ギリシャレンタル会社

米国経済のグローバライゼーションと輸出優遇税制の展開1
――米国議会上下両院合同租税委員会報告書を中心として――
はじめに
1
輸出優遇税制の展開と紛争の経緯
2
米国・EU 間の国際租税の原則の相違
3
米国の国際経済的側面と FSC の役割
4
米国国際課税改革の方向性
結びにかえて
はじめに
2002 年 1 月,世界貿易機関(WTO: World Trade Organization)は,米国の輸出優遇税制
が,WTO で禁止された輸出補助金に当たるとの最終判断を下した。ヨーロッパ連合(EU:
European Union)は,米国の同制度によって受ける被害を計算し,WTO 史上空前の規模
である総額 40 億 4300 万ドル相当の対米報復関税の発動を米国に警告した(日本経済新聞
社[2002])。しかしながら,米国は設定された期間内に WTO による勧告を履行することが
できず,2004 年 3 月 1 日,実際に報復関税が発動され,年間 40 億ドル相当の米国の農・
工業品に対して関税が 5%上乗せされる事態を招いた2。今後,毎月 1%ずつ税率を高め,
米国が制度変更に応じなければ 17%まで引き上げられることが予定されている(日本経
済新聞社[2004c])
。
今回,問題となったのは,外国貿易法人(FSC:Foreign Sales Corporation)とそれを改
正した領土外所得控除制度(ETI: Extraterritorial Income Exclusion)である。両制度は,合
衆国法人が国外で獲得した輸出所得に対する米国の課税を一定の条件の下で控除,また
は繰り延べる二重課税防止制度を利用した輸出優遇税制である。国際課税の原則として
全世界所得課税主義(Worldwide System:所得の発生場所の如何にかかわらず,その市
民および合衆国で設立された法人に対して米国は課税管轄権をもつ)をとる米国を本拠
とするアメリカ合衆国法人は,領土内所得課税主義(国外で発生した所得を原則免除す
る)をとる EU 諸国の企業に対し輸出競争上不利になるとして,米国はこれらの輸出優
1
立命館大学経営学部教授中村雅秀氏から,本稿の基礎的資料である JCT[2003a]と JCT[2003b]
を御教授いただき,同氏の手による資料の翻訳も参考にさせていただいた。ここに記し,感謝の
念を表したい。
2
2004 年 7 月に,米下院に続き,米上院が輸出優遇税制を撤廃する法案を可決した。しかしな
がら上下両院の法案には大きな隔たりがあり,一本化作業は難航する可能性が高いと報じられて
遇税制の存在を正当化してきた。他方で,EU 諸国は,同制度がガット(GATT: General
Agreement on Trade and Tariff)
・WTO のルールに違反する輸出補助金であると主張し,米
国の論理を批判してきた。
WTO での決定を受け,米国議会は領土外所得控除法案の撤廃とそれに代わる輸出優遇
措置を検討している。本論では,上院の財政委員会の公聴会に先立ち上下両院合同租税
委員会が準備した報告書を主にとりあげる3。同報告書は,FSC 等の輸出優遇税制が米国
の製造業部門の輸出に果たしてきた経済的効果を分析し,今後の米国国際課税のあり方
を議論する叩き台を提供している。本論では同報告書に依りながら,米国経済のグロー
バライゼーションと輸出優遇税制の展開について次の観点から接近してみたい。第 1 に,
米国輸出優遇税制の歴史的展開と,同制度をめぐって GATT・WTO の場で争われた米国
と欧州の間の紛争を概観することである。第 2 に,米国が輸出優遇税制の必要性の根拠
とした米国と欧州における国際課税の原則の差異を整理し,輸出優遇税制の基本的な枠
組みを確認する。第 3 に,米国経済のグローバライゼーションの進展と,米国の輸出に
果たす輸出優遇税制の経済的効果を分析する。第4に,以上の米国国際課税の原則と輸
いる。日本経済新聞社[2004d]
3
報告書の構成は以下の通りである。
Joint Committee on Taxation [2003a]
第1章
合衆国国際課税のシステムの背景
第2章
国際貿易と投資に関する背景とデータ
第3章
テーマ別問題(FSC・領土外所得控除制度をめぐる紛争等)
Joint Committee on Taxation [2003b]
第1章
全世界所得課税主義と領土内所得課税主義
第2章
合衆国国際課税制度の概要
第3章
グローバル経済下の合衆国の経済問題
第4章
国際競争力政策と租税の簡素化
第5章
配当の本国還流に対する一時的配当償還減税
第6章
国外所得の控除
なお本稿では,米国国際課税制度のなかでもとりわけ FSC・ETI などの「狭義の」輸出優遇税
制を分析することを課題としている。
したがって FSC・ETI の分析に重点においている JCT[2003a]
を主にここでは取り上げる。外国税額控除や課税繰り延べ制度を用いた輸出インセンティブの役
割や,米国国際課税制度全体の設計の見直しに関する議論については JCT [2003b]が概括的に取
り扱っているが,その本格的な検討は今後の課題とする。
出優遇税制の経済的効果の分析を踏まえ,今後の米国国際課税のあり方や輸出優遇税制
の方向性に関して論点の整理を行う。
1
輸出優遇税制の展開と紛争の経緯
1962 年のケネディ税制改革の以前において,アメリカ合衆国法人はタックス・ヘイブ
ンに設立した外国基地会社(Foreign Base Company)を通じて輸出を行っていた。外国基
地会社を利用した節税のスキームは,米国の親会社から製品を仕入れ,それらを再販売
して得た所得を米国の課税管轄権外でかつ租税上の減免税を行うタックス・ヘイブンに
所在する当該会社に分離し,外国税額控除および課税の繰延べを行うことにあった4。
図表1 米国輸出企業優遇税制と GATT・WTO での紛争の歴史的展開
米国国際税制,輸出企業優遇税制
GATT・WTO での紛争
1918 外国税額控除の新設
(一般制度としては世界初)
1939 中国貿易法人
1942 西半球貿易法人
ケネディ税制改革:グロス・アップ原
1962 則
サブパート F 条項導入
1971 DISC 制度設立
1972
EC による DISC 制度の GATT への
提訴
1982 DISC 制度廃止
1984 FSC,IC‑DISCs 制度設立
レーガン税制改革:法人税率の引き下
1986 げ
1998
2000 域外所得排除法成立
2002
4
EU, FSC 制度を WTO に提訴
上級委員会にて FSC の WTO 協定違反が決定
上級委員会にて ETI の WTO 協定違反が決定
外国法人は,その国外活動について合衆国での課税の対象とはならない別個の納税者として扱
われている。Doernberg [1997], p. 249,邦訳 185 ページ。
(出所)中村[1995], 23‑25, 表 1‑4;Desai and Hines [2001], p. 56, Table 2;
JCT[2003a]; 経済産業省通商政策局編[2003]等の各種資料から筆者が作成。
タックス・ヘイブンを通じた外国税額控除および繰延べの恩典を享受する際の条件の
厳密化を目的として,1962 年にグロス・アップ原則およびサブパート F 条項が導入され
た5。これに伴い新たな輸出インセンティブを与える法制度の整備が,合衆国法人によっ
て企図されることになった。
こうして 1971 年に,内国輸出法人(DISC:Domestic International Sales Corporations)
が立法化された。DISC は米国に拠点をもつ国内企業であるが,所得に対する法人税を免
除され,株主に対して配当されたとみなされない所得の一部について課税を繰り延べる
ことができた。
しかし,DISC 制度は実施後まもなく,ヨーロッパ共同体(EC: European Community)
加盟国から GATT ルールで禁止されている輸出補助金に当たるとして訴えられることに
なる6。EC は,DISC がアメリカ合衆国内で得られた輸出所得に対して税制上の利益を与
える制度であり,GATT ルールで禁止されている輸出補助金にあたると主張した。それ
に対し米国は,同制度による輸出所得に対する税制上の優遇措置は,単に EC 諸国が採
用している国際課税の原則——領土内所得課税主義(Territorial System)——が国外源泉
所得に対して元来備えている優遇性と同等のものであり,ガットの基準を満たしている
というものであった7。GATT は,1981 年,アメリカの主張を退け, EC の訴えを認める
勧告を採択した8。
5
1962 年以前において,合衆国法人は外国子会社から実際に受け取った配当に対してのみ課税さ
れた。しかしながら 1962 年のケネディ税制改革によってグロス・アップ原則が導入されると,
外国税引き後所得の一定比率と外国税額の按分比分税額控除の合計が合衆国法人である親会社
に配当されたものとみなされ,米国での課税繰延べ額が圧縮されるようになった。またサブパー
ト F 条項は,この規定に定めるサブパート F 所得について,本国送金と否とにかかわらず所得発
生時点で合衆国課税の対象とすることを定めている。サブパート F 条項は,外国法人のうち議決
権株式の 50%超をそれぞれ 10%以上の持分を有するアメリカ合衆国の市民,居住者,内国法人
によって所有される外国法人を「支配外国法人(CFC: Controlled Foreign Affiliates)
」と規定し,
その法人の特定所得すなわち「外国個人持株会社所得(Foreign Personal Holding Company
Income)」,
「外国基地会社販売所得(Foreign Base Company Sales Income)」,
「外国基地サー
ビス所得(Foreign Base Company Services Income)
」にこの規定の適用を求めた。詳しくは中村
[1995],75-82 ページ;Doernberg [1997], p.332,邦訳 246 ページ。
6
DISC に関する GATT での紛争の経緯については,Jackson, H. John [1978];Hudec, Robert E.
