A2H

異議申立番号
異議2011-900292(登録第5412522号異議事件)
異議申立日
平成23年8月8日
異議の決定日
平成23年11月29日
確定日
平成23年12月8日
関連条文
商標法第3条第1項第5号
商標
A2H
指定商品
第3類
「化粧品」
第29類 「食用たんぱく,動物・植物性のコラーゲン・たんぱく質・
アミノ酸等を主原料としてビタミン・ミネラルを添加した
棒状・板状・粉末状・粒状・錠剤状・チュアブル状・液状・
カプセル状の加工食品」
第32類 「清涼飲料」
結論
登録第5412522号商標の商標登録を維持する。
《概要》
本件商標は、欧文字2字と数字からなるものであり、その指定商品は第3類「化粧品」
他、第29類、第32類に属する指定商品である。
異議申立人は、本件商標の指定商品である化粧品との関係で言えば、化粧品を管理する
ためには、薬事法の規定によりいわゆる「ロット番号」を製品に記載することが義務付け
られており、本件商標が商品に付記されていたとしても、
「ロット番号」として認識される
ものであるから、本件商標は、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標に
すぎないものであり、商標法第3条第1項第5号に該当するものとして異議を申立てた。
しかしながら、特許庁は、ロット番号は、製造業者により品質管理等の目的で使用され
るものであり、商品の品質、等級等を表すものではないから、商品カタログや商品の説明
などの通常の商品取引上の指標として用いられるものではなく、また、容器の底面など、
目立たない場所に記載されているのが一般的であるため、ロット番号が商品に表示されて
いるとしても、化粧品を購入する需要者が、通常、このようなロット番号に着目するもの
ではない。このため、本件商標に接する需要者が、本件商標をロット番号の一類型である
と認識するとはいえず、本件商標は、これを化粧品に使用しても、十分に自他商品識別標
識としての機能を果たし得るものであるとして、本件商標の登録を維持する決定をした。
異議の決定理由(全文)
1
本件商標
本件登録第5412522号商標(以下「本件商標」という。
)は、
「A2H」の文字を
横書きしてなり、平成22年2月1日に登録出願、第3類、第29類及び第32類に属す
る商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成23年3月25日に登録査
定、同年5月20日に設定登録されたものである。
2
登録異議の申立ての理由
本件商標は、欧文字及び数字で「A2H」と横書きしてなるものである。
しかるに、本件商標とその指定商品との関連を鑑みるに、化粧品等の指定商品を管理す
るため、一定数量ごとに付けられた管理番号、すなわち「ロット番号」が薬事法の規定に
より製品に記載することが義務付けられている。
「ロット番号」は、簡単な数字、欧文字を
数文字適宜組み合わせて作成されるのが一般的であり、本件商標のような単に欧文字2字
及び数字を組み合わせた標章が商品に付記されていた場合、
「ロット番号」のように単に商
品の記号、符号を表すものと認識されるにすぎないものである。
すなわち、本件商標は、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標にすぎ
ないものであることから、商標法第3条第1項第5号に該当するものである。
以上の理由により、本件商標は、その指定商品中「化粧品」については、登録の要件を
具備しないものとして、その登録は取り消されるべきである。
3
当審の判断
本件商標は、上記1のとおり「A2H」の文字を横書きしてなるものである。
そして、本件商標は、欧文字2字と数字からなるものであるとしても、欧文字、数字及
び欧文字の組合せからなる構成にあっては、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章である
ということはできない。
登録異議申立人は、本件商標は、ロット番号のように単に商品の記号、符号を表すもの
として認識されるにすぎないと主張し、甲第1号証ないし甲第8号証を提出しているが、
提出された証拠によれば、本件商標と同様の欧文字、数字及び欧文字の組合せがロット番
号に使用されていることが認められる。
ところで、化粧品には、薬事法の規定により、ロット番号などの「製造番号又は製造記
号」を記載することが義務付けられている。このロット番号は、一般に、製造業において、
まとめて同種の製品を生産する場合の生産単位ごとに付与される番号であり、製造業者に
より品質管理等の目的で使用されるものであるが、事件や事故などが発生したときにこの
番号が参照される場合もあるものである。
そして、このようなロット番号は、上記目的のために付与されるものであり、商品の品
質、等級等を表すものではないから、商品カタログや商品の説明などの通常の商品取引上
の指標として用いられるものではなく、また、容器の底面など、目立たない場所に記載さ
れているのが一般的であるから、ロット番号が商品に表示されているとしても、化粧品を
購入する需要者が、通常、このようなロット番号に着目するものではない。
しかも、ロット番号は、製造場所や時期を特定するために製造業者が任意で付与するも
のであるから、欧文字や数字又はこれらを様々に組み合わせて使用されるものであり、本
件商標と同様の欧文字、数字及び欧文字の組合せが多く用いられているというものではな
い。
そうとすれば、たとえ本件商標と同様の欧文字、数字及び欧文字の組合せが化粧品に付
与されるロット番号として使用されていることがあるとしても、本件商標に接する需要者
が、本件商標を上記ロット番号の一類型であると認識するとはいえず、上記組合せからな
る本件商標が極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標ということはできな
いものと判断するのが相当である。
してみれば、本件商標は、これをその指定商品中「化粧品」に使用しても、極めて簡単
で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標とはいえないものであり、十分に自他商品の
識別標識としての機能を果たし得るものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第5号に該当するものではない。
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第5号に違反してされたもので
はないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。