抄録PDF - 第1回日本心筋症研究会

特 別 企 画
SP-1
拡張型心筋症レジストリ研究に向けて
猪又孝元
北里大学循環器内科学
【背景】四半世紀以上におよぶ特定疾患事業を経てもなお、拡張型心筋症(DCM)に関する疫学データは平成
11年度に発表された患者数に関するものにほぼ限られる。その間に新たな治療法が登場したが、全国規
模の予後に関するデータは存在しない。さらに、病態の議論も十分とは言えず、これらは実地診療下での
臨床データの集積と解析が十分に行われなかったことに起因すると思われる。
【研究の概略】過去の歴史を鑑み、データ欠損が起こりにくい有志の全国 10 数専門施設から、1 年間に限
った計 300 例前後の新規症例を前向きに登録する。除外診断ステップとして、実地診療でのたたき台とし
て耐える統一マニュアルを作成するが、心筋生検と心臓 MRI は原則必須とする。そのうえで、5 年間の追
跡調査を行う。調査項目としては、各種イベントに加え、左室リモデリングや心不全/不整脈指標、および、
病因論に繋がる検査項目を含む。また、本レジストリを共通プラットホームとして、多施設共同のサブ研
究グループを立ち上げる。
SP-2
日本における肥大型心筋症登録研究の必要性と開始に向けて
北岡裕章 1、久保亨 1、土居義典 2
1
高知大学医学部
老年病・循環器・神経内科学、2 近森病院
肥大型心筋症は、500 人に 1 人存在する心筋症であり、その臨床像・予後は、生涯無症状な例から、突然
死を来す患者まで非常に多彩である。この疾患の本態を明らかにするためには、大多数例での検討が重要
であるが、本邦では、2002 年の報告以後、多施設における大規模な登録研究は見当たらない。心臓 MRI や
遺伝子診断などの検査法、左室流出路圧較差に対するシベンゾリンコハク酸塩や経皮的中隔心筋焼灼術
(PTSMA)などの治療法が新たに普及してきた今、日本における肥大型心筋症患者の実態を明らかにするため、
多施設かつ多数例での検討を行うことが、本疾患患者の管理・治療において極めて重要と考えられる。本
特別企画では、新たに開始される肥大型心筋症登録研究の目的と方向性を概説する。
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SP-3
池田宇一、南澤匡俊、小山 潤
信州大学医学部循環器内科
左室緻密化障害 (LVNC; left ventricular non-compaction) は過剰な網目状の肉柱形成と深い間隙を形
態学的特徴とする希少心筋疾患である。従来は小児に特有の疾患と考えられていたが、最近は心エコーや
心臓 MRI の画質向上もあり、LVNC と診断される成人例が増加している。しかし、成人における LVNC の発
症頻度は不明であり、医療関係者の認知度が低いために見逃されているケースも少なくない。
LVNC の診断は心エコーにより行われるのが一般的である。心エコーでは、(i) 非緻密化層と緻密化層の
2 層からなり、(ii) 肉柱が目立ち、(iii) 深い間隙があるのが特徴的所見である。
LVNC の臨床像は、無症状から致死的な例まで多彩である。心不全、心室不整脈、塞栓症が典型的合併症
であり、合併症のある例は予後が悪い。
LVNC は統一された診断基準がなく、臨床上も不明なことが多い。現在、日本心不全学会では、成人例の
LVNC の全国実態調査を開始しており、将来的な診断基準やガイドライン作成の必要性について検討してい
く。
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特別企画
成人例の左室緻密化障害
シンポジウム
S-1-1
非虚血性心ポンプ異常における心筋症の鑑別診断ステップ
-多施設調査からみる現状と問題点
猪又孝元 1、鍋田健 1、阿古潤哉 1、磯部光章 2
1
北里大学循環器内科学、2 東京医科歯科大学循環制御内科学
【背景】二次性心筋症では、特定疾患ごとの議論に加え、候補症例からいかに鑑別を進め、最終診断へと
辿り着くかの議論が同時に欠かせない。
【方法と結果】わが国での心筋症の研究と診療を牽引する全国 9 施設を抽出し、後向きにカルテ調査を行
った。2014 年の 1 年間に入院し、心ポンプ異常(左室駆出率 50%以下)の原因検索を行った非虚血性の連
続 318 症例を対象とした。最終診断の 67%は特発性拡張型心筋症だが、他に 15 の二次性心筋症が含まれた。
MRI と生検を合わせた心筋性状評価は8
割で、Ga シンチと FDG-PET を合わせた炎
症評価は4割に過ぎなかった。全身疾患
の評価は十分でなかった(図)。
【結論】二次性心筋症の鑑別診断は、独
自の判断に委ねられた現況が続いている。
系統立った診断フローの確立が急務であ
る。
S-1-2
二次性心筋症における心臓移植適応検討
1
奥村貴裕、2 六鹿雅登、1 近藤徹、1 澤村昭典、2 藤本和朗、2 碓氷章彦、1 室原豊明
1
名古屋大学大学院 医学系研究科 循環器内科学
2
名古屋大学大学院 医学系研究科 心臓外科学
本邦の心臓移植適応において,腎・肝機能障害,全身性疾患の存在は,絶対的あるいは相対的除外条件の
ひとつである。二次性心筋症では,これらを疾患背景としたり合併したりすることが多く,その多くは適
応とならない。しかしながら,一部の二次性心筋症でも心臓移植の適応となることがある。他臓器に適応
除外となるような病変がなく,十分なステロイド治療を行うも心機能の改善が得られない心臓サルコイド
ーシス症例,骨格筋症状が軽度で心病変が予後を規定する Becker 型筋ジストロフィー症例,薬剤性心筋症
症例,適切な治療を行うも心機能が改善しない心筋炎後あるいは周産期心筋症症例などがこれに該当する。
いっぽう,心アミロイド―シスや全身性エリテマトーデス,抗ミトコンドリア M2 抗体陽性多発筋炎にとも
なう心病変症例は,適応となりにくい。二次性心筋症ではマージナルな症例が多く含まれ,心臓移植適応
を考えるにあたり,臨床現場でも迷うことが多い。医療倫理上も慎重な判断を期する必要があり,的確な
心筋症診断と十分な治療,多面的な適応検討が望まれる。
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S-1-3
心サルコイドーシスの新たな酸化ストレスマーカー(尿中 8OHdG)の
臨床的有効性に関する検討
小林茂樹、矢野雅文
山口大学大学院医学系研究科
器官病態内科学
8-hydroxy-2'-deoxyguanosine(8OHdG)が有用かどうかついて検討した。【方法】CSと診断した31症例を対
象に、以下について検討した。1)冠静脈洞、大動脈の血中8OHdG濃度と尿中8OHdG濃度を測定し、PETで活
動性のあるCS患者と活動性のいないCS患者で比較検討した 2)活動性のあるCS患者にステロイド治療を行
い、治療前後の尿中8OdG濃度および18F-FDG PETの変化が相関するかどうか 3)CS患者の心血管イベントを前
向きに平均4年フォローアップした。【結果】1)活動性のあるCS患者は、活動性のないCS患者に比較し
て、血清の8OHdG濃度は大動脈よりも冠静脈洞で有意に高値であり、尿中8OHdGの濃度も有意に高値であっ
た。2)ステロイド治療前後で、尿中8OHdGの変化と18F-FDG PETの変化は有意に相関した。3)尿中8OHdGは、
多変量解析で独立した予後規定因子であった。【総括】尿中8OHdG濃度は、CSの活動性の評価・ステロイド
治療の効果判定・予後評価に有用と思われた。
「本研究は厚生労働省「特発性心筋症に関する調査研究」における個別研究として実施したものである」
S-1-4
重症筋無力症に関連した心機能低下~自己免疫機序による心筋症~
加藤貴雄 1、林秀幸 2、廣瀬紗也子 1、猪子森明 2
1
京都大学医学部付属病院
循環器内科、2 公財)田附興風会医学研究所北野病院心臓センター
【目的】重症筋無力症は、自己抗体産生を通じて心筋に異常をきたす場合があり、その場合予後不良の転
帰をきたす。本研究の目的は、重症筋無力症による心筋障害の特徴を明らかにする事である。
【方法】北野病院で過去 10 年間に診断された重症筋無力症患者 175 人のうち、心電図・心エコーを撮影さ
れたのは 85 人であり、既知の高血圧・虚血性心疾患など併存疾患のない 53 名を対象に後ろ向きに解析し
た。
【結果】心電図の異常は 32 例に認め、心電図正常 21 例と比して、年齢(平均 60 歳)
・性別・罹病期間(平
均 11 年)に変化を認めなかった。心電図異常の内訳は、心房細動 20%、ST 低下 54%、陰性 T54%、AV ブ
ロック 15%であり、心電図異常例にのみ 5 例の左室機能低下を認めた。自験 3 例では、1 例が抗横紋筋抗
体が陽性で、心筋生検では巨細胞性心筋炎所見を認めず、全例が心筋トロポニン I は上昇していた。5 例
の心機能低下例すべてに免疫抑制剤が投与され、自己中断した 1 例は心不全死したが 2 例は収縮能の改善
を認めた。
【結論】重症筋無力症には心電図の異常を高率に認めた。自己免疫機序による心機能低下は、介入可能な
可能性があり重症筋無力症では心エコー図での検索が重要と考えられた。
29
シンポジウム
【 目 的 】 心 サ ル コ イ ド ー シ ス (CS) の 活 動 性 ・ ス テ ロ イ ド 治 療 の 効 果 判 定 ・ 予 後 予 測 に 尿
S-1-5
原因不明の心肥大に潜むファブリー病の診断と治療
久保亨 1、北岡裕章 1
1
高知大学医学部老年病・循環器・神経内科学
【目的】ファブリー病は、α ガラクトシダーゼ A 活性の欠損・低下によってひき起こされる X 連鎖性遺伝
のライソゾーム病である。心病変として肥大型心筋症様の肥大を呈し、拡張障害及び進行すると収縮不全
によって難治性心不全をきたし死に至る。古典型ファブリー病は全身の臓器症状を呈するが、心臓病変が
障害の主となる亜型(心ファブリー病)も存在している。
【方法】当院で診断された古典型ファブリー病 2 家系と心ファブリー病 2 家系について、酵素活性・遺伝
子解析を含む診断方法と治療経過について検討する。
【結果】古典型ファブリー病の 2 家系は、いずれも男児の四肢末端痛を契機に診断に至った。母親の診断
には、皮膚生検所見や遺伝子解析が有用であった。心ファブリー病の 2 家系は、肥大型心筋症と診断され
ていた 179 名の男性患者に対して α ガラクトシダーゼ A 活性測定のスクリーニング検査で同定され診断に
至った。いずれのタイプの患者も酵素補充療法を施行しているが、すでに左室肥大の著明であった患者に
ついては、左室肥大および心機能の改善は得られていない。
【考察】心肥大患者におけるファブリー病の頻度は少なくなく、常に本症を鑑別しておく必要がある。
S-2-1
BNP とハイブリッドさせるバイオマーカーは何か
小板橋紀通 1、磯達也 1、倉林正彦 1
1
群馬大学医学部附属病院循環器内科
【目的】現在、心疾患の診療において BNP や NT-proBNP が有用な心不全マーカーとして、またトロポニ
ン I/T が心筋傷害マーカーとして確立しており、心臓特異的な血清学的マーカーとしてこれら以上のもの
が今後発見されるかは疑問である。本シンポジウムでは、現時点での最新の心不全バイオマーカーについ
て概説し、我々の見出した新たな血清学的マーカーも紹介したい。
【方法および結果】過去の論文で BNP と新規の血清学的マーカーをハイブリットさせて心疾患の重症度や
予後を検討した論文をレビューする。近年、ST-2 や GDF-15 といった新たなサイトカインマーカーや、
Galectin-3 やプロコラーゲン代謝物など細胞外マトリックス代謝に関連する血清学的マーカーと心疾患と
の関連が示唆されている。また近年我々が心臓の脂肪酸代謝に重要な因子として同定した FABP4 や線維化
に重要なサイトカインであることを示した CTGF が、臨床例での検討から心疾患の血清学的マーカーとな
りうることが分かった。
【考察】これらは BNP とは独立したマーカーであり、心不全において BNP とともに測定することで付加的
な病態情報をもたらすものとして今後実地臨床に応用されていくと考えられる。
30
S-2-2
ミトコンドリア機能は、イメージングとバイオマーカーで把握できるか
武田充人
北海道大学小児科
活性酸素の増加を招きミトコンドリア自身に障害をもたらす。従って、心筋症においてミトコンドリア機
能を調べることは非常に重要である。一方、ミトコンドリアには呼吸鎖酵素系、核酸・タンパク合成、基
質輸送、分裂・融合、マイトファジーに至るまで複雑な機能が存在し、研究レベルでは革新的な進化を遂
げているも実際臨床の場においてミトコンドリア機能を把握することは決して容易ではなく、信頼に耐え
うる非侵襲的方法も知られていない。しかしいずれの場合においてもミトコンドリア機能不全として判断
できる基準があれば臨床においても有用であり、今後バイオマーカーを発展させていく上においても必要
不可欠なものと思われる。そこで今回はまず小児科で経験する、ミトコンドリア心筋症の診断で基本とな
る3つのアプローチ(病理、呼吸鎖酵素活性、遺伝子)を提示する。病理では心筋電子顕微鏡像によるミ
トコンドリアの形態異常、呼吸鎖酵素活性については検体の採取から依頼の実際とデータの読み方につい
て、遺伝子検査については現在のミトコンドリア関連遺伝子検索の流れについて紹介する。また、他の心
筋症におけるミトコンドリア機能評価においても本法が有用であることを症例を通じて報告する。新たな
可能性として、共焦点レーザー顕微鏡によるミトコンドリアダイナミクスの観察や、リン MR スペクトロス
コピーなど非侵襲的検査として注目されているミトコンドリア機能評価法についても紹介したい。
S-2-3
心エコー図は、心筋症の質的診断にどう生かせるか
瀬尾由広、山本昌良、町野智子、石津智子、青沼和隆
筑波大学
循環器内科
【目的】近年、speckle tracking imaging(STI)法に基づく心筋変形の定量化が盛んに研究されている。心筋変
形の様々評価法によって組織性状の特異性を検出するできる可能がある。そこで我々は心筋症における STI
法の臨床的意義を検討した。
【方法】MRI 遅延造影像と対比しながら以下の検討を行った; 1)心アミロイドーシスにおける左室長軸方向
変形能(longitudinal strain)の診断制度, 2)肥大型心筋症における longitudinal strain と不整脈イベントとの関関
連, 3)左室内の activation imaging 法による拡張型心筋症、心サルコイドーシスにおける組織性状評価。
【結果】1) longitudinal strain は心アミロイドーシスの優れた診断能を有していた, 2) 肥大型心筋症では遅延
像に匹敵する longitudinal strain と不整脈イベントとの関連を認めた, 3) activation imaging 法によって線維化
組織同定が可能であった。
【考察】STI 法による心筋機能の評価は心筋症の質的診断に寄与できると考えられる。
31
シンポジウム
心筋症における ATP 需要は高いことが知られており、供給源であるミトコンドリアが代償するが、同時に
S-2-4
CMRは線維化イメージングの域を超えられるか
寺岡邦彦 1、2、鈴木儀典3、山科章4
1
榊原記念クリニック、2 東京医科大学八王子医療センタ-循環器内科、
3
東京医科大学八王子医療センタ-放射線部、4東京医科大学循環器内科
近年、目覚しい発展を続ける心臓MRI(CMR)の中でも、遅延造影MRIは、最も臨床的な有用性が
高い撮影法である。中でも、本法が実臨床において、その威力を発揮するのは、原因不明の心不全におけ
る原因疾患の特定においてである。さらに、遅延造影MRIが他の modality に比べて、有用性を示してい
るのは、遅延造影MRIでの陽性所見の有無や広がりが、予後と大きく関わっている点である。これまで
の検討で、Mid-wall LGE と呼ばれる心室中隔の線状造影を認める拡張型心筋症は予後不良であることが明
らかとなっており、肥大型心筋症でも、遅延造影を有する例は心事故の発生が多く、陽性範囲が広いほど、
突然死のリスクが高いことが報告されている。
今回のシンポジウムでは、心筋症診療における遅延造影MRIの有用性をまとめるとともに、本法を補
完する撮影法として、さらなる有効性が期待されている T1mapping 法を用いた心筋性状評価についても、
最新の知見を加えて概説する。
S-2-5
心筋の炎症をイメージングで評価できるか
~FDG-PET による評価~
田原宣広、戸次宗 久 、 中村知 久 、 杦 山 陽 一 、 田原敦子、
本多亮博、新田良和、井形幸代、福本義弘
久留米大学医学部 内科学講座 心臓・血管内科部門
心筋の炎症活動性評価に MRI や 67Ga シンチグラフィが用いられているが、その診断精度には限界があり、
非侵襲的かつ診断精度の高い診断モダリティの開発が望まれている。近年、細胞局所の代謝機能を外部か
ら非侵襲的に分子レベルで評価することができる高解像度のポジトロン断層撮影法 (positron emission
tomography; PET)が発達し、18F 標識 FDG をトレーサーとする PET がブドウ糖代謝を表す画像として広く臨
床応用されている。ブドウ糖は心筋のエネルギー基質の一つであり、FDG-PET を用いることにより心筋バ
イアビリティを評価することができる。また、活動性のある炎症病変では、高密度に集族した炎症細胞が
大量のブドウ糖を消費しており、FDG が高集積することが知られている。したがって、FDG-PET を用いるこ
とにより、心筋における炎症活動性や病変範囲の評価を行うことが可能である。今回のシンポジウムでは、
心筋の炎症活動性を評価するアプローチで FDG-PET がどのような目的で施行され、どのように評価可能で
あるか概説する。
32
S-3-1
難病のゲノム診療 -遺伝子探索から医療への導入辻省次 1
1
東京大学医学部付属病院神経内科・ゲノム医学センター
S-3-2
遺伝性心筋症における新たなゲノム情報解析による変異同定法の開発
朝野仁裕 1、今井敦子 1、中谷明弘 2、坂田泰史 1、高島成二 3
大阪大学大学院医学系研究科、1 循環器内科学、2 ゲノム情報学、3 医化学
【背景・目的】遺伝性疾患の原因を同定において次世代シーケンス解析はおよそ確立された手法となった
が、解析可能な罹患者が少ない場合従来の情報解析手法では候補変異リストの絞り込みを行う事は困難で
ある。そこで少数症例でも効率良い絞り込みを可能にする情報解析法の開発を目的に検討を行った。
【方法】パネル解析で既知遺伝子変異を有する家系症例発端者に対し Illumina Hiseq 2000 を用い mean
depth>30 となる 100bp のペアエンド解析による全エクソーム解析を実施した。ヘテロ接合性、非同義置換
となる変異から MAF > 0.001 を除外しバリアントリストを作成した後、独自開発のフィルタリング法を用
いて候補変異の絞り込みを行った。
【結果】上記基準を満たすバリアントは症例あたり約 500 個あり、その中に既知遺伝子変異が含まれてい
た。開発したフィルターを利用しバリアントのランク化を行い、当該変異を上位 3%に絞り込むことに成功
した。
【考察】
少数発症遺伝性家系症例から効率良く疾患候補変異を絞り込む情報解析プログラムの開発について報告を
行うとともに、心筋症における本解析の意義について論じたい。
33
シンポジウム
心筋症をはじめとする難病と呼ばれる疾患には,発症原因が不明で,有効な治療法が確立されていない疾患が数多く
含まれている.これらの疾患は,遺伝性に発症する疾患が多く,病因遺伝子の解明を目指して,分子遺伝学的な研究が
進められてきた.その結果,多くの遺伝性難病において,病因遺伝子の解明が進み,病態機序の理解,治療法の開発を
目指した研究へと発展してきている.
一方で,病因遺伝子未解明の疾患は,少なからず残されており,その多くは,頻度の上で稀で,家系の数が少ない,
それぞれの家系内の発症者の数が少ない(小家系)など,これまでの分子遺伝学的な研究では,病因遺伝子の解明が困
難であった.最近になり,次世代シーケンサーと呼ばれる高速シーケンサーが実用化され,このような場合であっても,
網羅的なゲノム配列解析に基づき,病因遺伝子を効率よく同定できる例が増えてきている.また,家族歴がない場合,
発症者とその両親というトリオの網羅的なゲノム配列解析により,発症原因となっている新生突然変異を見いだし,病
因遺伝子の解明が達成されるケースが増えてきていることも注目すべき点である.
臨床的に類似の臨床像を示す場合であっても,多数の病因遺伝子が解明されたことにより,診断確定のために遺伝子
検査が必須のものとなってきている.心筋症を例にとっても,拡張型心筋症,肥大型心筋症のそれぞれについて,多数
の病因遺伝子が見いだされてきており,臨床病型から特定の病原性変異を推定することは困難である場合が多く,診断
確定のためには,網羅的な遺伝子解析が必要になってきている.その結果,個々の遺伝子を Sanger 法で解析するという,
従来型の遺伝子検査で対応することが困難になっている.次世代シーケンサーを用いた解析は,解析対象遺伝子が多数
に上る場合,病原性変異の探索にきわめて有効であり,診断確定を目的にした検査(クリニカルシーケンンシング)と
して応用されるようになってきている.私たちの研究室においても,次世代シーケンサーを用いた exome 解析が神経難
病を対象にした遺伝子検査の first line になってきており,これまで診断未確定であった症例について,おおよそ 25%の
症例で,診断が確定できることを経験している.
クリニカルシーケンシングを医療に実装していく上では,次のような解決すべき課題がある.すなわち,1. 患者ごと
に多数の変異が見いだされ,その中にはデータベースに登録のない新規の変異が少なくなく,病原性変異であるかどう
かの解釈が難しい場合がある.このような変異を適切に解釈するためには,日本人ゲノムの多型情報,日本人症例で見
いだされた病原性変異のデータベースの充実が必須となる.2. 次世代シーケンサーを用いた解析では,100-150 塩基程
度の short read が得られるが,short read の解析では,すべての種類の変異を同定することは困難であり,構造変異など
検出困難な変異が少なからず存在することに留意する必要がある.3. 医療制度の面からは,次世代シーケンサーを用い
た解析は,保険診療としては位置づけられておらず,医療制度の中で,保険診療に位置づけていくのか,あるいは,他
の制度で位置づけるのか,早急に決定していく必要がある.4. 医療制度に実装する上では,品質管理,認証制度,機器,
試薬の薬事承認などが検討課題となる.5. 検査会社が解析を担当する場合,その結果の解釈を誰が担当するのかについ
ても早急に制度を整備していく必要がある.
S-3-3
次世代シーケンサーを利用した心筋症責任遺伝子同定の試み
尾上健児 1、斎藤能彦 1
1
奈良県立医科大学
第1内科
【目的】2000 年台初頭のヒトゲノムプロジェクト完了後遺伝子解析技術は飛躍的に進歩し、2000 年台半ば
に上市された次世代シーケンサーは広く生命科学の分野で用いられてきている。本研究では、この次世代
シーケンサーを利用して、家族性心筋症の責任遺伝子を同定することを目的とした。
【方法】家族性拡張型心筋症(DCM)1家系の発症者 5 名、同一家系内非発症者1名およびコントロールと
して孤発例 DCM 患者・健常者各1名の genomic DNA から exon のみを抽出し whole exome sequence を行っ
た。
【結果】全 8 名の whole exome sequence の結果、78,139 箇所の SNP が検出された。うち発症者のみに認め
られ非発症者およびコントロールには認められないこと、アミノ酸変異を伴うこと、dbSNP に掲載されて
いる common SNP でないこと全ての条件を満たす SNP は 29 箇所であった。アミノ酸変異の重大度をスコア
化すると、LMNA 遺伝子のナンセンス変異が最上位であり、サンガー法で本遺伝子変異が確認された。
【考察】次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析は非常に強力なツールであり、膨大な情報量からいかに
条件づけて疾患責任遺伝子を絞り込むことができるかが同定の決め手となる。来るべきテーラーメイド医
療時代においても重要なツールとなると考えられる。
S-3-4
ゲノム科学が明らかにする心筋症および心不全の発症機序
野村征太郎 1,2、佐藤真洋 2、飛田尚重 3、候聡志 1,2、藤田隆教 2、伊藤正道 1、山口敏弘 1、
住田智一 1、内藤篤彦 1、油谷浩幸 2、小室一成 1
1
東京大学循環器内科、2 東京大学先端科学技術研究センター、3 東京女子医科大学循環器内科
心筋症の一部はゲノム変異が原因と考えられているが、候補遺伝子を網羅的に解析するのは容易でない。
我々は次世代シークエンサーを活用して、心筋症と関連のある 95 遺伝子のエクソン領域を網羅的に解析で
きるターゲットリシークエンス法を確立し、遺伝子変異の頻度を明らかにするとともに、新規の変異を同
定した。例えば心筋症患者において、Long QT 症候群と関係が示唆される遺伝子のエクソン領域に既報に
ない AAC 配列挿入変異を 23 例中 4 例に認めており、疾患発症との関係が示唆された。
心不全は心筋細胞が機能破綻を起こした状態であるが、1つ1つの心筋細胞がどのように病態を形成し
ているか明らかでない。我々は、心筋細胞の全遺伝子の発現情報を1細胞レベルで解析する技術を確立し、
心不全モデルマウスの心筋細胞に応用した。その結果、心不全によって心筋細胞がダイナミックかつ階層
的に遺伝子発現を変化させることが分かり、疾患の発症・維持に個々の心筋細胞がどう寄与するかを明ら
かにした。
このようにゲノム科学を用いた網羅的アプローチは、これまで不明だった循環器疾患の発症機序解明、
治療法創出のための強固な基盤となり得る。
34
S-3-5
心筋症の遺伝子解析の現状
林
丈晴 1、谷本幸介2、木村彰方 1
東京医科歯科大学難治疾患研究所
1
分子病態、2ゲノム解析室
DCM で 20-30%と高率であり、特に HCM は最も頻度の高い遺伝性心疾患である。初期の原因遺伝子解析に
より、HCM では心筋βミオシン重鎖などサルコメア収縮要素をコードする遺伝子の変異が報告されたが、
サルコメア収縮要素遺伝子異常は約半数の症例にしか認められず、その後の解析研究により、Z 帯、I 帯、
サルコレンマ、筋小胞体の構成要素群の遺伝子に変異が見出された。さらに DCM では、それらに加え、核
膜や介在板、ミトコンドリア関連蛋白群といった別の要素の遺伝子にも原因変異が同定された。次世代シ
ーケンサー(NGS)の開発競争となっている現在、
2001 年に比べ単位塩基あたりのシーケンスコストは数万分
の1となっており、これまでは代表的な数種類の心筋症原因遺伝の解析を行ってきたが、現在では数十種
の原因遺伝子をまとめて NGS で解析することで効率よく変異解析が行えるようになってきている。本シン
ポジウムでは、我々の研究室で実施している NGS を用いた心筋症原因遺伝子解析の現状とその知見につい
て紹介する。
本研究は厚生労働省「特発性心筋症に関する調査研究」における個別研究として実施したものである。
S-4-1
心臓サルコイドーシスの病態と多施設調査結果報告
森本紳一郎 1、加藤靖周 2、北風政史 3、草野研吾 3、矢崎善一 4、土田哲人 5、寺崎文生 6、
石田良雄 7、中島崇智 8、永広尚敬 9、筒井裕之 10、磯部光章 11
1
総合青山病院、2 藤田保健衛生大学、3 国立循環器病センター、4 佐久総合病院、5JR 札幌病院、6 大阪医科
大学、7 市立貝塚病院、8 埼玉県立循環器呼吸器病センター、9 名古屋大学、10 北海道大学、11 東京医科歯科
大学
【目的】多施設で本症の臨床像について検討したので報告する。【方法】9 施設で 134 例の心臓サルコイド
ーシスについて後ろ向きに検討し、その診断時の臨床像について分析した。【結果】134 例の内訳は、組織
診断群 61 例、臨床診断群 51 例、心臓の孤発例 17 例、疑診 5 例であった。心エコーで心室中隔基部の菲薄
化が認められたのは 55 例(41%)で、下壁や後壁など左室の他部位でも菲薄化が 12 例(9%)で観察され
た。心エコーで壁運動異常が 63.2%例で認められ、心室瘤が 5.6%例でみられた。Ga シンチによる心臓へ
の集積は 46.2%例であったが、FDG-PET による心臓への集積は 85.2%例と極めて高かった。また心臓 MRI
によるガドリニウムの遅延造影像は 92.4%例で観察された。【考察】孤発性の心臓サルコイドーシスが
12.7%例存在することが初めて明らかとなり、診断基準を見直す必要がある。病態が類似する拡張型心筋
症などでは、局所的に心室壁に菲薄化が生じることは稀であり、本所見を認めた場合、積極的に心臓サル
コイドーシスを疑う必要がある。心室瘤で冠動脈病変を有しない場合には、同様に本症を疑う必要がある。
今回、FDG-PET や心臓 MRI が考えられていた以上に診断に有用であることが判明した。
35
シンポジウム
代表的な心筋症である肥大型心筋症(HCM)や拡張型心筋症(DCM)は、家族歴を有する例が HCM で 50-70%,
S-4-2
心臓限局性サルコイドーシス
磯部光章
東京医科歯科大学循環器内科
サルコイドーシスは原因不明の肉芽腫により生ずる全身の慢性炎症性疾患である。特に心臓合併症は心サ
ルコイドーシスと呼ばれ、致死性不整脈や難治性心不全にいたる致死性の疾患である。多くは眼、肺、皮
膚などのサルコイドーシス診療の過程で診断される。診断は他臓器のサルコイドーシスが証明されている
場合は、いくつかの本症に特有な症状や検査の異常から行われるが、他臓器での診断がついていない場合
は、心筋生検組織での病理診断が求められる。近年他臓器に病変が見られず、病変が心臓に限局する isolated
cardiac sarcoidosis(心臓限局性サルコイドーシス)の存在が報告された。森本らの調査では心サルコイドー
シスの 13%は心臓限局性であった。現行の診断基準ではこの病態の診断は極めて困難である。我々は心臓
限局性と思われる 11 例の検討を行い、その臨床的特徴について検討した。心臓の所見としては、心電図、
心エコー、MRI(遅延造影)、FDG-PET の所見に、全身型の心サルコイドーシスに差を認めなかった。プ
レドニンによる治療が著効をそうする症例もあるため、診断は重要である。本症をめぐる諸問題について
自験例を中心に報告する。
S-4-3
心サルコイドーシスの活動性評価と FDG-PET 陰性例の対応について
井手友美 1、長尾道充展 2、肥後太基 1、大谷規彰 1、藤野剛雄 1、新井しのぶ 1
1
九州大学循環器内科、2 九州大学放射線科
【目的】心サルコイドーシスは、心筋症の中でも、時間的空間的多様性を有し、無治療である場合予後が
不良であり、その確実な診断と適切な時期における治療介入が必要である。時間的空間的多様性を有する
心サルコイドーシスは、PET での活動性評価が治療決定に際して重要である一方で、PET での評価は、感
度は高いが特異度に関する問題が指摘されている。本研究では、FDG-PET 検査に際する前処置の方法につ
いて、後ろ向きに解析を行った。
【方法および結果】検査前の処置については、絶食 18 時間、絶食 18 時間
+高脂肪食負荷とで評価を行った。絶食 18 時間のみでは不十分であり、前日の高脂肪食摂取の有効性が示
唆された。
【考察】FDG-PET の擬陽性を低く保つことが肝心であるが、18 時間絶食+最後の食事での高脂
肪食摂取が有効と思われる。また、心エコーや心電図、心臓 MRI において心サルコイドーシスが強く疑わ
れる症例であっても 18FDG-PET では活動性を認めない、あるいは弱い活動性しか示さないこともしばし
ばであり、これらの予後についての解析も加えて発表を行う。
36
S-4-4
サルコイドーシス代替治療の現状と展望
山口哲生 1
1
JR 東京総合病院呼吸器内科
【方法】過去の論文と演者の経験をまとめた.
【結果】
「無症状サ症では治療を必要としない」という考えが一般的である.心臓サ症の場合には突然死の報告
があり,心病変の存在がほぼ確実であれば無症状でも治療の施行がすすめられる.
① MTX:心臓サルコで使用できる代替薬の代表.S.Nagai らの後ろ向き検討報告では,少量ステロイ
ド+少量 MTX の長期併用療法が,EF,CTR,NT-proBNP においてステロイド単独よりも優れていた.
演者らは,MTX 単独 16 例,
ステロイド+MTX15 例の結果をまとめた,
また心臓以外臓器で monotherapy
の結果を報告した.
②
AZA:MTX と AZA の有用性は同等とされるが報告数は少ない.
③
抗菌薬;MINO,DOXY が使われる.皮膚,筋肉以外では有効性は示しづらい.
④
吸入ステロイド;肺野陰影,肺機能には無効とされているが劇的に有効であった数例の経験があ
る
⑤
抗 TNF 阻害薬;短期的に有効とする例はあるが長期的な有効性は難しい.
【考察】今後前向きトライアルを実施するとすれば,ステロイド±MTX(又は抗菌薬)は考えうる.
S-4-5
心サルコイドーシスに合併した不整脈への非薬物治療
草野研吾 1、石橋耕平 1、里見和浩 1、中島育太郎 1、和田暢 1、鎌倉令 1、岡村英夫 1、宮本康二 1、
野田崇 1、相庭武司 1、松山高明 2、植田初江 2、鎌倉史郎 1
1
国立循環器病研究センター 心臓血管内科部門 不整脈科
2
国立循環器病研究センター 臨床検査部 臨床病理科
【目的】心サルコイドーシスに合併する致死性不整脈として、高度房室ブロックによる徐脈性不整脈と心
室頻拍/心室細動などの頻脈性不整脈が知られている。近年、様々な新規デバイスやカテーテルアブレーシ
ョン法などの非薬物治療が登場しているが、その実状は未だ明らかでない。
【方法】全国アンケート調査による不整脈発生頻度と非薬物治療の実状、デバイス選択の問題点、カテー
テルアブレーションの適応と限界について自験例を調査。
【結果】初発症状として房室ブロックは 1/3 に、心室頻拍/心室細動は 1/4 に認められた。特に低心機能例
で心室頻拍の再発が多く、植込み型除細動器(ICD)の重要性が明らかとなり、低心機能例への突然死 1 次予
防として ICD の植込みを考慮する必要性が示唆された。心室頻拍の多くは瘢痕組織を介するリエントリー
だが、炎症との関連が示唆される非リエントリー性のものも存在した。心内膜からのカテーテルアブレー
ションでは再発が多く、心外膜アプローチや外科的切除などの積極的な治療が必要な症例が存在した。
【考察】心サルコイドーシスに合併した不整脈は極めて多彩である。ICD を中心とした非薬物治療は突然
死予防だけでなく不整脈根治に有効であるが、心機能、炎症の有無、薬物への反応によりその治療効果は
大きく異なる。
37
シンポジウム
【目的】サ症のステロイド代替治療法について解説する.
S-4-6
心臓サルコイドーシス診療における今後の課題
矢崎善一 1、池田宇一 2
1
佐久総合病院佐久医療センター 循環器内科、2 信州大学 循環器内科
現在、日本循環器学会により心臓サルコイドーシス(以下心サ症)診断の手引き改訂やガイドライン作
成が行われている。欧米では組織学的診断が必要条件となっているものの、本邦の診断の手引きは臨床的
に診断する方向性を示している。臨床診断の妥当性を検証する必要がある。本症の治療の主軸はステロイ
ドを中心とした免疫抑制療法である。現時点で心病変の活動性を正確に評価できるマーカーや画像診断が
確立されていないため、ステロイドの投与量や減量方法などに定まったプロトコールは存在しない。心病
変の活動性評価に 18F-FDG PET が期待されているが生理的集積や不全心の問題がある。18F-FDG が全く集積
しない症例はプレドニンを減量し中止することができるのであろうか?診断時すでに病変が進行し 18F-FDG
が集積しない症例はステロイド治療が必要なのか?心電図異常のみの症例など初期病変についてどの時点
で免疫抑制療法を開始すべきか?プレドニン以外の免疫抑制薬についても症例を重ねて効果を検討する必
要がある。病院論的な治療介入は存在するのか?これらの多くの課題に関して前向きに全国レベルでの登
録研究が必要である。
38
Y I A
Y-1
若年左室心筋緻密化障害におけるサルコメア遺伝子異常とその臨床的意義
髙﨑麻美 1、廣野恵一 1、畑由紀子 2、仲岡英幸 1、伊吹圭二郎 1、小澤綾佳 1、
西田尚樹 2、芳村直樹 3、関根道和 4、市田蕗子 1
1
富山大学医学部小児科、2 同法医学、3 同第一外科、同疫学・健康政策学 4
【目的】左室心筋緻密化障害(LVNC)の若年発症者を対象としてサルコメア遺伝子の解析を行い、遺伝子
変異の臨床的意義を検討した。【方法】35 歳以下発症の日本人 LVNC 患者 82 名を対象に、サルコメア遺伝
子 7 種(MYH7、MYBPC3、TNNI3、TNNT2、TNNC1、TPM1、ACTC1)を direct sequence 法で解析した。日本人
の SNP として登録がなく、in silico の蛋白機能解析で障害性が予測される変異を有意とした。【結果】23
名(28%)で、5 遺伝子(MYH7、MYBPC3、TNNC1、TPM1、ACTC1)に 24 変異が検出され、そのうち新規は 17
変異(71%)と高率であった。変異は MYH7(11)と MYBPC3(6)で全体の 71%を占め、TNNC1(2)、TPM1
(3)、ACTC1(2)では少数であった。遺伝子変異を有する群では予後不良の傾向が見られ、複数変異や稀
な TNNC1、TPM1、ACTC1 変異ではさらに予後が悪くなる可能性が示唆された。【考察】LVNC 患者のサルコメ
ア遺伝子の解析が、予後の予測および適切な治療介入の一助となる可能性が示唆された。
Y-2
左室緻密化障害の形態学的特徴を有する左室収縮不全患者における
左室リバースリモデリングの臨床的意義
南澤匡俊、小山潤、小塚綾子、元木博彦、岡田綾子、伊澤淳、池田宇一
信州大学医学部循環器内科学教室

