「目的」、「見える化」、「現場・現物・現実」 ワイヤ

講義の目的
三重大学人文学部特別講義資料
• この講義の目的は皆さんに何かを感じ取ってもらい、そ
れを実行に移す事によって業務の質を向上させる事です。
• 内容は当たり前の事の中から大切と思う事を選び出した
もので、目新しい事はありません。
• 「なるほどな」と感じたところがあれば実際に表現・行
動してもらう事が大切です。
「目的」、「見える化」、「現場・現物・現実」
-自動車用ワイヤ・ハーネスを題材にして-
• あなたのお客様は誰ですか?
• あなたはそのお客様にどんなサービスをする事でどんな
役に立っていますか?
2006年11月24日
村上 一仁
住友電装株式会社
• このような観点から自分の業務を定義付けして下さい。
<by Kazuhito Murakami>
1
<by Kazuhito Murakami>
ワイヤ・ハーネス(W/H)とは
講義の内容
(英語では wiring harness)
• 第1部:「目的」を明確にして業務(学業)に取り組もう
• 第2部:「見える化」を進めよう
• 第3部:「現場・現物・現実」をよく見よう
トヨタ生産
システム
もし、時間があれば
(TPS)の基本
要素の一部
• 第4部:自動車産業の大きな流れ
From Mass Production to Lean Production
<by Kazuhito Murakami>
3
<by Kazuhito Murakami>
2
馬車馬の引具 = 背、
腹、腰に巻きつけ
る皮バンド、サド
ル、止め具など馬
の体につけられる
部品一式
4
W/Hの役割
自動車のW/Hの種類
(品質展開的に示すと)
W/Hの役割は、変化する環境下において、
定められた期間、外部に悪影響を与える
事無く、或いは外部から影響に妨げられ
る事無く、車両内のある点から他の点ま
で電力 and/or 信号を安定に伝達する事。
接続信頼性を確保するために上記要因を
物理的/化学的に把握し、特性との関係
を明らかにし、それを設計要件にまで昇
華させる必要がある。
•
エンジンルーム・ハーネス
車室内ハーネス
カウルワイヤ
J/B
ルーフワイヤ
E/Gルームメインワイヤ
E/Gワイヤ
カウルワイヤ
•
フロアワイヤ
・
A
フロアNO.2ワイヤ
バッテリーケーブル
ラゲージワイヤ
B
E/M Noise
J/B
C
E/M Noise
5
<by Kazuhito Murakami>
•
•
•
•
•
•
•
車が使われる場所/気候
車両内の場所
水
空気
環境汚染物質
振動/屈曲
温度
•
•
電流容量
信号伝送容量
•
•
•
•
半田付け
溶接
圧接
圧着
•
•
ノイズ許容限界(発生、受容)
Etc.
現象解明⇒
接続信頼性
•
•
•
酸化・腐食
応力緩和
摩耗 etc.
6
<by Kazuhito Murakami>
06-07-11日経
主要国の自動車生産台数
欧米系と日系の自動車メーカとサプライヤの関係比較
欧米系
日系
長期的、協調的関係
短期的、対立的関係
突然の発注先変更
部品メーカの中身に迄
口出しされたくない
強い価格交渉力を背
景とした価格設定 ⇔
訴訟
Vehicle
Manufacturer
1st.-tier
Suppliers
2nd.-tier Suppliers
・
・
・
3rd.-tier Suppliers
協豊会(Working Groups)、
晶宝会、宝会
Resident Engineerの貢献:
早期開発参画
重大品質問題発生時の自動
車メーカによる監査・指導
(注)各国自動車工業会のデータなどを
もとに作成。力ッコ内は今年 1 - 6 月の
生産台数、日本のみ 1 - 5 月分
1st.-tier supplier と
2nd.-tier supplier の間
にも類似の関係がある
<by Kazuhito Murakami>
06-05-11日経
7
<by Kazuhito Murakami>
8
自動車部品事業を通じて感じる不安要素
•
•
•
•
拡大する業務を遂行するための人材不足(質、量、分布)
海外生産におけるコスト上昇(人件費単価、能率低下、在庫率)
利益率の低下
品質問題
第1部:「目的」を明確にして業務(学業)に取り組もう
中略
06-11-15日経
<by Kazuhito Murakami>
11
目的を明確に示す事の効果
• 最近、国立大学も独立法人化により
積極的な動き・議論が活発化
⇒目的・役割は時代背景と共に変化
させなくてはならない
三重大学豊田学長
「三重から世界へ:地域に根ざし、世界
に誇れる独自性豊かな教育研究成果を生
み出す。~人と自然の調和・共生の中で
~」
目的が明確に示されなければ・・・
判断基準が不明確になる。(各々が勝手な判断を下す。)
多くの関係者の意識、方向性を揃える事ができない。
「場当たりな目標設定」ができ、トレースと評価が困難。
早めの軌道修正ができない。
目的と手段の履き違えが発生し易くなる。
<by Kazuhito Murakami>
14
大学の存在目的・役割は何?
