酸化チタンを担持した石英繊維製フィルターによる大気エアロゾル粒子の

平成24年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿
酸化チタンを担持した石英繊維製フィルターによる大気エアロゾル粒子の無毒化
東海大学大学院理学研究科化学専攻
○本橋
一真、関根
東海大学大学院地球環境科学研究科地球環境科学専攻
Chiang Mai University
嗣晃、関根
池田
嘉香
四郎
Thanongsak NOCHAIYA
【はじめに】
エアロゾル粒子の水溶出物は海洋性発光バクテリア Vibrio fischeri(V. fischeri)の生物発光に対して阻害作
用を示し、すすなどの懸濁物が毒性要因の一つであった 1,2)。酸化チタン(TiO2)は、紫外線(UV)を照射すると
酸化・還元活性を示し、すすを分解することが知られている 3)。そこで本研究では、TiO2 担持石英繊維製フ
ィルターを作製し、このフィルターに大気エアロゾルを捕集し、UV の照射前後の試料を V. fischeri に対し
て作用させた場合、発光阻害作用にどのような影響があるかを調べた。
光触媒による分解
フィルター作製
エアロゾルの捕集
毒性評価
【方法】
TiO フィルター
UV ランプ
捕集フィルターの作製:2-プロパノール(関東化学,特級)にチ
エアサン
石英繊維製
プラー
フィルター
タニウムテトライソプロポキシド(TTIP, 関東化学,特級)を
TTIP
フィルターをセット
バイオアッセイ
加えて 2%TTIP/2-プロパノール溶液を調製し、これに石英繊
焼成
エアサン
維 フ ィ ル タ ー (Advantec, QR-100, 110 mm φ お よ び
プラー
TiO
UV照射
エアロゾル
Whatman, QMA, 47 mmφ)を浸した後、常温で 1.5 時間乾
λ=365 nm,
TiO フィルターで
輝度の測定
エアロゾルを捕集
燥させ、500℃で 2 時間焼成して TiO2 を担持した大気エアロ
TiO フィルター
1.1mW/cm
図 1 フィルター作製から毒性評価までの手順
ゾル粒子捕集フィルターを作製した。
2
2
2
2
2
BLI(%)
エアロゾル粒子の捕集:2012 年 2~4 月に東海大学湘南校舎(神奈川県平塚市)でエアロゾル粒子を捕集した。
バイオアッセイによる有害性評価:捕集後のフィルターをポンチを用いて 25 mmφにカットして供試試料と
した。試料に滅菌蒸留水を加え 1 時間半振とう抽出し、溶出液をポアサイズ 0.45 μm のフィルターでろ過
したものを試料溶液とし、バクテリアに作用させ、ルミノメーター(STL,RT001)にセットし相対発光強度
(Bioluminescence intensity:BLI)を 2 時間測定した。
120%
A
輝度の測定:大気エアロゾルを捕集した捕集フィルター
100%
の UV 照射前後の写真をデジタルカメラで撮影し、パソ
Blank
コンに取り込んで輝度を測定することで UV 照射による
80%
2012/4/9
試料の色の変化を観察した。
UV-2h
60%
UV-24h
【結果および考察】
UV-48h
図 2 の A のように UV 照射前の毒性評価でブランクの
40%
UV-72h
BLI より BLI が低かった試料(毒性を示した試料)につい
限外ろ過
20%
ては UV の照射時間の増加に伴い BLI が増加していき、
0%
72 時間後にほぼブランクの BLI と同じ値になり、毒性が
0
20
40
60
80
100
120
低減されていることが確認できた。また図 2 の B のよう
時間(min)
に UV 照射前の毒性評価でブランクの BLI より BLI が高
140%
B
かった試料(スティミュレーションを示した試料)では、
120%
BLI(%)
短時間の UV 照射で BLI が大幅に減少し、照射時間の増
Blank
100%
加に伴って BLI が増加していき最終的にブランクの BLI
2012/3/14
とほぼ同じ値になった。またすべての試料において UV
80%
UV-2h
照射時間の増加に伴い輝度も増加していた。このことか
UV-24h
60%
UV-48h
ら毒性の原因となっている成分とスティミュレーション
40%
UV-72h
の原因となっている成分の両方が UV の照射によって除
限外ろ過
20%
去されている可能性が考えられる。また輝度の増加から、
黒色の成分が分解されていることが確認できた。
0%
0
20
40
60
80
100
120
【参考文献】1)池田,関根,大気環境学会誌,44(1),
時間(min)
16-23(2009) 2)S. Ikeda and Y. Sekine, Proc. of
ICROS-SICE Intern. Joint Conf. 2009,
図 2 UV 照射時間に伴う BLI の変化
4486-4489(2009) 3)M. C. Lee and W. Choi, J. Phys.
(捕集日 A:2012/4/9, B:2012/3/14)
Chem B, 106, 11818-11822(2002)
【謝辞】 本研究において日立化成工業株式会社に ROTAS キットをご提供いただき、また試料分析に関して東
海大学高度物性評価施設の宮本泰男氏の協力を賜りました。ここに心より感謝の意を表します。 本研究は、
東海大学連合後援会研究助成「生活環境がもたらす病気の診断法と対処法の開発-シックハウス症候群の神経
学的診断法を中心として」
(代表:坂部貢)の一環として行った。