3月号 - PVTEC 太陽光発電技術研究組合

● PVTECニュース 第60号をお送りします。
● 巻頭言には、
経済産業省 産業技術振興課の藤原豊課長にご寄稿いただきました。
今年は、
技術研究組合制度化50周年ということで、
改めてこれまでの道のりを振り返り、
そ
の成果、効果や、課題を論じて下さいました。PVTECはいま活動している技術研究組合
(59組合)の中では最も歴史のある古株の一つになっています。
● 昨年12月21日に第22回PVTEC技術交流会を開催しました。招待講演にお招きした中
島睦男様は、現在、台湾で経営コンサルタントをされている立場から、台湾の電子産業の
現状や日本や米国、
さらに中国本土との戦略の違いを解説されました。講演後の質疑応
答は極めて熱の籠るものでした。
編
集
後
記
2012
Vol.60
● 又、
技術交流会の主要議題には「結晶シリコンPVモジュールの最新技術」
を取り上げ
ました。組合員4社に加えAIST NEDOの結晶モジュールコンソーシアムから最新技術
の報告をいただきました。
引き続いて総合討論では、
モジュール価格の異常な下落のなか
で、
日本の太陽光発電産業がどのようにして技術で勝ち残るか非常に活発な議論が交わ
されました。発表いただいた講師をはじめ、
討論に参加された皆様に深く感謝いたします。
● 国内のエネルギー問題をはじめ、太陽光発電は、現在、極めて厳しい局面に立たされ
ています。
しかし、
平成24年度にはいよいよ固定買取制度が開始されます。
これを契機に、
日本の太陽光発電は復活しなければなりません。PVTECに期待される社会的要請もさら
に強くなるものと考えます。
これらの課題に対応するためPVTECのより一層の基盤強化を
図らねばなりません。組合員各位、関係各位のご協力、
ご支援をよろしくお願いいたしま
す。
(H.S 記)
3月号
目 次
巻頭言 民間研究開発投資の促進に向けた施策について 経済産業省
技術振興課長 藤原 豊
2
<第22回技術交流会報告> 太陽光発電技術研究組合
7
交流会報告
開催報告
<第2回太陽電池モジュール信頼性国際基準認証フォーラム>
太陽光発電技術研究組合
11
システム情報科学研究院教授 白谷 正治
太陽光発電研究の立脚点を変えて
13
コラム 産官学
技術とコスト
九州大学 大学院
千葉工業大学 社会システム科学部
プロジェクトマネジメント学科教授 久保 裕史
14
太陽電池製品への認証の取組み
一般財団法人 電気安全環境研究所
理事・研究事業センター所長 芝田 克明
15
グリーンイノベーションを加速する環境・エネルギー開発センター
東レ株式会社
環境・エネルギー開発センター 所長 松村 一也
ニュース
平成24年3月10日
2012 Vol.60 3月号
古紙配合率100%再生紙を使用しています
委員会・分科会活動報告
事務局
17
編集後記
事務局
20
発行所:太陽光発電技術研究組合
発行人:善里順信
〒102-0074 東京都千代田区九段南4丁目7番13号 大島ビル5階
Tel 03-3222-5551
印刷所:(株)
サンワ
16
Fax 03-3222-5552
PVTEC 太陽光発電技術研究組合
Photovoltaic Power Generation Technology Research Association
巻頭言
民間研究開発投資の促進に向けた
施策について(「技術研究組合」制度など)
経済産業省
技術振興課長 藤 原 豊
1. 民間研究開発投資の状況
私ども経済産業省「技術振興課」は、一言で言えば、「我が国の民間企業・民間部門
の技術開発・研究開発を推進・振興」することをミッションとしています。
やや古いですが 2 年前のデータでは、日本の「民間企業」の研究開発投資額の総額は
「約 12 兆円」と言われています。これは、本年度の政府の研究開発費、要するに「研究
開発予算」である約 3 兆 6,000 億円の「3 倍以上」の数字となっています。
他方、2008 年秋のリーマンショック以降、この民間企業・民間部門の研究開発費は
落ち込みが激しく、また最近では小粒化・矮小化しているというデータもあり、この民
間研究開発をいかに効率的・効果的なものにしていくか、ということが私どもにとって、
大きな課題となっています。
2. 研究開発税制
そのための最大の手段の一つが「税制」です。具体的には「研究開発税制」が私ども
の有する、民間研究開発投資促進のための最大のツールとなっています。
御承知のとおり、日本の「法人税」は国際的に見ても、大変高い水準にあるわけです
が、他方、「研究開発税制」については、平成 15 年度の抜本的拡充を経て、今や諸外国
に引けを取らないグローバルスタンダードなものとなっています。
一言で申し上げれば、民間企業の試験研究費、これは研究部門の人件費のみならず材
料費や外注費なども含まれますが、その約 1 割、正確には 8% から 12% が、企業の支払
う法人税額そのものから控除できる、というものです。
この「研究開発税制」ですが、中小企業を含め、日本では全体で約 6,000 社が活用し、
総額約 3,000 億円分の減税効果に繋がっています。幾つかの大企業にとっては、100 億
円以上の減税となっています。
しかしながら、この研究開発税制については、平成 24 年度、すなわち 24 年 4 月以降、
法人税引下げの代償として、その一部が縮減、すなわち、控除上限が 30% から 20% に
引き下げられてしまいます。これに加え、3 年間は復興特別法人税も適用されるため、
2
法人税引下げにもかかわらず、この間は、いわゆる「研究開発型企業」の多くが増税と
なると考えられます。我が国の研究開発拠点の海外忌避・空洞化を防止するためにも、
本税制については、今後、速やかな再強化策を検討する必要があると考えています。
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3. 技術研究組合
次に、研究開発税制以外の、民間研究開発投資を促進する仕組みの一つとして、「技
術研究組合」(「技組(ぎくみ)」と略称しています。)について、ご紹介します。
(1)技術研究組合の目的・歴史など
まず「技組」の目的ですが、これは【図 1】にあ
るように、「共同研究」を行うためのビークル・組
企業
(組合員)
織体です。 もはや一者の技術シーズでは、 世の中
の多様かつ高度・複雑なニーズに対応することは
困難であり、企業・大学・個人の如何にかかわらず、
技術研究
組合
企業
(組合員)
「相互に補完関係を有する多くのパートナーが参加
する仕組み」 を、 それも製品開発段階からではな
く「研究開発段階」 から整備する必要がある、 そ
ういった問題意識から創設された制度となってい
大学・独
法等
「公的な
共同研究
プラット
フォーム」
ム
(組合員)
図1 技術研究組合の概念図
ます。
この技組の歴史は、第一次大戦後のイギリスにあります。当時イギリスはドイツから
