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Kienbaum Consultants International
日系企業グループ ニュースレター
2015 年 06 月
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Kienbaum Consultants International
Japanese Corporate Business Newsletter 06_2015
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記事
「ヒューマンリソースが企業を変える」-日独 HR
スペシャリスト
鈴木悦司氏に聞く
「IDEE(イデー)」誌のインタビュー記事
こちらの記事に関するご質
「ドイツ流」、そして「日本流」
問は日系企業グループまで
お願いいたします。
ドイツと日本はよく似ていると言われる。優れたエンジニアリング技術、職人気質
のものづくり。光学機器や化学工業、自動車産業などの発達。真面目で勤勉、時間
や仕事に正確な働きぶり。ドイツに進出している日系企業も多く、キーンバウム本
社のあるデュッセルドルフの日本商工会議所はヨーロッパ最多の 527 社の会員が登
録されているほど。しかし一方で、日独のビジネススタイルの違いに驚かされるこ
とも多い。
在欧日系企業と在日ヨーロッパ企業をサポートする人材コンサルティング会社キー
ンバウム・ジャパン社の鈴木悦司社長はこう語る。
「マネジメントスタイルの違いでよく例に出されるのは、意思決定の過程ですね。
日本企業はコンセンサスができるまで議論して、全員の了解を得たところで最終的
に結論を出す。片やドイツは職務職責がかなり明確で、この範囲では自分が決定で
きます、ということが多い。結果的に、日本的な決め方のデメリットは時間がかか
るということです」
特に、グローバリゼーションの影響で、日本の経営トップまで議論に参加すること
が増え、日本とのやりとりにこれまで以上に時間を取られることも多いのだ。
いかにも日本的な慣習だが、メリットもある。それはいったんコンセンサスが出来
てしまえば、一つの決定に従ってすべての部署が機能すること。“決まれば速い”
のが日本流なのだ、ともいえる。ドイツ流のシステムでは、時に決定内容が関連部
署に行き届いていなかったり、隣の部署に別の意見があって遅滞する、という状況
も起きないとは限らない。
こうした“違い”は、もちろんどちらが良い悪いということではない。互いのビジ
ネス文化であり、その環境で働く時に、異なる文化を理解すること、ただ受け入れ
るのではなく、消化して自分なりの力に変えていく能力が求められるということだ
ろう。
鈴木氏自身、キーンバウム社に転じる以前は、日本企業の代表者として支社長を務
め、10 年以上にわたるドイツ、スウェーデン、スイス、オーストリアなどでのビ
ジネス経験を持つ。その経験からも、在欧の日系企業にドイツ人を探す時はなによ
り日本の文化にうまく適応出来る人間かどうかに気を配るという。
「適応性、順応性といった社会的能力の高さや、コミュニケーションの素質や才
能、異文化交流の対応、柔軟性などをきちんと備えている人かどうかを見ますね。
逆に日本で進出してきたドイツ企業に日本人を探す場合は、日本人としてきちんと
振る舞えるかどうかが前提にあり、その上、意思決定が高い人。説得力を発揮でき
るか、リーダーシップがあるか、などをチェックします」
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リスペクトと価値観の共有
ドイツの製造現場では、いま「カンバン方式」に IT を組み込んでさらに効率アップ
を狙うインダストリー4.0 の導入が注目されている。しかし人間と人間の関係で
は、IT すなわち効率アップという訳にはいかない。
日本型の意思決定のワークフローは多くの人数がたくさんの時間を費やして一つの
成果を得る。「人数×時間÷成果」という公式に当てはめれば確かに効率は悪い
が、時間をかけることによって生まれるメリットもあると鈴木氏は評価する。
「例えば縦軸に成果、横軸に労働状況、時間をおいて考えてみる。ドイツ人は効率
を求めるので、2 の時間を使って 8 の成果を期待できれば一番効率がよいと考え
る。ところが日本人は、限りなく 10 の成果を求めるために、時間も 10 使ってしま
う。こうした考え方の違いがドイツと日本にはあると感じています」
限りなく 10 を求めるとは、たとえば、電子部品の樹脂基板に付いたバリまで一つ
ひとつ削るというような仕事の仕方だ。
日独のビジネススタイルの違いは労働観の違いでもある。かといって、日本流とド
イツ流のダブルスタンダードを使い分けることは解決にはならない。同じ企業の同
