-1- 基礎演習Ⅱ 年9月 日 2002 30 社会科学方法論・政治学的思考・政治

基礎演習Ⅱ
2002 年9月 30 日
社会科学方法論・政治学的思考・政治的思考
――論争を読みながら――
福元
健太郎
月曜 10:40-12:10
東別館 206 号室
■授業目的
①
政治学に限らず広く社会科学の方法論を身につけることをめざす 。「課題について調
査・検討し、それをまとめて発表する」という知の基礎技術(ハウツー)を、ゼミ終了後
も使える形で、意識して身につける。これはただ漠然とやってみるだけでは体得されない
ので、こちらでそれなりの方法論をなるべく明示する。
②
政治において人々は自分の利害関心を正当化する主張を行う。政治を理解するにあた
っては、マスコミ・書籍などで流布される主張を鵜呑みにすることなく、そこから距離を
置くこと、あるいは最初に読んだものにとらわれることなく、絶えず思考を練り直す柔軟
な粘り腰を養うことが必要である(政治学的思考 )。そのためにこの演習では、日本にお
けるいくつかの論争を読み、ディベートを実践してみることを通じて、相反する意見とそ
の根拠・理屈とを冷静に比較考量し、どういう立場に立っても相手の立論の(論理的)弱
点を見つけて批判する、論理的思考能力を養う訓練をし、ひいては自分の頭で見通しを立
て、考え抜く習慣を身につけることを目的とする。
③
政治において人間が無意識のうちに従っている政治的思考とはどのようなものかを実
体験する。
■授業方法
◇事前メモ(全員・毎回)
指定された教材を読んだ上で、論題に答えるための前提となる論点を3点以上挙げ、
各論点毎に対立する意見を並べた上で、自分の考えとその理由(特に予想される反論
に対する再反論)を書くこと。その際、教材の関連頁を明示すること。簡単なもので
よい(1点につき、1〜3行程度でよい)が、他人が読んでも意味が通じる「文」
(単
語ではなく)を書くこと。なお教材は特定の意見を持っているが、それとは区別され
た事実も述べられている。両者を区別して読み、事実に依拠しつつ、意見には必ずし
も引きずられずに、自分の意見を組み立てることが求められる。
大きさはA4で統一し、事前に1部自費でコピーしたものを授業冒頭に福元へ提出し、
原本は自分で保持して、授業中の議論に活かすこと。
目的は、目的意識を持って事前準備をしてきてもらうこと、議論を活性化すること、
授業進行を円滑化することにある。
◇当日の授業進行
班分け
別紙指定の班分けに従い、机を並べ替え着席しておくこと。
正面向かって、左前がA、右前がB、左後がC、右後がD。
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ディべート
各段階ごとに、グループ・ディスカッションで班としての意見を作り、全体
ディスカッションの場で発表する。
主張
論題について、班ごとに賛否を当日指示するので、それに基づき主張を行う。
反論
こちらが指示する班の主張に対して、論理的な自己矛盾、教材との齟齬、あ
るいは予想される問題点などを指摘する。
ただ単に自分の班の主張を一方的に相手に押しつけるのではない。
再反論
反論に対応する形で、反論を論駁する。最初の主張を繰り返すのではない。
■単位取得要件と成績評価方法
欠席4回以上もしくはレポート未提出の場合は、単位を認めない(その場合、特に申し
出がない限り棄権したものとみなし、成績はつけない)。
成績は、出欠状況、提出物・調査報告の内容、演習における発言回数(内容にこだわら
ずに積極的に発言することを奨励する)によって評価する。
■授業計画
教材は全てこちらから配付する。
以下に掲げるウェブサイトは、基礎演習・福元クラスのホームページ
http://www-cc.gakushuin.ac.jp/~e982440/basic/
にリンクをまとめて張ってあるので、関心ある者は利用されたい。
9月 30 日
授業の説明
10 月7日
戸外に出てシートを敷いて地面に座りながら授業をする予定なので(場所は未
定)、服装には注意すること。
教材:杉田敦『デモクラシーの論じ方』(ちくま新書、2001 年)第1、3、7、8章
論題:「ABどちらに賛成か」
10 月 21 日
事前の段階では次の両方の用意をしておくこと。
雨天でない場合
多目的コートに運動できる格好で集合して連立ミニサッカーゲームを行う。
ルール等は別紙を参照のこと。
雨天の場合
教材:池田正行『食のリスクを問いなおす』
(ちくま新書、2002 年)第3、5章、
第6章1
論題:「 国は、狂牛病のおそれがもうあまりないこと、あるいはまだあること、
どちらをアピールするべきか」
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10 月 28 日
10 月 21 日にやらなかった方を行う。仮に 10 月 21 日、28 日ともに雨の場合には、11
月 25 日分の教材を用いる。詳しくは 10 月 21 日に指示する。10 月 21 日に休んだ人
