大学医師会会報 - 福島県立医科大学

二次検査は B、C 判定の 2,237 人(0.8%)が対象
で、すでに 1,848 人(94.7%)が診断確定していま
す。このうち 623 人は A1 ないし A2 に再判定されま
した。また 1,225 人は二次検査後、保険診療での経
過観察や精査を施行されています。うち 485 人に細
胞診が施行され、悪性ないし悪性疑いが 104 人で、
58 人がすでに手術を施行され、1人が良性結節、57
人が甲状腺癌 (乳頭癌 55 例、低分化癌 2 例)と病理
診断が確定しています。細胞診結果が悪性ないし悪
性疑いであった 104 例の平均年齢は 17.1 歳、性別は
男 36:女 68、平均腫瘍径 14.2 ㎜です。
県外へ避難している方のために県外拠点の契約を
行い、現在、全国 46 都道府県において 96 医療機関
と協定を締結し検査を実施しています。県内では 12
医療機関との契約も進んでおり、さらに、県内での
実施可能な医師技師を増やすために、医師会と共に
超音波講習会を実施しております。
二次検査は当初は本学附属病院でのみ施行してお
りましたが、その後県内では郡山市、いわき市、会
津若松市の医療機関においても施行しております。
また、福島県からの避難者が多い山形県、新潟県、
神奈川県など、県外検査医療機関での実施が進まな
い場合には、私共が検診バス等で土日に現地にて出
張健診を実施しております。さらに、18 歳以上の被
検者の受診率の低下を防ぐために、土日での検査の
試験的実施や県内の大学等での検査実施など、様々
な対応を試みております。
福島県立医科大学
大学医師会会報
2014.11.20. No.115
*巻頭言
甲状腺健診の現状(現況)について
福島県立医科大学医学部甲状腺内分泌学講座
放射線医学県民健康管理センター甲状腺検査部門
鈴木 眞一
2011 年 3 月 11 日、東日本大震災によって東京電
力福島第1原発で事故が発生し、大量の放射性物質
が大気中に放出されました。放射線被ばくによる健
康影響が懸念されたことから、子どもたちの健康を
長期に見守るために、福島県では県民健康管理調査
(当時。現在は県民健康調査)の4つの詳細調査の
一つとして超音波による甲状腺健診を行うこととな
りました。
事故当時に概ね 18 才以下だった福島県民約 37 万
人に対して長期にわたり検査を行うとの制度設計の
もと、1 巡目の検査である先行検査を 2011 年 10 月
9 日より開始し、震災後 3 年を経過した 2014 年 3 月
31 日に終了しました。
現在は 2 巡目となる本格検査を実施中で、すでに
約 9 万人に検査を施行しています。本格検査は 20 歳
までは 2 年ごとに、それ以上の年齢では 5 年ごとに
行う予定になっています。
考察
現時点で発見されている甲状腺癌症例は、福島県
内での被ばく線量がチェルノブイリよりも低いとさ
れること、また腫瘍径、地域差がないこと、年齢分
布、発症までの期間、病理組織型などを考慮する
と、超音波検査によるスクリーニング効果および今
まで施行されていなかった健診を急に施行したハー
ベスト効果によるものと考えられ、現時点では放射
線の影響と考えにくいと判断しております。今後は
この結果を基に本調査を続け、甲状腺に対する放射
線の影響があるのかないのかについて知ることによ
って、不安の解消と健康増進を図りながら、長きに
わたって県民の皆様を見守っていきます。
先行検査、本格検査のいずれも、検査は一次検
査、二次検査の 2 つの段階に分かれています。一次
検査は甲状腺結節のスクリーニングが目的であり、
その判定基準は、A 判定が 2 年ないし 5 年後に実施さ
れる次回の本格検査まで経過観察とするもので、B 判
定(5.1mm 以上の結節ないし 20.1mm 以上の嚢胞を認
めるもの)および C 判定(直ちに二次検査が必要と
思われるもの)が二次検査を勧める判定となりま
す。A 判定はさらに A1(嚢胞、結節の所見を認めな
い)、A2(5mm 以下の結節ないし 20mm 以下の嚢胞を
認める)に分けられます。
結果
先行検査のうち、2014 年 6 月 30 日までの結果集計
分を報告します。一次検査は 296,026 人(80.5%)
がすでに受診し、結果が確定した 285,689 人中、A1
が 152,389 人(51.5%)、A2 が 141,063 人
(47.7%)、B が 2,236 人(0.8%)、C が 1 人でし
