Structured Finance

Structured Finance
グローバル
格付基準レポート
ストラクチャード・ファイナンス
損失度(LS)格付基準
アナリスト
要約
スチュアート・ジェニングス
+44 20 7417 6271
[email protected]
•
フィッチ・レーティングス(フィッチ)では、ストラクチャード・ファイナンス
(SF)案件について、損失度格付(Loss Severity Rating (LS 格付))と称する尺
度を導入する。証券のデフォルト(いわゆる「ファースト・ダラー・ロス」)確
率のみを示唆する既存の SF 証券に対する長期信用格付を、この尺度が補完する
ことを意図している。
•
損失度格付の尺度は、5 段階の格付カテゴリーからなり、既存の長期信用格付と
は異なる尺度により表される。各カテゴリーは、デフォルト時において、証券が
重大な損失を被りうる相対的なリスクの程度を示すことになる。
•
損失度格付によって示される損失の程度は、長期信用格付によって示されるデ
フォルト確率とともに考慮する必要がある。高い長期信用格付が付与され一定の
厚みがあるトランシェは、同様の厚みの劣後トランシェに比べて、デフォルト確
率が低いため、実際の損失はかなり小さくなる傾向がある。投資家は、長期信用
格付と損失率格付を個別にではなく合わせて考慮することで、損失リスクに関す
るよりよい認識を得ることができる。
•
損失度格付に関する尺度は、明瞭、簡便かつ簡潔な指標とし、複雑かつ詳細なモ
デル分析を要しないものとした。付与される損失度格付カテゴリーは、ストラク
チャード・ファイナンス案件における裏付資産ポートフォリオのベース・ケース
損失に対する、相対的なトランシェの大きさ(トランシェの厚み)の比率を計算
して決定することになる。
•
損失度格付は、最終的には、既存および新規の SF 案件に対して付与される。今
後、2009 年中に各地域、アセット・クラスに徐々に導入を進めていく。これら
に先立ってまずにオランダの RMBS 案件について導入し、公表している。損失度
格付は導入後、他の地域、アセット・クラスに関しても、徐々に新規案件および
格付レビューの都度付与していく予定である。
•
損失度格付は、特にトランシェを細かく分けるなど厚みの薄いトランシェに対し
て、あるいは厚みのあるスーパー・シニア「AAA」トランシェの下の比較的厚み
の薄いサポート・シニア「AAA」トランシェを注視するうえで、特に有用となる
ことが見込まれる。
•
損失度格付は、SF 証券のうち、デフォルトが目前に迫っているディストレスト状
態にあるもの以外に付与される。したがって、長期信用格付が「AAA」から
「B」のカテゴリーにある証券に対してのみ付与されることになる。一方信用格
付がディストレスト水準にある「CCC」から「C」格付に引き下げられた証券に
関しては、通常、損失度格付は付与されない。こういった証券に対しては、引き
続き回収率格付(Recovery Ratings (RR))が付与されることになる。回収率格付
は予想回収に関する詳しい分析により付与される。
•
損失度格付は、国際および国内長期信用格付が付与されている証券に付与される
予定である。
グレン・コステロ
+1 212 908 0307
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イアン・リネル
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ジョン・ボンフィリオ
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ベン・マカーシィ
+61 2 8256 0388
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www.fitchratings.com
2009 年 2 月 17 日
Structured Finance
損失度格付
格付カテ
ゴリー
定義
LS-1
TLM が 10.1 以上であり、デフォルト時に重大な損失を受けるリスクが低いトランシェ。
LS-2
TLM が 4.1 から 10.0 であり、デフォルト時に重大な損失を受けるリスクが中程度から低い
トランシェ。
LS-3
LS-4
TLM が 1.1 から 4.0 であり、デフォルト時に重大な損失を受けるリスクが中程度のトラン
シェ。
TLM が 0.51 から 1.0 であり、デフォルト時に重大な損失を受けるリスクが中程度から高い
トランシェ。
LS-5
TLM が 0.5 以下であり、デフォルト時に重大な損失を受けるリスクが高いトランシェ。
出所: フィッチ
TLM(トランシェ損失倍率、Tranche Loss Multiple)は、トランシェのサイズを裏付資産プールにおける
