウトマウスで見られる
バイパス手術に H2S を投与する臨床試験が第2相に入って
障害を抑えることができ,さらには疾患患者の病態を改善
いたが,現在中止されている.この試験では Na2S を投与
9
6)
すると報告している .
していたが,瞬時に H2S を発生してしまうため,濃度の
ダウン症患者では染色体2
1番がトリソミーを形成し,
調節が難しいなどの問題が挙げられていた104).一方,N-
精神遅滞などを伴う.CBS も同じく染色体2
1番にコード
アセチルシステイン投与で生産された H2S により,慢性
されている(2
1q2
2.
3)
.ダウン症患者では CBS mRNA の
腎疾患治療を目指す臨床試験第3相が,2
0
1
2年1
0月に終
発現が健常人の1
2倍で,タンパク質レベルも3倍に増加
了した(ClinicalTrials.govidentifier:NCT0
1
2
3
2
2
5
7)
.
3
7,
9
7)
している
.またダウン症では,H2S の代謝産物である
1
0. お
チオ硫酸の尿中濃度が高いことも H2S の生産増加を裏付
わ
り
に
けている98).CBS 遺伝子多型が IQ に関わるとの報告もあ
脳内に存在することが発見された後,その生理的機能の
り,ダウン症患者ではエチルマロン酸脳症患者と同様に,
探索が脳に留まらず,心血管系,腎臓,免疫系,…と広が
H2S 濃度が恒常的に上昇し,症状に関わっているのかもし
り,そして,その医療応用へと研究が進んでいる.H2S の
れない99).
生理機能を明らかにしていく基礎研究と,H2S の薬理作用
長時間酸欠状態に曝されると脳に障害が現れる.このよ
を応用して医療に役立てていく,二つの方向へ研究が進ん
うな状況では,血液の流れが脳機能を大きく左右し,酸素
でいくと思われる.今後の生理機能研究の焦点は,H2S が
分圧が下がると脳血流が上昇するように調節されている.
細胞の局所においてどのような時間経過でどの程度の濃度
CO は末梢においては NO や H2S 同様血管弛緩を起こす
に達しそして消滅していくかという,H2S 動態を明らかに
が,中枢においては逆に血管を収縮させる.CO は末梢で
していくことである.H2S 蛍光プローブの利用はその第一
は,NO と同様にグアニル酸シクラーゼのヘムに結合しこ
歩であろう.H2S の動態が明らかになれば,提案されてい
れを活性化し,生産された cGMP により血管弛緩を起こ
る H2S 感受性分子あるいは受容体の寄与の解明が期待さ
すが,脳においては CO が,CBS のヘムに結合してこれを
れる.もう一つは,H2S 放出を促す生理的刺激が何である
抑制する100).その結果 H2S レベルが下がり,血管収縮が起
かが依然としてわかっていない.生産酵素を制御するメカ
こると考えられている.これは,酸欠時に起こる脳内血流
ニズムが明らかになってきた今,次はこの問題の解決が急
増大が,CBS ノックアウトマウスや CO 合成酵素 HO-2欠
がれる.
損マウスでは観察されないことからも裏付けられる.すな
医療応用研究には二つの方向性がある.一つは H2S の
わち,酸欠状態では HO-2による CO 生産が低下し,その
薬理作用を利用するもの,二つ目は,生体内の H2S 生合
結果 CBS の脱抑制が起こり,H2S 生産が上昇する.これ
成系を制御する方法を探索することである.一つ目は上述
より血管が弛緩し,血流が増大すると考えられる101).
したように,すでにいくつかのプレクリニカル化合物が開
9. 治
療
応
用
発されている.二つ目については,CBS が S-アデノシル
メチオニンによって活性促進されることと,3MST/CAT
H2S を治療に応用しようという試みも盛んに行われてい
経路が Ca2+によって制御されていることがわかってきた.
