162 - 外航船員医療事業団

October
CONTENTS
ご 挨 拶〉
〉
〉
1
会長就任に当たって
医 療 〉〉
〉
No.162
外航船員医療事業団 会長 前
川弘幸
横浜船員保険病院 内科医長 洲
崎文雄
せんぽ東京高輪病院 眼科部長 吉
筋正雄
2
漢方薬について
Kanpo Drugs
医 療 〉〉
〉16
飛蚊症について
Myodesopsia (Floater)
◇事業団だより 〉〉〉● 第
23
26 回通常総会の報告
27
◇事業団だより 〉〉〉● 衛生管理者再講習を終了して
立石信一郎 他 2 名
◇随想 〉〉
〉● 私の趣味
30
八馬汽船㈱ 一等航海士 板
谷健次
1
巻 頭 言
会長就任に当たって
外航船員医療事業団
会長
前川弘幸
本年 6 月に当事業団の会長に就任いたし
ました前川でございます。
「外航船乗組員の皆様」昼夜を問わず船
舶の安全運航に心を砕かれ、懸命の努力を
されていることと存じます。
当 事 業 団 は、1970 年 8 月 に 設 立 さ れ、
その後 1981 年に現在の国土交通省所管の
社団法人外航船員医療事業団に改組され、
今日まで外航船乗組員の為の医療体制の整
備並びに健康管理体制の充実を図り、もっ
てわが国の海上産業の発展に寄与すること
を目的として各種事業に取り組んでおりま
す。これまでの関係各位のご協力ご尽力に
あらためて感謝申し上げます。
現在、59 ヶ国 116 港におきまして、信
頼できる特定の医療機関( 148)と特約を
結んでおりますと同時に各地 58 港に世話
役を選任し、安心して受診や入院ができる
体制を構築しております。また、国内にお
きましても LNG 船を中心に国内医療機関
による訪船診療を実施、更には衛生管理者
を対象に再講習を行なうなど、健康管理体
制の充実に万全を期しております。
さて、現在外航海運業界はかつてない好
業績を享受しております。この背景には、
中国をはじめとする “ BRICs”(ブラジル、
ロシア、インド、中国)と称される新興経
済国の発展がありますが、さらに “VISTA”
(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、
トルコ、アルゼンチン)という新たな経済
発展地域も加わり、今後も海上貿易量の増
大が見込まれております。このような状況
下、わが国の暮らしや経済活動を支え、ひ
いては世界経済を支えるインフラとして、
顧客の求める輸送ニーズに応え、安定かつ
良質な輸送サービスを提供することがわが
国外航海運に課せられた使命であります。
この使命を果たしながら、安全運航の徹
底を図り、地球環境保全対策を推進してい
くことがわが国外航海運に求められており
ます。この要請に的確に応えていくために
は、外航船乗組員の皆様が心身ともに健康
な状態で安全運航に専念できる体制の整備
が不可欠であると考えております。当事業
団は、今後とも、会員会社をはじめ内外の
多くの関係者のご協力とご支援を得て、国
内外の医療体制の整備や乗組員の健康管理
体制の一層の充実に取り組んでいく所存で
すので、よろしくお願い申し上げます。
最後に、外航船乗組員の皆様のご健勝と
ご安航、関係者の皆様のご健勝を祈念して
私のご挨拶とさせて戴きます。
2
外医療ニュース
医療
漢方薬について
横浜船員保険病院
内科医長
洲崎文男
みなさん漢方薬というと、どのような印
象をお持ちでしょうか。現代医学に比べる
と非科学的で信用できない、あやしげな健
康法と区別が付かないなど、マイナスのイ
メージをお持ちの方も多いかと思います。
しかし漢方は意外に私たちの身近にあ
り、知らず知らずのうちに生薬の入った薬
やお茶を口にしていることも珍しくありま
せん。例えば「良薬にして口に甘し」のキ
ャッチフレーズで有名な「浅田飴」は、
「桔
梗」「麻黄」「人参」などの生薬エキスが主
な成分です。江戸時代末期の有名な漢方医
である浅田宗伯が伝授したもので立派な漢
方薬と言えましょう。
さて日本の薬局は大手のチェーン店・ド
ラッグストアーから小さな個人経営のもの
まで様々ですが、売場を見ると大抵の薬局
には漢方薬が置かれています。漢方薬のコ
ーナーを設けているところや、風邪薬の棚
の片隅に置かれているところなど様々です
が、置いてあるのは柴胡加竜骨牡蛎湯、清
心蓮子飲、等々読み方も分からないような
薬がほとんどだと思います。
大抵は「咳に」「膝が痛い時に」
「トイレ
が近いひとに」「足が冷えてつらいとき」
など、大まかな効能が書かれていて、いか
にも効きそうだという印象を与えます。し
かし例えば咳に効くものを探すと麦門冬
湯、竹如温胆湯、五虎湯、神秘湯…等々色々
な薬があり予備知識がなければどれがよい
のか分かりません。
薬局の薬剤師さんに聞けば、適当なもの
を勧めてくれるとは思いますが、実は沢山
の漢方薬の中からその人にあったものを選
ぶには多くの知識と経験が必要で、診察を
しないで薬を選ぶのには名人芸を要しま
す。
薬局の中でも漢方薬専門で、きざみの生
薬(草根木皮など)を扱っているようなと
ころは別ですが、ほとんどの薬局では、大
体の見当で対応していることと思います。
病院で医師に相談すれば大丈夫かという
と、これもなかなか期待できません。
つい最近まで日本では漢方の授業はごく
一部の医学部でしか行われておらず、他に
は漢方を学ぶのは興味を持ったごく一部の
医師だけでした。
(ちなみに私が日本東洋
医学会の専門医試験を受けたとき、年 1 回
の試験に対して受験者は全国でわずかに
30 人弱でした。
)
漢方薬について
そうは言っても薬局で漢方薬が目に入れ
ば試してみようか、という気になることも
あるかと思います。本稿では参考までに漢
方薬の大まかな知識について解説します。
ただし、なるべく簡潔で分かりやすい説明
を目指したので、本来の漢方の文脈とはか
なり表現が異なり、説明も充分ではないの
でお断りしておきます。
和漢と中医学
「漢方薬」が用いられる医学を西洋医学
に対して東洋医学(和漢)といい、遠い昔
に中国から伝わった医学という印象があり
ますが、実は現在日本の「東洋医学(和漢)
」
の中には大きく「漢方医学」と「中医学」
の 2 つの流れがあります。
「漢方医学」は平安時代に中国から日本
へ伝わった医術が、日本の国情に合わせて
改良されながら伝承され、現在に続いてい
る日本独特の伝統医学で、江戸時代にオラ
ンダ医学(蘭方)が入って来た時にそれと
区別するために付けられた名称が「漢方」
です。
明治時代になるまで日本の医学は基本的
に「漢方医学」でしたし、日本で健康保険
の適応となっている東洋医学で用いるお薬
は全てここでいう「漢方薬」です。
一方「中医学」は現代も中国で教育、実
践されている中国伝統医学をさします(ち
なみに韓国では、中国起源の医学が韓国で
発展した「韓医学」があります)。本家の
中国ではこの「中医学」が平安時代以降も
独自に発展を続け、現代では西洋医学もそ
の中に取り入れ、さらに変化を続けていま
す。
「漢方医学」と「中医学」では使用する
生薬など、かなり共通していますが、診断
や治療の組み立てなどに違いがあります。
以下に簡単に「漢方医学」と「中医学」の
体系の違いについて解説します。
中医学
漢方の診察法は大きく、望診(体格、眼
光、舌などを見ること)
、聞診(声の具合
などを聞いたり尿・便の臭いを嗅ぐこと)
、
問診(症状や経過を聞くこと)
、切診(手
足の冷え、脈や腹部の状態を触って見るこ
と)の 4 つから成り立っています。これは
「漢方医学」でも「中医学」でも同様で、
このような診察方法で患者さんの状態を把
握します。
「中医学」は「弁証論治」といって、患
者さんの状態を把握した後、まずそれを中
医学のシステムに当てはめて、そのときの
病状を解釈します。そしてその解釈に応じ
た治療法を中医学のシステムから導きだし
ていく、というのが大まかな流れです。
「中医学」
、
「漢方医学」といった区別と
は別にこれらの医学の理論は
「陰陽五行論」
「臓腑経絡理論」
「気血水理論」などから成
り立っています。最も基本的な概略を図に
示しますが、
「中医学」ではこのような理
論を元に患者さんの状態を整理し明らかに
していきます。この過程を「弁証」といい
ますが、
「弁証」の方法は色々あり、
「八網
弁証」
「病因弁証」
「衛気営血弁証」…など
様々な方法を組み合わせて病状の診断を行
うのです。この過程は非常に複雑なのでこ
こでは立ち入りません。
診断の過程が終わると、今度はどのよう
に治療するかの理論がいくつもあり、それ
に則って治療薬を決めていく(論治といい
ます)というのが「中医学」の方法です。
理論を重視して理屈詰めで治療していくと
いうのが「中医学」の方法と言えましょう。
3
4
外医療ニュース
図 1 五 行 説
肝
腎
心
肺
脾
五臓六腑という言葉がありますが、漢方では肝・心・脾・肺・腎の五臓がこの図のよう
に関係しあっていると考えます。この五臓は現代の医学でいう肝臓や心臓など実際の臓器
のことではなく、漢方独自の概念を指します。
非常に大ざっぱになりますが、肝は気分の調整や身体の維持を、心は意識の状態や血の
流れを、脾は消化吸収を、肺は呼吸を、腎は成長や水分の調節をそれぞれ司ります。
図の円周に沿ってみると、例えば肝は心の働きを高め、心は脾の働きを高めます。
矢印に沿ってみると肝は脾の働きを抑え、脾は腎の働きを抑えるというように関係しあ
っています。
漢方医学
これに対して「漢方医学」の基本的な考
え方は「方証相対」と呼ばれており、患者
さんの状態と治療薬を直接結びつけていま
す。漢方から見た患者さんの状態は「証」
と言いますが、例えば普通の体力の人の風
邪のひき始めで寒気がして肩がはる、汗は
まだ出てこないような状態であれば「葛根
湯証」といい、葛根湯という漢方薬がよく
効くということです。
「漢方医学」でも「五行説」のような基
本的な理論は踏まえた、診察も行った上で
治療しますが、「中医学」に比べると理論
よりは目の前の患者さんの状態に重点を置
いたものとなっています。診察法では「中
医学」では脈の状態(脈診)を重視するの
に対して「漢方医学」は腹部の切診(腹診)
を中心に「証」を決めていくのも特徴です。
また非常に大まかな表現ですが、
「中医学」
では熱を冷ますような治療が中心で、
「漢
方医学」は体を温めるような治療が中心と
なっています。
その他の薬剤
日本の薬局ではこれら 2 つの流れに沿っ
たものの他に、生薬を使った様々な薬が市
販されています。ドリンク剤や顆粒など
漢方薬について
図 2 気 血 水
肝
腎
心
気 血
水
肺
脾
漢方では人間に限らず、生き物には気・血・水の 3 種類の流れがはたらいていると考え
ます。気は天気や空気の気とも通じ自然一般の流れのイメージで、精神的・肉体的な活動
そのものに関係します。
血は赤い液体の、水は無色の液体のイメージで、それぞれ身体そのものを維持します。
五臓を通じて気・血・水は調整・循環・外界と交通し、逆に気・血・水の状態(多い・少
ない・滞るなど)は五臓のはたらきに影響します。
様々で、漢方薬のような名前が付いている
