「働くことを軸とする安心社会」の実現に向けた政策~ 5つの架け橋 2015

~「働くことを軸とする安心社会」の実現に向けた政策~
5つの架け橋
2015 年 7 月
日本労働組合総連合会
「働くことを軸とする安心社会」の実現に向けた政策
Ⅰ.「働くことを軸とする安心社会」の構築
○ 戦後、日本社会は、これまで国の行政・官僚制が、業界・企業を保護し、それが家庭を支え
るという三重構造に支えられてきた。しかしながら、少子・高齢社会の急速な進展、経済のグロ
ーバル化や行き過ぎた市場経済主義、構造改革などのなかで、公的社会保障制度がゆらぎ、企
業や家庭に依存した日本型の福祉システムが限界にきている。
多くの人々が自分の将来の生活に強い不安を抱き、先行きの見えない日本社会のいたるとこ
ろで、不安と閉塞感が、また、政治や行政への不信と諦めが人々の間に広がっている。さらに、
経済的格差や地域社会の疲弊化が進み、生活基盤である地域のコミュニティー機能が大幅に低
下している。
○ 連合は、第 59 回中央委員会(2010 年 12 月 2 日)において、めざすべき社会像として「働く
ことを軸とする安心社会」を提起し、その実現に向けて取り組んでいる。
「働くことを軸とする
安心社会」は、働くことに最も重要な価値を置き、誰もが公正な労働条件のもと多様な働き方
を通じて社会に参加でき、社会的・経済的に自立することを軸とし、それを相互に支え合い、
自己実現に挑戦できるセーフティネットが組み込まれている活力あふれる参加型の社会である。
○ 問題は、このような社会をいかに実現していくかである。連合は 2011 年 6 月に新たな中期政
策として「新 21 世紀社会保障ビジョン」および「第 3 次税制改革基本大綱」を策定した。そし
て、
「2014~2015 年度 政策・制度 要求と提言」
(第 65 回中央委員会(2013 年 5 月 31 日)確認)
の策定にあたり、これらの政策を含め、
「働くことを軸とする安心社会」を支える 5 つの「安心
の橋」に対応する政策パッケージの取りまとめを行った。
その内容は、雇用を軸とした安心保障、つ
まり、雇用と社会保障をより密接に連携させ、
そのことで、就労をあきらめざるを得ない労
働者に対し、その困難を取り除き、「働くこ
と」に人々を結びつけるための総合的な政
策・制度体系である。
○ このような難しい状況だからこそ、連合が
ビジョンとして掲げる「働くことを軸とする
安心社会」の実現に向けて組織の総力を結集
した取り組みを展開していくことが必要で
あり、そのための政策をこれまで以上に明確
に打ち出して、政府・政治の果たすべき役割
を強く追求していかなければならない。
○なお、
「2016~2017 年度 政策・制度 要求と提言」(第 70 回中央委員会(2015 年 6 月 3 日)確
認)の策定に伴い、情勢変化等をふまえた修正・補強を行った。
Ⅱ.「働くことを軸とする安心社会」の実現に向けた政策パッケージのポイント
○ 「働くことを軸とする安心社会」を概ね 2020 年までに実現することを念頭に置いて、5 つの
「安心の橋」をそれぞれ架けるための政策、および「働くことを軸とする安心社会」を支える
基盤を構築するための政策を策定する。
○ 構成は、5 つの「安心の橋」
(「I.教育と働くことをつなぐ」
、
「Ⅱ.家族と働くことをつなぐ」、
「Ⅲ.働くかたちを変える」
、
「Ⅳ.失業から就労へつなぐ」
、
「Ⅴ.生涯現役社会をつくる」
)と
「支える基盤」に対応する政策パッケージの全体像を示すとともに、これら 6 つの柱に対応す
る政策内容を具体的に記載する。
Ⅲ.政策パッケージの実現に向けて
○ 連合は、政策パッケージの実現に向けて、より具体化した政策を「要求と提言」等に組み込
み、政府・政党への働きかけなどを通じてその実現を目指す。
○ 連合本部・構成組織・地方連合会が一体となった運動を展開するとともに、NPO、国際労
働運動組織など多くの団体や個人とネットワーク型の連携をつくり上げ、その中心になり社会
運動を推進する。
1
「働くことを軸とする安心社会」の実現に向けた政策項目
【橋Ⅰ(教育と働くことをつなぐ)】
すべての子どもたちが、学ぶ機会を保障されるとともに、働くことの知識や技術を身につけ、
学ぶ場から働く場へ円滑に移行できる制度を確立する。また、労働者が学び直せるよう、働く場
と学ぶ場を自由に行き来できる環境を整備する。
1.生活困窮世帯の「貧困の連鎖」を防ぐため、すべての子どもたちに学ぶ機会を保障する。
2.障がいのある子どもや異なる文化・言語を背景とした子どもなどが排除されない、インク
ルーシブ教育のシステムを構築する
3.働くことの意義・知識を学ぶ機会を拡充する。
4.生きるための知識・働くことの技術を身につけるための教育を充実させる。
5.学ぶ場から働く場へ円滑に移行できるよう、学ぶ場と働く場をつなぐ環境を整備する。
6.労働者が学び直しのできるよう、働く場と学ぶ場をつなぐ環境を整備する。
【橋Ⅱ(家族と働くことをつなぐ)】
すべての人が公平・公正なワークルールのもとで働き、妊娠、出産、子育てや介護などを社会
全体で支えることによって仕事と生活の調和を図り、職場、家庭、地域において男女が共に責任
と権限を担う男女平等参画社会を構築する。
1.男女平等参画社会を実現するため、すべての人が働き続けることができる公平・公正なワ
ークルールを定めた「男女雇用平等法」を制定する。
2.男女が共に仕事と生活の調和が可能な社会を実現するため、これまでの働き方・働かせ方
を見直すとともに、男性の家庭生活や地域への参画を促進し、安心・安全な地域づくりを
推進する。
3.妊娠、出産、子育て、介護や傷病により失う所得の保障と切れ目のないサービスを社会全
体で支え、その分野で働く労働者の人材確保とディーセント・ワークを確立する。
4.すべての人が健康で豊かな生活を営むことを可能とするため、税制や福祉・社会保障など
についてこれまでの片働きモデルを見直し、性やライフスタイルに中立的な制度に改革す
るとともに、生活の基盤である居住保障と医療保障を確立する。
【橋Ⅲ(働くかたちを変える)】
働く側が選択でき満足できる柔軟でディーセントな働き方の多様化をはかるとともに、労働時
間短縮、ワークルールの整備を進め、働き続けられる職場環境を実現する。
1.
