第3章 現況と課題

第3章
現況と課題
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区域全体の現況と課題
〔1〕土地利用
三鷹駅前地区は古くから市街化が進んだため商業、業務、住宅が混在し、土地利用が有効に図ら
れていない箇所が見受けられます。このため、協同ビル化や建替えの機会を捉え、駅前地区にふさ
わしい土地利用を誘導するために有効な地域のルールづくりが望まれています。
そこで、地区の特性を生かした土地利用の方向性を検討し、将来像を明確にすることにより、本
来の機能を果たすようにする必要があります。また、総合設計制度などにより土地の高度利用化を
推進し、オープンスペースを確保するなど、良好な空間整備を促進する必要があります。
さらに、壁面線の位置や高さなどについて共通のルールを定め、まち並みの誘導を図ることが必
要です。
〔2〕道路
三鷹駅前地区の用途地域はほとんどが商業地域ですが、地区内にはいまだに4m未満の道路が残
されています。火災の延焼防止を図るとともに、緊急時の避難経路の確保や緊急車両の通行を可能
とするためにも道路空間の整備が必要です。
一方、都市計画道路3・4・13 号は「風の散歩道」として開通(平成 13 年9月)しており、
「緑
と水の公園都市」の玄関口を構成する重要な役割を担っています。今後は、にぎわいのある商業地
と緑と水の空間との連続性により、さらに魅力ある沿道環境の創出を図ることが重要です。
現在、三鷹駅周辺では調布保谷線の整備が進んでいます。今後、交通ネットワークのさらなる充
実のためにも、都市計画道路3・4・9号をはじめ周辺の都市計画道路の早期整備が必要です。
〔3〕駐輪場・駐車場
三鷹駅前地区では、通勤・通学や買物のため自転車が多くの市民に利用されていますが、放置自
転車など交通安全上の諸問題も引き起こしています。市では、地区内の駐輪場確保に努めるなど、
放置自転車の減少に取り組んできました。しかしながら、今も歩道や公開空地に自転車が違法に駐
車されるなど、歩行者などのスムーズな通行を妨げる要因となっています。また、荷捌きのための
路上駐車や違法駐車が車や自転車のスムーズな通行を妨げる要因となっています。一方、地区内に
おいて建替えや協同ビル化が進むことで、今後さらなる駐輪・駐車需要の増加が見込まれます。
そこで、駐輪場・駐車場を適切な位置、規模で確保するとともに、共同の荷捌きスペースを確保
する必要があります。
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〔4〕歩行空間
多くの人が利用する三鷹駅前地区にあっては、少子高齢社会の進展により、車いす・ベビーカー
などの利用者をはじめ、誰もが安心して行き交うことのできる歩行空間の整備が求められます。
なかでも中央通りは、駅前の商業・業務地区を通り、三鷹駅へとアクセスする区域の中央を通る
南北道路で、商業・業務機能の活性化に資する道路軸です。地区の回遊性の向上とにぎわいを創出
し、良好な市街地の形成を図るためにも安全で快適な歩行空間の創出が必要です。また、中央通り
と交差するさくら通りは、現状、十分な幅員の歩道が確保されておらず、さらなる拡幅整備が望ま
れています。
そこで、中央通り、さくら通りをはじめ、沿道で再開発事業などが行われる際には壁面後退を誘
導するなど、駅前地区にふさわしい歩行空間を整備していく必要があります。
〔5〕緑地等
三鷹駅前地区は都市計画マスタープランにおける活性化の拠点として特に重点的、先行的な都市
整備やまちづくりの誘導をしつつ、三鷹市のあるべき都市像に向けて整備を促進する地域であり、
「緑と水の公園都市」の玄関口にふさわしい風景・景観の形成や人々が集う広場空間などの創出が
求められています。このため、再開発事業により広場の整備や緑化の推進を図り、駅前地区にふさ
わしい演出を施すことが必要です。
また、サステナブル都市の実現に向けて、環境に配慮した快適な都市空間の形成を図ることも必
要です。
〔6〕商業・業務施設などの集積
近年、三鷹駅前地区においても中央線沿線の再開発事業の進展をはじめとするさまざまな影響に
より、商業環境の停滞傾向は否めないところです。魅力ある施設の減少により、他都市への購買層
の流出が著しい状況にあります。そこで、地区の特性を生かしつつ、魅力ある駅前地区にふさわし
