Newsletter - ビューローベリタス

■ 建築認証事業本部
建築基準法改正に伴う告示~避難施設等の別棟の基準
平成28年4月22日に公布された告示のうち、建築計画を立てる上で、避難施設の設置に大きく影響があると考
えられる「避難施設等の別棟」について概要をご紹介します。従前の規定では、開口部のない耐火構造の床又
は壁で区画することにより別棟とみなせますが、それに加え下記の要件を充足する渡り廊下を設置することによ
り別棟とみなすことができるようになります。この基準は、建築基準法施行令第117条第2項第2号の規定により
平成28年 国土交通省告示第695号(平成28年6月1日施行)で示されています。
■ 通常の火災時において相互に火熱又は煙若しくはガスによる防火上有害な影響を及ぼさない構造方法を定
める件(平成28年国土交通省告示第695号)の概要
(1) 用途は通行の用に供するものに限られます。壁及び天井の屋内に面する部分の仕上げには準不燃材料な
どを用いなければなりません。
(2) 別棟とみなす部分からの避難経路とすることはできません。
(3) 渡り廊下のそれぞれの区画部分へ連絡する開口部(区画開口部)の離隔距離は、開口部の幅の合計又は高
さの最大なものうち、最も大きなものに2.5倍を乗じた数値以上が必要です。
1. 被区画部分に連絡する渡り廊下の
開口部を区画開口部という。
2. 区画開口部と他の区画開口部との距離は
ⅰ区画開口部の幅(一の区画開口部が複数ある場合にはその合計)
ⅱ区画開口部の高さ(一の区画開口部が複数ある場合には最大のもの)
の数値のうちいずれか大きい数値に 2.5 乗じた数値
(4) 主要構造部は耐火構造とする必要があります。
(5) 渡り廊下の区画開口部以外の開口部は、防火設備(法27条1項に規定する防火設備)とする必要があります。
ただし、区画された部分から90cm以上離隔、又は50cm以上の突出した袖壁で有効にさえぎられていれば
防火設備の設置は不要です。
(6) 区画開口部には避難方行に開くことができる特定防火設備(政令112条14項2号イ及びロ)の設置が必要で
す。ただし、渡り廊下に排煙設備を設けた場合、遮煙性能は要求されません。
(7) 特定防火設備からの垂直・水平距離が特定防火設備の面積の平方根以下の室内に面する部分については、
下地が準不燃材料で造られているか、仕上げが塗厚さ25mm以上の石膏又は45mm以上のモルタルを塗
ったものであることが必要です。ただし天井又は区画を構成する壁については、特定防火設備の上端から
天井までの垂直距離又は両端から垂直距離が下記数値以上の場合は不要です。
A/25+0.28(0.38aを超える場合は0.38a)
A:防火設備の面積(㎡)/a:防火設備の高さ
(8) 区画開口部と居室から直通階段の出入口に通ずる通路との距離が、当該開口部の幅又は高さのいずれか
大きい数値に1.5倍を乗じて得た数値以上となるように区画開口部を設けることが必要です。
以下の図は、渡り廊下の開口部が、幅1m、高さ2mとした場合の例です。
渡り廊下は通路であって、
内装を準不燃材料
常閉特防(遮煙)であり
避難方向へ開くこと
区画開口部離隔距離は
2 x 2.5 ≦ 5.0m
被区画部分内で避難関係
規定に適合
離隔距離は、2 x 1.5 ≦ 3.0m
W = 1.0m
H = 2.0m
A = 2.0 ㎡
2.0/25 + 0.28 ≦ 0.4m 離れている(水色=不燃化不要)
√2.0 ≦ 1.42 の床範囲の下地は RC(黄色=不燃化必要)
このほか、渡り廊下の壁を給水管、配電管、換気、暖房、冷房などの設備が貫通する場合には、それぞれ防火
措置が必要となります。
建築認証事業本部 田口紀彰
【お問い合わせ】
ビューローベリタスジャパン㈱ 建築認証事業本部
お問い合わせフォーム
ビューローベリタスのサービス:確認検査業務
最寄りの事務所まで
■ インサービス検査事業本部
防火設備が新たに定期報告制度の対象に
平成28年1月15日付で交付された建築基準法の改正に伴い、定期報告制度も改正され、平成28年6月1日より
施行されました。今回は、新たに加わる防火設備点検についてご説明します。
平成25年10月に福岡市内の診療所で発生した火災事故では、火災時に自動閉鎖するはずの防火扉が正常に
作動しなかったため、死者10名を含む多数の犠牲者が発生する惨事となりました。今回の改正では再発防止策
として、防火設備点検に関する規定が強化されました。
改正前の定期報告制度における問題として、
• 建築基準法で防火設備の設置基準、維持管理が定められているが、専門的な検査基準と資格者の規定が
無い
• 建築基準法における定期報告制度の指定対象は、特定行政庁に委ねられている
の2点が挙げられます。
今回の改正では、新たな検査基準の導入と、国の検査対象の見直しにより、防火設備が正常に作動するかを点
検し、今後事故を防いでいくことになりました。従来、特殊建築物定期調査の一環として行われていた防火設備
点検ですが、今後は独立した形で約1年間隔での報告が求められます。
改正のポイント
(1) 定期報告制度の対象に、防火設備点検が加わりました
(2) 防火設備点検委託先は、専門技術を有する資格者に限定されます
委託対象となる資格者は、一級建築士、二級建築士、新設された防火設備検査員です。
(3) 防火設備点検対象となる建築物
国が法令により一律で定め、それ以外の建築物については地方自治体(特定行政庁)が地域の実績に応じて指
定します。
出典:国土交通省ウェブサイト「定期報告制度の見直し案(PDF)」より抜粋
(4) 専門的な検査内容
防火設備点検は、消防法が定める消防設備点検と、目的・対象が異なります。
防火設備点検では、火災時の防火区画形成、延焼拡大防止、避難安全確保という視点より、各設備の安全性、
耐久性の維持、経済性などの経年劣化対策や管理不備などが無いかを確認します。防火区画を形成する上で
の基本的性能については、遮炎性能・遮煙性能・遮熱性能・避難性能などが求められます。
防火設備点検は、万が一の時に人命を守るために定められました。消防設備点検を行っているから大丈夫では
なく、防火設備点検と消防設備点検の両方を必ず行う必要があります。また定期報告の時期が各自治体によっ
て違うと予想されるため、今後確認が必要です。
参考文献:国土交通省主催「防火設備検査員に関する講習」(平成27年度)使用テキスト
建築基準法 / 省エネ法 / 消防法の規定に基づく建物・設備の定期報告・点検に全国対応!