ものもありますが、実際はメーカーの独自
の処方であることも多いです。構成されて
いる生薬から、どのような効能があるもの
か予想は可能ですが、実際にどのように効
くかは、データがないと分からないと言わ
ざるを得ません。いずれにせよ薬局で漢方
薬を購入する場合はお店の薬剤師さんとよ
く相談することが必要でしょう。
また中国などから直接インターネットな
どで薬を購入した場合、漢字で表示されて
いる成分が実は化学薬品であることもあり
ます。例えば個人輸入した漢方薬に、病院
で使われている効果の強い抗糖尿病薬が入
っていたという事例が報告されています。
このような薬を個人の判断で使用するのは
大変危険です。
一般の店舗で売られていない未認可の薬
剤は、手を出さないのが無難と言えます。
漢方薬の一例
ここまでの説明で漢方薬を使うのは難し
そうだ、ということがお分かりいただけた
と思います。ある時に効いていた薬でも、
その時々の体調によっては効かない、とい
うこともままあります。
そうは言っても、どのような時にどの漢
方薬を使うのか大雑把な目安はあるので、
風邪の場合を中心にいくつか和漢薬の例を
挙げておきます。ただし実際に漢方薬を使
う場合は自分の判断ではなく、薬剤師や医
師によく相談の上でお願いします。また中
には思わぬ副作用がでることもあるので考
慮に入れておいて下さい。
5
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外医療ニュース
風邪のひき始め
のどが痛くなってきた、
鼻水が出始めた、
少し寒気がする、など風邪のひき始めに対
して代表的な漢方薬がいくつかあります。
最も有名なのは「葛根湯」ですが、実は疲
れがたまっていたり、体力が衰えた状態に
はあまり向きません。「葛根湯」には生薬
で「麻黄」というものが含まれていますが、
「麻黄」が多く含まれた漢方薬は体力が衰
えた状態で使うと体が耐えられないことが
あります。また「麻黄」には血圧を上げる
成分が含まれているため高血圧のある方は
注意が必要です。
「葛根湯」はもともとの
体力がある程度あって体がしっかりした方
に向いています。目安となる症状は、寒気
があり熱が出てきたがまだ汗は出ない、首
筋や肩がこわばる、などです。
日頃体力が衰えていると感じている方
や、胃腸の調子が悪い、疲れがたまってい
るような方には「麻黄附子細辛湯」が向い
ています。この薬にも「麻黄」が入ってい
ますが他の生薬が体力を補う形となってい
ます。寒気や軽い発熱、鼻水があり、倦怠
感が強い場合に用います。のどが少しいが
らっぽい、チクチクするといった、ごく軽
い症状の時にも効くことがあります。
鼻水と咳が気になる場合は「小青竜湯」
が向いています。鼻づまりではなく垂れて
くる鼻水の状態で痰のからんだ咳がある場
合に用います。この薬も「麻黄」が含まれ
ていますが、体力がある程度低下した人で
も使えます。尿が出にくくなることがある
ので、普段排尿に問題がある場合は避けた
方がよいです。
本格的な風邪ではなく、少し咽が痛い、
咽が赤くなったという程度の場合は「桔梗
湯」という薬でもよいです。うがいに近い
感じで口の中に溜めてゆっくり服用すると
よいでしょう。体力の状態にはあまり関係
なく使用可能です。症状が軽い場合は「浅
田飴」もお奨めできます。
長引く咳
痰がたくさん出る咳か、痰の切れにくい
空咳かで使う薬は異なります。
空咳の場合は「麦門冬湯」が代表的です。
のどの乾燥した感じや違和感があり、せき
込みが強いときに使います。体力が弱って
いるときも使用できます。このような咳で
のどや口の中がからからに乾燥し、布団で
横になると咳が出るような場合は「滋陰降
火湯」を用います。
痰の多い咳で、のどの違和感やいがいが
した感じがあり胃もたれや軽い胃の痛みを
伴うような場合は「竹如温胆湯」を用いま
す。もともと胃腸の調子が悪い方の咳に効
きますが、それにこだわらずのどの調子が
おかしく咳が出かかっているというような
風邪のひき始めにも効果があります。この
場合は寒気を伴わないことが必要です。
粘調な痰がありせき込みが強い場合は、
体力のある方では「麻杏甘石湯」が使われ
ます。のどが乾き汗をかいているような状
態で用います。同じ様な症状で体力の低下
した方は前に出た「滋陰降火湯」などを用
います。他にも咳に効果のある漢方薬は
色々ありますが、体力が低下している方に
は向かないものが結構あるので注意が必要
です。
なお風邪の諸症状が取れた後で、いつま
でも熱っぽい、食欲が出ないなど風邪が治
りきらない場合は「柴胡桂枝湯」が使われ
ます。
漢方薬について
疲れ・倦怠感
肉体的な過労や病気が続いて体力が低下
した時のだるさと、精神的なストレスが続
いたときのだるさは分けて考える必要があ
ります。体の疲れが中心の場合は、「補中
益気湯」「十全大補湯」など体力を補うも
のが向いています。「補中益気湯」は食欲
不振や寝汗が続いて精神的にも不安・動悸
などの症状があり、声の調子も弱々しくな
ったというような状態で用います。「十全
大補湯」はこれに加えて貧血・皮膚の乾燥・
顔色不良など、体力の低下が外から見ても
分かる場合に向いています。
足腰など下半身を中心にだるい感じがあ
る場合は「牛車腎気丸」「八味地黄丸」が
よく使われます。共に下半身の脱力感・冷
えた感じがあり、夜トイレが近いような時
に用いますが「牛車腎気丸」の方が下半身
のむくみや腰痛など症状が重い方に向いて
います。胃の悪い人には向かないことがあ
るので注意が必要です。
精神的に消耗した場合、いらいらして怒
りっぽく、不眠がちという方では「抑肝散
加陳皮半夏」、のぼせ感や不安感があり体
力も低下している感じの方には「桂枝加竜
骨牡蛎湯」などの処方があります。
肥満
肥満に効く漢方薬としては
「防風通聖散」
と「防已黄耆湯」が代表的です。どちらも
効き目はおだやかですが、減量効果として
は数カ月かけて 2 ~ 3 ㎏程度のことが多い
です。「防風通聖散」は体力のある、太鼓
腹で便秘がちながっちりした体格の方に向
いています。体力のある中年男性に向いて
いると言えましょう。一方「防已黄耆湯」
はあまり体力も筋肉もない水太りの方に向
いています。こちらはあまり運動をしない
中年の女性向きというイメージです。
どちらも大抵の薬局で売られていますが
糖尿病などの基礎疾患のある方では思わぬ
副作用の可能性もあるので、使用にあたっ
ては医師とよく相談する必要があります。
おわりに
以上雑駁に漢方薬について述べました。
最後に蛇足ですが、漢方では食事について
も色々教えがあります。体調を崩したとき
は、一般にはにんにく、韮、生の葱など刺
激や香りの強いものや、脂肪の多い肉類な
ど消化の悪いもの、冷たいものは避けて胃
腸に負担をかけないようにするのが大事で
す。普段の食生活でも胃腸に負担をかけす
ぎないのが、
体調を崩さない秘訣でしょう。
本稿では金匱要略講話(大塚敬節主講、
創元社)
、傷寒論解説(大塚敬節、創元社)
、
和漢診療学(寺澤捷年、医学書院)
、中医
学 概 論( 大 野 修 嗣、 日 本 東 洋 医 学 雑 誌
58(3))を参考にしました。
7
8
外医療ニュース
Kampo Drugs
Yokohama Seamen's Insurance Hospital
Dr. Fumio Suzaki
Department of Internal Medicine
What impression do you have about Kampo drugs? Many of you might have negative images
about Kampo drugs, thinking them to be unscientific and untrustworthy compared to modern
medicines, and to be indistinguishable from shady health management methods. However,
Kampo drugs are surprisingly close to us, and it is not uncommon for us to take drugs and teas
containing crude drugs unknowingly. For example, Asada-ame, which is famous for the
catchphrase, “ Good medicine and sweet in the mouth,” contains crude drug extracts of
Platycodon Root, Ephedra Herb, Ginseng Root, etc., as its main ingredients. The drug was
prepared by Sohaku Asada, a famous Kampo physician at the end of the Edo Period, and has
been handed down as a good Kampo drug.
In Japan, there are various pharmacies including major chain stores, drugstores, and small
private pharmacies, and Kampo drugs are available in most of them. Some pharmacies have a
section for Kampo drugs and other pharmacies place Kampo drugs at a corner of the shelf for
cold remedies. But, it is difficult for us to read the names of most of the Kampo drugs written
in Chinese characters, such as Saiko-ka-ryukotsu-borei-to (formula bupleuri cum ostrea et
fossilia ossis (Latin)) and Seishin-renshi-in (decoctum nelumbinis purificationis cordis). In
most cases, rough indications, including “ for cough,” “ for knee pain,” “ for the people who go
to the toilet frequently, ” and “ in difficulty due to cold limbs, ” are shown, giving the
impression that Kampo drugs are very effective. When you look for drugs that are effective for