(1988);柳(2000)
;JCT[2003a], pp. 78-79 を参照されたい。
7
米国と EU の国際課税上の原則については,第 2 章でより詳しくとりあげる。
8
後に米国をして FSC が GATT・WTO ルールに照らして合法であると主張する論拠としたのが,
GATT が DISC の紛争に際して示した次の 3 つの基準であった。第 1 に,GATT 加盟国は,領域
1984 年,米国は DISC に代わるものとして,外国貿易法人(FSC:Foreign Sales
Corporation)を立法化した。FSC とは,海外に拠点をおき一定比率以上の割合で米国産
品を含む製品の輸出関連活動を行う FSC に対して,獲得した輸出関連所得の一部を控除
する制度である9。さらに FSC の所得に対しては移転価格ルールが適用されることにな
った10。
1998 年,EU は FSC が WTO 協定で禁止された輸出補助金に当たると WTO に訴えた。
1999 年,この訴えを審議した WTO のパネル(小委員会)は EU の主張を認める勧告を
行った。米国はパネルの見解を不服とし上級委員会に控訴したが,2000 年,上級委員会
はパネルの見解を支持する結論を出した。
この結果を踏まえ,米国は 2000 年 11 月に,FSC 廃止法案並びに改正法案(領土外所
得控除法。ETI:Extraterritorial Income Exclusion Act of 2000)を成立させた11。領土外所
得控除法の下では,合衆国法人の外国貿易総受取に帰属する納税者の所得は「領土外所
得(Extraterritorial Income)」として総所得から控除することが認められる12。
EU は ETI の問題点を次のように指摘し,米国の輸出優遇税制に関して,三度,GATT・
WTO の場に訴えを行った。第 1 に,ETI は,その適用に当たり国外での販売を義務付け
外での経済活動に帰属する輸出所得に対して課税することを求められない。第 2 に,貿易を行う
当事者の間では,独立企業間価格を用いて取引が行わなければならない。第 3 に,GATT は国外
源泉所得に対する二重課税を回避する手段を禁止しない。米国は,FSC はこれらの基準を満たし
ており,その特徴は EU 諸国の二重課税防止制度に近いものであると主張した。JCT [2003a], p. 79.
9
FSC によって税制上の利益を享受するには,いくつかの条件を満たさなければならない。第 1
に,輸出される財はその 50%以上が非米国製であってはならず,また最終的に米国内で使用され
るものであってはならない。第 2 に,所得控除の対象となる貿易財は有体資産でなければならな
い。したがって,特許,著作権,商標等の無体資産は FSC 制度の適用を受けない。第 3 に,石
油やガスおよびその派生製品など特定の品目も FSC 制度の適用を受けない。Desai and Hines
[2001], p. 47.
10
米国は FSC 制度の導入とそれに移転価格ルールを適用することによって,
「これらの特徴が示
すものは,FSC 制度が領土内所得課税主義における免税手段とますます似通ったものとなり,
FSC は 1981 年に GATT が判断を下した際に示した基準に完全に合致するものとなった」との認
識を示した。JCT[2003a],p. 79。しかしながら,それは移転価格ルールの適用と言っても,DISC
に対する勧告の際に盛り込まれた「独立企業間価格」比準法の使用が義務付けられたものではな
かった。
11
WTO における ETI 法をめぐる米国と EU 間の紛争の経緯については,とくにことわりのない
限り,経済産業省通商政策局編[2003],24 ページ; JCT 2003a],pp. 78-85 を参照した。
12
この所得は適格外国貿易所得(qualifying foreign trade income)に応じて所得控除が認められる。
適格外国貿易所得とは,所得控除がなされる場合,(1)納税者が取引から得る外国貿易総受取収
益の 1.2%,(2)納税者が取引から得る「外国貿易所得(foreign trade income)」の 15%, (3)納税者
が取引から得る「外国販売およびリース所得(foreign sale and leasing income)」の 30%,のいずれ
か最も大きい額によって課税所得が圧縮されたときの総所得額である。JCT [2003a], p. 80.
ていることから輸出補助金に該当する。第 2 に,同制度の適用を受ける商品・サービス
は,その価額の 50%以上,米国産コンテントを使用する義務があり,したがって当該制
度は国内産品優先補助金に該当する。第 3 に,ETI 法は,経過措置として 2000 年 11 月
以降も当分の間 FSC を継続できるとしており,これは 2000 年 11 月 1 日までに FSC を廃
止するという WTO の決定に違反すると主張した。
これに対し米国は,ETI を WTO 協定に整合的であると主張し,EU に反論した。その
理由は主に次の2つである。第1に,同制度の適用を受ける条件として,当該商品・サ
ービス(適格外国貿易資産:qualifying foreign trade property)が米国内で生産されること
を要件としないため,同制度は輸出補助金に該当しない13。第2に,合衆国歳入法典を
改正し,一定の条件の下で生産された商品・サービスを域外で販売・リースすることに
よって得られた所得に対する課税を歳入法典から除外することにしたので,GATT の補
助金協定に定められている補助金に該当しないと主張した。
2001 年 8 月,判定パネルは,EU の主張を基本的に認め,ETI は WTO の補助金協定,
農業協定上禁止されている輸出補助金に該当し,さらにローカルコンテントに対する要
求はガット第 3 条に抵触する内国民待遇違反であると判断した。しかし,同年 10 月,米
国は,ETI の適用対象となる領土外所得が輸出に関連する所得に限定されないことから,
ETI は輸出補助金に当たらないと反論,上級委員会に上訴した。2002 年1月,上級委員
会はパネルの判断を支持し,ETI を WTO 協定違反とする最終判断を下した。
DISC,FSC,ETI と一連の輸出優遇税制に対する米国の立場は次の通りである。第 1
に,これらは輸出補助金ではなく,米国の二重課税防止制度である。第 2 に,全世界所
得課税主義を採用する国の企業は,領土内所得課税主義を採用する国の企業に対して輸
出競争上不利になる。輸出優遇税制はその不利を相殺するために必要な制度である。第
3 に,輸出優遇税制のみが GATT・WTO で問題として取り上げられるのに対して,輸出
インセンティブをもつ領土内所得課税主義が問題視されないのは,加盟国間の平等な待
遇を保証する GATT・WTO の原則に反する差別的な取り扱いである。
こうした立場を一貫して主張しながらも,WTO での決定を受けた EU の報復関税の発
動を避けるべく,米国は ETI 法案の撤廃とそれに代わる輸出優遇税制のあり方を検討し
13
(1)米国外で製造された諸品目(コンポーネント等)と,(2)米国外での直接労働コストとの合計
が,非課税外国貿易資産の公正な市場価格の 50%未満でなければならないという規定を指して
いる。例えば(1)と(2)のコストが 200$で,さらにそこに外国に帰するブランド料や資本コストが
加わることによって,当該資産の市場価格が 450$となった場合,非課税外国貿易資産の要件を
満たすことになる。つまり(1)と(2)のコストが当該資産の市場価格の 50%未満であれば,たとえ
その製品の価値が米国外で 100%創り出されたものであったとしても適格外国貿易資産として認
められる。WTO [2001], p. A-76, A-95, A-96。
てきた。その基本的資料となったのが上下両院合同租税委員会による議会報告書である。
その内容を次章以下でより詳しく検討してみよう。
米国と EU 間の国際租税の原則の相違14
2
2−1
全世界所得課税主義と領土内所得課税主義
まず米国と EU 間の国際課税の原則の違いについて,国外源泉所得と国際課税の原則
との関係,換言すれば輸出関連所得と国際課税の原則との関係(とくにアメリカ合衆国
が,合衆国源泉所得から国外源泉所得に再配置された輸出関連所得を国際課税上どのよ
うに取り扱うか)から確認しておこう。既に述べたように米国が国際課税上の原則とし
