これまで非常勤であった

平成18年度の事業概要
これまで以上に場内の整備を進めた。また、これまで非常勤であった獣医の渡辺を常勤
の研究員とし、爬虫類を対象とした診療所の開設を行うことにした。爬虫類を診療できる
動物病院は群馬県周辺にはないので、1つの拠点として発展が期待できる。また、飼育技
術学会の爬虫類分会を立ち上げて、第1回の大会を研究所内で行った。規模を大きくした
特別展である「コブラまつり」に加え、
「大蛇祭り」
、
「ガラガラヘビまつり」等も企画し、
好評だった。
A.基本業務
平成19年3月31日現在での飼育ヘビ類は、72種233個体(他の爬虫類を含み放
飼場の個体を除く)で、個体数、種数ともにやや減少した。
1.ヘビ類の飼育および繁殖
1)温室および放飼場でのヘビ類の飼育
① 第一温室(毒蛇温室)
(三保)
コブラまつりの時は主会場になり、多数のコブラの飼育展示を行った。グリーンマ
ンバが大きくなったのでここに展示した。
② 第2温室(大蛇温室)
(森口・三保)
大型ヘビ類の全個体については、
春の「大蛇祭り」開催中に公開体長測定を行った。
エラブウミヘビは平成 17 年 12 月に、冬期としては初めての入荷を行い、それらの個体は
約1年間飼育することができた。
③ 新温室(熱帯蛇類温室)
(森口・三保)
ワニ類のメガネカイマンは、桐生市動物園に寄贈、空いたところにセイブダイヤガ
ラガラヘビを入れた。いずれも大型の個体で、入場者には人気があった。ブラックマンバ
が死亡したため、あとには大型のコブラである、シンリンコブラを入れた。
④ 採毒室蛇庫および幼蛇コーナー
(堺・三保)
新たにヒョウモンナメラが入った。
⑤ 研修室蛇庫
(三保・渡辺)
前年度に続き、ここは展示ストック・研究用だけでなく、疾病個体の治療場所とし
て積極的に利用された。
⑥ 第15放飼場(日本産ヘビ類)
(森口・三保)
昨年に引き続き、アオダイショウの展示飼育を行った。4月、5月にはよく電柱に
上っている。アオダイショウは、電力会社の実験にも使っている。
2.長期飼育記録
20年を越えたヘビの中で、ガーデンツリーボアと与路島のハブが死亡した。一方で、
10年を超えるヘビの追加はなかった。9年という個体が多くいるので、来年にはたくさ
んリストに入る見込みである。
種 類
期 間
飼育場所
アミメニシキヘビ
23年5月
第2温室
ハブ(沖縄島)
22年9月
採毒室
ビルマアオハブ
18年
第1温室
タイコブラ
18年
第1温室
マムシ(雑種)
15年10月
研修室蛇庫
タイワンコブラ(4頭)
14年6月
採毒室・第1温室
ハブ(奄美大島)
13年6月
第1温室
3.飼育蛇類の健康管理(渡辺、堺)
獣医の渡辺を非常勤から常勤にして、爬虫類の診療所を開設した。これに より健康管
理の充実を図ることができた。
B.研究業務
ハブの生態・環境の研究、および陶陶酒本舗の委託による、野外放飼場のマムシ・シマ
ヘビの管理は、継続した。岩国のシロヘビの研究は、新たに3年契約で餌の問題を研究す
ることになった。
1.岩国のシロヘビの研究
(三保・渡辺)
岩国では、飼育している個体が増えてきて、安価な餌を入手することが急務になってい
る。そこで、人工飼料を含めて、いかに安価な餌を確保するのか研究することになった。
初年度は餌の違いによる成長の具合に重点を置いて、研究を行った。
2.マムシ亜科のヘビ類の分類学的研究
(鳥羽)
名古屋大学の小澤教授の研究室と共同研究を行い、ハブとマムシ類それぞ れについて
新しい知見が得られ、論文にまとめる作業に入ったが、小澤教授 の時間がとれず、定年退
官を待って最終的なまとめを行うことになった。
3.各種補助金による研究
1)ハブの生態・環境の研究
(鳥羽、森口:鹿児島県よりの委託)
主に徳之島で、防風ネットとトラップを組み合わせて、ハブの行動を抑制 する実験を
行い、好結果を得た。
4.受託研究
1)野外放飼場における飼育展示の見直しおよびマムシの飼育繁殖の研究
(森口・三保)
現在の放飼場は、マムシが冬眠できる場所がないために、冬期には採毒室 で飼育を
行った。マムシの入荷が、かなり遅くなることが予想されたので、
平成 18 年3月からヒメハブ 60 個体を放飼場で飼育した。ヒメハブの死亡は、マムシよ
りも少なかったが、マムシよりも夜行性の傾向が強く、昼間の出現は少なかった。7月か