る.非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が胃腸に潰瘍を
CSE についてはいまだ不明である. これらを明らかにし,
起こすことは良く知られているが,H2S がこれを抑えるこ
それを制御する化合物を開発すれば,生合成系制御による
とから,H2S を徐々に発生させる NSAIDs 誘導体が前臨床
医療応用につなぐことができる.一方,H2S の生理機能に
段階の医薬品として数種類開発されている102).また,パー
ついて疑問を投げかける報告もある105).これらの疑問に明
キンソン治療薬として最も良く使われるレボド パ(L-
確に答え,H2S が生理活性物質として認識され,近い将来
Dopa)にも H2S 発生誘導体が開発されている103).パーキ
医療応用されることを願っている.
ンソン病は進行性疾患でその主な原因として酸化ストレス
が関わると考えられている.レボドパにはドーパミン濃度
謝辞
上昇効果はあるが,酸化ストレスを抑える働きはない.一
原稿への意見・校正をいただいた木村由佳博士に感謝い
方,H2S にはミクログリアから放出される神経障害性の炎
たします.本研究は独立行政法人国立精神・神経医療研究
7
4
〔生化学 第8
5巻 第2号
センターからの研究費補助金と日本学術振興会学術研究助
成基金助成金挑戦的萌芽研究(2
3
6
5
9
0
8
9)による助成を受
けて行った.
校正中に,D-システインを基質として硫化水素を合成
す る 経 路 を 発 見 し,Nature
Communications,1
0,1
0
3
8/
ncomms2
3
7
1,2
0
1
3に発表した.
文
献
1)Abe, K. & Kimura, H.(1
9
9
6)J. Neurosci.,1
6,1
0
6
6―1
0
7
1.
2)Hosoki, R., Matsuki, N., & Kimura, H.(1
9
9
7)Biochem. Biophys. Res. Commun.,2
3
7,5
2
7―5
3
1.
3)Kimura, Y. & Kimura, H.(2
0
0
4)FASEB J.,1
8,1
1
6
5―1
1
6
7.
4)Elrod, J.W., Calvert, J.W., Morrison, J., Doeller, J.E., Kraus,
D.W., Tao, L., Jiao, X., Scalia, R., Kiss, L., & Szabo, C.
(2
0
0
7)Proc. Natl. Acad. Sci. USA.,1
0
4,1
5
5
6
0―1
5
5
6
5.
5)Shibuya, N., Tanaka, M., Yoshida, M., Ogasawara, Y., Togawa, T., Ishii, K., & Kimura, H.(2
0
0
9)Antioxid. Redox Signal.,1
1,7
0
3―7
1
4.
6)Shibuya, N., Mikami, Y., Kimura, Y., Nagahara, N., &
Kimura, H.(2
0
0
9)J. Biochem.,1
4
6,6
2
3―6
2
6.
7)Zanardo, R.C., Brancaleone, V., Distrutti, E., Fiorucci, S.,
Cirino, G., & Wallace, J.L.(2
0
0
6)FASEB J.,2
0,2
1
1
8―2
1
2
0.
8)Yang, W., Yang, G., Jia, X., Wu, L., & Wang, R.(2
0
0
5)J.
Physiol.,5
6
9,5
1
9―5
3
1.
9)Kaneko, Y., Kimura, Y., Kimura, H., & Niki, I.(2
0
0
6)Diabetes,5
5,1
3
9
1―1
3
9
7.
1
0)Cai, W.J., Wang, M.J., Moore, P.K., Jin, H.M., Yao, T., &
Zhu, Y.C.(2
0
0
7)Cardiovasc. Res.,7
6,2
9―4
0.
1
1)Papapetropoulos, A., Pyriochou, A., Altaany, Z., Yang, G., Marazioti, A., Zhou, Z., Jeschke, M.G., Branski, L.K., Herndon,
D.N., Wang, R., & Szabo, C.(2
0
0
9)Proc. Natl. Acad. Sci.
USA.,1
0
6,2
1
9
7
2―2
1
9
7
7.
1
2)Olson, K.R., Dombkowski, R.A., Russell, M.J., Doellman, M.
M., Head, S.K., Whitfield, N.L., & Madden, J.A.(2
0
0
6)J.
Exp. Biol.,2
0
9,4
0
1
1―4
0
2
3.