抄録本文
【目的】左室緻密化障害の基準を満たす患者のうち、治療前後で非緻密化層が退縮する例が報告されてい
るが、本症の左室リバースリモデリング(left ventricular reverse remodeling: LVRR)の長期予後につい
て検討した研究はない。今回、左室収縮不全患者の非緻密化層の退縮と心機能変化、LVRRの臨床的意義に
つき検討した。
【方法】左室緻密化障害の診断基準を満たす連続23症例を検討した。心不全加療開始6ヶ月後に、心臓超音
波検査にて左室駆出率が10%以上改善したものをLVRRと定義した。非緻密化層の面積は収縮末期における
心尖部3断面の平均値として算出した。
【結果】平均観察期間61ヶ月(10-105ヶ月)で、9人(39%)にLVRRを認めた。6ヶ月後の非緻密化層の面積変
化は左室駆出率の変化と有意な相関を示した(r=-0.78, p<0.0001)。LVRR群は心臓死0人、非LVRR群は心臓
死7人(50%)であった(Log-rank, p=0.003)。またLVRR群における複合エンドポイント(心臓死または心不全
増悪入院)の発症は1人、非LVRR群は10人(71%)であった(Log-rank, p<0.001)。
【考察】左室収縮能の改善は非緻密化層の退縮と関連しており、左室収縮不全患者の中には左室緻密化障
害として過剰診断されている症例があるかもしれない。また非LVRR群の予後は不良であり、きめ細かい経
過観察と早期治療介入が必要である。
40
Y-3
たこつぼ型心筋症における、慢性腎機能障害と院内心合併症の
関連についての検討
村上力、吉川勉、前川裕一郎、上田哲郎、坂田好美、山口徹雄、磯貝俊明、
山本剛、長尾建、高山守正
東京 CCU ネットワーク学術委員会
【目的】たこつぼ型心筋症(TC)における院内心合併症と慢性腎機能障害(CKD)の関連について検討すること。
【方法】2010 年 1 月 1 日から 2012 年 12 月 31 日に東京都 CCU ネットワークに登録された 356 例のたこつ
ぼ型心筋症について検討を行った。Cr により推算糸球体濾過量(eGFR)を推定し、eGFR≧90ml/min/1.73m2、
60≦eGFR<90ml/min/1.73m2、30≦eGFR<60ml/min/1.73m2、30 ml/min/1.73m2<eGFR をそれぞれ CKD1、CKD2、
CKD3、CKD4+5 として比較検討を行った。
【結果】63 例、158 例、91 例、44 例にそれぞれ分類され、女性の割合は 79.4%、83.5%、72.5%、65.9%
以上の心不全の割合は 23.8%、17.7%、23.0%、43.2%であり(p=0.002)、大動脈バルーンパンピングを
必要とした症例は 4.8%、1.9%、5.5%、11.4% (p=0.057)、挿管を必要とした症例は 11.1%、5.7%、14.3%、
18.2%
(p=0.043)であった。全死亡は全体で 23 例認め、CKD 別では 4.8%、1.3%、14.3%、11.4%と eGFR
が低い群でより高率であった。
【考察】
TC の 発 症 に 関 し て 、 交 感 神 経 活 性 、 酸 化 ス ト レ ス の 関 与 が 報 告 さ れ て い る (Circulation
2008;118:2754-2762)。CKD においても交感神経系活性、酸化ストレスの発生が示唆されており (J Am Coll
Cardiol 2003;41:725-8)、CKD の存在が、たこつぼ型心筋症をより重症化している可能性があると考えた。
Y-4
Impaired respiratory function in MELAS-induced pluripotent stem cells
with high heteroplasmy level
小平真幸 1 ,2、湯浅慎介 1、畠山英之 3、後藤雄一 3、福田恵一 1
1
慶應義塾大学医学部循環器内科、2 足利赤十字病院、3 国立精神神経センター
Mitochondrial diseases are heterogeneous disorders, caused by mitochondrial dysfunction. Mitochondria are not
regulated solely by nuclear genomic DNA but by mitochondrial DNA. It is difficult to develop effective therapy for
mitochondrial disease because of lack of mitochondrial disease models. Mitochondrial myopathy, encephalomypathy,
lactic acidosis, and stroke-like episodes (MELAS) is one of the major mitochondrial diseases. The aim of this study is
to generate MELAS-specific induced pluripotent stem cells (iPSCs) and demonstrate that MELAS-iPSCs can be
mitochondrial disease models. We successfully established iPSCs from the primary MELAS-fibroblasts carrying
77.7% of m.3243A>G hetroplasmy. MELAS-iPSC lines ranged from 3.6% to 99.4% of m.3243A>G heteroplasmy
levels. The enzymatic activities of mitochondrial respiratory complexes indicated that MELAS-iPSC-derived
fibroblasts with high heteroplasmy level showed the deficiency of complex I activity but MELAS-iPSC-derived
fibroblasts with low heteroplasmy level showed normal complex I activity. Our data indicate that MELAS-iPSCs can
be model for MELAS but we should carefully select MELAS-iPSCs in heteroplasmy levels and respiratory functions
for mitochondrial disease modeling.
本研究は厚生労働省「特発性心筋症に関する調査研究」における個別研究として実施したものである
41
YIA
(p=0.043)であり、年齢は 69.6±14.0、71.9±11.6、77.1±8.9、77.4±10.7 歳であった(p<0.001)。KillipⅡ
会長推薦演題
O-1-1
ARVC/D の臨床病期―長期フォローアップからの検討―
菊池規子、弓野大、鈴木敦、志賀剛、庄田守男、萩原誠久
東京女子医科大学病院
循環器内科
【目的】ARVC/D は、若年者では突然死の原因になり、晩期には重症心不全を呈する。ARVC/D 患者の長期フ
ォローアップをレビューすることで、その臨床病期について調査した。
【方法】1974 年から 2012 年までに当院で ARVC/D と診断された 90 人を 2013 年まで後ろ向きに調査した。
【結果】ARVC/D の診断から平均 10.2±7.1 年フォローアップした。47 人が心室性不整脈を呈し、28 人が
心不全で入院、21 人が死亡した(図)
。心不全で入院した患者の 86%で、それ以前に心室性不整脈イベン
トを経験しており、また 85%の患者では心不全入院の前後で心房性不整脈を合併していた。
【考察】ARVC/D では、心室性不整脈、心房性不整脈、心不全、死亡と長期にわたり臨床病期をもちながら
進行する疾患である。
O-1-2
遺伝子組み換え BCG システムを用いた新たな慢性心筋炎マウスモデルの確立
田尻和子 1、松尾和浩 2、保富康宏 3、青沼和隆 1、今中恭子 4
1
3
筑波大学医学医療系循環器内科、2 日本 BCG 研究所、
医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター、4 三重大学大学院医学系研究科修復再生病理学
【目的】拡張型心筋症の心筋生検標本から炎症細胞浸潤がしばしば観察され、慢性心筋炎を基盤とする病
態が示唆されている。既存の心筋炎モデルは拡張型心筋症への慢性炎症の関与を調べるには不向きであり、
新たな慢性心筋炎モデル動物が必要とされている。BCG は生体内でマクロファージや樹状細胞に持続感染
する細胞内寄生細菌であり、終生に渡り免疫反応が持続する。また BCG 自身が免疫反応を高めるアジュバ
ント活性を持つ。そこで我々は,BCG に自己心筋ミオシン遺伝子を組み込んだ組換え BCG を用いて慢性自
己免疫性心筋炎/拡張型心筋症モデルマウスの作成を試みた。
【方法と結果】心筋ミオシンエピトープ遺伝子を組み込んだ組換え BCG(rBCG-MyHCα)を作成し、マウス
へ接種し、25 週目まで観察したところ、心筋組織中に持続性の炎症細胞浸潤と線維化の進行を認め、左室
の拡大、壁運動の低下を認めた。心臓に浸潤する CD4+T 細胞を flow cytometry を用いて観察すると、 長
期間に渡って CD44highCD62Llow エフェクターT 細胞が多数を占め、またそれらは IFN-γ や IL-17 を多く産生
していた。
【考察】 rBCG-MyHCα 投与による心筋炎/心不全モデルマウスは心筋炎惹起性エフェクターT 細胞を長期間
に渡って持続的に生み出し、慢性心筋炎を引き起こしている事が示唆された。
本研究は厚生労働省「特発性心筋症に関する調査研究」における個別研究として実施したものである。
44
O-1-3
拡張型心筋症の分子標的治療薬としての mTORC1 阻害薬の可能性
矢野俊之 1、三木隆幸 1、丹野雅也 1、久野篤史 1,2、小笠原惇 1、三浦哲嗣 1
1
札幌医科大学
循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座、2 札幌医科大学
薬理学講座
【背景】mTORC1 阻害薬が拡張型心筋症マウスの左室リモデリングを抑制することが知られている。我々
は everolimus が結節性硬化症合併拡張型心筋症例のリモデリングを抑制することを初めて報告した(Eur
Heart J 2015)
。
【目的】mTORC1 活性化の臨床的意義と mTORC1 阻害薬によるリモデリング抑制の分子機構解明。
【方法と結果】
①
拡張型心筋症例(52 例)では、心筋生検の ribosomal protein S6 の染色域から評価した mTORC1 活性
が左室機能正常例の 10 倍に上昇していた。mTORC1 活性レベルは、心事故発生群及び家族性症例にお
いて高値で、心筋線維化率と相関した(r=0.462)。
②
培養心筋芽細胞(H9c2)において、TNF-と caspase 抑制により誘導される RIP1/RIP3 依存性
necroptosis には p62-RIP1 結合及びオートファジー障害が伴い、mTORC1 阻害薬 rapamycin は necroptosis
を抑制した。
換性線維化を軽減する可能性が示唆された。
O-1-4
心サルコイドーシスにおける PET 所見と心機能悪化の関連
平澤 憲祐 1、手塚 大介 1、落田美瑛 1、秦野 雄 1、篠岡 太郎 1、吉川 俊治 1、小菅 寿徳 1、
足利 貴志 1、磯部 光章 1
1
東京医科歯科大学 循環器内科
【目的】サルコイドーシスにおける心病変の存在は予後不良因子であるが、その進行に関しての報告は少
ない。本研究では心サルコイドーシス(CS)における PET 所見と心機能悪化の関連、心機能悪化の予後に与
える影響を明らかにすることを目的とした。【方法】当院で CS と診断され複数回の心臓超音波検査を行っ
た連続 34 例について解析を行った。CS の診断は 2006 年の診断の手引きに従った。観察期間中 20%以上の
左室駆出率(EF)低下を認めた群を progressive CS (pCS)群、それ以外を non progressive CS (npCS)群と
した。Primary Endpoint は致死性不整脈 (持続性心室頻拍、心室細動)、うっ血性心不全による入院、死
亡とした。【結果】観察期間の中央値は 6.2 年であり pCS 群は 13 例 (37%)であった。Baseline の年齢、性
別、EF には有意差を認めなかったが、pCS 群で PET 陽性率が有意に高かった。(p=0.012) Kaplan-Meier curve
を用いた解析では npCS 群と比較し pCS 群で有意に予後不良であった。(p<0.001)【考察】CS において PET
陽性は心機能悪化の予測因子となる可能性が示唆された。また、経過中に心機能悪化をきたした群の予後
は不良であった。
45
会長推薦演題
【考察】mTORC1 阻害薬は、リモデリング進展に寄与するオートファジー不全と necroptosis を抑制し、置
O-1-5
家族性拡張型心筋症に対する抗アンドロゲン療法の効果
中野知哉 1、尾上健児 1、坂口泰弘 1,木村彰方 2,斎藤能彦 1
1
2
奈良県立医科大学
東京医科歯科大学
第1内科
難治疾患研究所・分子病態分野
【目的】我々は先に、LMNA を原因遺伝子とする家族性拡張型心筋症(DCM)患者および同遺伝子異常による
DCM モデルマウスを用い、男性ホルモンが心機能を悪化させる一因となりうることを示した (Cardiovasc
Res. 2013)。本研究では、家族性 DCM 患者に対し抗アンドロゲン受容体阻害薬を使用し、その効果を検討
することを目的とした。
【方法】対象は LMNA 遺伝子異常を有する DCM 姉妹例。共に 45 歳時に高度房室ブロックを指摘され、DDD
ペースメーカ植込み術を受けた。本姉妹に抗アンドロゲン受容体阻害薬 Flutamide を投与し、その経過を
検討した。
【結果】姉は通院当初、胸部 Xp で 60%程度であった CTR が徐々に 70%程度にまで増悪していたが、2013 年
(64 歳時)Flutamide 内服開始後は、CTR や BNP 値の増悪は認めていない。妹は姉と同様に閉経後の心室
リモデリングが予想されたため,2014 年(59 歳時)より Flutamide 内服が開始された。以後心機能の増悪
なく CTR は 60%,BNP は 20 pg/ml 程度で経過している.
【考察】本 DCM 家系では、男性発症者が女性発症者に比しより重篤な病態を呈している。女性発症者も閉
経後心機能低下を示しており、Flutamide 開始以後進行が抑制されている。以上から、男性ホルモン抑制
が病期の進行を予防しており、今後新たな治療法となるものと考えられる。
O-1-6
心臓移植適応と判断した小児期発症心筋症の臨床経過に関する分析
小森暁子、鮎沢衛、加藤雅崇、趙麻未、渡邊拓史、阿部百合子、
中村隆弘、神保詩乃、神山浩、高橋昌里
日本大学医学部付属板橋病院