「雇用基本法」(仮称)を制定し、雇用創出と一体となった産業政策を推進することにより、
良質な雇用の創出・維持と完全雇用を実現する。
2.働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)の実現、雇用の質の向上を実現
する。
3.
「期間の定めのない直接雇用」であることを基本として、均等処遇原則のもとで、働く側が
選択できる働き方の多様化を実現する。
4.コンプライアンスの徹底、ワークルールの整備、法違反等への厳格な対応体制をはかり、
働き続けられる職場環境を実現する。
5.雇用の分野における性差別の禁止、賃金格差の是正、男女の平等を実現する。
6.雇用・就業形態の多様化や企業組織の変化に対応した集団的労使関係システムを構築する。
2
【橋Ⅳ(失業から就労へつなぐ)】
生活における様々な局面や健康上の理由、経済環境の変化などの理由で離職を余儀なくされた
人が雇用労働に円滑に復帰・移行できるよう、能力をできるだけ発揮できる就労機会が得られる
ための職業紹介(マッチング)と能力評価、職業訓練、所得保障が一体となった支援体制を強化
する。
1.職業訓練と公正な能力評価、雇用のマッチング機能(職業紹介)を総合的・一体的に行う
パッケージ戦略を構築し、復職・就労を強力に支援する。
2.すべての労働者に雇用保険と健康保険を適用する(第1のセーフティネット)。
3.雇用保険の給付対象とならない離職者や就業経験の少ない人への支援制度を拡充する(第
2のセーフティネット)
。
4.社会保障の「最後の砦」としての生活保障制度を確立する(第3のセーフティネット)。
5.生きていくために欠かせない住居と医療を確実に保障する(第4のセーフティネット)。
【橋Ⅴ(生涯現役社会をつくる)】
高年齢者が長年培ってきた知識や経験、能力を発揮し、次世代に円滑に継承するため、様々な
働き方の機会を確保すると同時に、老後を不安なく暮らせる所得を、賃金等の収入や貯蓄と年金
によって安定的に確保できる制度を確立する。
1.だれもが希望すれば、生涯にわたって働き続けることのできる社会を構築する。
2.高年齢者が社会で生きがいをもって能動的な役割を果たせるよう、社会的貢献や文化活動
など、
「働くこと」の幅広い選択肢とアクセスを保障する。
3.だれもが老後を安心して暮らせるよう、信頼の所得保障制度を整備・普及する。
4.だれもが老後を住み慣れた地域社会で安心して暮らせるよう、医療・介護へのアクセスを
保障する。
【「働くことを軸とする安心社会」を支える基盤】
5 つの橋に必要な施策を責任を持って遂行できるように、働きたい、社会に参加したいという
人々のニーズを適切に反映できる信頼のおける政府を確立する。政府は、NPO、協同組合、社
会的企業など「新しい公共」の担い手と密接に協働し、良質な公共サービスの効率的かつ適正な
提供を図るとともに、グリーン、ライフなど新たな内需型産業の拡大を通じ、雇用確保や創出を
推進し、持続可能な社会を支える。
1.国と地方の役割分担のもと、働くことを有効に支援し、
「働くことを軸とする安心社会」を
積極的に支え、先を見通せる公正・公平な信頼のおける政府をつくる。
2.雇用拡大や、産業を育成するための施策を展開するために、公平な負担による分かちあい
の社会を実現する。
3.企業がコンプライアンスの確立、社会的公正や倫理、地域社会への貢献、環境への配慮な
ど、持続可能な社会の実現に向け、社会的責任を果たせるようCSRを推進する。
4.低炭素社会への転換と自然環境の保全を推進するとともに、グリーン、ライフなど新たな
内需型産業の拡大を通じ、雇用確保や創出を推進し、持続可能な社会を実現する。
3
【橋Ⅰ(教育と働くことをつなぐ)】
○政策
1.生活困窮世帯の「貧困の連鎖」を防ぐため、すべての子どもたちに学ぶ機会を保障する。
2.障がいのある子どもや異なる文化・言語を背景とした子どもなどが排除されない、インク
ルーシブ教育のシステムを構築する
3.働くことの意義・知識を学ぶ機会を拡充する。
4.生きるための知識・働くことの技術を身につけるための教育を充実させる。
5.学ぶ場から働く場へ円滑に移行できるよう、学ぶ場と働く場をつなぐ環境を整備する。
6.労働者が学び直しのできるよう、働く場と学ぶ場をつなぐ環境を整備する。
○政策の具体的内容
すべての子どもたちが、学ぶ機会を保障されるとともに、働くことの知識や技術を身につけ、
学ぶ場から働く場へ円滑に移行できる制度を確立する。また、労働者が学び直せるよう、働く場
と学ぶ場を自由に行き来できる環境を整備する。
1.生活困窮世帯の「貧困の連鎖」を防ぐため、すべての子どもたちに学ぶ機会を保障する。
(1)小学校就学前の子どもが育つ環境が、保護者の就労や経済状況などによって異なることの
ない保育・教育環境を確保する。
(2)幼保一体化を進めるとともに、就学前教育の完全無償化を推進し、社会で支える保育・教
育環境を確保する。
(3)自治体による就学援助金制度の維持・拡充や、準要保護者への援助基準の明確化とともに、
給付型奨学金を拡充することにより公的奨学金制度を充実させる。
(4)高等学校授業料の無償化や定時制・通信制の教科書等給与費の拡充を推進する。
(5)総合相談支援体制において教育関係機関が連携し、経済的支援を含めた必要な支援、中退
者に対するフォローアップ、児童養護施設の子どもの学習環境の確保などを行う。
2.障がいのある子どもや異なる文化・言語を背景とした子どもなどが排除されない、インクル
ーシブ教育のシステムを構築する。
(1)障がいのある子どものための施策は、子ども・子育て施策に組み込み、特別な支援が必要
な事項についてのみ、障がい者施策として実施する。
(2)児童福祉施設は障がいのある子どもを受け入れ、地域に開かれた日常生活の場にふさわし
い施設として整備する。
(3)障がいのある子どもの特性・ニーズに応じた教育や支援のための教職員を確保する。
(4)外国人の子どもの就学に関する情報を母国語で伝えるとともに、日本語教育および母国語
教育の支援、外国人学校への運営補助を行う。
(5)義務教育期間に不登校や戦争など、何らかの理由で学習できなかった子どもや高齢者、外