• 「目的は・・・」とハッキリ示す事で正しい判断を期待
できる。
• 多くの関係者の意識、方向性を揃える事ができる。
• 「より具体的な目標設定」ができ、トレースと評価が容易
になると共に、プロジェクトの改廃を含め軌道修正が必
要な事態を検知し易くできる。
•
•
•
•
•
<by Kazuhito Murakami>
• 学生の皆さんには是非、各自の就学
目的について考えて頂きたい
⇒有意義な学生生活を送って頂き次
の人生に活かして頂きたい
06-10-23 日経新聞広告欄
15
<by Kazuhito Murakami>
16
住友電装グループの基本理念
住友の事業理念 (1928年)
私たちは “Connect with the Best”の精神で、
1. 我住友の営業は信用を重んじ確実を旨とし以てそ
の強固隆盛を期すべし。
2. 我住友の営業は時勢の変遷理財の得失を計り弛緩
興廃することあるべしと雖もいやしくも浮利に趨
り軽進すべからず。
•
•
•
•
•
注:「強固」は「しっかりして動かない」と
いう意味であるが、原文には当用漢字
に無い「きょう」が用いられていたのでこ
こでは同じ意味を持つ「強」を充てた。
活動方針: 速く(Speedy) 変える(change) 結果を出す(Better results)
重大/困難な局面では素より、常に、基本理念に
照合して方針を確認する。
オムロン
• 明確なターゲットの設定
• 人材の育成
• 企業文化の浸透
事業目標: 2010年W/Hの世界シェア20%達成
17
<by Kazuhito Murakami>
マネジメントの役目
社業の繁栄を通じて地域社会に貢献します。
質の高い活動により顧客満足を実現します。
創造と変革により企業の未来を拓きます。
誠実と信頼を基本に高い企業倫理を保持します。
個性を尊重し活力溢れる企業文化を育みます。
<by Kazuhito Murakami>
19
石原副社長
第2部:「見える化」を進めよう
• ヒト(他人・人間)に対する興味
• 自律(自立)の精神
• 本音の追求
道草
優秀な企業の要素
• 明確なゴール
• 変化に対する戸惑いの少なさ
先を見越しての検
討が出来ている。
中・長期計画
「人は理解の程度を超えて共感する事はでき
ない。共感は理解に制約されるものであ
る。」(小泉八雲:「日本の心」より)
・・・チームは共感が得られた時、最大の力を
発揮することが出来るのではないか
<by Kazuhito Murakami>
20
<by Kazuhito Murakami>
21
注文をとる
企画
マーケティング,競合分
析
開発
製品,製造工程,製造設
備,材料,使用方法
量産準備
人材確保・育成,設備,
調達,販売ルート
材料を仕入れる
競争的環境 物を造る
加工する
売る
出荷する
量産
代金を回収する
<by Kazuhito Murakami>
どれだけ速く目標通りに進められる
かどこに特徴・強みを持たせるか
技術開発とはどんなことか
製造業とはどんなことか
品質(Quality),原価
(Cost),納期(Delivery)
22
<by Kazuhito Murakami>
23
住友電装での「見える化」(例)
見えれば 良くなる
各国の言葉に置き換え
て掲示(海外30カ国95社)
・悪さ加減の 「見える化」
5S
整理
・見えないものの 「見える化」
整頓
清掃
・アクションのとれる 「見える化」
清潔
躾
<by Kazuhito Murakami>
24
<by Kazuhito Murakami>
25
自動車メーカとのロードマップ作りは重要
W/Hの受注から量産までの流れ
RFQ
受注活動(1)
要素技
術開発
車両ベンチ
マーキング
-36~-24月
技術の
データベース
受注活動(2)
(コンペ)
プレゼンテーション
提案活動(固有車種)
見積り
提案活動
(ロードマップ)
M/L
-24~-18月 製品開発
設計
設備開発
生産準備
L/O
SOP
生産準備状況確認
技術移管
設計変
更対応
本講義の主な対象
RFQ: requirement for quotation
M/L:
maker lay out
L/O:
line off