ベース・ケース予想損失額で除した値。
はじめに
フィッチの格付は、従来、証券が最終満期までにデフォルトする確率を示唆するも
のであり、デフォルト時の損失の程度については、示唆していない。
この点に対応するため、フィッチでは、従来の長期信用格付とともに証券レベルで
損失度格付を導入することとした。伝統的な企業債務と多くの SF 債務とではデフォ
ルト時損失に大きな違いがあり、この点を考慮すれば、損失の程度に関する追加的
な開示は、相応の付加価値を提供することができると考えている。SF 案件において
は、支払順位の相違やトランシェの相対的な厚みによりデフォルト時損失率の程度
は大きく異なりうる。この点は、現在のフィッチの SF 長期信用格付では示唆してい
ないものの、投資家にとっては検討すべき重要なポイントとなる。
根拠
フィッチの長期信用格付は各格付レベルに想定される一定のストレス環境下におい
ても、証券がデフォルトせずにもちこたえる可能性を示すよう考案されている。SF
証券の長期信用格付においては、格付分析上、裏付資産のデフォルト確率と損失率
のいずれも考慮されているが、証券自体の格付は、デフォルト確率(いわゆる
「ファースト・ダラー・ロス」の可能性)のみを示唆している。当該格付は、デ
フォルトが発生した場合の証券の実現損の程度を、分析の対象としていない。
• 長期 信用格付上 、高格付
が付 され一定の 厚みのあ
るト ランシェは 同様の厚
みの 劣後トラン シェに比
べ、 デフォルト する確率
が低 いため、実 際の損失
はか なり低くな る可能性
が高い。
• 損失率格付は、常にデ
フォ ルト確率( 長期信用
格付 )とともに 考慮する
ことが必要である。
デフォルト時損失の程度は、フィッチにおける既存の SF に関する長期信用格付上考
慮されていない一方、SF 案件では、「厚みがある」高格付の優先トランシェは、
「厚みの薄い」メザニンおよび劣後トランシェによって信用補完されているケース
が多いことを考えると、投資家にとっては考慮すべき重要な事項である。裏付資産
について実際に発生したデフォルトまたは損失が当初格付の際の想定ストレスレベ
ルを超える場合、裏付資産のデフォルト率または損失率の上昇が比較的緩やかに起
こることを想定すると、厚みがある優先トランシェと比べて、特に厚みが薄い劣後
トランシェの損失率は急速に上昇しやすい。ただし、一定の厚みがある高格付のト
ランシェは、厚みが同等である劣後トランシェに比べ、実現損失は低くなることに
留意すべきである。これは高格付のクラスが全損するほど裏付資産に損失が発生す
る確率が低いためである。したがって LS 格付は常に長期信用格付で示されるデフォ
ルト確率とともに考慮する必要がある。
ストラクチャード・ファイナンス損失度(LS)格付基準
2009 年 2 月
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LS 格付の決定方法
LS 格付は、五段階の尺度を用い、簡潔な序列によってデフォルト時損失に関する相
対的なリスクについての指標を投資家に提供するものである。LS 格付カテゴリーの
定義は 2 ページの表に概説されている。格付カテゴリーは、トランシェ損失倍率
(Tranche Loss Multiple (TLM))によって決定される。TLM は以下のとおり算出され
る。
1. トランシェ・サイズを裏付資産プールの大きさに対する割合によって示す。
2. ベース・ケースにおいて案件の全期間に亘ってプールから発生すると予想される
累積損失率を計算する。このベース・ケースは通常、長期信用格付「B」に対応
する水準の累積損失率となる。
3. トランシェ・サイズ(1)をベース・ケースの損失率(2)で除したものをトランシェ
損失倍率(TLM)とする。
例
実際の LS 格付の適用は以下のとおり例示される。
例 1: 「BBB」 トランシェ、通常のトランチング
例 1:「BBB」 -通常のトランチング
例
AAA
A
BBB
合計
ベース・ケース損失
構成比(%)
70
22
8
100
5
TLM 算式 (%)
70 / 5
22 / 5
8/5
TLM(倍)
14
4.4
1.6
LS 格付
LS-1
LS-2
LS-3
出所: フィッチ
例 1 では、ベース・ケース損失が当初裏付資産残高の 5%となっている RMBS のプー
ルについて、全体の 8%部分が「BBB」のトランシェとなる証券化案件について、当
該トランシェに優先するトランシェが「A」の場合を示している。このケースでは、
TLM は 8%/5% と計算され 1.6 倍となる。この倍率の場合、前頁の表より LS 格付は、
「LS-3」となる。
例 2: 「BBB」 トランシェ、「ハイパー・トランチング」