国人の子どもが通う、中学校夜間学級の設置を促進する。
3.働くことの意義・知識を学ぶ機会を拡充する。
(1)すべての子どもたちが、学校教育において社会保障や税、労働法など働くことに関する知
識を学ぶとともに、職場体験などにより働くことを学ぶ機会を拡充する。
(2)ワークルールやワーク・ライフ・バランスなど、働くことの意義・知識を学ぶために、学
習指導要領への記載を充実し、すべての教育段階におけるカリキュラムに位置づける。
(3)労働者の権利と使用者の義務に関する理解を促進するため、労働者や経営者に対しても労
働(法)教育を行う。
(4)国、地方自治体、学校、労使団体などが連携し、労働法などの働く者の権利と義務、税や
社会保険の仕組みに関する基本的な知識、相談窓口などを若者が学ぶ機会を確保する。
4.生きるための知識・働くことの技術を身につけるための教育を充実させる。
(1)持続可能な社会の基礎となる環境教育、ものづくりの基礎となる科学技術・理数教育、情
報化社会への対応のためのICT教育、高齢者が蓄積してきた経験や知識の伝承、グローバ
ル社会への対応のための外国語教育などを充実させる。
4
(2)医療・介護、子育て、環境、情報通信、農林水産業など、成長分野に関する教育を推進す
る。
(3)農林水産業、工業、商業など、職業現場の技術に関する教育を行う 5 年制の高等専門学校
や各種専門学校の社会的評価を高めるとともに、教育環境を充実させる。
(4)大学・大学院は、国際的な質保証を意識した、質の高い高等教育を実践する教育プログラ
ムを充実させる。
5.学ぶ場から働く場へ円滑に移行できるよう、学ぶ場と働く場をつなぐための環境を整備する。
(1)国、地方自治体、学校、企業、職業紹介業者、求人情報提供事業などの就職支援関係者、
地域若者サポートステーションや労使団体などの関係者が連携し、すべての子どもたちが学
ぶ場から働く場へ円滑に移行し、良質な就労機会を得られるよう環境整備を行う。
(2)責任ある社会人として自立するために必要な、
「生きる力」と社会性を育むための基礎的な
教育を推進する。
(3)高等学校におけるジョブサポーターの配置を促進し、進路指導の体制強化を行う。
(4)トライアル雇用やインターンシップを活用し、企業と労働者相互の理解を深め、期間の定
めのない直接雇用への移行や雇用のきっかけ作りを支援する。
(5)高等学校にスクールソーシャルワーカーを常勤配置し、就労に結びつかない子どもたちに
適切な支援を行う。
(6)学校を通じた支援策が届かない中途退学者やニートなどの若年無業者に対して、国、地方
自治体、学校、ハローワーク、地域若者サポートステーションなどは連携し、就労支援およ
び職業訓練機関に関する具体的な情報提供、就労支援体制の整備・強化をはかる。また、中
卒者、高校・大学中退者、離職者、不登校の子どもの居場所を確保する。
(7)企業は、若者が求める適職選択に必要な職場情報の提供を積極的に行い、国、地方自治体、
学校、ハローワーク、職業紹介事業者などはその促進を行う。
6.労働者が学び直しのできるよう、働く場と学ぶ場をつなぐための環境を整備する。
(1)大学などの高等教育機関で学ぶ社会人や、それを支援する企業に対する公的助成制度を充
実させるとともに、
「有給教育休暇」の制度化や時間外労働を制限することにより、社会人が
学校で学び直しができるリカレント教育や生涯学習を推進する。大学での社会人特別選抜枠
の拡大などの編入制度の弾力化、高等専門学校や夜間大学院の拡充、科目等履修制度・研究
生制度の活用、通信教育・放送大学の拡充を進め、社会人の受け入れを促進する。
(2)自己啓発への公的な助成制度として創設された専門実践教育訓練制度について、幅広い労
働者層を対象とする講座を全国的に指定し、すべての対象者に対する中長期的なキャリア形
成に資するための訓練機会を提供する。
5
【橋Ⅱ(家族と働くことをつなぐ)】
○政策
1.男女平等参画社会を実現するため、すべての人が働き続けることができる公平・公正なワ
ークルールを定めた「男女雇用平等法」を制定する。
2.男女が共に仕事と生活の調和が可能な社会を実現するため、これまでの働き方・働かせ方
を見直すとともに、男性の家庭生活や地域への参画を促進し、安心・安全な地域づくりを
推進する。
3.妊娠、出産、子育て、介護や傷病により失う所得の保障と切れ目のないサービスを社会全
体で支え、その分野で働く労働者の人材確保とディーセント・ワークを確立する。
4.すべての人が健康で豊かな生活を営むことを可能とするため、税制や福祉・社会保障など
についてこれまでの片働きモデルを見直し、性やライフスタイルに中立的な制度に改革す
るとともに、生活の基盤である居住保障と医療保障を確立する。
○政策の具体的内容
すべての人が公平・公正なワークルールのもとで働き、妊娠、出産、子育てや介護などを社会
全体で支えることによって仕事と生活の調和を図り、職場、家庭、地域において男女が共に責任
と権限を担う男女平等参画社会を構築する。
1.男女平等参画社会を実現するため、すべての人が働き続けることができる公平・公正なワー
クルールを定めた「男女雇用平等法」を制定する。
(1)真に男女間における公平・公正なワークルールの整備・確立するため、男女雇用機会均等
法に男女間における賃金差別の禁止や間接差別の要件の拡大、ポジティブ・アクションの策
定・実施・公表の義務づけ、セクシュアル・ハラスメント等防止対策の拡充、新たな差別救
済制度などを加えた「男女雇用平等法」を制定する。
(2)結婚、妊娠、出産、育児や介護を行いながら、雇用形態に関わりなく男女がともに働き続
けることができる環境の整備に向け、関連する法改正や施策を強化・拡充する。特に、出産
を機に離職することが多い女性の就労継続のための支援策について取り組みを強化・推進す
る。
2.男女が共に仕事と生活の調和が可能な社会を実現するため、これまでの働き方・働かせ方を
見直すとともに、男性の家庭生活や地域への参画を促進し、安心・安全な地域づくりを推進
する。
(1)「ワーク・ライフ・バランス憲章」(2010 年に政労使が合意・署名)において、「誰もがや
りがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て・介護の時間や、
家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるよう、今こ
そ、社会全体で仕事と生活の双方の調和の実現を希求する」とした趣旨の社会性を改めて確
認し、その周知と徹底を図る。
(2)政労使は、ワーク・ライフ・バランス憲章で定めた「就労による経済的自立が可能な社会、
健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会、多様な働き方、生き方が選択できる社会」
を構築するため、地方自治体やNPOを含めた多様なステークホルダーによる社会対話と取
り組みを通じ、
「仕事と生活の調和推進のための行動指針」における数値目標達成のための具
体的取り組みを推進する。
(3)仕事と生活の調和への取り組みと実績の「見える化」を図り、公共機関においては公共調
達における評価要件とし、また、企業・団体においては投資家を始めとしたステークホルダ
ーが評価できる仕組みを構築するなど、公共機関や企業・団体の率先した取り組みを推進す
る。
(4)男女が共に家庭や地域を支え合う安心・安全な社会を構築するため、男性の働き方・働か
せ方や固定的性別役割分担意識の改革を推進し、家事・育児、地域活動のほとんどを女性が
担っている現状の改善を図る。併せて、地方自治体・学校・企業をはじめとした地域全体が
協力・支援し、男性が地域づくりに参加できる仕組みを構築する。
(5)
「年間総実労働時間」の削減を図るため、就業時間に関する規制の強化や不払い残業撲滅の
徹底、時間外割増率の引き上げなどを多角的に導入・強化し、欧州諸国並みの労働時間を実
6
現する。特に、長時間労働が課題とされている業種の労働者に対しては重点的な改善策を講
じ、すべての労働者のディーセント・ワークを実現する。また、年次有給休暇についても休
暇取得に向けた取り組みを政労使それぞれが強化し、年次有給休暇の完全取得を実現する。
3.妊娠、出産、子育て、介護や傷病により失う所得の保障と切れ目のないサービスを社会全体
で支え、その分野で働く労働者の人材確保とディーセント・ワークを確立する。
(1)分散化している子育てに関する政策を統合するため「子育て基金(仮称)」構想を実現し、
幼保一体化による質・量の拡充や学童保育の充実など、妊婦から乳幼児期、学童期を経て成
人に至るまでの子ども子育てを社会全体で支える仕組みを構築する。また、その政策決定に
当たっては子ども・子育てにかかわるステークホルダーが参加する「子ども・子育て会議」
を中央およびすべての地方自治体に設置し、関与・評価・監督を行う。
(2)妊娠、出産、子育て、介護を行う際や傷病により失う所得を保障する制度を拡充する。ま
た、妊娠・出産費用の健康保険適用、利用者負担の引き下げなどにより、妊娠・出産時の経
済的負担を軽減し、妊婦検診を始め、乳幼児医療や学童期、思春期支援など、バランスのと
れた現金給付と現物給付を実施し、成人に至るまでのニーズに応じた切れ目のないサービ
ス・支援を実現する。
(3)医療・介護・福祉などの分野において増大するニーズへのサービス確保と質の向上を実現
する。そのために必要なこの分野で働く人の賃金・労働条件、労働環境を改善するとともに、
専門性やキャリアアップ向上の仕組みを構築し、安定的に人材を確保する。
(4)介護を理由とした離職者の増加に対応するため、介護休業制度の拡充や再雇用特別措置の
義務化など、介護に関する法制度を強化・拡充する。
(5)介護にかかる支援を日常生活圏域で提供する地域包括ケアシステムを確立するとともに医
療・介護・福祉・保健の連携を強化し、高齢者等へ切れ目ないサービス・支援体制を構築す
る。また、介護保険制度の給付対象は全年齢とし、被保険者範囲を医療保険加入者に拡大す
ることにより、介護保険制度を普遍化する。
(6)ひとり親世帯の貧困を是正するため、雇用・就労支援政策や子育て支援政策などを包括的
に強化する。
(7)治療と職業生活の両立支援体制を確立し、病気を抱えながらも働く意思のある労働者が適
切な治療を受けながら就労継続が可能となる制度を確立する。
4.すべての人が健康で豊かな生活を営むことを可能とするため、税制や福祉・社会保障などに
ついてこれまでの片働きモデルを見直し、性やライフスタイルに中立的な制度に改革すると
ともに、生活の基盤である居住保障と医療保障を確立する。
(1)全国民が広く負担をする消費税を、将来にむけての社会保障の安定財源として法的に位置
づけ、充当する社会保障の範囲を明確にする。その際は、消費税のもつ逆進性を緩和するた
め、給付つき税額控除を活用し税金を還付する仕組みを導入する。
(2)所得税・住民税における人的控除を所得控除から税額控除に転換するとともに、配偶者控
除は扶養控除に整理統合する。
(3)雇用労働者の社会保険適用拡大をさらに推進する。社会保険料負担を回避するため、労働
時間を引き下げて社会保険適用から外すことがないよう、事業所に対する指導・監督を徹底
する。
(4)少子高齢社会に対応した医療をすべての人に保障するための財源は、社会保険による相互
扶助を基本としつつ、公費を拡充する。
(5)高齢期を重点化し整備されてきたこれまでの社会保障体系を、人生前半期・子どもや若者
の育成・支援、現役世代への就労支援を重視した全世代型の社会保障体系に改革する。
(6)すべての人が生活の拠点である住居を確保し安心して生活できるよう、失業者や低所得者、
高齢者、障がい者などに対する現金給付や現物給付による「住宅支援制度」を確立する。
(7)誰もがどこに住んでいても健康で安心できる生活を支えるため、地域の実情に応じた医療
人材の適正配置を計画的に進め、初期医療を担う「家庭医(仮称)
」から高次医療に至る医療
機関の連携、および医療と介護の連携を強化し、切れ目のない地域医療提供体制を確立する
とともに、安定的で保険者機能を十分に発揮できる国民皆保険体制を確立する。
7
【橋Ⅲ(働くかたちを変える)
】
○政策
1.