小児科学系小児科学分野
【目的】わが国の小児心臓移植適応患者は、登録後の1年生存率は32.5%(平均生存期間7.5か月)と
成人の心臓移植適応例に比べて心不全の悪化が速い。

【方法】当院の過去20年間の入院患者中、心臓移植適応と判断した小児期発症心筋症6例を経験した
ので臨床経過について報告し、移植登録の至適時期を検討する。

【対象】18歳までに重症心不全のため当院に入院し、心臓移植適応と判断した6症例(男児4例、女児
2例)。臨床経過、疾患による移植登録の至適時期について検討する。

【結果】診断時平均年齢;0−12歳(中央値 5.0±3.8歳)
。基礎疾患;拡張型心筋症(DCM)2例、左室
心筋緻密化障害(LVNC)1例、拘束型心筋症(RCM)2例、心筋炎後心筋症(AMC)1例。遺伝子変異は
2例検出された(LAMP2、TAZの変異各1例)
。診断契機;学校心臓検診3例、乳児健診1例、心不全入院
2例。心室性不整脈の合併;3例。投与薬剤;β-blocker:4例、カテコラミン:3例、PDEⅢ阻害薬:3
例。

【考察】合併症なく移植登録に進んだ症例は、すべて健診で早期発見され、病院管理開始後に心不全
が重症化した。早期に診断し、心不全が増悪する前に移植登録を見据えた治療計画を行う必要がある。
46
O-1-7
周産期心筋症における抗プロラクチン療法の有効性について:
全国多施設前向き共同研究途中経過報告
神谷千津子 1、吉松淳 1、北風政史 2、植田初江 3、室原豊明 4、池田智明 5
国立循環器病研究センター
4
名古屋大学
1
周産期・婦人科、2 臨床研究部・心臓血管内科、3 病理部、
循環器内科学、5 三重大学
産科婦人科学
【目的】周産期心筋症は、心疾患既往のない妊産褥婦が突然心不全を発症する重篤な疾患である。新規治
療法として抗プロラクチン療法(APT)が提唱されたが、その有効性は明らかでない。そこで、全国多施設
前向き共同研究の登録症例において、APT の有効性を検討した。
【方法】平成 22 年 10 月~平成 27 年 3 月までの登録症例 68 例を対象に、APT の有無と左室駆出率(LVEF)
の変化を検討した。
【結果】40 例で抗プロラクチン薬が投与されたが、うち、急性期に 8 週間以上の APT を施行されたのが 33
例(APT 施行群)、7 例は亜急性期の投与や短期間の投与であった。28 例において APT が実施されなかった
(APT 非施行群)。診断時 LVEF は、APT 施行群で 24.9 ± 7.7%、APT 非施行群で 32.0 ± 8.3%と有意差を
認めたが(p=0.003)、1 年後の LVEF は、APT 施行群で 55.1 ± 10.0%、APT 非施行群で 55.8 ± 14.8%と有
【考察】抗プロラクチン療法は、周産期心筋症患者の急性期心機能改善に効果がある可能性が示唆された
が、1 年後の心機能に大きな変化はなかった。
O-2-1
心筋症における心筋生検有用性の相違に関する検討
義久精臣 1、鈴木聡 1、及川雅啓 1、小林淳 1、竹石恭知 1
1
福島県立医科大学
循環器・血液内科学講座
【目的】各種心筋症の診断における心筋生検の有用性の相違については明らかでない。
【方法】心筋生検前
後の診断の相違について検討した。【結果】拡張型心筋症疑い(D 群 143 例)、肥大型心筋症疑い(H 群 75
例)、その他心筋症疑い(C 群 160 例)の合計 378 例(平均 56 歳、男性 234 例)を対象とした。各群にお
ける生検後の診断は以下の通りであった。 D 群:拡張型心筋症に矛盾せず(113 例、79.0%)、サルコイド
ーシス(1 例、0.7%)
、非特異的所見(29 例、20.3%), H 群:肥大型心筋症(29 例、38.7%)、アミロイド
ーシス(3 例、4.0%)、Fabry 病(2 例、2.7%)
、非特異的所見(41 例、54.7%), C 群:アミロイドーシス
(3 例、1.9%)、肥大型心筋症(2 例、1.3%)、サルコイドーシス(2 例、1.3%)、Fabry 病(2 例、1.3%)
、
非特異的所見(151 例、94.4%)。生検前後の臨床診断一致率は D 群(79.0%)
、H 群(29.0%)、C 群(0%)
であった。
【考察】拡張型心筋症の診断における心筋生検の有用性は相対的に低い。一方、肥大型心筋症を
疑う症例では心筋生検が特に有用である可能性が示唆された。
本研究は厚生労働省「特発性心筋症に関する調査研究」における個別研究として実施したものである。
47
会長推薦演題
意差を認めなかった。
O-2-2
高感度心筋トロポニン T 高値は肥大型心筋症患者の
左室リモデリングと関連する
久保亨 1、馬場裕一 1、弘田隆省 1、谷岡克敏 1、山崎直仁 1、杉浦哲朗 2、北岡裕章 1
1
高知大学医学部老年病・循環器・神経内科学、2 高知大学医学部病態情報診断学
【目的】高感度心筋トロポニン T(hs-cTnT)は、微細な心筋傷害を検出できる血液マーカーと考えられて
いる。肥大型心筋症患者(HCM)において、hs-cTnT 値と左室リモデリングとの関連について検討する。
【方法】1 年以上の期間で心エコー検査のフォローが行われた連続 166 名の HCM 患者について後ろ向きに
解析を行った。
【結果】ベースライン時の hs-cTnT 値は、0.003~0.130 ng/ml の範囲でみられ、異常値とされる高値群(>
0.014 ng/ml)と正常値群(≤ 0.014 ng/ml)の 2 群に分けて検討した。高値群(85 名)は、正常値群と比
較してベースライン時の中隔壁厚、左室最大壁厚が有意に厚かった。一方、年齢、左室拡張末期径、左室
短縮率に差はみられなかった。約 7 年間のフォローアップにおいて、高値群では有意に中隔壁厚、左室最
大壁厚が退縮し左室拡張末期径が拡大を示したが、正常値群ではこれらの有意な変化はみられなかった。
また、拡張相に移行した例は高値群で有意に多く認められた。
【考察】Hs-cTnT は、HCM 患者の左室リモデリングを反映する血液マーカーと考えらえる。
O-2-3
たこつぼ心筋症における心拍変動・T wave alternans の診断価値の検討
清水雅人 1、飯谷宗弘 1、増田怜 1、中村玲奈 1、中野国晃 1、島田博史 1、藤井洋之 1、
山分規義 1、西﨑光弘 1、櫻田春水 2、磯部光章 3、平岡昌和 4
1
横浜南共済病院循環器内科、2 東京都保健医療公社大久保病院大久保病院循環器内科、
3
東京医科歯科大学医学部循環器内科、4 取手北相馬保健医療センター医師会病院
【目的】たこつぼ心筋症の急性期心事故に対するホルター心電図の診断価値を検討した。
【方法】洞調律連続 23 症例で急性期にホルター心電図を施行した。そのうち 5 例が持続する心室頻拍・心
室細動(2 例)、Killip4 の心不全(4 例)
、心臓死(3 例:以上重複含む)のいずれかをきたした(Group A)。
残りの 18 例を Group B として心拍変動解
析・Twave alternans 解析(TWA)を行った。
【結果】Holter 施行中の心拍変動は多くの
パラメーターが Group A で有意に異常値で
あった。Heart Rate Turbulence 解析では、
Turbulence Onset が Group A で異常であっ
た。TWA は両群間で有意差を示さなかった。
【考察】たこつぼ心筋症では心拍変動解析
が心臓予後の予測に有用であった。
48
O-2-4
肥大型心筋症における MRI 遅延造影域と 12 誘導ホルター心電図解析による
TWA の局在との関連
坂本央 1、佐藤伸之 1、広瀬愛 1、大津圭介 1、杉山英太郎 1、蓑島暁帆 1、
田邊康子 1、竹内利治 1、川村祐一郎 1、長谷部直幸 1
1
旭川医科大学
循環・呼吸・神経病態内科
【目的】肥大型心筋症(HCM)におけるMRI遅延造影(LE)の局在と程度が、12誘導ホルター心電図から解析し
たT-wave alternans (TWA)の局在と程度に関連するか否かを検討。
【方法】HCM40例。左室12分画にてLEを評価し、各分画の壁内深度を5段階にスコア化(Score)、対応する12
誘導のmaximal TWA voltage (TWAmax)との関連について解析。さらに、心室頻拍(VT)の有無にて、各指標
を比較解析。
【結果】Score0(LEなし)と比較してTWAmaxはScore2,3では有意に大きいが、Score1,4では有意差を認めず。
また、12誘導中TWAmaxの最大値を認めた分画は、Score1,2,3に分布するが、Score0,4には存在しない。VT(+)
例はScoreの合計とTWAmaxの最大値がVT(-)と比較し有意に大きいが、左室駆出率には有意差を認めず。
【考察】HCM の LE の局在は TWA と深く関連し、特に LE の壁内深度が 50~75%の分画(Score2,3)に対応する
O-2-5
心サルコイドーシス患者における
P.acnes 特異的モノクローナル抗体の陽性率に関する検討
浅川直也1、榊原守1、野口圭士1、神谷究1、吉谷敬1、久保田佳奈子2、永井利幸3、池田善彦4、
植田初江4、森本紳一郎5、廣田真規6、折居誠7、赤阪隆史7、新宮康栄8、松居喜郎8、内田佳介9、
江石義信9、筒井裕之1
1
北海道大学循環器内科、2 北海道大学病理部、3 国立循環器病センター循環器内科、4 国立循環器病センタ
ー病理部、5 総合青山病院循環器内科、6 葉山ハートセンター心臓血管外科、7 和歌山県立医科大学循環器内
科、8 北海道大学循環器外科、9 東京医科歯科大学人体病理学分野附属病院病理部
【目的】心サルコイドーシスは、サルコイドーシス患者の予後を規定する重要な病変であり、ステロイド
治療を含めた治療方針を決定するため、他の心筋疾患との鑑別を迅速に行うことが重要である。近年、P.
acnes への感染、免疫反応がサルコイドーシスの原因として提唱されている。本研究では手術・剖検標本
を用いて、心サルコイドーシスとその他の心疾患における P. acnes 特異的モノクローナル(PAB)抗体の陽
性率を比較した。
【方法】対象患者は 2000 年 1 月~2014 年 4 月までの間に、本研究参加施設において手術または剖検の際
に心筋を採取した、心サルコイドーシス(n=11;CS group)、心筋炎(n=8;M group)、その他の心筋症(n=20;CM
group)を対象とし、PAB 抗体による免疫染色を行った。
【結果】CS group では肉芽腫内において、71.4%の症例で PAB 抗体の陽性所見を認めた。炎症細胞浸潤の
存在は M group と CS group で同等であっが(87.5% vs. 90.1, P=1.00)、PAB 抗体の陽性率は M group と比
較して、CS group で有意に高値であった(0% vs. 70%, P=0.01)。線維化内、心筋内における PAB 抗体の陽
性率は 3 群間で差はなかった。
【結論】心サルコイドーシス患者において、PAB 抗体を用いた免疫染色では、非乾絡性肉芽腫、炎症細胞
浸潤を認める部位において高率に陽性となり、診断の補助となる可能性がある。
49
会長推薦演題
TWA は高値であり、再分極異常を伴った不整脈基質部位を示している可能性がある。
O-2-6
肥大型心筋症における右室肥大は心イベント発生と関連する
永田庸二
金沢大学循環器内科
【背景】肥大型心筋症(HCM)患者において右室肥大(RVH)と心イベントとの関連については不明な点
が多い。
【目的】HCM患者においてRVHが心イベント発生と関連するか否かを検討すること。
【方法】金沢大学病院において心臓MRIを施行した106例のHCM患者 (61.6±14.5歳) を対象とした。右室最
大壁厚 >5mmを呈する患者をRVH群、5mm以下の患者を非RVH群と定義した。
【結果】106例中、30例がRVHを呈した (RVH Group)。RVH群は非RVH群と比較して有意に右室拡張末期
径が小さく (43.4±16.0 ml/m2 vs. 56.6±15.2 ml/m2, p=0.0001)、左室重量が大きかった (109.1±24.9 g/m2 vs.
78.6±23.0 g/m2, p<0.0001)。フォローアップ期間中に、15名が心イベントを発症した。Cox比例ハザード解析
ではRVHが唯一の独立した心イベント予測因子であった (Hazard ratio=5.42, 95% CI=1.16-25.3, p=0.03)。
【結論】HCM患者において、RVHは心イベント発生と関連することが示唆された。
O-2-7
次世代シークエンサーを用いた小児期心筋症の責任遺伝子探索の試み
馬殿洋樹 1、高橋邦彦 1、那波伸敏 1、桂木慎一 1、成田淳 1、髭野亮太 1、三原聖子 1、
鳥越史子 1、廣瀬将樹 1、石田秀和 1、小垣滋豊 1
1
大阪大学大学院医学系研究科小児科
【背景】近年、次世代シークンサーを利用することにより相当数の遺伝子を同時に解析することが可能と
なり、疾患の責任遺伝子遺伝子をスクリーニング的に探索する道が開かれた。家族内発症を持たない孤発
症例や、発症頻度の非常に低い稀少疾患の原因遺伝子解析も可能とされるが、問題点も多い。
【目的】小児期発症の心筋症の中で重症心不全をきたす症例について、責任遺伝子探索を試みること。
【方法】次世代シーケンサ(Ion PGM、Life Technologies)を用い、カスタムパネルと先天疾患パネル
(Inherited Disease Panel、Life Technologies)を用いて責任遺伝子検索を行った。
【結果】15 例の小児心筋症患者で、概ね1患者から約 1200 個の遺伝子変異が検出された。解析の結果、
疑わしい責任遺伝子が特定できた症例は 2 例のみであった。
【結論】カスタムパネル、先天疾患パネルを用いた心筋症の遺伝子変異検索の可能性が示されたが、現時
点では必ずしも効率のよくない。今後、小児にも適応可能な心筋症パネルの作成が望まれる。
50
スポンサードシンポジウム
SS-1-1
心房細動合併心不全の治療戦略
β遮断薬は有効か?
坂田泰史
大阪大学大学院医学系研究科
循環器内科学
左室駆出率が低下して心不全症例におけるβ遮断薬の予後改善効果を検討した研究を用いてメタ解析を行
うと、洞調律症例と異なり、心房細動を合併している心不全はβ遮断薬の有効性を認めないという報告が
相次いでいる。心不全において、心房細動は頻脈、不規則なリズム、心房収縮喪失、そして神経体液性因
子の亢進により心機能を悪化させていると考えられる。β遮断薬は、レートコントロール、神経体液性因
子の抑制という直接作用、さらに持続性心房細動への移行防止という間接作用も伴いその効果を発揮する
はずである。なぜ、メタ解析では有効性が証明されないのか、その理由を分析することから、有効なβ遮
断薬投与タイミングなどを考えていきたい。
SS-1-2
慢性閉塞性肺疾患合併心不全に対してβ遮断薬の有用性は?
- 現状を知り、明日の診療に生かす 日本医科大学武蔵小杉病院 循環器内科・集中治療室
佐藤直樹
心不全患者における喫煙率は約 40%である。当然ながら、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を合併する心不全患者
はめずらしくない。しかし、その診断が十分に行われていない現状と心肺に対する治療が十分に行われて
いない現状がある。2007 年から行われた急性心不全疫学研究である ATTEND registry によれば、COPD と診
断されている患者の割合は、約 10%である。これらの患者の背景を参考に、治療の現状と今後の課題につ
いて考えてみたい。特に、収縮能が低下した慢性心不全患者に対するβ遮断薬の有用性は確立されている
ものの、COPD を合併していると肺機能への影響も危惧され、敬遠されがちである。しかし、β1選択性を
踏まえたβ遮断薬の有用性に関する知見をまとめ、明日からの COPD 合併心不全治療に役立てていただきた
いと思う。
52
SS-2-1
植込み型補助人工心臓の現状と今後の展望
小野稔
東京大学大学院医学系研究科心臓外科
わが国では 2011 年 4 月に EVAHEART と DuraHeart が認可され、2013 年 4 月に HeartMate II、2014
年 1 月に Jarvik 2000 が承認されてきた。H-VAD は 3 年以内には承認される見込みである。J-MACS 報
告によると 2015 年 3 月までに 352 例の植込み型 VAD が装着され、最近 1 年では年間 120 例のペースで
装着が行われている。植込み型 VAD の 1 年および 2 年生存率は 92%および 87%であり、欧米の成績をは
るかに凌いでいる。
わが国では脳死ドナーが極端に少ないために移植までの VAD 平均補助期間は約 900 日である。欧米で
は数名の 10 年連続補助、わが国でも 7 年以上の連続補助の実績があり、5 年を超える長期補助が現実的な
治療として実現しつつある。しかし、合併症は決して少なくなく、装着後 2 年における再入院回避率は 20%
未満である。J-MACS 報告では、ドライブライン・ポンプポケット感染回避率は 2 年で約 25%、神経機能
障害回避率は 2 年で約 40%と改善の余地が大きい。
わが国の植込み型 VAD は現在 BTT のみであるが、DT の治験が開始されようとしている。高い生命予
後が重要であるが、DT は重症心不全患者の QOL を高める究極の治療法である。今後の DT の QOL を高
く維持するために、重篤な合併症を予防し、再入院を回避するために実施施設の英知を結集することが重
要である。
小児重症心不全の治療の現状・将来
白石公 1、坂口平馬 1、津田悦子 1、
市川肇 2、福嶌教偉 3、中谷武嗣 3
1
国立循環器病研究センター小児循環器部、2 同小児心臓外科、3 同移植部
小児期発症の重症心不全は、基礎疾患や予後において成人と大きな相違がある。基礎疾患は拡張型心筋症
のみならず、拘束型心筋症、複雑先天性心疾患、川崎病冠動脈後遺症、遺伝性代謝性疾患などが挙げられ
ている。臨床経過の特徴は、心不全の進行が早く血行動態が破綻まで症状に乏しく、診断や治療開始が遅
れる症例が多いこと、病態のバリエーションが大きく適切な治療法に関するエビデンスに乏しいこと、移
植まのでbridgeとしての小児用補助循環が国内で使用できないこと、などが挙げられる。一方で、小児で
は内科的治療に良好に反応する症例がしばしば存在することも特徴である。小児重症心不全では、まず基
礎疾患の診断を的確に行い、病態に応じた適切な薬物療法を実施すること、効果がない場合は時機を逸せ
ず補助循環を考慮すること、などが重要になる。漸く小児用補助循環装置Excorが承認され、まもなく保険
償還される予定である。現在適応症例と施設基準を定めるとともに、心不全症例の初期対応を迅速にする
ためのネットワークを立ち上げ、患者の予後改善に向けた努力を行っている。同時に臓器提供を促進する
ための啓蒙運動も開始されている。
53
スポンサードシンポジウム
SS-2-2
SS-2-3
内科医から見た補助人工心臓の patient selection
大谷朋仁 1、坂田泰史 1
1
大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学
補助人工心臓は Stage D と呼ばれる重症心不全においては有効な治療選択肢の 1 つであるが、その選択肢
を有効に活用にするには、適応と問題点を十分に把握しておく必要がある。補助人工心臓の適応の中核を
なすのは心臓移植までの繋ぎとしての使用(bridge to transplantation)であり、移植適応例は全身状態が良
好な状態での装着のほうがその後の成績は良い。しかし、移植適応基準である十分な薬物療法・非薬物療
法を行っても不可逆的な心機能低下例であることを、全身状態が良好な早期に見極め、補助人工心臓への
移行を判断することはしばしば容易ではない。また、劇症型心筋炎などの移植適応かどうかの評価が十分
でないような急場の状況においては、temporary device を含め補助循環をいかに合併症なく次の段階へ繋げ
ていけるように選択していくことができるかも重要となってくる。欧米のように destination therapy が本邦
でも行われる可能性も視野に入れ、適切な患者選択とタイミングを考える上で内科医が知っておきたい情
報を整理したい。
54
ポスター
P-1-1
心臓サルコイドーシスにおける心臓 MRI ガドリニウム遅延造影の臨床的意義
伊勢孝之、佐田政隆
徳島大学病院循環器内科
心臓 MRI ガドリニウム遅延造影(LGE)は、全身性サルコイドーシス患者の心病変有無の評価に有用である。
また、過去の報告では心臓サルコイドーシスにおける LGE は感度 100%であるとされているが (Smedema JP
et al. JACC, 2005;45:1683–90)、自験例では早期の心臓サルコイドーシス病変で LGE 陰性症例があり、注
意が必要である。心臓サルコイドーシス患者において心臓の LGE 陽性部位は主としてサルコイドーシスに
伴う心筋の線維化、肉芽種性炎症を反映していると考えられている (Patel MR et al. Circulation
2009;120:1969–77)。心臓サルコイドーシスの治療の主体はステロイドであるが、自験例では LGE 陽性範囲
が少ないほどステロイド導入後の心機能回復がより期待できることが明らかとなった (Ise et al: Heart.
2014;100:1165-1172)。このことから、心臓サルコイドーシスにおける LGE 陽性心筋は主としてサルコイド
ーシスに伴う不可逆的な心筋線維化を反映していることが示唆された。また、LGE 陽性心筋部位の範囲が
広いほど生命予後不良で、致死性不整脈、心不全などを発症しやすいことが明らかとなった。心臓サルコ
イドーシスにおける LGE は診断に有用であるのみならず、ステロイド治療後の心機能改善と、心イベント
の予測因子となる。
P-1-2
心臓 MRI 用いた心サルコイドーシス早期診断における有用性
國本聡、山本顕介、中井俊子、奥村恭男、加藤真帆人、高山忠輝、廣高史、渡辺一郎、平山篤志
日本大学医学部内科学系循環器内科学分野
【目的】心臓サルコイドーシス(心サ症)は進行性の二次性心筋症のひとつであり、現在の診断基準に照ら
し確定診断が得られた段階では、すでに重症化していることがほとんどであり、その場合の予後は大変不
良である。我々は伝導障害を呈する心サ症について、その早期診断における CMR の臨床的有用性を検討し
た。
【方法】高度房室ブロックの原因検索のため CMR を施行した症例を対象とし、CMR による心サ症の早期診
断と、その診断に基づく早期治療の臨床的効果を前向きに調査した。
【結果】観察期間である 2009 年から 2013 年の総撮像数は 1487 症例であった。このうち高度房室ブロック
の原因検索を目的に施行した対象症例は 66 例であり、遅延造影陽性症例は 13 例(20%)、CMR により心サ
症と診断した症例は 9 例(14%)であった。
うち 5 例に早期治療を行い 3 例(60%)でブロックの改善を認め、
1 例においてはペースメーカー植込みを回避できた。
【考察】CMR は、伝導障害によって心サ症が疑われる症例に対する早期診断において有用であり、早期治
療が可能となることで予後悪化を抑制できる可能性がある。
(本研究は厚生労働省「特発性心筋症に関する調査研究」における個別研究として実施したものである)
56
P-1-3
MRI 対応ペースメーカーは心サルコイドーシスの診断率を向上させるか?
山本康徳、折居誠、塩野泰紹、山野貴司、松尾好記、猪野靖、
久保隆史、田中篤、穂積健之、赤阪隆史
和歌山県立医科大学循環器内科
【目的】完全房室ブロック(CAVB)を合併した心サルコイドーシス(心サ症)診断における MRI 対応ペー
スメーカーの有用性を検討する。
【方法】和歌山県内 5 施設において、CAVB で MRI 対応永久ペースメーカーが植え込まれた 41 症例(男性:
21 名、平均年齢:72±10 歳)を対象とした。診断基準に基づいて各種検査を施行し、植え込み 6 週間後に
心臓 MRI を撮像した。
【結果】心臓 MRI 撮像前には、41 例
中 2 例が診断基準を満たした。41 例
中 13 例(31.7%)で遅延造影を認め、
13 例中 8 例が診断基準を満たした。