て全世界所得課税主義をとっているのに対し,EU 諸国は領土内所得課税主義をとってい
る。
全世界所得課税主義の下で,合衆国法人および個人は所得の源泉が米国であろうと外
国であろうとかかわりなく全世界で発生した所得に対して課税される。したがって合衆
国法人の進出先国における源泉地国課税と全世界所得課税主義とは課税権をめぐって競
合する関係にある。そのため全世界所得課税主義をとる場合,自国の法人や個人に対す
る二重課税を回避するため,国外源泉所得に対する外国税額控除が必要となる。
図表 2 全世界所得課税主義と領土内所得
課税主義との競合
投資場所
投資家の居住地
米国内
米国外(領土内所得課税主義)
米国内
米国税率での所得課税 米国税率での所得課税
(全世界所得課税主義)
外国税率での所得課税
外国
米国税率での所得課税 外国税率での所得課税
(出所)JCT[2003b], p. 19, Chart 1 を参考に,筆者が作成。
合衆国法人は,輸出関連所得など合衆国源泉所得を国外源泉所得に配分し,外国税額
控除を限度枠まで用いることによって,輸出に対するインセンティブを享受することが
可能である15。この時,外国税額控除制度は,二重課税防止という本来の役割を越えて,
14
以下の叙述はとくにことわりのない限り,JCT[2003b], pp. 2-15 を参照にした。
15
合衆国は外国税額控除をその領土外において発生した所得全てに対して認めているわけではな
く,その適用に制限を設けている。その意図は,外国税額控除が行われることによって,合衆国
源泉所得に対する合衆国所得税が減少するのを防止するためである。
輸出補助金の一種として機能することになる。
EU 諸国等が採用する領土内所得課税主義の場合,国外源泉所得は課税の対象とされず,
原則として免税となる。したがって全世界所得課税主義の場合と異なり,外国税額控除
制度や米国のような複雑な課税繰り延べ制度も必要としない。他方で領土内所得課税主
義を採用する諸国は,タックス・ヘイブンに移された受動的所得等に対して原則上の例
外を設け,米国の反課税繰り延べ制度と同様の制度を導入している。領土内所得課税主
義をとる場合,もし国外源泉所得を原則通り全額免除すれば,居住者は投資や事業活動
を,税率の低い国に移し,領土内所得課税主義をとる国の課税管轄権が侵害される恐れ
があるからである。
次に国外源泉所得・輸出と国際課税の原則との関係から,国際投資とそれとの関係に
視点を移してみよう。全世界所得課税主義によれば,居住者は海外に投資しようと国内
にそれをとどめようと投資の利益に対して同率の税金を支払うため,居住者は投資地の
選択に対して税制上の影響を受けない。この時,当該税制は資本輸出中立性基準を満た
具体的には,外国税額控除の合計額は,合衆国所得税に占める外国税額控除対象税の割合が全
世界課税所得に占める国外源泉所得の割合を限度とするよう定められている。
X(=課税年度に外国税額控除の対象となる外国所得税額)/合衆国所得税
=国外源泉所得/全世界課税所得
ただし限度額のために当期に税額控除を行い得ない外国税額控除限度額を超過した税額分は,
二課税年度繰戻し,五課税年度繰越し得る。さらに,税率の異なる国からの国外源泉所得を合算
し,平準化する「一括限度額方式」(worldwide averaging)を用いることによって,「国別」で算
定された外国税額控除の限度枠を越えて,当期に税額控除を行い,国外源泉所得に対する合衆国
の実効税率を下げることも可能である。
前述のとおり,本論では合衆国国際課税制度の輸出インセンティブ全体の中で,輸出優遇税制
を中心に取り上げるため,外国税額控除を用いた輸出インセンティブについてこれ以上言及しな
い。外国税額控除を用いたスキームとそれに対する制限について詳しくは,Doernberg [1997],
pp171‑175,邦訳 129‑133 ページ;Desai and Hines [2001], pp. 48-53.を参照されたい。
外国税額控除のみならず課税繰り延べ制度についても,外国企業の受動的所得に対して,各種
の複雑な反課税繰り延べ制度が外国税額控除の適用の例外として存在している。受動的所得とは,
例えば配当,利子,レンタル料,特許使用料のことを指す。JCT [2003b], p. 12.
していると言う(資本輸出を行う国において全ての投資者を税制上平等に扱う)。したが
って外国税額控除枠は,「純粋な」全世界所得課税主義からの逸脱であり,全世界所得課
税主義が本来備えている資本輸出中立性の経済効率を損なっていると言える。
これに対して領土内所得課税主義と国際投資との関係は,第1に,投資家の居住地が
国内であろうと国外であろうと,自国内で実施された投資の収益に対して課税上の取り
扱いを平等に行う資本輸入中立性にある(資本輸入を行っている国において全ての投資
者を税制上平等に扱う)。例えば,所得源泉地国が低い実効税率を供与している場合,領
土内所得課税主義に居住している納税者は,所得源泉地国の低い税率を享受することが
できる。他方で居住地国が全世界所得課税主義を採用している場合,居住地国の税率が
適用されるため,所得源泉地国の低い税率を享受することができない。つまり資本輸出
中立性(全世界所得課税主義)と資本輸入中立性(領土内所得課税主義)を同時に完全
に両立させるような国際課税上の原則は,国家間の実効税率を等しくしない限りとれな
いことになる16。
領土内所得課税主義のメリットは,第2に,制度を運用する上での単純性があげられ
る。全世界所得課税主義における二重課税防止制度である外国税額控除と反課税繰り延
べ制度は,国際課税を複雑化させる主要因である。他方で「純粋な」領土内所得課税主
義をとる場合,そのような制度を設ける必要がない。
しかしながら,前述のように現実には「純粋な」領土内所得課税主義をそのまま採用
している国は存在せず,部分的あれ全世界所得課税主義の要素が組み込まれている。制
度設計と運用において単純な特徴をもつ領土内所得課税主義も,いったん反課税繰り延
べ制度等が導入されれば,制度の複雑化は免れない。さらに所得の源泉を課税のベース
にしているため,移転価格に関するルールと同様に所得の源泉と支出を定めるルールが
全世界所得課税主義の場合よりも重要な意味をもち,その結果,より複雑な制度となる
ことも考えられる。
2−2
全世界所得課税主義の下での輸出優遇税制
領土内所得課税主義をとる場合,その国の内国法人の在外支店(内国法人。海外の現
地法人となる子会社形態での進出ではないので)が得た所得は,本国では課税の対象外
とされる。そのため,本国の税率よりも低い国に海外支店を設けた場合,当該支店の所
16
これに対し,異なった課税管轄権での「資本輸出中立性」と「資本輸入の中立性」のハーモ
ナイゼーションを追及する論者も存在する。Musgrave, R.A. and Musgrave, P.B. [1972]。しかしな
がら本文中のように,一般的には両立しないとの見方が大勢をなしている。中村[1995], 20 ペー
ジ。
得に対する税額は少なくなり,輸出促進をはかることが可能となると米国は主張してき
た(田村[2001], 132 ページ)。全世界所得課税主義の下では内国法人の国外源泉所得に対
して原則上課税されるが,外国法人の国外源泉所得については課税を行わない。米国に
よれば,DISC, FSC, ETI という一連の輸出優遇税制は,全世界所得課税主義を採用する
米国に本拠をおく法人に対して,領土内所得課税主義が本来備えている輸出インセンテ
ィブをもたらすことを意図したものである。さらに敷衍すれば,輸出優遇税制は,合衆
国法人が領土内所得課税主義を採用する国の法人と同等の条件で競争するために,全世
界所得課税主義に領土内所得課税主義のシステムを部分的に導入したものである。なぜ
なら外国子会社の外国での活動を得られた国外源泉所得を一定の条件の下で,合衆国の
課税所得から免除するのが FSC などの輸出優遇税制のスキームだからである(所得控除
方式)17。
これは前述の,国外源泉所得に対して外国に支払われた所得税分を,国外源泉所得に
対する合衆国所得税から控除する外国税額控除とは異なった方法による輸出促進政策で
ある(税額控除)。合衆国法人は,所得控除と税額控除をそれぞれ単独で,または組み合
わせて用いることにより税引き後利益を高めることが可能である18。
それでは輸出優遇税制を用いた輸出インセンティブとはどのようなものであろうか。
FSC を例にとり,以下の数値例でその仕組みを概観してみたい(Desai and Hines [2001], pp.
。
45.)