の工業製品の輸入に悩まされていたのですが、自らの産業競争力を強化しようと、当時
「リサーチアソシエイション(RA)」という仕組みを作りました。我が国はこれを真似て、
今からちょうど 50 年前、昭和 36 年に同様の制度化を図ったのが、この「技術研究組合」
制度です。したがって、今年度は、我が国における技組制度「創設 50 周年」という記
念すべき年に当たっています。
この 50 年間で、 全部で「227」 の技組が創設されました。 もちろん多くの技組は既
に解散しており、現在活動中の組合の数は「59」となっています(【図 2】参照)。これ
(2012.3.1現在) (20番以降が、平成21年度法改正以後の設立)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
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28
29
30
自動車機器技術研究組合
バイオテクノロジ 開発技術研究組合
バイオテクノロジー開発技術研究組合
ファインセラミックス技術研究組合
家畜受精卵移植技術研究組合
超音速輸送機用推進システム技術研究組合
太陽光発電技術研究組合
食肉生産技術研究組合
機能性木質新素材技術研究組合
技術研究組合超先端電子技術開発機構
電子商取引安全技術研究組合
石油コンビナート高度統合運営技術研究組合
次世代モバイル用表示材料技術研究組合
フリーゲージトレイン技術研究組合
次世代半導体材料技術研究組合
日本GTL技術研究組合
バイオエタノール革新技術研究組合
技術研究組合BEANS研究所
触媒技術研究組合
技術研究組合次世代パワーエレクトロニクス研究開発機構
次世代パワーデバイス技術研究組合
光ストレージ技術研究組合
水素供給 ・ 利用技術研究組 合
技術研究組合光電子融合基盤技術研究所
ステレオファブリック技術研究組合
産業用超電導線材・機器技術研究組合
分子動力学抗体創薬技術研究組合
農林水産 食品産業マイクロ ナノバブル技術研究組合
農林水産・食品産業マイクロ・ナノバブル技術研究組合
グリーンフェノール・高機能フェノール樹脂製造技術研究組合
スペースランド技術研究組合
次世代宇宙システム技術研究組合
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58
59
自然免疫制御技術研究組合
海外水循環ソリューション技術研究組合
海外水循環ソリ
ション技術研究組合
技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センター
熱電変換技術研究組合
技術研究組合FC-Cubic
次世代LIC総合技術研究組合
複合材料体内医療用具技術研究組合
技術研究組合農畜産工業雇用推進機構
技術研究組合次世代レーザー加工技術研究所
超低電圧デバイス技術研究組合
技術研究組合単層CNT融合新材料研究開発機構
バイオブタノール製造技術研究組合
エピゲノム技術研究組合
土壌修復ラジアルウェル技術研究組合
MMG技術研究組合
技術研究組合Lignophenol&Systems
基準認証イノベーション技術研究組合
幹細胞評価基盤技術研究組合
次世代型膜モジュール技術研究組合
次世代化学材料評価技術研究組合
次世代プリンテッドエレクトロニクス技術研究組合
次世代レーザープロセッシング技術研究組合
次世代 然物化学技術研究組合
次世代天然物化学技術研究組合
日本海流発電システム技術研究組合
技術研究組合NMEMS技術研究機構
東京バイオマーカー・イノベーション技術研究組合
浜松地域活性化ICT技術研究組合
新世代塗布型電子デバイス技術研究組合
マイクロアルジェ産業技術研究組合
3
図2 現在活動中の技術研究組合
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3
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までの代表的な技組は、「太陽光発電システム」をはじめ、「超 LSI(大規模集積回路)」
や「Suica カード」などですが、多くのエポックメイキングな技術開発が、実はこの技
組の仕組みから生まれていることは余り知られていません。
(2)「カーブアウト型」共同研究の推進母体として
【図 3】の円グラフにあるとおり、我が国の特許の大部分は、やはり圧倒的に「大企業」
が保有しており、また、これらの大半は「未利用」であります。したがって、このような「知
財の活用」の観点からも、
「 カーブアウト」すなわち「大企業からの事業の一部切り離し」
により、ベンチャーを含め、「大企業発の事業創出」を図ることが重要と考えます。
また、【図 4】にありますように、現在、企業の研究費の社外支出が進んでいる状況
であることから、「他社との共同研究」を円滑にサポートする仕組みがより重要になっ
てきております。
このようなカーブアウトや共同研究のニーズに的確に対応できると思われる仕組み
が、主務大臣の設立認可を受けた、いわば「公的な共同研究プラットフォーム」である
「技術研究組合」制度だと考えております。
[%]
15
14.3%
14
13
教育・TLO・
公的研究
機関・官庁
2%
12
中小企業
15%
11
未利用件数
割合:50%
利用件数
割合:50%
10
9
2006年国内特許権(約103 万件)
の企業規模別割合
2009年国内特許権(約120万件)
の利用割合
8
7
大企業等
83%
年度
出典:総務省統計局「科学技術研究調査報告」
※社外支出研究費割合=社外支出研究費÷
(社内使用研究費+社外支出研究費)
資料:特許庁 知的財産活動調査
図3 国内特許保有件数の状況
図4 社外支出研究費割合の推移
(3)技組のメリット(法人格、税制など)
技 組 以 外 に も、 共 同 研 究 の た め の ビ ー ク ル は 存 在 し ま す。【図 5】 が そ れ ら の 比 較
表 で す が、 一 つ が 中 段 に あ る「 株 式 会 社・ 合 同 会 社( 日 本 版 LLC(limited liability
company))」、そして二つ目が、右段にある「日本版 LLP(limited liability partnership:
有限責任事業組合)」 です。 技術研究
区分
日本版LLC)
日本版
LLP
法人格
有り
有り
無し
(研究開発
期間中の)
累積しにくい
累積しやすい
累積しやすい
-
構成員課税
(パススルー税制)
可能
不可
欠損金
税制措置
組織変更
4
技術研
究組合
株式会社
合同会社(
特徴
試験研究用資産の「圧縮記帳」
賦課金に対応する「税額控除」
可能
長期間を要する研究開
発や、大規模な研究開
発にも適する。
短期間に収益が見込 設立が簡便。小規
める研究開発に適す 模な研究開発に適
る
する。
図5 共同研究体制の比較
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4
