マンガのエッセイ、 エッセイのマンガ 作品募集

マンガのエッセイ、
エッセイのマンガ
作品募集
募集
Asiascape.netは、初の漫画プロジェクトの発表を喜ばしく思いま
す。今回私たちは漫画家、専門家(学生を含む)による作品選集へ掲
載する作品を募集行います。さらに入選作品はバーチャル、リアル
双方における展覧会で
の作品発表が行われま
す。応募作品は、禅の
悟りにいたる道筋を描
いた”十牛図”を基に
した、グラフィックエ
ッセイです。現代版十
牛図を作家独自の解釈
で、壮大、創造的に、
またはその真逆のアプ
ローチで、自由に制作
してください。作品の
スタイル、ジャンル、
長さは自由です。応募
条件ではありません
が、希望であれば文章
の使用も可能です。日
本語での応募も可能で
す。このプロジェクト
の目的は、漫画表現に
おける潜在能力の探求
にあります。
十牛図
十牛図(じゅうぎゅうず)は十二世紀から用いられた、禅の悟
りにいたる道筋を牛を主題とした十枚の絵で表したものです。
物語は様々な表現方法や技法、時に散文または詩 形式(もしく
は両方) の解説とともに進行します。数多くの十牛図が存在し
ますが、基本的な物語の進行は全てに共通し、煩悩から脱して
真の悟りを開いてゆく人間の体験に基づいており、無数に存在
する大乗教典の教えを、大まかなかたちで説明しています。
応募要項
✦Asiascape Manga in/as Essay ーマンガのエッセイ、エッセイのマン
ガ へ の応募作品は、前頁で紹介した例のように、美学的観点、ジャン
ル、ページ数 (1枚のイメージで充分であることもあれば、50ページ必
要なケースもあり得る)にとらわれていないことが重要です。応募者当
人、または当プロジェクトへ 一石を投じるような作家の熟考と意気込
みを歓迎します。そのため、しっかりと理由付けされた作品の形式、ス
タイルの採用が不可欠です。
✦長編作品は収納スペースの関係から好ましくありません。応募作品は
およそ50ページを限度とします。最低ページ数の制限はありません。
✦カラー画像が好ましいですが必須事項ではありません。色の採用や選
択は、技術的制限からではなく、作家の創造性に行ってください。
✦独創的な創造性にあふれるあたらしい発想のストーリー展開。特に他
のメディアでは現実不可能な独自性富んだ作品が好ましいです。古典的
表現については、特に作品内容との関連性が強いものを特に歓迎しま
す。
✦注釈やふきだし等、文章が用いられる必要性のある内容の応募作品の
場合、言語の制約はありません。日本語の場合、英訳の添付の必要はあ
りません。英語、日本語以外の言語を使用の場合、英訳の添付、選択し
た言語の選択理由の説明を条件とします。
✦応募作品全体についての解説を、作家の意図、創造的な選択の観点か
ら、2ページ以内にまとめ添付してください。作品応募にあたって、連
絡先を含んだ履歴書の添付も必須です。
✦共同制作による作品も歓迎します。作業分担の詳細を明記の上ご応募
ください。
✦ 原稿、デジタル形式を受け付けます。(デジタル形式の場合、おおよ
その一般的な形式を受け付けますが、PDF形式が管理上最も好ましい
です。) 原稿での 応募の場合、応募作品の返却はいたしませんので、
高品質のコピーの提出をお願いします。ページサイズは最低A4サイズ
です。展覧会での発表段階には、さら に大きめのサイズが好ましいで
す。
✦全ての応募作品は、出版委員会、専門家団体、プロダクション関係者
によって、次にあげる評価基準のもと審査が行われます。
•独創的な表現方法
•表現力
•表現様式
•情景描写の質
•総合的な効果
✦ 選考通過者には、応募締切6週間以内にご連絡差し上げます。上位3
作品には以下の賞金が授与されます: 1位 1000ユーロ 2,3位 500ユー
ロ。賞金はMEARCより出資されます。応募作品の著作権はライデン大学
機関Modern East Asia Research Centre (MEARC)に帰属します。応募作品
は営利目的に使用されることはありません。学術的なプロジェクトであ
るため、作家、編集者、ライデン大学はこれに付 随して報酬を受け取
る事はできません。
✦入選作品はAsiascape.net主催のオンライン展覧会、2011年にオラン
ダ、ハーグ市で行われる展覧会、さらに専門家による解説を含めた作品
選集(学術系出版社より出版)を通して発表されます。
✦問い合わせ/ 応募作品送付先(PDF): [email protected] ✦応募作品送付先(原稿): Esther Truijen, Asiascape Manga Essays,
Modern East Asia Research Centre,
Leiden University,
PO Box 9515, 2300RA, Leiden.