1
3)Peng, Y.J., Nanduri, J., Raghuraman, G., Souvannakitti, D.,
Gadalla, M.M., Kumar, G.K., Snyder, S.H., & Prabhakar, N.R.
(2
0
1
0)Proc. Natl. Acad. Sci. USA.,1
0
7,1
0
7
1
0―1
0
7
2
4.
1
4)Krishnan, N., Fu, C., Pappin, D.J., & Tonks, N.K.(2
0
1
1)Science Sig.,4, ra8
6.
1
5)Sen, N., Paul, B.D., Gadalla, M.M., Mustafa, A.K., Sen, T.,
Xu, R., Kim, S., & Snyder, S.H.(2
0
1
2)Mol. Cell,4
5,1
3―2
4.
1
6)Shatalin, K., Shatalina, E., Mironov, A., & Nudler, E.(2
0
1
1)
Science,3
3
4,9
8
6―9
9
0.
1
7)Lippert, A.R., New, E.J., & Chang, C.J.(2
0
1
1)J. Am. Chem.
Soc.,1
3
3,1
0
0
7
8―1
0
0
8
0.
1
8)Liu, C., Pan, J., Li, S., Zhao, Y., Wu, L.Y., Berkman, C.E.,
Whorton, A.R., & Xian, M.(2
0
1
1)Angew. Chem. Int. Ed., 5
0,
1
0
3
2
7―1
0
3
2
9.
1
9)Peng, H., Cheng, Y., Dai, C., King, A.L., Predmore, B.L., Lefer, D.J., & Wang, B.(2
0
1
1)Angew. Chem. Int. Ed., 5
0,
9
6
7
2―9
6
7
5.
2
0)Qian, Y., Karpus, J., KIabil, O., Zhang, S.-Y., Zhu, H.-L., Banerjee, R., Zhao, J., & He, C.(2
0
1
1)Nat. Commun., 2, 4
9
5,
DOI:1
0.1
0
3
8.
2
1)Sasakura, K., Hanaoka, K., Shibuya, N., Mikami, Y., Kimura,
Y., Komatsu, T., Ueno, T., Terai, T., Kimura, H., & Nagano,
T.(2
0
1
1)J. Am. Chem. Soc.,1
3
3,1
8
0
0
3―1
8
0
0
5.
2
2)Casey, J.R., Grinstein, S., & Orlowski, J.(2
0
1
0)Nat. Rev.
1.
Mol. Cell Biol.,1
1,5
0―6
2
3)Mathai, J.C., Missner, A., Kugler, P., Saparov, S.M., Zeidel,
M.L., Lee, J.K., & Pohl, P.(2
0
0
9)Proc. Natl. Acad. Sci.
USA.,1
0
6,1
6
6
3
3―1
6
6
3
8.
2
4)Czyzewski, B.K. & Wang, D.N.(2
0
1
2)Nature,4
8
3,4
9
4―4
9
7.
2
5)Ishigami, M., Hiraki, K., Umemura, K., Ogasawara, Y., Ishii,
K., & Kimura, H.(2
0
0
9)Antioxid. Redox Signal.,1
1,2
0
5―2
1
4.
2
6)Ogasawara, Y., Isoda, S., & Tanabe, S.(1
9
9
4)Biol. Pharm.
Bull.,1
7,1
5
3
5―1
5
4
2.
2
7)Goodwin, L.R., Francom, D., Dieken, F.P., Taylor, J.D.,
Warenycia, M.W., Reiffenstein, R.J., & Dowling, G.(1
9
8
9)J.
Anal. Toxicol.,1
3,1
0
5―1
0
9.
2
8)Warenycia, M.W., Goodwin, L.R., Benishin, C.G., Reiffenstein,
R.J., Grancom, D.M., Taylor, J.D., & Dieken, F.P.(1
9
8
9)Biochem. Pharmacol.,3
8,9
7
3―9
8
1.
2
9)Savage, J.C. & Gould, D.H.(1
9
9
0)J. Chromatogr., 5
2
6, 5
4
0―
5
4
5.
