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馬総統の「沖ノ鳥島は排他的経済水域を主張できない」主張に対する反駁

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馬総統の「沖ノ鳥島は排他的経済水域を主張できない」主張に対する反駁
(2016年5月1日
髙井
晉)
2016年4月28日付「台北中日経済文化代表処」ウエブサイトの報道
(http://web.roc-taiwan.org/jp_ja/post/30998.html)(2016年4月29日アクセス)
【主張の全文】「中華民国政府、日本の台湾漁船拿捕に再び強い抗議」
(写真提供:中央社)
中華民国政府は27日、沖ノ鳥(島)近海で25日に、台湾漁船「東聖吉16号」が日本の海
上保安庁に拿捕され、船主が担保金を支払って釈放されたことについて、再び日本に強く
抗議した。
中華民国政府はかねてから、沖ノ鳥は、島ではなく岩礁と認識しており、
「人間の居住又
は独自の経済的生活を維持することができる」という島嶼の定義にはあてはまらないとし
ている。そのため、日本の同「島」周辺200カイリを排他的経済水域(EEZ)とする主張は
受け入れられないとの立場を表明している。中華民国政府は再三、日本政府に対して、中
華民国およびその他の国家の同海域における航行や漁業権などの権益を尊重するよう促
し、厳正な交渉を申し入れている。
台湾と日本は、各方面で実質的な友好関係を築いており、さらに自然災害が起こるたび
に助け合っている。中華民国政府は、この問題について日本と協議を継続し、双方がとも
に受け入れられる解決策を模索し、台湾の漁業者が公海上での漁業権益を保障されるよう
願っているとした。(Taiwan Today:2016年4月28日)
【馬総統への反駁】
沖ノ鳥島は、東京都の行政区分に属し、東京から1740km、硫黄島から720km、沖大東島
から670km の距離の北緯20度25分に位置する日本最南端の島嶼である。日本は、
「排他的
経済水域及び大陸棚に関する法律(平成8年6月14日法律第74号)に基づいて、沖ノ鳥島周
囲に200カイリの EEZ と大陸棚を重ねて設定した。日本は、沖ノ鳥島周辺に約40万平方 km
に達する広大な EEZ を主張している。
1
しかし中華民国(台湾)政府は、沖ノ鳥島近海で台湾漁船が日本の海上保安庁巡視船に
拿捕され、担保金を支払い釈放された事件について、日本政府に強く抗議した。かかる抗
議は、「島」ではなく「岩礁」である沖ノ鳥島は、排他的経済水域(EEZ)を主張できず、
したがって、日本による台湾漁船拿捕は、UNCLOS に違反するというのである。
ここでの問題は、第1に、沖ノ鳥島は「島」か「岩礁」かであり、第2に、沖ノ鳥島を基
点とする日本の排他的経済水域の主張は UNCLOS 違反であるか否かである。以下、これら
の問題について検討する。
【第1の問題】
沖ノ鳥島が「島」ではなく「岩礁」だとする台湾の主張については、UNCLOS 第121条
の「島の制度」の規定が重要である。すなわち、
1
島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面
上にあるものをいう。
3 に定める場合を除くほか、島の領海、接続水域、排他的経済水域及び大陸棚は、
2
他の領土に規定されるこの条約の規定に従って決定される。
3
人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水
域又は大陸棚を有しない。
沖ノ鳥島は、高潮時においても水面上にあるため、UNCLOS 第121条1項の規定では「島」
に相当する。しかしながら、同条3項の規定中の文言、すなわち「人間の居住または経済
的生活を維持する」の解釈については諸説があるため、沖ノ鳥島が「岩」であるとは断定
できない。かくして UNCLOS 第121条の解釈次第では、沖ノ鳥島が EEZ を主張することが
できない「岩」であるかどうかについて判然としない。
沖ノ鳥島の東小島に上陸する日本財団の調査団
沖ノ鳥島全景
出典:左写真 http://mainichi.jp/graph/2014/03/30/20140330org00m040002000c/004.html