cough, for example, there are various ones such as Bakumondo-to (formula ophiopogonis),
Chikujo-untan-to (formula tepefacti fellis phyllostachydis), Goko-to (formula quinquetigrium), and Shimpi-to (formula divinita), and you cannot determine which drug is good for
your symptoms without any previous knowledge about these drugs.
If you ask pharmacists, they might recommend appropriate drugs, but extensive knowledge
and experience are required to select drugs that are suitable for a particular person from among
the many Kampo drugs. A master's hands are required to choose drugs without an
Kampo Drugs
examination.
Except for pharmacies specialized in Kampo drugs, which deal with minced crude drugs (roots
of trees, nuts, etc.), most pharmacies are considered to respond according to rough guidelines.
You also cannot expect proper advice from consultations with doctors at hospitals.
Until recently, education of Kampo medicine had been conducted only in a few schools of
medicine, and Kampo medicine has been studied only by a few doctors who were interested in
them. (In fact, when I sat an examination as a specialist in the Japan Society for Oriental
Medicine, only 30 examinees or so took the examination conducted once a year in Japan.) But,
when you visit a pharmacy and find Kampo drugs there, you might naturally want to try them.
In this paper, I give some general knowledge about Kampo drugs for your reference. Because
I aim to provide a simple and easy-to-understand explanation, the expressions used might be
very different from the context of original Kampo medicines, and explanations might not be
sufficient for describing Kampo drugs.
Kampo medicine and traditional Chinese medicine
In contrast to Western medicine, medicines using Kampo drugs are called oriental medicines
(Japanese-Oriental (Kampo) medicine), which are considered to be medicines brought from
China a long time ago. Currently, there are two mainstreams of oriental medicine (JapaneseOriental (Kampo) medicine) in Japan: Kampo medicine and traditional Chinese medicine.
Kampo medicine is a unique traditional medicine to Japan, for which medical skills were
brought to Japan from China in the Heian Period. It carries on the tradition of Chinese
medicine, while having been improved according to conditions in Japan, and continues to be
used to the present day. The name Kampo was given to differentiate it from Dutch medicine
(Ranpo), which entered Japan during the Edo Period.
Japanese medicines were basically Kampo medicines until the Meiji Period, and all drugs used
in oriental medicine covered by health insurance in Japan are Kampo drugs.
On the other hand, traditional Chinese medicines mean Chinese traditional medicines still
taught and practiced in modern China (in Korea, there are Korean medicines developed from
medicines of Chinese origin). In China, the originator, this traditional Chinese medicine
continues to be developed independently, while incorporating Western medicines at the
present time, and is further changing.
Kampo medicines and traditional Chinese medicines are very common crude drugs, but their
systems differ in the content of diagnosis and treatment. I briefly explain the differences
9
10 外医療ニュース
between Kampo medicine and traditional Chinese medicine systems below.
Traditional Chinese medicine
The diagnostic method for Kampo medicine roughly consists of four methods: visual
examination (to look at physical constitution, eyesight, tongue, etc.), examination by hearing
and smell question and answer (to listen the voice or to smell urine or feces), (to ask about
symptoms or progress), and palpation (examination of cold limbs, reading pulse, and
abdominal palpation). Using these diagnostic methods, both Japanese-Oriental (Kampo)
medicine and traditional Chinese medicine, grasp the conditions of patients.
Roughly, traditional Chinese medicine is a dialectic order, in which, after grasping the
condition of a patient, is first applied to the system of traditional Chinese medicine to interpret
medical conditions at that time. According to the interpretation, moreover, therapeutic
methods are introduced from the system of traditional Chinese medicine.
Separate from differentiations such as traditional Chinese medicine and Japanese-Oriental
(Kampo) medicine, the theory of Kampo consists of the theory of Yin-Yang and the five
phases, the theory of visceral diseases and meridians, and the theory of ki (vital energy), Ketsu
(blood) and Sui (water). The most basic outline is shown in the figure. In traditional Chinese
medicine, the conditions of patients are organized and clarified based on such theories. This
process is called dialectic. There are various dialectic methods, and medical conditions are
diagnosed by combining various methods. Because this process is very complicated, it is not
described here.