遅延造影が陰性で診断基準を満たし
た症例はなかった。心臓 MRI により、
心サ症の診断率は 4.8%から 19.5%に
改善した(P=0.043)。
【考察】MRI 対応ペースメーカーは、
CAVB を合併した心サ症の診断率を向
上させた。
P-1-4
PET、MRI 時代にガリウムシンチが心サルコイドーシス診療に果たす役割
青木竜男、杉村宏一郎、瀬川将人、三浦正暢、建部俊介、矢尾板信裕、佐藤遙、
佐藤公雄、福田浩二、下川宏明
東北大学 循環器内科学
イドーシスの診断に用いられてきたガリウムシンチの役割は変容しつつある。
【方法と結果】1998 年 10 月から 2014 年 4 月の間に当科で心サルコイドーシスと診断された連続 68 例を
対象とし、持続性心室頻拍(SVT)の発症予測因子を解析した。SVT は 20 例(29%)で認められ、SVT を認
めた群では、LVEF が低く(38.3 vs. 55.6%)、左室拡張末期径が大きく(59 vs 50mm)、心室中隔基部の菲
薄化を有し(85 vs. 29%)、ガリウムシンチ陽性(78 vs. 12%)、組織診断例である(90 vs. 60%)という臨床
的特徴を有していた(いずれも P<0.01)。2 群間で MRI の遅延造影や PET-CT の心筋への集積の陽性率には差
を認めなかった。多変量解析ではガリウムシンチの心筋への集積のみが独立した SVT の発生予測因子とな
っていた(OR 44、P<0.01)。
【結語】PET や MRI は、サルコイドーシスの診断に非常に有用であるが、SVT の発症予測に関しては、ガリ
ウムシンチが有用である可能性が示唆された。
57
ポスター
【背景】MRI や PET は心サルコイドーシスの診断において、その有用性が報告されており、従来心サルコ
P-1-5
心サルコイドーシスにおける副腎皮質ステロイド治療の効果予測
江守裕紀、折居誠、塩野泰紹、山野貴司、松尾好記、猪野靖、
久保隆史、田中篤、穂積健之、赤阪隆史
和歌山県立医科大学循環器内科
【目的】房室伝導障害を有する心サルコイドーシス(心サ症)において、ステロイド投与前に定量評価し
た心筋の肉芽腫性炎症が、治療効果に与えた影響を検討する。
【方法】完全房室ブロックを契機に心サ症と診断され、ステロイド投与前に心臓 MRI と 18F-FDG PET を施行
し得た 7 症例を対象とした。
心筋内の肉芽
表:患者背景
腫性炎症を定量評価後、プレドニゾロンの
内服を開始した。
開始し、減量後房室伝導が再度途絶した。
心室中隔
非薄化
LVEF
(%)
PET
SUV
平均
T2強調
(%)
遅延
造影
(%)
肺,眼,
リンパ節
9.0
7.1
-
56.0
2.92
5
1
30
女性
リンパ節,肺
99.4
23.4
-
62.7
3.06
4
1
30
19.6
20.3
-
63.8
2.79
9
3
30
性別
心外
1
66
女性
2
61
変
ステロイド 開始 量
(mg/日)
用
以上であった症例 4、5 は 30mg/日で投与
ACE
(IU/L)
年齢
(歳)
例
病
導能が回復した。遅延造影サイズが 10%
BNP
(pg/mL)
症
【結果】投与開始 1 ヶ月後、全例で房室伝
3
51
女性
眼,皮膚,
リンパ節,
6、7 は 20mg/日と 15mg/日で投与開始し、
4
77
女性
リンパ節,肺
49.5
18.9
+
57.0
6.90
31
12
30
減量後も房室伝導能は保持された。
5
61
女性
リンパ節,肺
184.3
13.1
-
45.4
12.2
54
25
30
【考察】心筋内の肉芽腫性炎症を定量評価
6
40
女性
リンパ節
67.7
13.2
-
64.7
2.95
5
2
20
女性
肺,眼,
リンパ節
62.7
17.8
-
56.4
3.5
11
4
15
遅延造影サイズが 10%以下であった症例
することで、症例に応じたステロイドの投
7
79
与量を設定できる可能性がある。
P-2-1
心臓 MRI 遅延増強像内膜側分布パターン症例の臨床像
〜本当に内膜側パターンは虚血のみを示すのか〜
鍋田健
猪又孝元、飯田祐一郎、池田祐毅、石井俊輔、阿古潤哉
北里大学医学部循環器内科学
【背景】
心臓 MRI 遅延増強像(CMR-LGE)は心筋の線維化を示し、特に内膜側へ分布するものは虚血性心疾患に特徴的
と言われている。しかし、実臨床においてその頻度や臨床像は明らかでない。
【方法】
2008 年から 2014 年 2 月までに、初発心不全の原因精査目的で CMR を施行した症例のうち、心内膜側優位
に CMR-LGE が認められた 18 例を対象とした。全例に冠動脈造影を施行し、有意狭窄の有無で虚血群と非虚
血群の 2 群に分け、臨床像を比較した。
【結果】
虚血群は 11 例(61%)である一方で、非虚血群は 7 例(39%)で認められた。患者背景の比較では、虚血群が高
齢(68±9 歳 vs 53±15 歳, P<0.05)であったが、左室駆出分画(28±8% vs 31±13%, P=0.51)に有意差は認
められなかった。非虚血群の原疾患は、大動脈弁狭窄症といった、基盤に虚血が想定される症例が存在す
る一方で、Churg-Strauss 症候群、筋ジストロフィーに伴う心筋障害等の異なる病態を示す症例が認めら
れた。LGE 陽性部分にて施行された心内膜下心筋生検では、心筋組織の粗鬆化や空胞変性に加え、置換性
の線維化巣が認められていた。
【結語】
心筋内膜側有意に分布する CMR-LGE を呈する心不全症例は、多くは虚血をその基盤として生じるが、一部
に非虚血性疾患も存在し、その原因疾患は多岐にわたる。
58
P-2-2
肥大型心筋症における心臓 MRI の有用性
大西隆行 1,小林一士 1,大西祐子 1,梅澤滋男 1,
檮木優哉 1,松本彩和 1,立花恵子 1,村本容崇 1,樋口晃司 1,鈴木篤 1,丹羽明博 1
1
平塚共済病院
循環器科
【目的】肥大型心筋症(HCM)の突然死や心室性不整脈の予測に対する心臓 MRI の有用性が報告されている.
当科において HCM に対する心臓 MRI の有用性を検討した.
【方法】対象は 2010 年 2 月から 2015 年 1 月までに当科で心臓 MRI を施行した HCM 連続 70 例(66±12 歳,
男性 59%)
.HCM 突然死危険因子の有無で 2 群に分け MRI 所見を比較した.外来初診日を登録日として中央
値 5.1 年間追跡した.主要エンドポイントは全死亡と心室性不整脈,心不全とし,臨床因子や MRI 所見の
予測診断能を分析した.
【結果】突然死危険因子を有する群(19 例)では,有しない群(51 例)と比較して,最大心筋壁厚が有意に大
きく(p=<0.001),左室重量が大きかった(p<0.001).遅延造影も前者で多く存在し(p=0.003),その大きさ
も有意に大きかった(p=0.001).主要エンドポイントは 8 例(11%)でみられ,単変量解析では,年齢(p=0.048)
や最大左室壁厚(P<0.001),心筋重量(p=0.002),遅延造影の存在(p=0.01),その大きさ(p=0.003)が有意な
因子であった.多変量解析では,突然死危険因子(p=0.018)と遅延造影サイズ(p=0.025),年齢(p=0.038)
が独立予測因子であった.
【考察】単一施設の日常臨床における検討でも,HCM の予後予測に対する心臓 MRI の有用性が示唆された.
P-2-3
膠原病に伴う心筋障害と心臓 MRI 所見について
手塚大介 1、小菅寿徳 1、平澤憲祐 1、篠岡太郎 1、磯部光章1
1
東京医科歯科大学医学部附属病院循環器内科
【方法】当院の膠原病及び類縁疾患の患者で心機能評価目的に心エコーと心臓 MRI を施行した全例を対象
とし後向きに解析をした。心エコーの左室駆出率(EF 値)と、心臓 MRI の T2 と遅延造影(LGE)所見と心
筋逸脱酵素の比較を行った。
【結果】全部で 17 人 22 例の心臓 MRI データが得られた。膠原病の内訳は強皮症 5 人、多発性筋炎・皮膚
筋炎 4 人、関節リウマチ 3 人、アレルギー性血管肉芽腫 2 人、SLE1 人、高安動脈炎 1 人、Wegener 肉芽腫
1 人で平均年齢は 54.3±14.5 歳であった。平均 EF 値は 52.6±17.5%で 22 例中 59%に左室収縮不全がみら
れた。左室収縮不全群と EF の保たれた群を比較すると、収縮不全例では LGE が高率に陽性となった(100%
v.s 55.6% p<0.001)一方、T2 の浮腫所見には有意差がみられなかった(92.3% v.s 88.9%)。トロポニ
ン(61.5% v.s77.8%)と CKMB の(46.2%v.s 44.4%)陽性率にも有意差はみられなかった。
【考察】膠原病性心筋障害において、LGE は左室収縮不全例での感度が高い一方、EF の保たれた群では T2
や心筋逸脱酵素が左室収縮不全例と同等の検出感度を有したことが、本研究より明らかになった。
59
ポスター
【目的】膠原病に伴う心筋障害の心機能と心臓 MRI、心筋逸脱酵素との関係を明らかにする。
P-2-4
拡張型心筋症遠隔期における心拍変動と心臓 MRI 遅延増強像の関連
藤田鉄平 1、猪又孝元 1、飯田祐一郎 1、池田祐毅 1、鍋田健 1、石井俊輔 1、
前川恵美 1、水谷知泰 1、成毛崇 1、小板橋俊美 1、阿古潤哉 1
1
北里大学病院
【背景】
拡張型心筋症(DCM)における心拍変動(HRV)は、レニンアンジオテンシン (RAS) 系神経体液性因子、交感神
経と副交感神経のバランスを示すとされ、HRV の低値は予後不良因子として知られている。一方心臓 MRI
遅延増強像(LGE-CMR)は心筋の線維化を示し、こちらも有用な予後因子として知られている。DCM 遠隔期に
おいて HRV と LGE-CMR の関連は未だ明らかではない。
【方法と結果】
2004 年から 2012 年までに DCM{診断時左室駆出分画(LVEF)<45 %}と診断され、以後 1 年以上状態が安定
し、かつホルター心電図と LGE-CMR を施行した 22 例を対象とし、各因子の関連を検討した。22 例の LVEF
は 56±13 %であり診断時から比較すると 25±12 %の改善がみられていた。22 例を LGE 陽性群(n=9, 49 %)
と LGE 陰性群(n=13, 51 %)に分類し各所見を比較したところ、LVEF(51±15 vs 59±10, P=0.16)及び脳性
心房利尿ペプチド(102±138 vs 35±35, P=0.10)には2群間で有意差を認めなかったが、HRV の standard
deviation of all normal to normal RR intervals(SDNN)(56±13 vs 82±32, P<0.05), standard deviation
of 5-min mean RR intervals(SDANN)(38±9 vs 46±7, P<0.05), coefficient of variation of R-R
intervals(CVRR)(0.07±0.01 vs 0.10±0.03, P<0.05), very low frequency(VLF)(808±461 vs 1482±530,
P<0.01), low frequency(LF)(179±159 vs 450±313, P<0.05)で有意差が認められ、LGE 陽性群では自律
神経及び RAS 系神経体液性因子の異常が示唆された。
【結語】
収縮能が改善した DCM 遠隔期においても、LGE-CMR を認める症例は心筋の質的異常のみならず自律神経機
能の異常をも反映していると考えられた。
P-2-5
MRI が心筋症管理に有用であった症例
山澤弘州 1、武田充人 1、武井黄太 1、古川卓朗 1、泉岳 1
1
北海道大学病院
小児科
【目的】
MRI が患者管理に有用で有った症例を報告する。
【方法】
HCM の兄弟(患者 1,2)、RCM/HCM の双子(患者 3,4)、Emery-Dreifuss 型筋ジストロフィー(患者 5)に MRI を
施行。遅延造影(LGE)範囲は心筋重量に対する%で評価し HCM、RCM/HCM 例では 6SD 法、他は full with at
half maximum 法を用いた。
【結果】
LGE 範囲は患者 1 から 5 で各々8%、1%、18%、7%、5%であった。既存の突然死リスクは認めずも患者 1
は 18 歳時心室細動を起こし、患者 2 は 2 年後 LGE の範囲が 16%に増加した。患者 3 は 4 より BNP、LVEDp
は低値だが LGE 範囲は大きく、11 歳時に突然死した。当初 LGE 陰性の患者 5 は心ポンプ機能は不変だが、
5 年後 LGE 範囲は前述%となり、PQ 時間も延長した。
【考察】
患者 2 は患者 1 以上の LGE 範囲拡大が見られ、突然死の一次予防としての ICD 植え込みを予定。患者 4 は
今後線維化の進行あれば患者 3 同様イベント発生のリスクと考え、心臓移植を登録待機している。患者 5
は心ポンプ機能低下前に病変進行を描出し得た。MRI はリスク層別化に貢献し得る。
60
P-3-1
血清 FGF19 と心臓リモデリングの関連
森田英晃、藤田修一、坂根和志、武田義弘、石坂信和
大阪医科大学
循環器内科
【目的】
FGF19 サブファミリーのなかで、FGF21 および FGF23 は心臓リモデリングと関連している可能性が示唆
されている。今回われわれは、血清 FGF19 と心機能・心肥大の関連を検討した。
【方法】
循環器内科に入院となった男性 78 症例(平均年齢は 70.4±9.4 歳)を対象とした。心エコーから左室駆
出率(LVEF)、左室重量係数(LVMI)を求めた。FGF19、FGF23 は ELISA 法にて測定した。
【結果】
LVMI は、log(FGF23)( R=0.30)、log(FGF19)(R=-0.29)と、また、LVEF は log(FGF23) (R=-0.30)と有
意な相関を認めた。年齢、高血圧、log(eGFR)、HOMA-IR、log(FGF19)、log(FGF23)を独立変数、LVMI を
従属変数とした多変量回帰分析では、log(FGF19)は、標準化β=-0.28(p=0.10)で LVMI と有意な関連を
認めた。
【考察】
FGF19 はインスリン抵抗性、FGF23 と独立して心肥大と負の関連を有している。
本研究は厚生労働省「特発性心筋症に関する調査研究」における個別研究として実施したものである。
P-3-2
Human epididymis protein 4 の血中濃度測定は DCM 患者の診療に有用である
花谷信介 1、泉家康宏 1、木村優一 1、尾上喜郎 1、荒木智 1、小川久雄 1
1
熊本大学
循環器内科
いる分泌蛋白である。心筋間質線維化は拡張型心筋症(DCM)の病態にも重要な役割を果たしていることから、
我々は HE-4 の血中濃度と DCM 患者の疾患重症度や将来のイベント発生の関連について検討した。
【方法】28 名の DCM 患者を対象とした。ELISA 法を用いて血清 HE-4 濃度を測定し、その後の心血管イベン
トを追跡した。
【結果】28 名の血清 HE-4 濃度中央値は 6189.6pg/mL であった。
血清 HE-4 値は血漿 BNP 値(r=0.34, p=0.076))
や肺動脈楔入圧(r=0.38, p=0.048)、左室拡張末期圧(r=0.43, p=0.054)と正相関する傾向を認めた。患者
群を血清 HE-4 の中央値で 2 分し、Kaplan-Meier 法にてイベントリスクを評価したところ、HE-4 高値群で
有意にイベント発生数が多かった(ログランク検定 p=0.03))。
【考察】HE-4 は DCM 患者において疾患重症度やその後の心血管イベント発生リスクと関連する有用なマー
カーであると考えられた。
61
ポスター
【目的】Human epididymis protein 4(HE-4)は ongoing な線維化を評価出来るマーカーとして期待されて
P-3-3
拡張型心筋症における心筋酸化ストレスマーカー(8-OHdG)と左室リモデリ
ングとの関係に関する検討
村上和華子 1、小林茂樹 1、石口博智 1、明連武樹 1、大野誠 1、望月守 1、小田哲郎 1、名尾朋子 1、
奥田真一 1、山田寿太郎 1、岡村誉之 1、矢野雅文 1
1
山口大学大学院医学系研究科
器管病態内科学
【目的】心筋酸化ストレスマーカーである 8-Hydroxy-2’-deoxyguanosine(8-OHdG)を用いて拡張型心筋
症(DCM)における左室リモデリングと酸化ストレスとの関係を検討した。【方法】当院に入院した DCM 患
者に心臓カテーテル検査を行い、冠静脈洞(CS)および大動脈(Ao)での血清 8-OHdG 濃度を測定し、左室心内
膜下心筋生検を行った。生検組織は Sirius Red 染色を行い、線維化を定量化し、また抗 8-OHdG 抗体を用
いて免疫染色を行った。更に DCM 患者の尿中 8-OHdG 濃度を測定し、心エコー図による左室駆出率(LVEF)、
左室拡張末期容積(LVEDVI)、e’との関係を検討した。【結果】CS における血清 8-OHdG 濃度は Ao と比較
して有意に高値であった。組織の免疫染色では抗 8-OHdG 抗体の核陽性率は線維化の程度と有意な正相関を
認めた。尿中 8-OHdG 濃度は有意に高値であり、各心エコー指標(LVEF,LVEDVI, e’)と有意な相関を認め
た。【考察】DCM において尿中 8-OHdG は左室リモデリングの指標として有用であることが示唆された。
P-3-4
心筋症患者での High Mobility Group Box 1 (HMGB1)発現とその意義に関す
る検討
木下大資 1、宍戸哲郎 1、高橋徹也 1、渡邊哲 1、久保田功 1
1

山形大学医学部
内科学第一講座
【目的】HMGB1 は非ヒストン核蛋白であり、転写因子活性の調節や損傷 DNA の修復に関与する。我々
は、神経体液性因子などの刺激により心筋細胞の HMGB1 の局在や発現が変化することを報告している。
そこで、本研究では、心筋症の組織的進展度と HMGB1 の発現の変化を明らかにすることを目的とした。

【方法】心筋症を疑い心筋生検を行った 32 例の心不全患者のうち、心筋症と診断した症例 27 例を心
筋症群、心筋症ではないと診断した 5 例を Control として用いて HMGB1 の発現を検討した。また、組
織的に中等度以上の変化を abnormal 群として軽度の群と比較を行った。

【結果】心筋症群は Control に比較して BNP 高値、左室駆出率低値を呈していたが、年齢は有意差を
認めなかった。免疫染色での HMGB1 陽性細胞数は Control に比較して心筋症群で有意に減少していた。
組織的異常を認める群では、軽微な群に比べ、有意に HMGB1 陽性細胞の比率が低値であった。

【考察】心筋症患者では、HMGB1 核内陽性細胞が優位に少なく、組織的傷害の程度と関連を認めた。
核内 HMGB1 発現を維持することが、心筋症予防や治療のターゲットとなる可能性が示唆された。
「本
研究は厚生労働省「特発性心筋症に関する調査研究」における個別研究として実施したものである」
62
P-3-5
心サルコイドーシスの肉芽腫病変とリンパ管分布の特徴
松山高明 1、岩上直嗣 2、植田初江 1、草野研吾 2
1
2
国立循環器病研究センター 臨床検査部 臨床病理科、
国立循環器病研究センター 心臓血管内科部門 不整脈科
【目的】サルコイドーシスの肉芽腫性病変は肺門部リンパ節が好発部位であるように、リンパ管の分布に
沿って形成される傾向が指摘されている。心サルコイドーシスの肉芽腫病変の局在も同様にリンパ管分布
の関与が考えられる。これまで我々は、正常剖検心のリンパ管分布の組織学的解析を行い、心サルコイド
ーシスの主要な好発部位である心室中隔頂上部の His 束およびその周囲の線維輪部分にリンパ管が比較的
豊富に分布していることを示した。今回、心サルコイドーシス症例で検討した。
【方法】 心サルコイドーシスの剖検症例 3 例 (女性 2 例) を用いて、肉芽腫性病変周囲のリンパ管分布
を免疫染色 (D2-40; podoplanin, DAKO, Japan) により観察した。
【結果】 いずれの症例も多核巨細胞を含む肉芽腫の形成がみられた。多くの肉芽腫性病変の周囲には
D2-40 が陽性の小管腔がみられ、肉芽腫とその周囲にはリンパ管が豊富であると思われた。また、肉芽腫
が線維瘢痕化した部分でもリンパ管が残存したところがみられた。
【考察】リンパ管分布の特徴を把握することは、心サルコイドーシスの肉芽腫性病変の形成の機序を解明
する一助になる可能性がある。
「本研究は厚生労働省「特発性心筋症に関する調査研究」における個別研究として実施したものである」
P-4-1
入院を要する乳癌に対するトラスツズマブによる薬剤性心筋症は
比較的急速に心機能が低下する
木田圭亮 1、出雲昌樹 1、志茂新 2、高木泰 1、鈴木知美 1、伊藤史之 1、
寺本佳楠子 1、鈴木健吾 1、原田智雄 1、明石嘉浩 1
聖マリアンナ医科大学
循環器内科、2 聖マリアンナ医科大学
乳腺外科
【目的】
近年、HER2 過剰発現乳癌に対するトラスツズマブの使用増加に伴い、薬剤性心筋症による入院患者が増加
している。しかしながら、本邦における報告は少なく、本研究では心エコー指標でのトラスツズマブによ
る薬剤性心筋症の特徴の評価を目的とした。
【方法】
2012 年 1 月から 2015 年 3 月までに乳癌に対してトラスツズマブを投与し、薬剤性心筋症により当科に入
院した患者 8 例を後ろ向きに観察研究を行った。
【結果】
全例女性、平均年齢は 57.0±12.8 歳で、心不全による入院が 5 例、院内急変による心肺停止が 3 例であっ
た。全例乳房切除術を施行しており、トラスツズマブ総投与量は中央値 5,823mg/body(2,161-16,391mg/body)
で、アントラサイクリン系抗癌剤を併用したのは、7 例(エピルビシン 6 例の総投与量 380mg/m2、ドキソ
ルビシン 1 例の総投与量 420 mg/m2)であった。入院時の BNP は中央値 842pg/ml(235-1336 pg/ml)と高
値で、左室駆出率は 26.5±8.2%と低値であったが、左室拡張末期容積係数 86±16ml/m2、左房容積係数 33
±12ml/m2 と比較的保たれていた。
【考察】
心不全 5 例のうち肺うっ血による急性左心不全が 4 例、心肺停止が 3 例で、全例が低心機能であるものの、
左室、左房とも拡大傾向になく、比較的急速に心機能が低下していることが示唆された。
63
ポスター
1
P-4-2
拡張型心筋症における chronotropic incompetence と
MIBG シンチグラムとの関連
近藤徹、奥村貴裕、澤村昭典、平岩宏章、古澤健司、一居武夫、青木聡一郎、
渡邊直樹、加納直明、深谷兼次、森寛暁、森本竜太、坂東泰子、室原豊明
名古屋大学大学院医学系研究科
循環器内科学
【背景および目的】慢性心不全患者において、chronotropic incompetence(CI)は予後不良因子であり運
動耐容能低下の一因とされる。しかし、MIBG シンチグラムとの関連の報告はない。
【方法】心肺運動負荷試験と
123
I-MIBG シンチグラムを施行した拡張型心筋症患者 43 例を対象とした。先
行研究に従い、CI index=(最大心拍数-安静時心拍数)/(119+安静時心拍数/2-年齢/2-5-安静時心拍数)
と定義し、CI index と安静時血中ノルエピネフリン(NE)濃度、早期像 H/M 比、後期像 H/M 比、洗い出し
率(WR)との関連を検討した。
【結果】平均年齢は 50 歳、EF は 30%であった。CI index と血中 NE 濃度との相関は認めなかった。早期像
H/M 比(r=0.47, P=0.001)
、後期像 H/M 比(r=0.52, P<0.001)はいずれも正の相関を示した。一方、WR は
CI と有意な相関を認めなかった。
【考察】これまで CI はβ受容体の down regulation が原因とされてきたが、NE 動態も関与している可能
性がある。
【結論】CI には、心筋での NE 取り込み不良が影響している。
P-4-3
心不全症例のインスリン抵抗性に対する
ナトリウム利尿ペプチドの潜在的作用
井上康憲 1、川井真 1、吉村道博1
1

