「上海メンタルクライシス 海外日本人ビジネスマンの苦悩」

JOMF NEWS LETTER
No.233 (2013.6)
書籍の紹介
「 上海メンタルクライシス 海外日本人ビジネスマンの苦悩 」
(http://www.nagasaki-np.co.jp/jigyoubu/book/2012/10.html)
発行: 長崎新聞新書
監修: 長崎大学大学院教授 小澤寛樹先生
編著: 株式会社アンド・メンタル
【全体構成】全体は、
1.『上海・日本・日本人』
人気漫画「島耕作」のエピソードや、日本本社の無理解、
中国を一口には語るな、そして現地邦人達の心の叫び
「OKY(お前が来てやってみろ)」の紹介などで、大ま
かに中国、そして上海を紹介。
2.『上海シンドローム –その症例と治療-』
10 の事例をひき、不登校のお子さんやご家族の問題、国
際結婚夫婦の家族の問題、本人と職場の問題等の症例を
基に、エピソードとその際の対処方法、そして、そこに
出てくるキーワードの簡潔な紹介。
3.『海外赴任に伴う家族のカタチ』
海外赴任をしてみると家族の絆が深まることもある、理
想的な夫婦のスタイルとその為のコミュニケーションのあり方などの紹介。
4.『社員が働きやすい環境づくりに不可欠な EAP サービス』
EAP のメリットと留意すべき点、その活用方法についての提案等。
5.『Dr.小沢の上海メンタルクライシス Q&A』
FAQ のような感じで、ご家族やご当人の悩みの典型的な問題と小澤先生の回答を
8 例に渡り紹介。
6.『エピローグ 素敵な上海ライフを』
上海で心の病にかからないためのストレス対処法として、
「相談相手を持とう」、
「医
療機関への相談を躊躇しないで」、
「(会話や商談で)たまには相手のうち返し安いボ
ールも投げてあげて」、「ユーモアの精神を大切に」といった 7 項目にわたる小澤先
生流の対処法の紹介。
という構成になっており、
『中国(特に上海)赴任者必携のメンタルヘルス・リポート』と
言えます。
【2.読みやすさ】
全体の筆致も、赴任者、患者さん目線で書かれていることから、時に口語調も交えた平易
な言葉と平易な文体、そして難しい言葉には『解説付き』ですので、大変読み易い書です。
JOMF NEWS LETTER
No.233 (2013.6)
【3.該書入手の背景】
実は、中国出張から帰国後の翌週 5 月 24 日のことですが、博多で開催された第 109 回日
本精神神経学会学術総会のトピックフォーラム(5 月 25 日)にお招き戴き、前日夕方に講
演者間の打合せに参加した際、一冊の本を大阪市立総合医療センターの田中政宏先生から
貸して戴きました本がこの書です。
フォーラムの座長を務めて戴いた小澤寛樹先生の著作で、田中先生からは「講演内容にも
相通じるところがある様です」と発売されたばかりのこの本をお貸し戴いたというのが正
しいかもしれません(さすがに精神科医! 行間を見事読まれてしまいました:笑)。
【4.雑感】
私が日頃から話したり書いたりしている『海外における在留邦人の社会は日本社会の縮図。
コミュニティの規模が大きくなれば悩む人が増えてもそれは当然。 そのうえで、現場に特
有な状況の有無により悩む人の数が増減する』という見方や『中国を十把一絡げにしては
いけない』と考えているというところが、この書には簡潔な表現で訴求されています。
また、
「診療所を卒業できても(根本が良くなっていない限り)2 年以内にまた戻ってくる
人も多い」が、その一面で、
「中国でポジティブに生活をしているビジネスマンも数多くい
る」、更に、
「ユーモアを持つことも大事」、といった点で、私も同意できるものが多く、読
み進んでいるうちに知らず知らず『うん、うんそうだ!』と頷いている自分にふと気づき
赤面しそうになってしまいました。
是非、中国や上海に赴任される皆様にお奨めしたい一冊です。
(老百姓)