組合は、まさに、その 2 つの「いいと
こ取り」をしたもの、と言えます。
株式会社や合同会社は「法人格を有
する」という点がメリットですが、費
用を出す参加企業がその費用を実際に
は費用処理できないのが大きな欠点と
なっています。また、資本金を取り崩
して研究開発をせざるを得ないため、
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欠損金が累積して、その後の上場や資金調達に支障を生じてしまう可能性もあります。
他方、LLC については、参加企業が拠出金を費用処理できる点はメリットですが、今
度は法人格がない点が欠点となります。法人格がないということは、具体的には、資金
調達や関係者との取引の面で、極端に言えば研究所も簡単には建設できない、といった
問題も生じ得ます。
その点、技組は、その運営費用を、出資金ではなく、共同研究のメンバーすなわち組
合員から「賦課金」という形で集められますので、メンバー企業は支払った賦課金を自
社の研究開発費用と同様に費用処理できます。また、支払った賦課金は、前述した研究
開発税制の対象となりますので、メンバー企業はその約 1 割を法人税額から控除できる
ことになります。さらに、技組においては、賦課金で取得した試験研究用資産について、
簿価 1 円まで評価できる、すなわち「圧縮記帳」できますので、その資産を取得する年
度は、取得価額のほぼ全額を損金算入して税額を発生させずに済みます。
(4)技組法の改正(研究成果の実用化推進)
こうした技組制度の根拠法である「技術研究組合法」については、平成 21 年 6 月に、
抜本的な法改正を行いました。法改正のコンセプトを一言で言えば、そもそも共同研究
を行うためにあった仕組みを、共同研究のみならず事業化まで一貫して行えるものとし
た、という点です。
従来の技組は、繰り返しになりますが、「あくまで研究を行う組織」であって、営利
事業を行うことができませんでした。このため、せっかくの研究成果をそのまま実用化
することは困難でした。また、研究開発プロジェクトが終わると解散しなければならな
かったので、研究成果・知財などが散逸する恐れがありました。具体的には、特許権な
どの研究成果は特定メンバーが単独で所有するかメンバー間で共有するしかなく、した
がって、解散後に事業化のために特許権を再び集めようとした場合でも、一人でも反対
すれば必要な特許権が集められませんでした。
そこで今回の法改正により、技組の株式会社などへの組織変更が可能となり、そのま
ま解散することなく成果を直接実用化できるようにしたわけです。具体的には、メンバー
の 3 分の 2 以上の賛成があれば、解散することなく会社に組織変更できますし、また、
技組は法人格を持ちますから、その名義で研究設備や特許権の登録や、銀行取引なども
容易にでき、ノウハウを含めた研究成果の一元管理、研究成果のスムーズな事業化など
も可能になったと言えます。
前回の法改正では、これ以外にも、組合の行う研究開発事業として、製造分野のみな
らずサービス分野にも拡充した点に加え、「新設分割規定」を創設することにより、既
存の技組から特定の研究テーマを切り出して別途新しく別の技組を新設することも可能
となりました。また、設立手続も大幅に簡素化し、具体的には設立の際の総会の開催を
不要とするとともに、2 者だけでの組合設立も可能となりました。随分と使い勝手の良
5
い制度になったと思いますので、詳しくは私どもの HP をぜひ御参考にして頂ければ幸
いです。
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(5)法改正の効果
先述したとおり、法改正後、組合数が急増している要因ですが、【図 6】の③・④にあ
りますように、「大学」や「産業技術総合研究所などの独立行政法人」の「組合員資格」
を明確化した点にあると分析できます。まさに、この「技術研究組合制度」は、大学や公
的研究機関を中心に、「企業などの多くのパートナーを参加させる仕組み」としては有効
に機能しつつあると評価できます。
しかし一方で、⑥にありますが、「成果の事業化・実用化」を念頭に置いて整備致しま
した「組合の株式会社化」のスキームについては、改正後 2 年間以上を経て、未だ実績が
ない状況が続いております。
【図 7】にありますとおり、この組合制度を使った場合でも、
「研
究開発段階」から「事業化・実用化段階」に連続的に移行してスピーディに成果を出して
いくというのは難しく、様々な各種具体策、すなわち公的資金の活用を含め様々な制度改
革・基盤整備などの各種政策リソースを集中し、総合的な支援を行っていく必要があるの
ではないか、と考えているところです。
①設立組合員数の緩和
→ 組合員2者による設立組合:
組合員 者による設立組合 4組合
組合
②研究対象の拡大
→ サービス分野の組合の設立: 1組合
③大学の組合員資格の明確化
→ 大学が組合員となった組合: 9組合
→ 組合員となった大学: 13大学
④独立行政法人の組合員資格の明確化
独立行政法人が組合員となった組合:1
→ 独立行政法人が組合員となった組合:
18組合
<うち、法改正前組合への参加が3組合>
→ 組合員となった独立行政法人: 4法人
⑤預託金制度の創設(賦課金の前払いが可能)
→ 預託金制度導入組合: 4組合
⑥株式会社・合同会社への組織変更・新設分割
→ 実績なし
■次世代パワーデバイス(技) [富士電機・古河電工]
■グリーンフェノール・高機能フェノール樹脂製造(技) [RITE・住友ベークライト]
ラントテクノロシ ー・東レ]※設立後に組合員追加
東レ]※設立後に組合員追加
■海外水循環ソリ シ ン(技)[日立プラントテクノロジ
■海外水循環ソリューション(技)[日立フ
■バイオブタノール製造(技) [RITE・出光興産]
■浜松地域活性化ICT(技)<総務省所管>
●国立大学法人
東京農工大学、東京大学、大阪大学、東京工業大学、北陸先端科学技術大学院大学、お
茶の水女子大学、九州大学、北海道大学、埼玉大学
●学校法人
上智学院 関西学院 立命館 東京理科大学
上智学院、関西学院、立命館、東京理科大学
●独立行政法人
産業技術総合研究所、国立成育医療研究センター研究所、理化学研究所
●地域独立行政法人
●地域独
行政法人
東京都健康長寿医療センター
技術研究組合数の推移 ~法改正後、技術研究組合の設立は大幅に増加~
(2012.3.1現在活動中の59組合のうち、40組合(68%)が法改正後に設立された組合)
70
25
20
55
15
10
⑦技術研究組合の分割
→ 分割実績: 1件
34
5
<ファインセラミックス(技)から
ステレオファブリック(技)を新設分割>
→ 各項目の効果もあり、技術研究組合の設立数
が大幅に増加
33
60
50
40
39
32
30
0
-5
⑧創立総会の廃止等の手続き緩和
59
20
2006
2007
2008
2009