フリーダイヤル 0120-719-904 までお気軽にお問い合わせ・ご相談下さい
建物・設備の定期調査ならおまかせ!専用ウェブサイト ビルレポ.com もご覧下さい
インサービス検査事業本部 丸瀬篤史
【お問い合わせ】
ビューローベリタスジャパン(株) インサービス検査事業本部
東京新橋事務所 TEL:0120-719-904
[email protected]
ビューローベリタスのサービス:
建物・設備の定期調査ならおまかせ!専用ウェブサイト ビルレポ.com をご覧下さい。
システム認証事業本部
ヤマハ発動機グループの環境グローバル統合
ヤマハ発動機株式会社
ヤマハ発動機株式会社
(静岡県磐田市)
人事総務本部 リスク管理部 IMS 推進グループ
http://global.yamaha-motor.com/jp/
主査 野上英治様
ビューローベリタス主催
「統一認証セミナー:組織のガバナンス強化に向けて~コーポレートリスクの視点から見たマネジメント~」
(2016 年 3 月 11 日/大阪会場)でのご講演より *写真は 2 月 17 日東京会場で撮影
■ 環境グローバル統合の経緯
ヤマハ発動機グループでは、小型エンジン技術、FRP 技術、
制御技術を活かし、二輪を中心とするモーターサイクル事業、
マリン事業をはじめ 16 事業を展開しています。
製品が使われるところに製造と販売の拠点を置くことを基本
方針としており、よって海外のグループ会社における販売が
全社の約 90%にのぼり、中でもアセアン、中国、インドなどの
アジア地域が 43%を占めています。
現在約 30 カ国に 130 余りのグループ会社があり、200 を超え
る国と地域に販売網を広げ、従業員は 5 万 3 千人(いずれも
連結ベース)です。この中で主要な製造拠点である 38 社を対象として ISO14001 認証のグローバル統合を目指
しており、現在は 33 社の統合が完了している状態です。
ISO14001 認証への取り組みは、1996 年に ISO14001 が発行された頃に始まります。本社では 2000 年までに
本社(国内)の 9 事業所を対象に認証登録を目指して、個別に取り組みました。また国内外のグループ会社も同
様に個別に認証登録に取り組みました。そして 2004 年に、本社 9 事業所で個別に認証登録していた ISO14001
を一本化して統合認証に切り替えました。
また比較的環境負荷が小さいグループ会社については、2007 年にグループの環境マネジメント認定制度を設
けて、独自のルールを定め運用を開始しました。
その後、国内外のグループ会社が個別に認証登録していた ISO14001 認証の統合を図ったのは 2012 年 1 月
のことです。
その背景には 2008 年のリーマンショックがありました。この影響で 2009 年に営業赤字に転落したことを受けて、
経営陣より「ビジネスの実効性を高め、業務の効率化を図れ」という全社的な指令が出た結果、各種認証につい
てもまた、効率化が求められたのです。
そこで 2011 年に、本社のみで環境と労働安全衛生の統合マネジメントシステムを立ち上げ、翌 2012 年に国内
外のグループ会社の認証をグローバルに統合する活動をスタートしました。こうした統合の取り組みは、現在に
至るまで継続しています。
■ 環境グローバル統合の目的
ISO14001 認証のグローバル統合に取り組んだ理由は大きく 2 つあります。「環境ガバナンスの強化」と「審査コ
ストの低減」です。
「環境ガバナンスの強化」の具体的な目標は、グループの環境マネジメントシステム活動レベルを底上げし、グ
ループが抱えるリスクをきちんと把握し対応することです。これはグローバル企業の責務とはいえ、我々本社事
務局の負荷は大きく増えます。これについては後ほど改めてお話しします。
「審査コストの低減」については、ISO14001 認証グローバル統合の効果としては、大よそ 3 割減といったところ
でしょうか。しかしこれは認証の種類や会社によって異なりますので参考程度に留め置いて下さい。
■ グローバル統合の手順やポイント
2012 年に ISO14001 認証のグローバル統合の取り組みを開始し、現在 5 年目になりますが、準備期間も含め
るとすでに約 6 年が経過しました。この間、次のような取り組みを重ねてきました。
(1) 認証機関の統一(選択)
厳密には認証機関を統一しなくても可能ですが、統一したほうが進めやすくなります。私どもの場合は、世界に
広がるグループ会社を一元管理することがミッションでしたので、パートナーとなる認証機関の選択は非常に重
要な課題でした。そこで熟慮した末に、世界にブランチをもつグローバルな認証機関であり、準備段階から親身
なアテンドをしてくれたビューローベリタスを選択したのです。
世界各国のグループ会社が認証機関統一をすんなり了承してくれたわけではありませんでした。統合にあたっ
てグループ会社にアンケートを取ったところ、認証機関統一について、二つ返事で了承した会社はありませんで
した。最も多かった意見は「認証機関を変えることにより、再びシステムを一から構築しなければならない。それ
は多大な労力を要し、デメリットも多い」というものでした。グループ会社それぞれに懇意な認証機関があり、そ
の審査方針・スタイルにも馴染んでいる。それらを失うと業務にも悪影響が出るという主張でした。現行の認証機
関とは長年の付き合いがあり、審査費用が優遇されているという具体的で説得力のある意見もありました。こう
した消極派を説得して、統合に前向きに取り組んでもらうようにすることも、本社事務局の大事な役割です。
(2) グループ共通のガイドラインとマニュアルづくり
ただ形のみを一本化しても効果は得られないため、ある程度のルールをつくる必要がありました。そこでグルー
プ毎の手順の最大公約数的な領域、つまりリスク評価、法順守、内部監査、是正処置などについては共通ルー
ルとし、それ以外の領域は各グループ会社の独自ルールに分類しようと考えました。しかし、グローバル統合の
拡張と同時に標準化を進める中で、国や会社によって手順や意識に違いがあり、標準化は非常に多くの手間が
かかることが徐々に判明しました。現在は、是正処置のグループ水平展開を優先的に取り組んでいますが、他
のテーマも早期に進めることが課題となっています。
「共通のガイドラインづくり」は、取り組みの初期ではなく、拡張が落ち着き全体的な状況を見渡せる余裕が出て
くる時期から始めても遅くはありません。継続的にシステムを改善することが重要です。
(3) インターフェイスの構築
グローバル統合によって、世界各国のグループ会社に情報やオーダーを発信し、彼らから報告や回答を受信す
る必要が出てきますので、そのためのインターフェイス(情報システム)の構築が必要でした。そこで弊社では、
「G-YECOS(グローバル・ヤマハ・エコロジー・システム)」という情報システムを開発し、各サイトとのコミュニケー
ションに活用しています。
「G-YECOS」をインターネットまたはイントラネットで