例えば,米国のコンピュータ製造企業が,米国内において 1500 ドルでコンピュータを
生産し,イタリアに 2000 ドルで販売する場合を考えてみよう。もし FSC を用いないとす
れば,輸出による 500 ドルの利益に対して米国の 35%の法人税がかけられる。もしこの
取引に FSC を仲介させ,まず FSC が 1885 ドルで米国のコンピュータ製造企業からコンピ
ュータを購入し,それをイタリアに 2000 ドルで販売したとする(FSC が 115 ドルの利益
17
以上のような論理から,輸出優遇税制をめぐる米国・EU 間の紛争に対する WTO の決定について,
米国は次のように不満を表明している。WTO の決定は,米国のような全世界所得課税主義を採用
している諸国(ギリシャ,イタリア,日本,ノルウエイ,イギリスなど)を,領土内所得課税主
義を採用している諸国に対して不利な立場におくものである。さらに領土内所得課税主義を採用
している諸国は,国際貿易法を犯すことなく自国の法人に輸出インセンティブを与えている。
ただし領土内所得課税主義を採用する諸国は,外国法人のみならず,自国法人の国外源泉所得
に対しても原則的に課税を免除しているのに対し,米国は自国法人の国外源泉所得に対して課税
権を放棄してない。外国法人の国外源泉所得については,そもそも米国が課税する根拠が見当た
らない。外国法人の国外源泉所得に対する課税を放棄するからといって,両者の課税原則上の差
異が狭まっているわけではなく,輸出優遇税制が全世界所得課税主義に領土内所得課税主義のシ
ステムを部分的に導入したという米国の主張に首肯することはできない。
18
外国税額控除を単独で用いた場合,外国税額控除と輸出優遇税制を併用した場合,それぞれの
を得る)。この場合,米国の輸出企業は 385 ドルの輸出所得を獲得し,それに対して米国
の法人税がかけられる(385×0.35=134.75 ドル)
。FSC の輸出所得については,$115×
8/23=$40 に対して合衆国法人税が課税される(40×0.35=14 ドル)。FSC の残りの輸出
所得である 15/23×$115=$75 に対しては,米国の課税を免れる。さらに FSC は,法人所
得に対して課税を全くかほとんど行わないタックス・ヘイブンに設立されているので,
FSC の$75 の利益は外国の課税からも免除される。その結果,米系企業は$26.25 の節税
が可能となる。以上の節税スキームによって FSC は輸出促進効果をもっている。
次章では米国国際収支,米系多国籍製造業企業,輸出優遇税制のデータを分析し,米
国経済のグローバル化の様相を捉えることにする。FSC の役割は,単に領土内所得課税
主義を採用する企業との輸出競争上の不利を是正するといった受動的な意味にとどまら
ず,同企業の戦略上きわめて重要な役割を果たしていることを見てみたい。
3
米国の国際経済的側面と FSC
輸出優遇税制をめぐる議論や,米国国際課税のあり方そのものをめぐる最近の議論の
展開には,第 1 で見たような WTO の場での論争はもちろんのこと,米国経済の実態的
側面での変化,とくにそのグローバル化が大きく影響している。実際,上下両院合同租
税委員会報告書においても,米国経済のグローバル化の現状を国際収支面と輸出優遇税
制のデータから分析することに多くの紙幅を割いている。
米国国際収支とともに,ここで分析の対象となるのは,米国経済のグローバル化を推
進し,同時に米国国際収支に大きな影響を与える主体である米系多国籍(とりわけ製造
業部門の)企業である。ここでは近年の米系多国籍企業に関する研究の成果を参考しな
がら同報告書の分析を俯瞰し,米系製造業多国籍企業の国際取引と輸出優遇税制との関
連性に留意しながら同報告書の分析を掘り下げてみたい19。
3-1
国際収支面から見た米国経済のグローバル化
経常収支の分析
従来,米国経済は大きな国内市場を背景に,貿易の GDP 比は比較的小さいまま推移し
てきた。しかしながら,近年,米国経済に占める貿易の重要性は高まりつつある。貿易
合衆国法人の節税スキームについて詳しくは,Desai and Hines [2001], pp. 44-55 を参照されたい。
19
ここでの叙述はとくにことわりのない限り JCT[2003a]の第 2 章を参照している。
の対 GDP 比は,1960 年の 6%から 2001 年には 12%まで上昇した。また 1982 年以前,米
国は純輸出国であったが,それ以降純輸入国となり,大幅な貿易赤字を計上している
(JCT [2003a], p. 14)。
図表3 合衆国の輸出入:対GDP比
20%
18%
16%
14%
12%
10%
8%
輸出
輸入
6%
4%
2%
19
6
19 0
6
19 2
6
19 4
6
19 6
6
10 8
7
19 0
7
19 2
7
19 4
7
19 6
7
19 8
8
19 0
8
19 2
8
19 4
8
19 6
8
19 8
9
19 0
9
19 2
9
19 4
9
19 6
9
20 8
00
0%
出所)JCT[2003a], p.14. Figure 1.
米国の経常収支の内訳を見てみると,商品貿易の赤字は,1984 年以来,毎年 1000 億
ドルを超えており,1996 年以降,5000 億ドルを超えている。他方,米国は,1970 年代
半ばからサービス貿易の純輸出国である。所得収支に関しては,1998 年以降,米国に投
資を行った外国人に対する支払が,米国から海外に向かった投資による受取を上回るよ
うになった(JCT [2003a], p. 17)。
図表 4 合衆国の商品貿易 1960〜2001 年
1,400,000
100 万名目ドル
1,200,000
1,000,000
輸出
輸入
800,000
600,000
400,000
200,000
0
19601964196819721976198019841988199219962000
出所)JCT[2003a], p.18, Figure 4.
図表5
合衆国のサービス貿易
出所)JCT[2003a], p.20, Figure 6.
図表6 合衆国の海外資産からの受取所得と体内資産の対外支払
400,000
100万名目ドル
350,000
300,000
250,000
US受取
US支払い
200,000
150,000
100,000
50,000
0
60 64 68 72 76 80 84 88 92 96 00
19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 20
出所)JCT [2003a], p.22, Figure 8.
次に米国の経常収支全体の動向から,多国籍企業関連の国際取引に焦点を移し,それ
が米国貿易全体に与える影響を見てみよう。1996 年,外国企業に所有される在米子会社
は 686 億ドルの輸出を行った(財取引。以下同様)
。これは米国輸出全体の 11.2%に相当
した。また同子会社の輸入額は 1819 億ドルで,米国の輸入全体の 22.6%に相当する。
一方,米系多国籍企業は,同年,在外子会社向けに米国輸出全体の 26%に相当する 1624
億ドルの輸出を行った。逆に米系多国籍企業親会社が,在外子会社から輸入した額は
1361 億ドルで,米国輸入全体の 16.9%に相当する。総じて,米国輸出全体に占める企業
内貿易の比率は少なくとも 37%,輸入全体に占める同比率は 39%となっている
(JCT[2003a], pp. 23-24.)。
以上,米国経常収支と企業内貿易の実態は次のように要約できるであろう。財取引に
よる巨額の貿易赤字の増加に表わされるように,米国では製造部門の比較劣位化が進ん
でいる。一方で技術取引をその内に含むサービス貿易黒字の増加からは研究開発部門の
米国の優位性が伺える。所得収支の動向からは,米国経済の対外的な国際化と同時に,
それ以上に「内なる」国際化の進展を読み取ることができる。米系多国籍企業の企業内
貿易は,貿易収支赤字が膨らんでいるのとは対照的に多額の黒字を計上している。米国
の製造部門を全体としてみた場合,その比較劣位化が進む一方で,米系多国籍製造業企
業は高い技術力や規模の経済性を土台とした所有優位を保持しており,米国の主な輸出
セクターとなっている20。
20
米系製造業多国籍企業が行う貿易は海外子会社・関連会社向けに部品・中間財を輸出し,海外
生産を行い,完成品を輸入する企業内貿易の比率が高い。したがって米系多国籍企業の産業分類
と海外進出先に対応して,特定の産業および特定の地域との貿易が大きなシェアを占めることに
このように米国貿易全体に大きなウエイトを占めながら,他方で全体の傾向とは異な
るパターンを示す米系多国籍企業の国際取引についてさらに詳しく検討してみよう21。
1994 年の米国の貿易収支が 1506.3 億ドルと巨額の赤字を記録する一方で22,財取引に関
する米系多国籍企業関連貿易と企業内貿易はそれぞれ 876.8 億ドルと 276.8 億ドルの黒字
を計上し,その貿易収支全体に対する赤字解消効果は前者が 58.2%,後者が 18.4%にの
ぼった(図表7参照)。
技術取引に関しては,米系多国籍企業が関連する技術貿易は一貫して受取超過にあり,
1977 年の 42.4 億ドルから 1994 年の 310.3 億ドルへと大きく増加している。その内の企
業内技術貿易における受取超過も 8.9 倍と大きく増加し,171.5 億ドルに達している。ま
た親会社の技術導入に占める子会社からの導入比率は 1977 年の 3.7%から 1994 年の
13.3%へと増加したものの,他方で子会社の技術導入に占める親会社からの導入比率は
同期間に 39.6%から 51.7%へと過半を占めるに至った。このことは輸出入双方向におけ
る技術取引のグローバライゼーションの進展とともに,技術取引における親会社の収益
確保がますます重要になっていることを示している23。そして直接投資やその他サービ
ス取引を含む企業内取引は総額 527.5 億ドルの収益を本国にもたらし,米国貿易収支赤
字全体の 35.0%に相当する赤字解消効果をもった。
なる(JCT[2003a], pp. 25‑28, Figure 10, Figure 11 Figure 12, Figure 13)
。
21
以下の叙述は中村[2004]の分析を参照した。
22
1994 年の米国貿易収支のデータに関しては,Mataloni, Jr. and Fahim-Nader [1996], p. 21, Table 12,
を参照。
23
こうした米系多国籍企業の技術取引における優位性は,研究開発活動の活発化によって支えら
れている。親会社による研究開発支出は,1977 年の 30.2 億ドルから 1994 年には 915.7 億ドル
へと 30.3 倍に増加している。中村[2004]。
図表7 米系多国籍企業の国際取引 1977/82/89/94年
単位:100万ドル、子会社数、雇用=1000人
直接投資企業親会社、子会社:非銀行
1977
1982
1989
1994
MOFAのみ
MOFAのみ
MOFAのみ
MOFAのみ
財取引
1)
A USの対US子会社輸出
40787 35813 56718 52753 102558
97488 159454
153468
a親会社輸出
32397 29275 46559 44320 89539
86050 136128
132694
1)
B USの対US子会社輸入
41525 38000 51406 46101 97394
84298 134182
122364
b親会社輸入
32639 30880 41598 38533 77307
71283 113415
107203
A‑B
‑738 ‑2187 5312
6652 5164
13190 25272
31104
a‑b
‑242 ‑1525 4961
5787 12232
14767 27677
