1 - JFA Community

活動報告
JFA GK
U-21日本代表vsU-21中国代表© Jリーグフォト㈱
U-21日本代表チーム
中国遠征
「日中韓U-21代表チーム交流戦」
【報告者】須永 純(U-21日本代表GKコーチ)
1.遠征概要
2008年の北京オリンピックへ向けて、
今号では、各年代日本代表
プロジェクト
チームが参加した大会・試
JFA Goalkeeper Project
since 1998
動などを報告します。
るU-21中国代表に備えて、重点的に行った。
合、なでしこジャパンの活
を狙い決定的ピンチを防げた。
GKへ向かってくるボールと逃げていく
ボールに対して的確に判断する(前に出
・攻撃への参加は、試合の流れを把握した
中でフィードを選択できた。スローイン
る/出ない、キャッチ/パンチング)
。
守備範囲を広く守るべくトライをする。
グによる課題は残るが、キックは非常に
安定していた。
・ゲームにかかわる時間が長く、自チーム
(3)フィード
攻撃への切り替えを早くすることを意識
U-21日本代表チームが招集された。
今回の遠征期間は7月31日∼8月7日まで
して行った。また、スローイングでのフィ
ードの範囲をハーフウェイライン周辺まで
であった。8月3日まで選抜強化合宿を国内
で行い、中国へ出発した。
を意識してトレーニングした。GKがボー
ルを持った際に、味方がボールから目を離
の攻撃時にリスクマネジメントをしてカ
ウンターによるピンチを未然に防ぐこと
ができた。
7.課題
・シュートストップの状況で、より早く正
して反応しないことがある。そのときに準
確な準備することが課題である。
備の段階でGKがパスコースをつくり出す
声を出していく必要がある。
基本的なことである「構えるタイミング」
や「ポジショニング」が、相手のプレッ
佐藤昭大(サンフレッチェ広島)
松井謙弥(ジュビロ磐田)※7月31日∼8
5.試合結果
シャーがかかり前後左右の移動を伴った
ときにずれてしまうことがあった。
月4日、国内合宿のみ
[日時]
8月7日
[場所]
秦皇島オリンピックスタジアム
/河北省
2.参加GK
西川周作(大分トリニータ)
3.GKテーマ
①積極的なゴールキーピング
②DFとの連携
③つかむかはじくかの判断
④クロスへの対応
⑤リスクマネジメント
⑥攻撃への参加
⑦リスタート
4.GKトレーニング
(1)シュートストップ
良い準備からつかむかはじくかの判断を
重要点として行った。
①5∼6mの近距離からのシュート
②8∼10mのワンタッチシュート
③13∼15m(45度∼60度)のシュート
④17∼20mのミドルシュート(中央から)
でボールの変化へ対応。
(2)クロスへの対応
高さがありサイドからの攻撃が予想され
22
・はじく技術(ディフレクト・パンチ)向
[試合] 日本 2-0(前半0-0)中国
[得点者] 本田圭佑、増田誓志
上
つかむかはじくかの判断はできているの
で、相手のいない所へより大きくはじけ
るようにする。
・DFとの連携
6.成果
・良いコンディションを持続できた。
今回の試合では失点につながっていない
が、シュートをはじいたときのリバウン
・3人とも高いモチベーションを保ち、競
争の中でそれぞれが積極的に力を発揮し
ドに対して反応することと、クロス時の
プロテクションを今後修正していく必要
た。
がある。
・シュートストップの
状況では、つかむか
はじくかの判断が良
くできていた。
・クロスでは、広い守
備範囲を的確に守れ
た。
・ブレイクアウェイに
関しては、DFの背
後をカバーしてい
た。また、相手のコ
ントロールする瞬間
U-21日本代表vsU-21中国代表© Jリーグフォト㈱
JFA Goalkeeper Project
活動報告 JFA GKプロジェクト
U-17日本代表チーム
第10回国際ユースサッカーIN新潟
【報告者】加藤好男
(U-17日本代表GKコーチ)
1.大会概要
第10回国際ユースサッカーIN新潟が7月
14日∼17日、県内各地で開催された。海
5.成果
・代表招集を受け、積極的な姿勢で練習、
試合に臨めたこと。
・国際試合を経験する中で、緊張と集中力
を共に発揮することを学んだこと。
・体格差がある中でのコンタクトプレーや
ゴール前の混戦を経験できたこと。
U-19日本代表チーム
2006SBSカップ国際ユースサッカー
【報告者】加藤好男
(U-19日本代表GKコーチ)
大橋昭好
(ナショナルトレセンコ−チ/ジュビロ磐田)
1.大会概要
2006年8月11日より8月15日まで
外招待チームは、ハンガリー、オーストラ
リア、韓国の各U-17代表で、日本からは、
・自分自身が今現在持っている力を発揮で
きたこと。
「2006SBSカップ国際ユースサッカー」が
静岡県の各地で開催された。参加チームは、
U-17日本代表、アルビレックス新潟、新潟
県高校選抜(U-16)が出場した。
・チームメイトとなる他の選手と積極的に
コミュニケーションをとったこと。
U-19メキシコ代表、U-19韓国代表、U-19
日本代表と静岡高校選抜の4チームで総当
U-17日本代表は、過去に代表として招集
された選手が3人で、残りの15人が代表初
選出の選手であった。したがって、3日間
の練習で準備するには、やや時間が足りな
かった。また、梅雨の真っ只中で天候がす
ぐれず雨中での戦いとなった。
6.課題
たり戦形式で行われた。U-19各代表は、
・「つかむか、弾くかの判断と弾く際のプ
2007年カナダで開催されるFIFA U-20ワー
ルドカップ(旧称:FIFAワールドユース選
レー」で雨天時におけるプレーの安定性
に欠けたこと。弾く際の決断と思い切り
手権)出場へ向けた強化としての取り組み
となった。
のあるプレーが不足した。
U-19日本代表は、サウジアラビア遠征を
2.大会結果
・ブレイクアウェイ、クロスの状況下で決
断が甘く、DFとの連携において後手を
終えて出てきた課題を修正および新たな課
題発見に向けて戦った。結果は、U-19韓国
優勝:U-17オーストラリア代表
準優勝:U-17ハンガリー代表
踏むケースが目立ったこと。
・攻撃への参加において、キックでロング
代表が優勝し、日本は最終戦でメキシコに
敗れて準優勝となった。
3位:U-17韓国代表
4位:U-17日本代表
フィードをするのか、スローイングでシ
ョートパスをするのかの状況判断が良く
2.大会結果
5位:アルビレックス新潟
できていなかった。また、緊迫した状況
優勝
U-19韓国代表 2勝1敗
6位:新潟県高校選抜
の中でキックミスを犯してしまうことが
あった。
準優勝
3位
U-19日本代表 2勝1敗
U-19メキシコ代表 2勝1敗
4位
静岡高校選抜 3敗
3.大会招集GK
三浦雄也(中京大中京高校)1988年4月2
日生、185cm/76kg 1.5試合出場1失点
7.今後の展開
2009年のFIFA U-20ワールドカップを目
3.大会招集GK
川俣慎一郎(鹿島アントラーズユース)
1988年7月23日生、187cm/84kg 2.5試合
指す年代で、今後の活動を充実させる必要
性があると感じた。国内の各大会がこの時
林彰洋(流通経済大学)1987年5月16日生、
190cm/83kg (負傷によりトレーニングの
出場6失点
期に重なっていたため、首都圏の強豪チー
ムから選手を選出することができなかっ
み参加)
武田洋平(清水エスパルス)1987年6月30
4.GKテーマ
た。しかしながら、今回初招集となった選
日生、189cm/78kg(2試合出場)
①積極的なゴールキーピング
②良い準備
手にも大きな将来性を感じた。したがって
国内合宿、国際試合を通じて強化を図って
杉山力裕(川崎フロンターレ)1987年5月
1日生、186cm/78kg (1試合出場)
③DFとの連携
④つかむか、弾くかの判断と弾く際のプレー
いく必要がある。今後、この年代のラージ
グループを形成して、継続的に選手の情報
4.GKテーマ
⑤リーダーシップ
を収集しておく必要があると感じた。
GKテーマは、9つあるテーマの中から、
ここ最近の国際試合から出た課題およびサ
ウジアラビア遠征で出た課題(他GKでは
あるが)を下記の通り重点強化課題とした。
①つかむか、弾くかの判断と弾く際のプレ
ー…中・長期課題
②リスクマネージメント…相手カウンター
への対応
第10回国際ユースサッカーIN新潟・U-17日本代表vsU-17ハンガリー代表© AGC/JFAnews
③クロスへの対応…コンタクトプレーおよ
びパンチングスキル
23
④リーダーシップ…ゴール前の組織化、コ
ミュニケーションの質向上など
5.成果
・集中した姿勢、態度で試合に臨んだ。
・シュートストップでは、相手決定機を3
度防ぐなど守備エリアの広さや反応の良
さを発揮した。
・攻撃への参加では、的確な判断によって
味方FWにロングボールを入れチャンス
をつくった。また、バックパスへの対応
も落ち着いてクリア、もしくはサイドへ
の展開をしていた。
6.課題
とAFCユース選手権直前の新潟県十日町キ
ャンプが予定されているが、限られた時間
の中で明確なトレーニング計画を立て、実
施していきたいと考えている。
日本代表チーム
AFCアジアカップ予選
【報告者】加藤好男(日本代表GKコーチ)
1.AFCアジアカップ予選へ
向けての準備
2006年7月、2006FIFAワールドカップド
イツ大会後の新生日本代表イビチャ・オシ
・ブレイクアウェイの状況下で、予測が足
ム監督が正式契約をして誕生した。これに
伴い、8月9日国立競技場における親善試合
りず判断が不安定となるシーンが数回あ
った。
対トリニダード・トバゴ戦が新生日本代表
の緒戦となった。
・クロスの状況下で、ゴール前の状況把握
チームは、8月5日よりホテルに集合して
ができず、出る・出ないの判断が不安定
となりDFとの連携が適切に取れないこ
試合の準備へと入った。スタッフは、7月
24日に初顔合わせを行い、新監督の所信表
ルキーピングに関しては平均レベルにある
とがあった。
・リスクマネージメントにおいて、相手攻
明、選手の選考作業、対戦チーム分析、合
宿準備、視察予定などを確認した。試合ま
ながら、攻撃への参加といった面では、
「1
撃者の位置と意図を予測できず、味方へ
での時間が少ない中で、選手のコンディシ
のコーチングが遅れることがあった。
・リーダーシップにおいては、意識はして
ョン把握や各状況報告を行いながら準備し
ていった。
加していない!」といった印象を持たれて
いた。したがって、トレーニングも可能な
いたが、さらなる強調が必要。ミスに対
して寛容な態度を取らず、厳しく対処す
GKに関しても、大きく3つのグループか
ら選手選考の選定作業及び推薦選手リスト
る姿勢が課題となる。
を作成した。第1に、FIFAワールドカップ
7.今後の展開
など代表経験があるグループ。第2に、年
齢的に24∼28歳ぐらいでJリーグにおいて
選手を入れ替えながら、各大会、試合に
取り組んできたが、全体の課題としては共
好調な選手のグループ。第3に、24歳以下
でJリーグへ出場および将来が有望な若手
通したものが多く、今後も引き続き取り組
んでいかなければならないことを強く感じ
選手のグループなどである。
監督による日本GK に対する印象は、第
た。今後は9月に千葉県でのミニキャンプ
1にシュートストップなど「一般的なゴー
川口能活/AFCアジアカップ予選 vsイエメン代表(ホーム)© Jリーグフォト㈱
のではないか…?」といったもの。しかし
フィールドプレーヤーとしてサッカーに参
限りフィールドプレーヤーと一緒にやるこ
とを前提とした。また要望として、「相手
に得点をさせないこと。
」といった2点を大
きなテーマとした。
そして、その後のAFCアジアカップ予選
3戦を同様に準備しながらJリーグ視察、選
手選考、招集、トレーニングと行い進めて
きた。
3.GKテーマ
①相手に得点をさせない
②積極的な攻撃への参加
「相手に得点をさせない」という最も
GKにとってベーシックなテーマではある