呼び出して、活動実績、環境データ、ボランティア活
動、不適合の是正などをフォーマットに基づき入力す
る仕組みです。それらのデータは会社別にファイリン
グされており、本社だけでなくグループ会社同士でも
閲覧できるようになっています。本社ではこうしてグ
ループ各社から「G-YECOS」に上がってきた数字を
年次でまとめ、環境委員会に報告します。
本社から発信したいことも「G-YECOS」を通してグル
ープ会社に届けます。
一定規模の企業がグローバル統合をする場合には「G-YECOS」のようなインターフェイスと報告文書のフォーマ
ット化が必要となります。
(4) 統合参加への粘り強い交渉
お国柄やローカル人材の考え方や嗜好、また認証機関変更への不安感などから、統合参加を躊躇するグルー
プ会社も少なからずありました。そのようなグループ会社には統合の目的と効果を繰り返し説明し、お互い納得
いくまで交渉します。これも本社事務局の大事な役割です。
現時点で 4 年かけて 33 社を統合し、残りは 5 社になりました。当初は 3 年程度で統合を完了させる計画でした
が、各社で経営状況や認証のサイクルが異なり、希望通りには進みませんでした。例えばベトナムについては、
2016 年 1 月に現地を訪問し、グローバル統合について膝を突き合わせてコミュニケーションした結果、ようやく
参加の意を表してくれて 8 月までに統合する予定となり、統合完了の目途が見えてきました。
■ グローバル統合のメリット
統合による最大のメリットは、環境マネジメントシステムにおけるガバナンスの強化を実現できる点です。統合前
は、グループ会社の環境データなどは最低限把握していたものの、法をきちんと順守しているのか、内部監査で
指摘された不適合の是正やフィードバックが適切になされているのか、といった点は正確な把握が難しく、本社
では懸念事項でした。
グローバル統合を通じてグループ会社と様々な情報のやり取りを重ねる内に、それら細部の可視化が進んでき
ました。中には可視化で余計に不安や心配事が増えるようなこともありましたが、やはり各社の様子がきちんと
把握できるようになったことは一番のメリットです。
もう 1 つ重要だと感じたメリットは、ローカルスタッフとの間にイベントの報告や指示などコミュニケーションの機会
が増え、彼らの様子や個性が見えてきて、良質な関係が築かれ、一体感が醸成されてきたことです。グループ各
社の事務局の大半はローカルスタッフですので、グローバル統合がもたらしたコミュニケーションの向上は、大き
なメリットでした。
■ グローバル統合における課題
最後に、グローバル統合にまつわる課題や苦労した点を、アドバイスも含めてお話します。
(1) グループ統括機能の維持管理
グローバル統合により確実に「ガバナンスの強化」が図られてきています。しかし、拡張が進み参加社数が増え
るにつれて、本社事務局の業務量が飛躍的に増えました。グローバル統合に参加するグループ会社は、2012
年統合初期には 5 社でしたが、2015 年末時点では 33 社に増えました。
つまり 33 社分のマネジメントレビューの報告を取りまとめてグローバルマネジメントレビューの報告資料を作成し、
それを「G-YECOS」にアップロードし発信するという作業を、現状のマンパワーで対応しなければならなくなりま
した。33 社からの報告は同時期に届きますので、それらへの対応は非常に大変です。
また、グループで共通のフォーマットを使っているにも拘らず、届いた報告書やサマリーの英語や内容のレベル
についても、国やスタッフによってバラつきがあり、それらをまとめるのも一苦労です。
こうした経験を通じたアドバイスは 2 つございます。まず、事前に人事部と連携してマンパワーの確保をしておく
こと。そして、報告書のフォーマットと報告時に使用する言葉(用語)を統一し、グループ各社にコンセンサスを取
っておくことです。
(2) 言語(英語)対応
海外のグループ会社とのやり取りには英語を使いますが、英語のレベルが国やスタッフによってまちまちです。
英語教育が行き届いていない国からの報告書(特に是正報告書)は、読解できないことも多いです。この問題を
解決する一助として、最低限の文書ルールは必ず作成しておくことをお勧めします。
(3) ローカルスタッフとの関係づくり
ローカルスタッフに対しては、信頼関係の構築と、急な退職に対する注意が必要です。
グローバル統合の各種イベントを実施するには、案内・進捗・報告・フィードバックなどの作業が必要です。その
都度ローカルスタッフとやり取りし、否が応でもコミニュケーションする機会が発生します。お互いに慣れない英
語でやり取りをしていて齟齬が起こりやすい状況下にいるわけですから、ローカルスタッフとの信頼関係を意識
的に築くことは非常に重要です。相互に行き来し、顔を合わせて話をする機会をなるべく設け、相手を知る必要
があります。そうすると次第に相手の個性や特徴、置かれた状況が分かってきて、会話も通じるようになり、スム
ースに事が運ぶようになります。
また中国やアセアン諸国で時々起こることですが、ローカル人材が引き抜きなどによって急に退職してしまうこと
があります。以前、ある国で、ISO14001 の責任者、事務局長、担当者が一度に退職してしまったことがあり、引
き継ぎもままならず非常に困ったことがありました。こうした事態も、信頼関係がしっかりできていれば、回避でき
る可能性が高まるかもしれません。
(4) 国や地域の特徴を理解する
国によって法令や習慣、環境に対する意識が全く違うことがあります。例えば法令が朝令暮改で変わったり、廃
棄物を分別するという習慣が全くなかったり、日本の感覚からかけ離れたような現実が実際にあるのです。これ
らの違いは統一認証の運営に少なからず影響を与えているように思えます。まずは各国の文化や思考への理
解を深めることが大事です。
国や地域によるカレンダーの違いも要注意です。例えばインドやアセアン諸国などは週休 2 日ではなく日曜日し
か休みません。また、長期休暇も考慮しなければなりません。中華圏やアセアンでは 2 月の旧正月やテト、欧米
では長い夏休みやクリスマス休暇があり、報告書の締め切り設定などに影響を及ぼします。全ての国に対応す
ることは難しいため、常に「早目の発信と余裕を持った回収」を心掛けるようにしています。
(5) 法規制などへの適合
グループ会社がそれぞれの国の該当する法令を特定し、遵守評価した結果の報告を受けていますが、その詳
細な内容やレベルまでは十分に把握できていません。それを実現するためのシステムづくりが重要な課題の 1
つと認識しています。
(6) 規格改訂への対応
2015 年 9 月 15 日の規格改訂を受けて、遅くとも 2018 年までに対応する必要がありますが、2017 年に移行審
査の受審を予定しています。規格が改訂されたといっても、当社では経営全体や事業活動の中で既に実行され
ていることばかりですので、リスクと機会等、一部組織縦割りで実行していた既存の活動を環境グローバル統合
にリンク付けするだけで対応できます。