「雇用基本法」(仮称)を制定し、雇用創出と一体となった産業政策を推進することにより、
良質な雇用の創出・維持と完全雇用を実現する。
2.働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)の実現、雇用の質の向上を実現
する。
3.
「期間の定めのない直接雇用」であることを基本として、均等処遇原則のもとで、働く側が
選択できる働き方の多様化を実現する。
4.コンプライアンスの徹底、ワークルールの整備、法違反等への厳格な対応体制をはかり、
働き続けられる職場環境を実現する。
5.雇用の分野における性差別の禁止、賃金格差の是正、男女の平等を実現する。
6.雇用・就業形態の多様化や企業組織の変化に対応した集団的労使関係システムを構築する。
○政策の具体的内容
働く側が選択でき満足できる、柔軟でディーセントな働き方を実現するとともに、労働時間短
縮やワークルールの整備等を進め、働き続けられる職場環境を実現する。
1.
「雇用基本法」(仮称)を制定し、雇用創出と一体となった産業政策を推進することにより、良
質な雇用の創出・維持と完全雇用を実現する。
(1) 雇用の原則は「期間の定めのない直接雇用」であることを基本として、人や社会の成長を
促す雇用・労働環境の整備、公平・公正なワークルールの整備、社会保障システムの再構
築、職場における諸課題の解決システムの強化をはかる観点から「雇用基本法」(仮称)を
制定する。
(2) 潜在的需要の高い医療、介護、子育て、環境・エネルギー、観光、農業の6次産業化など
の分野に予算・税制措置、規制の見直しなどの施策を集中、産業政策と雇用創出を一体的
に推進し、良質な雇用の拡大をはかる。
(3) 我が国の成長力や競争力を維持・強化しながら国を発展させていくための産業・雇用分野
の在り方、そこで必要な人材像とその人材育成策を確立し、中・長期的視点から国として
の人材育成戦略・施策を構築する。労働者が主体的に職業生活を充実・発展させていくこ
とを基礎づける権利としての「キャリア権」を確立する。
(4) 働く意欲を持つすべての者に対する職業能力開発機会を拡充する。とりわけ、非正規雇用
者のキャリアアップ施策や人材育成施策を強化し、非正規雇用から正規雇用への転換を促
進する。
2.働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)の実現、雇用の質の向上を実現す
る。
(1)有期契約労働者の無期転換を促進するとともに、雇用形態にかかわらない均等処遇を実現す
る。
(2)労働者保護の視点から、労働者派遣法の改正(登録型派遣や製造業務派遣の禁止、派遣先責
任の強化、均等処遇原則の導入、派遣先の団体交渉応諾義務の法定化等)を行う。
(3)すべての雇用労働者への社会保険・労働保険の完全適用を実現する。
(4)多重就労の場合でも労働者保護が確保されるよう、マイナンバーの活用を視野に入れ、a)
雇用保険・社会保険の適用、b)労働安全衛生上の取り扱い、c)労働時間管理のあり方などに
ついて横断的に検討し、実現する。
(5)すべての労働者が生活できる賃金を得られる水準にまで法定最低賃金を引き上げるよう、賃
金の絶対値にこだわる審議を行うなど審議会対応等を強化する。
3.
