プログラム - 東北大学病院産婦人科

プログラム
1月17日(土) A 会場(橘 2F)
13:00-13:45
一般演題 (異所性1)
座長 鳥取大学 原田 省
A1-1
2 年の経過観察の後に診断された回盲部子宮内膜症の1例
◎ 奥久人 1、松本貴 1、佐伯愛 1、棚瀬康仁 1、久野敦 1 、山口裕之 1、伊熊健一郎 1、吉川正人2、
谷口英治2
(健保連 大阪中央病院 婦人科 1、同外科2)
A1-2
腸閉塞を来した回腸子宮内膜症の2例
◎ 古谷正敬1、浅井哲1、芥川英之1、辻紘子1、浅田弘法1、篠田昌宏2、長谷川博俊2、吉村泰典1
(慶応義塾大学医学部産婦人科1、 同外科2)
A1-3
腹腔鏡補助下に腸管合併切除を施行した腸管子宮内膜症の2症例
◎ 森脇征史 1、明石大輔 1、遠藤大介 1、蒲牟田恭子 1、武井弥生 1、服部理史 1、高田 実2、
大野耕一2、川口 勲 1
(JA 北海道厚生連 帯広厚生病院 産婦人科 1、同院 外科2)
A1-4
過敏性腸症候群様の症状を呈する直腸子宮内膜症 −腹腔鏡下手術が有効であったと思われ
る 2 症例から−
◎ 奥 久人、松本 貴、佐伯 愛、久野 敦、蔵盛理保子、山口裕之、伊熊健一郎
(健保連 大阪中央病院 婦人科)
A1-5
腹腔鏡下低位前方切除術(LLAR)により得られた腸管子宮内膜症(CRE)の摘出検体を用いた
病理組織学的アプローチによる発生機序に関する検討
◎ 地主 誠、武内裕之、黒田雅子、白井洋平、黒田恵司、松岡正造、熊切順、菊地 盤、
北出真理、竹田 省
(順天堂大学病院 産婦人科)
10
13:45-14:12
一般演題 (妊孕能)
座長 東北大学 寺田幸弘
A2-6
子宮内膜症を有する不妊症患者に対する腹腔鏡下手術の検討
◎ 宮原明子、渡邊良嗣、宮崎順秀、権丈洋徳、片岡惠子、江上りか、福原正生、中村元一
(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院)
A2-7
重症子宮内膜症および子宮腺筋症に対する short 法あるいは ultra-long 法を用いた IVF-ET の
治療成績に関する検討
◎ 北島道夫、カレク・ネワズ・カーン、平木宏一、井上統夫、増崎英明
(長崎大学産婦人科)
A2-8
卵巣内膜症性嚢胞に対する腹腔鏡下経腟的エタノール固定術後の妊孕性
◎ 藤井俊策、福原理恵、木村秀崇、福井淳史、水沼英樹
14:12-15:24
(弘前大学産婦人科)
シンポジウム1
「子宮内膜症(子宮腺筋症)における薬物療法」
座長 高知大学 深谷孝夫
東京大学 百枝幹雄
S1-1
レボノルゲストレル除放型IUS(LNG−IUS)の子宮腺筋症への臨床応用効果の検討
∼臨床症状と子宮体積の解離現象について∼
◎ 太田郁子1、太田啓明3、市村 浩一4、浅川 徹2、安藤正明3、吉岡 保1
(倉敷平成病院 婦人科1、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科病理学教室(腫瘍病理/
第二病理学)4、倉敷成人病センター 放射線科2、倉敷成人病センター 産婦人科3)
S1-2
子宮腺筋症に対する GnRH アゴニスト漸減療法 ̶1 年以上施行し得た症例から̶
◎ 峯 克也、明楽重夫、菊池芙美、阿部 崇、稲川智子、竹下俊行 (日本医科大学産婦人科)
11
S1-3
子宮腺筋症・深部内膜症に対する3-ethyl pyridine 溶液直接注射の効果
