作業学習(食品班)

中学部「作業学習」
(食品班)学習指導案
日
時:平成27年7月15日(水)
3・4校時 (10:30~12:15)
場 所:釜石祥雲支援学校 家庭科室
対 象:中学部1年(2名) 2年(2名)
3年(2名) 計5名
授業者:平賀容子(T1) 佐藤優(T2)
1
題材名「菓子作り」
2 題材設定の理由
(1)生徒について
対象生徒は、知的通常学級に在籍する1年生から3年生までの5名である。
どの生徒も菓子作りに興味・関心が高く、楽しみつつ意欲をもって取り組んでいる。作業内容、活
動の流れ、作業の場での挨拶、報告の仕方、仕事をする態度など少しずつ覚えつつある。
菓子作りでは、レシピに沿った正確な計量、丁寧な手作業が求められる。レシピを見ながら、一人
で作業を進められる生徒や、数字のマッチングはできるが、量の多少の理解が難しい生徒や、意欲
があり一生懸命取り組むものの細かな手作業が不得手な生徒など、その実態は様々である。そのた
め、個に応じた作業内容や環境設定、支援が必要である。また、菓子作りでは立ち作業を行うことが
多いが、体調面で配慮を要する生徒もいる。日常生活で、衛生面に配慮を要する生徒もいるが、菓子
製造に意欲をもち、自ら身だしなみ、衛生に気を配るようになってきている。
製造中の報告・確認や販売活動での接客などで必要なコミュニケーション力は、徐々に身について
きているものの、相手の目を見て話す、相手に伝わる適度な声の大きさで話す、笑顔で明るく接客す
る、場に応じたやりとりをするなど更なる課題が挙げられる。
(2)題材について
本題材で取り組んでいる「菓子作り(食品班)
」は、今年度から新たに設けた作業種である。昨年
度は、前期に「缶つぶし」後期に「紙すき」を行ったが、より一層の教育的価値、実態に応じた指導、
製品の利用価値の高さなどをめざし、
「紙すき班」
「食品班」の 2 班を設定し、それぞれ作業体験し
た後、生徒の希望、実態に応じて班編成した。
「食品班」の作業内容は、菓子製造(クッキー、ケーキ等)、販売準備(ラベル作り、袋詰め等)、販
売活動である。これらの活動を毎週繰り返すため、生産から消費への流れがわかりやすい。菓子の
でき具合や販売状況から反省点、改善点を生徒自ら考えられるようにし、次の菓子製造や販売活動
に生かして活動を発展的に展開していきたい。
製造では、一連の作業を最初から最後まで一人で取り組んだり、共同で 1 つの菓子製造に取り組
んだりする 2 通りのパターンを設定している。このことにより、生徒の実態や上達状況に応じて、
作業内容を段階的に多様に組み変えていくことができる。そして、
「わかる」
「できる」状況のもと、
いずれの作業においても自ずと責任感を感じ、やりがいをもって取り組めるようにしたい。
販売活動では、接客を通して、自分たちの作業活動を人に喜んでもらえる、人の役に立つことを感
じ取り、自己有用感と達成感を味わえるようにしたい。また、社会から求められる仕事の場でのコ
ミュニケーションのあり方についても、身につけられるようにしていきたい。
(3)指導について
今年度、本校の課題別研究グループ(作業学習)の研究では「生徒一人一人が自己有用感をもち、
生き生きと活動できる授業づくり」を研究主題に設定し、「わかる」「できる」状況作りを基盤とし
た主体性を育む授業づくり、働く意欲・態度の育成をめざしているところである。そして、高等部進
学や、学校卒業後の社会参加を見据え、生きがい・やりがいをもって生活ができるように「つなぐ」
視点も大切にしていきたいと考えている。
指導においては、作業内容や手順を個に応じてわかりやすいように視覚支援も含めて提示したり、
