平成15年度の電気事故の概要(PDF形式100B)

平成15年度火力(ボイラー・タービン)・原子力発電所の事故
(管内)
事故発生
電気工作物
ボイラー
(平成15年4月1日~平成16年3月31日)
事故発生箇所
事故発生日時
事故の状況
事故の原因
第1号銅転炉
廃熱ボイラー給水
管
平成15年4月11日 見廻り時銅転炉ボイラー給水管タコベンド部より蒸気が出
補修の際、肉厚測定を行ったが、ピンホール付近の部分
1時40分
ているのを発見。足場仮設、当該場所の保温を撤去したとこ は、元肉厚:5.1mmtに対して、3~4mmt(限界肉厚:
ろ、ベンド部溶接から約10mm入った直管部上側にピンホー 3.79mm)であり、その他の部分は元肉厚はあることから、漏
1 蒸発量49t/h
圧力5.4MPa
ルがあり、そこから給水が漏洩していた。
水箇所は、給水の水流によるエロージョンにて減肉し、当該
温度270℃
箇所にピンホールが発生して漏水に到った、と推定される。
高中圧車室締付け 平成15年4月14日 中間点検にて蒸気タービン点検中、高中圧外部車室締付
ボルトネジ部の銅メッキがナットの摺動等により剥離し、ボ
タービン
ボルト
17時00分
けボルトネジ部に亀裂を確認。同内部車室締付けボルトネジ ルト母材が鉛系焼付防止剤から溶融した金属鉛と接触した
2 容量105,0000kW
部に亀裂を確認。
ため、脆性割れが発生したと推定する。
圧力25MPa
温度610/600℃
ボイラー
ボイラー
平成15年5月18日 ボイラーを黒液専焼から重油専焼への移行が完了(重油
炉底のスメルトのスパウト側への片寄りが生じ、スメルトス
13時40分
バーナー4本にて運転中)し、炉底のスメルトスパウトが2箇 パウトが閉塞した。このスパウト閉塞が、1ないし、2本のバー
蒸発量55t/h
所とも、ほぼ同時に閉鎖した。運転員がスパ宇土掃除をしよ ナー失火に起因する異常燃焼の発端と推定される。これによ
圧力7.061MPa
うとした時、炉内で異常な音が生じ、全バーナーが失火し異 り生じた未燃ガスの異常燃焼による炉内圧上昇により、火炉
温度443℃
常音が続いたため、燃料ポンプを緊急停止した。異常音と共 壁から節炭器にわたり、膨出変形を生じたと推定される。
3
に、ボイラー上部へ蒸気が立ち上り、火炉から節炭器にかけ
ての壁管及びケーシングに変形膨出を生じた。
ボイラー
蒸発量49t/h
4 圧力5.4MPa
温度270℃
ボイラー
第1号銅転炉
廃熱ボイラー
第3伝熱面
第1仕切壁水管
蒸発量19t/h
5 圧力2.256MPa
温度280℃
ボイラー
給水止め弁
蒸発量19kW
6 圧力2.256MPa
abs
温度280℃
ガスタービン
蒸発量3,000t/h
圧力27.7MPa
8
温度613/605℃
タービン
ボイラー対流部東中央ホッパー部の下より水がボイラー外
側に漏洩しているのを発見。丁度吹錬時の合間であっため
マンホールを開け内部点検したところ、リーク方向が炉外側
であり量も少なかった為、そのまま吹錬を行い点検を強化し
ながら翌日から補修することにした。翌日冷却及び降圧を開
始しながらケーシングを切破ったところ、コーナー部チューブ
のフィン溶接2番の亀裂から上記が漏洩していた。
平成15年12月14 定検中、今回破損の水管は定期補修工事の範囲であっ
日
た。既設の耐火物を解体撤去。解体時(既設アンカーをプラ
13時10分
ズマ切断しコンスタットアンカー取付部のグラインダー仕上げ
後にコンスタットアンカーを取付)に生じた水管表面の傷をTIG
補修。ボイラーの水張を開始後の点検では異常なし。その後
の点検にて当該水管表面がにじんでいるの発見。
既設アンカースタッド取付箇所にピンホールが2箇所あるこ
とを確認した。
平成16年1月7日
損傷した給水止め弁は直前の定期事業者検査の定期補修
9時30分
工事にて取替えしたものである。ボイラーを立上げ開始後、
巡視点検時に給水止め弁本体の吹出し側フランジから湯気
が出ているのを確認した。
10 容量700,000kW
圧力24.1MPa
温度593/566℃
耐火物の補修方法はエアーチッパー等の工具を用いて既
以下の項目について改善する。
設の耐火物解体を実施してきた。本来は耐火物のみを解体 ・水管表面補修における検査方法の見直し
する目的ではあるが、作業者の熟練度、作業姿勢、既設耐 ・耐火物解体に使用する工具の検討
火物の付着状況と強度によっては、水管の表面に傷又は圧 ・施行業者に対し、同種事故防止のための指導
痕を生ずることがあり、その表面補修としてTIG溶接による肉
盛補修を実施してきた。このエアーチッパーによる水管への
衝撃によって、目視ではわからない微細なわれを生じさせた
ものと判断します。
ボデー(鋳鋼)製造時に生じた欠陥(引け巣)と判断する。
以下の項目について改善する。