士であれば、一つの価値観を共有しなければことは解決しない、と鈴木氏。
「『トヨタウェイ』をご存じと思いますが、トヨタという企業がどのような企業で
ありたいかという理念や社員が共有すべき価値観、その実践の仕方を示したもので
すよね。それを翻訳して、全世界のトヨタで配布しています。だからトヨタの社員
は日本人でも、ロシア人でも、ドイツ人でも、みな同じトヨタカラーを持っていま
す」
日本の社会なり会社なりは暗黙知を共通言語として持っていると、よくいわれる。
だがそれも日本本社だけの話で、実は海外支社からはブラックボックスになってい
るといったことがありはしないか。『トヨタウェイ』のようにその暗黙知を、グロ
ーバルに形式知化する過程がひつようだと鈴木氏は指摘する。
キーンバウムグループでも、他の自動車会社のプロジェクトとして、各国のキーパ
ーソンを集めて議論するワークショップを開き、その成果としてグループ全体のコ
アコンペタンスを得た。それを元に全世界のマネージャーを評価し、それを出発点
としてキャリアプランを設計、トレーニングプログラムを開発する。異なる文化、
価値観を持った人々が一つの価値観を共有する、まさにダイバーシティマネージメ
ントの実現がインターナショナルなビジネスの現場で急がれている。
「実際に起きているグローバリゼーションの中で本当にインタラクティブなコミュ
ニケーションを必要とする経営判断をしなくてはいけないという、企業側の要求が
高まってきている。そういう段階なのではないでしょうか」
知を結集する組織づくりへ
日本とドイツ。ビジネス社会においての“違い”のもう一つが、スペシャリストの
存在だ。
多くのドイツ人が職務にアイデンティティを持っていると語る鈴木氏。人事マネー
ジャー雇用の際の経験を披露してくれた。
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「10 人ほどの候補者がいて、その人たちの大学での専攻、会社での職務を整理し
てみたところ、ドイツ人候補者は 8 割方が大学で人事管理や組織論を専攻していま
した。職歴はもちろん入社当初から人事。彼らは人事のスペシャリストとして HR
(ヒューマン・リソース)の各分野で経験とノウハウを蓄積し、最終的には人事担
当役員を目標に頑張るのです。日本では、そうした人はほとんどいませんでした。
専攻は近いところでも社会学。入社後の最初のポストも大半が人事以外の部署でし
た。スペシャリストとゼネラリスト、その違いはあると思いましたね」
日本で言えば小中学生の時代に、将来の進路を決めて学校を選択するようなドイツ
の教育制度の違いもあるだろう。また、とことん極めようとするドイツ人の性分
も、スペシャリストが輩出される背景にあるようだ。鈴木氏によれば、企業も専門
性を重視し、採用に当たっては最初からプロフェッショナルを期待しているとい
う。日本とドイツの違いは、こうした人材面にも及んでいる。
今、日本がドイツから学ぶとすれば、ホワイトカラーが効率よく仕事が出来る仕組
みだという鈴木氏だが、学ぶことより、日本の企業はもっと社会的能力に自信を持
つべきだと助言する。
「生産技術で有名な日本ですが、そのベースとなる価値観や文化も十分に誇れるも
のです。相手をリスペクトするという日本的価値観はもっと伝導して良い。日本企
業は、まず自分を過小評価するマインドセットから方向を修正して欲しいですね」
自らの企業文化を形式知化し、内外へ発信していくこと。異なる言語、文化の背景
をもつスタッフを同士として組み入れていくこと。そのサポートを、キーンバウム
社がしてくれる。
(プロフィール)
Etsuji Suzuki 鈴木 悦司
キーンバウムジャパン株式会社 代表取締役社長
1979 年慶応大学卒業後 TDK 株式会社に入社。1983 年ドイツドイツ市販マーケティングのためドイツに赴
任。その後 TDK スウェーデン設立に初代社長として携わり、TDK エレクトロニックスヨーロッパ社長を
務める。2001 年にキーンバウムで日系企業ビジネスグループをを立ち上げ、2006 年よりキーンバウムジ
ャパン株式会社代表取締役。
『IDEE(イデー)』はドイツの歴史、文化、観光、
政治、経済の「今」を日本語で紹介する A4 版オール
カラーの雑誌です。
詳 し く は こ ち ら http://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-019784877384517 をご覧ください。
【エクセレント ドイツ イデー Vol.7 媒体情報】
企画制作: ドイツ連邦共和国大使館
&株式会社シルバーストーン JP
仕 様: A4 版 / オールカラー
価 格: 1,500 円(税別)
発 売: 紀伊国屋書店
発 売 日: 2015 年 1 月 9 日
 出所: Kienbaum Japan