受注活動(1)
要素技
術開発
SOP: start of production
これら用語は顧客毎に異なる
<by Kazuhito Murakami>
科学技術の新しい動向
プレゼンテーション
提案活動(固有車種)
見積り
設計
設備開発
提案活動
(ロードマップ)
26
生産準備
-24~-18月 製品開発
(コンペ)
-36~-24月
技術の
データベース
車両ベンチ
マーキング
L/O
SOP
生産準備状況確認
技術移管
設計変
更対応
本講義の主な対象
27
<by Kazuhito Murakami>
図4.受注活動から量産終了までの業務の流れ
先を読んで着手するという事はどういう事か
世の中の関心はどこ
に向いているか
時間経過
漠然とした市場
変化、新技術
• 急速に発展しつつある領域
臨床医学、化学、物理学に多い
学際的・分野融合領域
• 社会的、経済的インパクトの大きい領域
科学技術基本計画第2期(2001~2005)重点分野
(バイオ、IT、環境、ナノテクノロジー)
環境問題と安心・安全
• 国際動向に関わる要素
アメリカの戦略強化
EU諸国の協調
中国、韓国の台頭
<by Kazuhito Murakami>
• トヨタは常にサプライヤーに新しい提案を持ってこさせている。
自動車の高機能化の進展
• 日産と住友とで進めている2015年までのロードマップ作りには
両者の技術・開発の責任者が参加しスタンスを確認しながら進
めている。
• 総じて非日系顧客(GM, Ford)はこれらに無関心:コスト低減、
品質向上、商品価値向上は使い古した陳腐化した技術のみでは
限界に到達する事は明白。Big-3の凋落は早くから予測されてい
た事。
• 新要素の取り込みには供給する側とされる側の信頼関係が不可
欠。
RFQ
M/L
受注活動(2)
自動車:10~15年
の見通しが必要
需要変化
予測
最終顧客の
要求顕在化
最終メーカー
の要求顕在化
市場投入
後発
緊急開発
サプライヤとし
ての検討着手
提案
活動
開発
先を読むべき対
象は顧客動向の
みでなく体制、人
材育成も含めた
見方が必要
対応体制、独自デザイン、
規格、自社部品採用、知
的財産権etc.で先行する。
28
<by Kazuhito Murakami>
29
事業開発に着手した目的
NTTの市場予測データ
企画書はプロジェクトの見える化の手段
目的
目標
実行計画(短期/中・長期)
市場・顧客の期待の分析
自社の抱える課題の分析
改訂作業
加入者数
•
•
•
•
•
•
・市場が成長した段階でも十分
に収益を上げることができる事
業を育てる
目的の共有
High-speed broadband digital
network (Optical fiber)
合意形成
Digital Network
Analog network
問題点・環境変化を早期に把握し迅速な対応を図る。
Digital exchange
Crossbar exchange
Key words
Integration, Scope, Time, Cost, Quality, Human Resource,
Communication, Risk, Procurement
<by Kazuhito Murakami>
1990
1995
2000
30
2005
<by Kazuhito Murakami>
2015
31
目的達成のためにはシナリオ(企画書)が必要
製品には寿命がある⇒早くしないと意味がない
原価低減にも理論的アプローチが必要
設備投資には長期的計画性が必要
新製品,新技術の事業化の次の段階
投資の回収と再投資
そのためには
↓
将来の姿を描く構想力が必要
広い知識と関心を持つこと
・単発に終わらせない
あるいは
・継続的発展ができる
ことが必要
先発メーカのコスト
後発メーカのコスト
<by Kazuhito Murakami>
35
<by Kazuhito Murakami>
36
最近の産業界の動き
第3部:「現場・現物・現実」をよく見よう
-理論と実践の両方が大切-
• 事業展開の迅速化
• システムの大規模化(グローバル化等)/複雑化
• 経営リスクの拡大
• 開発の効率化(費用・期間・人材)