「期間の定めのない直接雇用」であることを基本として、均等処遇原則のもとで、働く側が選
択できる働き方の多様化を実現する。
(1)出産、子育て、介護、自己啓発などのライフステージに応じて選択できる多様な働き方を整
備する。
(2)柔軟でディーセントな働き方を実現するとともに、多様な働き方間の移動可能性を確保する。
8
また、その基盤として、雇用形態にかかわらない均等処遇原則を法制化する。
4.コンプライアンスの徹底、ワークルールの整備、法違反等への厳格な対応体制をはかり、働
き続けられる職場環境を実現する。
(1)ILO第 158 号条約(使用者の発意による雇用終了に関する条約)の批准や労働契約法が対
象とする労働者の範囲拡大等、労働契約法の内容の強化・充実をはかる
(2)雇用形態や年齢、性別、障害などによる不当な差別を禁ずる法律を制定する。
(3) 過労死問題やいわゆる「ブラック企業」問題等に適切に対処するため、国に対しては労働
基準監督官の増員、また地方自治体に対しては地方労政事務所の機能強化などを行い、労働
行政を充実・強化する。
(4)事業譲渡、会社分割など、あらゆる事業再編において、労働契約の継承、労働組合との事前
協議等、労働者保護をはかるための法制化を行う。
(5)労働時間短縮や年次有給休暇の完全取得など、労働者の健康・安全およびワーク・ライフ・
バランスの確保に向けた措置を講じる。
・時間外労働等の法定割増率について、時間外労働 50%、休日労働 100%、深夜労働 50%を
実現する。
・
「時間外労働限度基準告示」を法律へと格上げするとともに、特別条項付き 36 協定を適用
する場合における上限時間規制を法定化する。また、現在その適用が除外されている事業
または業務についても同法の条文に規定する。
・すべての労働者を対象に「休息時間(勤務間インターバル)規制」を導入する。
・年次有給休暇の取得促進につながる具体的施策を展開し年次有給休暇の完全取得を実現す
る。
(6)すべての労働者を対象とする実効性の高い過労死等防止対策を講ずる。
(7)労働災害の予防と再発防止策を強化するとともに、労災適用対象疾病の拡大や認定基準の見
直し、労災認定申請における使用者の役割責任の強化、多重就労者の合算した収入に対する
補償額決定など、労災補償を拡充する。
5.雇用の分野における性差別の禁止、賃金格差の是正、男女の平等の実現する。
(1)「男女雇用平等法」を制定し、男女間における公平・公正なワークルールを実現する。
(2)雇用形態に関わりなく男女が共に働き続けることができる環境を整備する。
6.雇用・就業形態の多様化や企業組織の変化に対応した集団的労使関係システムを構築する。
(1)過半数代表制の抜本的な見直し・改善と労働者代表制の法制化をはかる。
(2)純粋持株会社やグループ企業、派遣先企業、投資ファンドなどにおける使用者概念を明確化
する。
(3)労働組合法における労働協約の拡張適用要件を緩和する。
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【橋Ⅳ(失業から就労へつなぐ)】
○政策
1.職業訓練と公正な能力評価、雇用のマッチング機能(職業紹介)を総合的・一体的に行う
パッケージ戦略を構築し、復職・就労を強力に支援する。
2.すべての労働者に雇用保険と健康保険を適用する(第1のセーフティネット)。
3.雇用保険の給付対象とならない離職者や就業経験の少ない人への支援制度を拡充する(第
2のセーフティネット)
。
4.社会保障の「最後の砦」としての生活保障制度を確立する(第3のセーフティネット)。
5.生きていくために欠かせない住居と医療を確実に保障する(第4のセーフティネット)。
○政策の具体的内容
生活における様々な局面や健康上の理由、経済環境の変化などの理由で離職を余儀なくされた
人が雇用労働に円滑に復帰・移行できるよう、能力をできるだけ発揮できる就労機会が得られる
ための職業紹介(マッチング)と能力評価、職業訓練、所得保障が一体となった支援体制を強化
する。
1.職業訓練と公正な能力評価、雇用のマッチング機能(職業紹介)を総合的・一体的に行うパ
ッケージ戦略を構築し、復職・就労を強力に支援する。
【職業訓練】
(1)公的な職業訓練は雇用のセーフティネットであることを認識し、国として職業能力開発体
制の充実、強化をはかる。
(2)職業訓練(公共職業訓練、求職者支援法に基づく認定職業訓練、障がい者を対象とする職
業訓練など)の内容は、産業構造の変化や技術革新などを踏まえたものとし、特にライフ、
グリーンなど今後の成長基軸となる産業に関する訓練内容を充実する。
(3)若年者などの雇用保険未加入者や出産・育児・介護などにより職業キャリアを中断してい
る者に対する職業能力開発支援を拡充する。
(4)利用者本位の観点から、訓練内容の柔軟かつ機動的な見直しができるよう、労使の意見を
定期的に反映する場を地域ごとに設定する。
【能力評価】
(5)業種・職種・職務ごとに必要な技能スキルに関する企業横断的な職業能力評価システムを
整備した上で、新ジョブ・カードにより能力評価を行う。特に、労働者や企業のニーズを踏
まえ、制度の整備が遅れているサービス分野において早急に評価制度を整備し、併せて職業
能力の向上と処遇の改善をすすめる。
【職業紹介】
(6)地方自治体・地域の教育訓練機関・公共職業安定所(ハローワーク)が一体となって職業
紹介と職業訓練に取り組み、離職者が早期に労働市場に戻ることを可能とする。
(7)職業紹介の核を担うハローワークは、国の指揮監督と責任により、全国ネットワークで一
体的に運営し、無料職業紹介、雇用対策(企業指導)、雇用保険(失業認定と失業給付)を行
う。また、職業能力開発行政が職業安定行政と連携を強化し、ハローワークを拠点に全国ユ
ニバーサルサービスとして円滑な展開をしていくための実施体制を確立する。
2.すべての労働者に雇用保険と健康保険を適用する(第1のセーフティネット)。
(1)雇用保険制度における、全ての労働者の就業と生活を守る第1のセーフティネットである
制度意義を踏まえ、雇用保険の給付については、安心して求職活動などに専念できる水準を
確保するとともに、適用対象の拡大や受給資格要件の拡大などを行い、その対象を真に全て
の労働者とする。
(2)雇用保険の国庫負担は早期に本則 4 分の 1 に戻した上で更なる公費投入を行うなど健全な
制度運営を行い、失業者の生活を十分に支えうる安心できる財政基盤を将来にわたって確保
する。