After completing the diagnostic processes, there are many theories about therapeutic methods,
and the method of traditional Chinese medicine determines (order) therapeutic drugs
according to these theories. It can be said that the traditional Chinese medicine method treats
diseases logically by emphasizing theories.
Japanese-Oriental (Kampo) medicine
On the contrary, the basic concept of Japanese-Oriental (Kampo) medicine is a formulation
corresponding to a Kampo diagnosis, which directly links the conditions of patients to
therapeutic drugs. The conditions of patients are considered from Kampo through a Kampo
Diagnosis; for example, the conditions under which a person of normal body strength shows
chills and stiffness in the shoulders, and does not sweat in the early phase of a common cold
are called Kakkon-to in the Kampo Diagnosis, which means that a Kakkon-to Kampo drug is
very effective for that person. In the Japanese-Oriental (Kampo) medicine, treatment is
conducted considering basic theories such as the Five Elements Theory and a Kampo
Kampo Drugs
Fig. 1 Five phases theory
Liver
Kidney
Heart
Lung
Spleen
In Kampo medicine, the term, Gozo-roppu (five parenchymatous viscera and six hollow
viscera), shows that five viscera including liver, heart, spleen, lung, and kidney relate to one
another as shown in this figure. These five viscera do not express actual organs such as liver
and heart but show a concept unique to Kampo. Very roughly, the liver governs adjustments
to mood and maintenance of the body, the heart governs the conditions of consciousness and
blood flow, the spleen governs digestion and absorption, the lung governs respiration, and the
kidney governs growth and moisture control.
Following the circumference of the figure, for example, the liver increases the action of the
heart, and the heart increases the action of the spleen. Following the arrows, the liver
suppresses the actions of the spleen, and the spleen suppresses the actions of the kidney.
These viscera relate to one another as shown in the figure.
examination is conducted accordingly, but in comparison with traditional Chinese medicine,
treatment is conducted by emphasizing the conditions of the patient grasped by the doctor
rather than theories. As regards diagnostic methods, the pulse (pulse diagnosis) is emphasized
in traditional Chinese medicine, whereas the Kampo diagnosis is determined mainly from a
diagnosis based on abdominal symptoms according to Japanese-Oriental (Kampo) medicine.
Very roughly, a treatment to reduce fever is mainly conducted with traditional Chinese
medicine, but that to warm the body is mainly conducted with Japanese-Oriental (Kampo)
medicine.
Other drugs
In addition to drugs conforming to these two threads, various drugs using crude drugs are
commercially available in Japan. These are tonic drinks, granules, etc., some of which are
11
12 外医療ニュース
Fig. 2 The theory of Ki, Ketsu, and Sui
Liver
Kidney
Ki
(Vital energy)
Ketsu
(blood)
Heart
Sui
(water)
Lung
Spleen
Vital energy, blood, and water
In Kampo medicine, it is considered that three types of flow of vital energy, blood, and water
act not only in humans but also in organisms. Ki (Vital energy) relates to weather or air, has the
image of a general natural flow and relates to mental and physical activities. Ketsu (Blood) has
the image of a red liquid, and Sui (water) has the image of a colorless liquid, both of which
maintain the body itself. Ki, Ketsu, and Sui are adjusted, circulate, and contact with the
outside world through five viscera. On the other hand, the conditions of Ki, Ketsu, and Sui
(much, less, get stacked, etc.) influence the activities of five viscera.
named like Kampo drugs, but actually many of them are made to a manufacturer's own
prescription. It is possible to estimate efficacy from the constituent crude drugs, but I have to
say that it is impossible to show the effectiveness of these drugs without obtaining any data.
Anyway, when you buy Kampo drugs, you are advised to consult a pharmacist at the
pharmacy.
When drugs are purchased directly from China via the Internet, the components of the drugs
written in Chinese characters might actually be chemical agents. For example, it has been
reported that potent anti-diabetic drugs used in hospitals are contained in Kampo drugs
imported by individuals. It is very dangerous to use these drugs at an individual's discretion.
It can be said that it is safer not to use unapproved drugs that are not sold in general
pharmacies.
Example of Kampo drugs
I hope my explanation so far shows that it might be difficult to use Kampo drugs. Even if a
Kampo Drugs
drug was effective at one time, it might not be effective depending upon physical conditions at
another time.
Nevertheless, because there is a rough indication of when and what Kampo drugs should be
used, I will show some examples of Japanese-Oriental (Kampo) drugs mainly for the common
cold. When Kampo drugs are used in practice, however, they should not be used at an
individual's discretion, but should be used after consulting a pharmacist or a physician. You
should consider that unexpected adverse reactions might occur.
Early phase of common cold
There are some typical Kampo drugs for symptoms in the early phase of the common cold,
such as sore throat, runny nose, and mild chill. The most famous one is Kakkon-to (formula
puerariae), but it is not so effective for patients with accumulated fatigue and reduced physical
strength. Kakkon-to contains a crude drug, ephedra herb, and if Kampo drugs containing a lot
of ephedra herb are used under a weakened state, the body might not be able to tolerate it.
Because ephedra herb contains vasopressor components, moreover, caution should be
exercised for patients with hypertension. Kakkon-to is suitable for patients who are physically
strong and have an adequate physical constitution. The guiding symptoms are chill, fever, not
sweating yet, and stiffness in neck and shoulders.
For patients with a feeling of reduced physical strength, poor condition of gastrointestinal tract
or accumulated fatigue, Mao-bushi-saishin-to (formula asiasari aconite ephedrae) is suitable.
Ephedra herb is also contained in this drug, but other crude drugs cover physical strength. It is
used when patients have chill, mild fever, runny nose, and intense malaise. It might also be
effective for very mild symptoms such as scratchy throat and tickle in the throat.
If worried about runny nose and coughing, Sho-seiryu-to (formula divinitatis caeruleae minor)
is suitable. It is not used for nasal congestion but it is used for runny nose and phlegmy cough.
This drug also contains ephedra herb, but it can also be used for patients with reduced physical
strength to some extent. If patients have difficulty urinating, it is better to avoid this drug with
them.
In patients showing no serious cold symptoms but mild sore throat or redness in the throat,
Kikyo-to (formula platycodi) is also suitable. It is better to take this drug slowly by keeping it
in the mouth while gargling. It can be used irrespective of physical strength. For mild
symptoms, Asada Ame is also recommended.
13
14 外医療ニュース
Chronic cough
The drug used is different between phlegmy cough and dry cough with difficulty in loosening
phlegm.
In cases of dry cough, Bakumondo-to (formula ophiopogonis) is used typically. It is used
when patients have a dry or uncomfortable feeling in the throat and severe cough. It can also
be used in patients with reduced physical strength. In cases of such cough, for dry throat and
mouth and cough while lying on a bed, Jiin-koka-to (formula demissionis ordoris et yin
repletionis) is used.
In cases of phlegmy cough, uncomfortable and scratchy feeling in the throat, heavy stomach
feeling and mild stomachache, Chikujo-untan-to (formula tepefacti fellis phyllostachydis) is
used. It is effective for cough not only in patients who usually have poor digestion, but also in
patients with the early phase of common cold, such as uncomfortable feeling in the throat or
cough. In such a case, it is necessary that the patient does have a chill.
In case of viscous phlegm and severe cough, Ma-kyo-kan-seki-to (formula gypsum
glycyrrhizae armeniacae ephedrae) is used in patients with adequate physical strength. It is
used when a patient has dry throat and is sweating. In patients with similar symptoms but
reduced physical strength, Jiin-koka-to, which was previously described, is used. In addition,
various Kampo drugs are effective for cough, but as there are many Kampo drugs that are
unsuitable for patients with reduced physical strength, care is required.
In patients in whom common cold is not completely cured, that is, with prolonged fever and
anorexia, after recovery from various symptoms of the common cold, Saiko-keishi-to (formula
cinnamomi et bupleuri) is used.