が、逆に最も難しく困難なテーマでもある。
この究極なテーマの真意は、「相手の得点
の可能性を味方と連携して、可能な限り
0%へ導くこと」と言い換えることができ
る。したがって、今日までGKとして戦い
得た経験を最大限発揮して、チームの一人
として失点0、そしてチームの勝利へと力
を発揮することが必要となる。
2006SBSカップ国際ユースサッカー・U-19日本代表vsU-19メキシコ代表© Jリーグフォト㈱
24
次に「積極的な攻撃への参加」というこ
とは、ただGKがボールをキャッチして不
JFA Goalkeeper Project
活動報告 JFA GKプロジェクト
●招集選手
名前
所属
生年月日
身長/体重
備考
川口能活 ジュビロ磐田 1975年8月15日 179cm/78kg Aマッチ96試合(新代表全試合出場)
山岸範宏
浦和レッズ 1978年5月17日 185cm/84kg
新代表全試合招集
西川周作 大分トリニータ 1986年6月18日 183cm/79kg AFCアジアカップ予選2試合召集
日付
8月9日
8月16日
9月3日
9月6日
試合
親善試合
AC予選(H)
AC予選(A)
AC予選(A)
結果
○2-0
○2-0
●0-1
○1-0
出場GK
川口能活
川口能活
川口能活
川口能活
※AC=アジアカップ、
(H)=ホーム、
(A)=アウェイ
確実なロングボールを前線に送り込むこと
レーを発揮していること。
常トレーニングに依存することとなる。
今後の代表チームでのトレーニング方法
を監督と協議しながら進めていく必要が
ある。
6.今後の展開
10月4日にガーナ代表と親善試合を行な
い、翌週の10月11日にアウェーでインド
代表とアジアカップを戦うこととなる。J
リーグにおける視察はもちろんのこと、各
ではなく、チームのリズムで味方選手へ素
・AFCアジアカップ予選のアウェーで劣悪
クラブ訪問を行い、トレーニング状況やコ
ンディションの把握を今後とも積極的に行
早く配球すること。GKが試合の流れを壊
さないようにする。GKの位置でボールを
な環境下でも、コンディションを崩すこ
となく、良い状態で試合を迎えたこと。
なう。また、代表チームで行なっているコ
支配してむやみに時間を使うことは、味方
選手が時間とスペースを無くすことにつな
5.課題
がり、プレーの選択を難しくしてしまうこ
・クロスの状況下で、GKがプレーすべく
ととなる。こうしたことを考慮して、でき
る限りフィールドプレーヤーと共通したト
範囲にボールが入ってきた際の決断とプ
レーで躊躇するプレーが何度か見られ
レーニングを行なうこととした。
た。新メンバーとの連携を含めたコンビ
ネーションは、今後の課題となる。
4.成果
ンセプトやトレーニング方法を知って頂
き、共通の課題解決に向けて理解を図りた
いと考えている。
・攻撃への参加に関して、味方のリズムで
・新監督のサッカー観、チーム戦術など
徐々に浸透して行く中、新たな挑戦とし
配球を選択し、かつ効果的に試合を進め
るといった点では課題が残る。また、不
て日頃のトレーニング・試合に際して真
摯に取り組んでいること。
用意なパスによってピンチを招くシーン
が見られ、今後への課題となった。
・4試合中3試合を失点0で押さえ、限りな
・チーム戦術を優先する代表チームの現在
く難しい課題に対して取り組み、かつ成
果を出していること。
では、個別のGKトレーニングに時間を
割いて行なうことができない。したがっ
・シュートストップの状況下、あるいは、
ブレイクアウェイの状況下で安定したプ
て、GKの個人スキルやフィジカルトレ
ーニング強化に関して所属クラブでの日
U-21日本代表vsU-21中国代表© Jリーグフォト㈱
AFCアジアカップ予選 日本vsサウジアラビア© Jリーグフォト㈱
AFCアジアカップ予選 日本vsサウジアラビア© Jリーグフォト㈱
25
なでしこジャパン
活動報告
AFC女子アジアカップ オーストラリア2006大会得点王となった永里優季
(なでしこジャパンvsオーストラリア女子代表)© Jリーグフォト
(株)
AFC女子アジアカップ
オーストラリア2006
ーでチャレンジした。また、システムは14-4-2で中国のサイド攻撃に対して、中盤を
ダイヤモンドにして戦った。
た。しかし、ハイプレッシャー下での技術
の精度はDPR KOREAの方が正確にプレー
【報告者】
大橋浩司
(なでしこジャパン監督)
(2)準決勝
1.はじめに
このゲームでは、相手に走り負けていな
かったし、気持ちの上でも負けていなかっ
3日間のインターバルをおいて、準決勝の
できていた。
AFC女子アジアカップに向けてのキャン
相手はオーストラリア代表に決まった。オ
ーストラリアは若手がチームの中心を担っ
プをJヴィレッジで6日間行った。その後、
12日の夜に成田を出発し、シドニー経由で
ていて、ベテランがチームをまとめていた。
中盤の中心選手MCCALLUM、SHIPARDは
決勝は、前半にオーストラリア代表が2点
リードしたが、後半中国代表も反撃して2点
アデレード入りした。アデレードは冬とい
U-19の選手であった。特に、各選手ともキ
を奪い、延長でも決着がつかずPK方式によ
うことで、気候の変化に対応するコンディ
ショニングを入念に行った。昼間晴れれば
ックの精度・種類は多く持っており、長短
正確なパスが印象的であった。また、高さ
り中国が優勝した。
気温は上がるが、曇りや雨が降っていると
非常に肌寒い感じであった。
に加えて身体を使っての技術の発揮は日本
とは大きく差があった。
アジアの女子のレベルは、組織化された
チームづくり・若手選手の台頭が、大会ご
また、ほとんどの試合が同じスタジアム
で行われるため、日がたつにつれてグラウ
(3)3位決定戦
オーストラリア代表戦の結果(0-2)を受
に中国はオリンピック、女子ワールドカッ
プ開催に向けての強化を進めているし、オ
けて、3位決定戦では朝鮮民主主義人民共和
国代表(DPR KOREA)と戦うこととなっ
ーストラリアの強化も急速に進んでいるよ
うに感じた。
(4)決勝戦 オーストラリア代表vs中国代表
とに急速にレベルアップしてきている。特
ンドコンディションは悪くなってきた。
宿舎は全チームが同じホテルで、食事・
部屋など快適に過ごせた。試合会場・練習
場とも20分以内で移動できるところで、ア
クセスも問題はなかった。
2.大会を振り返って
た。
DPR KOREAは1-3-6-1のシステムで、日
初戦の6日前にアデレード入りし、準備を
FIFA女子ワールドカップ出
場権のかかったゲームという
権を獲得するために、準決勝に照準を合わ
せてチームづくりを考えていた。
ことで、互いに気迫のこもっ
たゲームになった。前半風下
の日本は思うようにパスがつ
ながらず、相手にミドルシュ
ベトナム代表、チャイニーズ・タイペイ
ートを決められ、その後立て
代表戦では、選手のコンディション確認と
得点を奪える戦い方を行った。
続けに2失点してしまった。43
分に1点を返して後半、攻撃的
3戦目の中国代表戦では、相手の良さを消
な布陣で臨み、89分に2点目を
取ったが追いつくことはでき
しながら日本の良さを出せるようなメンバ
26
今大会を通しての課題から、今後の強化
本はメンバーを若干入れ替え
1-4-4-2のシステムで戦った。
進めてきた。FIFA女子ワールドカップ出場
(1)グループリーグ
3.今後の強化に向けて
なかった。
AFC女子アジアカップ オーストラリア2006・なでしこジャパンvs中国女子代表© Jリーグフォト
(株)
に必要な要素としては、1つ目はゲームにお
しかし、今までの取り組みの成果もいく
アジアカップ優勝を目標に大会に臨んだが、
ける駆け引きである。ゲームスタートから
相手の嫌がるプレーを選択すること、ミス
つか見られた。準決勝では得点できなかっ
たが、毎試合得点し、永里優季が大会得点
4位という結果に終わった。監督として、チ
ームを応援して下さったサポータの方々、
した後の自分のプレーを見直す余裕や、さ
まざまな状況に対する適応能力など。また、
王になったことは、明るい材料である。個
人のシュート技術だけでなく、クロスの精
指導者の方々、チームを陰で支えていただ
いた方々には、期待に応えられなくて大変
チームとして主導権を握られたときのリズ
度・回数、ゴール前での崩しなど得点力は
申し訳なく思っています。今回の取り組み
ムの変化や、レフェリーとの関係なども準
備していたものの、ゲームの中で生かせな
アップしてきた。また、セットプレーの質
も向上し、十分通用するレベルになってき
が、必ずプレーオフでの勝利で終えること
と信じています。
かったように感じる。
た。コーナーキック・フリーキックの精度
とコンビネーションなどはさらにレベルア
選手たちには所属チームでの一層のレベ
2つ目は、ハイプレッシャー下での基本技
術の発揮である。男子高校生とのトレーニ
ングの中でハイプレッシャー下でのプレー
ップが望めるであろう。
とにかく、中国、韓国、DPR KOREA、
をしてきたが、コンタクトしながらの正確
なプレー、心拍数の上がった中での正確な
オーストラリアに比べて代表
での拘束時間の少ない日本に
プレーがさらに重要であることを実感した。
とっては、日ごろのトレーニ
ングがより重要になってく
3つ目は、上位チームがより組織化したチ
る。所属チームとのコミュニ
ームになってきていることを考えると、選
手個人がキックの精度・種類も多く持たな
ケーションも今後十分に行っ
ていかなければいけない。
ければいけない。ミドル・ロングレンジの
正確なパス、DFからのビルドアップ能力、
4.終わりに
ロブやライナーなどの状況に合わせたパス
の種類も今後の課題であろう。
ルアップを期待し、次回のキャンプではよ
今大会、FIFA女子ワールド
カップ出場権獲得とAFC女子
り強固な代表チームづくりに向けて準備し
たいと思っています。
AFC女子アジアカップ オーストラリア2006・なでしこジャパンvsチャイニーズ・タイペイ女子代表
© Jリーグフォト
(株)
いた。DFとのコミュニケーション&コン
ゴールキーパー報告
ビネーションも良かった。
【報告者】澤村公康
(なでしこジャパンGKコーチ)
しこジャパンGKコーチ)
・安定した配球(ディストリビューション)
ができていた。
1.はじめに
4.課題
山郷のぞみ(浦和レッズレディース)
・大きな選手(相手)が入り乱れて入って
福元 美穂(岡山湯郷ベル)
秋山 智美(TASAKIペルーレFC)
2.GKテーマ
①積極的な守備、アグレッシブゴールキー
ピング
②Goodポジショニング 良い守備
③DFとのコミュニケーション&コンビネー
ション
④ゲームの流れに合った配球(キック・ス
ローイング)
くるセットプレー(CK・FK)時のつか
むか、はじくかの判断。また、応用力。
AFC女子アジアカップ オーストラリア2006・なでしこジャパンvs中国女子代表
© Jリーグフォト
(株)
3.成果
3名のGKともチームのために積極的な姿
勢、そして態度で大会に臨んでくれた。そ
れぞれの役割をしっかりと自らがすばらし
い意識でこなしてくれたと思う。
グループリーグ3試合、決勝トーナメント
2試合、計5試合に福元を起用。
以上、4つのテーマを大きな柱として、さ
らにそれらに加えて継続して行ってきた決
断力(キャッチorディフレクト、アタック
orステイ、速攻or遅攻等)をすべてのプレ
ーに取り組んだ。
・常にゲームに参加し、goodポジション、
つまりスターティングポジションをとり
続けることができていた。
・積極的にDFラインの背後のケアができて
・ゲームの流れ、チームの劣勢時に対して
のリーダーシップ。
5.今後の展開
今大会を通じて、アジアを勝ち抜く難し
さ、そのためのメンタリティの持ち方、考
え方。技術以上に大切な勝利への執着心を
学んだと思う。
今年11月に行われるFIFA女子ワールドカ
ップ出場権をかけたプレーオフに向けて、
各チームに戻り、一つのコミュニケーショ
ン、一つのGKとしての態度、表現力、一つ
