誘導加熱原理と電力計算

・誘導加熱の原理について
図1のように、金属の丸棒状(被加熱体)の外周に誘導コイルを配置し、
高周波電流(交流)を流すと高周波磁束が発生します。(フレミングの法則)
この磁束が被加熱体を貫通すると非常に高い電流(うず電流)を誘導し、
被加熱体の表面が電気抵抗でジュール熱が発生し自己発熱をします。
これが誘導加熱の基本原理です。
このうず電流は被加熱体の表面に近いほど強く内部にいくにつれて
指数関数的に弱くなります。これを表皮効果といいます。
・表皮効果について
表皮効果の現象は、被加熱材料の比電気抵抗値、比透磁率及び
高周波装置の発振周波数に関係し,とりわけ周波数は重要な要素となります。
被加熱体表面の電流密度を 1 として、
これが 36,7 %まで減衰する距離を電流の浸透深さ P と定義されています。
P = 5,03
(cm)
λ: 被加熱体の抵抗(µΩ・cm)
µ: 被加熱体の比透磁率
f: 周波数(Hz)
つまり周波数が高いほど、P は小さくなり、低いほど P が大きくなることがわかります。
被加熱体表面よりの深さ(x)における電流密度とも関係し Ix と定義されています。
Ix = Ioε
Io: 被加熱体表面の電流(A)
Ix: 被加熱体表面から x(cm)の点の電流(A)
ε:
自然体数の底= 2.7182818・・・・・・・
x:
被加熱体表面からの距離(cm)
P: 電流浸透の深さ(cm)
γ 鉄はキューリー点以下の温度のときで p = 125、µ = 1 とした場合、
黄銅は約 800 ℃の場合で p = 15、µ = 1 とし、
銅は約 800 ℃の場合(p = 5、µ = 1)と常温の場合(p = 1.7、µ = 1)を示してある。
また、α 鉄は常温の状態で p = 10、µ = 100 として示してある。
・加熱に必要な電力計算方法
算定条件
−例−
ワーク材質: ステンレス材
ワーク径:
φ20
ワーク長さ: 100mm
昇温温度:
常温∼ 1,000 ℃
昇温速度:
10sec
加熱環境:
大気中
計算式
Pa = 4.186×M×C×∆Τ
(kw/sec)
4.186: ジュール熱定数
M:
ワークの重量
・・・・・・・・・・約 0.25kg
C:
ワークの比熱
・・・・・・・・・・0.12(cal / g ℃)
ÄÔ:
昇温温度
・・・・・・・・・・・・・(1,000 ℃− 20 ℃= 980 ℃)
正味電力量(1 秒間で上記ワークを昇温する電力)
4.186×0.25×0.12×980 = 123kw / sec
実際に必要な電力
P0 = P1+P2+P3+P4+P5
P1: ワークへ吸収される電力量
P2: 熱の放射電力損
P3: 熱対流電力損
P4: 熱伝導電力損
P5: フィーダーロス、CT ロス
実際の電力の算定には設計方法、経験値等により大きく左右されますが、
一般的には上記条件では正味電力量× 2.5 倍位あれば実用的かと思われます。
123kw×2.5 = 307.5
約 308kw / sec
10sec での昇温では 308÷10 = 30.8 で約 31kw の高周波出力が必要となります。