らは鹿児島県産のマムシを飼育した。鹿児島産個体は、比較的大型で飼育や展示に向いて
いた。
シマヘビは約 350 個体を春に入荷した。入荷後約1ヶ月間の死亡率は高かったが、そ
の後減少した。本年度は暖冬だったため、厳冬期でも地上に出現する個体がいた。
新潟県と鹿児島県から入手したマムシに子ヘビを産ませ、アマガエルとマウスの赤子
を別々に給餌し、成長を比較した。これまでのところカエルの方が良い結果が得られてい
る。
5.その他の研究
1)マムシ血清中のマムシ毒阻害タンパク質の研究
(鳥羽 大阪薬大との共同研究)
18年度は特に大きな進展はなかった。共同研究は継続している。
2)ヤマカガシ毒のメタロプロテアーゼの研究
(鳥羽・堺 摂南大学との共同研究)
論文のまとめを行っている。
3)ヘビの性染色体の起源と分化の研究(鳥羽 北海道大学との共同研究)
論文が1つ出版された。18年度には、各分類群のヘビ類から採血を行い、染色体の
解析を行った。
6.出版業務
1)平成18年度ハブ動態調査研究報告書(奄美群島振興開発事業)
7.その他
1)蛇月報の発行
毎月の各飼育室における死亡、
移動および飼育蛇類の種類、
数を蛇月報として報告し、
薮塚本町総合支所に送付した。
8.動物の交換
1)Mr. Rex Knight
受領 11月19日
ペルシアナメラ
ヒョウモンナメラ
2
1
9.論文、図書、報告書および学会発表
1)論文、図書
鳥羽通久・太田英利:アジアのマムシ亜科の分類:特に邦産種の学名の変更を中心に.
爬虫両棲類学会報、2006: 145-151.
Matsubara, K., H. Tarui, M. Toriba, K. Yamada, C. Nishida-Umehara, K.
Agata and Y. Matsuda : Evidence for different origin of sex
chromosomes in snakes, birds, and mammals and step-wise
differentiation of snake sex chromosomes. Proc. Natl. Acad. Sci. USA,
103: 18190-18195.
ヴァン・ウォラッシュ著、鳥羽通久訳:立体モデル大図鑑「コブラのから
だ」
、講談社.2006.
2)報告書、解説書等
国土交通省、鹿児島県、奄美ハブ生態・環境研究会:平成18年度ハブ動
態調査研究報告書(奄美群島振興開発事業)
.2007.
3)学会発表
丹羽 孝、鳥羽通久:ヘビ類数種の体表脂質について.(第45回日本爬
虫両棲類学会大会、広島)
森口 一:ニホンマムシの繁殖の地理的変異.
(同上)
森
哲、長谷川雅美、森口
一、田中幸治:祇苗島産シマヘビの巨大化は孵化個体で
も見られるか?:島嶼巨大化の適応的意義の仮説と実験.
(同上)
10.
WHO のシンポジウム
1月10日にジュネーブのWHO本部で、"Rabies and Envenomings: A
Negrected Public Health Issue" というシンポジウムが行われ、鳥羽が出席した。現
在各国に置いて抗毒素血清を製造する機関が減っており、アフリカを中心に血清が入手で
きない事態が起こっていて、その対策の検討が行われた。
C.社会教育事業
入場者数が減少し、それと連動して入場料収入も減少した。飼育技術学会など、新たな
事業も開始した。
1.一般教育活動
1)蛇等に関する講演、講習の実施
蛇研内外において次のような講演、研修を行った。
○講演会(5月、高崎市商工会、鳥羽)
○ヘビの観察会(6月、桐生自然観察の森、三保)
○講演会(6月、高崎高校、鳥羽)
○わんぱく探検隊(8月、スネークセンター、森口)
2)飼育技術学会爬虫類分会、第1回大会の開催
9月5,6日の2日間、動物園や専門学校の職員・生徒30名あまりが集まって、爬
虫類の分類、飼育、病気の治療、野外観察などを行った。講師は鳥羽、渡辺が勤めた。
3) マムシ対策研修講座の開講
野外でマムシやヤマカガシに対処するための講座を、3月から9月までの
第4土曜日と、夏休み期間中に開講した。スネークセンターのセミナー室
を主会場にして行い、約30名の受講者があった。
4)爬虫類体験教室の開講
毎月第1日曜日に、テーマを決めて職員が講座を開く。無料。
5)コブラ毒ふき体験会
前年に続き、ドクフキコブラ2種を使って行ったが、やはり反響は大きかった。