2010
2011
-10
10
0
新設数(左目盛)
解散数(左目盛)
年度末組合数(右目盛)
図6 技術研究組合法平成21年改正の効果(改正事項ごとの実績)
(共同)研究開発段階
事業化・実用化段階
企業等
(大学・公的
研究機関等
を含む)
企業等
企業等
円滑なカーブアウト(一部事業の切り出し)
(単独での切り出しは比較的困難)
(共同)研究主体
「技術研究組合」など
○民間ベンチャーキャピタル等
の活用・連携
など
経営者(マネジメント人材) 専門
経営者(マネジメント人材)、専門
スタッフ(営業・マーケティング、知
財管理等)といった人材の育成・
派遣等
実用化のための株式会社化等
(平成21年度技術研究組合法改正)
○海外実証支援等
(リスクマネー提供)
など
事業主体
(研究開発型ベンチャー)
・法人格、税制の恩典等あり
・「公的な研究開発プラットフォーム」として、
企業等を集める仕組みとして機能
○研究開発税制の拡充
○イノベーションボックス税制
○懸賞金(アワード)型研究開発制度
6
など
図7 「カーブアウト型共同研究ベンチャー」の創出・振興に向けて
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交流会報告
第 22 回 PVTEC 技術交流会報告
太陽光発電技術研究組合
2011 年 12 月 21 日( 水 )
東京市ヶ
谷 アルカディア市ヶ谷にて、第 22 回
PVTEC 技術交流会が開催された。プロ
グラムは以下の通りである。
第22 回 PVTEC 技術交流会 プログラム
1. 挨拶
技術交流部会長 2. PVTEC 事業進捗中間報告
京セラ㈱ 山谷 宗義
司会 JX 日鉱日石エネルギー㈱ 河野 岳史
薄膜シリコン PV コンソーシアム
PVTEC 斉藤 公彦
NEDO 信頼性 PV システム調査研究
PVTEC 伊藤 健司
アジア基準認証支援事業
PVTEC 山中 崇己
3. 招待講演
台湾の PV 産業―台湾電子産業の一系譜―
4. 結晶シリコンPVモジュールの最新技術
中島 睦男
司会 大日本印刷㈱ 太田 善紀
最新結晶シリコン太陽電池技術- 1
シャープ㈱ 中村京太郎
最新結晶シリコン太陽電池技術- 2
京セラ㈱ 山谷 宗義
最新結晶シリコン太陽電池技術- 3
三洋電機㈱ 木下 敏宏
薄型ウエハー加工技術
産総研における結晶シリコン太陽電池
NEDO 結晶シリコンコンソーシアム
コマツ NTC ㈱ 谷崎 啓
AIST 坂田 功
明治大学 小椋 厚志
総合討論 -30 分
5. 特別講演
太陽光発電産業の国際比較と日本再浮上への道
㈱資源総合システム 一木 修
7
6. まとめ 太陽光発電技術研究組合 理事長 桑野 幸徳
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冒頭の技術交流会部会長の挨拶のあと、現在、PVTEC が進めている委託研究を含めた 3
つの事業について、それぞれの担当者から進捗状況が報告された。 1.薄膜シリコン太陽電池
組合員7社・機関、6 大学の産学官のオールジャパン体制で臨んでいる。研究の実施場
所である AIST 内の集中研に主要な大型研究設備が導入され、稼働をはじめた。低コスト
CdTe 型や結晶シリコン型の価格低下の苦しい外部状況の中で、日本の得意技術として進め
てきた薄膜シリコン太陽電池の戦略等について報告された。
2.NEDO 信頼性 PV システム
NEDO における PV システムの「信頼性及び寿命評価技術の開発」の中で、PVTEC が基
盤技術の調査研究として進めている。国内の有識者、組合員の中の専門家を中心に「総合調
査委員会」と 3 つの分科会に分かれて昨年度から調査研究を進めている状況を報告した。平
成 24 年度に最終の報告書がまとめられる。
3.アジア基準認証支援事業
平成 22 年度の助成事業として佐賀県・電気安全環境研究所と共同で進めている特別事
業。「PV 認証・信頼性コンソーシアム」(21 組合員が参加)を中心に運営している。各種試
験装置の導入と試験開始の状況とともに、信頼性・寿命の基準認証の国際的展開のために
PVTEC が事務局として進めている “International PV Module QA Forum ”
(2 回目
は東京にて開催)
、その元で組織された 5 つの PV QA Task Group の活動が紹介された。
<招待講演>
1 「台湾の PV 産業―台湾電子産業の一系譜―
講演者の中島氏は、以前、日本の部材メーカーとして
PVTEC の委員を担当されていた。現在、台湾で経営の
アドバイザーをされている。台湾における PV 産業の現
在の状況、代表的なメーカーの特徴、競争力、経営の考
え方、更に、台湾 IT 産業の DNA を持つ PV 産業がこ
れまで実施してきた戦略を、中国、日本と比較しながら
解説した。
8
講演中の中島氏
台湾は、日欧に比べ、経営の機敏な
行動、会社さえ「商品」の一つと考え
る合理性を持った経営が特長である。
この戦略で国際的に急成長してきた
が、一方で Cell 生産に偏っていること、
対中国に比べると、まだ規模が小さ
く、土地・労務費が高いなどの弱み
がある。生き残りをかけて進めてい
る想定戦略についても述べられた。
図は、その時、示された競合分析
の例を示したものである。会場から
これらの分析に関し、多くの活発な
議論が交わされた。
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4.結晶シリコン PV モジュールの最新技術
最近の世界的に急激なモ
ジュール価格の低下に対し、日
本の太陽電池メーカーはどの
ようにこれを克服していくか
は重要かつ緊急な課題となっ
ている。中でも市場の主力で
ある結晶シリコン太陽電池モ
ジュールの最新技術の動向は最
も注目されるものである。モ
ジュールメーカーなど組合員 4
社(シャープ㈱、京セラ㈱、三
会場風景
洋電機㈱、コマツ NTC ㈱)と
(独)産業技術総合研究所、更に、現在 NEDO で進めている結晶シリコンコンソーシアムか
らそれぞれモジュール化の最新技術の話題を発表いただいた。
シャープ㈱からは、バックコンタクト太陽電池(BLACKSOLAR 太陽電池)の技術につ
いて設計から製造までの詳細な報告が、京セラ㈱からは同社がこれまで NEDO プロジェク
トで進めてきた多くのモジュール化要素技術が紹介された。又、三洋電機㈱からは HIT 太
陽電池についてセルの薄型化と長期信頼性への取り組みが、コマツ NTC ㈱からはワイヤソー
によるウエハーの最新の薄型スライス技術が報告された。産総研からは現在進めているいく
つかの技術と新たに福島に拠点を設けて開始する「次世代結晶シリコン PV コンソーシアム」
(仮称)の概要が紹介された。最後に、高品質シリコン結晶成長技術や、銅合金ペーストな
ど豊田工大と明治大を中心とした NEDO 結晶シリコンコンソーシアムの成果が紹介された。