Fatigue and malaise
It is necessary to differentiate lassitude associated with reduced physical strength after
persistent physical fatigue and diseases from associated with persistent mental stress. In cases
mainly with physical fatigue, Kampo drugs that compensate for physical strength, including
Hochu-ekki-to (formula repletionis animalis et supletionis medii) and Juzen-taiho-to (formula
decem-supplementorum totum), are suitable. Hochu-ekki-to is used in patients with persistent
loss of appetite and night sweat, mental anxiety and palpitation, and faint voice. In addition to
these symptoms, Juzen-taiho-to is suitable for patients whose reduced physical strength is
apparent objectively, such as having symptoms of anemia, dry skin, and poor complexion.
Kampo Drugs
In patients with lassitude mainly in the lower limbs, Gosha-jinki-gan (pilulae renales
plantaginis et achyranthis) and Hachimi-jio-gan (pilulae octo-medicamentorum rehmanniae
are commonly used. Both of them are used for weakness and chill in the lower limbs and
frequent urination at night, but Gosha-jinki-gan is more suitable for patients with severe
symptoms such as swelling of the lower limbs and low back pain. Because it might not be
suitable for patients with stomach disorders, care is required.
In patients with mental exhaustion, irritation, short temper, or a tendency of insomnia, Yokukan-san-ka-chimpi-hange (pulvis depressionis hepatic cum pinellia et aurantio) is prescribed,
and in patients with hot flushes, anxiety, or reduced physical strength, Keishi-ka-ryukotsuborei-to (formula cinnamomi cum ostrea et fossilia ossis) is prescribed.
Obesity
Bofu-tsusho-san (pulvis ledebouriellae compositae) and Boi-ogi-to (formula astragali et
sinomenii) are typically used as Kampo drugs effective for obesity. Both have mild potency
and reduce body weight by about 2 or 3 kg within several months. Bofu-tsusho-san is suitable
for patients with physical strength, big belly, tendency towards constipation, and having a
well-built physique. It can be said that it is suitable for middle-aged men who are physically
strong. On the other hand, Boi-ogi-to is suitable for patients with swelling, who do not have
much physical strength or muscles. This drug is considered to be suitable for middle-aged,
physically inactive women.
Both are available in most pharmacies, but as there is a possibility of unexpected adverse
reactions in patients with underlying diseases such as diabetes mellitus, it is necessary to
consult a doctor before using them.
Conclusion
I have given an overview of Kampo drugs above. In addition, in Kampo medicine, there are
various lessons to be noted about taking meals. Upon falling sick, it is generally important to
avoid pungent and strong flavored foods such as garlic, leek, and raw onion, and indigestible
foods such as fatty meats and cold foods, so as not to irritate the digestive system. In a normal
diet, the key for maintaining good physical condition is not to put overload on the stomach.
This manuscript consulted “ Lecture on Kinki-yoryaku ” (mainly by Keisetsu Otsuka;
Sogensha, Inc.), “ Explanation of Shokan-ron” (Keisetsu Otsuka; Sogensha, Inc.), “ JapaneseOriental (Kampo) Medicine” (Katsutoshi Terasawa; Igaku-Shoin, Ltd.), and “ Introduction to
traditional Chinese medicine” (Shuji Ohno; Journal of the Japan Society for Oriental Medicine
58 (3)).
15
16 外医療ニュース
医療
飛蚊症について
せんぽ東京高輪病院
眼科部長
吉筋正雄
Ⅰ 飛蚊症とは何か
飛蚊症(ひぶんしょう)は、
白い紙や壁、
青空などを見た時に、黒っぽい点や虫状、
煤状、糸屑状などのものが、飛んだり浮か
んだりして見える症状を言います。視線を
動かしても一緒に移動し、まばたきしたり
眼を擦ったりしても消えることはありませ
んが、暗い所では見えなくなります。まる
で蚊などの虫が飛んでいるかのように見え
るため、飛蚊症と呼ばれます。
これは、主として加齢(老化)に伴う現
象ですが、近視の強い人では年齢が若くて
も自覚することがあります。生理的なもの
で問題のない場合がほとんど(生理的飛蚊
症)ですが、ときに重大な病気の前ぶれや
一症状である場合があります。
Ⅱ 飛蚊症のしくみ
眼球の中には、卵の白身に似たゼリー状
の透明な物質が詰まっていて、これを硝子
体(しょうしたい)と呼びます。前方から
眼に入った光は、角膜・前房水・水晶体(カ
メラで言えばレンズ)
・硝子体の順に、透
明な構造物を透過して、
光を感じる網膜
(カ
メラで言えばフィルム)へと達します。
この硝子体に何らかの原因により
「濁り」
が生じると、
明るい所を見た時に、
その「濁
図 1 眼球の水平断面図(参天製薬 HP より引用)
しょうしたい
硝子体
にご
濁り
光
もうまく
網膜
ちゅうしんか
中心窩
かくまく
角膜
すいしょうたい
水晶体
飛蚊症について
り」の「影」が網膜へと投影されます。こ
の「影」は眼球の動きに伴って揺れ動き、
あたかも虫や糸くずなどの浮遊物が飛んで
いるように見えるわけです。これらの「濁
り」には、生理的な原因によるものと、病
的な原因によるものがあります。
Ⅲ 生理的飛蚊症
母体内で胎児の眼球がつくられる途中で
は、硝子体に血管が通っていますが、眼球
が完成すると、この血管はなくなってゆく
のが普通です。しかし、生まれた後も血管
のなごりが硝子体に残存すると、
これが
「濁
り」となって飛蚊症の症状を感じることが
あります。
この場合の飛蚊症は、生理的なもので、
健康な目にも起こる現象ですから、症状が
進まない限りは、さほど心配する必要はあ
りません。
Ⅳ 老化現象としての
後部硝子体剥離
これは、飛蚊症の原因として最も多いも
のです。歳をとると、ゼリー状の硝子体か
ら液状の部分が分離し、硝子体は次第に収
縮して網膜から剥がれます(後部硝子体剥
離)。この時、硝子体中に「濁り」が生じ、
飛蚊症の原因となります。
また、完全に網膜と離れきっていない硝
子体が、網膜を引っ張ると、光が走ったよ
うに感じる症状(光視症)が出現します。
硝子体剥離自体は病気ではありません
が、硝子体が網膜を引っ張って、網膜裂孔
や網膜剥離という病気を引き起こすことが
あるので、光視症と飛蚊症が急に出現した
時には、眼底検査を受けた方が良いでしょ
う。
Ⅴ 強度近視眼での後部硝子体
剥離と硝子体混濁
強度近視眼では、通常よりも若い年齢で
後部硝子体剥離が生じます。また、網膜が
萎縮変性して、硝子体混濁(濁り)が生じ
やすいとされています。そのため、飛蚊症
の症状を感じる場合が多くなります。
また、強度近視眼では、網膜の萎縮変性
から硝子体混濁以外に、網膜に穴が開いて
いる(網膜裂孔)場合があります。この網
膜裂孔は、次項で述べますように、網膜剥
離という病気の原因になります。強度近視
眼では、通常の眼に比べ、網膜剥離になる
危険性が大きいと考えられますので、注意
が必要です。
Ⅵ 網膜裂孔・網膜剥離
硝子体剥離や打撲その他の原因で網膜に
穴が開いたり(網膜裂孔)
、その穴を中心
に網膜が下の層から剥がれて硝子体の方へ
浮き出したり(網膜剥離)することがあり
ます。このような現象が起こると、初期症
状としてピカピカとした光が走るのが見え
たり(光視症)
、目の前を飛ぶ浮遊物の数
が急に増加したり(飛蚊症)して、進行す
ると見えない部分が生じたり(視野欠損)
するようになり、放っておくと失明にいた
る場合があります。
網膜裂孔の治療は、レーザー光線で裂孔
の周囲を焼き固め(光凝固法)
、剥離を防
止します。これは通院治療で行えますが、
網膜剥離を起こすと入院・手術が必要とな
ります。
Ⅶ 硝子体出血
糖尿病や高血圧、外傷などにより眼底で
出血が起こり、その血液が硝子体に入ると
17
18 外医療ニュース
図 2 網膜剥離(参天製薬 HP より引用)
もうまくはくり
網膜剥離
しょうしたい
硝子体
きょうまく
強膜
こうさい もうようたい みゃくらくまく
虹彩 毛様体 脈絡膜
もうまく
網膜
まく
ぶどう膜
突然、飛蚊症の症状を感じたり、目の前に
赤いカーテンを引いたように感じたりしま
す。出血の量や部位によっては視力が著し
く低下します。
出血が少なければ、安静により自然に治
ることもありますが、止血薬や硝子体に流
れ込んだ血液の吸収を早める薬で治療しま
す。また、糖尿病・高血圧など原因となる
病気の治療も必要です。硝子体は血管が無
く、血の巡りが悪い場所なので、硝子体出
血の分解・吸収には時間がかかります。再
出血が無ければ、いつかは吸収されます。
吸収が遅い場合など、硝子体手術により、
硝子体ごと出血を取り除くこともありま
す。症状により、出血部位にレーザーを当
てる光凝固法を行う場合もあります。
Ⅷ ぶどう膜炎
虹彩・毛様体・脈絡膜の 3 つの部分から
なるぶどう膜に、細菌やウイルスの侵入、
或いは眼のアレルギー反応により炎症が起
こる(ぶどう膜炎)と、血管から白血球や
滲出物が硝子体に入り込み、「濁り」とな
って飛蚊症の症状を感じます。炎症がひど
くなると、
「濁り」が増加し、視力が低下
します。炎症を抑えるための内服薬や点眼
薬で、
治療します。
炎症の鎮静化に伴い、
「濁
り」は分解・吸収され、飛蚊症の症状は改
善する場合が多いです。
Ⅸ その他の病気
網膜血管病変による眼底出血など、網膜
に生じる病気から、硝子体出血を伴わずに
飛蚊症を感じる場合があります。飛蚊症を
きっかけに、治療に急を要する眼底の病気
が見つかることもありますので、新たに生
じた飛蚊症では、早めに眼科の受診をお勧
めします。
Ⅹ 飛蚊症と日常生活
以上述べてきましたように、飛蚊症のほ
とんどは病気でないものですが、ときに思
いがけない病気が原因となっていることが
あります。
いつもと違った症状を感じたら、
早めに眼科で検査を受け、医師の指示に従
ってください。早期発見、早期治療があな
たの目を守ります。
19
Myodesopsia (Floater)