の技術・プレーなどが重要なゲームで結果
を出すために必要なことを意識してトレー
ニングに励んでもらいたい。
27
女子国内大会視察報告
第15回全日本高等学校
女子サッカー選手権大会視察報告
【報告者】榎本恵子(女子ナショナルトレセンコーチ)
位に展開されていることが多かった。1次ラウンドで敗退したチー
ムにも、ファーストDFの徹底、1対1の対応、チャレンジ&カバーな
ど、グループでボールを奪取しようとしているところもあり、チー
ムコンセプトがはっきりしているチームほど、徹底されているよう
に見えた。
1.概要
決勝ラウンドにおいては、ボールへのアプローチも速くかつ強く
なり、サイド攻撃を多用してくるチームに対してスライディング等
「第15回全日本高等学校女子サッカー選手権大会」は、2006年7
月31日から8月6日まで、静岡県磐田市で全24チームが出場し、グル
でコースを限定したり、ボールを奪取したりと、決定機をつくらせ
ない努力をしているチームも見受けられた。
ープリーグ(1次ラウンド)とトーナメント形式(決勝ラウンド)
ボールへのアプローチにより、攻撃の手数を制限し、次の選手が
により開催された。
今大会のテクニカルワーキンググループの観点として、2006年4
予測しやすくなる利点を理解し、トライし続けることができたチー
ムが上位へ進出してきた。
月に行われたAFC U-19女子選手権 マレーシア2006における日本の
課題を中心に、今大会を視察・分析した。
3.トピック
2.視察ポイント
(1)基本技術
1次ラウンドで敗退したチームの中では、北海道文教大学明清高
校は③波佐谷灯子を中心にDFラインを統率し、攻撃面においては⑩
高瀬愛実のドリブル突破、しかけが象徴するように、常にゴールへ
1次ラウンドにおける、実力が均衡していない試合に関しては、
ボールに対するプレッシャーが弱いため、決勝ラウンドに進出して
の意識、意欲が感じられたチームであった。東京経営短期大学村田
女子高校は、個人戦術・グループ戦術など、サッカーの基本戦術を
きたチームに関しては優位にスキルを発揮していた。特に、ウィメ
徹底し、身長差がある選手からも1対1の対応でボールを奪取したり、
ンズカレッジから昨年開催されたナショナルトレセン女子U-15でも
日本の課題として注目している、キック・ヘディング・スライディ
インターセプトする場面が多々あった。攻撃に関しても、ボールを
大切にしながらゴールまで運ぼうとする姿勢が感じられた。⑩畑中
ングに関しては、全国大会に参加してくるチームレベルにおいては、
できて当たり前、スキルの重要性を理解させているチームが多くな
彩香の小柄だが相手の裏をかく身のこなしは同年代の選手に参考と
なるプレーであると思われた。
ってきていると感じた。
決勝トーナメントにおいては、実力が均衡してくるため、ボール保
福井工業大学付属福井高校・⑩有町紗沙央里のスピードを生かし
たドリブル突破、相手に身体を預けてのプレー、桐陽高校・⑩高塚
持者へのプレッシャーも強くなり、コンパクトフィールドが形成され
千晴の突破力、ボールを動かしながらのクロス、シュートなどのス
るため、パスミス、キックミスが目立つようになった。プレッシャー
を受けながらのコントロール、パス、キックなどができてこそ、戦術
キル、山陽女学園高等部・②竹野由和のDFラインにおけるリーダー
シッブ力、左足のロングフィードなど、個の質が高い選手も見受け
に生かせるスキルとなるため、日々の継続が大切だと実感した。
(2)情報分析力
られた。
また、決勝ラウンドに進んだチームでは、日ノ本学園高校・⑩小
情報分析力とは、良い判断をするために、さまざまな情報を収集
山季絵の情報分析力の高さ、ゴールへの意識、小道都のコンタクト
し、それを分析し実践していく能力である。
1次ラウンドにおいては、ボールに対するプレッシャーが弱いた
スキルが目をひいた。湘南学院高校はDF選手の1対1の強さ、ポジシ
ョニング、相手FWとの駆け引きを含めた戦いは見応えがあり、奪
めに、周りを観る時間、判断するまでの時間に余裕があり、情報分
析力の有無ではなく、ボール保持者のスキル次第(キックの質、フ
取したボールを佐々木愛の冷静な展開により、幅と厚みを使いなが
らゴールを狙っていた。鳳凰高校は、幅と厚みを使いながら、プレ
ァーストタッチの質)で局面の打開が決まっていた感があった。
ッシャーの少ない場所へとボールを運びながらゴールを狙っていた
決勝ラウンドにおいては、常にDFの裏を狙っているFWや、コン
パクトフィールドを打開するDFからのロングフィードなど、プレー
が、肝心のフィニッシュの場面で、コントロールミスや当たり負け
など、優位に進められない場面があり、決定機を逃していた。④磯
の原則を理解して、チャレンジしている場面が多く見られた。決勝
においても、スペースへのしかけ、GKのポジショニングの悪さを判
金みどりの正確なロングフィードにより、チャンスを多くつくって
断材料とし、ミドルシュートによる得点も生まれ、周りを良く観て
判断していた。
(3)コミュニケーション能力
いただけに、フィニッシュの精度の低さが目立っていた。
決勝に進出した常盤木学園高校は、個の質が高く、スキル、情報
分析力も今大会においては他チームを突出していた。特に⑦田中明
日菜、⑮後藤三知のスキルの高さがうかがえた。対する藤枝順心高
試合中、選手同士の話し合いなどで流れを変えたり、得点への予
測、失点への危機管理ができていたチームは少なかったが、動き出
校は、サイドを突破されても最後まであきらめることなく、スライ
ディングでクロスボールを奪取したり、クロスの精度を落とそうと
しのタイミングなど、身体によるジェスチャーは見受けられ、受け
手のコミュニケーションの質により局面を優位に運んでいた。出し
努力していた。その甲斐あって、常盤木学園高校の前がかりになっ
たことによってできたスペースを生かし、ミドルシュートによる得
手のメッセージがもっと明確になれば、より高い質でのボールポゼ
点など、相手の弱点をついていたところが印象的であった。藤枝順
ッションができるのではないかと思った。
また、ボールへのプレッシャーをかけるためにコンパクトフィー
心高校のスタッフは、必ず次に対戦するチームの試合を視察・分析
していたため、選手・スタッフを含めたチーム全体で優勝するため
ルドを形成するチームが多くなっているが、その分DFライン裏のス
ペースをGKが消せるかどうかなど、GKの判断、プレーエリアの広
の努力が功を奏したと思われた。
さにより、ゲームの流れをかなり左右している部分があった。
4.前年度との比較
(4)1対1の対応
1次ラウンドにおいては、ファーストDFの徹底・明確化されてい
今大会ではほとんどのチームがGKに不安があったように見受けら
れた。
るチームは少なく、その分ボール保持者へのアプローチが遅れ、優
1次ラウンドではGKの質が問われることが少なかったが、決勝ラ
28
ウンドにおいてはGKの判断、リーダーシップ力が勝敗を決定づけた
場面もあった。各チームともゴールへの意識が高くなってきて、ミ
情報分析力とは、良い判断をするために、さまざまな情報を収集
し、それを分析して実践していく能力である。ゴールを奪うために
ドルシュートによる得点が目立ち、GKのポジショニング、スペース
は、ボールを保持している状況において、周りを観て、情報を収
への対応などゴールを守る危機管理力の向上が今後重要になってく
るのではないかと思われた。
集・分析し、ゴールへの道筋を逆算したプレーを選択することが重
要である。
また、1年生の活躍が目立ち、U-15年代からのスキルの徹底、積
み上げが生きてき始めた部分もあった。
今大会においては、
「ゴール」という目的を達成するための「観る」
という手段を発揮することについて大きな課題が残った。ボールを
コンパクトフィールドを形成する意識が高い分、プレッシャーが
ある中でのボールコントロール、パスなどのミスが目立ち、今後ハ
保持している選手は、観て判断してプレーするというよりは、感覚
でプレーしている場面が多く、ボールを保持していない選手は相手
イプレッシャー下でのトレーニングを積むのと同時に、いかにプレ
選手と駆け引きしたり、スペースがどこにあって、いつ、どのよう
ッシャーを軽減させるか、ボールと人を動かすポゼッションへの取
り組みが必要不可欠になってくると思われた。
に使うのかといった判断がないままパスを受けてしまう場面が多く
見られた。ゴールを意識して意図的に観るために、日常のトレーニ
日本女子サッカー界が世界やアジアを基準として抽出した課題を
取り組み、進化していくことにより、各年代の大会の質が上がり、
ングを行う中で、
「いつ」
「何を」観ると良いのかを伝えていくこと
が大切であろう。
見応えある試合が展開されることが実証された。まだ改革は始まっ
また、チームとしての戦いにおいても、105m×68mのピッチの大
たばかりであるが、積み上げが大切であるため、私たち指導者が妥
協することなく、未来ある選手に提示し続けなければならないと強
きさを最大限に生かし、ポゼッションしながらボールを失わずにゴ
ールを奪うといった点について、オフ・ザ・ボールの選手の準備、
く感じた大会であった。
3人目の動き、緩急をつけたボールのもらい方などについて課題が
残った。パスの受け手と出し手の関係だけではなく、その他の選手
第11回全日本
女子ユース(U-15)
サッカー選手権大会視察報告
【報告者】
坂尾美穂(JFAアカデミー福島女子コ−チ/U-15日本女子代表コーチ)
1.大会概要
もボールにかかわり、常に良い準備をし、情報を分析し判断する習
慣をつけることが必要であろう。
これらの点について、神村学園中等部の⑰柴田華絵選手はボール
を受ける前に周りを観て、コントロールした後も顔が上がる。FC駒
沢女子の 鳥海麻衣選手はボールを持ってからのプレーが早い。う
ないFCの⑦甲斐そらみ選手はドリブルしながら観て考える意識が持
てていた。
(3)守備
期日:2006年8月19日∼24日 会場:Jヴィレッジ
国内の大会の中で、女子U-15のカテゴリーでは唯一の全国大会で
単純にボールを奪いに行けるか、行けないか、という点において、
1次ラウンドのゲームでは、日によって全く違ったパフォーマンス
ある本大会は、単独チームによる大会となって今年で2年目である。
各地域予選を勝ち抜いた16チームが4チームずつ4グループに分かれ
を見せるチームが見られた。このことは、ピッチ上でリーダーシッ
プをとれる選手の存在、選手同士で声を掛け合う必要性につながる。
てリーグ戦を行う1次ラウンド(8月20日∼22日)の後、各グループ
また、ファーストDFの決定、アプローチとはただボールを持ってい
の1位チームが勝ち抜き方式で決勝ラウンド(8月23日∼24日)を戦
った。
る相手に近づくことではなく、相手に制限を加え、自由を奪うという
こと。オフ・ザ・ボールのポジショニングなどを身につけ、
「どこでど
決勝ラウンドに進出したチームは、神村学園中等部、浦和レッド
ダイヤモンズジュニアユースレディース、FC駒沢女子、鳴門ポラリ
のように奪うか」といった判断ができるようになることが大切である。
神村学園中等部の④屋田渚選手は予測能力が高く、相手のしかけ
スLFCであった。
が始まるボールに対してインターセプトを狙い攻撃を断ち切ること
決勝には神村学園中等部とFC駒沢女子が進出し、3-1(前半1-1)
で神村学園中等部が昨年に続き優勝した。
ができていた。
2.技術・戦術
(1)技術
3.まとめ
昨年度から始まったナショナルトレセン女子U-15によって発信さ
れたこの年代の課題、この年代で身につけておくべき要素をトレー
昨年度から始まったナショナルトレセン女子U-15でデイリートレ
ーニングとして実施され、地域トレセンでもとり入れられているコ
ニングにとり入れていくことによって、上記(1)に挙げた技術の
面では変化が見え始めていると感じる。
ンタクトスキル・スライディング・ヘディング・パス&コントロー
ルの技術の発揮がゲームの中で見え始めている。