個に応じた教材教具を用いたり、制限のある空間の中で落ち着いて作業に集中できるように作業場
所や配置など環境設定したり、活動の流れを毎回同じようにして見通しがもてるようにしていきた
い。そうすることにより、生徒が自信をもって自ら考え、判断・決定し、進んで行動できることを
めざしていきたい。
また、作業日誌を活用した目標設定、振り返り、評価を通して、生徒自ら自分の課題を意識して
向上していけるようにしていきたい。
3 題材の目標
(1)作業内容や自分の役割を理解し、責任をもって作業に取り組む。
(2)レシピを活用し、正確・丁寧・安全に作業する。
(3)販売活動を通して、人と関わり、達成感や自己有用感を感じとる。
4
題材の指導計画(総時数210時間)
主な学習活動
○食品班作業内容の理解
第1次
・オリエンテーション ・簡単な菓子作り体験
○前期校内実習
第2次
・菓子製造 ・販売
○菓子製造・販売
第3次
第4次
第5次
第6次
第7次
第8次
○前期のまとめ
・ご苦労さん会
○菓子製造・販売
・PTAバザー(10 月)
○後期校内実習
・菓子製造 ・販売
○菓子製造・販売
○1 年間のまとめ
・1年の振り返り ・ご苦労さん会 ・来年度に向けて
期間・時数
4~5月
20時間
6月1日~12日
50時間
6~9月
42時間
(本時17,18/42)
9月
2時間
10月~12月
20時間
11月24日~12月4日
50時間
1~3月
24時間
3月
2時間
5 本時の指導
(1)本時の目標
①自分の役割を理解し、進んで菓子作りに取り組む。
②終了時刻まで時間いっぱい作業に取り組む。
(2)生徒の実態と目標
氏名
単元における生徒の実態
作業担当
A
・確認を忘れてしまうこ
とがあるが、レシピを
チーズケーキ作り
見て、一人で進めよう
クッキー成形
とする。
・周囲の刺激で集中が途
切れることがあるが、
活動の流れを覚えると
ほぼ順序どおりに活動
を進める。
本時の目標
支援の内容・工夫
・報告や確認を確実に行
い、一人でチーズケー
キを作る。
・一つの工程に集中できるよう
に、工程ごと1枚ずつに分けた
レシピカードを活用する。
・確認を意識できるように、レシ
ピカードの中に「確認お願いし
ます」の文章を入れる。
・作業に集中できるように、他の
生徒と場を分ける。
・作業の後半の片付けの ・活動の後半も指示に従 ・菓子作りが終わったあとに片付
場面では、疲れてきて、
って、片付けに取り組
けをすることを確認する。
活動を止めてしまう。
む。
・活動がわかるように、片付けを
する場所と内容を言葉掛けで
伝える。
・疲れが見えたら、座って作業す
るように促す。
B
クッキー生地作り
クッキー成形
C
・疲れてくると活動を止
めてしまうことがある
が、自分の仕事には意
欲的に取り組む。
・友達と一緒にクッキー ・タイマーを活用して交替で電動
生地作りをする。
ミキサーを使う。
・共同作業がしやすい作業場所で
行う。
・気分にむらがあり、集
中が途切れるとふざけ
ることがある。
・活動中に椅子に座るな
ど、体調面への配慮が
必要である。
・指示を聞きながら、自 ・体調面に配慮し、座って作業す
分から片付けに取り組
る場面を設定する。
む。
・集中が途切れたときは、片付け
をすること、片付ける道具等を
受け取る場所を確認し、活動に
戻るように促す。
・正確な場所に道具を片付けられ
たときには称賛する。
・友達の作業進度を意識 ・流れのわかるレシピを用いる。
しながら、レシピに従 ・次の作業について早めに言葉掛
って作業する。
けをし、見通しがもてるように