東京慈恵会医科大学付属病院循環器内科
背景:心不全と糖尿病は、その進展過程でお互いが悪影響を及ぼしている。しかし、両者の同時期で
の関係についての報告は少ない。本研究では、ナトリウム利尿ペプチド(NP)とインスリン抵抗性(IR)
の関連性を加味して心不全と糖尿病の関係を調べた。

方法:心臓カテーテル検査を行った 840 症例を用いて解析した。

結果:単回帰分析で HbA1c は心係数と負の相関関係にあったが、左心拡張末期圧(LVEDP)とは有意
な関係を認めなかった。寧ろ BNP と負の相関を示した。多変量解析では、HbA1c は LVEDP および BNP
と有意な相関は示さなかった。HbA1c の上昇は、NP と IR の潜在的な負の関係で抑えられていると想
定して次の多変量解析を行った。BNP は年齢、クレアチニン、LVEDP と正の相関を示し、男性、BMI そ
して HOMA-IR(P<0.001)と負の相関を示した。一方、HbA1c とは有意な関係は認めなかった。

考察:糖尿病と心不全は相互に悪化すると思われるが、NP の IR 改善作用は強く、その関係性は薄め
られている。(本研究は厚生労働省「特発性心筋症に関する調査研究」における個別研究として実施
したものである。)
64
P-4-4
乳児期発症拡張型心筋症の左室逆リモデリング
津田悦子、根岸潤、則武加奈恵、岩朝徹、坂口平馬
国立循環器病研究センター
小児循環器科
【背景】2歳未満の重症心不全を呈した拡張型心筋症(DCM)において、左心機能の改善がみられることがあ
るが、左室逆リモデリング(LVRR)に関する報告は少ない。【目的】乳児期発症DCMのLVRRを明らかにする。
【対象と方法】2006年から2013年までに当院を受診し、急性期治療に経静脈的強心剤を含む心不全治療を
必要とした2歳未満発症のDCM患者5例 (男3 女2) のLVRRについて、診療録から後方視的に検討した。発症
は生後8~16か月(中央値13か月)で、2年以上経過観察した。心エコー指標から左室短縮率(FS)と左室拡
張末期径(Dd)はmean±SDで示し、変化についてみた。Ddは体表面積あたりの%LVDdに換算した。【結果】
LVFS(%)は発症時11±2、1年26±11、2年34±7と改善した。%Ddは、発症時149±26から1年117±13、2年109
±5に縮小した【まとめ】発症から2年で正常範囲に回復する場合もあったが、%Ddの拡大が残存する場合
がみられた。
P-4-5
良好な転帰を得た高度肥満を伴う心不全の一例
本田洵也、山本昌良、石津智子、瀬尾由広、青沼和隆
筑波大学
医学医療系
循環器内科
【主訴】下腿浮腫、呼吸困難
【現病歴】一ヶ月ほど持続する両下腿の浮腫を認め、近医を受診した。来院時血圧 129/88mmHg、心拍 120bpm
と頻脈であり、体重 132.8kg であった。うっ血性心不全が疑われ、精査加療目的に、当院入院となった。
【考察】Framingham Heart study1)により、肥満は独立した将来の心不全発症の危険因子であることが示
されている。しかし心不全をすでに発症した患者においては、むしろ体重増加していることが予後良好で
あるという結果が Anker2)らによって報告され、Obesity Paradox と言われている。幸い、本症例は利尿剤、
β遮断薬の導入により、良好な転帰を辿った。肥満と心不全の関係性について、本症例をもとに考察し、
ここに報告する。
1) Kenchalsh S, et al. N Engl J Med 2002;347:305-13
2) Anker SD, et al. Lancet 1997;349:1050-3
65
ポスター
【症例】23 歳、男性
P-5-1
特発性拡張型心筋症患者の末梢血マイクロ RNA の網羅的解析と定量評価
○林睦晴、横井博厚、藤原稚也、吉川大治、向出大介、杉下義倫、鎌田智仁、良永真隆、
伊藤丈浩、多賀谷真央、井澤英夫
藤田保健衛生大学
坂文種報徳會病院
循環器内科
【目的】
マイクロ RNA(miRNA)は遺伝子発現を転写後レベルで制御する機能性 RNA であり、様々な miRNA が心不全
の発症・進展に関わっている。近年、血液中の miRNA が新しいバイオマーカーとして注目されているが、
特発性拡張型心筋症(DCM)の診断に有用な末梢血 miRNA は未だ確立されていない。
【方法】
一次スクリーニングとして DCM 患者 6 例、コントロール患者 3 例の末梢血から抽出した RNA を用いて、
マイクロ RNA マイクロアレイを用いた網羅的スクリーニングを行った。次に二次スクリーニングとして、
一次スクリーニングの結果、候補として同定された miRNA について、DCM 群 20 例、コントロール群 5 例で
RT-PCR 法を用いて定量評価した。
【結果】
マイクロアレイを用いた一次スクリーニングの結果、コントロールと比較して 9 個の miRNA の発現に強
い有意差(p<0.01)を認めた。これら 9 個の候補 miRNA に対して個々に定量 RT-PCR 法により比較した結果、
miR-489 が DCM 群で有意に発現が増加していた。
【考察】
miR-489 は筋ジストロフィーにおいて筋変性に関連する miRNA として発現増加が報告されており、心筋
を含む筋細胞全般の変性に重要な役割を果たす可能性が示唆された。更に、miR-489 は末梢血を用いた簡
便な DCM 診断バイオマーカーとして有用である可能性が示唆された。
P-5-2
心室中部閉塞型肥大型心筋症の病因変異探索
(Genetic analysis of Med-Ventricular obstruction)
稲垣夏子 1、林丈晴 2、武井康悦 1、近森大志郎 1、山科章 1、木村彰方 2
1
東京医科大学
循環器内科、2 東京医科歯科大学
難治疾患研究所
分子病態分野
【背景】肥大型心筋症(HCM)の亜型である心室中部閉塞型肥大型心筋症(MVO)は、HCM の 9−10%を占める
が、高度な乳頭筋肥大に伴う心室中部の内腔狭窄の前後に 30mmHg 以上の圧較差が認められる。約 30%と
高率に心尖部の心筋変性および心室瘤を合併し、この部分を起源とする致死性心室性不整脈の発症や、心
室瘤内血栓の形成による脳梗塞等の全身性塞栓症の発症を伴うリスクが高い。また、MVO を合併する HCM
群はそれがない HCM 群と比較し、死亡リスクは約 3.2 倍と高い。通常の HCM では約 40%にサルコメア関連
変異が見出されるが、MVO についてはミオシン軽鎖変異が報告されているに過ぎず、MVO の遺伝的背景につ
いては不明な点が多い。
【目的】MVO 症例の病因変異の検索を目的とした。
【方法】東京医科大学病院において、平成 25 年度および平成 26 年度の 2 年間、該当する MVO 症例を対象
として、適切なインフォームドコンセントを得て、遺伝子解析用サンプリング採血および心電図、ホルタ
ー心電図、心エコー検査、心臓 MRI 検査、心臓カテーテル検査の各所見を登録した。また、東京医科歯科
大学難治疾患研究所において、既知の心筋疾患関連原因遺伝子 67 種について Ion Torrent PGM System を
用いて網羅的に変異を検索した。
【結果】連続 17 症例の MVO に対する既知の 67 種の心筋症遺伝子変異解析を行い 35%に変異を同定した。
通常 HCM に高頻度で認めるサルコメア変異はミオシン結合タンパクC1 例のみで、全体の 6%であった。
見出された変異はすべて新規の変異であり、HCM では報告されたことのない他の表現系の心筋症原因遺伝
子での新規変異を 24%に認めた。
【結語】既知の原因遺伝子のいずれにも病因変異が見いだされなかったことから、MVO は HCM とは異なる
遺伝的背景を有することが示唆される。
66
P-5-3
TAZ遺伝子変異を伴う左室心筋緻密化障害における臨床遺伝学的検討
廣野恵一 1、畑由紀子 2、宮尾成明 1、高崎麻美 1、仲岡英幸 1、伊吹圭二郎 1、小澤綾佳 1、
西田尚樹 2、市田蕗子 1
1
富山大学医学薬学研究部小児科学教室、2 法医学教室
【目的】
左室心筋緻密化障害(LVNC)は、粗い網目状の過剰な肉柱形成と深い間隙を認める心筋疾患であり、心内膜
側に非緻密化層、心外膜側に緻密化層の二層構造を有する。Barth症候群は好中球減少、筋力低下、心筋症
を主徴としたミトコンドリア機能異常が原因の疾患であり、TAZ遺伝子異常を伴う。今回、我々は、TAZ遺
伝子変異を伴うLVNC患者に対して臨床遺伝学的検討を行った。
【方法】
TAZ遺伝子変異を伴う8人(男児8例)のLVNC患者を対象に遺伝子変異の形式、症状、予後を検討した。
【結果】
8人のうち、6例は家族例であり、1例が孤発例であった。7例が乳児期に心不全にて発見されていた。8例中
4例がスプライシング変異であり、4例がミスセンス変異であった。8例中5例において好中球減少を認め、2
例において筋力の低下を認めた。死亡例は、8例中2例であり、1例は心臓移植を受けていた。
【考察】
これまでのTAZ変異を有するLVNCの報告例においても、乳児期に心不全にて発症する症例が多く認められ、
本検討と同様の結果であった。また好中球減少や筋力低下と心病変との関連は認められなかった。TAZ遺伝
子変異形式と心不全の重症度においても相関は認められなかった。
P-5-4
演題取り下げ
ポスター
67
P-5-5
心不全患者における心臓・骨格筋のミトコンドリア機能連関と予後
加藤貴雄 1、中根英策 2、舩迫宴福 2、宮本昌一 2、和泉俊明 2、春名徹也 2、猪子森明 23
1
京都大学医学部付属病院
循環器内科、2 公財)田附興風会医学研究所北野病院心臓センター
【目的】99mTc-Sestamibi(MIBI)シンチグラムの洗い出し率を使ったミトコンドリア機能の生体内での評価
法をもとに、心不全患者において、心臓・骨格筋のミトコンドリア機能を推定した。99mTc-MIBI の洗い出し
率(WR)高値はミトコンドリア障害を反映すると考えられている。
【方法】うっ血性心不全で入院後急性期治療後に安静の
99m
Tc- MIBI シンチグラムを撮影し WR を計算し前
向きに収集した。急性心筋梗塞、起坐呼吸持続例、同意を得られなかった例を除外し、連続 45 例を対象と
した。
【結果】患者背景は、DCM 17 例、 虚血性心筋症 10 例、 頻脈起因性心筋症 8 例、 HFpEF 6 例、弁膜症 4
例で、平均年齢は 68(±15, SD)歳、左室駆出率 41.1 (±14.0) %、BNP 370.9 (±200.1) pg/ml。心筋 99mTc-MIBI
洗い出し率(WR)は、HFpEF が最も高値で次いで虚血性心筋症・頻脈起因性心筋症・弁膜症・DCM と続いた。
心筋 99mTc-MIBI の WR は、大腿 99mTc-MIBI の WR および BNP 値と相関した。また 19 例で再入院を認め、Cox
比例ハザード解析では心臓・大腿 99mTc-MIBI の WR 及び運動耐容能が関係した。心肺運動検査が可能だった
22 例を対象に解析すると、最大酸素摂取量は、大腿 99mTc-MIBI の WR および左室駆出率が影響する因子であ
った。
【結論】心臓・骨格筋のミトコンドリア機能は相関し、心不全重症度のバイオマーカーと逆相関した。
P-6-1
慢性腎臓病を合併した慢性心不全患者への
経口吸着薬 AST-120 投与の効果の検討
今津美樹 1、朝倉正紀 1、高濱博幸 1、浅沼博司 2、舟田晃 3、天木誠 1、菅野康夫 1、
大原貴裕 1、長谷川拓也 1、神﨑秀明1、盛田俊介 4、安斉俊久 1、北風政史 1
(発表者:北風政史)
1
国立循環器病研究センター、2 京都府立医科大学付属病院、
3
金沢大学付属病院、4 東邦大学医療センター
大森病院
【目的】尿毒症物質の一つであるインドキシル硫酸 (IS)は、腎疾患だけでなく心血管疾患の予後との関連
も報告されているが、心血管疾患における尿毒症物質の影響については不明な点が多い。今回我々は、慢
性心不全患者における IS の意義について検討した。
【方法】当院の CKD stage 3 以下の慢性心不全入院患者群 49 名と、有田町コホート研究から性別と eGFR
のマッチングにより選出したコントロール群を比較した。次に外来通院中の CKD stage 3-5 の慢性心不全
患者より、1 年間の経口吸着薬投与群、非投与群 (各々8 名) を選出し投与前後を比較した。
【結果】心不全群では、コントロール群と比べ血漿 IS 値、拡張能の指標の一つである E/e’が高値であり、
左室内径短縮率 (FS)は低値だった。次に、経口吸着薬の投与群では、投与後に血漿 IS 値、クレアチニン
値、BNP 値が低下し、FS と E/e’は改善した。一方で非投与群では、これらの値は変化しなかった。
【考察】慢性心不全患者における経口吸着薬の投与では、腎機能だけでなく心臓の収縮能と拡張能が改善
を認めた。経口吸着薬は拡張機能障害のある心不全の新たな治療薬となる可能性がある。
本研究は厚生労働省「特発性心筋症に関する調査研究」における個別研究として実施したものである。
68
P-6-2
腎移植術による尿毒症性心筋症の改善効果
飯野貴子 1、渡邊博之 1、伊藤宏 1
1
秋田大学大学院医学系研究科循環器内科学・呼吸器内科学
【目的】尿毒症性心筋症(UC)への腎移植術(RT)の効果を検討する。
【方法】EF<50%の RT 非施行末期腎
不全症例を C 群、RT 施行例を術前 EF≧50%群(P 群 18 例)と EF<50%群(R 群 10 例)に分け、各群の 12
か月間の心機能変動を評価した。
【結果】C 群に比し、P 群と R 群では術後 12 か月で左室拡張末期容積、心
筋重量係数が有意に低下した。さらに R 群では C 群に比し術後 1 か月で EF が高値、その後も経時的に改善
した(46±3 vs. 71±4%、p<0.0001)。この EF 改善効果は、P 群よりも R 群で有意であった。C 群に比し、
P 群と R 群では、移植後収縮期血圧(149±16 vs. 126±10 mmHg、p<0.001)
、Hb(11±1 vs. 12±2 g/dL、
p<0.001)、MIBG 洗い出し率(20±3 vs. 10±1%、p<0.01)の改善が有意であった。
【考察】RT は UC に対し
リバースリモデリングや心機能改善をもたらした。その改善効果は心機能が低下した R 群で顕著であり、
UC の治療手段としての RT の可能性が示唆された。改善のメカニズムとして、血圧や貧血の是正、交感神
経活性低下が示唆された。
P-6-3
心臓再同期療法に対する non-responder における adaptive
servo-ventilation 療法の効果について
川口直彦 1、倉林学 1、沖重薫 1、磯部光章 2
1
横浜みなと赤十字病院
心臓不整脈先進診療科、2 東京医科歯科大学
循環制御内科学
されている。心臓再同期療法(CRT)は現在重症心不全に対する確立された治療となっているが、そのうちの
約 3 割の症例では CRT 治療後も心機能の改善効果を認めないいわゆる non-responder になるとされる。こ
れまでに CRT に対する non-responder における ASV 療法の効果については明らかになっていない。
【目的】本研究の目的は、CRT に対する non-responder における ASV 療法の効果について調査することで
ある。
【方法】当院で ASV 療法を受けた CRT に対する non-responder の 22 人を対象とした。Non-responder の定
義は、CRT 後の左室 EF の改善率が 15%未満であるか、CRT 開始 6 か月以降に心不全入院があったものとし
た。ASV 療法の開始前及び開始後 6 か月で血液検査及び経胸壁心エコー図検査を施行し、ASV 療法の効果を
比較検討した。
【結果】一日の ASV 平均装着時間は 3.5±2.4 時間であった。ASV 療法開始前後で、BNP 値は有意に改善し
(267±183 pg/ml vs. 192±122 pg/ml, p<0.01)、またエコー所見では左室駆出率(LVEF)並びに左室拡張
末期径(LVDd)の改善を認めた(LVEF: 29.7±6.5 % vs 32.1±7.1 %, p=0.03. LVDd: 67.8±8.9 mm vs. 65.2
±9.1 mm, p<0.01)。
【考察】ASV 療法は CRT に対する non-responder に対しても効果的であることが示唆された。
69
ポスター
Adaptive servo-ventilation(ASV)療法は心不全患者における心機能及び予後を改善することが近年報告
P-6-4
重症心不全に合併した Insessant VT/Electrical storm に対する
ダントロレンの安全性・有効性に関する検討
石口博智 1)、小林茂樹 1)、明連武樹 1)、文本朋子 1)、大野誠 1)、小田哲郎 1)、奥田真一 1)、
吉賀康裕 1)、上山剛 1)、清水昭彦 2)、矢野雅文 1)
1)山口大学大学院医学系研究科器官病態内科学、2)山口大学大学院医学系研究科保健学科
背景:筋小胞体膜上に存在する Ca2+放出チャネルであるリアノジン受容体からの拡張期 Ca2+漏出は、心不全
や致死的不整脈の機序として重要である。我々は動物実験で悪性高熱症の治療薬であるダントロレンが拡
張期 Ca2+漏出を抑制することを報告した。目的:心不全を合併した心室頻拍患者に対するダントロレンの安
全性と有効性を評価した。方法:1)Incessant VT/Electrical storm(ES)2)ACC/AHA stage C 以上の心不
全
3)ICD もしくは CRTd の植込み後
4)アミオダロンやβ遮断薬が投与中の条件を満たす 5 症例に対して、
ダントロレン投与前後の HR, BP, ECG、LVEF、抗不整脈効果を評価した。結果:1)ダントロレン投与前後で、
PQ,QRS,QTc,HR,BP,LVEF は変化を認めなかった。2)ダントロレンは 5 症例中 3 症例に対して VT 抑制効果が
あった。結論:ダントロレン静脈内投与は、QRS,QTc の延長や心抑制を来すことなく、Incessant VT/ES に
対する抑制効果が示された。ダントロレン静注療法は致死的不整脈に対する新たな治療戦略になるかもし
れない。
P-6-5
VAD 装着心臓移植待機患者におけるドライブライン刺入部感染の一例
藤田寛奈 1、和田 浩 1、坂倉建一 1、池田奈保子 1、菅原養厚 1、
三橋武司 1、藤田英雄 1、百村伸一 1
1j
自治医科大学附属さいたま医療センター
【症例】45 歳男性【臨床経過】拡張型心筋症にて 10 年間の罹病期間を経て NYHA4 でカテコラミン依存の
治療抵抗性心不全となり、当院にて植込み型人工心臓(Heartmate II)移植術施行。在宅退院後本人の強
い意志にて仕事再開。当初はデスクワークのみであったが次第に自己判断でラケットをもってコートに立
つようになり、テニス再開とともにドライブライン刺入部からの浸出量は増加し 38 度以上の発熱認めるよ
うになる。外来管理 VAD チームからの勧めにより、インストラクターをしばらく休業して 2 週間入院管理。
ポケット洗浄追加し浸出量減少し幸い軽快退院。
【考察】植込み型 VAD 導入前では心臓移植適応を受けるた
めに、患者は運動制限を含めた厳しい自己管理に同意するが、植込み後次第に気持ちは変遷。特に生涯の
天職として体を動かすことを本業とするアスリートにおいては、復職の過程でより高度の運動を希望する
ようになってくる可能性がある。
【結語】今後 VAD 症例が拡大増加するにあたり、本人の希望をどこまで尊
重しつつ VAD チームとしてドライブライン刺入部感染のリスクをいかに軽減してくべきかのバランスにつ
いて考察する。
70
P-7-1
心尖部肥大型心筋症における非侵襲的検査による
心不全合併リスク因子の検討
中野国晃 1、飯谷宗弘 1、増田怜 1、中村玲奈 1、島田博史 1、清水雅人 1、
藤井洋之 1、山分規義 1、西崎光弘 1、磯部光章 2
1
横浜南共済病院、2 東京医科歯科大学
【目的】心尖部肥大型心筋症(AHCM)は無症状で経過し予後良好とされているが、心不全合併の報告例も
ある。AHCM において、非侵襲的検査による心不全合併のリスク因子について検討することを目的とした。
【方法】2012 年から心エコー(UCG)上心尖部に限局した肥大を認め、12 誘導心電図(ECG)の胸部誘導に
て陰性 T 波を呈した 33 例(年齢 73±11.6 歳、男性 27 例)を対象とした。経過中に心不全症状の出現や
BNP>200pg/ml を認めた心不全合併群 10 例と、心不全非合併群 14 例に分類し、UCG、ECG、ホルター心電
図の各項目を比較検討した。
【結果】ホルター心電図では両群において TWA、HRV、HRT に有意な差異は認めなかったが、ECG において、
心不全合併群では V5 誘導における QRS area が有意に大きく、多変量解析でも心不全合併の独立した因子
であった。UCG 上は心不全合併群のみで心房細動合併と左房径の拡大との相関を認めた。
【考察】AHCM において、ECG での V5 誘導における QRS area は心不全合併のリスク因子である可能性が示
唆された。
P-7-2
肥大型心筋症患者における心臓突然死危険率予測モデルの検討
高橋有紗 1、久保亨 1、馬場裕一 1、弘田隆省 1、谷岡克敏 1、山崎直仁 1、北岡裕章 1
1
高知大学医学部
老年病・循環器・神経内科学
然死(Sudden cardiac death:SCD)危険率の予測モデル計算式(HCM -Risk -SCD model)が提案された。
【方法】この予測モデルが日本人において妥当か否かについて、2008 年から 2013 年の 5 年間のフォロー
アップデータのある HCM 患者 131 名を後ろ向きに解析を行った。
【結果】全体では、高リスク群(SCD risk が 6%以上)4 名(3%)、中等度リスク群(4~6%)7 名(5%)、
低リスク群(4%未満)120 名(92%)であった。SCD は 4 名(3%)、SCD 相当の不整脈イベントは 6 名(5%)
(心室細動蘇生後1名、持続性心室頻拍 1 名、ICD 適切作動 4 名)に認め、高リスク群では 2 名(50%)、
中等度リスク群では 1 名(14%)
、低リスク群では 7 名(6%)でイベント発症がみられた。
【考察】HCM -Risk -SCD model は日本人 HCM 患者にも有用であると思われる。今後、大規模な前向き研究
が必要である。
71
ポスター
【目的】2014 年ヨーロッパ心臓学会ガイドラインで、肥大型心筋症(HCM)患者の 5 年間における心臓突
P-7-3
たこつぼ型心筋症発症後に一過性壁肥厚が生じた症例の検討
林秀幸 1、木村昌弘 2、脊古裕太 1、木村祐樹 1、関原孝之 1、岡野光真 1、舩迫宴福 1、
佐々木健一 1、加藤貴雄 2、中根英策 1、宮本昌一 1、和泉俊明 1、春名徹也 1、猪子森明 1
1
北野病院
心臓センター、2 京都大学医学部附属病院循環器内科
【目的】たこつぼ型心筋症は通常 1~2 週間で壁運動異常が改善し、予後良好な疾患である。我々は左室壁
運動が改善した後に左室心尖部の一過性壁肥厚を認める症例を経験したので文献的考察を加え報告する。
【方法】2004 年 10 月~2014 年 8 月に当院でたこつぼ型心筋症と診断された連続 65 症例のうち、発症後の
心エコーフォローがある 29 症例に関し、その臨床的特徴について比較検討した。【結果】29 症例中 6 症例
で一過性左室壁肥厚を認め、その初回指摘は発症 2 週間~4 週間であり、改善には 4 ヶ月~2 年を要した。
壁肥厚(+)例では、陰性 T 波の誘導数および発症時 E/E’が壁肥厚(-)例に比して有意に高値であった。【考