今後、年代が上がるにつれて、ハイプレッシャーのゲームの中で
常にゴールを意識した中で状況を観て、分析し、判断できる選手を
特にスライディングに関しては随所に見られ、ヘディングに関し
ても腕を使う、落下地点に入るといったことについて全体的に変化
育成するためには、このU-15年代で「感覚的」ではなく「意図的」
に、
「いつ」
「何を」観
が見え始めている。
て、
「どこで」
「どのよ
コンタクトスキルに関しては、ハイプレッシャーのゲームの中で
パーフェクトにスキルを発揮するために、ゲームの中でコンタクト
うに」
「どのタイミン
グで」プレーするの
スキルを発揮しなければならない場面を多くつくり出すといった観
点から、審判部とのリレーションも今後の課題となってくるだろう。
かといった点を身に
つけて、サッカーの
またキックについて、飛距離という点については以前より長い距離
原則を理解した中で、
を蹴れる選手が増えてきた。しかし、コントロール、球種、左右の足
で蹴る、といった点については全体的にさらなる改善が必要である。
(2)情報分析力
考えて、駆け引きす
る習慣を身につける
ことが重要である。
第11回全日本女子ユース
(U-15)サッカー選手権大会・決勝
(神村学園中等部女子サッカー部vsFC駒沢女子)より
©AGC/JFAnews
29
JFAアカデミー福島
男子 〔報告者〕島田信幸(JFAアカデミー福島・男子ヘッドコーチ)
U-14日本選抜 EAFF U-14 YOUTH FESTIVAL 2006 CHINA
1.大会概要
(1)日程:2006年7月19日∼7月26日
(2)場所:中国ナショナルトレーニングベ
ース(河北省)
(3)参加チーム:日本、中国、韓国、朝鮮
・世界[東アジア]を知る(感じる)
・仲間をつくる(コミュニケーション)
・新たな夢・目標を定める
・Enjoy Football
(2)チームコンセプト
・代表選手としての誇りを持つ
民主主義人民共和国、香港、マカオ、
モンゴル、チャイニーズ・タイペイ、
・個人のレベルアップを図る
・自己管理をする(体調・用具・時間)
グアム、北マリアナ諸島(ゲスト国)
・コミュニケーションを図る
(4)大会方式 :リーグ戦 30分ゲーム(30
分×1)
順位決定戦 60分ゲーム(30分×2)
(5)結果:1位中国、2位韓国、3位香港 、4
・Enjoy Football
(3)ゲームコンセプト
(1)成果
①国内では経験できない厳しいプレッシャ
ー下でプレーでき、課題が明確になった。
②中国戦でのポゼッションができた場面
(数回ではあるが、ボールと人が動いた)
正確な技術と良い準備(判断)ができて
いれば、ボールを失わない。
③韓国戦での残り18分間の戦いで見せた戦
う姿勢。
・攻守ともにアグレッシブに
・スピードアップ(判断・切り替え)
④ピッチ外で、積極的にコミュニケーショ
ンが図れた。
位チャイニーズ・タイペイ、5位 朝
・関わる
⑤水分・食事をしっかり摂り体調管理がで
鮮民主主義人民共和国、6位日本、7位
マカオ、8位モンゴル、9位グアム、10
・最後まであきらめない
・Enjoy Football
きた。
⑥異文化に触れることができた。万里の長
位北マリアナ諸島
①攻撃
・チャンスを逃さない
2.日本チーム試合結果
〔リーグ戦〕4勝5敗(リーグ6位)
vs 中国(0-3)
vs チャイニーズ・タイペイ(1-2)
vs モンゴル(4-0) vs 香港(1-4)
常にゴールを狙う・素早いリスタート・
最後まであきらめない
・ボールを失わない
ていない。キックの精度が低い(スピー
ド・球質)
。
vs グアム(2-0)
素早いボールさばき
〔5・6位決定戦〕
vs 朝鮮民主主義人民共和国(0-2)
3.遠征の目的・チーム
コンセプト・ゲームコンセプト
(1)遠征の目的
・自分を知る(試す)
①ハイプレッシャーの中でも発揮すること
のできるテクニック。
判断を伴ったボールコントロールができ
良い準備 → ボール・人・スペースを観る
前に急がない、あわてない
vs 朝鮮民主主義人民共和国(0-1)
vs 韓国(0-5)
城見学、ショッピング。
(2)課題
隙を突く
リバウンド
vs 北マリアナ諸島(12-0)
vs マカオ(1-0)
28
4.成果と課題
リズム・方向の変化
②守備
・チャンスを逃さない
良い準備→ボール・人・スペースを観る
ボールに素早く寄せる → 自由を奪う
積極的にボールを奪いに行く
隙を突く
・粘り強いディフェンス
最後まであきらめない
②動きながら、考えながらのプレー。
ボールに寄る・パス&ゴー・パス&サポ
ートができていない。
ボール状況を確認・判断せずに動き出す
島16名、JFAエリートプログラム2名である。
ールの精度が低いためミスになる。このよ
1歳年上のアジアの選手たちに対して、ど
のようなプレーができるか楽しみであった。
うなことを選手たちが、ゲームから実際に
感じることができた。そして、身について
周りを観ることが習慣化されていない。
その結果、情報が乏しくプレーの選択肢
特に、中国・韓国の高さ・スピード・パワ
ーを兼ね備えた選手にどのように対応でき
きたと思っていたものが、まだまだ身につ
いていないことを実感することで課題が明
が少ない。
ために、タイミングが合わない。
③プレーの連続性。
るか。アカデミーで約4カ月トレーニングを
確になった。
④判断のスピードアップ。
ボール・人(味方・相手)・スペースを
重ねてきたテクニックがどの程度通用する
かなど興味深い大会であった。
今回の遠征で明確になった課題解決に向
けて、選手とともに努力していきたいと思
常に観ることができていない。良い準備が
できていない。したがって、ボールが来て
試合はこれまでと同様に、1-4-3-3のシス
テムをとり、ポジションを固定せずにゲー
います。
からのプレーが多く判断が遅れ、ミスにな
ムに臨んだ。国内のゲームでは、ある程度
っている。
できはじめた「止める・蹴る」のテクニッ
クが、厳しいプレシャーを受けるとまった
5.まとめ
今大会、日本はU-13の選手でチームを構
くと言っていいほど通用せず、ミスを繰り
返していた。ボールに寄ることや、良い準
成しフェスティバルに参加をさせていただ
いた。構成メンバーは、JFAアカデミー福
備(観る・考える・判断)ができていない
ため簡単にボールを失う。パスとコントロ
女子 〔報告者〕今泉守正(JFAアカデミー福島・女子ヘッドコーチ)
1.こころの持ち方
り、アカデミー生の今の心身の状況を共有
することができるのである。もちろん保護
ゲームを支配された。攻め手を欠いたまま、
失点を重ねる経験は、選手たちにとってお
アカデミーの食堂には、アカデミー生が
自分で考え、全員の前で宣言し、記入して
者の方々にも帰省の際に見ていただいた。
「世界基準」をキーワードとして、チー
そらく初めての経験だっただろう。
ハイプレッシャーの中での必要な良い準
氏名をサインした「私の言葉」が貼ってあ
ムの強化ではなく、あくまでも個を育成す
備・観ること、判断すること、走る中でス
る。これは、毎朝、毎晩自分の志を見るこ
とによって、常に『こころの持ち方』を忘
ることを目的として日々活動している。そ
の第一歩として自分自身を知るということ
ペースをつくり、使うこと、ボールへの寄
り、そしてその中で正確なスキルを発揮す
れずにアカデミーの生活に積極的に取り組
んでいけるようにしたものである。
は、大切なことである。
ることについて、頭とボールと身体を動か
し続けることを、選手たち自身がゲームを
自分自身を常にモチベートしていくこと
2.遠征試合
通して肌で感じられただろう。
は、なかなか大変である。アカデミー生の
年代は精神的にも成長段階であり、さまざ
8月は、楢葉町を離れて、アカデミーとし
ては初めての遠征を実施した。13日は日テ
頭とボールと身体を動かすサッカーを目
指し、情報分析力・判断力を上げるととも
まな悩みや心配事を抱え込んでいる。自分
自身を常にモチベートしていくことと同時
レ・メニーナと練習試合を実施した。朝7時
にアカデミーバスに乗り込み、東京まで日
に、走ることもテーマにトレーニングを実
施してきたが、これらは短期間でそう簡単
に常にスタートしたときの『こころの持ち
帰り遠征をしてきた。
に身につくものではない。
方』を忘れずに、何事にもチャレンジして
いくことが大切である。
また、17日からは、2泊3日で鹿児島遠征
を行った。台風の接近とともに鹿児島入り
選手個々の能力を上げていくために基本
の質を上げていくことが重要である。サッ
アカデミー生のさまざまな悩みや不安、
身体の変化をアカデミー生自身が自ら確認
したが、大きな影響もなく実施することが
できた。場所は、南さつま市の吹き上げ浜
カーのゲームを理解し、ピッチ上で状況に
応じてプレーを表現していくために、戦術
できるように、また同時にわれわれスタッ
公園にある天然芝グラウンド。すばらしい
教育をしていくと同時に、その意味を理解
フもアカデミー生の心と身体の状態を共有
しようと取り組んでいるのが、コンディシ
環境下で、鳳凰高校、神村学園、福岡女学
院といった九州の強豪チームと練習試合を
し、持っている技術をゲームの中で発揮で
きるように繰り返し、繰り返し我慢強くア
ョニング・チェックシートである。これは、
1週間をA4一枚の用紙に選手自身が、睡眠・
実施した。
試合は、育成年代のトップレベルのプレ
カデミー生とともに日々取り組んでいく。
食事・疲労度・達成感・感想などを記入し
ていく用紙である。この用紙を記入してい
ッシャー、ボールへの寄りの速さ、ボール
への執着心、判断力、観ることなど、試合
くことにより、アカデミー生自身が、自ら
で戦うために必要な能力をまざまざと見せ
のコンディショニングを把握できるように
なると同時にスタッフも目を通すことによ
つけられた結果になった。東北では味わえ
ない暑さも手伝って、運動量でも圧倒され、
29
2005ナショナルトレセンU-16より© AGC/JFAnews
トレセン活動の取り組み
∼関東トレセンの活動
日本サッカーの強化・発展を目的とし、個を高めていくことを目標とする「トレセン活動」
。
ナショナルトレセンをはじめ、全国各地でさまざまな形のトレセン活動が行われています。
今号より各地域・都道府県・各地区のトレセン活動を報告していきます。
第1回となる今回は、関東トレセンの取り組みを紹介します。
〔報告者〕大野 真(ナショナルトレセンコーチ/関東サッカー協会技術委員長)
国体U-16化を契機に主旨を生かした
トレセン活動を
る現状を考えると、この年代が日本サッカーの選手育成・強化の
「中だるみの年代」であり、日本サッカーのウイークポイントになっ
ていると言える。
日本のサッカーの歴史を振り返ったときに「国体少年の部」の果
たしてきた役割には、大きなものがあった。日本代表選手やJリーガ
ーの多くは、過去に各都道府県の18歳以下の選抜チームが対戦する
関東の現状を踏まえたトレセン改革
「国体少年の部」で活躍をしてきた。この国体が都道府県に散在する
関東には才能を持った若い選手が数多くいる。2007年に韓国で行
優秀な選手の発掘の場であり、強化の場であったことは紛れもない
事実である。その国体が今年度から16歳以下の大会になる。
われるFIFA U-17ワールドカップの出場を目指し、昨年11月にアジア
予選を闘ったU-16日本代表のエントリー選手20名のうち、12名が関
この改定は日本サッカーのレベルアップのためであるが、そのた
東から選出された選手であった。これだけ選手がいるということは、
日本における関東のサッカーの持つ責任も大きいと言うことである。
めに同年代でアジア予選が行なわれるFIFA U-17ワールドカップ(旧
称FIFA U-17世界選手権)を見据えた、国際競技力の向上を目的とす
そこで国体のU-16化を機に、関東のサッカーのレベルをより高め、
将来性のある選手を育てていくために、関東サッカー協会技術委員
るものである。若い時期に世界のレベルと真剣勝負をすることは、
会では「関東としての選手育成・強化のあり方」について検討を重