各話題提供の発表後の総合討論では、講演者に対して以下のような質問がなされた
・電極材料の銀ペーストの代替えとして銅合金材料の展望は、どのように考えているか
・モノライクシリコンの水準(単結晶や現状の多結晶に比べて)は
・市場のモジュール価格はすでに予定の 3 ~ 4 年前倒しだが、いまの目標の前倒しとその
対策はなされているのか
・中国などの安価なモジュールに対し、戦略として高効率化だけで対抗できるのか
これらに対し、銅電極はコスト・資源からみて有望であるが界面の問題、信頼性を含めた
テストがまだ十分されていないこと、多結晶ではまだ転移の発生や軽元素の取り込みの影響
など解明されねばならない課題が多く残っていること、低コスト化に対しては、すでにコス
ト目標を前倒しし、人材を確保し、原料調達から全プロセスでのコスト低減のプロジェクト
も進められていることや、モジュールコストでなく、システム全体を含めた発電コストを含
めお客様からの価値を得る努力がされていることなどが報告された。高効率化は周辺機器の
低コスト化やシステム設計にも効果がある。
<招待講演>
1、太陽光発電産業の国際比較と日本再浮上への道
㈱資源総合システムの一木社長より、日本、アメリカ、欧
州、新興国の 4 つを軸に、シリコン原材料、部材量、結晶
シリコン PV、薄膜シリコン PV、周辺機器、住宅用システム、
システムインテグレータ、金融機関など、PV 産業の各要素
について詳細な比較分析が報告された。日本は住宅用発電
システム、又、部材に強いが、ポリシリコンなどの原材料
と発電システムのインテグレータは弱いと考えられる。
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9
講演中の一木社長
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最後に日本が 2012 年~ 2014 年
までの 3 年間をどう過ごすかとい
うことに対し、
「全量買い取り制
度化で安定した国内市場の拡大を
進めながら、産官学が一枚岩に
なって世界制覇するための技術開
発に徹し、2015 年に世界再浮上
を果たそう」と強いエールを送っ
た。
太陽光発電産業の国際比較
<桑野理事長のまとめ>
交流会の結びにあたって、桑野理事長からまとめが述べられた。
最近 EU のエネルギー政策をみると、再生エネルギー導入の比率を、現在の 9% のレベル
を 2050 年には 60% に引き上げる目標を掲げている。一方、原子力は現在の 13% から 4% 台
に引き下げている。これから LNG プラス新エネルギーの組み合わせでエネルギーを推進す
る考え方が主流になってくるであろう。
国の新しい政策として、固定買取制度が実施されることが決定された。固定買取制度のス
タートで、これからはモジュールの性能の指標を電力(/kW)から電力量(/kWh)で論議
しなければならない。又、
これをもとにした新しいビジネスモデルを立てなくてはならない。
電力量表示に関して、先月、オーストラリアで開催された「ワールド・ソーラーカーレー
ス」で象徴的な結果が報告された。日本の東海大チームが、断トツで優勝した。出力表示で
は少し低い日本のモジュール(HIT 型)を使ったものが、実際の大陸横断のレースでは圧
倒的に強かったことである。炭素繊維の採用などの要因もあるが、他の出場車の多くがある
特定のメーカーの出力表示の高いモジュールを使っていたため、その差が鮮明に示されるこ
とになった。実際のレースでは、オーストラリアの北端(ダーウイン)からアデレード(南)
まで、広い気象条件を走破しなければならない。
これからは、性能表示をその太陽電池がいくらエネルギーを生み出していくのかで勝負し
なければならない。信頼性、寿命も重要である。そのことを、消費者、システム設計者に十
分に訴えなければならない。
ワールドソーラーカーレースのコース
10
優勝した東海大学チーム
今回の交流会での発表では、PVTEC での薄膜シリコン太陽電池の他、信頼性の研究や認
証、その他のシリコン結晶系でも同様あるが太陽電池でオールジャパンのコンソーシアムで
の研究が広がってきたことが示された。今後、更に、日本が一丸となって技術開発を進めな
ければならない。
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報 告
第 2 回 太陽電池モジュール信頼性
国際基準認証フォーラム 開催報告
太陽光発電技術研究組合
2011 年 12 月 8 日(木)
シェラトン
都ホテル東京にて、PV モジュールの長
期にわたる信頼性の評価と基準認証につ
いてオープンに議論する場として、
「第
2 回太陽電池モジュール信頼性国際基準
認証フォーラム」が開催された。7 月に
サンフランシスコで開催された第 1 回目
と同様、経済産業省、米国エネルギー
省、EU 総局共同研究センターに後援頂
いた。
今回のフォーラムでは、約 230 名(う
ち海外から約 20 名)の参加者を迎え、
まず、(独)産業技術総合研究所 太陽
光発電工学研究センター センター長近
藤道雄氏による開会宣言、経済産業省山
本 雅 亮 氏、 米 国 大 使 館 Jeffrey Miller
氏、太陽光発電技術研究組合 高塚汎
氏からの歓迎スピーチがあった。セッ
ション1では、経済産業省 高桑敦氏、
NREL Michael Kempe 氏、EU 総局 Tony Sample 氏がそれぞれ日米欧を代
表して特別講演を行った。
セッション 2 では、
山谷宗義氏(京セラ㈱)、Tony Tang 氏 (Suntech Power)、加藤和彦氏
(産
総研)
、Xiaohong Gu 氏(NIST)がそれぞれ太陽電池の信頼性ニーズとその取組について講
演し、会場との質疑応答も活発であった。
11
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セッション 3 は、QA フォーラム各タスクグループの活動報告とパネルディスカッション
で構成されており、会場も巻き込んでの熱心な議論が行われた。
表 2 で示されるように参加者からは大変高い評価が得られた。本フォーラムのプログラム・
発表資料などは、
http://unit.aist.go.jp/repvt/ci/update/2011/qaf2/index.html
より確認できる。
表1 タスクグループ
活動内容
12
TG1
PV QA Guideline for
Manufacturing Consistency
W/W リーダー
表2 参加者へのアンケート結果(回答数 118)
国内リーダー
国内
人員
Ivan Sinicco
/Oerlikon
シャープ
江口
TG2
PV QA Testing for Thermal
and mechanical fatigue
including vibration
Chris Flueckiger
/UL
エスペック
棚橋
13