例 2:「BBB」 -ハイパー・トランチング
例
AAA
A
BBB+
BBB
合計
ベース・ケース損失
構成比(%)
70
22
7
1
100
5
TLM 算式(%)
70
22
7
1
/
/
/
/
5
5
5
5
TLM(倍)
LS 格付
14
4.4
1.4
0.2
LS-1
LS-2
LS-3
LS-5
出所: フィッチ
例 2 では、例 1 と同様にベース・ケースの損失が 5%となる RMBS のプールについて
「BBB」が例 1 より「薄い」トランシェとなる場合を検討している。例 1 では、
「BBB」のひとつ上のクラスが「A」であったが、例 2 では「BBB+」となるケース
を想定している。この例では、「BBB」の格付レベルにおける予想損失と「BBB+」に
おける予想損失の差が、「BBB」の格付レベルにおける予想損失と「A」における予
想損失の差に比べ小さくなるため、「BBB」のトランシェの厚みが薄くなっている。
ストラクチャード・ファイナンス損失度(LS)格付基準
2009 年 2 月
3
Structured Finance
このケースでトランシェ・サイズが全体の 1%とすると、TLM = 1%/5%、つまり 0.2 倍
となる。この場合、LS 格付は、「LS-5」となる。
例 3: 「AAA」 トランシェ、「スーパー」/「サポート」シニア・トラン
シェ
例 3:「AAA」 -「スーパー」 / 「サポート」 シニア
例
AAA (スーパー・シニア)
AAA (サポート・シニア)
A
BBB
合計
ベース・ケース損失
TLM 算式 (%)
構成比(%)
60
10
22
8
100
5
60
10
22
8
/
/
/
/
TLM(倍)
LS 格付
12
2
4.4
1.6
LS-1
LS-3
LS-2
LS-3
5
5
5
5
出所: フィッチ
LS 格付は、キャピタル・ストラクチャー上、上位となる部分に関して追加的な情報
を提供することにもなる。近年の SF 案件の中には「AAA」のトランシェの中でも信
用度の異なる複数のトランシェが発行される場合がある。長期信用格付上は、これ
らは同一の標記となっているが、LS 格付は、確率は低いもののデフォルトが発生し
た際の相対的な損失度に関する見解を提供するものとなる。
前述のベース・ケース損失が 5% となる RMBS プールの例を使い、「AAA」の格付に
見合う信用補完水準(すなわち予想損失)が 30%であると仮定すると、「AAA」の大
きさは 70%となる。しかし、発行体が、60%の「スーパー・シニア AAA」とこれに劣
後する 10%の「サポート・シニア AAA」を発行する場合、これら 2 つのトランシェの
TLM は大きく異なることになる。スーパー・シニアの場合には、60%/5%、12 倍とな
り、LS 格付は「LS-1」、一方サポート・シニアでは 10%/5%、 2 倍となり、LS 格付は
「LS-3」と長期信用格付が「A」のトランシェよりも低位の LS 格付となる。このよう
なストラクチャーのもとでは、デフォルト・リスクは非常に小さい場合でも、デ
フォルトが発生した場合の潜在的な損失率が比較的高くなりうることを示している。
要約
例
ベース・ケース損失(%)
「BBB」トランシェ・サイズ
(%)
「AAA」トランシェ・サイズ
(%)
TLM (倍)
LS 格付
ひとつ上のトラン ひとつ上のトラン
シェが「A」である シェが「BBB+」
「BBB」
である「BBB」
5
5
1
8
「AAA」
スーパー・
シニア
「AAA」
サポート・
シニア
5
該当なし
5
該当なし
該当なし
該当なし
60
10
1.6
LS-3
0.2
LS-5
12
LS-1
2
LS-3
出所: フィッチ
サーベイランスおよび格付アクション
LS 格付の尺度は、新規および既存の格付案件の双方に適用される予定である。時間
の経過とともに、LS 格付についても、格付アクションの対象になるケースも出てく
ることも予想される。しかし、トランシェの LS 格付は、デフォルト時を想定して付
与されるものであり、長期信用格付の変更が、必ずしも LS 格付に影響するとは限ら
ない。ただし、ベース・ケース損失に関する予想を変更する場合や LS 格付が回収率
格付(Recovery Ratings)に置き換わる場合(後述)などは、LS 格付が変更されるこ
とになろう。なお、LS 格付が変更される場合としては以下が考えられる。
ストラクチャード・ファイナンス損失度(LS)格付基準
2009 年 2 月
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Structured Finance
•
レバレッジの低下:裏付資産からの元本弁済が進むにつれて、元本回収金は通常