25491
C 親会社の非子会社輸出 61059 57419 106666 94976 133813
185050
D 親会社の非子会社輸入 45234 41587 69363 59978 103788
122638
C‑D
15825 15832 37307 34998 30025
62412
R&D取引
親会社によるR&D支出
3026
56320 55292 82227
91574
親会社向けR&D支出
37465 36929 57598
75673
連邦政府向け支出
16706 16215 21945
13267
子会社向けR&D支出
3647
7048
11877
子会社支出
3073
6307
8901
子会社によるR&D支出
2075
3851
7922
10445
子会社向け支出
3073
6307
8901
技術取引
E親会社技術輸出
5619
5151
4809 12800
33957
(ロイヤルティ&フィーズ受取)
e対子会社受取
2225
1962 3629
3308 10281
9839 17540
16744
外国源泉税
231
186
264
225
522
483
486
467
F親会社技術輸入
1376
457
428
978
2929
(ロイヤルティ&フィーズ支払)
f対子会社支払
51
48
62
36
61
54
389
368
国内源泉税
4
3 (*)
(*)
1
1 (*)
(*)
E‑F
4243
4694
11822
31028
e‑f
1939
1914 3567
3275 10220
9785 17151
16376
直接投資所得
17833 16574 18354 17190 57453
53687 62422
60449
(受取配当+純利子所得)
純外国源泉税2)
1040
906 1059
972 2160
2056 1196
1126
純所得
16793
17295 16218 55294
51631 61226
59324
受取配当1)
18231 12844 21237 20022 57025
53303 60175
58279
配当
8116
7301 20309 19019 41519
39535 39716
37989
g対子会社利子受取
699
1927
1862 2926
2869 3668
3580
h対子会社利子支払
251
3751
3722 2498
2485 1421
1410
g‑h
448
386 ‑1824 ‑1860
428
384 2247
2170
2)
その他サービス取引
純受取
1142
1002 3840
3291 5621
5303
i対子会社受取
2443
2181 3872
3583 7327
7101 12193
11780
j対子会社支払
919
815 2730
2580 3847
3810 6572
6477
i‑j
1524
1366 1142
1003 3480
3291 5672
5303
外国源泉税
−−
−−
68
60
7
7
120
116
出所)中村[2004] ,表−2。データについては原資料によって筆者が確認を行った。
注)1)1989,94年A,B欄には別記されたUSの在外子会社には親会社への直接投資在外親会社を除き、C欄の非子会社貿易に含
それは、表中89年輸出1338.1億ドルのうち104.1億ドル、輸入1037.9億ドルのうち324.0億ドル、94年輸出1850.5億ドルの
うち182.1億ドル、輸入1226.4億ドルのうち432.4億ドルに上り、企業内貿易に含まれるべきものである。
2)1989年版を基準に作成している。
3)直接投資所得は税引き前所得
4)外国源泉税は所得税を除く配当、利子課税。82年以前は配当課税のみ。
5)1977年のその他サービス取引外国源泉税は技術取引のそれに含まれる。
6)空欄については,原資料にデータが存在しない。
7)(*)は同欄のデータが50万ドル以下であることを表す。
以上の分析から,米国全体の貿易・経常収支における米系製造業多国籍企業の役割の
大きさが看取できる。米国全体の貿易・経常収支が膨大な赤字を抱える一方で,米系製
造業多国籍企業は,財・サービス両取引において赤字の相当部分を相殺している。特に
研究開発活動の拡大を基礎とした技術貿易における黒字の急増は,米国と米系製造業多
国籍企業の事業活動にとって無体資産の活用の重要性が高まっていることを物語ってい
る。それは 4 章で後述するように,無体資産にかかわって国際課税のあり方を議論する
契機になったと考えられる。
金融勘定の分析24
1982 年から,米国は資本の純輸出国から純輸入国へと転換した。2000 年,米国の国内
総投資が 1 兆 7410 億ドルであったのに対し,海外からの投資は 4280 億ドルで全体の
24.6%を占めた(1993 年の同比率は 8.9%。JCT [2003a], p. 29)。
図表8
合衆国の貯蓄、投資、純対外投資:対GDP比
1960〜2000年
25.0
20.0
%
15.0
投資
貯蓄
10.0
純対外投資
5.0
0.0
‑5.0196
0
19
64
19
68
19
72
19
76
19
80
19
84
19
88
19
92
19
96
20
00
‑10.0
出所)JCT[2003a], p. 30, Figure 14.
米国の金融勘定を見ると,外国所有の米国内資産は,1999 年に 8140 億ドル,2000
年に 1 兆 0240 億ドル,2001 年に 8950 億ドル増加した。それに対し,米国所有の海外資
24
以前,米国商務省経済分析局は,国際収支を経常収支と資本収支に分類していた。1999 年 6
月以降は,それを経常収支,資本収支,金融収支の3つの項目に分けるようになった。この国際
収支の新部類における「金融収支」は,旧分類の資本収支に該当している。つまり金融収支は,
米国の海外投資と対米外国投資の収支にあたる。新分類の下では,経常移転収支が新たに資本収
支に組み込まれた。新しく定義された資本収支は,資本の移転,非生産資産および非金融資産の
購入と売却から構成されている。例えば,対外債務の放棄,移民の流出入に伴う財や金融資産の
移転,固定生産の名義の移転,天然資源,特許,商標,リースなどの非生産資産の購入と売却な
どがそれに当たる。JCT [2003a], p. 8, footnote 24.
産は 1999 年に 437 億ドル,2000 年には 581 億ドル,2001 年には 4000 億ドル増加した
(JCT[2003a], p. 31)。これを伸び率で見ると,外国所有の米国内資産はドル換算で,1975
年から 1988 年までに 700%,1980 年から 2000 年にかけて 400%増加したことになる。
2000 年末における外国所有の米国内資産の合計は 8 兆ドルを超えている。他方,同期間
において,米国所有の海外資産は外国の米国内資産ほど増加しなかった。
図表9 US所有外国資産と外国所有US資産の増加 1960〜2001年
単位:1966年固定ドル
1,200,000
100万ドル
1,000,000
US所有外国資産
外国所有US資産
800,000
600,000
400,000
200,000
2000
1998
1996
1994
1992
1990
1988
1986
1984
1982
1980
1978
1976
1974
1972
1970
1968
1964
1966
1962
1960
0
出所)JCT[2003a], p. 31, Figure 15.
この結果,米国は対外的に純債権国から純債務国へと変化を遂げた。1975 年の米国所
有の海外資産は,外国所有の米国内資産を 740 億ドル上回っていた。1988 年に,この関
係は逆転し,外国所有の米国内資産は,米国所有の海外資産を 1620 億ドル上回った。2000
年に,外国所有の米国内資産は,米国所有の海外資産を 1 兆 8000 億ドル上回るようにな
った25。このように外国所有の米国内資産は,米国所有の海外資産よりも急速に増加し
ている(JCT[2003a], p. 33, 34, Figure 16, 17)。
25
米国は,対内および対外外国投資を3つの異なる基準によって計測している。第 1 に,納税者
の帳簿価格に基づく「歴史的価格(historical cost)
」である。第 2 に,帳簿上の有体資産の価値を,
現在の価値に換算した「現在価格(current cost)
」である。第 3 に,海外の株式資産の価値を,
現在の株価指標を基に換算した「市場価格(market value cost)
」である(JCT[2003a], p. 32)
。本
文中の以上の数値は「現在価格」に基づいている。
図表10
合衆国の国際投資ポジション
1982,90,2000年
(経常コスト直接投資、1966年固定ドル表示)
10億ドル
8000000
USの海外資産
6000000
外国のUS資産
4000000
2000000
0
1982
1990
2000
出所)JCT[2003a], p. 33, Figure 16.
以上のように国際投資の側面からも,米国経済の内外両面においてグローバル化が進
行している。今日より顕著な傾向は米国経済の「内なる」国際化であり,米国が資本輸
出国から資本輸入大国と化していることである。米国の国際課税上の原則を,資本輸出
中立性の基準を満たす全世界所得課税主義から資本輸入中立性の基準を満たす領土内所
得課税主義へ移行する可能性を報告書が検討しているのは,こうした米国経済の実態の
変化がその背景にある。20 世紀初頭から資本輸出国としての地位を確立した米国は,投
資先の如何を問わず居住者に対する投資収益の税率を等しくする全世界所得課税主義を
国際課税の原則としてきた。しかしながら今日の資本輸入大国化を受けて,米国資本で
あろうと外国資本であろうと,米国に投資を行い生産・研究開発活動に従事する企業は
平等に扱うべきであるという見解が提起されている。さらに領土内所得課税主義を採用
すれば,輸出優遇税制等の複雑な制度をとらなくても,国外源泉所得を合衆国課税所得
から控除し免税として取り扱うことができる点もそのメリットとして指摘されている。
他方で領土内所得課税主義を採用すれば,米国の課税管轄権は合衆国法人の国外活動
に対して及ばないことになる。その結果,合衆国法人の海外展開を促し,米国の生産・
研究開発活動の「空洞化」を招来する可能性も指摘されている。全世界所得課税主義ま
たは領土内所得課税主義のいずれをとるにせよ,国ごとに税制と税率が異なるという現
実の下で,経済・企業活動のグローバル化が進展することによって,国家の租税または
国際課税の原則が動揺し,制度の運用をめぐってますます難しい舵取りを迫られるのは
避けがたい趨勢である。この論点に関しては第4章で再び詳しく検討する。
その前に FSC に関する統計から,その実態を分析してみたい。具体的には米国法人全
体の中でどの程度の企業が FSC を利用しているのかを確認し,さらに規模,業種,競争
力の源泉と順に見ていくことにする。そして最後に輸出優遇税制が合衆国法人のグロー
バルな活動に果たす役割を析出することを試みる。
3-2
米系製造業多国籍企業と FSC
FSC を通じた財およびサービスの販売が米国輸出全体に占めるシェアは,1987 年で
24.2%,1992 年で 24.7%,1996 年で 33.6%であった。また FSC の納税申告の約 90%以
上は,製造業関連 FSC によるものである。したがって製造業財の FSC 販売は,以上の指
標より高いものになると考えられる(JCT[2003a], p. 59)。
図表11 FSC輸出の総輸出に占める比率 1987,92,96年
40
33.6
35
30
%
25
24.2
24.7
1987
1992
20
15
10
5
0
1996
出所)JCT[2003a], p. 61, Figure 32.