選手の将来の成長に大変大きな意味を持つ。しかし、日本は過去8
回行われた同大会にアジアの予選を勝ち抜いて出場したのは2回だ
ねた。
けである。このU-17のワールドカップに出場するためには15、16歳
でアジアの予選を勝ち抜かなければならない。
U-16化された国体を選手育成強化の場に
まず、国体のU-16化に伴い、U-16のトレセン活動を国体関東予選
しかし、日本の15、16歳(中学3年生・高校1年生)の選手を取り
巻く環境を考えたときに、選手育成・強化にとって条件が整ってい
に連携させながら年間を通して強化することを考えた。関東は1都7
県、8チームのうち、これまで6チーム出場できた国体の出場枠が4
るとは言えないのが現状である。中学3年生は高校受験による長い
ブランクがあり、夏以降には一部のチームを除いて公式戦がなくな
チームとなり、2分の1の確率になる。国体関東予選を単純にトーナ
メントにすれば、勝ったら終わりの一発勝負で終わってしまう。こ
る。高校1年生は3年区切りの学校制度に合わせた大会の規定が多く、
れでは16歳以下の育成年代の選手で行われる大会にはそぐわないと
強豪チームで1年生が勝負の懸かった「厳しい試合」に出場する機
会が少ないのが現状である。U-20日本代表がFIFA U-20ワールドカッ
考えた。そこで国体関東予選を出場権獲得だけのための「一発勝負」
の大会に終わらせることなくリーグ戦を導入し、前半部分を国体関
プ(旧称FIFAワールドユース選手権)にコンスタントに出場してい
東予選のシード決めと連携させ、国体終了後も年間を通してリーグ
32
戦を継続して行うことにした。
年間を通じて月1回の間隔を置き、リーグ戦を行うことで、M(試
合)−T(練習)−M(試合)の考え方をとり入れ、試合とトレーニ
U-16
年間を通して関東(1都7県=8チーム)でリーグ戦を行う。前節3
ングをバランス良く繰り返すことができる。そこで選手、チーム共
に「改善へのトライ」
「新しいことへのトライ」が可能になり、選手、
節を国体関東予選のシード決めに使う。8チームを4チームずつのリ
ーグに分けて、4月、5月、7月(トレセンマッチデー)にリーグ戦
指導者共に成長することができると考えた。
を行い、1位から4位までの順位を決め、この順位を基に国体関東予
選(8月)での対戦を決めて国体本大会へ出場するチームを決める。
国体終了後も残りの4チームとリーグ戦(11/26、12/17、2/24、2/25)
トレセンマッチデーの創出
選抜された選手が年間を通して月1回のリーグ戦を戦うためには、
事前に所属チームの公式戦が入らない、トレセンとして活動できる
日(トレセンマッチデー)をつくることが必要になった。そこで昨
年6月の段階で各都県サッカー協会第2・3種委員長と技術委員長の
を行う。
試合時間を45分ハーフとし、FIFA U-17ワールドカップに合わせた。
U-15
能力の高い選手は積極的にU-16のチームに入れる。
合同会議を行い、年間10回の関東トレセンマッチデーを決定した。
1学期は各都県で活動を行い、9月、10月のトレセンマッチデーを
1都7県の第2・3種の公式戦が入らないトレセンマッチデーをつく
使い、都県の対抗戦を行う。ここでナショナルトレセンU-16への推
り、各都県、各種別がこれを共有したことで、関東として都県、種
薦選手の選考も行う。2007年1月3日∼5日に2泊3日で都県の対抗戦
別をまたいだトレセン活動が可能になった。
を行う。これ以降は高校受験の準備を重視して活動を休止する。
また、他の年代の関東トレセンリーグや都県トレセンでのリーグ
やゲームが可能となり、計画的にM-T-Mメソッドをとり入れた効率
の良いトレセン活動ができるようになった。
U-14
1学期は各都県で活動を行い、9月から6回のトレセンマッチデー
を使い、都県トレセンと単独活動をしているJリーグの下部チーム、
合計24チームを6チーム×4グループに分けてリーグ戦を行い、M-TMにより選手強化を行う。
トレセンマッチデーを活用した
各年代の関東トレセン
この主旨は、ナショナルトレセンU-14に選ばれる選手はJリーグ
の下部チームの選手が圧倒的に多い中、都県のトレセン選手の中に
以下に各年代の関東トレセンの概要を記載する(下表参照)
。
2006年関東トレセン全体年間計画表
マッチデー
①
4月29日
(祝)
②
5月28日
(日)
③
7月16日
(日)
④
9月10日
(日)
⑤
10月1日
(日)
⑥
11月26日
(日)
⑦
12月17日
(祝)
U-12
△
可能な都県は
行う
△
可能な都県は
行う
△
可能な都県は
行う
U-13
○
都県または地区トレセン
(U-12・13合同トレセン)
○
都県または地区トレセン
(U-12・13合同トレセン)
○
都県または地区トレセン
(U-12・13合同トレセン)
U-14
○
都県トレセン
(都県内選手掌握)
○
都県トレセン
(都県内選手掌握)
○
都県トレセン
(都県内選手掌握)
U-15
○
都県地区
トレセンリーグ
○
都県地区
トレセンリーグ
○
都県地区
トレセンリーグ
U-16
○
関東U-16リーグ第1節
○
関東U-16リーグ第2節
○
関東U-16リーグ第3節
埼玉国際U-12
○
関東8対8交流戦
前日(土)TR形式トレセン
○
関東8対8交流戦
前日(土)TR形式トレセン
○
関東8対8交流戦
前日(土)TR形式トレセン
○
都県または
地区トレセン
○
都県または
地区トレセン
○
都県または
地区トレセン
○
関東リーグ第1節
(2地域4リーグ)
○
関東リーグ第2節
(2地域4リーグ)
○
関東リーグ第3節
(2地域4リーグ)
○
都県または
地区トレセン
○
ナショナルトレセンU-14選考会
(12月16、17日)
○
○
U-15都県トレセン対抗戦
都県トレセン
(ナショナルトレセンU-16選考会)
(都県内選手掌握)
○
○
U-15都県トレセン対抗戦
都県トレセン
(ナショナルトレセンU-16選考会)
(都県内選手掌握)
○
○
都県地区
関東U-16リーグ第4節
トレセンリーグ
フジバンカップ
ナショナルトレセンU-12
落とし込み
ナショナルトレセンU-16
ナショナルトレセンU-12
12/26∼29
プーマカップ
○
都県または
地区トレセン
⑧
1月28日
(日)
⑨
2月24日
(土)
都県U-11
トレセン
U-13トレセン大会
(U-12関東選抜参加)
⑩
2月25日
(日)
都県U-11
トレセン
U-13トレセン大会
(U-12関東選抜参加)
都県U-11トレセン
○
ナショナルトレセンU-14選考会
(1月27、28日)
○
関東リーグ第4節
(2地域4リーグ)
○
関東リーグ順位決定戦
(4節までの成績で順位決定)
○
都県地区
トレセンリーグ
○
関東U-16リーグ第5節
U-15トレセン大会 1/3∼1/5
×(受験)
○
都県トレセン
(都県内選手掌握)
×(受験)
○
関東U-16リーグ第6節
×(受験)
○
関東U-16リーグ第7節
ナショナルトレセンU-14
《補足》U-13は現在調整中
33
も良い環境があれば将来性のある選手は多くいることは事実であり、
個人・チームの課題を抽出するためのものである。
年間を通して拮抗したレベルの高い試合を行うことで、これらの選
手の能力を伸長させていくことにある。また、都県トレセンの下部
もちろん選手は自分の持つ力を精一杯出し切り、勝利を目指して
に当たる地区トレセンにも将来性のある選手が多く存在することか
ら、それらの選手に対して各都県でトレセンリーグなどを行い、そ
全力でプレーし、そのゲームの中からいろいろなことを吸収してい
く。そして、指導者は選手たちの全力のプレーを評価し、そこから
の能力を伸ばしていく。
課題を抽出してそれを克服するためにトレーニングを計画し、コー
U-13
チングを行う。トレセンの目的は「選手の個々の能力を伸ばす」こ
とである。選手の能力を最大限に伸ばすためには、活動の時間が最
U-14のチームに6名以上はU-13の選手を入れる。
各都県での活動を重視し、2月のトレセンマッチデー2日間で都県
も長い所属チームで日々行われるトレーニングを充実させることが
とても重要となる。所属チームの指導者とトレセンの指導者が連携、
の対抗戦を行う。
協力して、選手に関する情報を共有しながら若い才能を開花させて
U-12
いくことが大切である。すべてのトレセン活動に共通することだが、
関東トレセンの活動も「個のレベルを上げる」
、この目的を常に追い
9・10・11月のトレセンマッチデーを使い、8対8の交流戦を行う。
この年代はボールに多く触れることにより、個の技術を高めること
続ける活動でなければならないと考えている。
が重要になるため、関東トレセンでは8対8の試合形式をとり入れた。
また、年齢が低くなればなるほど、可能性のある選手が多くいるこ
とから、U-14で行っているようにJリーグの下部チームは単独で出
場することにして、都県でトレセン活動している選手にできる限り
多く、この交流戦に出場する機会を与えたいと考えた。
選手、指導者共に
2・3・4種の種別を越えた活動を
能力の高い選手には、高いレベルの環境を与えることが、その選
手の能力を最大限に伸ばすことにつながることは周知の事実である。
そこで種別の枠にとらわれずに能力に応じた環境で活動を行えるよ
うにリーグ戦の競技規定等も作成した。
U-16のリーグ戦においては、U-15の優秀な選手を積極的にU-16の
チームに入れて活動をさせていきたいと考えている。また、国体予
選のシードを決める試合と連携させたリーグ戦が4月から始まるこ
とで、各都県でのチームづくりがU-14・15の年代から行われるよう
になった。これにより、指導スタッフが種別を越えた構成となり、
各都県トレセンの指導者の縦のつながりができて活性化につながっ
ている。
U-14のリーグ戦には、試合規定の中にU-13の選手を6名以上エン
トリーすることを義務付けていることから、年代をまたいだ選手の
年齢構成になっている。
U-12では8対8による関東トレセン、12月に行われるフジパンカッ
プ(都県トレセン対抗戦)
、ナショナルトレセンU-12を通して優秀
な選手を選考して関東選抜を編成し、2月のトレセンマッチデーに
U-13の都県対抗戦の中に入れて種別を越えた交流戦を行う。
トレセン本来の主旨を忘れることなく
今回の関東トレセンは、トレセンマッチデーを使いリーグ戦を行
う「ゲーム」が主な活動となる。しかし、このゲームは勝敗を争う
ためだけのゲームではなく、高いレベルの拮抗したゲームの中から
34
ムでトレーニングをしていた姿がうかがえた。また、U-20日本女子代表チ
スーパー少女
プロジェクト
【報告者】
西入俊浩
2006年第1回 (ナショナルトレセンコーチ)
トレーニングキャンプ
1.期間・場所
2006年7月20日∼7月22日/静岡県・時之栖スポーツセンター
2.参加選手
今年度最初のトレーニングキャンプは、昨年度からの継続グループ対
ームのAFC女子サッカー選手権最終予選のGKプレーのVTRで自分た
ちが目指す近い年代の代表チームのプレーを見て、今自分に何が必要
なのか、
このキャンプで行っている基本的なトレーニングがいかに重要で
あるか、
ということが認識できたのではないかと思う。
5.今回のキャンプにおける課題
トレーニングの中で特にゲーム形式の中でプレッシャーが掛かったり、
時間が経過し集中力がなくなってくる状況下で、
キャッチングや基本姿
勢の構えるというプレーができなくなってしまう選手が見られた。
実際のゲームの中で、
いかにプレッシャーの掛かる中でも、基本的なプ
レーを確実にしていかなくてはならない。また、
キックやスローといった基
本的な技術の質も上げていかなくてはならない。味方や相手の状況を
観ることができて判断してフリーな選手にボールフィードする際に、ボール
の質が悪く、
すぐに相手ボールになってしまう状況になるシーンも見られ
た。
全体的にグループでのトレーニング中には、意識して取り組み、基本的