3
0)Brookes, N. & Turner, R.J. (1
9
9
4) Am. J. Physiol., 2
6
7,
C1
6
3
3―1
6
4
0.
3
1)Whitfield, N.L., Kreimier, E.L, Verdial, F.C., Skovgaard, N., &
Olson, K.R. (2
0
0
8) Am. J. Physiol. Regul. Integr. Comp.
Physiol.,2
9
4, R1
9
3
0―R1
9
3
7.
3
2)Furne, J., Saeed, A., & Levitt, M.D.(2
0
0
8)Am. J. Physiol.
Regul. Integr. Comp. Physiol.,2
9
5, R1
4
7
9―R1
4
9
8.
3
3)Levitt, M.D., Abdel-Rehim, M.S., & Furne, J.(2
0
1
1)Antioxid.
Redox Signal.,1
5,3
7
3―3
7
8.
3
4)Wintner, E.A., Deckwerth, T.L., Langston, W., Bengtsson, A.,
Leviten, D., Hill, P., Insko, M.A., Dumpit, R., VandenEkart,
E., Toombs, C.F., & Szabo, C.(2
0
1
0)Br. J. Pharmacol., 1
6
0,
9
4
1―9
5
7.
3
5)Stipanuk, M.H. & Beck, P.W.(1
9
8
2)Biochem. J., 2
0
6, 2
6
7―
2
7
7.
3
6)Enokido, Y., Suzuki, E., Iwasawa, K., Namekata, K., Okazawa,
H., & Kimura, H.(2
0
0
5)FASEB J.,1
9,1
8
5
4―1
8
5
6.
3
7)Ichinohe, A., Kanaumi, T., Takashima, S., Enokido, Y., Naai,
Y., & Kimura, H.(2
0
0
5)Biochem. Biophys. Res. Commun.,
3
3
8,1
5
4
7―1
5
5
0.
3
8)Braunstein, A.E., Goryachenkowa, E.V., Tolosa, E.A., Willhardt, I.H., & Yefremova, L.L.(1
9
7
1)Biochim. Biophys. Acta,
2
4
2,2
4
7―2
6
0.
3
9)Chen, X., Jhee, K.H., & Kruger, W.D.(2
0
0
4)J. Biol. Chem.,
2
7
9,5
2
0
8
2―5
2
0
8
6.
4
0)Cavallini, D., Mondovi De Marco, C., & Scioscia-Santoro, A.
(1
9
6
2)Enzymologia,2
4,2
5
3―2
6
6.
4
1)Chiku, T., Padovani, D., Zhu, W., Singh, S., Vitvitsky, V., &
Banerjee, R.(2
0
0
9)J. Biol. Chem.,2
8
4,1
1
6
0
1―1
1
6
1
2.
4
2)Finkelstein, J.D.(1
9
9
0)J. Nutr. Biochem.,1,2
2
8―2
3
7.
4
3)Ishii, I., Akahoshi, N., Yu, X-N., Kobayashi, Y., Namekata, K.,
Komaki, G., & Kimura, H.(2
0
0
4)Biochem. J.,3
8
1,1
1
3―1
2
3.
4
4)Kabil, O., Vitvitsky, V., Xie, P., & Banerjee, R.(2
0
1
1)Antioxid. Redox Signal.,1
5,3
6
3―3
7
2.
4
5)Meister, A., Fraser, P.E., & Tice, S.V.(1
9
5
4)J. Biol. Chem.,
2
0
6,5
6
1―5
7
5.
4
6)Nagahara, N., Okazaki, T., & Nishino, T. (1
9
9
5) J. Biol.
Chem.,2
7
0,1
6
2
3
0―1
6
2
3
5.
4
7)Mikami, Y., Shibuya, N., Kimura, Y., Nagahara, N., Yamada,
M., & Kimura, H.(2
0
1
1)J. Biol. Chem.,2
8
6,3
9
3
7
9―3
9
3
8
6.
4
8)Taniguchi, T. & Kimura, T.(1
9
7
4)Biochim. Biophys. Acta,
3
6
4,2
8
4―2
9
5.
