チャイナクラブ通信

2011 年 12 月配信 【第 70 号】
名銀「中国ビジネスクラブ」ビジネスレポート
チャイナクラブ通 信
~ 中国ビジネスの昇龍を求めて~
名銀「チャイナクラブ通信」では、中国に拠点を構える当行ならではの現地取材に
基づいた情報をお届けいたします。
― CONTENTS (第 70 号) ―
<南通トピックス> P2
南通市「中南世紀城」について、ご紹介します。
<上海トピックス> P3~6
現代版中国の春節(正月)風情についてご紹介します。
ご感想等がございましたら、弊行支店担当者又は事務
局までご一報賜りますようお願い申し上げます。
<南通トピックス>
「中南世紀城」について
現在、南通市では建築ラッシュが続いており、街中で、建築中の商業ビル・マンション・ホテルな
どが見受けられます。こうした状況のなか、今、南通市で最も注目されている地区である、「中南
世紀城」についてお伝えいたします。
「中南世紀城」は、江蘇省海門市に本社を置く中南集団が開発する、200 万平米超に及ぶ新興
住宅・商業地です。南通市中心部から南へ車で 15 分程度、南通市の中心部と経済技術開発区の
中間に位置し、南通市人民政府のある行政区画と隣接しています。
当地区のランドマークタワーは今年 5 月に正式開業した「金石国際大酒店」で、ヨーロッパ調の
豪華な内装が施されている 58 階建のホテルです。このホテルは夜になるとライトアップされ、その
名の通り、金色に輝いているように見えます。10 月には当ホテルにおいて弊行南通支店の開業
式典も開催させていただきました。
そして先月下旬、商業地区に「中南城」という大型ショッピングモールが開業し、当地区は一段と
活気づいてきました。このショッピングモールには、日本ブランドの「ユニクロ」や「無印良品」が南
通市へ初出店したのに加え、「H&M」、「ZARA」、「トイザらス」、「スターバックス」等、日本でもお馴
染みのお店がたくさん入居しています。また、施設内には、「欧尚(Auchan)」というフランス系の大
型スーパーや、映画館、ゲームセンター等もあり、子供から大人まで幅広い年代の人たちが楽しく
過ごせる場所になっています。このショッピングモールの誕生は、現地の人々だけでなく、南通市
に滞在する日本人駐在員にとっても、大きな生活環境の変化をもたらすものとなりました。
南通市では、こうした開発を起点として、外資企業が進出地を決定する際に重要な要素の一つ
となる「駐在員の生活環境」が、今後も向上していくものと期待されています。
【金石国際大酒店】
【中南城ショッピングモール】
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<上海トピックス>
現代版中国春節風情(2012 年)
2012 年 1 月 23 日は中国農暦の春節(新年)で、中国において 1 年で最も重要な祝日です。春節
を迎えるこの時期、昔からの伝統を保つ一方、最近では春節の過ごし方にもずいぶん変化が生じ
てきているようです。今回は現代の春節についてご紹介いたします。
1. 春運(師走)
昔、中国人の家のほとんどは三世代が 1 つの庭を共有する形の家(華東地域では庄園と呼ばれ
ていた)に住んでいました。農民の家庭では“父母在児不遠遊”(父母が生きている間、息子は家
から遠く離れるべきではない)といった教育が一般的であり、多くの人が故郷を離れずに暮らして
いました。また家を離れたごく一部の子供たちも大晦日の前には家に帰って、親孝行をすることが
当たり前でした。数千年来、皆が家族の元へ帰省し、春節を迎える風習が今日もなお続いていま
す。
中国が改革開放政策を実施した 1978 年以降、沿海地域では、多くの経済開発区が中心となっ
て外資企業を誘致し、立ち上がった中外合弁企業、外資独資企業はこぞって大勢の従業員を募
集しました。これにより、農地に依存して暮らしを送ってきた農民も出稼ぎ農民工として内陸から
次々と沿海地域へと働きに出ることとなります。家を離れた農民は都会で少しでも収入を増やそう
と、残業や土日出勤も積極的に受け入れて働きました。しかし一年中働く農民も、春節のこの時期
だけはやはり故郷の家に帰りたいのです。
春運とは春節時期の運輸を省略した言い方です。より早く帰省するには飛行機を利用するのが
一番ですが、農民が高いチケットを購入して飛行機に乗るケースは稀であり、ほとんどの農民は、
電車か長距離バスを利用して帰省します。
春運期間は春節の 15 日前から春節明けの 25 日までの 40 日間とされており、2012 年の春運期