1999 年,490 万件の法人納税申告書の中の 1886 法人が FSC 配当を報告している。これ
は全体の 0.04%に過ぎない。さらに FSC から配当を報告した 1886 社のうち,上位 10%
の企業が FSC 利益の 87%を占めている。
図表12
FSC配当報告企業10分類
188社/分類
FSC10分類(各188社)
1999年
平均FSC配当
対総配当比率
平均課税所得
平均資産
平均売上高
1000ドル
%
1000ドル
1000ドル
1000ドル
最低10%
25
0.03
4,297
154,861
65,336
11‑20%
66
0.09
2,258
1,000,279
64,793
21‑30%
124
0.17
5,388
91,434
107,238
31‑40%
231
0.32
13,755
204,210
267,977
41‑50%
361
0.49
9,564
163,106
167,581
51‑60%
545
0.75
21,155
587,752
270,579
61‑70%
980
1.35
81,294
1,495,840
904,679
71‑80%
1,980
2.72
97,506
7,344,215
1,254,670
81‑90%
5,035
6.94
171,370
4,143,671
2,130,158
63,564
87.14
716,194
31,133,400
9,274,154
最大10%
資料)IRSデータよりJCTスタッフの作成による。
出所)JCT[2003a], p. 62, Table 6.
1996 年のデータによれば,2 億 5000 万ドル以上の資産を所有する企業が利用している
FSC の数は 1162 で,全体数の 27%に過ぎない。他方,これら FSC が,FSC および関連
サプライヤーからの総受取の 86%,純免除所得の 88%,課税所得の 89%,所得税総額
の 90%を占めている(Belmonte [2000], p. 87)。以上のことは,FSC を利用する法人が合
衆国法人のごく一部であり,その利益の大部分を享受するのはさらに限定された一部の
大企業であることを示している。
さらに図表 13 からも,製造業が FSC 利益全体のほとんどを占めていることがわかる。
例えば,1999 年に FSC からの配当を報告した企業の 76%,配当ドル価額の 89%を製造
業が占めている26。29 万 6000 社の製造業企業のうち,FSC 配当を報告した企業は 1426
社である。さらにそのうち上位 10%の企業が,FSC 利益の 88%を占めている。
26
ただしこれらのデータは各法人の自己申告にそのまま基づいており,その内容について客観的
なチェックが行われていない。さらに法人の中には,いわゆるコングロマリット企業も混じって
おり,企業としては 1 社でありながら,複数の産業に跨って活動する企業も存在しており,注意
が必要である。
FSC のデータに関する制約としてはさらに次のようなものがある。納税申告書のデータは,企
業活動の概観を捉えるのみで,FSC の活動を完全に捉えているわけではない。例えば納税申告書
のデータには,企業がそこから利益を得ている特許や商標の価値などは報告されない。同様に,
納税申告書は,米国外での工場や設備の投資を報告していない(JCT[2003a], p. 66)
。
図表13
FSC配当報告企業の納税申告書
産業別
1999年
FSC配当
同比率
FSC配当
非請求企業数
%
請求企業数
同比率
平均FSC配当額
総FSC配当額
総FSC配当
100万ドル
100万ドル
の比率
製造業
296,288
6.0
1,426
75.6
8.52
情報
107,573
2.2
55
2.9
13.58
746.81
専門的科学的技術的サービス
657,099
13.3
54
2.9
3.32
179.17
30,829
0.6
20
1.1
7.46
149.18
卸売業
349,684
7.1
190
10.1
0.71
135.66
小売業
596,339
12.1
19
1.0
5.87
111.47
43,223
0.9
23
1.2
3.16
72.62
金融及び保険
217,766
4.4
14
0.7
4.92
68.92
農林水産狩猟
141,645
2.9
33
1.7
0.91
30.12
建設
580,278
11.8
24
1.3
0.25
5.93
輸送及び倉庫
160,189
3.2
(1)
(1)
(1)
(1)
(1)
0.1
(1)
(1)
(1)
(1)
(1)
抽出産業
持株会社
公益
7,038
12,156.15
不動産及び賃貸業
521,442
10.6
(1)
(1)
(1)
(1)
(1)
住宅及び飲食サービス
252,111
5.1
(1)
(1)
(1)
(1)
(1)
健康及び公共サービス
303,498
6.2
(1)
(1)
(1)
(1)
(1)
その他サービス
305,723
6.2
(1)
(1)
(1)
(1)
(1)
93,920
1.9
(1)
(1)
(1)
(1)
(1)
205,009
4.2
(1)
(1)
(1)
(1)
(1)
35,195
0.7
(1)
(1)
(1)
(1)
(1)
2,139
0.0
0
0.0
ー
0.00
27,031
0.5
0
0.0
ー
0.00
芸術、芸能及びリクリエーション
行政及び医療サービス
教育
非分類卸売及び小売
非分類
合計
4,934,018
100.0
1,886
100.0
7.27
13,713.70
資料)JCTstaff calculations from IRS data
注)1)(1)欄については納税者保護のためデータは開示されていない。
2)合計は概数のため合わない。
出所) JCT[2003a], p. 63, Table 7.
それでは製造業の中でもとりわけどの産業・業種が主に FSC を利用しているのか。図
表 14 によれば,
輸送機器(32.2%),コンピュータおよび電子機器(25.7%),化学(14.0%),
以上 3 つの産業が FSC 利益の 70%を占めていることが分かる。
%
10
図表14
FSC配当報告製造業企業の納税申告書
FSC配当
同比率
非請求企業数
%
業種別
FSC配当
1999年
同比率
請求企業数
平均FSC配当額
総FSC配当額
総FSC配当額
100万ドル
100万ドル
の比率
%
輸送設備
10,708
3.6
81
5.7
48.30
3,912.47
32.2
コンピュータ&電子製品
15,437
5.2
288
20.2
10.87
3,129.52
25.7
化学
10,380
3.5
130
9.1
13.08
1,699.80
14.0
機械
25,936
8.8
196
13.7
5.20
1,018.24
8.4
9,624
3.2
104
7.3
3.90
405.11
3.3
電気設備等
飲料及びタバコ
製造業誤差
2,341
0.8
14
1.0
13.08
364.27
3.0
37,842
12.8
136
9.5
2.61
354.42
2.9
食料
16,636
5.6
61
4.3
4.46
272.03
2.2
金属加工
57,044
19.3
132
9.3
1.94
255.93
2.1
紙
3,089
1.0
33
2.3
7.11
234.47
1.9
一次金属
5,191
1.8
35
2.5
3.71
129.92
1.1
13,043
4.4
60
4.2
1.49
89.41
0.7
8,627
2.9
18
1.3
4.27
76.82
0.6
プラスチック及びゴム
非金属鉱物
繊維及び繊維製品
5,788
2.0
38
2.7
1.19
45.20
0.4
家具及び関連製品
10,966
3.7
19
1.3
1.29
24.60
0.2
木製品
13,345
4.5
52
3.6
0.37
19.27
0.2
印刷
32,814
11.1
10
0.7
0.74
7.40
0.1
石油及び石炭製品
1,390
0.5
(!)
(!)
(!)
(!)
(!)
皮及び皮革製品
1,695
0.6
(!)
(!)
(!)
(!)
(!)
(!)
衣料
14,393
4.9
合計
296,287
100.0
(!)
1,427
(!)
100.0
(!)
8.52
(!)
12,158.11
資料)JCTstaff calculations from IRS data
注)1)(1)欄については納税者保護のためデータは開示されていない。
2)業種の分類は納税申告書ベースのもの。
3)合計は概数のため合わない。
出所)JCT[2003a], p. 65, Table 9.