TG3
PV QA Testing for Humidity,
temperature, and voltage
John Wohlgemuth/NREL
Neelkanth Dhere/FSEC
AIST
土井
13
TG4
PV QA Testing for Diodes,
shading and reverse bias
JET
内田
10
TG5
PV QA Testing for UV,
temperature and humidity
東レ
廣田
16
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12
27
1・今回のフォーラムの内容について
大変満足
34
35
37
20
フォーラム全体
特別講演
太陽電池の信頼性ニーズとその取組み
タスクグループ報告と全体討議
満足
76
75
69
74
不満足
4
4
5
10
その他
0
1
0
0
無回答
4
3
7
14
2・PVモジュールの品質保証において重要と考えられる試験項目
Vivek Gade /Jabil Paul
Robusto/Interteck
温度
温度サイクル
66
システム電圧 ・ 耐圧
42
風
輸送時の振動
湿度
83
塩害
降雹
18
13
27
7
紫外線
70
アンモニアなどの
有害ガス
11
積雪
18
その他
8
3・モジュールの信頼性試験と認証について
モジュール信頼性試験の国際標準化と認証システムの構築は喫緊の課題でありただちに
世界の関係者の合意を得ながら具体化すべき
モジュール信頼性試験の国際標準化に当たっては科学的技術的妥当性を十分検証すべき
その他の意見
58
63
6
4・回答者の所属業種
Michael Koehl
/Fraunhofer-ISE
セルモジュール
メーカー
20
製造装置メーカー 材料メーカー テスト・認証機関
10
32
11
研究機関
インストーラ
投資・金融・保険
機関
その他
14
0
5
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技術とコスト
九州大学
大学院システム情報科学研究院
教授 白谷 正治
日経新聞 (2012 年 2 月 18 日 ) に航空会社のコスト比較が掲載されていた。全日
空が 13、日本航空が 11.5、シンガポールが 7.6、デルタが 6.0、エアアジアは 2.9
であり、日本の航空会社は高コスト体質であり、生き残りのためにはさらなる低コスト
化が求められるとの論調の記事であった。2 から 4 倍のコスト差を縮めるのは容易な
ことではない。
同様のことが日本のあらゆる産業において生じているのが現状であろう。
解決策の一つが、人件費が安い国で生産することである。この方法は企業としては生き
残れるが、日本人の職が無くなることが問題である。税制で国内の企業の競争力を高め
る等のあらゆる努力が求められている。日本でしかできない良い製品を低コストで提供
することが出来れば、国際競争に勝ち残れる可能性がある。このためには、容易には真
似できない技術を素早く産業化する必要がある。
太陽電池の場合に同様のことを考えると、どの国でもどの会社でも比較的容易に作製
でき差別化のし難い製品については、日本で国際競争力のある製品を作るのはなかなか
難しいような気がする。他では真似の出来ない高効率太陽電池を信じられないような低
コストで提供する技術力が求められており、このためには真似の出来ないブレークス
ルー技術が次々と出てくる必要がある。現在進められてる PVTEC を中心とする産学
官共同の研究開発においては、充実した協力体制で研究が進められている。この協力体
制を起点として新しいシーズ技術を量産・産業化に素早く繋げて、日本の太陽電池産業
が繁栄するようになれば良いと思う。技術開発にスピード感が求められており、短期間
に良い成果を出すことが求められている。大学における研究も例外ではない。一歩でも
半歩でも前に進む強い意志と努力が求められている。大学という大きな単位では慣性が
大きくスピード感のある変化は難しいかもしれないが、研究室レベルでは十分可能では
ないだろうか。私の研究室も日本の太陽電池産業が隆盛するように少しでも寄与したい
と考えている。
13
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太陽光発電研究の
立脚点を変えて
千葉工業大学 社会システム科学部
プロジェクトマネジメント学科
教授 久保 裕史
研究の場を企業から大学へ、研究内容も技術系から社会系へと移してから、もうすぐ
2 年になります。産業界と学界の違いに戸惑いながらも、昨年後半あたりからようやく
腰を落ち着けて研究に取り組めるようになりました。勤務先の千葉工業大学は、私立の
工科系大学では最古の歴史を持ち、約 1 万人の学生を擁します。私が所属する社会シ
ステム科学部プロジェクトマネジメント(PM)学科は 15 年前に設立され、今なお国
内では唯一の学科です。卒業生の多くは IT や建設関連分野で活躍していますが、今後
は米国のように様々な太陽光発電プロジェクトの現場へも、活躍の場が広がっていくこ
とを期待しています。
私は企業(富士フイルム)在籍当時、陽極酸化アルミ基板を用いた集積型フレキシ
ブル CIGS 太陽電池を発案しました。この基板は、耐熱性、絶縁性、膨張率、軽量性、
フレキシブル性、耐久性の面で、CIGS 太陽電池にとって最適であり、言わば「夢の基板」
です。社内でこの提案が通り、リソースが割り当てられ、比較的短期間で研究開発体制
を立ち上げられました。しかし、当初は苦難の連続でした。元々、社内に蓄積された印
刷刷版向けの陽極酸化技術の応用を考えていたのですが、太陽電池では要求レベルが格
段に高く、もう一度基礎から研究を見直す必要に迫られました。その後、産総研のご指
導・ご支援の下、後輩たちの粘り強い努力が実を結んで、その研究発表が IEEE の国際
学会で受賞したと聞いたときは、心底嬉しく思いました。技術的イノベーションが、事
業の成功に結びつくことを願ってやみません。
現在の大学の研究室では、PM を中心に、ビジネス創成、環境・エネルギー、ものづ
くり国際経営、に関する研究に取り組んでいます。中でも、太陽光発電には格別な思い
があり、今なお私のメインテーマです。具体的には、科研費による「太陽電池産業の
ものづくり国際経営戦略」と、太陽光発電パネルを筏状の浮体に搭載して洋上に浮かべ
る「PV メガフロート・プロジェクト構想」の研究に取り組んでいます。前者では、短
期間で市場を席巻した中国の太陽電池メーカーを、製品 ・ 工程アーキテクチャ、組織能
力、産業地理学、の3つの視座から分析し、日本メーカーが採るべき業種別の3つの戦
略案をまとめました。現在、その妥当性を検証中です。後者は、PM 技法を用いたプロ
ジェクト化構想の研究です。国内には、太陽光発電パネルを設置可能な土地や屋根が計
694GW 分あると言われています。しかし。将来の蓄電を含むスマートグリッド時代