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キーンバウムのチェンジマネジメントに関する調査
-激動の時代における成功への鍵とは何か
多くの企業では来るべき変革への準備が不足している
 調査対象企業のうち、6 つに 1 つの企業のみがクライアントの需要の変
化に対し迅速に対応できる
 「競争」こそが「素早い」企業へ転換する鍵となる
 「素早い」企業は過去の成功例に執着しない
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問は日系企業グループまで
お願いいたします。
市場の変化に対応できず失敗する企業は多い。キーンバウム・コンサルタンツの最
新の調査が明らかにしたところによれば、63%もの企業が顧客の新しい需要に迅速
に対応すべきと考えているにもかかわらず、実際に迅速な対応が可能な企業はわず
かに 15%のみであった。
「敏捷さ、素早さ―すなわち、組織における変化への対応の早さは、特に競争の激
しい市場においてめまぐるしく変化する消費者の嗜好や行動との関わりを密とする
企業にとって、生き残りのために必須となる能力である。そこでは、変化をいかに
早く認識し、即時的かつ柔軟に対処できるかが、特に重要となる。しかし、特にこ
のような業界においては、現実と需要の大きなギャップが存在する。」キーンバウ
ムのコンサルタントで当調査を担当した Jens Bergstein はこのようにコメントする。
この最新のチェンジマネジメント調査は、ドイツ語圏の 200 以上のトップマネジャ
ー、管理職およびプロジェクトリーダーを対象に、各企業の改革における経験、成
功例などを確認し分析したものである。「不連続、不確実、激動という言葉で表現
される今日の市場構成から見ると、企業は大きな挑戦に直面している。つまり、機
敏さが要求されている、ということである。素早く対応できる敏捷性こそが、変革
を成功に導き、また変革に対し積極的に影響を及ぼすことができるよう、企業が備
えていかなければならない能力である。」当調査の共著者である Achim Mollbach は
こう述べる。
トップマネジャーが妨げに
前述のような敏捷性を要する改革プロジェクトの多くは、企業のトップが誤った判
断をするために失敗に終わる。トップマネジャーがチェンジマネジメントを成功に
導くための課題を十分にこなさない、あるいはトップマネジャーにより企業の「素
早い」組織への変革が妨げられている、と言うケースが多い。
企業が十分な敏捷性を備えられないもうひとつの理由は、多くの企業は過去の成功
やルーチンに頼りすぎている、ということにある。キーンバウムの当調査は、特に
「素早く」ない企業における「現状」と「あるべき姿」とのギャップを浮き彫りに
した。更に、現在もなお、多くの企業では「チェンジマネジメント」を一時的なプ
ロジェクトと理解しているが、チェンジマネジメントは企業運営の核となる要素の
ひとつとして常に課題としていかなければならないものである。「今日、改革はプ
ロジェクトのように時期を決めて実行、完了するものと捉えてはならない。今日で
は、改革は企業および組織における長期プロセスとなったからである。ここにおい
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て、企業の敏捷性、ならびに変化に対し常に迅速かつ柔軟に対応し、更には市場へ
意識的にアプローチできる能力が非常に重要な役割を担う。」キーンバウムのエキ
スパートである Jens Bergstein はこのように述べる。
競争の激しい市場ほど変革への要求は強い
企業の変革の需要に最も大きな影響を与える外的要素は、市場における競争力であ
る。59%の企業が、企業間の競争が常に変革を続ける原動力となると回答してい
る。これに対し、技術的要素が改革に影響を及ぼすと回答したのは全回答の 4 分の
1 に過ぎない。
「素早い」企業はソーシャルメディアを内部でも活用
調査対象企業の多くでは市場の需要や課題において十分に素早い対応ができないこ
とが明らかになったが、その中でもやや柔軟に対応できる企業とほとんど敏捷性の
ない企業に区別される。柔軟な企業は内部のコミュニケーション方法にも革新性が
見られる。例えば企業内で独自のソーシャルメディアネットワークを構築するなど
である。これにより、長期的になりがちな社内の情報伝達および決定構造に代わ
り、新たに迅速かつフレキシブルなコミュニケーションネットワークが確立する。
「素早い」企業のもう一点の能力は、トップマネジメントが重要な決定を迅速に行
い、決議の延期ややり直し、官僚的プロセスにより決定を遅らせたりしないことに
ある。企業における敏捷性の促進は、ポジションレベルを超えての意識浸透によ
り、また、変化を市場や企業環境に迅速かつ柔軟に取り込み、十分に反応できるよ