次に,FSC を利用する企業がどの程度その事業活動のために無体資産を活用している
のか,研究費控除額とロイヤルティ収入の指標を用いて考察してみよう。1999 年,FSC
利益を報告した製造業企業は,その資産規模にかかわりなく,FSC 利益を報告しなかっ
た企業に比べ,平均 2 倍の研究費控除を請求している(図表 15)。さらにロイヤリティ
収入を見た場合, FSC 利益を報告した企業は,利益を報告しなかった企業に比べ,少な
くとも 50%以上多いロイヤルティ収入を得ている(図表 16)。図表 14 で見たように,輸
送機器,コンピュータおよび電子機器,化学が,製造業関連 FSC 利益の 70%を占めてい
る。これらの産業の技術的特性を考えた場合,FSC 利益を受益している製造業企業は,
100.0
それを受益していない製造業企業よりも,無体資産をより重要に活用した事業展開を行
っていることを示している(JCT[2003a], p. 72)。
図表15
FSC報告企業・非報告企業の平均研究費控除
企業数
総資産規模別
非FSC配当報告
ゼロ・無視可能範囲
$1‑100万未満
$100‑1000万未満
FSC配当報告
製造業
1999年
平均研究費控除額(1000ドル)
平均FSC配当額
非FSC配当報告
FSC配当報告
(1000ドル)
11,665
n.d.
4
n.d.
n.d.
213,029
n.d.
0
n.d.
n.d.
57,941
195
2
12
179
$1000‑5000万未満
9,881
349
15
30
288
$500万‑2.5億未満
2,721
323
64
129
926
$2.5‑10億未満
710
234
285
408
2,619
$10億以上
341
287
3,057
7,220
38,592
1,561
8,526
全企業
296,288
1,426
6
注)n.d.:納税者保護のため非開示。
出所)JCT[2003a], p. 72, Table 15.
図表16
FSC報告企業・非報告企業の平均ロイヤルティ収入
企業数
総資産規模別
ゼロ・無視可能範囲
$1‑100万未満
$100‑1000万未満
非FSC配当報告
FSC配当報告
製造業
1999年
平均ロイヤルティ収入(1000ドル)
平均FSC配当額
非FSC配当報告
FSC配当報告
(1000ドル)
11,665
n.d.
64
n.d.
n.d.
213,029
n.d.
0
n.d.
n.d.
57,941
195
1
2
179
$1000‑5000万未満
9,881
349
23
47
288
$500万‑2.5億未満
2,721
323
301
557
926
$2.5‑10億未満
710
234
1,904
2,819
2,619
$10億以上
341
287
88,858
全企業
296,288
1,426
6
129,051
38,592
26,576
8,526
注)n.d.:納税者保護のため非開示。
出所)JCT[2003a], p. 73, Table 16.
最後に FSC の設立場所を確認しておこう。図表 17 によれば FSC の主な設立場所は,
米国領バージン諸島,バルバドス,グアム,ジャマイカ,オランダである。これらの地
域で FSC による租税還付の 95.0%,FSC による輸出の 95.3%を占めている。さらに図表
18 によれば,2 億 5000 万ドル以上の資産をもつ非金融企業の 29.2%が,FSC 利用者が大
企業であることを示している(Desai and Hines[2001], pp. 66-67, Table 4, Table 5)。
図表17
FSCの所在地と活動概要
年
1987
1992
1996
FSCを利用した
2,613
3,073
4,363
84,280
152,253
285,902
所得税の還付数
FSCの外国貿易総受取額
(100万ドル)
(パーセント表示)
還付数
米国バージン諸島
総受取額
還付数
総受取額
還付数
総受取額
64.6
55.6
65.8
62.8
58.0
38.1
6.2
5.5
11.9
11.7
29.2
30.5
14.5
19.6
7.3
14.4
4.4
14.7
ジャマイカ
7.8
6.4
4.8
2.6
2.8
3.2
オランダ
2.0
12.2
1.1
6.8
0.5
8.8
その他
4.9
0.6
9.0
1.7
5.0
4.7
バルバドス
グアム
出所)United Sates
Department of the Treasury, Internal Revenue, Services [1992];
Holik[1997]; Belmonte[2000]より作成。
業の資産規模
模
満
非金融企業の還付
外国貿易法人
控除後の所得税の比率
還付数
(%)
還付数
外国貿易法人を所
外国貿易総受取
非金
有する親会社の数
(単位:1000米ドル)
通じた
2,332,957
1.25
639
638
4,405,403
ル未満
631,497
0.48
35
35
108,618
ル未満
356,738
0.65
57
57
1,236,684
ドル未満
245,848
0.90
23
23
74,161
ドル未満
259,815
3.72
290
290
1,021,315
万ドル未満
39,845
2.19
363
363
1,446,323
30,863
5.96
882
882
7,824,272
4,063
3.26
415
415
7,499,445
2,928
5.67
497
487
16,974,893
3,061
75.90
1162
894
245,311,378
3,907,616
100.00
4363
4083
285,902,492
万ドル未満
ドル未満
万ドル未満
ンプルを基にした推計値である。各数値は四捨五入を行っており,各数値の合計と,合計値は一致しない。
とは,金融,保険,不動産以外の業種を指す。
s[2001], p. 68,Table 5.
以上の概観から,FSC を主に利用しているのは,米国製造業それも大規模な多国籍企
業であると考えられる。米国多国籍製造業企業は,製造コストの低い途上国に製造拠点
を形成することによって生産コストを圧縮しながら,同時に租税コストの低いタック
ス・ヘイブンに FSC をおき,米国からの課税から逃れ,税引き後利益を高めることが可
能である27。
本章の分析を要約しよう。米国の国際収支は,膨大な経常収支赤字を金融収支黒字で
補う構造が定着している。他方,米系多国籍製造業企業は,財・サービス(技術取引)
とも高い競争力を保持し,米国国際収支赤字の相当部分を解消している。そしてその事
業活動に占める無体資産の重要性は近年非常に高まっている。第1章では WTO の決定
を受けた米国が新たな輸出優遇税制のあり方を模索していることを見たが,本章の分析
から米系多国籍製造業企業の財・サービス輸出促進という従来からの観点に加え,無体
資産の効率的な活用を促すという観点が,今後の米国国際課税制度の方向性の1つとし
て浮かび上がってくる。それではこうした観点から,現在議論されている米国国際課税
制度の改革案はどのように捉えられるのだろうか。次章でその議論を概観,整理してみ
たい。
4
米国国際課税原則の方向性
全世界所得課税主義の下での輸出優遇税制が WTO のルールに抵触してきたこと,そ
して米国の対外的な国際化を上回るペースで進行した米国経済内部の国際化は,米国国
際課税の原則のあり方について議論を巻き起こす要因となった28。
現在,米国国際課税の原則を全世界所得課税主義から,領土内所得課税主義へと移行
することさえも議論の俎上に上っている。この場合,輸出優遇税制という特別な制度を
おかなくても国外源泉所得に対しては非課税となり,さらに領土内所得課税主義の採用
は米国に,研究開発,金融,法人,管理サービス等,本社機能の誘致を促し,企業のア
メリカ離れを逆転させる可能性をもっている。
他方で,このような領土内所得課税主義への移行は次のような問題を引き起こす可能
27
米系多国籍製造業企業は途上国を生産拠点とし,大規模な在外生産を行っている。同企業の
一大生産拠点を形成しているのがメキシコである。その実態を分析した研究として,田島[1997a]
田島[1997b]。
28
FSC・ETI の廃止とそれに代わる税制度のあり方をめぐって,非常に広範囲にわたる議論が報
告書の中でも展開されている。ここでは紙幅の関係上,国際課税の資本輸出中立性と資本輸入中
立性の原理に関する議論にのみ言及する。
性があると報告書は警告している。第 1 に,領土内所得課税主義の採用により,企業が
米国よりも低税率の国に移転し,米国の雇用が奪われる可能性がある(いわゆる「脱走
工場(run-away plant)」の問題)。第 2 に,領土内所得課税主義の採用は各国間の税の競
争を激化させる恐れがある。もし米国および多国籍企業の本拠地である他の主要国が領
土内所得課税主義を採用したとすれば,「果てしなき(race to the bottom)減税合戦」が
激化することが考えられる。第 3 に,米国は,既に二国間の租税条約の網の目をはり巡
らしており,原則の変更は現行租税条約の再交渉のために米国と相手国に膨大な負担を
かけることになる。
さらに先進諸国間での相互投資の進展と米系多国籍製造業企業の収益が無体資産に依
存する度合いが強まっていることを受け,上記のような投資場所との関連だけでなく,
これに加えて資本の所有との関連で租税政策のあり方を議論すべきであるという新たな
論点が提起されている((JCT[2003b], pp. 21-22; Desai and Hines [2003])29。
それによれば,経済的効率は税制が資本所有に対して中立的である場合に促進される
という。中立性のこうした認識の背景には,物理的に同一の資本(工場・設備)も,誰
がそれを所有し管理しているかによって生産性と収益性において異なるという前提があ
る。物理的に同一の生産設備における生産性の相違は,所有者の無体資産(特許,商標,
生産技術,ノウハウ)によって生み出されたと考えることができる。物理的資産の生産
性や収益性がその資産を所有し管理する人の無体資産に依存するなら,物理的資産から