する。
・決められた工程に従っ
て、作業できる。
クッキー計量、
生地
作り
クッキー成形
D
チーズケーキ作り
クッキー成形
・雑談では普通に話すが、 ・指示された作業が終わ ・作業指示をするときに、終わっ
返事や報告になると構
ったら報告を確実に行
たら報告するように伝える。
えてしまい、声や身振
い、活動が途切れない ・萎縮しないよう、大きな声を出
りが小さくなり、相手
ようにする。
すことは促さない。適切な声で
に伝わりにくい。
報告できたときは称賛する。
・意欲的で、教えたこと ・レシピを見て、一人で ・食材の写真とグラム数だけ記し
を忘れずに取り組む。
チーズケーキを作る。
た簡略レシピを用いる。
・文章の読み取り、数量
の多少の理解が難し
い。
・注意転動が多く、おし
ゃべりしたり、集中で
きず作業が雑になるこ
とがある。
E
クッキー生地作り
クッキー成形
班長
・口頭での簡単な指示が
理解できる。
・クッキー作りに意欲的
である。
・周囲に気を取られたり
自分の役割以外のこと
を始めたりして、作業
を中断することがあ
る。
・気分にむらがある。
(3)本時の展開
別紙
・終了時刻を意識しなが ・集中が途切れそうなときは、集
ら、丁寧にクッキーの
中するよう言葉を掛け、集中し
成形をする。
ているときは、静かに見守る。
・成形作業に取りかかるとき、作
業量と終了時刻を確認する。
・友達と協力してクッキ ・タイマーを活用して交替に電動
ーの生地作りをする。
ミキサーを使う。
・共同作業がしやすい作業場所で
行う。
・生地の混ざり具合を報告、確認
するときに、称賛する。
・飽きずに、最後まで作 ・意欲がもてるように、クッキー
業に取り組む。
の生地作りなど得意な作業に
取り組む。
・手が空いたら、次に何をするか
確認して、作業が途切れないよ
うにする。
(4)配置図
【クッキー、チーズケーキ作り】
出入り口
黒
B
洗濯機
板
E
C
な がし
T1
ガス台
な がし
D
冷蔵庫
冷蔵庫
T2
A
電子レンジ
【クッキー成形】
出入り口
T1
E
黒
洗濯機
板
B
な がし
D
ガス台
な がし
A
C
冷蔵庫
冷蔵庫
T2
電子レンジ
(5)評価
①生徒が作業内容、自分の役割を理解して、進んで菓子作りに取り組むことができたか。
②生徒が自分の作業に集中して最後まで取り組むことができたか。
(3)本時の展開
時間
10:30
学習内容
1作業日誌記入
・目標確認
(10)
10:40
学習活動および指導の手立て・留意点
準備物
・日誌を記入したら、教師に点検を依頼し、前時の活動を振り返りながら今日の目標を確認する。
作業日誌
一人で日誌記入が難しい生徒は、教師と一緒に話し合いながら、目標を決める。
作業内容掲示
2身じたく
・T1 は黒板の前で待ち、できるだけ早く始めることを意識づける。
作業場所掲示
3始まりのミーティング
・班長が、できるだけ一人で進行するように見守りを中心とした支援をする。
ミーティング進行表
・挨拶
・しっかりと声を出して姿勢良く挨拶することを意識できるように、教師もきちんと挨拶する。
レシピ
・作業内容の確認
・活動の見通しがもてるように、黒板掲示を活用して作業内容を確認する。レシピ、準備物カードを渡す。
準備物カード
・身だしなみ確認
・班長の掛け声で作業に取りかかる。
4 作業
E(班長)
B
・クッキー作り
C
クッキー作り
D
チーズケーキ作り
A
チーズケーキ作り
・チーズケーキ作り
タイマー
準備物カード
レシピ
生地作り道具・材料準備
・準備カードを1枚
・準備物が揃ったら
計量準備
道具・材料準備