Sempo Tokyo Takanawa Hospital
Dr. Masao Yoshisuji
Director of Department of Ophthalmology
I. What is myodesopsia?
Myodesopsia is a symptom whereby you see a blackish dot, insect-like, smut-like, or threadlike material flying or floating, when you look at a white paper or wall, or a blue sky. Even
when you look away from it, the flying or floating matter moves with your sight. Even if you
blink or rub your eyes, it does not disappear, but it does vanish in a dark place. Because it
looks like a flying insect, such as a mosquito, this symptom is called myodesopsia.
This is basically a phenomenon of aging (senility), but a person with high myopia
(nearsightedness) sometimes has signs of myodesopsia, even if young. Almost all cases of this
phenomenon are physiological and it does not present a problem (physiological myodesopsia),
however, sometimes it is a sign or a symptom of a serious illness.
II. Mechanism of myodesopsia
A jelly-like transparent material similar to the white of an egg fills the eyeball, and this
material is called the vitreous body. Light entering the eye from the front passes through
Fig.1 Horizontal sectional view of eyeball (cited from HP of Santen Pharmaceutical Co.)
Vitreous body
Cloudiness
Light
Retina
Central fovea
Cornea
Lens
20 外医療ニュース
transparent structures in the order of cornea, anterior chamber, lens (equivalent to the lens in a
camera), and vitreous body, and reaches the retina, which is sensitive to light (equivalent to
film in a camera).
When you look at a bright place after clouded vision develops in this vitreous body due to
some cause, the shadow of that cloudiness is projected onto the retina. This shadow tracks the
movement of the eyeball and looks like a flying insect or thread. This cloudiness is due to
either physiological or morbid cause.
III. Physiological myodesopsia
In the process where the eyeball of a fetus develops in a maternal body, blood vessels pass
through the vitreous body. But once the eyeball is formed, generally, these blood vessels
disappear. After birth, if traces of the blood vessels remain in the vitreous body, sometimes
these present themselves as clouded vision, making the person notice the symptom of
myodesopsia.
This case of myodesopsia is a physiological phenomenon, and this phenomenon occurs even
in a healthy eye. If the symptom does not progress, therefore, you should feel at ease.
IV. Posterior vitreous detachment with aging
Posterior vitreous detachment is the most common cause of myodesopsia. As a person ages,
the liquid part separates from the jelly-like vitreous body, and the latter gradually shrinks and
comes off the retina (posterior vitreous detachment). Under this condition, cloudiness occurs
in the vitreous body and causes myodesopsia.
Furthermore, if the vitreous body pulls the retina when the former is not perfectly separated
from the latter, you will have a symptom like seeing a beam of light (photopsia).
The vitreous detachment itself is not an illness, but when the retina is pulled by the vitreous
body sometimes a retinal break or retinal detachment is caused. When you suddenly
experience photopsia or myodesopsia, therefore, you should receive a funduscopial
examination.
V. Posterior vitreous detachment and vitreous opacity in
high myopia
In high myopia, posterior vitreous detachment develops in people at a younger age than usual.
Furthermore, atrophy and degeneration of the retina are said to readily cause vitreous opacity
(cloudiness). As a result, this increases symptoms of myodesopsia.
Myodesopsia (Floater)
In addition, the retina is sometimes perforated (retinal break) in high myopia. This retinal
break causes a condition called retinal detachment as stated in the next section. Pay attention
to high myopia because it is considered to present a higher risk of causing retinal detachment
than in a normal eye.
VI. Retinal break and detachment
Vitreous detachment and bruising sometimes cause perforation of the retina (retinal break),
and along the break, the retina sometimes comes off the lower layer and begins to float in the
direction of the vitreous body (retinal detachment). When this phenomenon occurs, you see a
bright light (photopsia) as the initial symptom, and a sudden increase in the number of floaters
in front of your eyes (myodesopsia). Furthermore, you will have parts that are invisible as
these symptoms progress (visual field defect). If you leave this condition untreated, you might
sometimes lose your sight.
The treatment for a retinal break is to prevent retinal detachment by burning and hardening the
circumference of the tear with a laser beam (light coagulation method). You can receive this
treatment in an outpatient setting, but when the retinal detachment develops, you will need
hospitalization and surgery.
VII. Vitreous bleeding
When bleeding occurs in the eyeground due to diseases such as diabetes, hypertension, or a
traumatic injury, and if blood enters the vitreous body, you will suddenly show symptoms of
myodesopsia, or you will feel as if a red curtain has been drawn down in front of your eye.
Fig. 2 Retinal detachment (cited from HP of Santen Pharmaceutical Co.)
Retinal
detachment
Vitreous body
Sclera
Iris
Ciliary body Chorioid
Uvea
Retina
21
22 外医療ニュース
Your eyesight will deteriorate remarkably depending on the amount or site of bleeding.
When bleeding is small, you will sometimes recover naturally with rest. Usually, you will be
treated with a hemostatic or a medicine that hastens absorption of the blood that flowed into
the vitreous body. Furthermore, it is necessary to treat diseases such as diabetes and
hypertension that cause vitreous bleeding. Blood vessels do not pass through the vitreous
body, and this makes the blood circulation there poor. Therefore, decomposition or absorption
of vitreous blood takes time. If there is no rebleeding, the vitreous blood is absorbed sooner or
later. When absorption is slow, the blood is sometimes removed together with the vitreous
body by vitreous surgery. Depending on the symptoms, the light coagulation method is
performed by applying a laser beam to the bleeding area.
VIII. Uveitis
When bacteria or viruses enter the uvea comprising the iris, ciliary body, and chorioid, or
when inflammation develops from an eye allergy reaction (uveitis), white blood cells or
effusions enter the vitreous body from blood vessels, and this becomes clouded vision and
makes you notice the symptom of myodesopsia. A worsening of inflammation increases the
cloudiness, resulting in deterioration of your eyesight. You will be treated with an oral
medicine or eye-drops to suppress the inflammation. With the relief of the inflammation, in
many cases of clouded vision will be decomposed and absorbed, and the symptom of the
myodesopsia will be improved.