では、それでも決して十分とは言えません。最近の「地産地消」や災害対策上のニーズ
もあり、いずれきっとその出番がやってくるでしょう。
本組合では、昨年秋に発足した「社会システム構築分科会」
(座長、岩船由美子先生)
14
の委員として活動中です。ユーザー目線で、太陽光発電の普及に繋がる社会的仕組み作
りを提言としてまとめて行く予定です。
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太陽電池製品への
認証の取組み
一般財団法人 電気安全環境研究所
理事・研究事業センター所長
芝田 克明
JET(一般財団法人 電気安全環境研究所)は、
1963 年、
国の試験業務(電気試験所 :
当時)を引き継ぎ、電気用品取締法(現在の電気用品安全法)に基づく指定試験機関と
して設立されました。以来、製造・輸入事業者、販売事業者、使用者などの皆様ととも
に、日本の電気製品・電気設備に関係する安全の確保・向上を支えてまいりました。
これらの経験を基に、電気製品等についての各種試験・検査・認証業務の推進及び海
外機関との連携強化を図り、これからも皆様の事業活動をサポートいたします。
太陽電池製品に関する試験、測定、認証サービスについては、1993(平成 5)年に、
系統連系協議の簡略化に資する目的で太陽光発電用系統連系保護装置の認証サービスを
開始して以来、
「二次基準太陽電池セル」の校正サービス(2002(平成 14)年~)
、
IEC 規格に基づく「太陽電池モジュール」の認証サービス(2003(平成 15)年~)
「常
、
用参照モジュール」の測定サービス(2004(平成 16)年~)
、
「ベアセル」の変換効
率測定サービス(2011(平成 23)年~)など、
総合的に提供させていただいています。
○太陽電池モジュールの認証業務(JETPVm 認証)
適用規格:JIS C 8990(IEC 61215:結晶系)又は JIS C 8991(IEC 61646:
薄膜系)のいずれかの性能認証規格及び安全性認証規格(JIS C 8992-1&2(IEC
61730-1&2)
)
○小型分散型発電システム用系統連系保護装置等の認証業務(パワコン認証)
適用規格:電気用品の技術基準別表第八を準用(製品安全)
、JIS 61000 シリー
ズ(EMC 規格)
、系統連系規程(JEAC 9701)
、電気設備技術基準の解釈、電
力品質に係る系統連系技術要件ガイドライン(以上、系統連系規格)
○二次基準太陽電池セルの校正
JIS C 8904-2(IEC60904-2)に準拠した校正を実施し、校正証明書を発行。
○常用参照太陽電池モジュールの性能測定
工 場 等 で 常 用 参 照 モ ジ ュ ー ル と し て 使 用 す る 太 陽 電 池 モ ジ ュ ー ル に つ い て、
JISC8914 又は JISC8935、IEC60904-1 に基づき、Isc、Voc、Pmax、F.F
値を測定。
○ベアセルの変換効率の測定
JISC8913、IEC60904-1 に基づき、Isc、Voc、Pmax、F.F 値を測定。
太陽電池関係の研究開発活動にも取り組んでいます。まず PVTEC の組合員として、
(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の太陽電池信頼性・寿命評価プ
ロジェクトにおいて、分担研究を実施しています。また PVTEC 及び佐賀県との共同
事業として、経済産業省のアジア基準認証推進事業(太陽電池の信頼性・品質試験方法
国際標準化)に取り組んでいます。このほか、高信頼性太陽電池モジュール開発・評価
コンソーシアムにも参加しています。これら、PVTEC の活動として取り組んでいる研
究開発の成果を、今後 JET の試験、測定、認証に生かし、皆様へのサービスの向上に
努めていきたいと考えています。
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グリーンイノベ ーション
を 加 速 す る 環 境・ エネルギー開発センター
東レ株式会社
環境・エネルギー開発センター
所長 松村 一也
東レは 2008 年に「全ての事業戦略の軸足を地球環境におき、持続可能な低炭素社
会の実現に向けて貢献していく」との経営方針を打ち出して以降、LCM(ライフサイ
クルマネジメント)に基づく環境経営を実行し、自社における GHG(温室効果ガス)
排出量削減とともに、ライフサイクル視点での地球環境問題へのソリューション提供を
進める「グリーンイノベーション」を推進しています。
具体的には、2020 年近傍において、環境貢献度の高い「環境配慮型製品」の売上
高を約 1 兆円とする事業拡大と、自社製品のライフサイクルでの GHG(温室効果ガス)
削減貢献度を示す「CO2 削減貢献度」を 20 倍以上とする長期経営目標をそれぞれ掲げ、
“Chemistry”
(化学)を核とする当社コア技術を駆使した「グリーンイノベーション」
事業をグローバルに展開し、将来の飛躍的成長に向けた基盤づくりを進めています。
この「グリーンイノベーション」を加速するため、環境・エネルギー分野の総合技術
開発拠点として「E&E センター」
(Environment & Energy Center)と、その基幹
組織としての「環境・エネルギー開発センター」を当社・瀬田工場(滋賀県大津市)に
2011 年 1 月に新設しました。太陽電池、
燃料電池、
およびリチウムイオン電池など
「新
エネルギー」関連の新規部材をはじめ、
バイオマス資材、
省エネ型住環境資材などの「新
規環境資材」の事業創出とその拡大を重点テーマに設定し、技術開発戦略の企画立案、
技術開発、テクニカルマーケティングまでを総合的に推進しています。
東レは「E&E センター」を、
2009 年 4 月に完工した 「A&A センター 」(Automotive
& Aircraft Center)とともに、持続可能な低炭素社会の実現に向けた東レグループの
新たな成長エンジンと位置づけ、
「自動車・航空機」
、
「環境・エネルギー」の各分野を
中心に、先端材料・技術の開発と事業拡大を推進していきます。
16
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太陽電池 発電実証設備
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委員会・分科会
活動報告
2.24 年度の事業計画につい
運営幹事会
て
2. 太陽光発電次世代高性能
技術の開発・信頼性及び
寿命評価技術の開発
第 76 回運営幹事会
平成 24 年 1 月 25 日(水)
新都ホテル 深草の間 京都
■議題
NEDO 委託
関連委員会
平成 23 年度第 3 回高信頼性
PV モジュール分科会
1. 平成23年度事業進捗報告
1. 次世代多接合薄膜シリコ