た。先行検査の一次検査の超音波所見では、コロイ
ド嚢胞の多発、甲状腺内胸腺が特徴的に認められま
す。
1
*学内・教授会情報
田卓先生の後任として附属病院臨床腫瘍センターの
センター長を10月1日付けで拝命いたしました。こ
こに、本紙面をお借りしまして御挨拶申し上げます。
わたくしは平成4年に大学を卒業するまでの 24 年
間を、出身地の岐阜県岐阜市で過ごしました。清流・
長良川が街の中を流れるおだやかな故郷のあまりの
居心地の良さに危機感を持ち、卒後は上京して東京都
立駒込病院で研修医・外科専門研修医生活を過ごしま
した。岐阜大学生化学・第2外科、埼玉県立がんセン
ター、カロリンスカ医科大学(スウェーデン)、東京
都立駒込病院乳腺外科などを経て、2003 年に当時はま
だ数少なかった腫瘍内科医への転向を決意いたしま
した。埼玉医大腫瘍内科で多くの固形癌患者さんの診
療・臨床試験にあたり、京都大学大学院標的治療腫瘍
学講座では日本を代表するアカデミアでの研究の進
みかたを学びました。
このたび、ご縁をいただき福島での診療・研究と新
設講座立ち上げの機会に恵まれました。腫瘍内科は日
本ではまだ馴染みの薄い臨床部門です。各臓器がんの
治療戦略全体を理解しつつ、がんの薬物療法を専門と
して診療や研究をおこない、臨床試験やコホート研究
などを通じてあらたな治療薬・治療戦略の開発にあた
ります。しかし、がん薬物療法専門医は福島県内にわ
ずか 6 名(うち4名は大学内)という状況です。これ
からの専門医育成と、福島県内各地域とのネットワー
ク作りが重要と考えております。全国的にも指導的立
場の医師が少ない状況で、ゼロからの講座立ち上げを
開始したところですが、少し長い目とお時間をいただ
きつつ、ご指導ご鞭撻をいただけますと幸いです。
今後ともどうぞよろしく御願い申し上げます。
(平成 26 年 9 月 19 日福島民報より)
~教授就任の抱負~
腫瘍内科学講座
教授 佐治 重衡
◇ 略歴:
1992 年 岐阜大学医学部卒業
1992 年 東京都立駒込病院
外科研修医、外科専門
臨床研修医
1997 年 岐阜大学医学部
生化学教室、第 2 外科教室博士課程研究員
1998 年 (埼玉県立がんセンター研究所 研修生)
1999 年 カロリンスカ医科大学(スウェーデン)博士研究員
2001 年 東京都立駒込病院 乳腺外科 医員
2003 年 M.D.アンダーソンがんセンター (米国)集学的治療研修
プログラム(短期留学)
2004 年 東京都立駒込病院 乳腺外科・臨床試験科 医長
2009 年 埼玉医科大学 国際医療センター 腫瘍内科准教授
2011 年 京都大学大学院 医学研究科 標的治療腫瘍学講座
特定准教授
2014 年 福島県立医科大学 腫瘍内科学講座 主任教授
*病院内の動き
~10・11 月部長会報告(要点)~
◎26 年度の医師臨床研修マッチングの結果について
平成 26 年度の医師臨床研修マッチング結果が、こ
のほど公表されました。
それによると、当院の内定者は昨年度より 4 人減少
して 8 人となりました。内訳は本学出身者が 4 人、他
大学出身者が 4 人です。また、当院も含めた県内病院
全体では昨年度より 4 人減少して 88 人で、昨年度に
次いで、過去 2 番目に多いマッチング数となりました。
内訳は本学出身者が 48 人、
他大学出身者が 40 人です。
当院には上記 8 人に、自治医科大学等の 2 人を合わせ
た 10 人が採用予定者となります。
なお、本学 6 年生のマッチングについてみると、47
人が当院も含めた県内病院にマッチングしており、う
ち 3 名が当院のマッチング数です。
本学医師会の諸先生におかれましては、時下ます
ますご清栄のこととお喜び申し上げます。この度、平
成26年9月1日付けで医学部腫瘍内科学講座の主
任教授の任を拝命いたしました。また、これまでセン
ターの運営に多大なご尽力をされてこられました、石
2
平成26年度医師臨床研修マッチング者数
病院別
マッチング数
当 院
県内他病院
計
8
80
88
本学学生
本県出身 県外出身
1
3
31
13
32
16
ケミカルバイオロジー分野
・昇任 26.10.1 免疫学講座
講師→
准教授 高橋 実
・昇任 26.10.1 器官制御外科学講座
助教→
講師
八島 玲
・昇任 26.10.1 放射線災害医療学講座
助教→、
教授
長谷川 有史
放射線災害医療センター副部長兼務、 救急