・準備物が揃ったら、 ・専用のレシピを用
ずつ持って道具を
報告、確認を必ず
報告、確認し、作業
取りに行く。
する。
を始める。
計量
いる。
・準備物の確認をし
道具・材料準備
・専用のレシピ、計り
を用いる。
・準備物の確認をし
っかり行う。
っかり行う。
チーズケーキ生地作り
チーズケーキ生地作り
・正確な計量ができ
・レシピに従って、
・報告確認の声の大
るよう丁寧に作
作業を進められる
・共同作業を意識できるようにする。
きさが適切だった
業するよう促す。
ように、報告、確
・生地を混ぜたら、その都度教師に報告し、
ときは称賛する。
生地作り
・1 分交替で生地を混ぜるようにタイマー
を活用する。
でき具合を確認する。
・生地に入れる順に
材料を計量する。
・適宜使い終わった
認を確実に行う。
オーブン加熱
物を片付ける。
・材料、道具はそれ
・オーブンを加熱す
・自分の作業が終わ
ぞれのトレイに、
ったら報告し、次
使った食器等は、
粉ふるい
の作業指示(クッ
洗いかごの中に入
・粉ふるいを2回す
キー成形、道具の
れる。
る。
る。
・適宜使い終わった
準備や片付け)を
受ける。
調理器具
食材
クッキー成形補
助シート
物を片付ける。
成形道具準備
・5人分準備する。
・3人で役割を分担して、生地に粉をふるい混ぜる。
クッキー成形
・作業しやすいように、ボウル3個に生地を取り分ける。
・同じ分量ぐらいで生地をまとめ、補助線シートの入ったトレイの上に置くように伝える。
・丁寧さと時間を意識するよう促す。
・E とBは交替で行
う。
・E とBは交替で行
う。
・○の個数が少ない
・○の個数が少ない
補助シートを用い
補助シートを用い
る。手助けが必要
る。
なときは、教師と
一緒に行う。
・補助シートを用い
・補助シートを用い
る。
る。
・補助シートを用い
る。
・ 教 師 が 仕 上げ を 行
う。
・オーブンに天板を入れるときは、やけどをしないように注意する。
・2回目以降の焼き方は、教師が行う。
・片付け
洗い物・片付け
・流れ作業になるように、洗い方、すすぎ方、ふき方、しまい方と作業を分担する。
・クッキー成形作業が終わらない生徒がいるときは、適宜作業の分担を変更する。
ふき方1
しまい方
洗い方
すすぎ方
ふき方2
・丁寧にふくよう促
・疲れが見えるとき
・油物は後から洗う
・食材がついている
・丁寧にふくよう促
す。
・仕上げふきを教師
が行う。
は、しばらく座っ
よう確認する。
ときは、洗い方に
てオーブンの様子
・最後に流しをきれ
再洗いを依頼す
を見守る。
いにする。
る。
す。
・最後にふきんを洗
(70)
11:50
濯する。
5 掃除
・最後に流しをきれ
いにする。
・エプロンを外し、掃除に取りかかる。
作業日誌
・掃く場所、ぞうきんがけする場所をそれぞれ具体的に指示する。
6 作業日誌記入
(15)
12:05
・一人で日誌記入が難しい生徒は、教師と一緒に話し合いながら、良かった点、課題点を確認し記入する。
7 終わりのミーティング
・本時の振り返り
発表
・講評
12:15
(10)
・本時の作業で、良かった点を称賛し、課題点を確認し次回につなげる。
次回予告
・挨拶
・班長が進行する。
・頑張ったことを各自発表し、教師からのコメントと全員の拍手で互いに頑張りを認め合う。
・本時の作業内容の講評、確認しておきたいことを教師から話し、次時の作業の意識づけをする。
講評、確認点は 1~2 点に絞る。
・次回の活動内容を伝える。
・しっかりと声を出して姿勢良く挨拶することを意識できるように、教師もきちんと挨拶する。
ミーティング進行表