• ベクトルを揃えて同時並行で後戻りのない開発が
求められる
⇒Concurrent Engineering(必要な技術要素を並行
して開発する技術思想)の必要性が高まっている。
37
<by Kazuhito Murakami>
「強い現場」がメーカーの原点
Quick
Response
事実
42
事実は 社長よりエライ!
「ピカピカ行動」(確かな実行)
改善
<by Kazuhito Murakami>
維持
・全ての事実は 現場にあり
遵守
強い現場
TPS
・「見たのか?」 の質問
OET
主管
主体性
・「特性要因図」は頭の体操
TPS: Toyota Production System
OET: On the Error Training
<by Kazuhito Murakami>
43
<by Kazuhito Murakami>
44
実際に物を観察、確認する事を大切に!
百見は 一行にしかず
•
•
•
•
•
•
•
・「百聞は 一見にしかず
「百見は 一行にしかず」
・Tell me, and I’ll forget.
Show me, and I’ll remember.
Involve me, and I’ll understand.
•
•
•
•
・フットワーク から始めて ヘッドワークへ
実際の設計に当たっては得意先の要求項目と仕様について根拠ま
で自ら確かめる事が鉄則。
客先図面に立ち返って設計内容に誤りがない事を確認する。
曖昧な事を確認しないでそのまま信用する事は設計者として失格。
45
<by Kazuhito Murakami>
48
<by Kazuhito Murakami>
寸法精度向上による外装廃止
外装設定基準見直しによる保護材廃止
評価例
寸法(長さ、直径、外形、体積、容積、厚さ、形・・・)
重さ
色
機械的性質(引っ張り強さ、硬さ、変形し易さ、破断までの伸び)
表面粗さ
電磁気的性質(電気伝導率、誘電率、透磁率、絶縁耐圧、・・・)
熱的性質(融点、遷移温度、熱伝導率、比熱、融解熱、気化熱、線
膨張率、・・・)
化学的性質(耐酸化性、耐腐食性、匂い・・・)
タイバンドによる分岐結束検討
タイバンド分岐
ボディー合わせ面・スポット痕と干渉
保護材見直しのため、評価を実施し
外装廃止可能な箇所を発掘
加振方向
例) PVCチューブ廃止
期待効果:幹線上の分岐-クランプ間の寸法精度を
向上させ、ハーネスばらつきによる干渉を防ぐ
分岐~クリップ間
寸法精度向上のため
干渉を回避
干渉
<by Kazuhito Murakami>
49
干渉物
<by Kazuhito Murakami>
50
W/H開発・設計技術の革新/ディジタル化の推進
目的
• 開発L/T短縮
• 提案力向上
• 設計・製造品
質向上
• 開発・製造コ
スト低減
顧客
研究開発部門
PE/GE
Digital情報共有
現在のW/H開発プロセス
CAE部門
車両メーカ
次のステージへ
経路設計(3DCAD)
回路設計(回路CAD)
出図
部品メーカ
製造設計
完成度
確認
バーチャル組立
検討
通常、3~4回繰り返し
生産技術部門
•
•
システム開発会社
ハーネス製造部門
<by Kazuhito Murakami>
現物試作による確認が基本
シーケンシャル処理により幹線設計⇒支線へと徐々に完成度を上げてゆく
52
将来のW/H開発プロセス
次のステージへ
経路設計(3DCAD)
Inst. Panel Harness 3D-CAD Data
専用CADを用いて
W/H製造用に2D変換
回路設計(回路CAD)
製造要件織り込み
53
<by Kazuhito Murakami>
3D-Data から 2D-Data への変換
出図
部品メーカ
現物試作
情報システム部門
W/H設計部門
車両メーカ
原寸図
データI/F
製造設計
デジタル試作 完成度確認
解析評価(CAE)
情報共有
デジタル評価
完成度
•
•
短
縮
0
顧客から示された3D-Data
2~3回繰り返し+現物試作確認1回
100%
コンカレント処理により問題点の前倒し摘
出・対策
ディジタル試作による確認が基本/現物試作
で最終確認
W/H製造用に2D -変換されたData