察】たこつぼ型心筋症後の一過性左室壁肥厚は、これまでの報告よりも高頻度で生じており、発症時の心
エコーや心電図所見から壁肥厚を予想できる可能性がある。またその機序としては、カテコラミン刺激に
伴う心筋肥大や浮腫が文献的に述べられているが、当院の症例の MRI 所見からは浮腫の関与が示唆された。
P-7-4
当院における10年間の心筋症診療の現況
山口徹雄、尾林徹、宮本貴庸、新井紘史、庄司聡、岩井雄大、山口純司、
宮崎亮一、川初寛道、山下周、関川雅裕、原信博、稲葉理、山内康照
武蔵野赤十字病院
循環器科
【目的】循環器疾患の日常診療の中で心筋症の占める割合は少ないが、診断治療の難渋例が多い。そこで、
今後の診療成績の向上に資するために、急性期病院における心筋症の現況をまとめた。
【方法】過去11年間(2004年から2014年)の入院病歴より、主病名が心筋症(心サルコイドー
シス、たこつぼ心筋症を含む)の初回入院297例を対象に、疾患別比率、入院死亡率、をまとめた。
【結果】多い順より、1、たこつぼ心筋症
1)。2、肥大型心筋症
筋症
83例(27.9%、死亡4:4.8%、男性12:女性7
79例(26.6%、死亡3:3.8%、男性45:女性34)
。3、拡張型心
65例(21.9%、死亡15:23.0%、男性43:女性22)。4、心サルコイドーシス
3
7例(12.5%、死亡5:13.5%、男性16:女性21)
。上記4疾患で全体の88.9%。その他、
虚血性心筋症9例。ARVC 5例、拘束型 2 例、アルコール性などその他が17例であった。
【考察】救急入院の多くは、たこつぼ心筋症であり死亡例もあり注意を要する。拡張型心筋症と心サルコ
イドーシスは死亡率が高く、早期の診断と後者ではステロイド治療の適応決定が大切となる。
72
P-7-5
当院における心筋症の経験
藤井敏晴、村上力、鳥居翔、中野将孝
中澤学、篠崎法彦、吉町文暢、伊苅裕二
東海大学医学部付属病院
内科学系
循環器内科
心筋炎は時に致死的な経過をたどることがあるため重要な疾患である。しかし、心筋炎に遭遇す
る頻度は高くなく、その実態は未だ不明な点が多い。本検討の目的は、当院における心筋症の臨床的特徴
と短期生存を調査することである。
2007 年 2 月から 2015 年 1 月の期間に当院で臨床的または病理組織学的に心筋炎と診断された連
続 34 例において、臨床的特徴、検査所見、及び短期生命予後を後ろ向きに解析した。
平均年齢は 48.4 歳、男性が 61.8%を占めていた。劇症型(EF40%以下、かつ遷延するショック
または経皮的心肺補助を必要とする難治性致死的不整脈を有する症例)は 38.2%を占めた。来院時 41.2%
がショックを有し、85.3%が Killip 分類Ⅱ以上であった。左室駆出率は 37.1%であり、半数が 40%以下
であった。経皮的心肺補助は 38.2%で施行された。心筋生検は 35.3%に施行され、66.7%はリンパ球主体
であった。全体の平均入院期間は 14.5 (8-24.5)日、30 日死亡率は 20.6%(劇症型:46.2%)であった。
76.5%の生存退院のうち、自宅へ退院できたのは 88.5%を占めた。
心筋炎は未だ高い死亡率を有する。劇症型では経皮的心肺補助を行っても救命できない症例が多
い。予後不良の症例の早期予測とその対応の改善は今後の課題である。
P-8-1
母子間で異なる表現型を呈した Becker 型筋ジストロフィー心筋症の 2 症例
徳野翔太 1、坂本央 1、広瀬愛 1、川口哲 1、大津圭介 1、澤田潤 1、鈴木孝英 2、
蓑島暁帆 1、片山隆行 1、田邊康子 1、竹内利治 1、赤坂和美 1、長谷部直幸 1
1
旭川医科大学
循環・呼吸・神経病態内科、2 遠軽厚生病院
循環器内科
型筋ジストロフィー(BMD)と診断された。36 歳時に心不全加療を行い、左室拡大と収縮能の著明低下
(LVEF23%)、左室側壁を中心に非緻密層(NC)と緻密層(C)の 2 層構造を認め(NC/C 比 3.0)、左室緻密化障
害(LVNC)と診断。MRI では NC 部位と心室中隔の心筋中層に高度遅延造影(LGE)を認めた。LVNC による機械
的左室同期不全と心室頻拍を伴い、CRT-D 治療が左室収縮能改善(LVEF34%)に有効であった。
症例 2 は 66 歳女性。症例 1 の母で 44 歳時に左室肥大と心筋病理から肥大型心筋症(HCM)と診断された。左
室収縮能低下が進行し(LVEF47%)、MRI では心筋中層に高度 LGE を認めた。BMD は X 劣性遺伝であるが、保
因者も心機能異常を伴う症例が報告されている。症例 2 もジストロフィン exon13 欠失を認め、BMD 保因者
と診断。心内膜下心筋生検では 2 症例共通して線維化と錯綜配列所見を認めた。
母子間で HCM と LVNC の異なる表現型を呈した BMD 心筋症の 2 症例を経験した。
73
ポスター
症例 1 は 36 歳男性。3 歳時に易転倒あり、筋生検と遺伝子検査(ジストロフィン exon13 欠失)から、Becker
P-8-2
学校心臓検診で発見された分類不能型心筋症の男児例
○武井陽 1),山口洋平 1),細川奨 1),土屋史郎 2) ,土井庄三郎 1)
1
東京医科歯科大学医学部付属病院 小児科、2 草加市立病院 小児科
小学校 1 年生の学校心臓検診で心電図異常を指摘され、前医の心臓超音波検査で左室の拡大と壁運
動低下を認め、当科に紹介受診となった。BNP21.8pg/ml、CTR49%、心電図で V5.6 の ST 低下、ILBBB
の 所 見 を 認 め た 。 心 臓 カ テ ー テ ル 検 査 の 結 果 、 左 室 拡 張 末 期 圧 (LVEDP) 9mmHg, 心 係 数 (CI)
5.3L/min/m2 と正常範囲であった。左室造影にて左室後壁から側壁の局所壁運動低下、心筋緻密化障
害および心室瘤の所見を認めた。また心筋生検では非特異的な心筋変性を示唆する所見を認め、分類
不能型心筋症と診断した。MIBG 心筋シンチグラムでは、壁運動低下と同部位の取り込み低下所見を認
めた。ACE 阻害薬投与開始後 1 年の心臓カテーテル、心臓血管造影検査所見はほぼ不変であったが、
初めて行った右室造影では造影剤の wash out 不良の所見を認めた。このためカルベジロールとワル
ファリンの追加投与を開始した。現在に至るまで著変なく経過し、BNP 値は 16.6pg/ml と上昇を認め
ていない。
本症例の経過とともに、分類不能型心筋症の診断・治療につき文献的考察を交えて報告する。
P-8-3
乳幼児期に発症した拘束型心筋症の 1 例
清水武、清水美妃子、石井徹子、杉山央、富松宏文、朴仁三、中西敏雄
東京女子医科大学
循環器小児科
【はじめに】乳幼児期に発症した拘束型心筋症(RCM)は、心不全の進行が早く予後不良な疾患である。内
科的治療は困難であり心臓移植が必要となる。【症例】1 歳2か月の女児。家族歴に総動脈幹症(3 歳兄)
があり、既往歴に総肺静脈還流異常(日齢 0 に修復術)があった。術後は軽度肺高血圧(右室圧 40mmHg)
が持続した。体重増加は緩慢であり、1 歳2か月で体重 6.5kg(−3.0 SD)、喘鳴を認めた。心音は正常、肝
腫大、軽度の浮腫を認めた。胸部 X 線写真で CTR 58%、軽度の肺うっ血、心電図で右室肥大所見を認めた。
心エコ−図で著明な左室拡張能低下(収縮能低下なし)と左房拡大、心臓カテーテル検査で左室拡張末期圧
の上昇、左房圧上昇、肺高血圧を認め、RCM と診断した。心不全に対して内科的治療を行ったが、心不全
は進行性で。現在は心臓移植検討中である。【考察】本症例は RCM の予後不良因子(心拡大、肺うっ血、5
歳未満、高い心室拡張末期圧、高い LA/AO)を満たしており、進行性の心不全、肺高血圧を認める。RCM の
平均生存期間は診断から 1 年前後であり、早期の心臓移植が必要と考えられる。
74
P-8-4
高齢で発見された左室心筋緻密化障害の一例
李若楠、山本貴信、後藤亮、萩元宣彦、安達進
秀和総合病院
循環器内科
【症例】76 歳、男性。【主訴】労作時呼吸困難
【現病歴】2014 年 9 月、地域の集まりに出席し、100m 程度の歩行で息切れしたため、翌日当院総合内科受
診。うっ血性心不全の診断にて精査加療を開始翌日呼吸困難が出現、当院救急外来受診。うっ血性心不全
の急性増悪の診断で緊急入院。
【入院後経過】来院時血圧上昇と鬱血を認めたため、フロセミド静注でにて除水、ニトログリセリン点滴
にて降圧し、呼吸困難解消。胸部 X 線上、心拡大、心陰影の偏位、心エコーと MRI にて、左室の著明な肉
柱構造を認め、左室造影にて深い間隙を伴う著明な肉柱形成とびまん性の壁運動低下を認めた。肉柱形成
層/緻密層比が 2-5、長男が心筋症であったという家族歴より左室心筋緻密化障害と診断。左室心筋緻密化
障害は脳塞栓症のリスクが高いとの報告があるが、脳幹出血の既往があったため、抗血小板薬の使用は見
送った。入院後、利尿剤なく塩分飲水制限のみで、除水が得られたため、β遮断薬、アンジオテンシンⅡ
受容体拮抗薬を導入し、退院。
【考察】左室心筋緻密化障害は家族例が認められる心筋症の一つと分類され
ている。本症例は高齢で発見されたため文献的考察を加えて報告する。
P-8-5
心尖部に多発性血栓を認めた孤発性左室緻密化障害の一症例
榊原温志 1、近江哲生 1、山本佑 1、土居惇一 1、増村麻由美 1、吉田善紀 1、岩井慎介 1、
三輪尚之 1、大野正和 1、高橋良英 1、野里寿史 1、佐藤康弘 1、磯部光章 2
1
国立病院機構災害医療センター
循環器内科、2 東京医科歯科大学医学部附属病院
循環器内科
切れ、咳嗽のため緊急搬送された。搬送時 CS-2 で両心不全徴候あり、心エコー図では LVEF=20%、
LVDd=77mm と著明な左室収縮能低下と左室拡大を認めた。心尖部には最大 20mm の血栓様エコーを複数認
め、下壁~心尖部に特徴的肉柱構造がみられた。左室緻密化障害を基礎心疾患としたうっ血性心不全と診
断し、心不全治療を開始。心尖部血栓様エコーに対しては抗凝固療法を選択、塞栓症状なく徐々に縮小・
約 1 ヶ月で消失した。CAG では左右冠動脈正常で、心臓 MRI では LVEF=13%、遅延造影を認めなかった。
経過中に頻回に非持続性心室頻拍を確認し、植込み型除細動器植え込み術を施行した。カルベジロール
7.5mg/日まで増量し独歩退院となった。
【考察】本症は一般的に各種画像検査で non-compacted layer の存在
により診断され、特定の心筋遺伝子異常の報告等もあるものの、未だに明確な質的診断基準がないことは
臨床的問題である。【まとめ】心尖部に多発性血栓を認めた孤発性左室緻密化障害の一症例を経験した。
75
ポスター
【症例】49 歳男性【主訴】労作時呼吸困難、咳嗽【臨床経過】来院 2 週間前から徐々に増悪する労作時息
P-9-1
滲出性収縮性心膜炎および心筋症害を合併した結核性心膜炎の一例
山本昌良、瀬尾由広、丸田俊介、石津智子、青沼和隆
筑波大学附属病院
循環器内科
症例は特記すべき既往症の無い 72 歳男性。約 2 か月前から出現した下腿浮腫、労作時息切れを主訴に近医
を受診し、利尿薬抵抗性の心不全の診断で当院に紹介となった。胸部レントゲン写真では著明な心拡大と
両側の胸水貯留を認め、心エコーでは多量の心嚢水、左室機能不全(左室駆出率 38%)
、著明な心膜肥厚
を認め、精査の為に入院となった。約 500ml の心嚢ドレナージを行ったところ、心嚢腔圧は 17mmHg から
1mmHg へと著明に低下したものの、平均右房圧は 19mmHg から 16mmHg と低下に乏しく、滲出性収縮性心膜
炎の病態が疑われた。心嚢水はリンパ球有意であり、ADA 高値かつ結核菌 PCR が陽性から結核性心膜炎と
診断した。右室心内膜心筋生検では結核菌は検出されないものの、細胞質の空胞変性、線維化、軽度の炎
症細胞浸潤等の心筋障害所見を認めた。抗結核薬およびステロイド治療が開始され、心機能に関しては現
時点では著変を認めないが、心嚢水および胸水の再貯留無く経過している。本症例の心筋病変は確定では
ないが、結核性心筋炎の可能性が高いと考えられた。結核性心筋炎の報告は稀であり、文献的考察を含め
て報告する。
P-9-2
Trastuzumab により拘束性心筋症を発症した一例
○野田裕剛 1),有田武史 1),與田俊介 1),横山拓 1),安田潮人 1),
小田代敬太 1),丸山徹 1),赤司浩一 1)
1) 九州大学大学院医学研究院病態修復内科
【症例】62 歳、女性。
【主訴】労作時息切れ・下腿浮腫【現病歴】高血圧を指摘され、降圧薬内服をして
いた。前医にて乳癌を指摘され、術前化学量法を施行されていた。乳癌の告知と化学療法の副作用によっ
て抑鬱状態となり、自傷行為により、当院救急外来へ搬送となった。創部治癒後も精神状態不安定なため、
当院精神科に医療保護入院となった。その後、当院乳腺外科にて化学療法(trastuzumab・paclitaxel)継続
されたところ、心不全症状が出現し、当科転科となった。心エコー・右心カテーテル所見から、抗癌剤に
よる拘束性心筋症と判断し、心不全治療を行った。強心薬・利尿薬・心保護薬の調整にて、心不全は改善
したが、左室機能の十分な回復には至っていない。
【考察】乳癌のうち、約 20%は HER2 受容体が過剰発現
する腫瘍が占め、増殖が早く、再発が多い。分子標的薬剤の trastuzumab は HER2 受容体を阻害することで
乳癌再発のリスクを低下させ、非常に有効とされている。しかし、治療中に心筋障害のリスクが高まるこ
とが知られており、多くは心機能回復に至るものの、心機能の長期予後ついてはまだ検証不十分である。
年齢(50 歳以上)、降圧薬使用、正常範囲内での心機能低下が危険因子とも言われており、本症例も
trastuzumab 投与による心不全発症のリスクは高かったと考えられる。
76
P-9-3
乳癌に対してトラスツズマブ使用中心不全となった一例
庄司聡 1、梅本朋幸 1、岩井雄大 1、山口純司 1、新井紘史 1、川初寛道 1、宮﨑亮一 1、平尾龍彦 1、
山下周 1、関川雅裕 1、山口徹雄 1、原信博 1、稲葉理 1、山内康照 1、宮本貴庸 1、尾林徹 1、
磯部光章 2
1
武蔵野赤十字病院
循環器科、2 東京医科歯科大学大学院
循環制御内科学
症例は 34 歳女性。右乳癌に対してトラスツズマブの術前投与後に右乳房切除術を施行した。この時点での
心エコーで心機能は正常であった。補助化学療法としてトラスツズマブを再度投与していたが,左乳腺転
移をきたしたため左乳房切除術も施行した。その後さらにトラスツズマブの投与を継続していたところ,
使用開始後 30 ヶ月後に下腿浮腫・息切れにて当科初診となった。著明な心機能低下によるうっ血性心不全
を認め,トラスツズマブによる心毒性の可能性が疑われた。直ちにトラスツズマブを中止し,利尿薬,強
心薬による治療を開始し,心不全は徐々に改善を認めた。経過中非持続性心室頻拍も認めたためアミオダ
ロンを開始した。現在少量のβ遮断薬を導入し経過は良好であり,心不全治療開始後 6 ヶ月後の心エコー
では心機能の改善を認めている。トラスツズマブによる心機能低下は一般的に可逆的であり,早期発見,
早期治療が重要であるが,その有用な検査プロトコルは確立されていない。少なくとも抗癌剤レジュメン
変更時においては,胸部レントゲン,採血,心エコーなどの非侵襲的検査で心機能は定期的に確認する必
要があると思われる。
P-9-4
急性骨髄性白血病が関与した 2 次性心筋症の 1 例
松田祐治 1、吉岡賢二 1、須藤悠太 1、二宮亮 1、星野昌弘 1、黒田俊介 1、大野真紀 1、添田雅生 1、
岩塚良太 1、米津太志 1、鈴木誠 1、松村昭彦 1、橋本裕二 1、磯部光章 2
1
亀田総合病院、2 東京医科歯科大学医学部附属病院
労作時呼吸困難症状が出現して徐々に増悪傾向となり、夜間就寝中にも出現するようになった。2 月下旬
に当院当科外来受診し、心エコーで壁肥厚とびまん性壁運動低下(EF:40%)と心嚢水貯留を認め、精査
目的に入院となった。血液中には血算分画異常があり血液腫瘍も示唆されたが、心臓 MRI で右室流出路付
近の左室中隔外側に遅延造影を認め、Ga シンチでも縦隔から左室または心膜にかけての異常集積があり、
心サルコイドーシスの可能性も疑われた。心筋生検を施行したところ異型単核細胞の心筋繊維間や心内膜
への多数浸潤が認められ、免疫染色の結果とあわせて急性骨髄性白血病の心筋浸潤の診断となった。血液
腫瘍内科紹介し、化学療法を開始となった。化学療法開始後第 3 病日のフォローアップで施行した心エコ
ー検査にて心機能(EF62%)の改善を確認し、現在も化学療法を継続している。化学療法開始後に施行し
た心エコー検査での心機能改善に化学療法が寄与しているかどうかに関してははっきりとしなかったもの
の、今回の心機能低下に関しては少なくとも急性骨髄性白血病の浸潤が関連することは明白であった。本
症例のごとく 2 次性心筋症として血液腫瘍の浸潤が関連することはまれであり、文献と考察をふまえて報
告する。
77
ポスター
症例は 54 歳男性。これまで健康診断で特記すべき異常所見は指摘されていなかった。2015 年 1 月頃より
P-9-5
拡張型心筋症類似の病態を呈した甲状腺クリーゼの 1 例
池ノ内孝1、薄井宙男1、仲村太一1、堀真理子1、村上輔1、加藤陽子1、山本康人1、
市川健一郎1、野田誠1、磯部光章2
1
東京山手メディカルセンター 循環器内科、2 東京医科歯科大学循環制御内科
症例は 32 歳女性。動悸、呼吸困難、下腿浮腫を主訴に来院し、頻脈性心房細動、うっ血性心不全を伴う甲
状腺クリーゼの診断で入院となった。フロセミドによる利尿とヨウ化カリウム及びチアマゾールによる甲
状腺治療を開始した。頻脈に対してベラパミル投与で脈拍コントロール行ったが、左室拡大及び左室収縮
能低下が進行したためプロプラノロール内服及びランジオロール持続静脈注射を施行し心拍数は安定した。
しかし意識障害、血圧低下を来し、ランジオロールの中止、ドパミン、ドブタミン、カルペリチド及びハ
イドロコルチゾンの投与を行った。その後、甲状腺機能の改善に伴い左室収縮能は回復し、内服薬を継続
の上で退院となった。
甲状腺クリーゼに伴う心不全では心筋が拡張型心筋症様を呈す場合があり、甲状腺機能の改善に伴い心筋
形態や心機能が改善する事が知られている。甲状腺クリーゼの多くは頻脈を合併するため、可逆性の左室
機能不全は頻脈誘発性心筋症の関与が推測されている。しかし本症例では脈拍コントロール下においても
心機能低下が進行し、一方で甲状腺治療後は速やかに心機能が改善した経過から、甲状腺ホルモン自体の
作用関与が示唆された。
P-10-1
重症心筋炎を発症した高齢女性の一剖検例
大坂友希 1、小野裕一 1、佐藤弘典 1、宮崎徹Ⅰ、萬野智子Ⅰ
栗原顕 1、清水茂雄 1、大友建一郎 1、磯部光章 2
1
青梅市立総合病院
循環器内科、2 東京医科歯科大学
循環器内科
症例は 80 歳女性。2 日前からの腹痛、嘔気、頭痛、めまいなどを主訴に受診した。心電図ではⅠ、aVL、
V4-6 で ST が上昇し、心筋逸脱酵素の上昇を認めており、急性冠症候群の疑いで緊急冠動脈造影を施行し
たが心電図変化を説明できる病変は認めなかった。冠攣縮性狭心症による心筋梗塞や、たこつぼ心筋症、
心筋炎が鑑別として挙げられた。翌日の心電図では新たに V1,2 で ST が上昇し、心室期外収縮の多発を認
めるようになった。第 3 病日からは、血圧が低下し、エコーでは EF が低下し始め、心筋壁の肥厚、浮腫様
の変化も認めたため、心筋炎を疑った。この時点で IABP や PCPS の使用は考慮されたが、ご本人、ご家族
ともに積極的な治療は望まれず、侵襲的な治療は行わない方針とした。同日完全房室ブロックを認め、一
時的ペースメーカのみ留置したが、第 4 病日にはカテコラミン投与においても血圧低下は著明であり、EF
は 20%台と更なる低下を認めた。第 5 病日に心室細動となり、心停止となった。ご家族の同意を得て行っ
た病理解剖の結果、両心室に高度のリンパ球浸潤を伴う心筋炎を認めた。比較的急激な経過をたどった重
症心筋炎の一例について病理解剖の結果を含め、考察を交えて報告する。
78
P-10-2
CK と CK-MB の経時経過が乖離した劇症型心筋炎の 2 症例
飯田祐一郎、猪又孝元、甲斐田豊二、藤田鉄平、池田祐毅、鍋田健、石井俊輔、水谷知泰、
成毛崇、小板橋俊美、阿古潤哉
北里大学医学部循環器内科学
症例 1 は 48 歳女性。感冒症状を認め、10 日後に心不全を疑われ、当院へ搬送された。心臓超音波検査上、
左室駆出率(EF)は 55%、心嚢水を認めた。入院時に EF24%まで低下し、PCPS の導入をし、入院 3 日後に PEA
となり、入院後 12 日に死亡した。症例 2 は 49 歳女性。発熱・呼吸苦を認め、4 日後、呼吸苦を主訴に来
院したところ、EF 30% 心筋逸脱酵素の上昇を認め、全誘導の ST 上昇も認めたことから、心筋炎疑いとな
り、当院へ搬送された。来院時に EF12%となり PCPS の導入となり、11日後に死亡した。
これら 2 症例は入院時からの CK の低下と相反し、CK-MB の上昇が認めるといった特徴を認めた。過去 39
例の急性心筋炎を呈した症例の中で、心機能低下症例、または心臓死を来たした症例とその他の症例の間
での傾向を評価した。一般的にトロポニン T の経時的評価が臨床経過の予見できるとされるが、入院後早
期の評価は困難であり、その後の重症化を予見することは治療方針に影響する。入院早期の CK-MB が増加
をきたす症例に関して重症化を認めた。早期の急性心筋炎において、CK-MB の変化率は予後評価になりう
る。
P-10-3
心筋炎精査目的の生検にて診断された巨細胞性心筋炎
早瀬未紗、加藤真帆人、芳賀もなみ、黒澤毅文、磯一貴、永嶋孝一、池谷之利、深町大介、
奥村恭男、國本聡、廣高史、平山篤志
日本大学医学部内科学系循環器内科学分野
膿性扁桃腺炎と診断された。抗生剤投与にて症状は一週間で軽快したが、その後、動悸を伴う起坐呼吸が
出現、胸部単純 X 線写真でうっ血と心拡大(CTR=56%)を認め、感染による心筋炎を疑われ当院に緊急入
院となった。入院時、意識清明、血圧 92/67mmHg、脈拍 88bpm(整)
、体温 37.3℃。身体所見は軽度の下腿
浮腫を認めるのみでその他特記すべき所見を認めなかった。心電図は HR83bpm の正常洞調律、正軸、QRS
幅は narrow だが V1-4 で QSpattern、伝導障害や不整脈は認めなかった。心臓超音波検査は EF=63%、
LVDd/Ds=41/30mm。IVS/LVPW=11/14mm で壁運動異常は認めなかったが E/E’=12.9 と拡張障害を認めた。血
液検査所見は CRP=0.5mg/dL、CK=99IU/L、CK-MB=9IU/L と正常範囲内だが、トロポニン I=3.65ng/mL と軽度
上昇を認めた。右室より心筋生検を行ったところ、組織に好酸球の浸潤を伴う多核巨細胞が散見されたた
め巨細胞性心筋炎と診断された。
【考察】巨細胞性心筋炎は予後不良な心疾患である。免疫抑制治療が有効であるとの報告があるが、本症例
では炎症所見に乏しく、また、心機能も維持されているため、薬物治療を行わず厳重な経過観察を行って
いる。本症例は非常に稀な疾患でありここに報告する。
79
ポスター
【症例】28 歳女性、生来健康であった。2015 年 2 月上旬より発熱と頸部リンパ節腫脹を認め、前医にて化
P-10-4
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症に急性心筋炎を合併した一例
金田俊雄 1、栗原顕 1、佐藤弘典 1、大坂友希 1、宮﨑徹 1、萬野智子 1、
小野裕一 1、清水茂雄 1、大友建一郎 1、磯部光章 2
1
2