ただし、グローバル統合(統一認証)であるため、グループ全体で一斉に移行する必要があり、そこに少し手間が
かかることを予想しています。現在、グループ各社と足並みを揃えるために移行準備を進めています。
以上でヤマハ発動機グループの環境グローバル統合についての発表を終了致します。ご清聴、ありがとうござ
いました。
ビューローベリタスのサービス:グローバル認証プログラム~コスト効率の改善とパフォーマンス向上を両立
■ システム認証事業本部
サステナビリティサービス~社会への責任とリスク低減
グローバル化や資源の枯渇など、企業を取り巻く社会環境は大きく移り変わっています。これらの環境変化は、
新たな事業展開への可能性に繋がるとともに、不安要素や危機的事象も多く生み出しています。このような状況
において、ビジネスの中で「サステナビリティ」という考えや取り組みの重要性が増しています。様々な事業環境
におけるサステナビリティへの取り組みの可能性と、ビューローベリタスが提供するサービスをご紹介します。
■ 変化する社会トレンド
まず、企業を取り巻くいくつかの社会トレンドを挙げてみます。
• グローバル化:人や物の国を超えた移動が容易にまた頻繁になり、人口の局地的な急増、文化の衝突、人
権問題、法律の遵守への影響などが拡大しています。
• 環境・資源問題:自然災害や地球温暖化など大きな事象ですが、企業はそれらに備える姿勢が必要です。ま
た、鉱物から水産資源まで広範囲での資源不足は、事業継続に大きな影響のある要素です。
• 技術進化:IoT、ICT、クラウド、AIなどに代表されるデジタル化、技術革新、技術の融合等は、新たな可能性
とともに、様々な不安定要素をも引き起こすと考えられます。
• 成熟社会モデル:寿命の伸びと出生率の低下により、高齢化は進んでいます。それに対応する社会構造の
構築や、減少する労働人口への対応などが今後さらに求められます。
■ 企業に求められるサステナビリティ
このように様々な社会トレンドの中で、財務面以外の側面で企業評価がなされるようになっています。EGS(環
境・社会・ガバナンス)の取り組みが、その代表的な指標の1つとされていますが、これらはすべてサステナビリテ
ィに関することです。サステナビリティは持続可能性と訳されますが、わかりやすく言うと、100年後も会社を残す
ために何をするか。会社の財務を追及する以外に、社会を支える役割をどう担うか。その対応で、社会に愛され
必要とされる会社となれるのです。
■ サステナビリティをサポートするサービスの可能性
産業や取り扱う原材料・製品の種類によって、様々な取り組み方が考えられます。いくつかの産業で、サステナ
ビリティに繋がる審査・監査サービスの例を挙げてみます。
• 食品産業
認証原材料の調達は、適切な資源管理や環境配慮、社会面への責任に繋がります。また、安全性の客観的な
提示は、信頼度の高い責任遂行です。また、企業内や取引先の要求レベルに応じ、携わる人員の労働環境や
倫理的行動の証明が、グローバル化のトレンドの中重要度が増しています。さらに、関連施設にも、サステナビ
リティの考えを取り入れた建築方法や評価システムがあります。
範囲
調達
製造管理
管理体制
施設建築
審査・監査・検査サービス
内容
JAS 認定
JAS 法に基づく有機、生産情報公表の認定
J GAP/Global GAP 認証
農場・畜産・養殖等の適切な管理の認証
MSC/ASC 認証
天然・養殖水産物の資源管理・環境配慮とトレーサビリティ
FSC®/PEFC 認証
包装材やレジ用紙、カタログ等木質・紙製品の認証
FSSC 認証
食品安全トレーサビリティ確認
遺伝子組み換え検査
農産物・加工食品中の遺伝子組み換え含有の有無
放射能測定
食品・建材・機械などの測定
SMETA 監査
労働基準、安全衛生、環境、企業倫理の監査
二者監査
供給者監査、利害関係者監査
LEED/CASBEE
環境配慮型建築物の格付け制度
耐震判定
法律に基づく耐震診断や第三者評価が求められる場合への対応
土壌調査
土壌に含まれる有害物質の調査
• 宿泊関連産業
建築物は勿論、内装や設備品に至るまで、多くのサステナビリティの選択が可能です。また、旅行者に直接応対
する人員が多い産業であるため、人の管理や企業姿勢は、宿泊施設の評価に直接影響する項目となり得ます。
また、食品調達や安全管理も重要な管理ポイントであり、それに関係する取り組みも多数考えられます。
範囲
宿泊施設
管理体制
調達
製造管理
審査・監査・検査サービス
内容
LEED/CASBEE
環境配慮型建築物の格付け制度
耐震判定
法律に基づく耐震診断や第三者評価が求められる場合への対応
Green Rating
既存建築物の環境性能評価
FSC®/PEFC 認証
木材品(構造材・内装材・家具等)、紙製品(文具・家庭紙等)の認証
SMETA 監査
労働基準、安全衛生、環境、企業倫理の監査
OHSAS
労働安全衛生マネジメント
CSR レポート監査
国際・公的基準、顧客固有・任意基準による監査
JAS 認定
JAS 法に基づく有機、生産情報公表の認定
J GAP/Global GAP 認証
農場・畜産・養殖等の適切な管理の認証
MSC/ASC 認証
天然・養殖水産物の資源管理・環境配慮とトレーサビリティ
FSSC 認証
食品安全トレーサビリティ確認
遺伝子組み換え検査
農産物・加工食品中の遺伝子組み換え含有の有無
放射能測定
食品・建材・機械などの測定
• 電気・精密機器産業
グローバルな製造拠点展開が多く見られることから、製造管理には国際的な規準が求められています。また、製
造工程に、国内外の多くの人員が関与する可能性が高く、製造管理と同様国際的な規準に基づく評価や、グロ
ーバルに存在する関連施設全体を客観的に確認する要望も増えています。
範囲
製造管理
管理体制
審査・監査・検査サービス
内容
CE マーキング
EU での製品安全の法令適合
紛争鉱物調査
コンゴ周辺産スズ・タンタル・タングステン・金の報告確認
安全性評価
性能、品質、保安管理評価
EICC
電子業界の行動規範監査
OHSAS
労働安全衛生マネジメント
二者監査
供給者監査、利害関係者監査
• 消費財産業
消費者の要求を取り入れた製品作りが求められる産業です。また、製造施設やショールーム、販売店などは、企
業の姿勢をアピールする場です。さらに、製造・販売拠点のグローバル化において、全体管理が欠かせません。
範囲
審査・監査・検査サービス
内容
RSPO 認証
食品や化粧品、化学製品に使用するパーム油の持続可能性確認
FSC®/PEFC 認証
木質由来ナノファイバー・ゴム等の原材料、包装材用紙などの認証
SMETA 監査
労働基準、安全衛生、環境、企業倫理の監査
OHSAS
労働安全衛生マネジメント
二者監査
供給者監査、利害関係者監査
LEED/CASBEE
環境配慮型建築物の格付け制度
耐震判定
法律に基づく耐震診断や第三者評価が求められる場合への対応
土壌調査
土壌に含まれる有害物質の調査
FSC®/PEFC 認証
建築構造材・内装材等の木質原材料の認証
調達
管理体制