なプレーが確実にできているのに、実際にゲームの中でゴールマウスに
入った状況で基本的な確実なプレーできていない選手が見られた。
象選手として、昨年度のメンバーの中から12名(高校1年∼中学1年)
を
選び招集した。
6.総括と今後への展開
3.トレーニングテーマ
今年度のキャンプでは、昨年度の4回のキャンプからの反省を踏まえ
て、1回でのキャンプの招集人数を少なくし、
また昨年度までの普及(発
・シュートストップ(基本姿勢・キャッチング・ステッピング・ポジショニング)
・ローリングダウン
・フィード
(キック&スロー)
・測定(50m・30mスプリント・キック・オーバースロー・反復横跳び・垂直跳び)
4.今回のキャンプにおける成果
今回のキャンプでは、全日程で雨が降り、時には霧も発生する中、実
際のゲームや国際試合での環境はすべて良いものではないということも
伝える中で、選手は集中し積極的にトレーニングに取り組んでいたと思
う。
前回のキャンプから4カ月が経っているということで、昨年度に行った
テーマで、特に基本技術トレーニングを行い、選手の様子を確認した。
シュートストップでは、基本的なキャッチング
(オーバー・アンダー)
・基本
掘)
・育成だけでなく、強化という部分も考えてキャンプの回数を6回(う
ち1回は新規募集・新メンバーのみのキャンプ)に増やした。
そういった中で、今回のキャンプでは昨年度からの継続グループの選
手ということで、全体の流れやトレーニングに対して新たに何かを指示す
ることなく、自分たちで考えて行動することができ、
キャンプ全体の流れ
がスムーズに進められた。4カ月という期間が空いた中で選手たちはそれ
ぞれ自分のチームで考えてトレーニングしていた様子もうかがえた。ただ、
まだまだ基本的な技術のプレーが習得できていなかったり、GKとしてだ
けではなくサッカー選手としてのプレーの質も上げていかなくてはならな
い。
また、
キャンプ中に個人面談を行い、
この春で進学によってサッカーを
する環境が変わったり、同じチームでも一つ上のカテゴリーに上がったり
と、半数の選手の環境が変わった現在の様子を聞き、状況を把握する
ことができた。全体的には大きな問題もなく、中には強豪高校へ進学し
姿勢の構えなど、
トレーニングの中では意識してできていた。ローリングダ
ウンでは、ボールを簡単に見逃すのではなく、
ローリングダウンによってボ
たり、全国大会常連のチームに入ったりと、選手にとって今までよりもよ
ールにチャレンジする姿も見られ、
ローリングダウンの倒れる姿勢も良くな
ってきていた。フィードでは、
キックやスローの質は時間をかけてトレーニン
り良い環境でプレーしているケースも見られた。
今後のキャンプに向けて、トレーニング内容に関しては、基本的な部
グしていかなくてはならないが、味方につなごうという意識や観て判断し
分を徹底し、
その中で発展したトレーニング内容にしていきたい。また、昨
年度から継続しているオフ・ザ・ピッチの面でも、食事や栄養について・
てフィードするシーンが多く見られた。
また、夜のミーティングでは、選手個人に、
この4カ月間でどのようにトレ
ーニングをしてきたかを振り返り発表させた。その中で、
この4カ月間で選
手それぞれが自分のウイークポイントに対して意識して取り組み、各チー
休養について・ケガに対する予防やケアについてなどを意識させて、
トレ
ーニング同様に継続して取り組んでいきたい。
35
My
F avorite
T raining
新連載
第1回
攻撃の
コンビネーション
第37回全国中学校サッカー大会より© AGC/JFAnews
【報告者】布 啓一郎(JFA技術委員会副委員長/ナショナルトレセンコーチ)
(1)攻撃に必要な要素
に集中力を維持できない選手が多いので
動くサッカーと言いながら、ボールは動
攻撃を成立させる要素には第一に個人
はないでしょうか。基本技術にこだわれ
いても人は動かないことが多くないでし
技術があります。そして状況に応じた個
人戦術が組み合わされ攻撃のコンビネー
る選手でなければ厳しいゲームの中で正
確にプレーしていくことは難しいでしょ
ょうか。
原因はいくつか考えられます。足元で
ションプレーができあがります。
攻撃は創造性だと言われますが、その
う。また、選手に基本を徹底できるコー
チの持久力も欠けてはいないでしょうか。
受けてから次を考えられるのは守備が甘
いのでボールが来る前に判断する必要性
創造性は個人技術と戦術があってその上
に成り立つものだと思います。「攻撃は創
サッカーの技術を体得するには時間が
がないことがあります。また、人が動か
造性だから、自分たちの自由にやれ」と
多くかかります。基本技術の高い選手を
育てようと思ったらまずコーチがこだわ
ないのは、技術が不正確なのでボール保
持者がボールを失うことに対するリスク
言っても個人技術と個人戦術が確立され
ていなければ各自がばらばらに動き、ス
りを持つことが必要だと思います。また
判断も同じことが言えます。判断ミスは
マネージメントの意識が働いていること
もあると思います。しかし、FIFAワール
ペースを共有することはできないでしょ
う。また、パターンに当てはめてトレー
必ずありますが、ミスの中からコミュニ
ケーションをとり、流れの中の判断とア
ドカップのような世界のトップレベルの
サッカーでは、人とボールが動かなくて
ニングを行っていたら、ゲームの中での
クションを習慣化するには多くのプレー
は攻撃が成り立ちません。育成年代から
応用力はなくなり、創造性豊かな攻撃は
組み立てられません。
回数が必要になります。そしてチームと
してのパターンを共有するのではなく、
個人で判断してアクションを起こす、そ
して動き出したことによってできたスペ
そして個人戦術とは選手自身がゲーム
の中で状況に応じたアクションを決断し
個人の判断を合わせ、スペースを共有し、
コンビネーションプレーが確立していき
ースに他の攻撃者が動きを連携してスペ
ースを共有することが攻撃のコンビネー
て実行することと言い換えられます。攻
ます。そのためには反復回数の確保でき
ションプレーの原則だと考えます。
撃を創り出すためには判断を具現化する
個人の技術の精度が必要になり、そして
るトレーニングを
行うことが重要だ
ゲームの流れの中で各選手が状況に応じ
たアクションを実行したときに相手を突
と思います。
破する攻撃が成立します。
(3)積極的なア
(2)精度と判断を同時に追求
クションとスペー
スの共有
精度を上げるためには反復することが
必要です。その中で自分の技術をどのよ
日本の多くのゲ
ームでは、足元で
うに自己評価するかが重要になります。
基本のコントロールやパスが大体できて
ボールを受けてそ
れから次のプレー
いると自分で思うか、技術のより高い精
を考えている場面
度にこだわりを持てるかが、選手の分か
れ道となります。現在基本トレーニング
が多く見られま
す。人もボールも
36
2005ナショナルトレセンU-14西日本より© AGC/JFAnews
積極的なアクションとスペースの共有
(1)
グリッドAに3人のMF、グリッドCに2人のFWが入る。
(2)MFのパス交換時にFWがタイミングよく動き出し、ボールを引き出す。
(3)縦パスが入った後は、MFも加わりグリッドCのエンドラインを目指してボールを運ぶ。
(4)1回の攻撃が終了したら、グリッドC側の人数が3人になるので、
2回目の攻撃はグリッドCからグリッドAに向かって行う。
1.守備者を入れないで行う
図①
A
MF1
図②
A
MF1
MF3
MF3
図③
A
MF1
MF3
MF2
MF2
選択3
MF2
選択2
B
B
B
選択1
図①の説明
グリッドAの中のMF1、2、3がワンタッチでパス交
換を行う。そのときにグリッドCのFW1、2はタイ
ミングよく動き出す。
FW1、2はお互いに同じスペースに走り込まないよ
うに、自分とボールだけの関係で動くのではなく、
自分とボールと仲間の関係で動き出せるようにす
る。
1回目のアクションのタイミングでパスが出ないと
きは、セカンドアクションを行いプレーの連続性
を持つ。
図②の説明
FW1
FW1
FW1
FWに対してくさびのパスが入ったら、MFの1人は
グリッドAを出てFWのサポートに入る。
ボールを受けに行くFW1は、サポートに来たMF2
にパスをする選択肢と、自分の背後を狙っている
FW2にくさびのパスを、自分がプレーせずにスル
ーする選択肢など複数持てるようにする。
図③の説明
FW2
FW2
C
選択2
C
FW1
C
FWの連動だけでなく、クサビのパスが入る前でも
MFが前方のグリッドのスペースへ入って行き、ス
ペースを共有することでパスの選択肢が増える。
2.守備者を入れて行う
守備者が入ることでリアリティが増す。攻撃側のアクションだけではなく、守備者の動きも観て判断し、多くの選手がかかわることで選
択肢のある中から正確な判断とスキルの行使が求められる。
図④
A
MF1
図⑤
A
MF1
図⑥
A
図④の説明
MF1
FWのグリッドに守備者を1人入れて行う。
図⑤の説明
MF3
MF2
MF2
MF2
図⑥の説明
MF3
選択2
パス1
(浮き球)
B
MF3
守備者を2人入れて行う。
(すべてのグリッドに1人の守備者を入れる)
選択1
パス2
(グラウンダー)
B
B
DF1
FW2
FW1
FW2
FW2
FW1
C
中間のゾーン(グリッドB)に守備者を1人入れて
行う。
C
FW1
DF2
C
37
マンチェスター・ユナイテッド
プレミアカップ2006
ワールドファイナル
視察報告
【報告者】足達勇輔(ナショナルトレセンコーチ)
1. 大会概要
(1)日時:2006年8月8日∼11日
2.ヴェルディジュニアユースの結果
〔予選リーグ〕
8日
(2)会場:マンチェスター・ユナイテッド
Carringtonグラウンド(イングランド)
試合会場は、マンチェスターユナイテッ
ドのトレーニング場でもあるCarringtonに
ある施設を使用した。芝のピッチが育成部
門だけでも10面以上取れる環境の中、大
会用に簡易スタンドを備えたピッチ4面を
作り行われた。決勝戦は、マンチェスタ
ー・ユナイテッドのホームスタジアムであ
るOld Tradfordで行われた。
(3)参加チーム:20チーム/参加チーム
の各国予選は、不規則である。
■参加チーム
© NIKE2006
vs Boavista FC
して各クラブ間の交流が大会中にスムーズ
1-0
vs Beijing Sangfang FC 2-3
9日
vs FC Basel
1-0
vs Club Athletico Lanus 1-0
〔決勝トーナメント〕
10日 (準々決勝)
vs Ohio FC Mutiny
に行われるようにすることであった。
6. サッカークリニック
サッカークリニックは、大会期間中に2
回行われた。各チームから3名の選手と、
0-0(PK5-4)
(準決勝)
vs Chivas Guadalajara 0-1
11日 (3位決定戦)
vs Inter Milano
スタッフが参加して8月8日に行われた。
狙いは、アイスブレイクのプログラムを通
マンチェスター・ユナイテッドの選手も参
加しての1時間のプログラムであった。ア
イスブレイクとポジション別に分かれての
クリニックであった。狙いは、プロ選手と
の交流と各チームの選手間の交流であっ
0-2
3. 大会形式
1991年1月以降生まれの大会である。各
試合は、20分×2で行われ、決勝トーナメ
グループA
Manchester United(イングランド)
Ferencvarosi TC(ハンガリー)
Athletic FC Bilbao(スペイン)
Sao Paulo FC(ブラジル)
Mohun Bagan Athletic Club(インド)
ントに入ってからは、PK方式により次回
戦へ進むチームを決定する。3位決定戦と
た。スタープレーヤーとの交流を通して選
手は非常に楽しそうであった。また、参加
しているプロ選手の積極的で真摯な態度に
も非常に感心した。