The Netherlands
✦ 締め切り: 2010年12月1日 付録: 十牛図
一.尋牛(じんぎゅう) 梅原猛の解説
心 が荒れている。あばれ牛の如くに。かつて私は一匹の牛を
家のあたりにつないだ。しかし、いつの間にか牛は手綱を断ち
切って暴れだし、私に血みどろな傷を負 わせて、遠い山に去
ってしまった。荒れ狂っている牛のほえる声が私を不安にす
る。牛は猛り狂って田畑を荒らし、はては深い谷間に落ち込ん
で見事な頓死を遂 げるかもしれない。私は疲れた心と、傷つ
いた身体に鞭打って牛を探しに出かけるのだ。
解説:失った牛を探す場面。本来の自己が内にあることをまだ
知らずに、探しに出るところである。
二.見跡(けんじゃく)
牛 はなかなか見つからない。私は日一日、果てしない野原を
歩き回ったけれど、どこにも牛は見当たらなかった。そしてま
た高い断崖絶壁をよじ登ったけれど、私 の見たのは、一面に
荒れ果てた岩山ばかりであった。しかし、ある秋の夕、深い夜
の闇が天地をおおおうとする一瞬前、私は森の入り口で、牛の
足跡を見つけた のだ。
解説:牛の足跡つまり手がかりを見つけるが、足跡を見てもそ
れは知識として牛の存在を知ったことにしかならない。
三.見牛(けんぎゅう)
すばやく、そして用心深くその足跡を私はつけて進んだ。そし
て私は正しく見た。一匹の荒れ狂っている牛の姿を。牛は怒り
にもえ、私を見て襲いかかってきたけれど、かくすことのでき
ない疲労のようなものが牛の体にただよっていることを、一瞬
私は見逃さなかった。
解説:牛の声を聞いて後姿を見る。しかし、まだ牛のすべてを
見たわけではない。
四.得牛(とくぎゅう)
今だ、私は祈りを込めて縄を投げた。わが心よ獣の眠りを眠れ
かし。縄は見事に命中して、牛の首に巻きついた。牛はほえ叫
び、逃げようとして暴れ回ったけれ ど、私は牛の首に巻きつ
いた縄を金輪際離そうとしなかった。やがて牛は精魂尽きたか
のように、どっと倒れて、死んだように動かなくなってしまっ
たが、私も また死せる牛のように疲れていた。
解説:ついに牛をみつけて手綱をつけるが、嫌がる牛を引きつ
けようとする状態。
五.牧牛(ぼくご)
手 綱をひいて私は家に帰ろうとした。私はいささか得意にな
って、牛に言った。「暴れ牛よ、お前がどんなに暴れても、結
局、おれにはかないはしまい」。牛は私 のそういう言葉に反
抗するかのように時々、暴れ出そうとした。しかし、その度ご
とに、私はたづなをきつく引いて私の優越感を確かめた。
解説:荒れる牛を馴らして連れて帰るところ。手綱に張りつめ
た様子はない。ここではじめて、牛の顔が描かれる。
六.騎牛帰家(きぎゅうきか)
山を越え、野を越え、牛と私は村里の近くにきた。今まで雲に
覆われた月も、そのまろやかな姿を雲の間から見せ始めた。牛
はおとなしくなり、私は牛の背の上で心も軽く、歌を歌ったの
である。楽しきかな人生である。
解説:牛に乗り笛を吹きながら家に帰る。牛の表情は明るく足
どりも軽い。牛と童子は一体である。
七.忘牛存人(ぼうぎゅうそんにん)
家 へ帰って、私は牛をつなごうとすると、ふっと、牛は私の
手から消えたのである。牛は確かに今しがた私の前にあったは
ずなのに、忽然として牛は失せた。巨大 な牛が見る見るうち
に気化し、ひとつの映像のようになって、すっぽりとわたしの
心の中にすいこまれるように消え失せたのである。それは一瞬
の幻想のようで もあった。あたりに無限の静けさが漂い、私
は冷たい月光に照らされて、独り己の心を見入ったのである。
解説:家に帰って牛の事を忘れ牛もどこかへ行ってしまう。牛
を忘れ去る、つまり悟ったという気持ち自体を忘れた境地であ
る。
八.人牛倶忘(にんぎゅうぐぼう)
ま た、不可思議なことが起こった。心をじっと見入っている
うちに、私自身が消失してしまったのである。私と私を取り巻
く世界もすっかり消え果て、世界は白い 霧のようなものに変
化してしまった。私もまた白い霧のようであり、私が世界であ
り、世界が私でもあった。透明で、清潔な完全な真空の世界で
私の心も真空な 満足に酔っていた。
解説:牛も人も忘れ去られている。迷いも悟りも超越した時、
そこには絶対的な空がある。
九.返本還源(へんぽんげんげん)
しかし再び、あの真空の世界に草が生え、花が咲き、鳥は歌
い、春が来るのである。すべてはもとのままのようであり、生
は、希望の歌を高らかに歌い始めているではないか。柳の緑の
鮮やかさ、紅の花の美しさ、世界は改めて無限に豊かな色に輝
きわたっているではないか。
解説:ここには童子も牛も描かれていない。悟る前とおなじく
水は流れ花は美しく咲き誇る。
十.入てん垂手(にゅうてんすいしゅ)
このように再び、本にかえり、万物が豊かな色を示す世界に、
私は何事も起こらなかったかの如く帰ってゆく。脚を現し、腹
をむきだし、一見愚者の如くに、町にさすらい歩き、物にあえ
ば物に親しみ、人にあえば人と笑い、見知らぬ人の間で、慈悲
を世界にふりまいて生きている。
解説:童子が対面しているのは、悟りを得た老人である。悟り
を得たものは、広くそれを伝えなければならないことをあらわ
している。しかし老人と語る童子の姿は、最初の見跡の図に見
える姿と同じである。
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