「社会的投資」 1億円超 変化するカンボジアに、新たな

チャレンジ
hallenge
2016
インパクト重視、注目の「社会的投資」1 億円超
変化するカンボジアに、新たな関係性を
対等なビジネスパートナーとして
―― 功能さんは、2009年に「ARUN(アルン)合同会社」
という投資会社を設立されました。投資先を、ソーシャル
ビジネスに絞っていますが、アルンが取り組む社会的投
資とはどんなことなのでしょう。
はい。ARUN合同会社は、経済的に利益を出しながら、
「社会的なインパクト」を生み出すソーシャルビジネスを支
援しようと発足しました。日本で投資家を募り、集まった
お金を途上国のソーシャルビジネスに取り組む起業家に
投資する仕組みです。
途上国の起業家たちは、自らの手で社会を変えていこうと
いう強い意志を持って、自立的なビジネスの力により貧困
を削減し、社会に変革をもたらそうとしています。私たち
は、彼らに必要な金銭的・人的資源を提供し、経営支援
を行います。
「社会的インパクト」とは何か、というと、たとえば雇用
の創出、なかでも貧困層など雇用機会に恵まれない社会
的弱者の雇用が重視されます。また、働く人の所得が増
えたり、労働環境が良くなったりすること。さらに、ビジ
ネスが社会に健康、安全、教育の向上などの効果をもた
らすこと、地域に貢献することなどを、インパクトととら
えています。
―― 社会的インパクトのある事業への投資。それは寄付
や援助とは何が違うのでしょうか。
投資というのは、投資先の経営者とリスクを共有するこ
とです。確実に利益を出すという約束はないけれど、その
事業の志に共感し、共に未来をつくるというアクションを
とっているのです。リスクを共有するということは、双方
向の対等な関係を築くということであり、良くも悪くも終
わりがない、ということだと思います。
私は1995 年から10 年にわたりカンボジアに在住し、国
際協力機構(JICA)や保健関係のNGOなどで活動しまし
た。
各国がカンボジアに盛んに援助をしていたころですが、
もてはやされた開発事業でも、援助が終了すると立ち消
えたケースをいくつも目の当たりにしました。人々が自立
し、継続できる事業を育てなくてはならないと痛感しまし
た。
そのころ、アメリカで発足したアキュメン・ファンド
に注目しました。社会開発に貢献するビジネスを選んで
投資をするファンドです。人々の自立を促す仕組みとし
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ARUN 合同会社代表
功能聡子さん
Satoko
Kono
1995 年から10 年間、カンボジアでNGO、
国際協力機構(JICA)
、世界銀行などの業務
に携わった。2005年からロンドン政治経済
大学院(LSE)に留学、社会政策学を修め、
2006年に帰国。2009年、ARUN合同会社
を設立。日本発のグローバルな社会的投資
プラットフォーム構築を目指している。
Challenge 2016
May 2016
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hallenge
2016
て、私はこの「社会的投資」が有効だと考えるようになり
ました。
目まぐるしく変化するカンボジア社会の中で、人々が必
要とする援助の形もどんどん変化しています。例えば私
は当時、CEDAC(セダック)というカンボジアの農民支援
NGOの事業に協力することがありました。CEDACの事業
は、カンボジアの主要産業である農業を支える農民たちを
エンパワーしていくものです。でも、技術や知識を持った
農民たちが良い作物を生産し、次に必要とするのは市場
です。そこからはビジネスとして自立することが必要とな
り、求められるのはビジネスパートナーとなります。経済
成長とともに、こうした変化があちこちで起きる、と思い、
カンボジアを離れ、ロンドンに留学するなどしてARUN立
ち上げに向けた準備を始めたのです。
お金も出すけど、口も出す
――現在、ARUNはどのような企業に投資をしているので
しょうか。
第一号の投資案件は、今お話したCEDACが立ち上げ
た企業サハクレア・セダックでした。CEDACは農民自身
の手で、農産物の生産から販売までを手がけるカンボジ
ア最大のNGOですが、より持続可能な組織となるために、
農民による流通・販売企業を立ち上げる計画をしました。
つけ毛の製造・販売で注目されているアルジュニ社。
ARUNの投資先の1つだ
(ARUN提供)
ところが予定していた投資がキャンセルされてしまった、
困っている、という連絡がきたのです。私は「身近にニー
ズがある」と実感し、アルンの需要を確信しました。
サハクレア・セダックへの投資は845,000ドル(約9,400
万円)で回収率は107.5%になりました。今同社は、有機米
や天然はちみつの生産者組合を作り、国内外で販売して
います。組合に参加した農民の所得は5 倍以上になって
います。このほか、ヘアクステンション(つけ毛)を製造・
販売しているアルジュニ・インターナショナルには140,000
ドル
(約1,560 万円)
を投資し、こちらの回収率は120%以上
となっています。アルジュニは、人身売買の被害者など