期間
<by Kazuhito Murakami>
54
<by Kazuhito Murakami>
55
3D-CADを活用した W/H の Visual Simulation 例
Wrong clip
Twisted
Wrong route
W/H bending reliability
Wrong connector
Long dimension
Bending life [cycles]
Short dimension
CAE
model
-30℃
Real model
Master curve
Master
curve
Amount of change in strain
<by Kazuhito Murakami>
56
• 実際に物を観察し、触れた経験があるからこそディジ
タル評価で問題点を判別できる
• ワイヤハーネスが扱い辛いか否かは実際に扱って初め
て解る/数値だけでは大まかな事しか判断できない
• ワイヤハーネスの研究・開発に関る者は必ず工場実習
でワイヤハーネスがどんなものかを体感させる
• 海外の顧客とは直接討論を交わして初めて会社の体
質・企業文化などが理解できる点が沢山あった・・・
一遍の情報や噂だけで判断する事は大変に危険
S-N curve of the material
(Fatigue Failure Life Characteristics)
25
Comparison of Fatigue Failure Life
5
0
Life [cycles in log-scale]
Material : Polypropylene
CAE [cycles]
Stress
15
10
58
現実は、見て、触れてみなければ解らない事ばかり
Vibration simulation
20
<by Kazuhito Murakami>
Get the fact.
Experiment [cycles]
<by Kazuhito Murakami>
60
<by Kazuhito Murakami>
61
モノにふれて遊ぶことの効用 • 足のサイズにあった同じ大きさ
•
•
•
•
•
遊びという目的を通じ物に触れ知
識、社会性を身につける
⇒テレビゲームと比較してみよう
の空き缶を6個と紐を用意する。
空き缶を洗って乾かす。
穴をあける道具を探す。
空き缶に穴をあける・・・紐を
探す穴の大きさを考える。鉄が
硬い事を感じる。ハンマーで手
を叩いて怪我をする。空き缶の
縁で指を切る。道具を使う工夫。
紐を通す・・・紐の長さを身長
に合わせる。紐が抜けないよう
にする。紐が切れ難くする。
遊ぶ・・・兄の妹・弟への思い
やり。走り辛さ。体のバランス。
足の裏の痛さ、捻挫・転倒の痛
さを感じる。
<by Kazuhito Murakami>
私の心を自然科学に向けさせた小学校の先生
• 小学校4~5年の担任の山本先生:短大を卒業したばかり
の20歳のスポーツマン(‘54~’56年)
• 鉱石や岩石をスライスした標本を顕微鏡で見せてくれた
⇒岩石が素晴らしく美しい物である事や岩石をスライスす
る技術がある事、顕微鏡の存在に感激
⇒下校時には拾った石同士を打ち付けて割り、破面を観察。
石の破面に水晶を発見して大感激
本物に触れる事で
関心度は100倍に
62
<by Kazuhito Murakami>
63
自動車産業における変革の歴史-1
1899年FIAT設立:イタリア軍、ロシア軍、オーストリア・ハン
ガリー軍の将校用乗用車供給
• 1904年Rolls Royce設立:半永久的に使える王侯貴族向けの専属
運転手により運転される乗用車
• 1905年GM設立:自動車市場のすべてを対象とする専門家として
の経営者による自動車メーカ
• 1908年T型Ford:アメリカの熟練工の年収を僅かに上回る価格
⇒その後約50年間、国別に夫々の国のメーカが自国市場を独占す
る時代が続いた。
•
第4部:自動車産業の大きな流れ
From Mass Production to Lean Production
<by Kazuhito Murakami>
64
<by Kazuhito Murakami>
65
GM:吸収合併により製