青梅市立総合病院循環器内科
東京医科歯科大学医学部附属病院
症例は73歳女性。2013年4月より下腿の浮腫と紫斑、足の知覚異常、夜間の咳嗽が出現した。
徐々に呼吸困難感が増悪したため同年4月23日に当院受診。胸部レントゲンで肺水腫を認め、心エ
コーで全周性の壁運動低下を認めたためうっ血性心不全と診断し緊急入院とした。また血液検査で好
酸球の増加があり CT で副鼻腔炎と両側肺野のすりガラス陰影を認め、下腿皮膚生検で真皮の血管周
囲に好酸球浸潤を認めたことより好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)も同時に診断された。心筋
逸脱酵素の上昇や心電図変化などにより EGPA に伴う急性心筋炎が強く疑われ、ステロイドパルスと
ステロイド大量療法を開始した。その後好酸球の減少と炎症マーカーの改善がみられ、経過中一時的
に心室細動が出現したがシクロホスファミドの投与と再度ステロイドパルス療法を行ったところ消
失し、全身状態も安定した。6月24日に冠動脈造影検査を行ったが有意狭窄を認めず、同時に行っ
た心筋生検では有意な所見を認めなかった。心機能障害が残存した為7月1日に ICD 植込み術を行い、
薬剤を調整したのち8月3日に軽快退院とした。EGPA に合併した心筋炎は比較的稀な疾患であり考察
を加えて報告する。
P-10-5
心筋炎を合併した好酸球性肉芽腫性多発血管炎の一例
小澤貴暢 1、野本英嗣 2、吉竹貴克 3、服部英二郎 1、澤田三紀 1、徳永毅 1、磯部光章 3
1
JA とりで総合医療センター循環器内科、国立病院機構災害医療センター循環器内科 2、
3
東京医科歯科大学大学院循環制御内科学
【症例】66 歳、男性。
【主訴】右足の感覚・運動障害。
【現病歴】2011 年 1 月に喘鳴、呼吸困難が出現し近
医で気管支喘息と診断され、副腎皮質ステロイド吸入薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬によって軽快した。
2014 年 7 月から両足趾のしびれを自覚し、8 月には左足踵部の疼痛と感覚低下、さらに右足関節以遠の感
覚消失及び運動障害が出現し当院に救急搬送され緊急入院となった。
【既往歴】高血圧、脂質異常症。【入
院後経過】頭部単純 CT、胸腰髄単純 MRI で有意な所見はなかった。神経伝導速度検査で多発単神経炎の診
断となり、成人発症の気管支喘息に加え右足底部に紫斑を認め、血液検査で好酸球数増加及び MPO-ANCA 上
昇があり、好酸球性肉芽腫性多発血管炎(EGPA)の診断となった。ステロイドパルス療法を開始したが心電
図で側壁誘導の ST 低下及び経胸壁心エコー図でびまん性壁運動低下を認めたことから心筋炎の合併が示
唆された為シクロホスファミド大量静注療法施行目的で転院となった。同院で心臓 MRI を施行され炎症性
心筋障害を認めた。【考察】本症例は心筋炎を合併した EGPA の一例であり文献的考察を加え発表する。
80
P-11-1
再発に長期間を要し、異なった発症形態、タコツボ様の収縮障害部位を
呈したタコツボ型心筋症の一例
小崎遼太 1、茅野博行 1、酒井孝志郎 1、関本輝雄 1、福岡裕人 1、宗次裕美 1、辻田裕昭 1、
塚本茂人 1、濱嵜裕司 1、小林洋一 1
1
昭和大学病院内科学講座循環器内科学講座
背景:タコツボ型心筋症の再発は 1-2%程度と報告されている。タコツボ型心筋症において、タコツボ様
の収縮障害部位は症例により様々である。しかいしその発症や障害部位の機序に関しては未だに原因が特
定されていない。
症例:70 代女性。2005 年に夫が他界、同年 10 月の水泳中に胸背部痛を自覚し当科を受診。左室造影で心
尖部領域に無収縮、心基部に過収縮を認め、タコツボ型心筋症と診断した。第 7 病日目に心エコー検査で
壁運動は正常に改善した。その後明らかなイベントなく経過していたが、2014 年 12 月食事を作っている
際に突然の胸背部痛を自覚し近医受診し心電図上Ⅱ、Ⅲ、aVF で ST 上昇を認めたことから急性冠症候群の
疑いで当科紹介受診。緊急冠動脈造影では有意狭窄は認められなかった。しかし左室造影では心室中部の
み全周性に無収縮であり、心尖部および心基部はともに過収縮を認めた。タコツボ型心筋症の再発と診断
したが、前回のタコツボ型心筋症時とは異なるタコツボ形態を認めた。第 13 病日の心エコーでは正常な完
全に壁運動は正常化したため退院となった。再発するまでに長期間を有し、発症形態、発症部位の異なる
極めて稀なタコツボ型心筋症の一例を経験したため報告する。
P-11-2
慢性期多枝冠攣縮が認められたたこつぼ型心筋症の一例
心電図変化をどうとらえるか
薄井宙男 1、池ノ内孝 1、仲村太一 1、堀真理子 1、加藤陽子 1、村上輔 1、瀬戸口雅彦 1、
山本康人 1、市川健一郎 1、野田誠 1、磯部光章 2

東京山手メディカルセンター心臓病センター循環器内科、2 東京医科歯科大学循環制御内科学
症例は 52 歳時に心房中隔欠損症手術を受けている 75 歳女性。2005 年4月 14 時頃買い物中に突然胸
痛出現。冷汗を伴った。15 時 10 分救急車で来院。来院時胸痛 1/10 と改善していたが心電図上Ⅰ,
Ⅱ,aVL,aVF,V3-6 で ST 上昇を認め緊急入院。入院時心エコー上前壁中隔中部から心尖部にかけてが無
収縮であった。16 時 15 分緊急冠動脈造影施行。この際の心電図では已然Ⅰ,Ⅱ,aVL,aVF,V3-6 の ST
上昇を認めていたが冠動脈に器質的狭窄を認めず、左室造影上左室中部から心尖部が無収縮の心尖部
バルーン様拡張を示し、たこつぼ型心筋症と診断した。最大 CK は発症2日後の 719IU/l で保存的に
加療し左室の収縮は徐々に改善。第 11 病日慢性期冠動脈造影施行。アセチルコリンによる冠攣縮誘
発試験で右冠動脈、左冠動脈ともにび漫性の冠攣縮を認め入院時の症状の再現と ST 変化を伴ったが
入院時ほど ST 変化ははっきりしなかった。今回の病態の原因を冠攣縮とした場合症状、心電図変化
などの説明がつかないと思われ、たこつぼ型心筋症の病態解明の一助となる興味深い症例と考えられ
たため報告する。
81
ポスター
1
P-11-3
難治性心室頻拍に対して高頻度心室ペーシングが有効であった、
たこつぼ型心筋症の 2 例
加藤信孝 1、沖重薫 1、後藤健太郎 1、川口直彦 1、山下光美 1、浅野充寿 1、
中村知史 1、志村吏左 1、鈴木秀俊 1、青柳秀史 1、倉林学 1、磯部光章 2
1
横浜市立みなと赤十字病院 循環器内科、2 東京医科歯科大学循環制御内科学
【目的】薬剤抵抗性の Torsade de pointes (TdP)に対して高頻度心室ペーシング(HFVP)の有効性を確認す
る。
【方法】当院で経験したたこつぼ型心筋症(TTC)の 2 症例を報告する。
【結果】症例 1 は 69 歳女性。肺炎の診断に当院入院後、同日意識消失発作をきたし、モニター心電図上心
房性期外収縮による short-long-short sequence から TdP 発生、及び心室細動(VF)への移行を認めた。心
電図上著明な QT 延長(650ms)と巨大陰性 T 波を認め、心臓カテーテル検査で冠動脈に有意狭窄病変はなく、
左室造影で TCC 様壁運動異常を認めた。TTC と診断、硫酸マグネシウムやリドカイン投与では TdP は抑制
されず、時に VF に移行する場合も複数回起こったため、
右室心尖部から 100bpm の HFVP を施行したところ、
以後 TdP は有意に抑制された。
症例 2 は 77 歳女性。脳梗塞で当院入院中、第 24 病日肺炎を契機に呼吸不全をきたし、同日夜間より TdP
を認め、徐々に頻度は増加した。心電図所見及び心臓カテーテル検査結果から TCC と診断。心房性・心室
性期外収縮から頻発した TdP は、電解質の補正や硫酸マグネシウム投与では抑制されず、右室心尖部から
110bpm の HFVP にてほぼ完璧に抑制された。
【考察】徐脈依存性の TdP ではなくとも、期外収縮から TdP をきたす TCC では、HFVP は有効であると考え
られた。
P-11-4
心サルコイドーシス活動期からの経時的変化を観察し得た一例
大谷拓史 1、木村茂樹 1、三澤透 1、水澤真文 1、早坂和人 1、山上洋介 1、小嶋啓介 1、
佐川雄一朗 1、菱刈景一 1、山尾一哉 1、中島永美子 1、杉山知代 1、中島淳 1、大久保健史 1、
田中泰章 1、高木克昌 1、桑原大志 1、疋田浩之 1、高橋淳 1、磯部光章 2
1
国家公務員共済組合連合会
横須賀共済病院循環器センター内科、2 東京医科歯科大学循環制御内科学
症例は 56 歳男性。健診での心電図異常で当院紹介となり精査中であったが、1 か月後に完全房室ブロック
に伴う眼前暗黒感を主訴に緊急入院。また入院中に持続性心室頻拍を認めた。心エコーでは左室の全周性
壁肥厚、局所壁運動低下、胸部造影 CT で両側肺門部リンパ節腫脹、Ga シンチで心筋、両側肺門部や縦隔
に異常集積を認めた。冠動脈カテーテル検査で有意狭窄なく、心筋生検では組織診断ができなかったが、
サルコイドーシスの臨床診断群と考え、後日 ICD 植え込みを行った。他臓器での組織診断やステロイド治
療を検討したが患者拒否。ACE 阻害薬、β遮断薬などを投薬するも初診から 10 ヶ月の経過で徐々に左室拡
大し EF45 から 25%に低下、中隔基部のみ壁菲薄化あり。Ga シンチ再検では異常集積の軽減を認めた。この
時点で患者の同意が得られたためプレドニゾロン内服を開始し、初期投与量 30mg/day から漸減、維持量
10mg/day としたところ、EF30%と若干の回復を認めた。サルコイドーシス活動期からの自然経過を観察し、
活動性低下後に開始したステロイドによる心機能低下の抑制効果が示唆された一例を経験した。
82
P-11-5
原発性アルドステロン症による長期的な高血圧に合併した
心サルコイドーシスの一例
石川妙 1、畔上幸司 1、村田和也 1、渡部真吾1、櫻井馨 1、篠崎倫哉 2、磯部光章3
1
新百合ヶ丘総合病院
循環器内科、2 新百合ヶ丘総合病院
腎臓内科、3 東京医科歯科大学
循環器内科
症例は 77 歳女性。夜間に突然の起坐呼吸が出現し、初回のうっ血性心不全で入院した。既往として 43 歳
時に両側性原発性アルドステロン症と診断されたが外科的治療適応がなく高血圧治療のみ行われていた。
心臓超音波検査では EF 47%、後壁の壁運動低下を認めたが冠動脈造影検査では壁運動に一致する冠動脈
狭窄を認めず、長期の高血圧に伴う高血圧性心筋症と診断した。しかし退院後も心不全入院を繰り返し、
左室収縮力の低下が進行し、非持続性心室頻拍が増悪した。病歴に 57 歳時に眼サルコイドーシスと指摘さ
れていたことが後に判明し心サルコイドーシスを疑った。PET では心臓全体に集積を認めたが心筋生検で
は組織学的な診断は得られなかった。肺門部リンパ節腫脹、心室中隔基部の軽度菲薄化、壁運動異常、Ca
値上昇、心電図異常の所見より心サルコイドーシス臨床診断群の基準を満たし、ステロイド投与を開始し
た。本症例は原発性アルドステロン症による長期の高血圧歴に心サルコイドーシスを合併した稀な症例で
あり、画像診断や組織診断では特異的な所見が得られず心サルコイドーシスの診断に難渋した一例を経験
したので文献的考察を加えて報告する。
P-12-1
空胞変性の心筋病理像を呈する肥大型心筋症の一例
鶴巻良允 1、池田奈保子 1、菅原養厚 1、和田浩 1、藤田英雄 1、百村伸一 1
1
自治医科大学附属さいたま医療センター循環器科
へ搬送された。AED の解析結果は持続性心室頻拍であった。心エコー図では左室収縮能は保たれるが
dyssyncronaus で、流出路狭窄のない左室肥大を認めていた。心臓カテーテル検査では冠動脈に有意狭窄
は認められなかったが、同時に施行し
た心筋生検では心筋細胞に空胞変性が
認められ Fabry 病の病理に酷似してい
た。しかし、血中αガラクトシダーゼ
活性は正常値であった。心室頻拍の二
次予防治療として CRTD 植込み術を施
行し退院となった。本症例は Fabry 病
に酷似する空胞変性像を認めるにも関
わらず血中αガラクトシダーゼ活性は
正常例であり、男性例では報告がなく、
文献的考察を含め報告する。
83
ポスター
兄、母と肥大型心筋症の家族歴のある 66 歳男性。通勤途中に卒倒し心肺停止となり AED にて蘇生され当院
P-12-2
後乳頭筋による Mid Ventricular obstraction を認めた一例
二宮亮 1、松田裕治 1、須藤悠太 1、星野昌弘 1、添田雅生 1、黒田俊介 1、大野真紀 1、
岩塚良太 1、米津太志 1、鈴木誠 1、松村昭彦 1、橋本裕二 1
1
亀田総合病院
循環器内科
検診で収縮期心雑音を指摘され当院受診となった。受診時心尖部に LevineⅢ度の収縮期雑音を聴取し
た。経胸壁心エコー検査では、心室中部で後乳頭筋が肥厚しており、同部位でモザイクフローを認め、
最大 39mmHg の圧較差を認めた。また、心臓 MRI を施行したところ、同様に後乳頭筋の肥厚が確認で
きた。後日、ドブタミン負荷心エコーを
施行したところ、安静時には左室内圧較
差を認めなかったが、ドブタミン負荷に
より左室中部から流出路にかけて最大
7.9m/s の圧較差を生じた。その後、自覚
症状はなく経過しているが、現在内服加
療はせずに外来で経過観察している。乳
頭筋による心室中部閉塞の報告は少なく、
ドブタミン負荷心エコー検査に加え、MRI
で形態学的評価も行った一例を報告する。
P-12-3
左室腔の減少に伴い心不全を繰り返したと考えられた
心尖部肥大型心筋症の一例
仲村太一 1、薄井宙男 1、池ノ内孝 1、堀真理子 1、加藤陽子 1、村上輔 1、瀬戸口雅彦 1、
山本康人 1、市川健一郎 1、野田誠 1、磯部光章 2
1