い各種施設の適切な配置を検討するほか、再開発事業を推進し、集客力のある店舗、専門店の誘致
を検討する必要があります。
また、既存の公共公益施設などについては、建物の更新時期を捉えて集約化を図るなど、ライフ
サイクルコストを含む適切な配置の検討が必要です。
〔7〕駅前広場
駅前広場は、三鷹駅を中心とする交通結節点としての機能を有し、市の玄関口となる拠点です。
市では、平成5年に完成した駅前広場を拡幅するため、平成 16~17 年度に三鷹駅前広場第2期整
備事業を実施し、ぺデストリアンデッキの拡張やエレベーター及びエスカレーターの増設、民間ビ
ルとの接続などにより利便性の向上を図りました。
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今後は、ぺデストリアンデッキの適切な維持管理により将来に渡って快適性と安全性の維持・向
上に努める必要があります。また、再開発事業などの機会を捉えペデストリアンデッキとの接続を
図るなど、バリアフリーのまちづくりを推進することが必要です。
一方、市内の開発などに伴って増加が見込まれる駅利用者のニーズに対応するため、バスやタク
シーなどの公共交通機関についても適切な運用が図られるよう環境整備が必要です。
〔8〕国際化への対応
2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会などにより、より多くの外国人が三鷹市を訪
れることが見込まれます。これにともない、観光しやすい魅力的なまちづくりの推進が求められて
います。
そこで、三鷹駅前地区内にある施設や通りの案内・誘導サインについて多言語化を図るなど、適
切な誘導・案内が必要となります。
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エリア別事業課題
三鷹駅前地区は、地区の特性から大きく3つのエリアによって構成されており、エリアの特性
に即した課題への対応が望まれます。
ⅰ 駅前広場周辺エリア
三
鷹
駅
前
地
区
の
エ
リ
ア
構
成
駅前広場に面し、拠点機能を生かすため高
度利用化を図るとともに玉川上水の景観を
生かした一体整備が必要なエリア
良質なまち並み形成や商業振興施設の整備
ⅱ 商業・業務系エリア
による買物公園的な整備が必要なエリア
ⅲ 住居系と商業とが
駅前のにぎわいの拡がりを形成しつつ良好
調和するエリア
な住環境及び不燃化の形成が必要なエリア
【三鷹駅前地区のエリア構成】
三鷹駅
ⅰ
ⅲ
ⅱ
14
ⅲ
N
再開発基本計画対象区域
24
ⅰ
駅前広場周辺エリア
ⅱ
商業・業務系エリア
ⅲ
住居系と商業とが調和するエリア
〔1〕駅前広場周辺エリア
このエリアは、駅前広場に面し、広場の整備にあわ
せて土地の高度利用化や協同ビル化が進み、建物の耐
三鷹駅
震性・不燃化の向上と、新たな商業・業務機能の集積
が進んでいます。また、ペデストリアンデッキとの連
ⅰ
結やオープンスペースの確保などバリアフリーのまち
づくりの観点でも街区一体の利便性や快適性が向上し
ています。引き続き、
「緑と水の公園都市」の玄関口に
ふさわしい玉川上水の景観を生かしたまちづくりを推
市
道
第
進します。
14
号
線
整備にあたっては、
「緑と水の公園都市」の玄関口に
し
ろ
が
ね
通
り
本
町
通
り
ふさわしい潤いある空間の創出と玉川上水からの緑の
連続により、駅前のにぎわいの拡がりと緑のつながり
いずみ通り
を感じられる演出が課題です。
N
基本計画対象区域
ⅰ 駅前広場周辺エリア
(1)個別具体的な課題
①緑の連続性
玉川上水や三鷹駅前の緑の小ひろばからの緑のつながりを感じられる、緑化空間の確保が必要
です。
②防犯対策
防犯カメラの設置やペデストリアンデッキ下部の照度確保など、引き続き犯罪抑止効果のある
対策が必要です。
③新たな商業施設の誘導
協同ビル化による新たな商業施設の誘導とにぎわいの創出など、三鷹駅前地区の活性化を図る
ことが必要です。
④駐輪・駐車対策
駐輪場・駐車場の確保とともに放置自転車対策や違法駐車の取締りにより、安全で快適な歩行
空間を確保することが必要です。
⑤オープンスペースの拡充
小規模建築物の協同ビル化を進め、快適なオープンスペースの確保を図ることが必要です。
(2)推進すべき事業
・三鷹駅南口西側中央地区再開発事業共同ビル建設支援事業
・回遊性を生む道路環境整備事業
