松山港外港地区で発見された爆弾等の水中爆破処理

「四国技報」第10巻20号
平成23年1月1日
松山港外港地区で発見された爆弾等の水中爆破処理について
松山港湾・空港整備事務所
保 全 課
泉 保 佑 介
1.はじめに
松山港外港地区では、取扱貨物量の増加や利用船舶の大型化に対応するため、国際物流ターミナル
の整備を行っています。今般、泊地(-13m)浚渫工事に先立ち潜水調査を実施していたところ、爆弾等
が発見されました。このため、港湾関係者及び関係行政機関のご協力のもと、11月25日に現地で水中
爆破処理しましたので、その経緯や周辺施設への影響についてご報告します。
2.爆発物等の発見
7 月 6 日と 8 月 26 日に図-1 に示す海域において潜
水士により爆発物らしきものが発見されました。た
だちに松山海上保安部に通報し、海上自衛隊呉地方
爆発物発見場所
泊地範囲
松山空港
総監部水中処分隊によって調査が行われました。そ
吉田浜防波堤
の結果、爆弾であることが判明し、すべて信管付き
外港地区
であったため爆発の危険性があることから、そのま
ま存置されることとなりました。
当海域は残存機雷区域には指定されていません
が、旧日本軍の基地が近隣にあったことから、海上
図-1.爆発物発見場所
投棄されたものと推測されます。
種
類:99 式 250kg 爆弾(信管付き)
形状寸法:直径 300mm
長さ 1,400~1,800mm
個
数:5 個
備
考:その他に砲弾、弾倉箱、歩兵銃
などが発見された。
写真-1.爆弾の水中状況写真
3.松山港爆発物処理安全対策連絡会の開催
存置された爆弾を現地で処理するため、当事務所が事務局となって松山港爆発物処理安全対策連絡
会を開催しました。連絡会は 7 月 16 日と 10 月 13 日の計2回開かれ、行政機関や港湾関係者など 27
団体 61 名が出席し下記の項目について決定しました。
・処分方法
現地において爆発物全てを同時に爆破すること
・処理日時
11 月 25 日(木) (予備日:11 月 26 日、27 日)とすること
・処理日当日は現地対策本部を設置する。また、爆破処理に関して関係者は最大限協力する。
40
「四国技報」第10巻20号
平成23年1月1日
4.水中爆破に向けた準備
先の連絡会で決定した各行政機関の役割分担にしたがって、処理に向けた準備が進められました。
特に安全対策や周辺地域への周知方法については、陸域に非常に近く周辺には工場や民家が点在して
いたことから、重要な課題となりました。このため、関係者を集めた行政機関担当者会議を行い、各
機関と連携をとりながら詳細な調整を行いました。
行政機関名
役割分担
海上自衛隊
不発弾の爆破処理に関すること
松山海上保安部
航行禁止区域等の設定、周辺海域の警戒に関すること
松山空港事務所
航空機の安全運航、空港利用者等への広報に関すること
松山港湾・空港整備事務所
松山港爆発物処理安全対策連絡会の事務局、関係機関との連絡調整
愛媛県警察本部
立入禁止区域(陸上)の警戒、交通規制(陸上)に関すること
愛媛県
現地対策本部の設営・運営、港湾利用者への広報・避難、放置艇対策
松山市
住民への広報、立入禁止区域(陸上)の設定、緊急病院の確保
5.処理日当日
11 月 25 日、各行政機関から約 70 名が参集し、現地対策本部
が設置されました。
7 時 00 分から海上自衛隊による爆破処理作業が開始され、危
険区域となる爆発物を中心とした半径 600m の区域について、
陸上では立入禁止、海上では航行禁止の規制が行われました。
湾内に残っていた船舶についても、順次港外へ誘導を行いま
写真-2.現地対策本部
した。
危険区域内の退避が完了し、爆破の準備が整ったことを確認した上で、同日 11 時 35 分爆破が行わ
れました。轟音と共に水柱が 2 本(高さ 60m と 30m)立ち上り、20~30cm の波が発生しましたが、
周辺への被害は確認されませんでした。
水中の濁りが収まった後、海上自衛隊によって確認作業が行われ、海底に直径 5~18m 深さ 0.5~3m
の穴が計 4 個確認されました。13 時 20 分すべての爆弾が完全に爆破したことが確認され、これをも
って、13 時 30 分現地対策本部長より安全宣言がなされ、爆破処理は無事完了しました。
写真-3.水中爆破処理の瞬間
41
「四国技報」第10巻20号
平成23年1月1日
6.港湾施設の被害状況
現地対策本部が安全宣言を行った後、ただちに港湾施設の被害状況について調査を行いました。
対象施設は、発見場所である泊地と隣接する吉田浜防波堤としました。
6-1.泊地
泊地については、爆破直後に海上自衛隊により海底に穴が4個確認されており、今回の調査で
は海底の面的な変化をとらえるため、ナローマルチビームによる深浅測量を行いました。
11 月 19 日 測量
11 月 26 日 測量
爆破による穴
図-2.深浅図(爆破前)
図-3.深浅図(爆破後)
測量の結果、爆破による穴が出現した以外は海底面の変化は見られず、隣接して施工中の浚渫
工事についても埋没などはなく、影響はありませんでした。
6-2.吉田浜防波堤
吉田浜防波堤については、陸上・水中部の目視調査や構造物の変位量について調査を行いまし
た。その結果、上部工及びケーソン本体に微細なひび割れが数か所生じていましたが、早急に補
修が必要なものはありませんでした。変位量については、港内側に最大 109mm 移動しており、
沈下量は最大 84mm でした。また、捨石マウンドについては崩れ・飛散は見られず被害は確認さ
れませんでした。
以上、若干のひび割れ・変位があったものの施設の性能を損なうものではなかったため、実質
的な被害は生じませんでした。
7.まとめ
今回の爆発物処理にあたっては、市民をはじめ港湾利用者にご不便をおかけしましたが、ご理解と
ご協力を頂きまして無事処理を終えることができました。また、関係行政機関につきましても爆破処
理に向けてご尽力頂きました。この場を借りて厚くお礼申しあげます。
戦後 60 年あまりが経ちましたが、未だ残存爆弾は各地に残されており、現在も各地で処理が続けら
れています。今回は幸いにも大きな人的・物的な被害はありませんでしたが、港湾工事を実施するに
あたっては、十分な調査のもと進めることが重要であることを改めて感じました。
42