6)野外教室の実施
小中学校の団体に対しては「野外教室」を行い、蛇についての正しい知識を持っても
らうために、身近に住む蛇を見せて解りやすく解説し、また、実際にシマヘビにも触れて
もらい、体験により蛇に対する理解を深めてもらうよう努めた。
7)夏休みハ虫類教室の実施
夏休み期間の毎日曜日に、採毒室研修室において「夏休みハ虫類教室」を行い、一般
入場客に対してスライドや生きた蛇などを使って、蛇を中心とした爬虫類について解りや
すく説明を行った。
2.毒蛇咬症国際研修センターにおける活動
1)海外及び国内からの研究者の受入れ
実習生・研修生
福岡コミュニケーションアート専門学校
1名
日本ペット&アニマル専門学校
1名
月山あさひ博物村
2名
2)毒蛇110番活動
最近5年間の問い合わせ件数は、記録に残したものだけでも、下記のようになる。電
話では記録が漏れたものがかなりある。Eメールによる問い合わせはほぼ横ばいになって
きた。
Eメール
電話
毒蛇咬症に関するもの
14年
350
89
81
15年
220
137
122
16年
289
209
93
17年
532
262
96
18年
506
215
58
3.特別企画及び展示
(1)
「大蛇まつり」 期日:3月26日−5月28日
大蛇を中心に特別展示を行い、日曜日には大蛇を放飼場まで出して、長さの公開測定
を行った。長さ当てのクイズも実施し、好評だった。
(2)「ガラガラヘビまつり」 期日:6月3日−7月2日
大型のセイブダイヤガラガラヘビをたくさん入手して、大々的に行うはずだったが、
トラブルがあって遅れたため、規模を縮小して行った。土日には、
「ヘビたちの音の競演」
として、ガラガラヘビを始め、クサリヘビ、シマヘビなどの音を聞いてもらった。
(3)「コブラまつり」
期日:7月16日−8月31日
前年に続いて夏休み期間に行った。特別なイベントとしては、
「コブラショー」と「毒
ふき体験会」を行い、特に後者は反響が大きかった。
(4)「ガラガラヘビまつり」 期日:9月9日−11月5日
ガラガラヘビが遅れて入ったので、改めてガラガラヘビまつりを開催した。
6月と同じく土日には「ヘビたちの音の競演」を行ったが、大きな個体を使えたので迫
力が違い、人気があった。
(5)白蛇観音供養祭
期日:10月15日(日)
これまでは、地元住民へのサービスと して、無料入場券を配布してきたが、太田市と
の合併で、状況が変わったため、テストケースとして無料入場券の配布は行わなかった。
その結果として入場者が減り、やや寂しい観音祭となった。新しい試みとして、ふつうの
ペットの供養も行った。
(6) 白蛇観音開眼供養
期日:12月24日(日)
白蛇観音の傷みがひどいため、11月下旬より塗装のし直しを行った。完成を機に開
眼供養を行い、群馬県や太田市などから大勢の関係者の参列を得た。
(7)夜のスネークウォッチング
参加者は伸び悩んでいるが、参加した人たちには好評だったので、今後もさらに工夫
を凝らして続けていきたい。
(8)特別展示「イノシシとヘビ」
期日:1月1日−3月31日
亥年を迎えて、イノシシとヘビの関係にスポットを当てて、特別展示を行った。その
際、ヘビの天敵としてのイノシシを強調するため、羽村市動物公園の協力を得て、イノシ
シがシマヘビを捕食するところをビデオ撮影して、資料館で放映した。
4.第5回ヘビの文化賞
太田市の共催で2年目に入ったが、地元を含めて応募は増加した。新太田市でも認知
されるようになったことがうかがえる。
5.第6回ペット爬虫類コンテスト
太田市、太田市観光協会の協賛で行った。新動物愛護法の施行をひかえて、解説と指
導を行う良い機会となった。
6.広報宣伝活動
(1)薮塚本町観光協会関係キャラバン
○関越自動車道上里PAでのちらし等配布
7月
○北千住駅前でのちらし等配布
3月
(2)雑誌、テレビ放送等による広報宣伝
雑誌への広告掲載及びテレビ取材協力による広報宣伝を行った。
(3)売店との共同でのチラシの配布
表にスネークセンターのイベント、裏面に売店の通販、
という形のちらしを配布し、
次第に効果が上がっている。
7.販売事業
「ヘビの世界」を、県立自然史博物館、国立科学博物館、北九州市自然・歴 史博物館
でも販売している。そのほか、ハブの牙などの製品を売店で販売。 スネークフックはイ
ンターネットを使った通信販売で販売している。