Culinary Challenge シンガポール国際料理大会

Culinary Challenge シンガポール国際料理大会
ますや旅館/オーベルジュ
シェフ 神原 佳考
平成26年4月8日(火)∼11日(金)までシンガポールで開催された国際料理大会に、日本代表の個人選手として参加さ
せていただきました。
四年に一度ドイツで開催される料理オリンピックに出場したいとの思いがあり、経験と実績を積むため今回のコ
ンテストに臨みました。私の出場したカテゴリーは、温製、東西融合部門で各国の好きな食材及び調味料を使用し
フランス料理の一皿に仕上げるというもの。
私にとって初めての海外でのコンテストでしたので、準備段階から1年という長い時間を費やしました。メニュー
作成に当たり、様々なものを試作し何度も修正をかけ、最終的に出発3日前にメニューを変更しました。初めは、鴨
肉やトリュフなどの外国人が好む食材で勝負しようと考えましたが、やはり自分の普段の提供スタイルで美味しい
と自信を持てる料理を作ろうと決断しました。メニュー名は、「和牛2種の調理法 フィレ肉の紙包み焼きとロース
肉のスパイシーフリット 柚子味 ソース」です。
食材には今治産の味 と醤油と大豆。高知県産の柚子と和風だしに加え、ワサビ味のマッシュポテトをアクセン
トとして添えました。日本の食材をフレンチのテクニックで調理、というテーマで仕上げました。
日本の材料で特殊なものはすべて持ち込み、鍋などの器材は輸送しました。シンガポールでは不足したものを購
入しました。
私は、10日(木)の朝一番、7時が競技開始でした。4人前のメインディッシュを60分以内に、片づけを含め終了さ
せなければならず、しかも50分以降からしか料理は提出できません。正確な時間配分及び調理技術が必要でした。
競技開始45分前に受付を済ませ、10分前にキッチンに入場。準備をしている間に国際ジャッジが食材及び器材に
違反がないかのチェック。その時一人のジャッジがレシピを見て「肉を見せなさい」と言ってきたので肉を見せる
と、「あなたはその肉の量でスタートして本当にいいのかい?4 人前のメインディッシュだよ」と。しかし、「私
は、これだけしか持ってないのですが」と答えると「幸運を祈る」と言われ、気づけばほかの選手はスタートして
おり、あわてて作業に入りました。
その時点で、終わったと思い開き直って、いつも通りおいしい料理を作ることだけに集中しようと思いました。
58分でキッチンの清掃まで終了し、退場しました。
15分後、ジャッジからフィードバックがあり、「グッド テイスト」、つまり日本語で「美味しい」と言われホッ
としました。肉の分量が足りない点だけ指摘されましたが、作業及びキッチンの衛生は「ベリー・べリー・グッド」
という評価でした。
他の2人の日本人選手は10時と12時の競技開始でした。全員同じ器具を使うルールでしたので、私は終了後、器具
を清掃し整頓。
その後、一人は買い出し、一人は他の競技者の観戦で、私は、トイレに行きました。帰ってくると次の選手も帰っ
てきて、二人で器材のチェックをしながら準備をしていたら、鍋とフライパンがどこを探してもなく、紛失してしまっ
ていたのです。ほんの少しの間に、他の誰かに盗まれてしまっていたのです。
あわてて、会場内を走り回りフライパンと鍋を購入でき、事なきを得ましたが、日本という国での平和ボケと、
ここは海外で他の選手はライバルという認識の甘さを痛感しました。他の選手は、自分の持ち物は全体をラップで
ぐるぐる巻きにしているか、誰か一人は必ずその場にいて離れないなどの盗難対策をしていました。結局、料理の
総量及び防犯意識に関して日本の感覚はまったく通用せず、海外でのコンテストの厳しさを経験することになりまし
た。
次の日の最終日の朝に結果発表があり、シルバーメダルをいただくことができ、本当に嬉しく光栄に思いました。
しかし、自分の調理技術の未熟さと意識の低さを痛感し、今後の課題も見つけることができました。今後はさらに
精進し、目標である世界料理オリンピックに出場できる料理人をめざし、日々料理と向き合っていこうと思ってい
ます。 最後になりましたが、司厨士協会の諸先輩方からのご指導及び御尽
力、英語のレッスンをしていただいたクリス先生、そして多くの人
の助けと家族の支えがあって、今回このような素晴らしい結果を残
すことができました。本当にありがとうございました。
Oregon Coast, Brookings Oregon by JoeDuck
99 August / September 2014 Late Summer Issue 6
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2014 / January 2015 The New Year Issue 6