4
9)Ubuka, T., Umemura, S., Yuasa, S., Kinuta, M., & Watanabe,
K.(1
9
7
8)Physiol. Chem. Physics,1
0,4
8
3―5
0
0.
2
0
1
3年 2月〕
5
0)Cooper, A.J.L.(1
9
8
3)Annu. Rev. Biochem.,5
2,1
8
7―2
2
2.
5
1)Mikami, Y., Shibuya, N., Kimura, Y., Nagahara, N.,
Ogasawara, Y., & Kimura, H.(2
0
1
1)Biochem. J., 4
3
9, 4
7
9―
4
8
5.
5
2)Denton, R.M.(2
0
0
9)Biochem. Biophys. Acta, 1
7
8
7, 1
3
0
9―
1
3
1
6.
5
3)Aizenman, E., Lipton, D.A., & Loring, R.H.(1
9
8
9)Neuron, 2,
1
2
5
7―1
2
6
3.
5
4)Kato, A., Ogura, M., & Suda, M.(1
9
6
6)J. Biochem.,5
9,4
0―4
8.
5
5)Gadalla, M.M. & Snyder, S.H.(2
0
1
0)J. Neurochem.,1
1
3,1
4―2
6.
5
6)O’
Dell, T.J., Hawkins, R.D., Kandel, E.R., & Arancio, O.
(1
9
9
1)Proc. Natl. Acad. Sci. USA.,8
8,1
1
2
8
5―1
1
2
8
9.
5
7)Zhuo, M., Small, S.A., Kandel, E.R., & Hawkins, R.D.(1
9
9
3)
Science,2
6
0,1
9
4
6―1
9
5
0.
5
8)Verma, A., Hirsch, D.J., Glatt, C.E., Ronnett, G.V., & Snyder,
S.H.(1
9
9
3)Science,2
5
9,3
8
1―3
8
4.
5
9)Nagai, Y., Tsugane, M., Oka, J., & Kimura, H.(2
0
0
4)FASEB
J.,1
8,5
5
7―5
5
9.
6
0)Patacchini, R., Santicioli, P., Giuliani, S., & Maggi, C.A.
(2
0
0
5)Eur. J. Pharmacol.,5
0
9,1
7
1―1
7
7.
6
1)Streng, T., Axelsson, H.E., Hedlund, P., Andersson, D.A.,
Jordt, S.E., Bevan, S., Andersson, K.E., Hogestatt, E.D., &
Zygmunt, P.M.(2
0
0
8)Eur. Urol.,5
3,3
9
1―3
9
9.
6
2)Henneberger, C., Papouin, T., Oliet, S.H.R., & Rusakov, D.A.
(2
0
1
0)Nature,4
6
3,2
3
2―2
3
6.
6
3)Tsugane, M., Nagai, Y., Kimura, Y., Oka, J-I., & Kimura, H.
(2
0
0
7)Antioxid. Redox Signal.,9,2
5
7―2
6
9.
6
4)Kimura, H.(2
0
1
0)Antioxid. Redox Signal.,1
2,1
1
1
1―1
1
2
3.
6
5)Kimura, H., Shibuya, N., & Kimura, Y. (2
0
1
2) Antioxid.
Redox Signal.,1
7,4
5―5
7.
6
6)Krizaj, D. & Copenhagen, D.R. (2
0
0
2) Front. Biosci., 7,
d2
0
2
3―d2
0
4
4.
6
7)Furchgott, R.F. & Zawadzki, J.V.(1
9
8
0)Nature, 2
8
8, 3
7
3―
3
7
6.
6
8)Garthwaite, J., Charles, S.L., & Chess-Williams, R.(1
9
8
8)Nature,3
3
6,3
8
5―3
8
8.
6
9)Bredt, D.S. & Snyder, S.H. (1
9
9
0) Proc. Natl. Acad. Sci.
USA.,8
7,6
8
2―6
8
5.
7
0)Koenitzer, J.R., Isbell, T.S., Patel, H.D., Benavides, G.A.,
Dickinson, D.A., Patel, R.P., Darley-Usmar, V.M., Lancaster, J.