施設建築
■ 未来を支える企業の選択
社会トレンドの変化は、今後さらに大きく速く動くことでしょう。その中で、企業は未来を支える立場として、「サス
テナビリティ」への取り組みに幅広く関与することが期待されます。ビューローベリタスは、試験・検査・認証のサ
ービスを通じ、品質、健康・安全、環境保護、社会的責任分野の課題等に取り組むあらゆる業界のお客様をサ
ポートします。
FSC® International Certification Centre in France FSC® Accredited under registration code FSC-ACC-020
Stewardship Council A.C. –
The mark of responsible forestry
参考文献:LEADERSHIP2030(Hey Group、生産性出版、2015年8月31日発行)
– ©1996 Forest
システム認証事業本部 佐久間智恵子
【お問い合わせ】
ビューローベリタスジャパン㈱ システム認証事業本部 サステナビリティ認証部
TEL:045-651-4770
お問い合わせフォーム
ビューローベリタスのサービス:サステナビリティ
■ システム認証事業本部
化学物質のリスクアセスメントが義務化されました
2016年6月1日より改正労働安全衛生法が施行され、化学物質のリスクアセスメントの実施が義務となりました。
今回の改正は、化学物質による健康被害が問題となった事案の発生やうつ病等による労災認定件数の増加が
背景にあり、労働者の安全と健康の確保をいっそう充実するため、2014年6月25日に公布された「労働安全衛
生法」における改正された6項目のうちの1つです。
本改正では、対象となる化学物質が大幅に増加すること、業種や規模を問わず、上記の対象化学物質を製造、
または取り扱う事業者を対象としていることから、これまで化学物質に関してのリスクアセスメントになじみのな
かった業種であっても、今後はリスクアセスメント実施を求められる可能性があります。そこで本稿では、事業者
としてやらねばならないことを紹介します。
1.改正の概要
本改正では、一定の危険性・有害性が確認されている640の対象化学物質を製造、または取り扱う事業者に対
して、業種や規模を問わず、危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)を実施することが義務付けられま
した。これら640の化学物質は、これまでも労働安全衛生法第57条の2及び同法施行令第18条の2に基づき、事
業者間で譲渡または提供する際には安全データシート(SDS)の公布が義務付けられていましたが、改正後は製
造、または取り扱う場合、リスクアセスメントも行わねばなりません。
そして、事業者は、リスクアセスメントの結果に基づき、労働安全衛生法及び労働安全衛生規則や特定化学物
質障害予防規則において規定が定められている場合には、当該規定に基づく措置を講じることが必要(義務)で
ある他、法令に規定がない場合でも、事業者の判断により、結果を踏まえて、労働者の危険又は健康障害を防
止するために必要な措置を講じることが求められます(努力義務)。
図 1:化学物質等に関する規制の変更の様子
(出典:厚生労働省資料)
2.リスクアセスメントの作業
改正労働安全衛生法の公布後、2015年9月18日にリスクアセスメントの指針として「化学物質等による危険性
又は有害性等の調査等に関する指針」が制定・公示されました。この指針は、事業者が、労働者の危険又は健
康障害を生ずるおそれのある化学物質等についてのリスクアセスメントを実施し、その結果に基づくリスク低減
措置が各事業場において適切かつ有効に実施されるよう、リスクアセスメントからリスク低減措置の実施までの
一連の措置の基本的な考え方と具体的な手順の例と実施する上の留意事項を定めたものとなっています。
(1) 手順
リスクアセスメントは、以下の手順で行う必要があります。
図2:リスクアセスメントの手順(出典:厚生労働省資料)
(2) リスクアセスメントの体制
リスクアセスメント及びその結果に基づく措置は、以下に示す体制で実施する必要があります。また、安全衛生
委員会の活用等を通じ、労働者を参画させなければなりません。
役職
役割
総括安全衛生管理者等、事業の実施を統括管理する者
リスクアセスメント等の実施を統括管理する。
安全管理者、衛生管理者等
リスクアセスメント等の実施を管理する。
職長その他の当該作業に従事する労働者を直接 指導
し、又は監督する者としての地位にある者
化学物質管理者
リスクアセスメント等の技術的事項を実施する。
化学物質等に係る危険性及び有害性、化学物質等に係
リスクアセスメント等への参画
る機械設備、化学設備、生産技術等に係る専門的知識
を有する者
なお、事業所に安全衛生委員会、安全委員会又は衛生委員会が設置されている場合には、これらの委員会に
おいてリスクアセスメント等に関して調査審議させたり、上記委員会が設置されていない場合には、リスクアセス
メント等の対象業務に従事する労働者の意見を聴取する場を設ける等、リスクアセスメント等の実施を決定する
段階において労働者を参画させる必要があります。また、化学物質等に関してのリスクアセスメントに関わる人
に対して必要な教育を実施する必要があります。
(3) 実施時期
労働安全衛生規則第 34 条の2の7第1項に基づき、リスクアセスメントは、事業場におけるリスクに変化が生じ、
又は生ずる恐れがある時に実施します。
• 化学物質等を原材料等として新規に採用し、又は変更するとき。
• 化学物質等を製造し、又は取り扱う業務に係る作業の方法又は手順を新規に採用し、又は変更するとき。
• 化学物質等による危険性又は有害性等について変化が生じ、又は生ずるおそれがあるとき。(具体的には、
化学物質等の譲渡又は提供を受けた後に、当該化学物質等を譲渡し、又は提供した者が当該化学物質等
に係る安全データシートの危険性又は有害性に係る情報を変更し、その内容が事業者に提供された場合等
が含まれること。
この他に、以下のような場合でも実施する必要があります。
• 化学物質等に係る労働災害が発生した場合であって、過去のリスクアセスメント等の内容に問題がある場合
• 既に製造し、又は取り扱っていた物質がリスクアセスメントの対象物質として新たに追加された場合等、当該
化学物質等を製造し、又は取り扱う業務について過去にリスクアセスメント等を実施したことがない場合
• 前回のリスクアセスメント等から一定の期間が経過し、化学物質等に係る機械設備等の経年による劣化、労
働者の入れ替わり等に伴う労働者の安全衛生に係る知識経験の変化、新たな安全衛生に係る知見の集積
等があった場合
(4) 対象作業の選定
定常・非定常に関わらず、対象の化学物質等を製造、又は取り扱う業務が対象となります。評価に当たっては、
対象の化学物質等を製造、又は取り扱う業務ごとに行う必要があります。
なお、過去に労働災害や危険な事象が発生した作業等、労働者の就業に係る危険性又は有害性による負傷又