出典:右写真 http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2013/03.html
2
ちなみに、UNCLOS 第121条の規定に従うと、高潮時に水没するが低潮持に水面上に出
現する低潮高地(law tide elevation, LTE)である「干出岩」は、
「島」でも「岩」でもないた
め、領海、接続水域、EEZ、大陸棚を主張できないことは明確である。したがって、中華
人民共和国(中国)は、南シナ海の南沙群島に点在する「干出岩」に人工島を建設し、領
海、排他的経済水域、大陸棚を主張する基点としているが、この中国の言動は UNCLOS
の規定に反していることは言を待たない。
【第2の問題】
次に第2の問題との関連で、沖ノ鳥島を基点とする大陸棚の存在が国際的に認められて
いた事実を検討し、日本による沖ノ鳥島を基点とする EEZ の主張の当否を判断する。
UNCLOS 第76条の規定に従うと、沿岸国は、自国領土からの地形や地質のつながりを大
陸棚限界委員会(Commission on the Limits of the Continental Shelf; CLCS)の勧告で認められ
れば、大陸棚を200カイリを超えて延長できる。また、沿岸国の沖合にその国の領土の島
がある場合でも、CLCS の勧告によりその島を基点として大陸棚を200カイリを超えて延長
できる。かくして日本は、2008年11月12日、7つの海域(九州-パラオ海嶺南部海域(KPR)、
南硫黄島海域(MIT)、南鳥島海域(MTS)、茂木海山海域(MGS)、小笠原海台海域(OGP)、
沖大東海嶺南方海域(ODR)、四国海盆海域(SKB))について CLCS に対し大陸棚延長申
請を提出した。
しかし中国(2009年2月6日付口上書)および韓国(2009年2月27日付口上書)は、①沖
ノ鳥島は、条約第121条3項にいうところの岩であり、大陸棚を有することはできないこと、
および②沖ノ鳥島を基点とした延長大陸棚部分について勧告することは CLCS の任務の範
囲内ではないことを指摘し、CLCS が当該部分についていかなる行動もとらないよう要請
した。これに関し CLCS は、申請国以外から表明された見解を CLCS が考慮できるのは、
近隣諸国との紛争あるいはその他の未解決の領土または海洋に関わる紛争の時のみである
とした。
沖ノ鳥島を基点とする日本の延長エリア(KPR)と重複しうるのは地理的関係上パラオ
だけであるが、パラオは CLCS による審査に異議を申し立てないと明示した。CLCS は、
2008年11月12日の勧告サマリーの中で、日本が明示的に言及している陸塊(延長の基点)
の一つとして沖ノ鳥島を挙げており、日本が SKB において200海里を超える大陸棚を設定
するための権利を有することを認めている。しかし CLCS は、日本の大陸棚延長申請に関
して、境界画定に関係しない国から表明された意見を考慮し、結果的に審査自体は行った
ものの、KPR 海域(黄色部分)の大陸棚延長について勧告を行うことを保留した。
馬総統は、沖ノ鳥島が UNCLOS 第121条3項に規定する「岩」であり、EEZ を主張でき
ないとしている。しかし、国連の機関である CLCS は、沖ノ鳥島を基点とする大陸棚の存
在を否定せず、僅かに200カイリ以遠に延長する決定だけを先送りにしたのであった。
換言すると、台湾が主張する様に沖ノ鳥島が UNCLOS 第121条3項に規定する「岩」で
3
あれば、EEZ はもとより大陸棚も主張できないが、CLCS は、沖ノ鳥島を基点とする大陸
棚の存在を前提として審理を行なったのであり、この事実は、沖ノ鳥島が UNCLOS 第121
条3項に規定する「岩」ではないと判断した結果であった。従って沖ノ鳥島は、
「岩」では
ない「島」なので、沖ノ鳥島を基点として大陸棚および EEZ を主張できることは明白なの
である。日台間の友好関係を維持することは重要であるが、日本の EEZ 内で違法行為を行
なった台湾漁船の拿捕は、日台間の友好関係の構築とは全く別のことである。
日本の申請に対する CLCS の勧告によって認められた延長大陸棚
出典:http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kaiyou/dai9/siryou4.pdf
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