R., Jr., Doeller, J.E., & Kraus, D.W.(2
0
0
7)Am. J. Physiol.
Heart Circ. Physiol.,2
9
2, H1
9
5
3―H1
9
6
0.
7
1)Zhao, W. & Wang, R.(2
0
0
2)Am. J. Physiol. Heart Circ.
Physiol.,2
8
3, H4
7
4―H4
8
0.
7
2)Chattopadhyay, M., Kodela, R., Olson, K.R., & Kashfi, K.
(2
0
1
2)Biochem. Biophys. Res. Commun.,4
1
9,5
2
3―5
2
8.
7
3)Shikano, K., Long, C.J., Ohlstein, E.H., & Berkowitz, B.A.
(1
9
8
8)J. Pharmacol. Exp. Ther.,2
4
7,8
7
3―8
8
1.
7
4)Chen, G., Suzuki, H., & Weston, A.H.(1
9
8
8)Br. J. Pharmacol.,9
5,1
1
6
5―1
1
7
4.
7
5)Yang, G., Wu, L., Jiang, B., Yang, W., Qi, J., Cao, K., Meng,
Q., Mustafa, A.K., Mu, W., Zhang, S., Snyder, S.H., & Wang,
R.(2
0
0
8)Science,3
2
2,5
8
7―5
9
0.
7
6)Zhao, W., Zhang, J., Lu, Y., & Wang, R.(2
0
0
1)EMBO J.,
2
0,6
0
0
8―6
0
1
6.
7
7)Olson, K.R., Whitfield, N.L., Bearden, S.E., Leger, J.S., Nilson, E., Gao, Y., & Maddeen, J.A.(2
0
1
0)Am. J. Physiol. Regal. Integr. Comp. Physiol.,2
9
8, R5
1―R6
0.
7
8)Ishii, I., Akahoshi, N., Yamada, H., Nakano, S., Izumi, T., &
Suematsu, M.(2
0
1
0)J. Biol. Chem.,2
8
5,2
6
3
5
8―2
6
3
6
8.
7
9)Wood, K.S., Buga, G.M., Byrns, R.E., & Ignarro, L.J.(1
9
9
0)
Biochem. Biophys. Res. Commun.,1
7
0,8
0―9
8.
7
5
8
0)Umemura, K. & Kimura, H.(2
0
0
7)Antioxid. Redox Signal., 9,
0
4
1.
2
0
3
5―2
8
1)Choi, D.W.(1
9
8
8)Neuron,1,6
2
3―6
3
4.
8
2)Murphy, T.H., Miyamoto, M., Sastre, A., Schnaar, R.L., &
Coyle, J.T.(1
9
8
9)Neuron,2,1
5
4
7―1
5
5
8.
8
3)Kimura, Y., Goto, Y-I., & Kimura, H.(2
0
1
0)Antioxid. Redox
Signal.,1
2,1―1
3.
8
4)Noctor, G., Strohm, M., Jouanin, L., Kunert, K.J., Foyer, C.H.,
& Rennenberg, H.(1
9
9
6)Plant. Physiol.,1
1
2,1
0
7
1―1
0
7
8.
8
5)Kwak, W.J., Kwon, G.S., Jin, I., Kuriyama, H., & Sohn, H.Y.
(2
0
0
3)FEMS Microbiol. Lett.,2
1
9,9
9―1
0
4.
8
6)Sunda, W., Kieber, D.J., Kiene, R.P., & Huntsman, S.(2
0
0
2)
Nature,4
1
8,3
1
7―3
2
0.
8
7)Whiteman, M., Armstrong, J.S., Chu, S.H., Jia-Ling, S., Wong,
B.S., Hheung, N.S., Halliwell, B., & Moore, P.K.(2
0
0
4)J.
Neurochem.,9
0,7
6
5―7
6
8.
8
8)Whiteman, M., Cheung, N.S., Zhu, Y.Z., Chu, S.H., Siau, J.L.,
& Wong, B.S.(2
0
0
5)Biochem. Biophys. Res. Commun., 3
2
6,
7
9
4―7
9
8.