高い生産性を引き出す適切な無体資産をもった者が,物理的資産を有する場合に経済的
効率が向上する。逆に税制が最も生産的な所有者に特定の物理的資産の所有を思いとど
29
経済活動における無体資産の役割の重要性に対応した国際課税の原則の変更に関しては,他に
も以前から議論があった。例えば G・C・ハフバウアー(Gary Clyde Hufbauer)は,1980 年代に
おけるアメリカ国内経済の空洞化と産業構造の変化とりわけいわゆるハイテク化の進展,外国企
業の対米進出の急速な増加によるアメリカ企業の国際競争力の低下を注視し,従来の「資本輸出
の中立性」や「資本輸入の中立性」を求める議論がいわば資本の配置を基準に所得を捉える時代
遅れの税制であるとした。その上で,多国籍企業の活動を,研究開発を含むヘッド・クオーター・
サービス(本社機能)と生産・流通に関わる伝統的機能とに分割し,相対的に弱化した前者の機
能を強化すべく「技術輸出中立性」を論じた。
「技術輸出中立性」の原則に従えば,ロイヤリティとその使用料に対する課税は,当該技術が国
内または外国で使用される場合を問わず,同じ税率で課税される。そして技術やノウハウを産み
出した国が,ノウハウを用いることによって得られた全収入に対する課税権をもっている。もし
「技術輸出中立性」の原則が適用されないとすると次のような事態が起こりうる。もし米国より
も外国のほうが技術やノウハウを利用して得られた収益に対する課税率が低い場合,米系企業は
米国から財を輸出するのではなく(34%の法人税が掛けられる)
,外国で開発した技術を用いる
であろう(34%未満の税率が掛けられる)
。Hufbauer[1992]。
企業の研究開発活動に対する合衆国税制の展開については,中村[2004]に詳しい。
まらせる場合にはどこに投資されようと経済的効率は低下する。
このような資本所有中立性(Capital Ownership Neutrality)は,全ての国が国外源泉所
得に課税し,完全な外国税額控除を認める場合に確保される(資本輸出中立性原理と一
致する)。同様に全ての国が国外源泉所得をその課税ベースから免除するなら,資本所有
中立性が確保される(資本輸入中立性原理と一致する)。なぜなら外国投資に対する課税
上の取り扱いが全ての投資者に対して平等となる結果,潜在的投資家間の競争によって
最も効率的な投資家から資産を獲得することになるからである。
次にこのように国家間で同じ国際課税の原則を採用したとしても,居住する国の税率
の違いによって各投資家の外国・国内投資に対する租税負担は異なる場合を考えてみよ
う。資本輸出中立性の原理が満たされている場合,各投資家は国内においても外国にお
いても同じ税率を課される。したがって租税制度は投資の効率的配分を歪めないので,
全ての投資家は税引き後でなく税引き前利益を最大化するよう投資を行うインセンティ
ブをもつようになると同時に,最も効率的な投資家から資産を取得するため,資本所有
中立性の原則も守られる。他方,資本輸入中立性の原理が満たされている場合,各投資
家の国外源泉所得は一律に課税免除され(そのため外国がそれぞれ異なる税率をもって
いても投資のインセンティブは変わらない),国内源泉所得には同じ税率が課される。し
たがって税率の違いによって物理的資産の地理的配置(どの国に投資が行われるか)は
歪められるが,物理的資産の所有中立性は歪められない(誰が資産を所有するのか)。
前述のように米国は ETI 法案の撤廃とそれを代替する制度のあり方を検討してきた。
最後にその内容を概観し,資本輸出中立性,資本輸入中立性,資本所有中立性の観点か
ら,それぞれの法案を評価してみたい(Desai and Hines [2003], pp. 497-499)。
「2003 年本国投資法(The Homeland Investment Act of 2003)」(JCT[2003b], pp. 38-40)
この法案によれば,合衆国企業が支配外国法人から受け取った現実の配当および見な
し配当は 5.25%の低減税率に服することになる。最高税率の法人税率は 35%だからこの
低税率は 85%の受取配当控除に等しい。この低減税率は,この制度の利用を選択した納
税者の課税初年度にだけ利用可能となる。この法案は,償還による課税を回避する目的
で多国籍企業が海外に留めている利益に対し,恩典を提供することによって償還を促す
ことを狙いとしている。
この法案が意図する国外源泉所得のみを対象とした減税は資本輸出中立性原理からの
逸脱となる。他方で合衆国国際課税制度を他国の税制(領土内課税制度を念頭においた
場合)と異質ならしめている配当・利益の償還に対する減税をおこなうことによって(資
本輸入中立性原理への接近),資本所有中立性の原理に近づくことになる。
「 2002 年 ア メ リ カ の 競 争 力 と 企 業 ア カ ウ ン タ ビ リ テ ィ 法 ( The American
Competitiveness and Corporate Accountability Act of 2002)」(JCT[2003a], p. 85, pp. 89-90)
この法案は,ETI 制度を廃止し,その代替として海外事業活動と投資による所得に関
連した国際競争力に関する制度に置き換えようとするものである。複雑化した国外源泉
所得に対する税制,つまりサブパート F および外国税額控除を簡素化し,減税を行うこ
とが意図されている。この法案はまた,法人タックス・シェルター(corporate tax shelter),
およびインバージョン取引(inversion transaction)に関する条文を含んでいる。
この法案が意図する外国税額控除の限度枠拡大は,資本輸出中立性原理への接近を意
味する。そして米国の国際課税制度を他国のそれに対して異質化してきた複雑なサブパ
ート F および外国税額控除制度を簡素化することは,資本所有中立性原理への接近をも
意味する。
「2003 年雇用保護法(The Job Protection Act of 2003)」(JCT[2003a], p. 85-86)
この法案は,ETI 制度を廃止し,その代替として国内製造業者の一律控除に置き換え
ようとするものであった。同法案は企業に当該課税年度の国内生産活動に関連した課税
所得の 10%の減額控除を認めようとするものである(国内源泉所得の法人税の実効税率
は最大 35%×0.9=31.5%まで低下する。他方で国外源泉所得に対しては 35%の税率が課
される)。しかしこの控除額は,国外で生産活動を行う納税者にとって国外活動比例分だ
け縮小される。
相対的に見て,国外源泉所得に対する課税のみを強化することは,資本輸出中立性原
理からの逸脱となる。さらに合衆国法人または投資家が米国内資産の所有するインセン
ティブを過度に高めることは資本所有中立性の原理からも外れている。
アメリカ合衆国の国際課税制度の改革の現状は,上下両院とも輸出優遇税制の撤廃法
案を可決したもののその内容については大きな隔たりが存在しており,どのような方向
へ一本化されていくのか予断を許さない状況である。その改革はアメリカ一国の厚生水
準のみならず,世界経済の厚生水準に対しても大きな影響を与えるため,法的・経済的
合理性と制度内および他国の制度との整合性がより一層高く求められる。このことは単
に理念的な問題にとどまらず,現実的な対応としても求められていると言えるだろう。
なぜなら今回の輸出優遇税制の問題を見ても,本来課税の対象と考えられる外国法人の
国内源泉所得(国内における経済活動と実質的に関連を有する所得)について,外国法
人の国外(販売)活動による国外源泉所得とみなし,輸出を条件に課税を免除すること
の恣意性や,そのことがもたらす制度全体との非整合性が厳しく問われたからである。
国際課税制度の経済的合理性を評価する際,従来,資本輸出中立性および資本輸入中
立性原理が基準として用いられてきた。そして今日新しい原理として資本所有中立性を
加えることが提唱され,現実の政策を策定する基準としても検討され始めている。これ
まで多国籍企業論は,海外で活動する不利を相殺するために多国籍企業は特別な優位性
をもっており,それはしばしばブランド,生産システム,特許などの無体資産であるこ
とを明らかにしてきた。このような実態を踏まえて,資本所有中立性原理が国際課税の
基準として新たに提起されていることは注目に値する。
さらに多国籍企業論が生産立地の比較優位と企業の所有優位との関係の議論を進めて
きたことに対応し,国際課税制度の各中立性の間の関係についてさらに議論を深める必
要があろう。多国籍企業の優位性がその所有優位によってのみ決定されず,投資先の比
較優位によって影響を受けるように,国際課税制度は生産の立地点(投資先)と物理的
資産の所有に影響を与え,その影響の総和が経済的厚生水準を変化させると考えられる
からである。
結びにかえて
今回の問題の直接的な要因は,米国が早くから資本輸出国としての地位を確立し,後
に国際収支および税収の面から海外投資に対する規制を一方で強化しながら,他方で海
外投資促進のための抜け道を用意したことに求められる。このような米企業の国際競争
力の維持と規制という矛盾する目的の中で,米国国際課税制度は種々の例外規定を含み
ながら複雑に展開されてきた。そうした複雑さや例外規定が多国籍企業に租税回避の手
段を与えることになったと言える。したがって,輸出優遇税制をめぐる問題も,米国の
主張するように課税における原則の違いという問題から派生しているというよりも,む
しろ米国の国益を複雑に反映した国際課税制度の展開に根ざすものと言える。
本稿では,全世界所得課税主義の下での領土内所得課税主義の部分的導入に当たる
FSC・ETI について分析した。他方で前述したように米国の輸出優遇税制には,外国税額
控除を利用するスキームも存在しており,FSC・ETI 同様,輸出促進に大きな役割を果た
してきた。したがって米国の輸出優遇税制全体の役割を分析するためには,外国税額控
除を含む「広義の」輸出優遇税制の分析が必要となるが,それについては今後の課題と
したい。
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