ホール企業の資金調達

3月号 10.2.15 5:20 PM ページ 55
AMXコンサル通信
遊技機メーカーや周辺設備メーカーが
株式を公開し市場で資金を調達する一方、
コファンドのスキームは下のとおりです。
①パチンコホールを当社資金で5億円で
【優先出資の公募】
一口500万円
【劣後出資の利回り=40%】
賃料収入 5億×15%=7500万円
配当7.77%
配当
諸経費(固定資産税等)=392万円
4億×7.77%≒3108万円
ホール企業が直接金融を目指して上場す
購入する。②ホール企業と5年間の定期賃
期間5年
ることは、現時点ではほとんど不可能で
貸借契約を締結し、5億円に対し年15%の
※条件は自由に設計可能
す。しかも、金融機関の姿勢は依然とし
賃料でリースバックする。③当社はファ
て厳しく、新たな融資が引けない。では、
ンドの営業者となり、5億円の80%=4億
つまり、売却によって2億円、売却した
ホール企業はニューマネーをどこから調
円まで、一般投資家に出資を募る。④一
年及びその後毎年4500万円、キャッシュ
達すればよいのでしょうか。今回ご紹介
般投資家の出資分は優先出資とし、当社
フローが良化されることになります。
するのは、不動産特定共同事業による資
が劣後出資部分の1億円を引受ける。⑤優
金調達の手法、
「パチンコファンド」です。
先出資部分の配当は7.77%(年利)
。
=4000万円
額の2000万円が改善されます。
減価償却のピッチが時価の下落に追い
つかず、含み損を抱えた状態になってい
では、ホール企業がこのスキームを利
る店舗は、オフバランスすることで、キ
とは、一般の投資家から公募により資金
用するメリット、すなわちキャシュフロ
ャッシュポジションが改善され、新規出
を集めて不動産取引を行い、そこから生
ーの改善について見てみましょう。
店や競合店対策、新規遊技機導入などの
不動産特定共同事業法(以下「不特法」
)
じる収益を投資家に分配すること=不動
前提として、A社は税引前利益10億円、
戦略投資を可能にします。
産特定共同事業について、投資家を保護
a店(簿価10億、時価6億)を担保にした
する目的で制定された法律です。不特法
借入金が5億円、元本返済が1億円としま
①A 社を設立して不動産特定共同事業の
業者として事業を行うには都道府県知事
す。
(税率は40%とします)
許可をとり、a店を5.5億円で購入(買戻し)
の許可が必要ですが、通常、金融に関す
まず、a店を5億円で売却することで、
また、ファンドの出口戦略としては、
②UBIの劣後出資部分を1.5億円で購入(A
る法律が金融庁の管轄であるのに対し、
売却価格5億円−簿価10億円=△5億円の
社は継続して賃料を払うが、劣後配当を
不特法は国土交通省と金融庁の共管で、
売却損が実現し、税引前利益が10億円→5
受ける)③市場で売却、などのシナリオ
一般の投資家に向けての公募を可能にす
億円となりますので、納税額が4億円→2
が想定されます。
る金融関連法規の中では、比較的ハード
億円へと低減されます。
キャッシュフローを健全に保つことが
ルが低い法律ともいえます。一般投資家
次に、a店で事業を行うために必要なキ
企業経営の最重要課題である現在、不特
からの出資金については元本の返還に優
ャッシュアウトフローですが、元本返済1
法を使った資金調達の道は、不動産業者
先劣後の順位設定をすることで安全性を
億円→賃料7500万円となり、差額の2500
だけでなく、ホール企業でも大いに実現
高め、対象不動産の賃料収入を原資に安
万円の改善となります。さらに、元本返
可能性があると考えています。
定した配当を実現する資産運用商品とし
済は税引後のキャッシュアウトですが、
て、ローリスク・ミドルリターンを求め
賃料の7500万円は損金計上されますので、
る個人投資家に訴求し、不動産業者が資
税金は7500万円×40%=3000万円の低減
金調達手段として活用しています。当社
となり、不動産を自社で保有した場合の
が手掛ける、この不特法を使ったパチン
減価償却費を1000万円と仮定しても、差
A社のB/S
不動産特定共同事業営業者
a店 10億
借入金5億
a店5億円
b店 5億
c店
a店を5億で売却
・
・
匿名組合出資
優先出資
80%
4億円
●プロフィール
たきもと けんじ
投資家
1972年1月3日生まれ。UBI㈱
取締役副社長。慶應義塾
大学商学部卒。中小企業診断士
米国公認会計士
投資家
物取引主任者。大手コンビニ本部勤務を経て、中小企業2代
宅地建
目候補として両親の創業した会社で働くも挫折。その後、
後継に臨む次代の経営者に貢献したいと同社の企業再生事
劣後出資
20%
1億円
業に参画。上場ファンドから10億円の出資や私募債による
UBI㈱
資金調達、不動産のオフバランス支援投資を行う。現在、
不動産特定共同事業法を活用した直接金融(個人投資家と
の共同事業のカタチをとった証券化)に取り組んでいる。
A社と賃貸借契約 NET15%=7500万
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遊技通信 JULY,2008