平成 24 年 1 月 17 日(火)
2. 平成23年度収支中間報告
ン太陽電池の産学官協力
13:00-17:00 日清紡
3. 新規組合員入会の件
体制による研究開発
メカトロニクス㈱美合工
機事業所 岡崎
4. 運営委員会の交代、委員
長候補の選出の件
薄膜Si PVコンソ運営委員会
第 16 回薄膜 Si-PV コンソ運
戦略企画部会
平成 23 年度 第 1 回 戦略
企画部会
平成 23 年度第 2 回社会シ
営委員会
ステム構築分科会
平成 23 年 11 月 22 日
(火)
平成 23 年 12 月 14 日(水)
8:50-11:00 東京エ
14:00-17:00 市ヶ谷
レクトロン藤井事業所
大島ビル 5 階 会議室
第 17 回薄膜 Si-PV コンソ運
平成 23 年 11 月 25 日(金)
営委員会
平成 23 年度第 3 回社会シ
市ヶ谷 大島ビル 5F 会議室
平成 23 年 12 月 27 日
(火)
ステム構築分科会
■議題
15:00-17:00 市ヶ谷
平成 24 年 2 月 6 日(月)
1.研究会 講師 大島堅一
大島ビル 5 階 会議室
10:00-12:00 市ヶ谷
第 18 回薄膜 Si-PV コンソ運
大島ビル 5 階 会議室
立命館大学教授「再生可
能エネルギーの政治経済
営委員会
学」
平成 24 年 2 月 3 日(金)
2.今後の戦略企画部会の進
め方
13:30 - 19:00
平成 24 年 2 月 4 日(土)
9:00 - 12:00 カネカ
平成 23 年度 第 2 回 戦略
四谷クラブ
経済産業省
補助事業
アジア基準認証推進事業費
補助金補助事業
企画部会
平成 24 年 2 月 15 日(水)
薄膜Si PVコンソ特別講演会
アルカディア市ヶ谷 鳳凰
特別講演会
実施者会議
第 5 回経済産業省 PV 基
西 東京
平成 24年2月 28日(火)
■議題
9:30-11:00 市ヶ谷
準認証実施者会議
1.研究会 講師 富士通総
大島ビル 5 階 会議
平成 23 年 12 月 14 日
(水)
室
13:00-18:30 市ヶ谷
研 高 橋 洋 主 任 研 究 員
「自律分散型電力システ
ムの構築」
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分科会
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17
大島ビル 5 階 会議室
第 6 回経済産業省 PV 基
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準認証実施者会議
平成 24 年 2 月 22 日(水)
14:00-18:30 一般財
団法人電気安全環境研究
所 横浜研究所
コンソシアム運営委員会
第4回 PV 認証・信頼性コ
ンソシアム運営委員会
平成 24 年 1 月 11 日(水)
13:00-17:00 (独)
産業技術総合研究所 九
州センター
国内検討会
第 3 回 QA フォーラム国内
検討委員会
平成 23 年 11 月 7 日(月)
13:00-17:00 アルカ
ディア市ヶ谷私学会館
第 4 回 QA フォーラム国内
検討委員会
平成 23 年 12 月 7 日(水)
13:00-17:00 シェラ
トン都ホテル東京
国際フォーラム
第 2 回太陽電池モジュール
信頼性国際基準認証フ
ォーラム(International
PVModuleQAForum)
平成 23 年 12 月 8 日(木)
シェラトン都ホテル東京
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14:26:34
● PVTECニュース 第60号をお送りします。
● 巻頭言には、
経済産業省 産業技術振興課の藤原豊課長にご寄稿いただきました。
今年は、
技術研究組合制度化50周年ということで、
改めてこれまでの道のりを振り返り、
そ
の成果、効果や、課題を論じて下さいました。PVTECはいま活動している技術研究組合
(59組合)の中では最も歴史のある古株の一つになっています。
● 昨年12月21日に第22回PVTEC技術交流会を開催しました。招待講演にお招きした中
島睦男様は、現在、台湾で経営コンサルタントをされている立場から、台湾の電子産業の
現状や日本や米国、
さらに中国本土との戦略の違いを解説されました。講演後の質疑応
答は極めて熱の籠るものでした。
編
集
後
記
2012
Vol.60
● 又、
技術交流会の主要議題には「結晶シリコンPVモジュールの最新技術」
を取り上げ
ました。組合員4社に加えAIST NEDOの結晶モジュールコンソーシアムから最新技術
の報告をいただきました。
引き続いて総合討論では、
モジュール価格の異常な下落のなか
で、
日本の太陽光発電産業がどのようにして技術で勝ち残るか非常に活発な議論が交わ
されました。発表いただいた講師をはじめ、
討論に参加された皆様に深く感謝いたします。
● 国内のエネルギー問題をはじめ、太陽光発電は、現在、極めて厳しい局面に立たされ
ています。
しかし、
平成24年度にはいよいよ固定買取制度が開始されます。
これを契機に、
日本の太陽光発電は復活しなければなりません。PVTECに期待される社会的要請もさら
に強くなるものと考えます。
これらの課題に対応するためPVTECのより一層の基盤強化を
図らねばなりません。組合員各位、関係各位のご協力、
ご支援をよろしくお願いいたしま
す。
(H.S 記)
3月号
目 次
巻頭言 民間研究開発投資の促進に向けた施策について 経済産業省
技術振興課長 藤原 豊
2
<第22回技術交流会報告> 太陽光発電技術研究組合
7
交流会報告
開催報告
<第2回太陽電池モジュール信頼性国際基準認証フォーラム>
太陽光発電技術研究組合
11
システム情報科学研究院教授 白谷 正治
太陽光発電研究の立脚点を変えて
13
コラム 産官学
技術とコスト
九州大学 大学院
千葉工業大学 社会システム科学部
プロジェクトマネジメント学科教授 久保 裕史
14
太陽電池製品への認証の取組み
一般財団法人 電気安全環境研究所
理事・研究事業センター所長 芝田 克明
15
グリーンイノベーションを加速する環境・エネルギー開発センター
東レ株式会社
環境・エネルギー開発センター 所長 松村 一也
ニュース
平成24年3月10日
2012 Vol.60 3月号
古紙配合率100%再生紙を使用しています
委員会・分科会活動報告
事務局
17
編集後記
事務局
20
発行所:太陽光発電技術研究組合
発行人:善里順信
〒102-0074 東京都千代田区九段南4丁目7番13号 大島ビル5階
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PVTEC 太陽光発電技術研究組合
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