間は 2012 年 1 月 8 日から 2012 年 2 月 17 日までとなります。春運期間は航空チケットの割引は
無く、電車と長距離バスの値段は総じて 10%の値上がりとなります。関係部門の統計によると、鉄
道やバス会社等は春運の 40 日の間に、年間の 30%の乗客を運び、年間の 40%の売上げを計上
するといわれています。春運はこれら運輸会社にとって、絶好の書き入れ時となるわけです。
2011 年の春運時期(1 月 19 日~2 月 27 日)の利用客数(回数)は次のとおりでした。
・ 全国
28 億人 (回数)
・ 鉄道輸送
2.3 億人 (回数)
前年度比 12%増
・ バス輸送
25.5 億人(回数)
前年度比 12%増
・ 船輸送
3500 万人(回数)
前年度比 6%増
・ 航空輸送
3220 万人(回数)
前年度比 10%増
このように、中国国民の大移動となるこの時期、春節に帰りたくても、鉄道やバスのチケットがど
うしても手に入らないといった人が出てきます。チケットが手に入らない人々は、故郷の近い人々
が集まり、6~10 人のグループを組んで、5~6 日間掛けて、オートバイで移動する部隊を組成しま
す。このオートバイ部隊は途中でだんだんと膨れ上がり、数キロメートルの長さとなります。1 年ぶ
りに会う両親と子供と一緒に大晦日の夜を過ごすことをひたすら楽しみにしながら、オートバイ部
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隊は故郷の家を目指すのですが、彼らの長く辛いみちのりは毎年のようにテレビや新聞で紹介さ
れますが、その度に、涙なしでは語れないほどのたくさんの物語がつくられていくのです。
2.
年夜飯(大晦日の夕食)と魚
故郷を離れた人たちが大晦日の夜までにどうしても家に着きたいというのは、単に食事をする
ためだけではなく、大晦日に祖先を祭らなければならないからです。大晦日は午後から、祖先に
お供えする料理を出し、赤い蝋燭に火を付けます。蝋燭に火を付けると、家の人々は年齢順に従
い、上から下へ、祖先に向かって火のついた線香を持ちながらお辞儀をすると同時に、「体の健
康」や「勉強の成績が向上するように」などといった言葉を呟きながら、祖先に祈願するのです。そ
れから、家の年長者は『焼紙』(天国の祖先に献上するため、お金に似せた紙を焼く事)を行います。
これらの行事はおよそ 1 時間かかります。終わったところで、家族はそろって食事(年夜飯)を始め
ます。もし、この日に家へ帰ることができないと、親不孝といわれ、親族の前で示しがつかない状
況となるほどです。
中国は国土の広い国ですから、南と北では食べ物も違ってきます。南の方は料理と一緒にご飯
を食べ、北の方は料理と一緒に餃子を食べます。しかし、いくら料理が違っても、必ず一尾の大き
な魚料理を出します。これは『魚』の発音(YU)が余らせる(余裕がある)といった、『余』の発音(YU)
と同じことからきています。
今では、このような行事はだんだん都会では見られなくなってきましたが、田舎、特に年長者が
いる家では現在でも行われています。一部の家庭では、大晦日の夕食をつくるのが面倒といって、
レストランで夕食をするケースも見られます。しかし、ここでも魚料理はなくてはならないものとされ
ています。
3. 拝年(新年の挨拶)と紅包(お年玉)
年が明け、春節期間となると親戚や目上の人に対し、新年の挨拶を行います。昔は本人が相手
の家へ出向いて、挨拶を行います。出かけるときに果物とその他の手土産を持参し、相手の家で
食事をしてから帰ります。現在では親戚や目上の人に新年の挨拶はしても、特に親しい間柄でな
ければ、相手の家で食事をすることはなくなってきました。また、直接訪問しなくても、今は電話や
メールで相手に挨拶をするケースが増え、場合によっては自分が送信した挨拶電文が何人かに
転送された後、再び自分の携帯電話に送信されてくることもあります。
電信会社の統計によると、2011 年の大晦日と春節初日の 2 日間で全国の挨拶メールが 50 億通
を超え、1 週間の春節休暇中ではトータルで 100 億通を超えたとされています。
お金を紅い袋に入れた、日本のお年玉のようなものを紅包と呼びます。一般的には紅包は親か
ら子供へ、または目上の人が目下の人にあげるものですが、最近は少し変わってきています。春
節の風習を利用して、目下の人が目上の人の子供に紅包を渡します。これは普通の紅包ではなく、
紅い袋に 1 万元などの大金を入れる人もいて、近年広がっていく傾向にあるようです。