(3)健康保険制度は、雇用労働者が治療中に失業した場合、傷病手当金が確実に得られるよう、
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パート・派遣労働者や中小・個人事業所等すべての雇用労働者に社会保険を適用する。
3.雇用保険の給付対象とならない離職者や就業経験の少ない人への支援制度を拡充する(第2
のセーフティネット)
。
(1)求職者支援制度は、すべての訓練受講者が訓練受講後に雇用の原則である「期間の定めの
ない雇用」に就くことができるよう、機能強化により実効性を高めるとともに、全額一般財
源による安定的な財政運営を行う。
(2)さまざまな心身の状況の人の生活から就労まで連続した全国的な生活困窮者支援制度を確
立し、チームによる相談支援態勢の構築、就労に至る多様な「訓練」機会の確保、就労支援
体制の強化などを行う。そのための費用は税財源により確保する。
4.社会保障の「最後の砦」としての生活保障制度を確立する(第3のセーフティネット)。
(1)貧困者が確実に所得などの保障が受けられる「最後の砦」として、現行の生活保護制度に
代わる生活保障制度を確立する。新たな生活保障制度では、判定における裁量を小さくする
ほか、勤労控除の拡大や就労収入の積立を認めるなど就労インセンティブを高める。
(2)生活困窮者支援制度など新たな業務への対応のため、ケースワーカーなどの職員を増員す
るとともに、その専門性を高める。同時に、不正受給防止の体制整備を充実させる。また、
扶養照会の範囲を限定的にして、扶養義務を強要する運用を改善する。
5.生きていくために欠かせない住居と医療を確実に保障する(第4のセーフティネット)。
(1)低所得者が住まいを確保できるよう、住宅の現物給付と家賃補助による「住宅支援制度」
を構築する。
(2)
「国民皆保険」による医療・介護サービスを保障するため、低所得者の保険料・自己負担に
関する「医療・介護費補助制度」を構築する。
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【橋Ⅴ(生涯現役社会をつくる)】
○政策
1.だれもが希望すれば、生涯にわたって働き続けることのできる社会を構築する。
2.高年齢者が社会で生きがいをもって能動的な役割を果たせるよう、社会的貢献や文化活動
など、
「働くこと」の幅広い選択肢とアクセスを保障する。
3.だれもが老後を安心して暮らせるよう、信頼の所得保障制度を整備・普及する。
4.だれもが老後を住み慣れた地域社会で安心して暮らせるよう、医療・介護へのアクセスを
保障する。
○政策の具体的内容
高年齢者が長年培ってきた知識や経験、能力を発揮し、次世代に円滑に継承するため、様々な
働き方の機会を確保すると同時に、老後を不安なく暮らせる所得を、賃金等の収入や貯蓄と年金
によって安定的に確保できる制度を確立する。
1.だれもが希望すれば、生涯にわたって働き続けることのできる社会を構築する。
(1)年齢に関わらず、だれもが希望すれば働き続けることのできるよう、労働市場を整備する。
(2)高年齢者が自己の能力を最大限に発揮して安心して働くことができるよう、環境整備や、
心身両面の総合的な健康管理を推進する。
(3)2025 年度から年金の支給開始年齢が 65 歳となることを見据え、将来的な法定定年年齢の
65 歳への引き上げも視野に、雇用と年金の確実な接続をはかる。なお、事業主が高年齢者雇
用安定法に定める雇用確保措置を取らなかった場合における私法上の効果(民事効)を規定
するなど、現行政策の実効性を高める施策を講じる。
(4)高年齢者雇用安定法が適用されない有期契約労働者などの非正規労働者についても、雇用
と年金の接続が確実になされるよう、年金支給開始年齢までの雇用が確保される環境を整備
する。
2.高年齢者が社会で生きがいをもって能動的な役割を果たせるよう、社会的貢献や文化活動な
ど、
「働くこと」の幅広い選択肢とアクセスを保障する。
(1)高年齢者が蓄積してきた経験や知識、人間関係を存分に発揮できる場を幅広く用意するた
め、退職者が教育・福祉・子育て支援など豊かな人生経験が必要とされる分野や、労働法制
や企業会計など専門知識が求められる分野で活躍できる機会を提供する団体等を支援する
(税制面での支援や研修費の補助等)。
(2)国は「新しい公共」を創造・推進する。その担い手である地域の労働運動は、行政や自治
会、ボランティア団体、NPO、協同組合等の労働者自主福祉団体といった多様な組織と退
職者とをつなぐコーディネーター的役割を担い、その中でイニシアチブを発揮する。
3.だれもが老後を安心して暮らせるよう、信頼の所得保障制度を整備・普及する。
(1)非正規労働者の雇用と年金の接続や、家族介護などで継続雇用を希望できない人に対する
雇用保険の給付期間の延長など、社会的セーフティネットの充実をはかる。
(2)公的年金は支給開始年齢を原則 65 歳とし、基礎年金は全額税方式化し、厚生年金との組み
合わせで、所得代替率 50%の給付水準を確保する。基礎年金の給付水準は月額 7 万円程度と
する。
(3)基礎年金の繰り上げ受給減額率を、平均寿命の伸びを踏まえ小さくする。
(4)すべての雇用労働者に厚生年金を適用するとともに、被用者と自営業者の年金の一元化を
すすめる。その際、基礎年金を最低保障年金に転換し、所得比例年金を補完する役割とする。
(5)企業年金は、賃金の後払いとしての性格と老後の生活保障としての機能を有することに鑑
み、パート・派遣労働者や中小・零細企業の労働者を含め、終身にわたって確実な給付を受
けられる制度を構築する。
4.だれもが老後を住み慣れた地域社会で安心して暮らせるよう、医療・介護へのアクセスを保
障する。
(1)退職後住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、医療・介護・保健・福祉・住まいが連携
12
した「地域包括ケアシステム」を整備し、多様な職種や専門家、コミュニティにより地域密
着型の総合的な支援サービス供給体制を確立する。
(2)高齢期の公的医療保険は、働き続けるすべての高齢者は被用者保険に加入し続けるほか、
退職者は被用者保険グループによって創設される「退職者健康保険」への加入などにより、
安心の医療アクセスを保障する。
(3)高齢期における医療の給付と負担のあり方は、被用者保険と共通のルール適用を原則とす
る。また、社会保障サービスに関する自己負担の合計額に上限を設ける。