科兼務、救命救急センター兼務、放射線災害
医療センター副部長兼務
・昇任 26.10.1 手術部
講師→
准教授 小原 伸樹
・兼務解除 26.10.1 救急医療学講座
講師
島田 二郎
医療安全管理部副部長兼務解除
・兼務 26.10.1 腫瘍内科学講座
教授
佐治 重衡
臨床腫瘍センター長兼務
・学内異動 26.10.1 臨床腫瘍センター
講師
金沢 賢也 呼吸器内科学講座→
(看護学部)
・退職 26.9.30 総合科学部門
(単位:人)
他大学学生
本県出身 県外出身
1
3
11
25
12
28
-病院経営課-
*日医 FAX ニュースより
文部科学省
平成 26 年 10 月 20 日
平成 27 年度医学部入学定員の各大学の
増員計画について
各大学から提出された平成 27 年度医学部入学定員
の増員計画をとりまとめましたので公表します。
【概要】
〇 平成 26 年度定員総数:9,069 人→平成 27 年度定員
総数計画):9,134 人
〇 前年度比増員数信十画):18 大学 65 人
(内訳)
教授
志賀 令明
(医学部等)
・採用 26.11.1 多能性幹細胞研究講座
国:5 大学 19 人、公立:2 大学 5 人、私:11 大学 41 人
〇 増員開始前の平成 19 年度比増員数計画):1,509 人
〇 詳細は別頁(P6)のとおりです。
※本資料は、各大学から提出された増員計画に記載さ
れた人数を集計したものであり、今後の予算編成や
設置審査によって変更が生じる可能性があります。
お問合せ先
文部科学省高等教育局医学教育課医師養成係
℡:03-5253-4111(代表)(内線 2509)、
03-6734-2509(直通)
教授
横内 裕二
・採用 26.11.1 先端がん免疫治療学講座
教授
河野 浩二
器官制御外科学講座兼務
・昇任 26.11.1 耳鼻咽喉科学講座
准教授 松塚 崇
講師→、耳鼻咽喉科・頭頸部外科副部長
・兼務解除 26.11.1 臓器再生外科学講座
教授
後藤 満一
小児外科部長兼務解除
・兼務 26.11.1 臓器再生外科学講座
*学内人事異動
異動事由 発令日 所属 職名 氏名 備考
(医学部等)
・退職 26.9.30 臨床腫瘍センター
准教授 石田 卓
・退職 26.9.30 (会)臨床医学部門
科長
織壁 里名
・採用 26.10.1 放射線医学県民健康管理センター
特命教授 田中 成省
国際連携・コミュニケーション部門広報推
進室長、広報コミュニケーション室員
・採用 26.10.1 医療-産業トランスレーショナル
リサーチセンター
准教授 星 裕孝
ケミカルバイオロジー分野
・採用 26.10.1 医療-産業トランスレーショナル
リサーチセンター
講師
比嘉 亜里砂
教授
鈴木 弘行
先端がん免疫治療学講座兼務
・兼務 26.11.1 臓器再生外科学講座
講師
伊勢 一哉
小児外科部長兼務
・兼務 26.11.1 人工透析センター
特命准教授 寺脇 博之
人工透析センター副部長兼務
3
*大学医師会共催の学術講演会案内
演者:岐阜大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉科学分野
教授
伊藤 八次 先生
~福島県生涯教育講座学術講演会~
頭頚部癌治療 Up to date 2014
日時:平成 26 年 12 月 4 日(木)18 時 30 分~
場所:郡山市 ホテルハマツ
特別講演:「頭蓋底悪性腫瘍に対する手術と長期成績」
座長:福島県立医科大学医学部 耳鼻咽喉科学講座
教授
大森 孝一 先生
講師:福島県立医科大学医学部 脳神経外科学講座
教授
齋藤
清 先生
*事務局保管資料
・平成 25 年度 血液事業の概要(図書)
・平成 26 年度 予防接種必携(図書)
・平成 25 年度版 日本医師会年次報告書(図書)
・平成 24 年度 郡山医師会地域保健医療活動(図書)
・強力な医師会による当事者自治のドイツ医療(図書)
*光が丘協議会だより
~第 10 回福島県性差医療セミナー~
日時:平成 26 年 12 月 7 日(日)10 時 30 分~
場所:福島市 福島県立医科大学内 8 号館
N301 会議室
~第 10 回福島県性差医療セミナー開催~
本年も、当協議会の後援で、「第 10 回福島県性差
医療セミナー」を以下のとおり開催することとなり
ましたので、多くの皆様のご参加をお待ちしており
ます。
・ 開催日時
平成 26 年 12 月7日(日)