・駐輪場・駐車場整備事業
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〔2〕商業・業務系エリア
このエリアは、
商業の活性化と良質なまち並みの形成を
図るため、土地の高度利用化と協同ビル化を推進し、商
三鷹駅
業・業務及び居住機能の整備により、ゆとりとにぎわいの
ある成熟した都市空間としての環境づくりが課題です。
中央通りは、専門店などの小売業を中心に一定の商業
集積が形成されています。今後、三鷹駅前地区の利便性
と集客力を向上し、一層のにぎわいを創出するためには
ⅱ
さらなる商業機能の強化が必要です。
また、良質なまち並みを形成するため、地元町会や商店
市
道
第
14
号
線
会の協働によるルールづくりが必要です。
誰もが安心して
し
ろ
が
ね
通
り
本
町
通
り
快適に移動できる環境づくりに向けて、狭あい道路の拡幅、
オープンスペースの確保、東西道路、商業振興施設や駐輪
いずみ通り
場・駐車場の確保を図ることも重要です。
N
基本計画対象区域
(1)個別の具体的な課題
ⅱ 商業・業務系エリア
①緑の連続性
玉川上水や緑の小ひろばから緑のつながりを感じられる緑化空間の確保が必要です。
②防犯対策
街路灯のLED化や防犯カメラの設置を誘導するなど、犯罪抑止効果のある対策が必要です。
③商業振興の核となる施設の欠如
市の玄関口のシンボルとして、地区の活性化の拠点にふさわしい文化の拠点となる施設や三鷹
の商業振興の核となるにぎわいの施設などの集積が必要です。
④小規模建築物の存在
小規模建築物が密集している地区では、協同ビル化などによる土地の有効利用が必要です。
⑤駐輪・駐車対策
駐輪場・駐車場の確保とともに放置自転車対策・違法駐車の取締り、安全で快適な歩行空間を
確保することが必要です。
⑥回遊性の向上
開発事業などにあわせて東西道路や歩行者通路を整備し、回遊性を高めることが必要です。
⑦広場空間やオープンスペースの創出
活性化の拠点にふさわしい、にぎわいを生む広場空間やオープンスペースの創出が必要です。
(2)推進すべき事業
・三鷹駅南口中央通り東地区再開発事業
・回遊性を生む道路環境整備事業
・中央通り買い物空間整備事業
・駐輪場・駐車場整備事業
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〔3〕住居系と商業が調和するエリア
このエリアは、古くからの住宅地が残る一方で、マン
ションを中心とする住宅系の開発が進んでいます。この
三鷹駅
ため、居住機能と地域に密着した商業・業務機能の調和を
図ることが課題です。
駅前のにぎわいと拡がりを有するエリアでもあるため、
回遊性があり、子どもから高齢者まで誰もが快適で安心し
て通行できる歩行空間づくりを推進する必要があります。
ⅲ
また、南北軸の整備とともに東西方向の通路の確保が必
市
道
第
要です。
14
そこで、建物の更新にあたっては不燃化や耐震性の向上
号
線
し
ろ
が
ね
通
り
本
町
通
り
による防災機能の向上に加え、細街路の拡幅や新たに東西
方向の通路を整備することなどにより、適正な街路網の構
いずみ通り
築と回遊性の向上を図る必要があります。
ⅲ
N
基本計画対象区域
ⅲ 住居系と商業とが調和するエリア
(1)具体的な課題
①防犯対策
商業・業務系の地区に比べ店舗が少なく、夜間の人通りも少ないため、街路灯のLED化や防
犯カメラの設置を誘導するなど、犯罪抑止力の向上を図る必要があります。
②耐震不燃化の促進
木造の建築物が混在していることから、協同ビル化などによる耐震不燃化が必要です。
③道路幅員の確保
災害時における緊急車両の通行や避難路に支障をきたす道路幅員4m未満の道路の拡幅が必要
です。
③東西道路の不足
開発事業などにあわせて、平常時には地区内の回遊性の向上に寄与し、災害時には緊急車両の
通行や避難路として機能できる東西道路が必要です。
④住宅と業務商業機能の共存
住宅機能と地域に密着した業務商業機能との調和を図り、良好な住環境の創出が必要です。
(2)推進すべき事業
本エリアは住環境との調和を保ちながら開発を誘導することが課題となります。今後、このこ
とに留意して事業を検討・推進していく必要があります。
・回遊性を生む道路環境整備事業
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