IX. Other illnesses
You might sometimes notice signs of myodesopsia without vitreous bleeding. In these cases,
myodesopsia is caused by a condition developing on the retina such as fundal hemorrhage due
to a retinal vascular lesion. With myodesopsia as a start, a fundus disease that needs urgent
treatment might be found. If you have myodesopsia for the first time, you are recommended to
take an ophthalmologic examination soon.
X. Myodesopsia and daily living
As stated above, in most cases, myodesopsia is not an illness, but it sometimes occurs from
an unexpected disease. If you have signs that differ from normal eyesight, receive an
ophthalmologic examination soon, and follow the instructions of the ophthalmologist. Early
diagnosis and treatment saves your eyesight.
事業団だより
事業団
だより
第 26 回通常総会および
第 96 回理事会の開催
去る 7 月 4 日、14 時 00 分から海運クラブにおいて、第 26 回通常総会および第 96 回理
事会が開催されました。
審議事項は次の通りです。
第 1 号議案
平成 18 年度事業報告書及び決算報告書(案)の承認について
第 2 号議案
平成 19 年度事業計画書及び収支予算書(案)の承認について
第 3 号議案
理事の選任について
各議案は、いずれも提案通り承認あるいは決定されましたが、このうち平成 18 年度事
業報告書の大要をお知らせします。
23
24 外医療ニュース
平成 18 年度事業報告
(18.4.1 〜 19.3.31)
事業概要
本年度の総会において決定された事業計画に基づき、その遂行に努めた結果、海外及
び国内における船員の医療支援体制及び健康管理体制の充実整備等について、おおむね
所期の目的を達成することができた。
1.海外における船員医療体制の整備
海外特約医療機関の整備・世話役ネットワークの維持
① 特約医療機関・世話役一覧(グリーンブック)の改訂版作成
全特約医療機関及び世話役の名称、所在地並びに利用要領等を記載した「特約医
療機関・世話役一覧(グリーンブック)
」の改訂版を作成し、会員各社船舶、特約
医療機関並びに世話役等に配布した。
② 医療衛生用品の提供
特約医療機関との緊密な連携を維持するため、下記の医療衛生用品を南米地域の
5 港の各特約医療機関に提供した。
○壁掛け型レントゲン装置
○血中酸素濃度測定器
○簡易型血中酸素濃度測定器(3 セット)
○心電計
○卓上型パソコン
③ 英文情報誌「JSMAC NEWS」の作成
海外の特約医、世話役及び国内関係者から寄せられた情報をもとに、年 2 回発行
し特約医療機関、世話役及び会員各社など関係先に配布した。
2.船員の健康管理体制の整備
⑴ 国内特約医師による訪船診療及び特約医療機関の整備
船員労働安全衛生期間中の医師による訪船隻数は次表の通りで、昨年の実績を若干
下回ったが 9 隻に訪船、受診者は 105 名であった。
また、特約医の高齢化が進み、姫路港の岡本医院、大分港の岡病院及び坂出港の尾
立医院から解約解除の申し入れがあった。姫路港は従来の 2 箇所から清水医院のみと
し、大分港は岡病院の代替医療機関として佐賀関病院と契約を行った。坂出港につい
ては現在代替医療機関を調査中。
事業団だより
⑵ 衛生管理者の再講習
年 2 回(上期・下期)実施する計画を立て、上期は 5 月 10 日から 6 月 7 日までせん
ぽ東京高輪病院で実施、下期は神戸掖済会病院で開催を予定していたが、受講希望者
が当初の予定を大きく下回り中止した。受講者数は前年比 3 名減で、本年度に主任衛
生管理者の資格を取得した者は 6 名であった。
また、再講習実施にあたり教材の整備を図るため、5 病院(せんぽ東京高輪病院、
横浜船員保険病院、大阪船員保険病院、横浜掖済会病院、神戸掖済会病院)にトレー
ニング用自動対外式除細動器(AED)を各一式寄贈した。
⑶ 外医療ニュースの発行
船員の船内衛生教育を目的とした機関誌「外医療ニュース」を年 4 回発行し、会員
各社船舶及び関係団体に配布した。
⑷ 別冊外医療ニュースの発行
「外医療ニュース」とは別に衛生管理者再講習修了者の資質向上に適した医療関係
情報、資料等を掲載した「別冊外医療ニュース」を年 1 回発行した。
⑸ 「船内医薬品の取扱手引書」改訂版の発行
船舶備付医薬品及び衛生用品の改正により改訂版を発行し、会員各社船舶及び関係
団体に配布した。
⑹ 病院長会議開催
衛生管理者再講習実施に関係する事項について審議した。
25
26 外医療ニュース
理事会の開催
第 26 回通常総会で理事、監事の選任が行われ、引き続き第 97 回理事会が開催され、下
表のとおり新役員が選任されました。
役 員 名 簿
平成 19 年 7 月 4 日現在(※ 印 新任)
役 職
会
副
長
会
非・常勤別
非
長
〃
専務理事
事
現 職 等
※ 前 川 弘 幸
日 本 船 主 協 会 会 長
〃
※ 飯 塚 孜
日本船主協会副会長
外航労務部会部会長
〃
藤 澤 洋 二
全 日 本 海 員 組 合 組 合 長
※ 正 野 雄一郎
外航船員医療事業団専務理事
井 波 稔
外航船員医療事業団常務理事
猪野木 哲 二
日本郵船㈱人事グループ長代理
常
常
常務理事
理
氏 名
勤
勤
〃
非
常
勤
〃
〃
鏡 敏 弘
㈱商船三井専務執行役員
〃
〃
東海林 明
川崎汽船㈱海事人材グループ長
〃
〃
下 江 卓 二
共 栄 タ ン カ ー ㈱ 取 締 役
〃
〃
内 田 和 也
明治海運㈱代表取締役社長
〃
〃
紀伊國 献 三
㈶笹川記念保健協力財団理事長
堤 健 二
出光タンカー㈱総務部長
監
事
非
常
勤
〃
〃
臼 居 勲
㈶日本殉職船員顕彰会理事長
〃
〃
安 達 直
商船三井タンカー管理㈱取締役
27
衛生管理者
だより
衛生管理者再講習を
修了して
■平成17年度 第 3 次再講習(平成18 年1月11日〜2 月8日)
応急能力の取得認識
1.講義について
ア 各診療科目等
医師による各診療科疾患については、船
上で多く発生する傷病や救命処置が必要な
傷病等の見分け方や応急処置法等に重点を
おいたもので、実際にあった症例も紹介し
ながらの実践に沿った内容の講義であり、
船内での応急処置を施行するうえで非常に
参考となりました。
また、船内における応急処置で最も頼る
ものは薬であると考えます。その点から薬
剤に関する講義や薬局での説明は今後最も
役立つものであると思います。
イ 基礎看護
基本的な観察の仕方、バイタルサインの
採り方、処置の仕方について理解しやすい
資料の配付と説明がなされました。特に外
傷、骨折等に対する消毒法、固定法、包帯
法及び尿閉患者に対する導尿法並びに皮下
注射法、筋肉注射法等の実技については、
その手技・手順について再確認が得られま
した。
航海訓練所 立 石 信一郎
2.外来見学について
各診療科外来においては、個々の症例に
ついて、現場での説明は極めて希でありま
したが、実際の診察を生で見る機会を多く
設けていただき、問診等より患者の置かれ
ている状況を的確に把握することの大切さ
を知ることができました。
また、内科外来では、肺気腫の救急患者
の処置を見て、呼吸困難の患者に対する体
位、酸素吸入、導尿法等の知識を得るとと
もに、患者発生時の速やかな対応、処置等
について大変勉強になりました。ただ外科
外来では外傷患者が少なく、その処置を見
ることが出来なかったのが残念でありまし
た。
3.全般所感
約 1 ヵ月間における本講習での目的は、