品を5つに系列化。
自動車大量生産の幕開け
部品調達管理
各地に集中的大量生
産部品工場建設
部品ゲージの統一、 素材(鉄、ガラ
スetc.)内製
共用化
食肉解体産業
Moving
disassembly line
精度の高い部品を
厳しい納期で獲得
するため内製化
Ford流大量
生産方式
自転車産業
Stamping machine,
Tools
ex. T-Ford
自動車の大衆化
手造り的生産
方式の限界
自動車産業における変革の歴史-2
Henry Ford がこの方式を mass production と呼んだ
<by Kazuhito Murakami>
66
自動車産業における変革の歴史-3
67
<by Kazuhito Murakami>
日本の第二次世界大戦後の産業界の一局面
Daimler
• 高級車、タクシー、バスの市場に特化⇒国際企業への転換
Volvo
• 「センスのある車」で新規蒔き直し
• 安くはないが過度に贅沢ではなくファッショナブルでもないが
本当の値打ちと健全な常識を感じさせる車
• 弁護士、医師などの専門職:判断力を気にする客層
BMW
• 若手の有望株のための車、究極のマシン:「違い」を意識しつつ
金を払える事を誇示したい客層
Porshe
• 車を単なる輸送機関ではなく「エキサイティングな何か」と捉え
る客層
Chrysler、British Rayland、Peugeot
• 意思決定をせず一時凌ぎの策で資源を浪費、枯渇
<by Kazuhito Murakami>
1960年頃:自動車業界は突然、国際産業に変質
日本メーカ
• 1960年代後半:日本メーカの米国進出⇒大失敗
⇒戦略、戦線を建て直し(米国市場に適合するスタイル、内装、性能、
高品質、低燃費の小型車の投入と充実したアフターサービス)
• 1979年の石油危機を契機に大躍進
Ford
• 1970年:欧州戦略によって国際化を図り欧州市場で第1位となった。
FIAT
• 欧州各国に展開。イタリアで第1位、各国で第2位を狙う戦略展開
GM
• 当初、北米に留まり50%のシェア獲得を目標とする戦略
• 1970年代半ばに方針転換:欧州進出を図る
• 1983~84年:日本メーカと連携して真の国際化を目指す
• 多くの産業基盤が壊滅⇒創造力に富んだ考え
方を受け入れる環境
• 財閥解体⇒系列化の進行
• W. Edward Deming などによる品質重視経営
の指導⇒広範な産業界に普及(SQC, TQC)
• 豊田英二氏、大野耐一氏らによる
Lean production (TPS) の試行
TPSを受け
入れる土壌
例えば
品質についての概念の日米比較(例)
米国流: Acceptable quality level
日本流: Zero defect, 全員参加で弛まぬ改善
68
<by Kazuhito Murakami>
70
Lean Production System(TPS)の目指すところ
無駄を極限まで減らす⇒Cost Reduction⇒利益拡大
在庫を持たない生産の意義 ケーススタディー(1)
(1)改善の着眼点として無駄を7項目に分類:①在庫②運搬③加工
④造り過ぎ⑤手待ち⑥動作⑦不良品・手直し
(2)在庫を減らすことで問題点を顕在化させる(連絡漏れ、作業の流
れの悪さ、工程内不良、etc.)⇒TPSの入り口が「かんばん」
(3)直ちに問題点解決・改善に取り組むことが不可欠になる
(4)これらの活動を弛まず実施することでスムースな流れを実現
(効果例)
・工程内在庫を減らすことで在庫品を置く場所が不要となり、設
備の間隔を短くできる⇒工場のスペースを減らすことができる
・無駄なものを造る人件費、材料費などが削減できた分はそれだ
け利益が増えたことと同じ意味を持つ
・流れがスムースになることでリードタイムが短縮され、設計変
更や需要変動に迅速に対応でき、無駄を減らすことができる
<by Kazuhito Murakami>
販売価格200万円/台の車を170万円/台の原価で50万台製
造し、その内5万台が売れ残りそうになったのでそれらを
160万円で販売した。
その場合の粗利益は
{ 200X(50-5)+160X5}-170X50=9800-8500=1300億円