10 時 25 分~16 時
・ 開催場所
福島県立医科大学
「看護学部棟 N301 講義室」
・ 参加費
無料
【第1部】 10 時 25 分~12 時
・ 講演
「もっと知ろう!漢方のこと~よりよく生きる
ための漢方の基礎知識と実際~」
鈴木 朋子(福島県立医科大学会津医療セン
ター漢方医学講座 准教授)
【第2部】 13 時~16 時
・ 福島県立医科大学附属病院
性差医療センター報告
・ 講演
「科学と地域を橋渡しするツール:福島におけ
る育児支援」
後藤 あや(福島県立医科大学
公衆衛生学講座 准教授)
「福島における支援者のストレス
~ジェンダーの違いも含めて考える~」
前田 正治(福島県立医科大学
災害こころの医学講座 教授)
「女性ホルモンをもっと知ろう」
天野 惠子(財団法人野中東皓会静風荘病院
特別顧問)
詳細は、右頁「光が丘協議会だより」をご覧下さい。
~The 5th Swiss-Japanese Spine Research
Symposium ~
日時:平成 26 年 12 月 8 日(月)18 時 00 分
場所:福島市 コラッセふくしま
特別講演
座 長:福島県立医科大学附属病院
院長兼副学長 紺野 愼一 先生
「Green tea EGCS: A new therapeutic approach to
intervertebral disk disease?」
ETH Zurich Institute for Biomechanics
Dr. Karin Wuertz
「Hanging by a thread: Textiles and Nano-Fibers
for Disc Repair」
ETH Zurich Institute for Biomechanics
Prof. Stephen Ferguson
~福島県生涯教育講座学術講演会~
めまいセミナー
日時:平成 26 年 12 月 18 日(木)18 時 15 分~
場所:福島市 ウェディングエルティ 2F「ハートンルーム」
特別演題Ⅰ:「めまいの新しい検査~CTP 蛋白と vHIT
(ビデオヘッドインパルステスト)~」
座長:福島県立医科大学医学部 耳鼻咽喉科学講座
講師
松井 隆道 先生
演者:埼玉医科大学 耳鼻咽喉科
教授
池園 哲郎 先生
特別演題Ⅱ:「めまいの診断と治療」
座長:福島県立医科大学医学部 耳鼻咽喉科学講座
教授
大森 孝一 先生
[問い合わせ先]
福島県立医科大学附属病院
TEL
024-547-1821
FAX
024-547-1988
E-MAIL [email protected]
-光が丘協議会―
4
病院経営課病院企画係
*編集後記
本年も 12 月にはいり、残り少なくなってまいりま
した。日増しに寒さが厳しくなってきている今日この
頃です。
今回の巻頭言は本学甲状腺内分泌学講座教授 鈴
木眞一先生にお願いいたしました。鈴木教授には現在、
福島県で行われている甲状腺健診の現状について詳
細に述べていただきました。長期にわたる甲状腺健診
においてスタッフの皆様のご苦労は大きなものとお
察し申し上げます。本健診は、福島県民、特にお子さ
んやお子さんをもつお父さん、お母さんたちが安心し
て福島で生活できることを示し続ける重要な健診だ
と思います。今後とも、甲状腺健診が順調に進んでい
くことを心からお祈りいたします。
本年 9 月 1 日 腫瘍内科学講座に佐治重衡先生が、
10 月 1 日 放射線災害医療学講座に長谷川有史先生
が教授として着任されました。佐治教授、長谷川教授
には、本学におきましてますますご活躍されることを
祈念いたします。
そろそろ福島市内にも初雪が舞うころです。どうぞ
体調をくずされませんように、健康管理を十分にして
よいお年をお迎えください。
大学医師会広報委員
小宮ひろみ
福島県立医科大学医師会
発 行 者 : 大平弘正
広報委員 : 大谷晃司・小宮ひろみ
事 務 局 : 飯高千代治
〒960-1295 福島市光が丘 1 番地
TEL:024-547-1111 内線 4200
TEL/FAX :024-548-1650
アドレス :[email protected]
HP:www.fmu.ac.jp/home/somu/
ishikai/ishikai-index.htm
福島県立医科大学光が丘協議会
www.hikarigaoka-k.jp/
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