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【「働くことを軸とする安心社会」を支える基盤】
○政策
1.国と地方の役割分担のもと、働くことを有効に支援し、
「働くことを軸とする安心社会」を
積極的に支え、先を見通せる公正・公平な信頼のおける政府をつくる。
2.雇用拡大や、産業を育成するための施策を展開するために、公平な負担による分かちあい
の社会を実現する。
3.企業がコンプライアンスの確立、社会的公正や倫理、地域社会への貢献、環境への配慮な
ど、持続可能な社会の実現に向け、社会的責任を果たせるようCSRを推進する。
4.低炭素社会への転換と自然環境の保全を推進するとともに、グリーン、ライフなど新たな
内需型産業の拡大を通じ、雇用確保や創出を推進し、持続可能な社会を実現する。
○政策の具体的内容
5 つの橋に必要な施策を責任を持って遂行できるように、働きたい、社会に参加したいという
人々のニーズを適切に反映できる信頼のおける政府を確立する。政府は、NPO、協同組合、社
会的企業など「新しい公共」の担い手と密接に協働し、良質な公共サービスの効率的かつ適正な
提供を図るとともに、グリーン、ライフなど新たな内需型産業の拡大を通じ、雇用確保や創出を
推進し、持続可能な社会を支える。
1.国と地方の役割分担のもと、働くことを有効に支援し、
「働くことを軸とする安心社会」を積
極的に支え、先を見通せる公正・公平な信頼のおける政府をつくる。
(1)国と地方の役割を明確にし、国と地方それぞれが 5 つの橋に必要な施策を責任を持って遂
行できるようにする。具体的には、国は、主に、国全体に関わる行政を担い、防災・減災を
はじめとした安心・安全な国づくりや経済変動等に対応するとともに、所得再分配機能を果
たす。
(2)地方は、主に、保育、介護、地域福祉など住民ニーズに即した現物給付、地域の特性を活
かした地域経済・雇用政策の一体的推進、地域コミュニティの再生・支援など、公共サービ
スを通じた資源配分を安定的に実施していく。そのために必要な権限と財源を国から地方に
移すなど、地方分権を進める。
(3)行政サービスの実施において、地域の住民や団体が運営や政策決定に関与するなど分権化
された、透明度の高い行政運営を実現し、住民からの信頼の醸成につなげる。
(4)労働組合代表が、国や地方の重要政策の決定プロセスに参画し、意見反映するとともに、
「働くことを軸とする安心社会」の政策実現に向けて、1000 万連合実現への取り組みを推進
する。
(5)5 つの「安心の橋」の構築に向けて、安全で良質な公共サービスが、確実、効率的かつ適
正に提供されるよう、
「新しい公共」の担い手である地域に根を張ったNPO、協同組合、社
会的企業など民間主体の参画を促し、連携を強化する。
2.政策の推進に必要な財源の確保や所得再分配機能の強化をはかり、公平な負担による分かち
あいの社会を実現する。
(1)財政規律をもちつつ、国民のニーズを踏まえて政策の優先順位づけをし、省庁の壁を越え
た戦略的資源配分を行う。そのために、内閣機能を強化するとともに、立法府における政策
評価機能の強化、国会運営ルールの整備をはかる。
(2)積極的社会保障政策と積極的雇用政策の推進に必要な財源の確保や、所得再分配機能の強
化をはかるため、
「公平・連帯・納得」の税制を実現する。
(3)所得再配分機能の回復・強化と安心と信頼の社会保障の実現の視点から、マイナンバー
制度を円滑に実施する。
3.企業がコンプライアンスの確立、社会的公正や倫理、地域社会への貢献、環境への配慮など、
持続可能な社会の実現に向け、社会的責任を果たせるようCSRを推進する。
(1)グローバル化の進展や環境問題が深刻化する中において、社会の持続的な発展に向けて、
企業は、人と社会や地域をより重視した経営・事業活動を促進するとともに、企業の社会的
責任に見合った税・社会保険料の負担を分かち合う。
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(2)雇用や、労働条件・労働環境に十分な配慮を行うことは企業の社会的責任である。企業は、
仕事の価値にみあった賃金、ワークルールの整備など、ディーセント・ワークの確立に責任
を負うとともに、健全な労使関係を構築し、雇用の維持・拡大、労使の協力と協議、成果の
公正配分を可能とする社会の継続をはかる。
(3)安全・安心で持続可能な社会を実現するために、企業単体では解決できない社会的課題な
どに対し、多様な主体が補完し合うことで、それぞれが役割を発揮しやすい環境を作り出す
ことが不可欠である。課題解決のため、地域においてマルチステークホルダーが協働して地
域の政策を策定するための枠組みを構築する。
4.低炭素社会への転換と自然環境の保全を推進するとともに、グリーン、ライフなど新たな内
需型産業の拡大を通じ、雇用確保や創出を推進し、持続可能な社会を実現する。
(1)地球環境の保全、低炭素社会の実現ならびに地球温暖化対策の推進にむけた国際的な協調
および協働を前提に、経済・社会・環境の両立をはかるとともに、環境保護に必要な技術の
開発・普及を推進し、生物多様性や健全な水・大気・土壌の維持・保全をはかる。さらに、
各種資源の再利用・再資源化など、循環型社会の形成に向けた取組みを一層推進する。
(2)原子力エネルギーに代わるエネルギー源の確保、再生可能エネルギーの積極推進、省エネ
の推進を前提として、中長期的に原子力エネルギーに対する依存度を低減し、最終的には原
子力エネルギーに依存しない社会をめざす。
(3)日本再生に向け、国内での事業継続の優位性の確保、雇用の確保や創出を推進するととも
に、労働条件の向上、人への積極的な投資により、付加価値の増大、内需拡大の促進、持続
的な成長、デフレからの脱却、さらには日本全体の成長をはかる好循環へとつなげていく。
(4)イノベーション人材の育成強化などにより、グリーン、ライフなど新たな産業の創出を推
進し、新産業を創出、産業構造を転換させるとともに、持続的な産業の構築をはかる。
(5)全ての人々を孤独や孤立、排除や摩擦から援護し、健康で文化的な生活の実現につなげる
よう、社会の構成員として包み支え合う「ソーシャルインクルージョン」を推進し、ディー
セント・ワークの実現をはかるとともに、人権侵害を廃絶するために、人権侵害への救済制
度を確立するとともに、差別を許さない安心・安全な社会を実現する。
以上
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