第 65 回西日本経済同友会大会における地方行財政改革について(要旨)

第 65 回西日本経済同友会大会における地方行財政改革について(要旨)
日
会
講
時
場
師
平成 19 年 10 月 18 日(木)・19 日(金)・20 日(土)
高知市文化プラザかるぽーと・ホテル日航高知
伊藤忠商事会長・地方分権改革推進委員会委員長
丹羽 宇一郎氏
基調講演は、伊藤忠商事会長で地方分権改革推進委員会委員長の丹羽宇一郎氏が、
「地域再生への道 −地方分権改革の目指すもの」と題して話された。冒頭に「改革
をする当事者の意識を変えなければ改革は成就できない。まだ日本は大丈夫と思って
おり、危機意識が少ない」と訴えた。以下は講演の要旨である。
(1)中央と地方、都会と田舎、大企業と中小企業の格差、(2)人口減少と少子
高齢化による限界集落と地域コミュニティの崩壊―などの環境下にある中で、我々に
は「くれない症候群(国、県、市がやってくれない)」が窺え、甘えがある。高度成
長から低成長、人口増加から人口減少などあらゆるものが変わる中で、行政システム
だけが変化しない。これを洗い直すことが求められている。また、国に任せられない
状態では必然的に地方分権せざるをえない。地方税のあり方、法人2税、三位一体の
改革、公務員制度などの改革は、5∼10年の時間をかけて取り組むべきである。そ
して、日本の構造を根本から変えていかなければならない。官僚は「慣性の法則」に
より、今の状態が一番だと思っている。官僚の体質であり、こうしたことを口に出せ
ば暗黙に予算減の形で脅かされる。国も地方も企業も常に変化に対応しなければ生き
ていけない。小泉・安倍政権は一歩ずつ改革を前進させたが、今は甘い「まんじゅう」
を見せびらかせ、改革が後退する可能性が高い。今、国と地方の長期債務が 830 兆円
あるが、これを今の人が担ぐか、後世に残すかの岐路にある。しかし、今の人が食い
逃げすることは許されない。将来、国債の増加と人口が減少する中で、日本の国際的
な信用低下と円の暴落の懸念がある。そうなったら、皆が海外に逃げ出す。円は紙屑
となる。だから、つらいことだが改革に取り組まなければならないし、この状態にあ
ることを国民に実感させることが政治である。日本の食糧は、国際競争で獲得した金
で買っている。円が安くなれば、食料は少ししか買えない。日本は資源が少ないから
こそ改革して海外から稼がなければならない。地方分権改革推進会議では5つの原則
を挙げている。
(1)地方政府の確立、
(2)完全自治体(自己決定、自己責任、受益
と負担のバランス)、(3) 基礎的自治体を優先した広域連合、(4)住民の目線に
立った下からの分権、(5)自治体職員の質的向上―である。今は官僚が日本を悪く
している。しかし自覚がない。だから上からの分権はできないことがわかった。下か
ら、地方からでしか分権改革はできない。
パネルディスカッションでは、片山善博氏(前鳥取県知事 慶応義塾大学大学院教
授)、今村昭夫氏(九州経済調査協会・理事長)、横田英毅氏(ネッツトヨタ南国・会
長)の 3 人が、(1)地方の現状と課題、(2)地方のあるべき姿、(3)分権改革後
の日本の姿―3つをテーマとして議論した。以下は要旨である。
(1)地方の現状と課題
① 人材の面からは、育てるシステムや仕組みがない。今は、地域のリーダー
が求められている。リーダーシップを持った人を育成するためには教育を
充実させるべきである。
② 景気が踊り場とも言え、九州では県間の格差も表れている。また、非効率
的な部門の民営化が遅れている。
③ 地方は官依存の体質が強く自治体が疲弊すると地域に負の影響を与える。
夕張市は財政破綻したが、国は全くチェックしていない。国は逆に借金を
けしかけた。バブルの後の景気対策、市町村合併の特例債などで、国から
勧められ借金した結果である。この原因は自治体がミッション(使命、任
務)を誤ったためである。「自治体は何のためにあるのか。誰のためにあ
るのか」を考えれば、住民以外にありえない。「借金を住民が望むか、住
民のためになったか」を問えば、答えは明白である。やはり、地方の行政
はミッションを問い続けることが大事である。
(2)地方のあるべき姿
① 道州制は地域が一体となって取り組むべきである。そのためには、出来る
ことから取り組み、県の間の壁を越えて連携、協力することが必要である。
② 坂本龍馬は、
「日本を洗濯いたし申し候」と言ったが、日本は明治以来 150
年洗濯しなかった。今、考える人は少なく、大多数は考えない人である。
また、部分最適しか考えず、全体最適までに考えは及ばない。これからは、
子供達はあるべき姿に育成することが必要である・
③ 福田内閣が発足したが、国民へのメッセージがない。発言は市町村で考え
る政策レベルばかりであり、もっと国として考えることがある。行政に関
しては、住民は知らされていないし、その結果考えない。これからは、一
人一人の住民が自治体の主人公である」との意識が必要であり、住民に考
えさせる機会を与えなければならない。住民も考えることが必要である。
(3)分権改革後の日本の姿
① 道州制については、イメージや共通の認識がない。構造改革と同様であり、
中味を誰もが明確に説明できない。北海道では道州制特区に取り組み始め
たが、道路の例をとるとやっと本州並みになった。今の都道府県で地方へ
権限を下ろしても、対応できない。道州制の州都は不便な所でも良いが、
そのかわり市町村で全て用が足せるように権限を委譲すべきである。
② 道州制は、そんなに簡単にはいかないし難しいと思う。国は権限を手放そ
うとしないから、自分達が力をつける以外にない。日本は破綻する可能性
③
が高い。
これからは、自治体の質をレベルアップすることが必要である。地方分権
が進むと議会の力が強くなる。知事の力が強まるのでなく、議会である。
しかし、今の議会で期待できるのか。やはり質を高めることが必要である。
そのために、システムを変えなければならない。
以上