必要な台数(45万台)だけを生産していた場合の粗利益
200X45-170X45=9800-7650=1350億円
在庫ゼロならば小さな工場で少なく造って50億円多く稼
げる。
72
73
<by Kazuhito Murakami>
在庫を持たない生産の意義 ケーススタディー(3)
在庫を持たない生産の意義 ケーススタディー(2)
所要量= 4000 pcs/day
(a)販売価格20千円/setのW/Hを19千円/setの原価で製造の
リードタイム1カ月、10千set/月製造し、1Wかかる船便で5
千setずつ出荷。納入期間は2年。
(b)販売価格20千円/setのW/Hを19千円/setの原価で製造の
リードタイム0.25カ月、10千set/月製造し、1Wかかる船便
で25千setずつ出荷。納入期間は2年。
(a) (20-19)X10X24-0.5X19X10-0.5X19X10=50百万円
(b) (20-19)X10X24-0.5X19X0.25X10-0.25X19X10=168.8百万円
Lead
Time
2
3
4
5
6
7
total
8
12
24
16
8
9
81
32,000
48,000
96,000
64,000
32,000
36,000 324,000
8,000
12,000
24,000
16,000
8,000
9,000
81,000
3日
4X12,000
4X
12,000
8X
12,000
8X
12,000
3X
12,000
27x
12,000
81秒
2X24,000
2X
24,000
4X
24,000
4X
24,000
1.5X
24,000
13.5x 81秒
24,000
1名の作業者が複数工程を担当
⇒多工程持ちのできる人材育成
が鍵
1名は他の仕事と掛け持ちする
対策 工程改善で1名でできるようにする
設計改善で1名でできるようにする
纏め作りで最終工程で不良品が発見されたと仮定すると、生産開始から3日後で3日間生産した製品が
纏めて不良になる可能性がある。
1個流しでは81秒後に不具合を発見し、直ちに対策を講じることができる可能性がある。
船上の完成
品コスト
<by Kazuhito Murakami>
1
工程当たりの
4
所要時間(秒)
日当たり所要
16,000
時間(秒)
1,000個纏め作
り時の通貨時 4,000
間(秒)
1個流し
A(人X秒)
1個流し
B(人X秒)
その場合の粗利益は
工場内の中間
製品コスト
工程番号
74
<by Kazuhito Murakami>
75
Lean Production の考え方が及ぶ範囲は全事業範囲
大量生産方式/Lean生産方式の要素比較
大量生産方式
• 作業範囲を細分化・単能工
化し業務の負荷に応じて
採用/解雇
• 一つの目的に適合させた
大容量設備⇒同じものを
継続して生産
• AQLに象徴される程々の
改善努力
•
•
Lean生産方式
• 多能工化し生産品目に応じて
フレキシブルに負荷バランス
をとる: challenging
•
•
•
• 応用力のある自動化された設
備(例:短い段取り時間で金
型交換)⇒多様な製品を適量
生産
• Zero defect, Zero inventories,
continually declining cost,
endless product variety・・・・
<by Kazuhito Murakami>
•
•
•
•
76
Four basic factors of lean development
77
<by Kazuhito Murakami>
トヨタとGMの効率比較
日系自動車メーカ開発システムが欧米メーカのそれに優る要因
Nishiguchi, Fujimotoら
の1987年頃の論文引用
Number of Employees
• Leadership: 主査(Toyota), large-project leader (Honda): 開発
~量産立上げに亘る強い権限付与
• Teamwork: 主査がFunctional departmentsからのmembersを
統率・teamでの貢献を評価する