7. オープントレーニング
決勝戦前には、マンチェスター・ユナイ
決勝戦のみ5分×2の延長戦を行った後に
PK方式により勝者を決定する。
テッドのオープントレーニングを選手全員
で見ることができた。スター選手たちのト
参加選手はU-15であるが、前回同様、
日本から参加のヴェルディジュニアユース
レーニングに、選手たちは目を輝かせてい
た。これも夢見る選手たちにとっては、素
グループB
FC Internazionale Milano(イタリア)
FC Brussels Molenbeek(ベルギー)
Chivas Guadalajara(メキシコ)
Orlando Pirates FC(南アフリカ)
Bulleen Lions FC(オーストラリア)
は、日本クラブユースサッカー選手権(U-
晴らしい企画であった。
抽選会は、大会前夜にOld Tradfordにて
前線にそろえてパスサッカーを志向してい
グループC
Arsenal(イングランド)
Hertha BSC Berlin(ドイツ)
Universidad Catolica(チリ)
Ohio FC Mutiny(アメリカ)
Ulsan Hyundai FC(韓国)
サー・アレックス・ファーガソン(マンチ
ェスターユナイテッド監督)、サー・ボビ
る。特出したタレントがいるわけではない
が、全体的にレベルが高い。しかし、個人
ー・チャールトン(元イングランド代表)
を迎えて盛大に行われた。
で打開できる選手がいないために、ゲーム
が均衡すると苦しんでいた。
グループD
Boavista FC(ポルトガル)
FC Basel(スイス)
Club Athletico Lanus(アルゼンチン)
Beijing Sangfang FC(中国)
ヴェルディジュニアユース
(日本)
38
15)大会と日程が重なったこともあり、
U-14の選手が多かった。
4. 抽選会
8. 参加主要チームの特徴
(1)Manchester United(イングランド)
Arsenalほどではないが、早熟な選手を
抽選会の前には、選手の憧れのスター選
手、ウェイン・ルーニーとリオ・ファーデ
ィナンドを招いて15歳ごろの取り組みの
話やアドバイスをもらった。
5. ワークショップ
ワークショップは、各チームから3名の
(2)Arsenal(イングランド)
Mancester United同様に早熟な選手を多
くそろえて、フィジカル優位で試合を進め
ていた。しかし、同様に局面を打開するア
イデアが乏しく攻め切れていなかった。
© NIKE2006
(3)Sao Pulo FC(ブラジル)
1-3-5-2のスイーパーを置いたシステム
で、それぞれのポジションで個人の力を存
分に発揮させていた。ゲーム運びに15歳
とは思えないほどの洗練された面を見せて
今後アフリカからは、このような選手が多
るにあたっては、そろそろ国内の大会にお
く出てくるのであろうか…。
いても世界で通用しないサッカーとは決別
して、日本というベースを念頭に特徴を築
(8)Beijing Sangfang FC(中国)
フィジカル優位の選手が非常に多いチー
かなければならないのではと思えてならな
い。ボールを失うのを恐れてロングボール
いて、予選リーグを勝ち上がれなかったこ
ムの一つ。大きく、速い選手が多かった。
ばかり蹴ったり、GKを使ってビルドアッ
とが残念なチームの一つであった。
その反面、技術面ではミスが多く、勢いが
通用しなくなると苦しんでいた。
プできないといってロングボールばかり蹴
(4)FC Basel(スイス)
突出した選手はいないが、最後まで自分
(9)Ulsan Hyundai FC(韓国)
ったりしていては、いつまでたっても日本
スタイルは、確立できないことをあらため
て確認させられた。なぜなら、どの国も恐
たちのサッカーを粘り強く貫いていた。良
1-4-3-3のシステムでポゼッションサッ
れてプレーなどしていないし、サッカーと
くトレーニングされていて育成の成果が現
れていた。
カーを試みるが、プレッシャーが速くなる
とミスが目立ち始めフィニッシュまで行け
しっかりと向き合ってプレーしているから
であり、そしてそれが、当たり前のことに
(5)Internazionale Milano FC(イタリア)
ない。フィジカル面では、早熟な選手をそ
ろえているが、技術面・戦術面に課題を多
なっているからである。知恵を絞り、テク
ニックを駆使し、動きの中で共同作業をい
く抱えていた。
とわない緻密なサッカーを展開するために
1-4-4-2の典型的なイタリアサッカーで、
特に守備から攻撃への切り替えは速く、必
ずといってよいほど自分たちの奪い方がで
9. レフェリングのすばらしさ
も、念頭に日本のサッカーを置いて小学生
年代からの育成で、そのときに必要な強化
きたときは、シュートまで持っていけてい
た。
今大会を視察して強く感じたことの一つ
にレフェリーの存在がある。編集後記
を積み上げていかねば決して追いつけない
ことも肌で感じた次第である。また、例え
(P.64参照)にも書いたが、欧州各国から
ばアプローチのためのアプローチなど、本
今大会の優勝チーム。全員が攻守にわた
派遣されてきていたレフェリーは、とにか
く選手への対応がすばらしかった。一言で
来のボールを奪うための守備にもかなりの
差を感じずにはいられなかった。ヴェルデ
りチームプレーの中でプレーしていた。特
に守備への貢献はすばらしく、ほとんどの
言うと「非常にフレンドリーな教育者」で
あった。
ィも決して守備が悪いわけではないが、ま
だまだ球際の厳しさや迫力には大きな差が
(6)Chivas Guadalajara(メキシコ)
選手が守備の原則を理解して実践できてい
た。身体的には、それほど突出した選手は
10. 大会視察総括
あった。
育成年代の指導者と育成年代の審判員の
いないが、プレーの連続性、必要なコーチ
大会全体を振り返って感じることは、育
研修の場としては非常に意義深い大会であ
ング、ボールテクニック、予測、ゲームを
読む力など、自立したプレーの数々は、驚
成の年代であってもその国のスタイルが見
て取れたことである。その中でヴェルディ
ると思うので、次回大会へはぜひ足を運ば
れることをお勧めします。
くほど成熟していた。代表チームと同じく
1-3-3-3-1のシステムで各選手間の距離を理
ジュニアユースは、
大会の中で一度は失
想的に維持し、攻守にわたり厚みを持って
いかけたヴェルディ
闘えていた。
らしさを、コーチ陣
のポジティブな働き
(7)Orkland Pirates FC(南アフリカ)
今大会最も驚きを与えたチームであっ
かけもあり、まだま
だ不安定ながらも必
た。観ていて楽しい!そんなチームである。
死にサッカーと向き
身体能力、ボールタッチに優れ、GKから
もしっかりとボールをつないでゴールまで
合ってプレーできた
ことが何よりの収穫
運ぶテンポの良いサッカーは、見る人を魅
了していた。最優秀選手賞を獲得したのも
ではなかっただろう
か。
このチームのゲームメーカーで、観ている
者の逆を取るプレーを久々に堪能できた。
タイルとは?を考え
日本のサッカース
© NIKE2006
39
第30回全日本少年サッカー大会
第30回全日本少年サッカー大会・決勝(横浜F・マリノスプライマリーvsFC浦和)より© Jリーグフォト
(株)
JFA公認指導者
研修会報告
【報告者】池内 豊(ナショナルトレセンコーチ)
1
概 要
2006年8月12日、曇り空の蒸し暑い朝、国立西が丘サッカー場
3
研修会内容
(1)分析
で第30回全日本少年サッカー大会・決勝戦が行われた。今回の指
導者研修会は、この決勝戦の横浜F・マリノスプライマリーとFC
今回の研修会では、受講者に事前にゲームを観る観点やゲーム分
析の方法についての話はしないで、受講者独自にゲームを分析して
浦和の試合観戦から始まり、観戦後は、バスで移動してJFAハウ
もらった。受講者の方々はゲーム中にそれぞれにメモを取りながら
スでのレクチャーという日程で行われた。研修会参加者は約280
人の応募の中から抽選によって選ばれた70人程度の参加者で行わ
真剣なまなざしでゲームを観ていたのが非常に印象的だった。
試合は、横浜F・マリノスプライマリーの3連覇で幕を閉じたが、
れた。
FC浦和も1次ラウンドからスピードあふれるプレーで今大会を盛
り上げていた。
2
試合観戦後のレクチャーでは、受講者の中から試合についての
目 的
コメントをいただいた。70人いれば70人の考え方、物の見方があ
るということを受講者のコメントから感じることができた。その
全日本少年サッカー大会は、今年で30回を迎え、決勝大会の1
次ラウンドは、昨年度よりJヴィレッジで行われている。また、準
コメントのいくつかを紹介する。
●全体にスキルレベルが高く、局面を打開できる選手が多かった。
決勝と決勝は国立西が丘サッカー場で行われている。全国の小学
●パスをつないで展開を考えればゲームがもっと面白くなるのに
校年代の7,884チーム、約20万のプレーヤーが参加しているこの大
会を検証し、分析していくことで、あらためてこの年代の指導の
簡単にボールを蹴ってしまうことが多かった。
●全体に守備の意識が低く、ボールに対してプレッシャーが掛か
大切さを認識してもらうことを目的にした。
40
らなかった。
●攻撃時にポジションを広く取っていたので、大人のサッカーの
ようで子どもらしくなかった。
見てきたこともあり、自分の主観も交えての報告になった。映像
も使いながら世界のサッカーの流れを紹介した。例えば、今大会
●大きな選手でもボールコントロールがうまい選手がいた。
でいえば、攻撃から守備への切り替えが一段とスピードアップし
ていることや、前線の選手でも守備の意識が非常に高くなってい
他にも受講者の方から積極的に意見交換がなされ、興味深く聞
くことができた。このような意見を出してもらった後に、この年
ること。攻撃に関しては、しっかり組織された守備を崩すために
必要な要素を上位進出チームの戦い方から紹介した。
代に必要な要素を全日本少年サッカー大会のわれわれのテクニカ
ポジションに関係なく攻撃参加できる選手の育成、ボールと人
ル分析を紹介しながらベクトルを合わせていった。その内容を簡
単に紹介する。
が常に動くサッカーに必要な要素、プレッシャーの中でも技術を
発揮できる選手の育成など、ワールドカップで活躍している選手
テクニカルの分析
の育成は逆算していけばU-12の年代が非常に大切であることを確
認することができた。
〔守備について〕
●攻撃から守備の切り替えは速く、ボールを奪いにいく意識は
高かった。
●スライディングタックルや身体をうまく使うことに関しては
課題があった。
●スイーパーを深く配置しているチームが多く、守備の役割を
決めることによって、個人の守備(チャレンジやカバー)の判
断能力を奪っていった。また、GKの守備範囲も狭くなっていた。
〔攻撃について〕
●いつまでもボールを浮かせていることが多い。相手がいても
自分の思ったところにスムーズにコントロールできる選手が
少ない。
その他、レクチャーでは、発育発達やこの年代のトレーニング
の考え方、子どもたちの自立を促すための接し方なども確認した。
4
受講者との意見交換から
FIFAワールドカップの分析、全日本少年サッカー大会の分析、
指導指針などのレクチャーの後に受講者の方の意見を聞くことも
行った。この年代の試合、大会についての発展的な提案もあり、
この年代の指導のあり方を受講者の皆さんが真剣に考えているこ
とが伝わった。
●この年代の試合も少し長くしたら良いのではないか?
なぜならば、日本人はゲームの中の駆け引きが苦手なので、ゲー
●スクリーン&ターンをスムーズにできる選手が少ないため、
自分で局面を打開していけなかった。
ム時間を長くした中で時間の使い方も工夫していけるのではない
か?
また、簡単にボール失うことも多かった。
●ボールを運びながらも状況を観ることができる選手が少ない。
●ゴールキーパーが大きくなっているのでゴールの大きさを少し
大きくしてはどうか?