8
9)Calvert, J.W., Jha, S., Gundewar, S., Elrod, J.W.,
Ramachandran, A., Pattillo, C.B., Kevil, C.G., & Lefer, D.J.
(2
0
0
9)Circ. Res.,1
0
5,3
6
5―3
7
4.
9
0)Malhotra, J.D. & Kaufman, R.J.(2
0
0
7)Antioxid. Redox Signal.,9,2
2
7
7―2
2
9
3.
9
1)Kimura, Y., Dargusch, R., Schubert, D., & Kimura, H.(2
0
0
6)
Antioxid. Redox Signal.,8,6
6
1―6
7
0.
9
2)Johansen, D., Ytrehus, K., & Baxter, G.F.(2
0
0
6)Basic. Res.
Cardiol.,1
0
1,5
3―6
0.
9
3)Sun, Y.G., Cao, Y.X., Wang, W.W., Ma, S.F., Yao, T., & Zhu,
Y.C.(2
0
0
8)Cardiovasc. Res.,7
9,6
3
2―6
4
1.
9
4)Hildebrandt, T.M. & Grieshaber, M.K.(2
0
0
8)FEBS J., 2
7
5,
3
3
5
2―3
3
6
1.
9
5)Tiranti, V., Viscomi, C., Hildebrandt, T., Di Meo, I., Mineri,
R., Tiveron, C., Levitt, M.D., Prelle, A., Fagiolari, G., Rimoldi,
M., & Zeviani, M.(2
0
0
9)Nat. Med.,1
5,2
0
0―2
0
5.
9
6)Viscomi, C., Burlina, A.B., Dweikat, I., Savoiardo, M., Lamperti, C., Hildebrandt, T., Tiranti, V., & Zeviani, M.(2
0
1
0)
Nat. Med.,1
6,8
6
9―8
7
1.
9
7)Taub, J.W., Huang, X., Matherly, L.H., Stout, M.L., Buck, S.
A., Massey, G.V., Becton, D.L., Chang, M.N., Weinstein, H.J.,
& Ravindranath, Y.(1
9
9
9)Blood,9
4,1
3
9
3―1
4
0
0.
9
8)Kamoun, P., Belardinelli, M.C., Chabli, A., Lallouchi, K., &
Chadefaux-Vekemans, B.(2
0
0
3)Am. J. Med. Genet., 1
1
6A,
3
1
0―3
1
1.
9
9)Barbaux, S., Plomin, R., & Whitehead, A.S.(2
0
0
0)Neuroreport,1
1,1
1
3
3―1
1
3
6.
100)Taoka, S. & Banerjee, R.(2
0
0
1)J. Inorg. Biochem., 8
7, 2
4
5―
2
5
1.
101)Morikawa, T., Kajimura, M., Nakamura, T., Hishiki, T.,
Nakanishi, T., Yukutake, Y., Nagahata, Y., Ishikawa, M.,
Hattori, K., Takenouchi, T., Takahashi, T., Ishii, I., Matsubara,
K,, Kabe, Y., Uchiyama, S., Nagata, E., Gadalla, M.M., Snyder,
S.H., & Suematsu, M.(2
0
1
2)Proc. Natl. Acad. Sci. USA.,
1
0
9,1
2
9
3―1
2
9
8.
102)Caliendo, G., Cirino, G., Santagada, V., & Wallace, J.L.
(2
0
1
0)J. Med. Chem.,5
3,6
2
7
5―6
2
8
6.
103)Lee, M., Tazzari, V., Glustarini, D., Rossi, R., Sparatore, A.,
Soldato, P.D., McGeer, E., & McGeer, P.L.(2
0
1
0)J. Biol.
Chem.,2
8
5,1
7
3
1
8―1
7
3
2
8.
104)Predmore, B.L. & Lefer, D.J.(2
0
1
0)J. Cardiovasc. Transl.
Res.,3,4
8
7―4
9
8.
105)Toohey, J.I.(2
0
1
1)Anal. Biochem.,4
1
3,1―7.