うな「風通しの良い」システムおよびプロセスによって、可能となる。
「更に、企業の敏捷性を当事者の視野に立って促進できるような信頼構造という要
素を過小評価してはならない。このような信頼構造があれば、従業員は顧客と直接
対峙する人物として、本部の決定を待ったり、企画・コントロール・報告といった
大量の官僚的プロセスにより麻痺されることなく、個人的な解決方法を積極的かつ
迅速に顧客に提案することに躊躇をしなくなる。」と、キーンバウム社の Achim
Mollbach は指摘する。
 出所: Kienbaum Communications GmbH
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サーベイ
DAX 企業の監査役員の給与は大幅上昇
キーンバウムのサーベイ:DAX および MDAX 企業の監査役の給与
 DAX 監査役の給与は昨年比でほぼ 10%アップ
 変動(成功)報酬制は減少傾向に
 2014 年の給与トップは VW の Piech 氏
キーンバウムの給与サーベイ
「DAX および MDAX の監査役員
2015 年」は、2500EUR(税別)
でお求めいただけます。日系企
業グループまでお問い合わせく
ださい。
株主は監査役に昨年より明らかに高い給与を保証している。DAX では監査役員
の給与は平均 9.5%、MDAX では 5.8%上昇したことが、最新のキーンバウムコン
サルタンツのサーベイにより明らかになった。DAX の監査役会会長の給与は平
均 376,000EUR であり、これは MDAX の監査役会会長の 198,000EUR のほぼ倍額に
相当する。監査役会副会長については、2014 年は DAX で平均 241,000EUR、MDAX
で 124,000EUR であった。
他の監査役員の給与は上記より大幅に低い。DAX 企業では 150,000EUR、MDAX で
は 84,000EUR である。
変動(成功)報酬制は減少傾向に
監査役の給与構造は、数年前と比べて根本的に変化した。数年前までは、大部
分の DAX および MDAX 企業では、監査役員の給与を一部成功報酬制としていた
が、ここ数年ではそれが減少傾向にある。今日、変動的な報酬は比率にすると
DAX で 17%、MDAX で 15%である。2007 年の変動報酬が DAX で全給与の 42%、
MDAX で 37%を占めていたことと比較すると、今日では大きく減少しているこ
とがわかる。更に、変動報酬自体を廃止している企業が増えており、 DAX、
MDAX を含め、今日、変動報酬を支払っている企業は 7 つに 1 つのみである。
「ドイツ・コーポレート・ガバナンス・コード(German Corporate Governance
Code – 政府委員会による指針)による、2 年前の変動報酬についての改正を受
け、 企業は次々と給与体系を改正している。これにより、今日の給与は、成功
報酬の代わりに、妥当な額の固定給と監査委員会における活動に対する報酬か
ら成り立つ。この規定により、監査委員会で役員がより多く働くことにより、
より多くの責任を担うことを避け、役員の独立性を保障することができる。」
キーンバウムの給与部門のコンサルティングを専門とする Karl-Friedrich Raible は
このようにコメントする。
DAX 監査役会長の給与トップはフェルディナント・ピエヒ
フォルクスワーゲンの監査役会の前会長である Ferdinand Piech が 2014 年の DAX
監査役員の給与トップとなった。総額で 1,475,000EUR である。次いでドイツ銀
行の監査役会長の Paul Achleitner の 815,548EUR となる。この額は成功報酬分を含
む(同氏の給与体系は長年成功報酬が含まれている)。第 3 位はティッセンク
ルップの Gerhard Cromme の 616,000EUR である。MDAX を見ると、トップはレー
ン・クリニクムの Eugen Munch で、額は 488,000EUR、次いでタランクスの Wolf-
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Dieter Baumgartl の 472,000EUR である。
「監査役員においては、規定が増え、責務規定が厳格化し、より多くの業務を
要求されてきていることから、報酬システムの確立が非常に複雑である。ここ
では 4 点の要素を同時に配慮する必要がある。すなわち、コンプライアンス、
規約準拠、インセンティブ、市場標準、の 4 点である。」と、キーンバウムの
コンサルタントである Raible は述べる。
 出所: Kienbaum Communications GmbH
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