首都圏のホテルで増加する婚礼委託 運営受託企業の実力度

第874号
(昭和63年7月7日第三種郵便物認可)
BRIDAL ブライダル産業新聞
2014.3.1(毎月3回1日/11日/21日発行) ( 1 )
MARCH
1
第874号
首都圏のホテルで増加する婚礼委託
運営受託企業の実力度
昨年から首都圏のホテル
を中心として、ブライダル
企業への運営委託が増加し
ている。その思惑は様々。
婚礼部門の即効的な改善を
図る目的や、最終的にホテ
ル売却に当って、キャッシ
ュフローを高めて有利な条
件での対応を進めていこう
というものなど。ブライダ
ル企業側でも、こうした動
きに対応するため、運営受
託を促進している。
そこで、
ホテル運営受託をここ数年
次々に対応している、ポジ
ティブドリームパーソンズ
の杉元崇将社長にその傾向
を聞いた。
復
活
は
ブ
ラ
イ
ダ
ル
・
レ
ス
ト
ラ
ン
部
門
次
第
代表取締役社長
杉元崇将氏
ポジティブドリームパーソン
ズ(東京都渋谷区)は、過去3
年間で全国10件以上のホテルで
バンケット、レストラン部門の
運営受託を行ってきた。「シナ
ガワグース(ザ ランドマーク
スクエアトーキョー)」
、「ホテ
ルクラウンパレス神戸(ザ マ
ーカススクエア神戸)」。昨年オ
ープンした「アゴーラ福岡山の
上ホテル&スパ(ザ マーカス
スクエア福岡)」も、同社がバ
ンケットとレストラン部門を請
け負っている。宿泊部門は別の
会社が対応しており、言ってみ
れば一つの建物にプロの運営会
社が集っている状況だ。
「例えば、百貨店では、駅前
で最高の立地であるにも関わら
ず、魅力あるテナントが少ない
ために集客も苦戦している。一
次代の
トップランナー
▲同社が 運営受託するアゴーラ福岡
方、立地が悪い郊外型のSCで
は、魅力ある店舗を集めること
で多くの顧客を集めています。
これまでホテルはどちらかと言
えば百貨店であり、しかもテナ
ントは全て直営でした。ホテル
に行く動機が失われつつある中
で、SCのようなスタンスが求
められているのかと。当社が魅
力あるテナントと位置づけられ
ているからこそ、運営受託のお
誘いをいただけるのでしょう。
」
一方、同社にはブライダル部
門の新規集客のみといった運営
受託依頼も増加している。実際
に、首都圏を中心としたホテル
では、こうした実績も高まって
いる。
もっとも、ホテルの運営
受託の実績が、なかなか表
に出てこないのが現状。魅
力あるテナントとしての運
営受託とは、ホテル側のス
タンスも異なるからだ。
「ファンドへの売却などと
絡んだ、キャッシュフロー
の改善目的での運営受託の
ケースも増えています。そ
の目的があるために、当社
が受託しているという情報
を公に出すことが出来ない
わけです。」
売却を目論むホテルにと
っては、いかにホテル事業
の資産価値を高める、もし
くは成長性を示すことが求めら
れる。宿泊に関しては、高稼働
率の中で、劇的な収益向上は望
めない。その点、収益性を高め
るために手をつけるべき部門
が、ブライダルであり、レスト
ランなのだ。この部門が改善す
れば、投資対効果を高めること
が出来、結果として売却も有利
に進める。
「こうしたケースでは、1∼3
年で、レストラン、婚礼部門に
対応することが多い。目先の収
益性向上だけでなく、恒常的に
成長戦略を描くことも必要にな
ります。」
ホテル側の目的が多様化して
いるために、運営受託のスタイ
「素早く」
「コストをかけずに」業績を回復する
ニューバリューフロンティア
代表取締役
髙宮孝一郎氏
即効性と費用対効果にこだ
わって運営受託を行っている
のが、ニューバリューフロン
ティア(名古屋市東区)だ。
仮予約から即決、結婚情報誌
への写真の掲載方法、フェア
の打ち出し方を変えただけで
200%もの業績回復率を図る
ことに成功している。
「業界全体で回遊性が低下
していることが問題になって
いる今、仮予約にこだわる必
要はありません。即決は強引
だという思考そのものを変換
すればいいのです」(代表取
締役 髙宮孝一郎氏)。
長時間かけて無理矢理説得
した場合は押し売りだが、新
郎新婦がぜひともここで結婚
式をやりたいと思ったのであ
れば、それは得した買い物に
なると説く。
「新規接客は獲得件数に捉
われすぎてしまい、結果とし
て強引な接客になりがち」と
髙宮氏。同社が行うのは、徹
底的なヒアリングを通した提
案型の接客方法だ。
「10の会話の内、7:3の割合
で新郎新婦から話を引き出す
ようにしています。なぜ、そ
の理由は、と繰り返し聞き返
すのがポイントで、そこから
要望を拾うのです」。
新規接客こそプランナーの
真髄と語る髙宮氏。実際に契
約して当日までの打ち合わせ
を行う場合、資金や親からの
意見などで、自由な結婚式を
行えない場合がほとんど。新
郎新婦に夢のような結婚式を
イメージさせられるのは、新
規接客のプランナーだけだ。
「新郎新婦が満足できる商
品(イメージ)を提供できて、
はじめてその場で納得した即
決ができます」。
雑誌へ掲載する写真は左上
にアイキャッチになるものを
もってくる。雑誌をペラペラ
とめくる際、目にとまりやす
くなるのだという。
フェアの打ち出し方も「
、試
食付き見学会」とするのでは
なく、「【花嫁の憧れを叶えた
い】試食付きシンデレラなり
きりフェア」とするだけで、
行ってみたいという気持ちは
変わる。
コストをかけずに、短期間
で業績回復を図ってきた同社
のノウハウだ。
今号の人
ブライダルセミナーin大阪
コラボレーショントーク
フリープランナー
Ayame氏
神戸ポートピアホテル
婚礼部長
吉備 由佳氏
プランナーに必要なキャリア
感動して涙を流す聴講者も
特集
ロケーションフォトW(2,3面)
セミナーレポート
(4∼7面)
注目企画
学び舎 結の会(7面)
二次会店舗(13面)
ルも様々だという。それに対応
できることが、同社の選ばれる
理由でもある。
拡大する運営受託であるが、
委託する側の対応が成否を握っ
ている。施設全体のコンセンサ
スが取れていない場合には、運
営受託もうまくいかない場合も
ある。組織がハレーションを起
こしてしまうからだ。中長期で
のキャッシュフロー健全化を経
営戦略として掲げ、企業全体へ
の周知徹底が大前提となる。
記者の目
運営委託する際の、相見積
もりが増えているという。ホ
テル側が「運営委託を考えて
いる」と示すと、受託の企業
からサービス内容や料金が提
示され、それに基づきどの会
社にするのかを決定する。関
東近県のホテルもこの方式を
採用し、業界内からは「あの
会社は何とか取りたかったか
ら大分安く提示した」という
声も囁かれている。
そもそも運営委託、コンサ
ルティングは、自社の経営戦
略の強化と密接に絡んでい
る。組織のどの部分がウィー
クポイントだから、ここをカ
バーしていくとの考えである
はずだ。料金提示ならまだし
も、サービス内容に関しては
委託する側が明確にしていく
べきことであるはず。とりあ
えずやってみようという印象
も強く残る。
何が必要で、どこを目標に
していくべきなのか。まずは
委託する側の明確な戦略があ
るべきではないか。