東京山手メディカルセンター心臓病センター循環器内科、2 東京医科歯科大学循環制御内科学
症例は 75 歳女性。60 歳頃から肥大型心筋症、心房細動、心室性頻拍などを指摘され、心不全で近医
に数回の入院歴があった。2005 年8月 23 時過ぎより動悸、呼吸苦出現したため救急来院。X-P 上肺
うっ血認められうっ血性心不全の診断で緊急入院。心電図上は心房細動で左室肥大とⅠ,Ⅱ,
Ⅲ,aVF,V3-6 で陰性 T 波を認め、心エコー上心室中部から心尖部にかけて著明に肥大し、乳頭筋より
心尖部寄りでは極端に心腔が狭小化していた。僧房弁逆流、大動脈弁逆流は軽度であった。DOA、hAMP、
利尿剤で比較的容易に心不全は改善したが、退院後も 2006 年1月、9月と心不全による入院を繰り
返した。心エコー上左室駆出率は 71%と保たれていたが一回拍出量は 24.6ml と低く右心カテーテル上
も一回拍出量は 28.6ml と心不全の原因として心腔の減少による拍出量の低下が疑われた。繰り返す
心不全に対する治療の選択肢として PTSMA を検討するため他院転院としたが、転院後心不全のコント
ロールがつかなくなり永眠した。心尖部肥大型心筋症は一般的に予後良好とされるが、肥大の進行に
よっては心不全のコントロールがつかなくなることがありうることを示唆する症例と考え報告する。
84
P-12-4
一過性脳虚血発作を契機に分娩 3 ヶ月後に周産期心筋症と診断した一例
辻内美希 1)、江波戸美緒 1)、田代一真 1)、間瀬浩 1)、藤本竜平 1)、会田健太 1)、佐藤千聡 1)、
水上拓也 1)、池田尚子 2)、田辺彩夏 1)、前田敦雄 1)、前澤秀之 1)、鈴木洋 1)
1)
昭和大学藤が丘病院
循環器内科、2)
昭和大学江東豊洲病院
循環器センター
症例は 42 歳女性。3 経妊 2 経産。妊娠 38 週 1 日で自宅分娩し、搬送されたが、特に合併症認めず退院。
分娩後 71 日目より下肢浮腫・労作時呼吸困難が出現。その後徐々に起座呼吸出現。分娩後 85 日目に突然
左片麻痺が出現し、当院に搬送。MRI 拡散強調像で右側視床から内包に高信号認め、脳梗塞と診断し、下
腿浮腫認め、肺の透過性亢進、BNP1873.6pg/ml より急性心不全と診断。心臓超音波検査では左室収縮率は
17%であった。冠動脈カテーテル検査では有意狭窄所見認めず、心筋生検でも 2 次性心筋症を示唆するよ
うな特異的所見は認められなかった。
心全加療し症状改善認めるものの、左室収縮率は改善認めず、周産期心筋症と診断した。脳梗塞に関して
は、入院後第 12 日の MRI 検査では高信号認めず、急性心不全に伴う一過性脳虚血発作と診断した。周産期
心筋症は心疾患の既往ない女性が分娩前 1 ヶ月から、分娩後 5 ヶ月までに突然心不全を発症し、拡張型心
筋症に類似した病態を示す心筋症である。今一過性脳虚血発作を契機に分娩 3 ヶ月後に周産期心筋症と診
断した一例を経験したので報告する。
P-12-5
周産期心筋症が疑われ不可逆的な完全房室ブロックを認めた一例
林洋介 1、新田順一 1、佐藤慶和 1、渡辺敬太 1、稲村幸洋 1、鈴木雅仁 1、根木謙 1
林達哉 1、佐藤明 1、大和恒博 1、松村穣 1、淺川喜裕 1
磯部光章 2
1
症例は 38 歳女性。2014 年 9 月に第 2 子を出産した。妊娠・産褥期に特に問題認めていなかった。同年
11 月ごろより労作時息切れを自覚するようになった。11 月 13 日 0 時ごろ自宅で夫と会話中にうずくまり
痙攣を発症し当院救急搬送となった。来院時には痙攣は消失していたが意識障害を認め心電図では完全房
室ブロック(HR44)を認めていた。心エコー上はびまん性に壁運動低下を認めた。同日当科緊急入院後
torsades de pointes 発症あり DC 施行後洞調律復帰となった。徐脈性によるものと考えられ緊急一時的ペ
ースメーカー留置術を施行し翌日には意識障害は改善認めた。
心エコーではびまん性の壁運動低下以外器質的異常なく冠動脈造影検査でも狭窄病変を認めなかった。
心筋シンチグラフィー(Tl+BMIPP)では中隔に集積低下を認め心サルコイドーシスも疑われたが PET-CT で
は異常集積認めず否定的と考えられた。
5 週間の経過で壁運動は改善し一過性に 2:1~3:2 房室ブロックへ改善を認めるも完全房室ブロックを繰り
返し認めたため 12 月 22 日恒久的ペースメーカー植込み術を施行した。
周産期心筋症としては不可逆的な完全房室ブロックを認め非典型的な経過と考えられた一例について報
告する。
85
ポスター
さいたま赤十字病院循環器科、2 東京医科歯科大学医学部付属病院循環器制御内科学
P-13-1
心筋生検が診断確定に有用であった心ファブリー病の一例
水澤真文 1、杉山知代 1、木村茂樹 1、三澤透 1、早坂和人 1、山上洋介 1、佐川雄一朗 1、
小嶋啓介 1、大谷拓史 1、菱刈景一 1、疋田浩之 1、高橋淳 1
1
横須賀共済病院
循環器センター内科
症例は 56 歳女性。47 歳頃より左室肥大を指摘されていた。55 歳頃より労作時息切れ・動悸を自覚し、心
エコーで求心性左室肥大・左室内圧較差を認めたため肥大型心筋症として内服加療を行っていたが、洞不
全症候群の進行を認めたため恒久的ペースメーカー植込術を施行した。心筋症精査目的で心臓カテーテル
検査および心筋生検を施行したところ、心筋細胞に空胞変性を認めたことから代謝性疾患が疑われ、白血
球中αガラクトシダーゼ A 活性低下を認めたため心ファブリー病と診断した。その後、酵素補充療法を開
始し現在まで心不全を呈さず経過している。ファブリー病は X 連鎖劣性遺伝病であるが、女性保因者でも
男性同様の心症状を呈する場合があるとされており、本症例では心筋生検が診断確定に非常に有用であっ
た。
P-13-2
左室流出路狭窄を伴う心肥大を呈した E66Q 変異による
心ファブリー病の姉妹例
及川雅啓 1、坂本信雄 1、小林淳 1、鈴木聡 1、義久精臣 1、八巻尚洋 1、中里和彦 1、鈴木均 1、
斎藤修一 1、中野創 2、竹石恭知 1
1
福島県立医科大学循環器・血液内科学講座、2 弘前大学大学院医学研究科皮膚科学講座
症例は 66 歳女性。胸部不快感を主訴に近医受診し閉塞性肥大型心筋症疑いにて当院紹介となった。心エコ
ーでは両室肥大と 60 mmHg の圧較差を伴う左室流出路狭窄を認め、心筋生検にて心筋細胞の空胞化と PAS
染色陽性の沈着物、電子顕微鏡検査にて Zebra body が確認された。αGLA 活性は正常範囲であり、遺伝子
解析において E66Q 変異が同定された。皮疹、腎機能障害など他臓器の所見は認められないため、心ファブ
リー病と診断した。本症例の妹も 50 歳時より左室肥大と約 100mmHg の圧較差を伴う左室流出路狭窄を認め、
閉塞性肥大型心筋症とされていたが、姉の診断をきっかけに遺伝子解析を行ったところ E66Q 変異を認め、
心ファブリー病と診断した。現在 E66Q 変異の病因性については議論があり、治療を必要としない症例も多
いとされるが、本例のように E66Q 変異を持ち、αGLA 活性低下が認められないにも関わらず、心ファブリ
ー病を発症する場合もあり、E66Q 変異が心臓にもたらす影響を考察する上で興味深い症例と考えられた。
尚、本研究は厚生労働省「特発性心筋症に関する調査研究」における個別研究として実施した。
86
P-13-3
複数のモダリティーにて血管内皮機能障害が証明された Fabry 病の1例
泉家康宏、中西信博、坂本憲治、辻田賢一、山本英一郎、山室惠、
田中朋子、小島淳、海北幸一、掃本誠治、小川久雄
熊本大学医学部附属病院
循環器内科
【症例】59 歳、女性。【主訴】胸部症状の自覚無し。左室肥大の原因精査目的。【現病歴】症例は陳旧性
脳梗塞、関節リウマチ、発作性心房細動、高血圧症にて近医通院中であり、以前より左室肥大を指摘され
ていた。平成 25 年、弟が Fabry 病と診断され酵素補充療法が開始となった。家族歴検索のため症例の酵素
活性と遺伝子検査を行ったところ、血清α-ガラクトシダーゼ活性の低下と遺伝子変異を認め、Fabry 病が
疑われた。今回、左室肥大の原因精査目的で当院紹介入院となった。血清 BNP は 572.1mg/dl と高値であり、
心臓造影 MRI にて心室中隔優位の左室壁肥厚と前壁領域の造影遅延像を認めた。また、123-BMIPP と 201-Tl
心筋 SPECT にて代謝-血流のミスマッチ所見を認めたことと、ATP 負荷冠動脈 3D-CT にて心臓 MRI で造影遅
延像を認めた領域に一致した灌流低下を認めたことから、冠微小循環障害に起因する心筋虚血が示唆され
た。Endo-Pat 2000 による血管内皮機能検査においても著明な内皮機能低下を認めた。さらに冠動脈造影
時に施行したアセチルコリン負荷試験にて、胸部症状・心電図変化・心筋乳酸産生を伴う冠動脈攣縮が認
められた。【考察】Fabry 病においてスフィンゴ糖脂質は心筋細胞のみならず内皮細胞にも蓄積し、内皮
機能障害の原因となることが知られている。今後、酵素補充療法を行い、血管内皮機能を含めた心機能改
善効果を検討する予定である。
P-13-4
Leber 病に ATTR 型心臓アミロイドーシスを合併した1症例
広瀬愛 1、坂本央 1、大津圭介 1、澤田潤 1、蓑島暁帆 1、
片山隆行 1、田邊康子 1、竹内利治 1、赤坂和美 1、長谷部直幸 1
1
旭川医科大学
循環・呼吸・神経病態内科
変異を認め、Leber 病と診断された。70 歳時より心肥大と心不全を指摘されて精査。左室および右室のび
まん性肥厚、左室収縮能の低下と拡張障害を認めた。心 MRI では両室の心内膜側中心に高度遅延造影、心
内膜下心筋生検ではアミロイド沈着を認め、免疫染色所見より ATTR 型心アミロイドーシスと診断(胃十二
指腸・直腸生検ではアミロイド沈着はなし)。遺伝子検査にて TTR 遺伝子に変異は認めず FAP は否定された。
完全左脚ブロックと心室頻拍を合併し、β ブロッカー・Ⅲ群抗不整脈等の内服と CRT-D 治療を併用した。
Leber 病に ATTR 型心アミロイドーシスを合併した報告はこれまでになく、文献的考察を加えて報告する。
87
ポスター
症例は 74 歳男性。12 歳時に両側高度視力障害が出現し、遺伝子検査にてミトコンドリア DNA11778 塩基の
P-13-5
治療抵抗性心不全のため救命し得なかった心アミロイドーシスの1例
山口正男 1、稲垣裕 1、羽田昌浩 1、重田卓俊 1、谷中妙子 1、藤波竜也 1、
石丸剛 1、岡田寛之 1、土信田伸夫 1、高元俊彦 1、村田健 2、磯部光章 3
1
草加市立病院
循環器内科、2 草加市立病院
血液内科、3 東京医科歯科大学医学部付属病院
循環器内科
[抄録]50 歳代女性。既往なし、健診で異常を認めなかった。H25 年 11 月労作時の息切れにて近医を受診し
心不全と診断され、以降 2 度の入院加療を行った。心筋症と診断されたが特に精査は行われなかった。H26
年 11 月頃症状が増悪し、治療抵抗性であり H27 年 1 月に当院に転院となった。心電図にてⅡ、Ⅲ、aVF、
V5-6 で平低 T 波、全誘導で低電位を認めた。心エコーにて拘束型の左室拡張障害、左室肥大、低左心機能
を認めた。血清 M 蛋白は陰性であったが、尿中 BJ 蛋白は陽性であり AL 型心アミロイドーシスが疑われた。
全身状態が不良であり心筋生検は困難であったが、骨髄穿刺にて異常は認めなかった。徐々に状態が悪化
し第 22 病日死亡を確認した。剖検にて心筋細胞間や心筋内の血管壁にアミロイド蛋白の沈着が認められ、
他臓器にアミロイドーシスの沈着は認めなかった。
[考察]心アミロイドーシスは予後不良であるが、治療として自己末梢血幹細胞移植により AL 型心アミロイ
ドーシスの予後改善が得られるとの報告もあり今まで以上に早期診断が望まれている。拘束型の左室拡張
障害例では常に心アミロイドーシスを鑑別診断に入れておくことが重要である。
P-14-1
TMEM43 の変異が同定された left dominant arrhythmogenic cardiomyopathy
の一例
宮崎宏一 1)、井上裕之 1)、西田博毅 1)、安村かおり 1)、古川哲生 1)、坂口大起 1)、篠内和也 1)、
三浦弘之 1)、小出雅雄 1)、安部晴彦 1)、伊達基朗 1)、是恒之宏 2)、楠岡英雄 1)、大野聖子 3)、
堀江稔 3)、池田善彦 4)、安村良男 1)
1)独立行政法人
国立病院機構
大阪医療センター
循環器内科
2)独立行政法人
国立病院機構
大阪医療センター
臨床研究センター
3)滋賀医科大学
呼吸循環器内科
4)国立循環器病研究センター
病理部
43 歳男性。某日に動悸が持続するため近医を受診、心室頻拍(VT)の疑いで当科を受診した。血行動態は保
たれていたが VT は持続、薬理学的除細動では停止せず電気的除細動にて洞調律に復した。その後の心臓超
音波検査にて左室機能低下を認め精査のため入院となった。心臓カテーテル検査では冠動脈に有意狭窄は
なかったが LVEF の低下と心尖部に瘤形成を認めた。右室心筋生検では二次性心筋症が疑われた。心臓 MRI
では右室機能の低下や脂肪変性は認めなかったが、左室の脂肪変性と左室心尖部に石灰化を伴う瘤形成を
認め、左室優位の不整脈源性右室心筋症(ARVC)が鑑別に挙がった。遺伝子検索では ARVC5 の原因遺伝子で
ある TMEM43 の変異が本人、父、兄から同定された。ARVC において左室優位に障害が出現する場合は left
dominant arrhythmogenic cardiomyopathy(LDAC)と呼ばれる。TMEM43 変異を伴った LDAC は我々の検索
では見いだせなかった。危険な不整脈を伴う左室機能低下症例では LDAC も鑑別に挙げる必要がある点で教
訓的な症例と考え、臨床像とともに報告する。
88
P-14-2
若年発症した不整脈原性右室心筋症の 2 例
森浩輝、清水美妃子、朴仁三、中西敏雄
東京女子医科大学病院
循環器小児科
【背景】不整脈原性右室心筋症(ARVC)は主として 30-40 歳で発症する遺伝的心筋症として知られている。
若年発症に関わる素因は明らかになっていない。若年発症した ARVC の2症例で共通の遺伝子変異を認めた
ため報告する。
【症例】症例1:14 歳男児、13 歳時に運動時の失神で発症し、発症約 1 年後に突然死した。
症例2:12 歳男児、9 歳時に学校心臓検診で心電図異常を指摘され診断。心室頻拍に加え、重度の左心不
全症状もみとめ、発症後約1年半で心臓移植に至った。
【方法】この2症例において ARVC に関連する以下の遺伝子に関して変異の有無を検討した:Plakophilin
2(PKP2), Desmoplakin (DSP), Desmoglein 2(DSG2), Desmocolin 2(DSC2), Transmembrane 43(TMEM43)。
全ての症例で DSG2 に同一の変異(Asp494Ala)をみとめた。症例1ではホモ接合であり、症例2ではヘテロ
接合であった。また、症例2では TMEM43 にも変異をみとめた。
【結論】DSG2(Asp494Ala)は ARVC の早期発症に寄与している可能性がある。
P-14-3
ファロー四徴症術後遠隔期に頻脈誘発性心筋症による
左心不全をきたした 2 症例
小板橋俊美、猪又孝元、甲斐田豊二、藤田鉄平、飯田雄一郎、鍋田健、池祐毅、石井俊輔、
前川恵美、柳沢智義、成毛崇、水谷知泰、阿古潤哉
北里大学循環器内科学
【背景】ファロー四徴症(TOF)の術後遠隔期の病態において、肺動脈弁逆流による右心不全や遺残症による
心不全は一般的であるが、左室収縮能低下は稀とされている。
【症例 1】27 歳、男性。TOF の診断で、3 歳時に心内修復術を施行。術後 24 年時に NYHA4 の両心不全で入
院となった。右心系の拡大に加え、左室駆出率(LVEF) 30%と左室収縮能低下を認めた。入院時心拍数 105bpm
の心房粗動(AFL)を認め、電気的焼灼術(ABL)にて洞調律に復した。3 ヶ月後の心エコー図では LVEF60%
と左室収縮能の改善を認めた。
【症例2】31 歳、男性。極型 TOF の診断で 1 歳時より 4 回の手術を受けた。最終手術から 14 年後、NYHA4
の両心不全で入院となった。入院時心拍数 120bpm の AFL を認め、LVEF は 30%であった。ABL にて洞調律
に復し、2 か月後には LVEF47%に改善した。
【考察】この 2 症例ではβ遮断薬以外の心不全治療薬と頻脈性不整脈の治療のみで左室収縮能の改善を認
めており、AFL による頻脈誘発性心筋症と考えられた。TOF に合併する左心収縮能低下は稀で機序も不明と
されてきたが、術後の心房性頻脈性不整脈は多くみられ、不整脈への積極的介入により左室機能の改善を
認める可能性がある。
89
ポスター
1
P-14-4
多発性血管炎合併好酸球性肉芽腫症治療 7 年後に心室頻拍を繰り返した一例
渡辺敬太 1、新田順一 1、林洋介 1、佐藤慶和 1、稲村幸洋 1、鈴木雅仁 1、
根木謙 1、林達哉 1、佐藤明 1、大和恒博 1、松村穣 1、淺川喜裕 1、磯部光章 2
1
さいたま赤十字病院
循環器科、2 東京医科歯科大学医学部附属病院
循環制御内科
【症例】症例は 68 歳男性。57 歳時に多発性血管炎合併好酸球性肉芽腫症の診断にてステロイド加療を行
われた既往があった。66 歳時に血行動態の破綻した心室頻拍みられ救急搬送された。心臓超音波検査上左
心機能は全周性に低下しており、冠動脈造影・ガリウムシンチ・PET-CT 検査を施行も明らかな異常所見は
みられず、心臓 MRI 検査では T2 脂肪抑制像において左室後側壁の心内膜側に高信号域がみられた。原因不
明の心室頻拍に対して ICD 植込みを施行し経過をみられていたが、心室頻拍に伴う ICD 作動が頻回にみら
れるようになりカテーテルアブレーションを施行した。心内膜側からの焼灼では心室頻拍の抑制には至ら
ず、心外膜側からの治療にて心室頻拍の停止を認め、その後心室頻拍の出現はみられなくなった。原因に
関しては定かではないが、多発性血管炎合併好酸球性肉芽腫症の治療後であり随伴する心筋症によるもの
が最も考えられた。
今回は多発性血管炎合併好酸球性肉芽腫症の治療後、遠隔期に心室頻拍の出現を認めた好酸球性心筋症疑
いの一例を経験したため報告する。
P-14-5
心臓造影 MRI による瘢痕基質の同定が
心室頻拍のアブレーションに有用であった心筋症の一例
増村麻由美 1、高橋良英 1、岩井慎介¹、山本佑¹、土居淳一¹、榊原温志¹、吉田善紀¹、
野本 英嗣¹、杉山知代¹、近江哲生¹、大野正和¹、野里寿史¹、佐藤康弘¹、磯部光章 2
1
災害医療センター 循環器内科、2 東京医科歯科大学
循環制御内科学
【背景】心臓 MRI にて遅延造影陽性を呈した部位は心室頻拍(VT)の基質となる。
【症例および経過】73 歳男性。運動時に心拍数 200bpm の右脚ブロック、左軸変位、上方軸の VT を認めた。
冠動脈に有意狭窄を認めず、EF 59%と心機能は良好であったが、心臓 MRI にて心基部から心尖部後下壁に
かけて心外膜側に線状の遅延造影を認め、心サルコイドーシスが疑われた。
本症例において、VT に対するカテーテルアブレーションを施行した。まず心内膜側をマッピングすると、
左室後下壁に限局した低電位領域を認めたが、高周波通電は無効であった。心外膜側からもマッピングを
追加で施行したところ、左室後下壁に広範な低電位領域が確認でき、VT 中の拡張中期電位も記録された。
同部位への通電にて VT の停止に成功し、その後、約 2 年間持続性の VT を認めずに経過している。
【考察】本症例では、心臓 MRI にて心外膜側よりに遅延造影を認め、心外膜側からの高周波通電が有効で
あった。心臓 MRI による遅延造影部位の詳細な検討が VT アブレーションに有効である可能性が示唆され
た興味深い一例を経験したので報告する。
90
P-15-1
低カルシウム血症の補正が奏功した拡張型心筋症様心不全の一例
青木華古、宮地浩太郎、名倉福子、三角香世、武城怜史、門岡浩介、サッキャ・サンディーブ、
早川直樹、鈴木洋輝、小寺聡、石脇光、佐藤寿俊、櫛田俊一、神田順二
発表者所属
国保旭中央病院
循環器内科
共著者所属
国保旭中央病院
循環器内科
症例は 45 歳男性。2014 年 9 月に喘息で前医を受診、その際 Ca7.7mg/dl と低値であった。2015 年 2 月に感
冒を契機に一週間の経過で呼吸苦が増悪し受診。レントゲン上肺水腫を認め、visual assessment による
EF は 20%程度、血液検査上肝・腎機能障害と BNP 値の高値を認め左室収縮能低下による両心不全の診断で
入院となった。収縮期血圧は 90mmHg と低く、カテコラミンの投与を行い状態は軽度改善、その後の検査上
Ca5.7mg/dl と低値であったため低カルシウム血症による低収縮性の心不全と判断し補正を開始した。経過
中には利尿剤の投与は行わなかったが 2 週間の経過で EF45%まで改善した。精査の結果低カルシウム血症
は特発性副甲状腺機能低下症と診断した。低カルシウム血症では心不全発症時は Ca 補正無しでは薬剤抵抗
性となることも報告されており、早期の介入が重要であること、また心不全症状なく偶然認めた場合であ
っても精査することがその後の増悪予防のために必要と考えられた。
参考文献
1.Konstantinos M. et al. Irreversible end-stage heart failure in a young patient due to severe
chronic hypocalcemia associated with primary hypo prarathyroidism and celiac disease. Clin. Cardiol.
2010;33,2,E72-E75
2.Hasan A. et al. Hypocalcemic cardiomyopathy due to untreated hypoparathyroidism. Horm Res
2003;59:201-204
P-15-2
ミトコンドリア病に伴う心筋症 2 症例の検討
的場孝盛 1、吉川俊治 1、平澤憲祐 1、植島大輔 1、小西裕二 1、篠岡太郎 1、小菅寿徳 1、
前嶋康浩 1、足利貴志 1、磯部光章 1、鈴木基弘 2
1
東京医科歯科大学医学部附属病院循環器内科、2 東京医科歯科大学医学部付属病院神経内科
mtDNA3243 変異からミトコンドリア病と診断された。46 歳で非持続性心室頻拍と求心性左室肥大を認め心
合併症と診断された。amiodarone、bisoprolol 内服開始し心イベントなく経過している。
【症例 2】52 歳
男性;幼少時より低身長、27 歳糖尿病、30 歳難聴、42 歳うっ血性心不全を指摘された。51 歳心不全の増
悪で入院し、既往からミトコンドリア病が疑われた。心筋生検では赤色ぼろ線維様の変性心筋線維を認め、
筋力低下、小脳萎縮像、血清乳酸値高値からミトコンドリア病と臨床診断した。遺伝子検査は結果待ちで
ある。房室ブロックと心室頻拍を合併し除細動機能付き両心室ペースメーカー植込み術を施行した。
【考察】
ミトコンドリア病はミトコンドリア DNA 遺伝子変異を原因とし、複数のサブタイプが存在し心筋症合併も
認める希少な遺伝性疾患である。自験 2 例では成人期に心筋症が顕性化し病状進行に伴い心室性不整脈が
出現した。予後改善のため薬物治療に加えてデバイス治療が有効である可能性があり経過観察を継続して
いる。
91
ポスター
【症例 1】47 歳女性;31 歳慢性腎炎で透析導入、同時期より難聴が出現し家族歴より遺伝子疾患が疑われ、
P-15-3
ラミン関連心筋症の4症例
柏村健、藤木伸也、渡辺達、林由香、小幡裕明、塙晴雄、南野徹
新潟大学医歯学総合病院

循環器内科
【目的】ラミン関連心筋症の臨床的特徴を確認すること。【方法】当科で経験した4症例のカルテを
確認した。【結果】(症例1)26 歳女性。21 歳時に洞徐脈と二度房室ブロックをみとめ、25 歳時に心
房頻拍に対してカテーテル焼灼術を受けた。翌月に洞徐脈と前失神症状がありペースメーカーを埋め
込んだ。3 か月後、左室駆出率 43%と低下をみとめ、その 2 か月後、うっ血性心不全の診断で入院し、
利尿薬や強心薬で治療を行うも、肝腫大や腹水などの右心不全症状のコントロールに難渋している。
(症例2)59 歳男性、剖検例。43 歳時に洞不全症候群でペースメーカー埋め込み、49 歳時に左室駆
出率 30%と低下し、54 歳で永眠された。
(症例3)62 歳女性、剖検例。40 歳で心房細動、45 歳時に完
全房室ブロックでペースメーカー埋め込み。59 歳時には左室駆出率 37%に低下し、61 歳時に倦怠感と
食欲低下で入院したが 62 歳で永眠された。
(症例4)症例2の娘、44 歳。洞徐脈と下腿浮腫がみられ
る。【考察】ラミン関連心筋症は、洞不全や房室ブロック、心房性不整脈で発症し、次第に心室の収
縮能低下をきたし、右心不全優位の臨床像を呈し治療に難渋する。
P-15-4
偏食と利尿薬により引き起こされたと考えられる脚気心の一例
吉岡賢二 1、岩塚良太 1、松田裕治 1、須藤悠太 1、二宮亮 1、星野昌弘 1、添田雅生 1、黒田俊介 1、
大野真紀 1、米津太志 1、鈴木誠 1、松村昭彦 1、橋本裕二 1
1
亀田総合病院
循環器内科
冠攣縮性狭心症の診断で外来にて薬物加療が行われていた 71 歳男性。3 週間前より硝酸薬が無効な左前胸
部絞扼感を訴え頻回に外来を受診されるようになり、胸水も貯留傾向で心不全として薬物加療を強化した
が、症状の改善が乏しいため精査加療目的で入院となった。心エコーでは拡張障害以外に特記すべき所見
はなく、利尿薬増量にて心不全加療を行ったが、難渋した。また、入院経過中に進行性の両下肢の筋力低
下、感覚障害も出現し、原因不明であったが、その後ビタミン B1 値が 9mg/ml と著名な低値であることが
判明した。ビタミン B1 投与後は循環動態の改善を認め、心不全症状も急速に改善した。下肢筋力低下、感
覚障害も改善し、経過良好で退院となった。ビタミン B1 欠乏の理由としては、肉類を食べない偏食傾向が
あったことと、外来で利尿薬投与がされていたことが影響したと考えられた。本症例は典型的なビタミン
B1 欠乏による脚気及び脚気心の経過を辿っていたが、採血結果が出るまで診断に至らなかった症例である。
脚気心は有名な疾患でありながら診断が遅れる可能性のある疾患である。文献的考察を加え、症例の検討
を行い報告する。
92
P-15-5
心臓移植申請時の鑑別診断に難渋した重症心不全の一例
澤村昭典 1、奥村貴裕 1、近藤徹 1、平岩宏章 1、古澤健司 1、一居武夫 1、青木聡一郎 1、
渡邊直樹 1、加納直明 1、深谷兼次 1、森寛暁 1、森本竜太 1、坂東泰子 1、森本紳一郎 2、室原豊明 1
1

名古屋大学大学院医学系研究科
循環器内科学、2 総合青山病院
循環器内科
症例は 48 歳男性。父親と父方祖母、叔母に心不全死の家族歴を認めた。 生来健康であったが 41 歳
時に心不全を発症し拡張型心筋症と診断された。3 回目の心不全入院時に INTERMACS2 となったため心
臓移植申請目的に当院へ転院となった。転院時の心臓超音波検査では、左室拡張末期径は 64mm と拡
大し、左室駆出率 16%と左室壁運動低下を認めた。CT にて縦隔リンパ節の腫大を認め、サルコイド
ーシスも鑑別に挙げられた。67Ga シンチグラムでは心室中隔に異常集積を認めたものの、FDG-PET で
は特異的な所見を認めなかった。また他科診察においても全身に特異所見は認めず、心内膜下心筋生
検にて肉芽腫性変化は認めなかったことからサルコイドーシスの診断基準は満たさなかった。しかし
同じく心筋生検において心筋線維の錯綜配列を認めたため、拡張相肥大型心筋症として申請を行った。
その後血縁者の精査を行った所、無症状ながら 19 歳の長男に心室中隔の非対称性肥大を認め、肥大
型心筋症と診断された。本症例は拡張型心筋症様を呈していたものの濃厚な家族歴を有している点は
肥大型心筋症が示唆され、診断における問診の重要性を示す一例であった。
ポスター
93