は疾病の発生が合理的に予見可能である作業については、リスクアセスメントを実施しなければなりません。
(5) 情報の入手
リスクアセスメント等の実施に当たり、以下の資料等を入手します。
入手すべき資料の例
•
•
•
•
安全データシート(SDS 等)、作業標準、作業手順書等、機械設備等に関する情報
化学物質等に係る機械設備等のレイアウト等、作業の周辺の環境に関する情報 等
作業環境測定結果等
化学物質等による災害事例、災害統計等
(6) 危険性又は有害性の特定
化学物質等による危険性又は有害性は、作業標準等に基づき、対象の化学物質等を製造、又は取り扱う業務
ごとに、GHSで示されている危険性又は有害性の分類等に則して特定します。
(7) リスクの見積り
リスク低減の優先度を決定するため、危険性又は有害性により発生する恐れのある負傷や疾病の重篤度とそ
れらの発生の可能性の度合の両者を考慮してリスクを見積もります。
リスクの見積もりに関して、「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」に関する都道府県
労働局長向け指示文書では、
• (別紙2)リスク見積りの例
• (別紙3)化学物質等による有害性に係るリスク見積りについて
において、リスク見積もり事例が紹介されているほか、厚生労働省では、化学物質のリスクアセスメントの実施
支援ツールとして、「化学物質リスク簡易評価法」(コントロール・バンディング)を開設しています(無料)。現在、使
用している化学物質の安全データシート(SDS)を用意すれば、化学物質に詳しくない方でも、リスクアセスメント
が実施できるようになっていますので、目を通してみて下さい。
リスク低減措置の検討及び実施
リスク低減措置は以下の手順で実施します。法令で規定された事項がある場合には実施が必要です。
図 3:リスク低減策の手順
(出典:厚生労働省資料)
(8) 労働者への周知・記録
安衛則第34条の2の8に基づき、リスクアセスメント実施後、リスクアセスメント結果等の労働者への周知等を、
作業場の掲示板等での常時掲示や、文書等による配布等により、速やかに行わねばなりません。
労働者への周知内容
•
•
•
•
対象の化学物質等の名称
対象業務の内容
リスクアセスメントの結果(特定した危険性又は有害性、見積もったリスク)
実施したリスク低減措置の内容
また、リスクアセスメントの実施記録及び、アセスメントに基づく措置の実施記録に関して、上記の情報を次回調
査等を実施するまで保管する必要があります。
3.必要な対応
我々が日常的に使用する製品には、健康障害に対するリスクが広く知られている化学物質から、リスクがあまり
知られていないものまで数多くの化学物質が使用されています。本改正では、新たにリスクアセスメントが義務
づけられた化学物質が500以上増加しました。いずれも使用量や使用法によっては健康障害が発生するリスク
があると言われてきた化学物質ではありますが、リスクアセスメントの抜け漏れを防ぐために、一度ゼロベースで
確認が必要です。
また、本改正では、リスクアセスメントの対象者を、化学物質を製造または取り扱う事業者と定めています。対象
者の中には、これまでリスクアセスメントになじみのなかった事業者も多いことと思われます。これまでリスクアセ
スメントになじみのなかった企業は、対象プロセス・対象化学物質の特定にはじまる一連のリスクアセスメント手
順を理解する必要があります。
今回の改正は、事業者にとって非常に負担が大きいものとなりました。ただ、化学物質に関しての規制強化の流
れは変わらず、一層管理が厳しくなっていくものと考えられますので、今回の改正を化学物質管理に対してシス
テマチックに対応する好機として、捉えてみて下さい。
ビューローベリタスは、OHSAS18001(労働安全衛生マネジメントシステム)の認証や、労働安全衛生法及び
労働安全関連法の遵法監査サービス、内部監査員トレーニング等を通じて、事業者の化学物質取り扱いの
お取り組みをサポートします。
OHSAS18001 労働安全衛生マネジメントシステム認証
労働環境安全性向上に対する貴社の取り組みを認証します
工場・事業所向け:環境・労働安全衛生・倫理監査(HSE/SA)
セミナー・トレーニング(開催予定一覧)
参考資料(関連法規等)
化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針(平成27年9月18日付指針公示第3号)
• 指針本文
• 都道府県労働局長向け指示文書
システム認証事業本部 木下徳彦
【お問い合わせ】
ビューローベリタスジャパン㈱ システム認証事業本部 営業部
TEL:045-651-4785
お問い合わせフォーム
■ システム認証事業本部
アセアンが目指す環境・労働安全政策の域内調和
2012年よりビューローベリタスとパートナーシップを結ぶEnhesa (エンヘサ) 社が執筆する、「海外における
法規制」に関する記事を連載しています。
Enhesaは、ベルギーのブリュッセル及びアメリカのワシントンDCに本社を置くグローバルコンサルティング
会社であり、企業のEHS (環境、労働安全衛生) 及び製品の遵法を支援しています。
2015年10月には日本法人として日本エンヘサ株式会社を設立、日系企業のお客様に対して、よりきめ細か
な支援をお届けする体制を整えました。
東南アジア地域は日系企業にとって、ポスト中国の製造基地として、また市場としての重要性が増しています。
一方、市場の成熟とグローバル取引の増大に伴い、アジア各国の環境・労働者保護に対する姿勢は、近年大き
く変わってきました。たとえば、過去3年間 (2013年5月~2016年4月) に採択された環境・労働安全法令/法改
正は、アセアン主要6カ国 (インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、シンガポール、ベトナム) 全体で224件
(*1)に上ります。特にベトナムはこの間、環境・労働者保護政策を強めており、昨年のアセアン主要6カ国全体の
法改正件数の半数をベトナムが占めました。東南アジア各国は、それぞれ固有の法体系と歴史的背景を有して
おり、企業としては、国ごとに相当異なる法令に対応しなければなりません。アセアン加盟10カ国により2015年
末に発足したアセアン共同体 (ASEAN Community) と、それを構成するアセアン社会・文化共同体 (ASEAN
Socio-Cultural Community) は、域内の一定の分野の政策の調和において、1つの道筋をつけてくれるかもし
れません。
(*1)Enhesaが過去3年間に顧客企業に配信した環境・労働安全法令の改正動向に関する報告書件数に基づく。実際の法令の数ではありま
せん。
■ 環境
主要な河川が国境を越えて流れ海に注ぎ込み、汚染された大気が越境し、隣国と森林・海洋資源を共有する一
方、国による経済・社会発展度合いの差異が著しい東南アジア諸国にとって、地域全体の環境の維持は大きな