のために、上記ホームページでも、確定した 10 月 28 日の予定を知らせる。
11 月 11 日
予備日
11 月 18 日
第1レポートの提出。当日教室で回覧してお互いに推敲・批評しあう。次のものを持
参すること。
①赤ペン:誤字脱字などをレポートに書き込む。
②A4の紙(レポート用紙やルーズリーフでもよい)を4枚
これに他人の感想を書いてもらう。
1行目に「評者:自分の名前」
2行目に「対象レポート:書いた学生の名前」(1枚に1本)
3行目以下に、必ず建設的批判を書くこと
書いたら、クリップで対象レポートと一緒に綴じる。評価をする仕方も、成
績の対象となる。なおこの感想はレポートと一緒に、本人に返却する。
③クリップ1つ
11 月 25 日
教材:やぶれっ!住民基本台帳ネットワーク市民行動編『私を番号で呼ばないで 「国
民総背番号」管理はイヤだ』(社会評論社、2002 年)第1部
論題:「住民基本台帳ネットワークに賛成か反対か」
12 月2日
離党新党ゲームを行う予定である。詳細は後日指示する。
12 月9日
教材:首相公選制を考える懇談会『「首相公選制を考える懇談会」報告書』2002 年8
月7日(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kousen/kettei/020807houkoku.html)
参考までに同懇談会のURLは
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kousen/index.html
なお田中康夫長野県知事再選に関する論稿を追加する予定である。
論題:「ⅠⅡⅢ案のうちいずれが最も好ましいか」
第2レポートの締切。
12 月 16 日
教材:田中信尚『靖国の戦後史』
(岩波新書、2002 年)第2章、第3章1、第4章2、
3、第7章3(指定頁は予定)
「追悼・平和祈念のための記念碑等施設の在り方を考える懇談会」の報告書が当
日までに出れば、それも扱う予定である。なお同懇談会のURLは
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tuitou/index.html
論題:「国家が戦死者を追悼するべきか否か」
なお違憲かどうかについては論じないこと(憲法規定それ自体の是非も問われ得
るため)。
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■レポート
大きさは全てA4で統一すること。
第1レポート
11 月 18 日締切
何らかの論争を取り上げ、どの点について何故意見が対立しているのかを明らかにし
た上で、理由を付して自分の意見を述べること(完全に中立な立場は不可)。3000 字
以上。
論争は日本のものでなくてもよいが、政治に関係することが必要。
意見が相反する書籍を2冊以上参照すること(雑誌記事等は不可)。
20 点満点で、16 点を標準とし、評価するところが多ければ加点し、改善を要する箇
所が多い場合は減点する。評価は表紙に書いて翌週に返却する。
第2レポート
12 月9日締切
ダレル・ハフ(高木秀玄訳)『統計でウソをつく法
数式を使わない統計学入門』(講
談社ブルーバックス、1968 年)第5、6章
上記を早い段階に読んだ上で、同様に巧妙な図表を3点自分で探してきて、コピーを
切り貼りする。1点ずつ別の紙に貼り、氏名、出典(頁も)、解説(何を説明・強調
しようとしたものか、どこが巧妙なのか)をつけること。日頃から気をつけて収集す
ることが求められる。なお基礎演習Ⅰで学生が提出した見本を配付する。
優れたものを 12 月 16 日の授業で配付する。
第3レポート
2003 年1月もしくは2月締切予定
課題、レポートの構成は第1レポートに同じ。但しテーマは第1レポートとは違うも
のとし、字数は 4000 字以上とする。提出日・場所は後日指定する。
■文書3原則
①年月日(時刻、場所)
②作成者(所属)
③題目
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■レポートの書き方
レポートの構成
レポートの書き方については、基礎演習Ⅰの全クラスで配付された『基礎演習の
しおり』を参照のこと(「 学習のガイド」は必ず通読すること )。ワープロ使用
を推奨する。それに加えて、このクラスでは、次のような構成にすること。
表紙
レポート本体の全段落末尾に(
)で括って番号をつけ、その番号に対応させて
段落毎の小見出し(語句)を表紙に書く。
樹形図によって、各段落の文章全体における位置づけを示す(『しおり』16 頁及
び配付する基礎演習Ⅰで学生が提出した見本を参照 )。樹形図にも段落番号を振
ること。また樹形図は1段ではなく、必要に応じて、何段にも階層化すること。
一つ一つの段落について、全体でどのような位置づけにあるのか、何のために書
いているのか、段落間の関係はどうなっているのか、を説明する(何のためにそ
の段落を書くのか、なぜそうした前後関係・配置なのか)メモをつけること(原