今時の子供たちは昔と違い、紅包をもらうと貯金をします。金額が少ない子でも数千元、多い子
になると、数万元の額となります。
企業でも紅包があり、昔は翌年雇用しない人を除き、すべての人に紅包を渡していました。紅包
のお金が多いか少ないかによって企業に対する貢献度が評価されました。現在の企業ではボー
ナス制度を実施しているので、一般的には紅包は配りませんが、企業にとって、なくてはならない
人、特に優秀な人に対しては、紅包を配るといった風習は続いているようです。
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4. 民工荒(農民の不足)
改革開放以来、中国の中西部から大勢の農民たちが沿海地区にやって来て、ほとんどの農民
は技能がないことから、労働集約型の工場で働いてきました。労働集約型の工場で働く従業員の
8 割以上が出稼ぎ農民でした。春節の前後では、農民が故郷へ帰る為に企業での人手不足が大
きな問題となります。例えば、市内の宅配会社の従業員は春節期間には半数が故郷へ帰省しま
す。一方で、友人や親戚へ贈呈する宅配品が普段の倍に増えることになります。このような状況
は決して宅配会社のみではなく、出稼ぎ農民を雇用する企業では毎年見られる現象で、春節前に
社員を引き止めておくという対策と臨時パート雇用による対策で対応します。それでも、人手が足
りないことから、会社に残った社員は一日 12 時間以上の仕事をすることも決して珍しくありませ
ん。
春節期間中は都会で生活する老人や若い夫婦も大変です。なぜかと言うと、普段は、家の掃除
と食事の準備は出稼ぎのお手伝いさんに頼んでいるケースが多い為です。現在の都市部では、
若い人は結婚すると両親と別居し、お手伝いさんがいないと料理もできない人たちが増えており、
また老人は体力の衰えから、自分たちだけで掃除や料理をすることが苦痛となります。せっかくの
春節休暇も毎日の食事に不便を感じることとなってきています。
春節期間、企業や家庭では出稼ぎ農民とお手伝いさんに残ってもらう為、昇給やその他の優遇
条件を提案するなど、苦肉の策を練っています。最近、上海テレビで放送した番組では家政婦に
携わる 40 代のお母さんの月収は 4500 元、一方IT専門の大卒の娘さんの初任給は 2500 元しかな
かったと紹介されていました。
5. 爆竹と火事、ケガ、ゴミ
中国人は大晦日の夜に爆竹を鳴らす風習があります。それは昔の物語と関係があります。昔々
『年』という怪獣がいて、大晦日の夜になると、村の家畜を襲いに来ていました。村の人々はこの
『年』を爆竹と花火で、追い返したことから、このような風習は数千年経っても変わらず続いていま
す。現在、中国人はお祝いとして爆竹と花火を鳴らしているのですが、楽しいはずの爆竹と花火も、
油断をすると、火事とケガに繋がります。統計によると、毎年大晦日の夜、北京、上海などの大都
市の消防隊は全員が出動して、火事が発生しやすい場所で警備を行います。それでも、北京、上
海では春節期間に合わせて百件以上の火災が発生しています。2009 年 2 月 9 日、打ち上げ花火
が北京中央テレビの新築ビルを炎上させました。まもなく 3 年が経過しますが、北京中央テレビの
新しいビルはまだ使用不可能となっています。また 2011 年 2 月 3 日、瀋陽市の五つ星の皇朝ホテ
ルでは春節の花火が原因で、約 1 万㎡の部屋を消失しました。火事以外にも、北京、上海では春
節期間に爆竹を鳴らした際、手や目を負傷する事故がそれぞれ数十件発生しています。更に爆
竹と花火のゴミの量も驚くほど多く、2011 年、北京では春節の一週間の間に、6 万トンのゴミが発
生。上海では大晦日の夜だけでゴミの量が 1.7 万トンにも上りました。
楽しいはずの春節に不幸な事故が起きるのは非常に悲しいことです。今後春節を迎えるにあた
り、北京、上海の政府機関では安全教育を強化することを目的に、一部場所での、爆竹や花火の
打ち上げを禁止とするなどの規制を行い、火事やケガなどの事故を最小限に抑える方針が打ち
出されています。しかし、中国の皆さんにとって年に一度のストレス解消となる花火や爆竹を全面
的に規制してしまうことは、恐らく不可能であり、どんなに時代が変わろうとも、中国の春節の風物
詩である『爆竹』だけは今年も鳴り響く事でしょう。
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上海豫園商場での春節風景
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