課題の1つです。アセアンでは、加盟国間の政策の枠組みを調和するために、2009年から2015年にかけて「ア
セアン社会・文化共同体ブループリント」を採択・運用していましたが、2016年3月にはアセアン社会・文化共同
体が、2025年に向けた「ブループリント2025」を発刊しました。その中で、社会の持続発展性と回復力が、2025
年に向けた5つの大きな目標の中の2つに挙げられています。持続発展性には生物多様性と天然資源の保全、
環境的に持続可能な都市設計、持続可能な気候、持続可能な消費と生産が含まれ、回復力には、自然災害か
らの回復力の強化や気候変動への適応が含まれます。
アセアン社会・文化共同体ブループリントに基づいて、持続的な発展のための具体的なアクションを協議し、加
盟国間の環境政策の調和を図るため、アセアン加盟国の環境大臣は定例会議を開催しています。2015年10月
28日には第13回会合がハノイで開かれ、議長国ベトナムの主導により、「アセアン 2015年以降の環境持続可
能性及び気候変動アジェンダ」のドラフトが進められました。このアジェンダには、2015年以降のビジョンを達成
するため、アセアンが従来より抱える、また今後顕在化する可能性のある気候変動に対する課題を整理し、それ
ら課題に対応していくというコミットメントが示されています。
2015年以降のビジョンとして、環境大臣らが「アセアン 環境協力の実行に関する戦略計画」「環境報告書第5版」
「煙霧のないアセアンに向けたロードマップ」及び「アセアン-国連 2015年以降の環境・気候変動ワークプラン」
を作成していくことで合意しました。併せて、「アセアン 統合された水資源管理のパフォーマンスモニタリング指
標に関する枠組み」を推進することも合意されました。この枠組みは、域内全体の水資源管理の目標到達度を
評価するツールとして機能することが期待されています。次のアセアン環境大臣会合は、2017年にブルネイ・ダ
ルサラーム国で開催される予定です。
■ 労働安全
アセアン域内では、近年ますます労働力が流動化しており、各国がそれぞれ、労働力の供出国であると同時に
受入国でもあります。現在では3,400万人の人々が、出身国と異なる域内国で働いていると推計されています。
元々多くのアセアン加盟国は多言語文化であり、他国からの労働者の流入もあいまって、1つの工場の中でも多
くの言語が使われ、労働安全に対する文化・姿勢、知識・スキルが異なる人々が一緒に働いているというのが現
状です。
そのような労働環境の変化を背景にして、域内の労働者保護政策の調和化が長年議論されてきました。一つの
スキームとして、ILO (国際労働機関) の支援を受け、アセアン10カ国の代表が集う「アセアン労働者の安全衛
生ネットワーク (ASEAN-OSHNET)」が運用されています。2016年4月26日・27日、アセアン加盟10カ国の代表
がベトナムに集い、第17回会合を開きました。会合では、2016年2月にシンガポールで開かれた政策対話で提
起された「2016年~2020年の行動計画」を採択し、労働安全衛生基準の改善と域内共通の労働安全衛生標準
を導入することが合意されました。行動計画の中では、労働監督の強化、労働安全衛生基準と対応力、そして
職場におけるHIV予防と管理のテーマの下に、23のプロジェクトが設定され、5年以内に導入されることが予定さ
れています。
具体的には、次のような活動が計画されています:
• 労働安全衛生監督(査察)基準のチェックリストの共通化
• 国際労働条約第187号「職業上の安全及び健康促進枠組条約」 (2006年) と調和した地域共通の労働安全
衛生基準の設立
• 労働環境におけるHIVカウンセリング及び試験に関するアセアン共通指針
アセアンでは、ILOや国連の支援も受けながら、域内全体の対応力を強化する取組みが進んでいます。シンガ
ポールは、自国の労働監督手法を他の加盟国当局者に対してレクチャーしています。また、労働安全衛生管理
上のリスクやその適切な管理がもたらす経済的な利益について、域内の調査を進めるべく、インドネシアとシン
ガポールが共同して計画をするなど、国を超えた共同作業が進んでいます。
■ 結論
これら政策の調和が実現した場合、企業にとって望ましいものでしょうか。ある意味では、そうでしょう。多国籍な
環境においてしばしばアジアは一括りにして語られがちですが、アジアに主要拠点を多く持つ日系企業の日々
の現場では、地域内に厳然として存在する言語、商慣習・文化、法体系等の相違に対応するため、多くの担当
者が苦労しながら実務をこなしているのが現状です。中国やインドといった、製造スケール・市場規模が大きく、
サプライチェーンの中で重要な位置を占める国には、環境や労働安全法令への対応にも相応の予算や人手を
割くことができるのに対し、東南アジアの国々は1カ国の規模が小さく、製造拠点も1カ国1カ所、多くても数カ所と
いったところであり、企業には、より少ないリソースで遵法を確実にすることが要求されています。政策が調和さ
れるということは、ある程度先が読みやすくなるということであり、より効率的に遵法対応が可能になることが期
待されます。一方で、目指されているのは調和であり、限定的な場合を除いては共通化ではないことに留意すべ
きです。経済力、自然環境の条件、労働力、政府及び民間の能力・キャパシティは国ごとに異なり、法令の実務
的な運用が調和されるまでには、かなりの時間と試行錯誤が予想されます。調和された政策の中で生じる国の
間の微妙な差異に、より細やかな注意を払っていくことが必要とされるようになるでしょう。
Enhesaでは、アセアン及びその加盟国における最新の法改正動向、政策動向、また提案中の法案について、
定期的にレポートを配信しています。アセアン地域の環境・労働安全法令について最新の情報を取得されたい
方は、下記までご連絡ください。
著者:宮田祐子(Enhesa シニアプロジェクトマネジャー兼シニアコンサルタント)
※本稿の著作権は著者個人に帰属します
【お問い合わせ】
日本エンヘサ株式会社
〒103-0027 東京都中央区日本橋3-4-15 八重洲通ビル4F & 5F
TEL:03-6870-3527
[email protected]
http://www.enhesa.com/
Enhesaは、ベルギーのブリュッセル及びアメリカのワシントンDCに本社を置くグローバルコンサルティング会社であり、企業のEHS (環境・
労働安全衛生)法令遵守を支援しています。2015年10月には東京八重洲に日本法人を開設し、日系企業のお客様に応対しております。ビ
ューローベリタスジャパン株式会社との緊密な連携により、EHS法規制動向のモニタリング、遵法監査ツールの提供、遵法監査代行、製品
規制調査等、日本企業の国内及びグローバル市場における事業展開・事業運営、輸出に関する法令遵守を支援しています。
■ 産業事業本部
ASME・プラント関連機器・設備の検査~工場認定取得までの流れ
ASME(*1)・プラント関連機器・設備の検査における、工場認定取得までの流れをご紹介します。