• Communication: ①開発初期段階に資源や優先順位について
論議する②適切な実務者が参加し、主査がグループに対し
てプロジェクトの難しい trade-off に立ち向かう約束をさ
せる
• Simultaneous development: 関連する部門の担当者が直接
Face-to-faceの接触をしている事から、後工程の担当者が概
略仕様を基に先行着手可能⇒最終仕様決定に備える
Toyota
GM
37,000
850,000
4million vehicles
8million vehicles
Ratio of accounts by
assembler
27%
70%
Detail engineering by
assembler
30%
81%
Number of purchasing
staff
Delivery time after
order
337
6,000
Annual production
The machine that changed the world pp.110-117
<by Kazuhito Murakami>
Zero Defect 活動⇒なぜなぜ分析(Five Whys)⇒再発防止
工程内異常発生時にオペレータがラインを止めて直ちに原因究明(序
列の低いレベルでの意思決定)⇒不良品を作らない
全員参加の活動⇒開発、生産、販売の夫々の課程で”Lean”な仕事
の進め方を推進
DealerからCar makerへの顧客情報の提供
顧客情報からの生産計画( 米国流: 大規模なマーケティング調査⇒製
品開発⇒販売・生産計画 )
販売不振時の生産部門から販売部門への戦力シフト
大部屋活動、ワイガヤ
付加価値を向上させる場所の重視(現場主義)
中間管理職を系列サプライヤに派遣⇒人的ネットワーク拡張
78
Less than 2
weeks
<by Kazuhito Murakami>
Not less than 6
weeks
80
GM Framingham と NUMMI Fremont の比較(1987)
トヨタ流調達の考え方とモノづくりの4要素
GM Framingham
NUMMI Fremont
Stamping machine
中西部のstamping plantから鉄
道輸送
専用機による大量生産
body 溶接ラインに隣接し
て多品種少量対応
Category of workers
UAWとの1000ページを超える
契約書で細分化
assemblers
technicians
Assembly hours per car
31
19
Assembly defects per
100 cars
135
45
2weeks
2days
Inventories of parts
(average)
•
•
日刊工業新聞06-03-17 トヨタ自動車 豊田彰男副社長
住友グループの事業理念との
共通点が多い
帰任者は全社に離散配置
NUMMIに派遣し帰任した役員、社員の提案無視(Toyota流改
善に馬耳東風、内向き社風)
<by Kazuhito Murakami>
81
<by Kazuhito Murakami>
82
まとめ
• 目的をハッキリさせて全員のベクトルを揃える
• 目的をハッキリさせて目的と手段のはき違えをなくす
• 「見える化」その1:誰にも解るように透明性と公平性
を高める
• 「見える化」その2:目立ちやすくして変化に対し直ち
に認識できるようにする
• 「見える化」の対象は事業活動の全て:全員参加
• 3現主義で確かな認識を持つ
• 部下とは「話せば解る」ではなく「聴けば解る」で対話
今日の話を聴いた後にお願いしたい事
• 「村上が話した事、言いたかった事はどん
なこと?
• 「その他意見」
をメールで村上宛に送って下さい。
[email protected]
<PDCA+5W1H>のための見える化を!
<by Kazuhito Murakami>
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<by Kazuhito Murakami>
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