・今後購入する鋳鋼品の主要弁は、受渡検査として耐圧試
験のほか、非破壊試験により健全性を確認できたものを使
用する
・バルブメーカーに主体材料(弁箱及びふた)製造過程におけ
る品質管理の改善を要望する
平成16年1月19日 失火、燃焼ガス温度低下によりトリップ。その後5回ガスター スロットル弁自身の動きが重く、それによってスロットル弁
現在、スロットル弁自身が重いということしかわかっておら
4時47分
ビンの起動を試みるが、全てストールトリップした。タービン停 基盤コンデンサに過電流がかかり、焼損に至ったと判断され ず、対策については、メーカーとの究明、検討が終了次第報
平成16年1月21日 止後、ゼロ点がズレていたので調査してみると、基盤コンデ る。
告する。
9時10分
ンサが焼損していた。
平成16年1月23日
1時40分
誘引通風機
平成16年1月29日 誘引通風機動翼機構点検運転中、ガス流量アンバランス
9時00分
及びA-IDF振動増大を確認。A-IDF停止、パイロット弁補修実
施。再起動後、再び振動大のため停止。動翼点検を実施した
ところ、1段目同翼開度にバラツキを発見した。サポーティン
グリング取付ボルト破断、サポーティングジャーナル1段側側
端部外周及びボルト穴損傷、スライドシュー角部に欠損等の
損傷を確認。
高中圧車室締付け 平成16年3月5日
ボルト
定期点検中タービンを停止し開放点検の結果、高中圧内
部車室締付けボルトに亀裂が見つかった。
高中圧車室締付け 平成16年3月5日
ボルト
定期点検中タービンを停止し開放点検の結果、高中圧外
部車室締付けボルトに亀裂が見つかった。
容量350,0000kW
9 圧力24.124MPa
温度538/566℃
タービン
以下の項目について改善する。
・重油バーナーに、火炎検出器を整備する
・重油バーナー個々に、火炎検出器失火検出にて作動する
個別燃料遮断弁を整備する
・遠隔油圧手動調節を、重油圧力自動調節指示記録計に改
造する
・直圧式噴霧蒸気圧力調節を、蒸気圧力自動調節指示記録
計に改造する
・噴霧蒸気圧力低警報を、圧力極低にて燃料遮断弁を閉止
するよう改造する
フィンとチューブの溶接が炉内側しかなく、熱ひずみの繰り 全てのケーシングを切破り点検する。片側溶接が確認され
返しによる応力集中と推定。
た部分のチューブを全て抜管取替えし、フィンを両側溶接に
て復旧する。両側溶接になっていれば、概観及びPT検査を
実施し、欠陥があれば補修する。なお、今後耐圧部の補修作
業においては図面どおりであること及びPTによる確認を必ず
行う。
スロットル弁
基盤コンデンサ
容量7,000kW
7 圧力1.134Mpa
abs
温度1,000℃
ボイラー
平成15年7月2日
22時00分
事故再発の防止対策
恒久処置として、銅転炉ボイラー給水管の更新を、03年度
定修時に実施予定。給水管更新後は、給水管曲がり部分点
検を、曲がり部分10%の数量で、定修時毎に実施する。20年
経過後は、曲がり部分20%の数量で定修時に実施し、減肉
が見られれば更新を計画する。
・損傷ボルト10本の取替え
・健全ボルト全数の非破壊検査及び洗浄、手入れ
・動メッキボルトに対して、鉛系焼付防止剤の使用を取止め、
銅系等の焼付防止剤に変更する。
1段側サポーティング取付ボルト座面及びボルト頭角部に、
ボルト緩みによる削れ跡が認められ、動ボルト破断面に貝殻
模様がみられたことから、事故の原因として、1段側サポー
ティングリング取付ボルトの締結力不足によるボルトの疲労
破断であると推定される。ボルト締結力不足の要因として
は、締結トルク管理不足、組立時のサポーティングジャーナ
ル端面とアダプティングリングの接触面への異物混入が考え
られる。
ボルトの破面が凸凹のある状態を示しており、脆性割れが
発生していること。われの内部にボルトの成分には含まれな
い金属鉛が存在し、ボルトのネジ部に付着しているスケール
にも金属鉛が検出されたことから、ナットとの摺動等により、
ボルトネジ部に施していた銅メッキが剥がれ、塗布していた
鉛系焼付防止剤が、ボルト母材に溶けて接触したためと推
定される
ボルトネジ部の銅メッキがナットの摺動等により剥離し、ボ
ルト母材が鉛系焼付防止剤から溶融した金属鉛と接触した
ため、脆性割れが発生したと推定する。
以下の事項の品質管理を確実に行う。
・組み込み面の清掃を確実に行うとともに、異物がないことを
組み込み前に確認する。
・ボルトが規定トルクで確実に組み込まれたことを、作業担当
者自ら確認する。
・チェックリストを活用し、組み込み記録、締付けトルク記録を
残す。
銅メッキを施したボルト・ナット全数について、鉛系焼付防
止剤を完全除去し、銅系焼付防止剤へ変更する。
銅メッキを施したボルト・ナット全数について、鉛系焼付防
止剤を完全除去し、銅系焼付防止剤へ変更する。