ノート保有者にパススルーされるが、多くの場合、最優先のトランシェのノート
の償還に充当され、最優先トランシェの元本償還が進むことになる。この場合、
トランシェの相対的な大きさも変わることになる。案件のレバレッジが下がるに
つれ、全体の中で優先部分の占める割合が減少していき、メザニンおよび劣後部
分の割合が増加していくことになる。分割償還の進行に伴い、優先ノートのサイ
ズが小さくなると、当該トランシェの厚みが薄くなっていくことになる。その結
果、デフォルトした場合に損失を吸収できる許容度が低下するため、LS 格付が引
き下げられるケースも生じよう。反対にメザニンおよび劣後トランシェについて
は案件に占める相対的なサイズが大きくなり LS 格付が引き上げられるケースも
あろう。ただし、実際には、レバレッジ低下により LS 格付を変更するにあたっ
ては、分割償還の進行とベース・ケース損失変更との相互の関係についても考慮
する必要があり、実際に格付変更に至るケースは限定されうる。
•
ベース・ケース損失の変更:時間の経過とともに、 ベース・ケース損失に関す
る想定を変更する場合がある。実際のパフォーマンスが当初想定を下回る場合、
サーベイランスのプロセスにおいて、残存期間におけるベース・ケース損失を見
直し、増加させることがある。この結果、トランシェ・サイズを修正後ベース・
ケース損失と比較して TLM を算出すると、倍率が低下する可能性がある。この場
合、LS 格付が引き下げられることもある。
同様に、案件のシーズニングが進むにつれ、実現損が発生しながらも、損失水準が
ベース・ケースでの予想の範囲内にとどまり、残存裏付資産ポートフォリオのベー
ス・ケース損失が次第に低下する場合もある。このベース・ケース損失の変更と格
付対象トランシェの分割償還状況との対比にもよるが、結果として LS 格付が引き上
げられるケースも生じよう。
回収率格付(Recovery Ratings)との関係
• 損失度(LS)格付はフィッ
チの既存の回収率格付と
は異なる概念である。
• 回収率格付はディストレ
スト状態となった証券に
対してのみ付与されるも
のであり、将来的な回収
見込みの程度について見
解を表明するものであ
る。
• LS 格付は、ディストレス
ト状態にない証券に対し
て付与され、証券がデ
フォルトした際に高い損
失を被るリスクの相対的
な程度について示すもの
である。
フィッチでは、既に損失度に関する尺度、すなわち回収率格付(Recovery Rating
(RR))を導入している。回収率格付は、時間価値を考慮した将来的な回収額の見込
みに関する見解を表明するために導入されたものである。回収率格付は、ディスト
レスト状態にある証券、つまりデフォルト状態にあるか、または約定満期時点でデ
フォルトすることが見込まれる証券に限定して付与される。このようなディストレ
スト状態にある証券に対しては、当初契約上の条件と比較して見込まれる損失の程
度に応じて、「CCC」から「C」の格付が付与されるとともに、回収率格付が付与さ
れ、債券がディストレスト状態にあることが示されることになる。
相対的な尺度として、LS 格付は、回収率格付と異なる。回収率格付が絶対的な回収
率または損失の度合いに基づき序列を示す見解であるのに対して、LS 格付は相対的
な回収率または損失の度合いに基づくものである。デフォルト時の回収率について、
相対的なものと絶対的なものの二つの尺度を提示することにより、利用者を混乱さ
せる可能性があることはフィッチも認識している。このため、LS 格付はディストレ
スト状態にない証券にのみ適用される。つまり、「AAA」から「B」カテゴリーの格
付の証券に対してのみ LS 格付が付与されることになる。ディストレスト状態にあり、
長期信用格付が「CCC」から「C」のレンジにある証券については、引き続き、回収
率格付が付与され、LS 格付は付与されない。しかしながら、LS 格付と回収率格付に
は一定の直観的相関関係がある。
なお、証券がディストレスト状態となり、長期信用格付が「CCC」から「C」のレン
ジまで格下げとなった場合には LS 格付は取り下げられ、回収率格付が付与されるこ
とになる。
ストラクチャード・ファイナンス損失度(LS)格付基準
2009 年 2 月
5
Structured Finance
Q&A
新たな格付尺度を導入することで混乱しないか?
既存の長期信用格付に付加する形で新たな格付尺度を導入することは、利用者への
過剰な情報提供となるリスクはある。しかしながら、この新たな格付尺度の分析お
よび理解のために利用者が時間を費やすことによって、伝統的な長期信用格付が対
応していない損失の程度に関する情報がもたらされることは、有用であろうと考え
ている。
LS 格付は、格付ウォッチの対象となるのか。またアウトルックが付されること
があるのか?