また、スピードを必要以上に上げすぎてしまいボールを失う
ことが多かった。
●ゴールへの意識が高かった。ヘディングやボレーなどの浮いた
他にも多くの意見をいただくことができた。意見交換も白熱した
こともあり、レクチャーの時間も予定をオーバーして1時間50分、
ボールのシュートがうまくなっている。
●左右両足を思い通りに使える選手はまだまだ少ない。
休憩を取ることも忘れてしまったほど、私自身も充実した時間を過
ごすことができた。講習会の最後には小野剛新技術委員長のあいさ
●パスの出し手と受け手のコミュニケーションがとれていない
つもあり、JFAの考え方の理解を深めていただいた。
ことが多い。
●攻撃時にピッチを意図的に広く使うことができていない。
「この年代の指導者・大人の勝利は、もっと後からの評価で決ま
る」ことを確認して研修会は無事に終了した。
特にGKやDFがボールを奪った後の攻撃の意識が薄かった
(相手の多いところにパスを出してしまう)
。
(2)レクチャー
レクチャーでは全日本少年サッカー大会の分析だけでなく、
2006FIFAワールドカップ ドイツの分析も入れて行った。私自身も
TSG(テクニカルスタディグループ)でグループリーグの試合を
第30回全日本少年サッカー大会・決勝(横浜F・マリノスプライマリーvsFC浦和)より© Jリーグフォト
(株)
第30回全日本少年サッカー大会・決勝(横浜F・マリノスプライマリー追浜vsFC浦和)より© Jリーグフォト
(株)
41
年代別指導指針⑮
JFA技術委員会
フィニッシュ∼U-14
© Jリーグフォト
(株)
中学1、2年代では、まずボールを蹴る
ことを数多く行わせたい。日本人はストリ
(1)のドリルでは、どのように選手に
ボールを蹴らせるかがポイントとなる。1
していかなければならなくなる。そして
(4)のゲーム形式の中で周りの状況に応じ
ートサッカーや公園でなど練習時間以外で
ボールを蹴ることが少ないため、練習時間
人でシュート板に蹴ることが一番数多く蹴
ることができるが、シュート板やネットも
てプレーしてゴールを多く奪えるように指
導する。
内に効率良くたくさんボールを蹴らせるこ
ないところが多いので、2人組で蹴ること
トレーニングの種類は、
とが重要となる。ただし注意しなければい
けないことは、この年代は成長格差が非常
が効率が良いと思う。インステップで低い
ボールを1タッチ、2タッチで、①1人に
①ドリブルシュート(センター・サイド)
②コントロール&シュート(前・横・後
にあるため、ボールの強さや蹴り方など
個々の体格に応じて指導ポイントも違うこ
GKの構えをさせ、相手の胸に ②ボールを
自分でバウンドさせてボレー ③2人でリフ
ろから)
③ワンタッチシュート(クロスから)
とを考慮しておく。海外の公園で休みの日
や平日の午後にボールを蹴る姿を見るが、
ティング(ヘディングと足)し、少しずつ
離れていくなど、最初のドリルで数多くボ
トレーニング段階・種類を踏まえて、フ
ィニッシュでの足りない部分をレベルに応
日本ではあまり見受けられない。ボールを
ールに触れることを考えてトレーニングを
じて、週に1、2回、年間を通して徹底し
蹴ることができない場所も多く環境の影響
もあると思われるが、サッカーのスキルア
組む。フランスの指導者は7秒以内に次の
ボールに触らなければ、スキルが身につき
て行うことにより、フィニッシュの精度は
向上していく。日本の選手はU-12のとこ
ップには必要なことである。
トレーニングは、
にくいと言っている。ボールがスムーズに
蹴れるようにして(2)の段階に進むと良
ろでシュートをうっていれば良いという習
慣があり、ゴールの枠を外したり、しっか
い。
りミートできないことが多い。目的は点を
(2)では正確にコースを狙うこと、強
くゴールに蹴り込むことなど、ポイントは
決めることなので、相手GKやDFを観なが
ら余裕を持ってシュートをうち、ゴールを
あるが、GKのポジションを観てゴールに
入れることを心掛けさせよう。
決めることを日ごろから心掛けさせてトレ
ーニングしてほしい。
(1)ドリル(1人か2人)で数多くボー
ルを蹴り、
(2)ゴールにGKが入った状態でシュート
(3)GK・DFが入った状態でシュート
(4)シュートゲーム(3対3 or 4対4、
ペナルティーエリア×2)
という段階を考えて行うと良い。
42
(3)の段階ではDFが入るため、いつ
GKを観るのか、限られた時間の中で判断
1.−A 1対1+GK
2. ターンからシュート
(DFリミテッドプレッシャー)
キーファクター
●観る ●シュートの精度
●ファーストタッチ ●しかけ(DFとの駆け引き)
●こぼれ球 ●落ち着き
3. クロスからシュート
キーファクター
●観る ●シュートの精度
●タイミング ●駆け引き(チェック)
●ファーストタッチ ●落ち着き
4.2対1
※U-12でも同じオーガナイズを紹介しているが、数的優位を確実にシュート
チャンスに結びつけることを、この年代で確実に行っていきたいということで、
「U-14の狙い:シンプルに突破することを目指す」を加えていく。
キーファクター
●観る ●シュートの精度
●ファーストタッチ ●クロスに入るタイミング
●駆け引き(チェック)
●こぼれ球
●落ち着き
①・攻撃側がお互いにパス交換してスタート
・守備者は最初のパスが出された時点でスタート
(オフサイド有)
・慣れてきたら攻撃の時間制限をつくり、シンプルな突破を目指す
②・最初のパスを出した攻撃者はパスを受けた攻撃者の背後をオーバーラップする。
(リターンパスしなくても良い)
※背後をオーパーラップすることで、オーバーラップを使った場合クロスに対する合わせ
の状況になる。
キーファクター
●状況に応じたスキルの発揮(ファーストタッチ、パスorドリブル)
●サポートの質
●数的優位を確実なシュートチャンスに結びつける。
43
J F A
P H Y S I C A L
F I T N E S S
P R O J E C T
JFAフィジカルフィットネスプロジェクト
期分け
(ピリオダイゼーション)
の考え方②
菅野淳(JFAフィジカルフィットネスプロジェクト)
より具体的な期分けの考え方
© Jリーグフォト㈱
礎的な体力・運動能力の発達の向上を目的とします。さらにテクニ
カル・タクティカルな部分としては基礎技能の向上や個人戦術の徹
底などが挙げられます。トレーニング計画の第1段階として、シー
年間スケジュールからいくつかある大会の中で、どの大会を一番
重要な大会(リーグ戦またはトーナメント戦)としてとらえてトレ
ズン前のメディカルチェックやフィジカルチェックの時期を決定し
ます。
ーニングしていくかを設定します。重要な大会が年間スケジュール
の中にいくつあるかはチームによって異なります。その年間スケジ
次に、プレシーズンの主なテーマは「チームづくり」です。フィ
ジカル的な部分としては、サッカーに必要な専門的な体力・運動能
ュールを基にオフシーズン・プレシーズン・インシーズンに期分け
力の発達を目的とします。また、テクニカル・タクティカルな部分
し、トレーニングの目的を明確にします。重要な大会の1週間前か
ら試合終了時点までをインシーズンとして、その前の準備する期間
としてはチーム戦術を遂行できる能力の養成やポジション別などの
をオフシーズンとプレシーズンに期分けします。
練習試合にあたるプレシーズンマッチのタイミングや相手なども決
めます。
シーズンごとの主なテーマ
専門的な動きづくりなどが挙げられます。さらにプレシーズンでは、
最後に、インシーズンの主な目的としては、
「チームの完成」です。
フィジカル的な部分としてはテーパリング、試合出場選手の疲労回
復・コンディションの維持、サブ選手のコンディショニングなどを
オフシーズンの主なテーマは「選手づくり」です。フィジカル的
な部分としては、選手個人の基礎体力づくりやその競技に必要な基
目的とします。またテクニカル・タクティカルな部分としては試合
の反省に基づいた修正が挙げられます(表5)
。
表5 シーズンの期分けと目的
オフシーズン(選手づくり)
選手個人の競技的状態の準備
基礎体力づくり
サッカーに必要な基礎体力・運動能力の発達
プレシーズン(チームづくり)
チームの競技的状態の準備
チームがめざす戦術を遂行できる能力の養成
ポジション別などの専門的な動きづくり
サッカーに必要な専門的体力・運動能力の発達
インシーズン(チームの完成)
コンディションの維持・発揮
試合の反省をもとにした修正
© Jリーグフォト㈱
44
J F A
P H Y S I C A L
F I T N E S S
P R O J E C T
オフシーズン、プレシーズンは比較的計画に沿ったトレーニング
を行うことができるものの(図3)
、インシーズンでは、チーム状況
になってきます。そのとき大切になるのが、シーズン前のフィジカ
ルチェックにより、選手個人を客観的指標によってあらかじめ把握
により、トレーニング計画の修正が必ず必要となります。フィジカ
しておくことです。シーズン前のフィジカルチェックは、その選手
ルコーチとしては、監督と相談し、状況をよく判断した上でトレー
ニング計画を修正しますが、常に試行錯誤の尽きない問題となりま
が正しく発達しているか、計画が正しく実行されているかを後に客
観的に振り返るための重要な資料となります。
すので、常に状況を判断する能力と計画を見直す臨機応変さが必要
図3 期分けとトレーニングの構成
ステップ1
スキル系
ステップ2
基礎的運動
調整力
パワー系
ステップ3
専門的運動
調整力
基礎的筋力
バルクアップ
機能的筋力
パワーアップ
ステップ4
アジリティ
クイックネス
バリスティクス
レジステッド
プライオメトリクス アシステッド
スタミナ系
有酸素性持久力
無酸素性持久力
オフシーズン
プレシーズン
期分け
© Jリーグフォト㈱
ユース年代での身体づくりのために
キッズ年代であれば、技術の習得などにトレーニングの時間を割
トレーニングだけではつまらないし、やはりサッカー選手の身体を
くためにさほど問題になりませんが、ジュニアユースおよびユース
年代では、特に身体づくりに欠かせないフィジカルトレーニングを
つくるわけですから、オフシーズンだからといってボールをまった
く使わないトレーニングをやりましょうと言っているわけではあり
進める場合に、期分けの考え方の導入が望まれます。しかし、特に
ません。下記表6に
高校の指導者の方々から聞かれるのは、
「試合数が多すぎて期分けど
ころではない」ということです。
示す通り、ゲーム
形式のトレーニン
それではどのように期分けをすればよいのでしょうか。多かれ少
なかれ議論の余地はあると思われますが、ここでは一つのアイデア
グを並行して導入
するのはまったく
として提言させていただきます。
問題ありませんし、
高校サッカー選手権を一つの目指すべき大きな大会と位置づけれ
ば、この大会が終了する1月から2月にかけての2カ月間をオフシー
むしろボールを使
ったフィジカルト
ズンと定めます。この時期には、できるだけ試合は入れずにしっか
りと基礎体力や個人技術などを高めます。もちろん試合を入れて悪
レーニングをとり
入れたり、トレー
いわけではありませんが、この時期のトレーニングを、とにかく主
ニングの最後には
たる目的を選手個人の身体づくりに当てるのです。当然フィジカル
ボールを使って終
了するのが望まし
表6 オフシーズン週間スケジュール例
いと言えます。こ
の時期、チーム戦
月
火
水
フィジカル フィジカル
(スタミナ)(スキル)
60'
60'
休養
技術
戦術
60'
技術
戦術
60'
木
金
土
日
フィジカル フィジカル
(スタミナ)(スキル)
60'
60'
技術
技術
戦術
戦術
120'
120'
技術
技術
戦術
戦術
60'
60'
術を高める時間が
多少なりとも少な
くなったとしても、
勇気を持って8∼
10週間くらいの期
間の時間の多くを
身体づくりに当て
るだけで、相当強
パワー
30'
パワー
30'
パワー
30'
い身体がつくられ
るはずです(表6)
。
© Jリーグフォト㈱
45