因と結果、原則と例外、原則と例示、問題と解答、要因1、2、3、などといっ
た具合に)。但し段落の内容を書くのではない。
表紙は複数頁になって構わない。
なおこの作業は、文章構成を自覚的にしてもらうためのものであり、このゼミ以
外の通常のレポートでは、このように明記することはしない。なおとして配付す
る。
序論
必ずレポート全体の構成を述べること(何をどの順に書くのか )。エセーのよう
に個人めいた導入は全く要らない。1段落にすること。
読み始めるに当たり、何が書いてあると期待して読み進めればいいかの方向付け。
まだ読んでいない人を引きつけるためのもの。
本論
1段落には1つのことだけを書き、まとまりを持つようにすること。従って賛否
両論を1つの段落に入れることはせず、2つの段落に分けること。
レポートの構成を明示するため、適宜小見出しをつけるとよい。
結論
本論で述べたことだけを要約するにとどめ、本論に書いていない感想めいたこと
などは不要なので一切省くこと。1段落にすること。
既に読み終わった人のために、後でここだけ読めば何が書いてあったか思い出せ
るように、内容を印象づけるように書く
従って、序論と結論とは重なる。結論から読み始める人もいるくらいである。
小説と違って、序論と結論は時間順には流れない
参考文献
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その他よくある問題点
たとえ参考文献に載っていても、自分が理解できない言葉は絶対使ってはいけない。
必ず意味を調べてから用いること。
引用の仕方
長い場合のみ、2〜3字分下げて入れる。
通常の短いものは、地の文に「」で括って入れる。
文中で体言止め(文が動詞や形容詞ではなく、名詞で終わるもの)はしないこと。論
理関係が不明確になるからである。
算用数字か漢数字か、文末はですます体か否か、統一すること。
■調査方法について
読むべき本を探す場所
図書館でキーワードによりオンライン検索する
絞りたい時は固有名詞などで検索するのがコツ
逆に広く知りたいときには、なるべく広い言葉で検索する
読んだ本の註・参考文献から芋蔓式に
概説書・入門書(大学の教科書)の参考文献
専門用語事典、百科事典、『現代用語の基礎知識』等
インターネット
耳学問(議論をすることの意味)、友人(他学部)
良い本の見分け方
註、参考文献、索引のあるもの
頻繁にあちこちで引用されるもの
昔に出版されてなお読まれるもの(=古典、ロングセラー≠ベストセラー)
新刊本で最新情報を補充する
昔の制度を知りたい場合は敢えて当時の本を読む
■参考文献(方法論に関するもの)
梅棹忠夫『知的生産の技術』(岩波新書、1969 年)
立花隆『「知」のソフトウェア』(講談社現代新書、1984 年)
木下是雄『理科系の作文技術』(中公新書、1981 年)
小林康夫・船曳建夫編『知の技法』(東京大学出版会、1994 年)
野口悠紀雄『パソコン「超」仕事法』(講談社、1996 年)
花井等・若松篤『論文の書き方』(有斐閣アルマ、1997 年)
森靖雄『大学生の学習テクニック』(大月書店、1999 年)
海保博之編著『説明と説得のためのプレゼンテーション』(共立出版社、1995 年)
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連立ミニサッカーゲーム
概要
3つのチームが同時にフィールドに入ってサッカーを行う。ゴールは3つ置き、ある
チームのゴールに誰かがボールを入れたら、他の全てのチームに1点が与えられる。
ここでは、なるべく2つのチームが「連立」を組んで残る1チームを攻めること、連
立を頻繁に組み替えること、が期待されている(連立相手を最後に裏切るのが最も得
策)。つまり連立について学ぶ(体験する)ことに目的がある。
ルール
原則としてサッカー(フットサル)と同じ。但し以下の点が異なる。
安全と運動能力差をなるべくなくすために
他人の身体に接触してはいけない。
ボールを利き足で蹴ってはいけない。
ボールは地面を転がせるように蹴り、宙に浮かせようとしてはいけない。
ボールに触れてよいのは脚だけ(ヘディングはなし)。
ゴールキーパーは置かない。
簡略化のため
オフサイドはなし。
サイドラインはなし。側壁にぶつかっても続行する。
ルールに違反した場合(ファウル)
得点が少ない方の他チームがフリーキックする。同点なら主将がじゃんけん。ペ
ナルティキックはなし。
時間は4分の予定
その他
運動ができる服装や靴を用意してくること。
怪我病気等の理由で運動ができない者は、なるべく早くに福元へ申し出ること。審判
その他の役目を務めてもらう。
当日休む場合は、なるべく早くに副手を通じて電話連絡すること。
質問がある場合、ゲームの改善につながることもあるので、早めに尋ねること。
オプション
ゴールを移動する(センターキックの際に)。
チームの数を4、5へ増やす。
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