否。格付ウォッチやアウトルックは、トランシェに付与される長期信用格付に対し
てのみ引き続き付される。格付ウォッチまたはアウトルックそれ自体は、LS 格付に
よって示された損失の程度が現実のものとなるリスクが以前より高まったことを示
唆することとなろう。
すべてのアセット・クラスで「ベース・ケース損失」の想定を行っているわけで
はないが、このような場合には、LS 格付はどのように示されるのか?
裏付資産の粒が比較的細かい RMBS や消費者 ABS において通常用いられるベース・
ケース損失の概念は、たとえば一定の CMBS のように、アセット・クラスによっては、
存在しない場合がある。LS 格付は、まずベース・ケース損失が決定可能なアセッ
ト・クラスについて導入することとし、ベース・ケース損失に関する概念がないア
セット・クラスについては、代替手法によることとするが、これらの LS 格付手法に
ついては別途公表していく予定である。
LS 格付では、超過スプレッド、準備金勘定やヘッジ手段 といったストラク
チャー上の特性が考慮されていないが、その格付手法があまりに単純化され過ぎ
るとは考えられないか?
フィッチの提案においては、超過利息、準備金勘定やその他のストラクチャー上の
特性を考慮する前の裏付資産の予想損失をもとに LS 格付を決定することとしている
が、これによりレバレッジと裏付資産の質に焦点を当てた分析することができ、か
つ適用を簡略化できると考えている。これにより、一部の証券に関しては、リスク
評価上その有用性が相対的に高くないとされるケースもあろう。しかし、より詳細
なモデルに基づく複雑な分析手法を用いた場合、最終的に、モデルにかかるリスク
を高める場合もあり、また透明性の低下を招く場合もあると考えている。ストラク
チャー上の手当てを検討した場合と結果に大きな相違が生じることはないと考えて
いる。
なぜトランシェの大きさのみでなく、ベース・ケース損失に関連付けて考慮する
こととしたのか?
フィッチでは、単にトランシェの大きさのみを考慮するのでなく TLM の方が優れて
いると考えている。トランシェがデフォルトするという想定は、現在のベース・
ケース予想損失を超過することを含意しているが、現在のベース・ケース予想損失に
トランシェ・サイズを関連づけることによって、トランシェに重大な損失を与えう
るような裏付資産の損失につながりうる分散を計測するためのよりより基準となる
と考えている。TLM が大きいほど、トランシェが毀損に至るまでに要する裏付資産
の損失の分散も高くなる。
なぜキャピタル・ストラクチャー上最劣後または逆に最優先する部分からの距離
により、当該トランシェに損失が発生する可能性の低さについての評価を組み込
まなかったのか?
そうした概念を導入すれば、一定レベルの損失が発生する蓋然性がいかに低いかを
示すことによって、デフォルト確率という要素を分析に混入し始めることとなる。
ストラクチャード・ファイナンス損失度(LS)格付基準
2009 年 2 月
6
Structured Finance
その結果、長期信用格付と重複する部分が生じ、長期信用格付の水準との高い相関
が生じることが予想される。したがって、LS 格付の長期信用格付に対して付加され
る価値が限定される恐れがあると判断した。
なぜ「B」格付シナリオにおける想定をベース・ケース損失とするのか?
フィッチでは、多くのアセット・クラスの格付グループにおいて、定常状態におけ
る予想損失の水準を意味するベース・ケース損失を分析の一環として決定している。
このベース・ケースにおける損失水準を基準とした信用補完水準により、「B」カテ
ゴリーの格付を付与することが多い。格付グループの中には、アセット・クラスの
性質上「ベース・ケース」という概念自体を使用していないことがあり、この場合
については、LS 格付の代替手法を別途考案する予定である。
LS 格付は、国内格付(National Ratings)が付与されている SF 証券に対しても
付与することになるのか?
付与していく予定である。
(本レポートは 2009 年 2 月 17 日に公表された英語版「Criteria for Structured
Finance Loss Severity Ratings」を翻訳したものです。)
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当該国通貨に換算した額)の範囲内であることが一般的です。また、当社は年間一括手数料を受領し、特定の発行者による発行案件や、特
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額は 1 万米ドルから 150 万米ドル(米国以外の通貨に関しては、当該国通貨に換算した額)の範囲内となることが予想されます。米国証券
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ストラクチャード・ファイナンス損失度(LS)格付基準
2009 年 2 月
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