(*1)ASMEはThe American Society of Mechanical Engineers、つまり米国機械学会を意味しますが、日本ではASME BPVC(Boiler &
Pressure Vessel Code)、即ちASME規格そのものの意味で解釈されることもあります。
申請者または工場による申請書類の提出からASME工場認定およびS、U、U2、N等のコードシンボルスタンプ
取得までの流れは以下のようになります。
1.AIA(本稿ではビューローベリタスを意味します)との契約、ASMEへの申請
(1) Authorized Inspection Agency(AIA)であるビューローベリタスと検査サービス合意書を取り交わし契約締結
(2) 契約時にスタンプ取得までのスケジュールを、協議の上決定
(3) ASMEに対して、スタンプ取得希望時期などを含めた申請を実施(申請方法はビューローベリタスが別途ご案
内)
2.ASME QA(QC)マニュアルの作成
(1) ASME業務遂行のためのシステム構築
(2) ASMEスタンプ取得のための本審査であるジョイントレビューの対象として、ASME QA(QC)マニュアルの作
成・準備
(3) 取得するスタンプに必要なASMEコードブックをASMEより購入
ASME QA(QC)マニュアル作成は、初めてASMEを受検されるメーカーの皆様にとって負担が最も重いステップ
ですが、スタンプ取得後の実工事も全てこのマニュアルに従って実施していくことを念頭に、ご準備下さい。
3.デモ機作成、立会検査受検
(1) 前段階で作成したASME QA(QC)マニュアルに従い、デモ機を作成
(2) デモ機作成過程で、ビューローベリタスのASME AI(Authorized Inspector:公認検査官)が、ジョイントレビュ
ー(*2)に備えて、必要なHold Pointで立会検査を実施
(*2)ジョイントレビュー(ASMEとAIAの合同本審査)では、デモ機作成のシステム・手順・記録類がASME QA(QC)マニュアル通りに実施され
ているかが、チェック対象の1つとなります
4.プリサーベイ(事前審査)受検
ジョイントレビューに備え、ビューローベリタスのASME AI(Authorized Inspector:公認検査官)、またはASME
AIS(Authorized Inspector Supervisor)によるプリサーベイ(事前審査)を受検。
この段階で問題点を洗い出し、必要に応じて対処・修正を実施します。
5.ジョイントレビュー(ASMEとAIAの合同本審査)受検
ASMEより派遣される審査官(Supervisor)と、AIA(AI及びAIS)によるジョイントレビューを受検
• 通常2日程度を要します
• お客様組織の代表、及び設計・製造・品質保証等の各責任者の出席が必要
 ASME QA(QC)マニュアルの内容を精査
 デモ機の製作過程がマニュアル通りに実施されているかを検査
 記録類、及びデモ機・実機を確認
結果が「合格」であればジョイントレビュー終了時にASME Supervisorよりその旨が宣言され、これにより、
ASME Certificate及びASME Stampの取得が可能となります。
産業事業本部 高田賢一
【お問い合わせ】
ビューローベリタスジャパン(株) 産業事業本部
横浜 TEL:045-641-4219 FAX:045-641-7992
神戸 TEL:078-322-0232 FAX:078-322-2418
お問い合わせフォーム
ビューローベリタスのサービス:ASME・プラント関連機器・設備の検査
食品検査事業部
安定同位体比分析について
ビューローベリタス食品検査事業部は、うなぎ、わかめ等の産地判別(推定検査)や、蜂蜜、果汁等の異性化糖
(C4 植物由来)添加判別を受託していますが、これらの判別には、日本ではまだ特殊な安定同位体比分析を利
用しています。
今回は安定同位体比分析についてご紹介します。
■ 安定同位体比分析とは
生物は炭素を骨 格と し て主に水素、窒 素、酸素の 軽元素から構成さ れ、 これ ら軽元素には安 定同位体
(13C/12C、D/H、15N/14N、18O/17O/16O)が存在します。安定同位体比はその質量数の違いから様々な化学
的過程で同位体分別を起こすことにより、起源生物や生合成過程、生育環境などの情報を保存しています。つ
まり、生物の軽元素の安定同位体比は、生育環境を普遍的に反映することから、同じ DNA 配列を持つ同一の
生物であっても生育条件によって異なる値を示します。よって、DNA 分析では不可能な食品の産地判別や有機
栽培法の判別の可能性が報告されています。
■ 分析の流れ
試料を元素分析装置でガス化、クロマトカラムにより分離し、安定同位体比質量分析計で 13C/12C、15N/14N、
18O/17O、D/H 比の測定を行います。
(1) TC/EA 熱分解型元素分析装置と EA 元素分析装置
酸素及び水素は、TC/EA(写真左)にて試料を高温熱分解により酸素を CO
に、水素を H2 にガス化します。
炭素及び窒素は、EA(写真右)にて試料を大過剰の純酸素と酸化触媒で燃
焼させて CO2、NOX、水にしたあと、酸素を除去すると同時に NOX を還元
処理し、水を除去することで最終的に CO2、N2 にガス化します。さらにガス
化したものをクロマトカラムにより分離します。
(2) IR-MS(アイソトープ・レシオ・マス・スペクトロメータ) 安定同位体比質量分析計
TC/EA、EA でガス化、分離したものを IR-MS に導入します。この装置ではガス化した
ものをプラス電気に帯電させ(イオン化)、磁場に磁力線を横切るように入射させます。
イオン化した分子は進行方向に直行する力を受けるので(図 1「フレミングの左手の法
則」)行路が曲がります。行路の終端にある捕捉装置で各電気量を測定し(図 2「質量分
析計の概念」)、それを比較、分析して同位体比を求め、標準ガスの同位体比で規格化
してδ(デルタ)値として表現します。単位は千分率(‰ / パーミル)です。
図 1「フレミングの左手の法則」
図 2「質量分析計の概念」
■ ビューローベリタスがお届けするサービス
ビューローベリタスでは産地判別(推定検査)や、異性化糖(C4植物由来)添加判別産地判別以外にアルコール
原料や化成品原料の由来判別にも安定同位体比分析を用いています。
安定同位体比分析は、他にも異物検査として混入毛髪の混入国の見当にも利用が可能です。
産地判別のトライアル試験も行っていますので、お気軽にご相談下さい。
参考文献
松葉谷浩「熱水の地球化学」(裳華房/1991年)
千葉仁「安定同位体比測定用質量分析計」(九州大学中央分析センター センターニュース52 Vol.13 No.4/1996年)
鈴木彌生子「日本食品科学工学会誌 第60巻 第1号」(2013年)
食品検査事業部 関口道絵
【お問い合わせ】
ビューローベリタスジャパン(株) 食品検査事業部
横浜分析センター TEL:045-949-4664
お問い合わせフォーム