社会的弱者の女性を積極的に雇用しているほか、髪を提
供してくれるヘアドナーの所得向上や地域経済への貢献
といったインパクトがありました。
皆さんもよく知っているホテルチェーンのフランジパ
ニ・ヴィラ・ホテルにも150,000ドルを投資、回収率は
115.9%となっています。同社は、カンボジア出身の3人の
若者が立ち上げた企業です。創業者が建築家だったこと
もあり、古い家屋を改装した小さなホテルからビジネスを
スタート。今では全国に7 軒のホテルを持ち、外国人客に
も高い評価を得ています。彼らのビジネスは332人の雇用
を生み出し、ホテル客室数も投資開始時より2.4 倍に増え
ました。地域経済の貢献が高いと言えます。
最近始めたものでは、太陽光発電のライティング・エン
ジニアリング&ソリューションズへの50,000ドルの融資が
あります。無電化地域で家庭用のソーラーパネルを販売
し、メンテナンスをする会社です。この企業が融資を受け
て活動することで、1,000 世帯以上が電気にアクセスする
ほか、農村部での販売・メンテナンス要員として117人が
雇用されます。
こうしたアルンの投資に関心も高まり、2009 年の開始
時には10人だった投資家が、5 年後には110人に増えまし
た。投融資額は、カンボジア5 社、インド1社で1,335,000
ドル
(約1億 4,800 万円)
に達しています。
――投資家と起業家はどうつながっているのでしょうか。
自分の投資の意味を理解していただくことは、社会的
投資にはとても重要なことです。だから私は、とにかく投
資家に現地に来てもらうようにしています。カンボジアで
起業家に実際に会って、コミュニケーションをして、肉声
を聞いてもらうことが大事だと思っています。そして、ス
カイプや日々のメールなどでも会社の状況を伝えるように
しています。
どこでもそうですが、ビジネスは簡単ではありません。
カンボジアの起業家たちも苦労をしています。ネットの詐
欺にあった、在庫の数が合わない、売り上げが落ちたーー
浮き沈みは止まることなく続きます。そこに、お金だけで
はなく、投資家本人が持つ技能や経験や人脈を投入して
一緒に事態を解決することもあります。お金も出すけど、
口も出す。今までとは違う関係性がそこに見えてきて、そ
こにおもしろさを感じてくれているのではないか、と思い
ます。
クラウドソーシャルインベストメント
の試み
――功能さんは、たくさんの起業家たちとお会いになって
一緒に事業をしてきたと思うのですが、成功している人た
ちの共通点は何だと思いますか。
そうですね。一言では難しいのですが、あきらめない、
逃げない人たち、と言えるかもしれません。そしてもう一
つ、
「人を育てる」ことを重視しているということです。自
分の成功で手一杯と思いきや、彼らは人材育成に時間が
かかることも、それが成功のポイントになることも熟知し
ています。
例えば、投資先のひとつであるフランジパニ・ヴィラ・
ホテルでは、小さなブティックホテルから成功して会社が
大きくなりました。そこで、スキルのある人が必要となり、
ミドルマネジメントの人材を会社に一気に入れたんです
ね。同じ業界ですでにスキルを持っている人、いわば育
ちあがっている人を入れて、大きくなった会社の経営を回
そうとしたんです。ところが、1年ぐらい後に、投入した
全員が辞めてしまいました。技術や経験があるからといっ
て、いきなり自分の会社で機能させようとしてもうまくい
かないんですね。
彼らはまた一から人材育成を始めました。
そして見事にロイヤルティのある社員が育ち、今、会社を
支える存在になっています。
――なるほど。その一方で、功能さんは新しい取り組みと
して「寄付」による社会事業の育成も始めましたね。寄付
とは違う、ということで社会的投資を始めたのだと思った
のですが、どうしてですか。
はい、その仕組みは、クラウドソーシャルインベストメ
ントといって、新たに立ち上げたNPO法人ARUN Seedが
窓口になっています。
社会的投資を呼びかける中で、多くの方々、特に中小
企業のみなさんから「投資は、制度面でハードルが高く、
会社として参加しにくい」
「投資というと額が大きすぎる」
という声をいただきました。そこで、一口30 万円の寄付
をいただき、それを何件か束ねてソーシャルビジネスに投
資をする。利益が出たら、その分を再投資するというクラ
ウドソーシャルインベストメントを始めたのです。
寄付ですから、経済的なリターンが本人に戻るわけで
はありませんが、投資同様、社会的インパクトや経営状
況の報告を重視して、一方的な寄付に終わらないように
します。目に見えるリターンではないものの、現地で革新
的なビジネスモデルの創造に貢献することも大きな成果で
す。途上国に市場を求める企業であれば、事前調査や情
報収集にも活用できます。これもまた新しい関係性の構
築になるのでは、と広がりを期待しています。個人の方は
もちろん、特に法人の皆さま方からの寄付参加をぜひご
検討いただきたいと思っています。
※ARUNとARUN Seedについては
www.arunllc.jp / www.arunseed.jp 参照。
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