洋上における疾病、外傷等に対する応急処
置能力の習得であると認識し、それについ
て講義、実技、見学等で学び、知識を得ま
した。
しかし、医師や看護師等による講義及び
手術患者や人工透析患者の治療状況等の見
28 外医療ニュース
学から、このような患者の状態にならない
よう予防が大切であることを痛感しまし
た。特に生活習慣について船上は不規則に
なりがちであるので、安全および衛生に努
め、今回得た知識を活用して疾病等の予防
についても啓蒙していきたいです。
最後に、本講習を与えて頂いた外航船員
医療事業団、貴重な時間を使いご指導して
くださいました横浜船員保険病院の関係者
の皆様に深く感謝致します。
観察・データの重要性再認識
NTT ワールドエンジニアリングマリン 棚 川 哲 也
平成 18 年 1 月 11 日から 2 月 9 日まで約
1 ヵ月間にわたり船舶衛生管理者に関する
講習、実習、外来見学等を行いました。
6 年前に船舶衛生管理者を受講し、以後
船舶の乗組員として乗船していたものの医
療に携わることが無かったため思い出すの
に一苦労でした。特に漢字が難しく苦しめ
られました。
講習、実習では病気、感染症、怪我等に
対する応急的な処置の方法、食品の衛生な
ど海上医療における経験談について講義し
て頂いたことで、経験という大きなものを
得たような気がします。また、問診、視診、
触診、バイタルサイン(呼吸、脈、血圧、
体温)など、人間の観察およびデータが如
何に重要であることかを知らされ、普段、
生活で何気なくしている尿、便からも体の
基本的な情報が数多く詰まっていることに
驚かされました。以後、尿と便については
毎日観察するように心掛けています。
外来見学では、患者としてではなく今ま
でとは別の角度でドクターの診察を体験す
ることができ、感心することが多くありま
した。特に印象的だったのは患者の情報を
ただ聞くだけではなく細かく聞き出して患
者の背景として既往歴などをできるだけ詳
しく聞くことに力を入れていたところでし
た。検査、リハビリ、透析室、薬局では一
つ一つ機器や薬剤等を説明して頂いて、印
象に残りました。特に検査では実際に自分
の血液を顕微鏡で観察したり、尿に含まれ
ている細菌や癌細胞を観察するなどして一
般市民が体験できないことを体験でき感謝
しております。
今回の再講習を受講したことで、人の観
察が如何に重要であるか身を持って経験す
ることが出来ました。また。衛生管理者と
して傷病者の手当てをすることも大事です
が、それよりも予防することが一番大切で
あり、その中心となる人物が衛生管理者だ
と思いました。研修での貴重な経験を活か
し、今後の業務に反映させていけるよう努
めていきたいと思います。
衛生管理者だより
知識不足を実感
入社以来 3 隻、約 2 年間の実務を経て
の受講となりました。しかし、船上で発生
する傷病や良好な船内衛生環境の維持と
いった業務をこなしていくにあたり、知識
不足を実感しておりました。
今回の受講では、各種手技の確認、外来
等での問診のポイント、薬品処方(特に抗
生剤・注射剤)の理解など、自己のレベル
アップにつながるものであったと考えてい
川崎汽船 山 田 元
ます。特に医療無線が実際にどのように処
理されているのかを知ることは利用する立
場のものとしては為になるものでした。ま
た、病院が最善を尽くして下さっているこ
ともよく分かりました。
最後に、日本人船員に対する諸業務の集
中は今後も進んでいくことかと思います
が、船上での衛生管理業務に精一杯努力す
る所存です。
29
30 外医療ニュース
随想
私の趣味
私の趣味はオートバイです。18 歳か
ら乗り始め、かれこれ 20 年近く乗って
います。オートバイの魅力はスピード感、
運転している時の人馬一体感、好きな時
に何処にでも行ける自由な感覚にありま
す。
学生の頃、オートバイは趣味というよ
り生活の中心でした。月末に 100 円硬
貨数枚を握り締め、オートバイにガソリ
ンを入れるか食料を買うかよく悩んだも
のです。また、冬の夜中に無性にオート
バイに乗りたくなり、友人達と凍えなが
ら伊豆の露天風呂を目指し、一時の暖を
取った後、再び凍えながら帰路に就いた
こともありました。計画的なツーリング
よりも、行き当たりばったりでトラブル
に遭遇しながらも解消しつつ行ったツー
リングの方が楽しい思い出として残って
います。お金は無いけど暇はあり、ただ
オートバイに乗っていればそれだけで楽
しかった頃です。
20 代も半ばになり、就職をしてお金
にそれなりの余裕が出来ると、オートバ
イを取っ替え引っ替え買い替えて乗って
いました。下船休暇中には時間はたくさ
んあり、自由に使えるお金もありました
が、学生時代のようにはオートバイにま
つわる楽しい思い出はありません。今思
えば、限られた条件の下でオートバイに
乗ったからこそ、さらに楽しかったのか
もしれません。
20 代の後半、私は結婚と同時に、東
京で単身陸上勤務をすることになりまし
た。郷里に残した妻と幼い我が子に多少
の後ろめたさを感じつつ、休日は近くに
住んでいる学生時代からの友人と千葉、
長野、群馬、新潟方面にツーリングに行
きました。疲れたら早めに宿を探し、地
元の肴で一杯飲むのが楽しみになりまし
た。2 年半の東京勤務を終えた時、東京
の地理には疎いままでしたが、近県の地
理には詳しくなっていました。
そして 30 代も後半に差しかかった現
在、再び神戸で単身陸上勤務になりまし
た。休日は家族サービスで終わってしま
い、めっきりオートバイに乗る事が少な
くなってしまいました。空いた時間は、
もっぱらオートバイの整備をして楽しん
でいます。よく妻からは、直しているの
か壊しているのか分からないとからかわ
れます。そして、いい年なんだから早く
オートバイを止めるように言われます。
最近よく考えるのは、あとどれくらい
オートバイに乗ることができるか、どれ
だけの風景に出合うことができるか、と
言うことです。もちろん、オートバイは
一つ間違えれば大事故を招く危険な乗り
物です。家族のことを思えば、今すぐ止
めるべきかもしれません…。
と言いながらも、やっぱりオートバイ
31
を止められないので、妻子の冷たい視線
に耐えながら、安全運転に心がけてこれ
からも体力が続く限り乗り続けたいと思
います。
八馬汽船㈱ 一等航海士
板 谷 健 次
32 外医療ニュース
事業団
だより
海上産業医
医学博士
川 島 寛 先 生 ご 逝 去
去る 8 月 5 日、川島先生がご逝去されました。享年 80 歳。
先生は、1970 年 8 月に本事業団が設立された当初から今日に至るまで長年に亘り、船
内衛生の向上と船員の健康管理体制の充実に取り組まれ、数多くの功績を残されました。
海外事業関係では、海外特約医療機関との契約を整えた海外の先生を招待した際、日本
の医療関係全般にわたって講義され外国人医師から感銘を受けられました。
一方、国内事業関係では、予防接種(コレラ)実施のため事業所内に診療所を開設時、
所長として乗組員の健康管理に貢献されました。更には、事業団が発行した「救急医療の
手引」をはじめとして「衛生管理者再講習用教本」
、
「JSMAC NEWS」
、
「外医療ニュース」
等、すべての機関誌に投稿して頂きました。
先生は、これから先も事業団の発展のために貢献したいと意欲を燃やされていた矢先の
ことであり、大変悔やまれてなりません。
旅立たれた先生に感謝とご冥福を心よりお祈り申し上げます。
「外医療ニュース」は発行の都度、前広に編集委員会を開き、委
員の方がたに編集内容等についてご審議を願っておりますが、委員
の方がたはつぎのとおりです。
記
日 本 郵 船 ㈱ 三 河 上 日 正 汽 船 ㈱ 桝 本 進
㈱ 商 船 三 井 櫛 笥 靖 文 飯 野 海 運 ㈱ 田米開 茂
川 崎 汽 船 ㈱ 金 森 俊 雄 新 和 海 運 ㈱ 丸 田 幸 市
(平成 19 年 10 月 1 日現在)
外航船員医療事業団正会員会社(ABC 順)
旭 海 運
太平洋海運
飯野海運
太平洋汽船
イイノマリンサービス
太洋日本汽船
出光タンカー
第一中央汽船
乾 汽 船
玉井商船
大阪フリート
新日本石油タンカー
川崎汽船
日正汽船
共栄タンカー
日鉄海運
国際マリントランスポート
日本郵船
三光汽船
八馬汽船
商船三井
三菱鉱石輸送
商船三井タンカー管理
明治海運
新和海運
雄洋海運
賛 助 会 員
海外漁業船員労使協議会
共同船舶
日本海洋事業
(平成 19 年 10 月 1 日現在)