◎ 五十嵐正雄1、五十嵐敏雄2、梁善光2、五十嵐茂雄3、安部由美子3、峯岸 敬3
(群馬中央総合病院1、帝京大学ちば総合医療センター2、群馬大学3)
S1-4
子宮内膜症性卵巣嚢胞術後低用量ピルの再発率低下に及ぼす影響
◎ 高村将司 1 、甲賀かをり 1 、児玉亜子 1 、濱崎かほり 1 、田島敏樹 2 、長谷川亜希子 3 、
竹村由里1、原田美由紀1、森本千恵子4、平田哲也1、広田泰1、吉野修5、大須賀穣1 、
武谷雄二1 (東京大学女性診療科1、日赤医療センター女性診療科2、虎ノ門病院産
婦人科3、三楽病院産婦人科4、帝京大学付属溝口病院産婦人科5)
15:30-16:30
招請講演
座長 東北大学 寺田幸弘
講演 1 「尿路系の子宮内膜症」
信州大学大学院医学系研究科泌尿器科学講座 井川靖彦
講演 2 「胸腔内子宮内膜症」
東北大学加齢医学研究所呼吸器再建研究分野 岡田克典
16:30-17:30
特別講演
「子宮内膜症研究との出会い −疼痛、不妊そして癌化―」
座長
東北大学教授
岡村州博
特別講師 日本生命済生会付属日生病院長 寺川直樹
12
1月17日(土) B 会場(白橿2 3F)
13:00-13:45
一般演題 (基礎1)
座長 高知大学 前田長正
B1-1
子宮内膜症病巣における Toll-like receptors mRNA の発現
◎ 千島 史尚 1 、中澤禎子 1 、市川 剛 1 、椙田賢司 1 、山本樹生 1 、杉谷雅彦 2 、早川 智 3 、
鈴木(唐崎)美喜4
(日本大学医学部産婦人科学系産婦人科学分野 1、同病理病態学系病理学分野2 、同病理
病態学系微生物学分野3、日本大学女性研究者支援促進ユニット 総合科学研究所4)
B1-2
子宮内膜症に対する IKH-01 の効果
◎
根津幸穂 1、小田切幸平 2、鈴木有紀 1、松井伴衣 1、藤原寛行 2、山川洋光 1、今野 良 1
(自治医科大学附属さいたま医療センター 産科婦人科 1、自治医科大学 産婦人科 2)
B1-3
抗オステオポンチン抗体を用いた子宮内膜症の新しい治療戦略の可能性
◎ 小田切幸平 1、今野 良 2、藤原寛行 3、根津幸穂 2、鈴木光明 3 (名瀬徳洲会病院産婦人科 1、
自治医科大学附属さいたま医療センター産婦人科 2、自治医科大学産婦人科 3)
B1-4
CE-TOFMS による子宮内膜症患者腹水のメタボローム解析
◎ 川田陽子 1・2、浅田弘法 3、杉本昌弘 1、平山明由 1、阿倍しのぶ 1、古谷正敬 3、内田 浩 3、
浜谷敏生 3、梶谷 宇 3、丸山哲夫 3、吉村泰典 3、曽我朋義 1、冨田 勝 1・2
(慶應大・先端生命研 1、 同・環境情報 2、同・医学部・産婦人科 3)
B1-5
子宮内膜症の発症に対して、EP300およびAHRR遺伝子多型がおよぼす影響
◎ 辻 紘子1、浅田弘法1 、浅井 哲1 、古谷正敬1、内田浩1、浜谷敏生1、丸山哲夫1、小崎健次郎2 、
柳橋達彦2、羽田智則3、安藤正明3 、木挽貢慈4、吉村泰典1 (慶應大・産婦人科1、慶應大学・
小児科2、倉敷成人病センター婦人科3、新川崎こびきウィーメンズクリニック4)
13
13:45-14:30
一般演題 (基礎2)
座長 旭川医科大学 千石一雄
B2-6
子宮内膜症組織におけるリポキシゲナーゼ経路関連遺伝子の発現解析
◎ 梶谷 宇、丸山哲夫、浅田弘法、内田 浩、各務真紀、小田英之、西川明花、山崎彰子、
吉村泰典
(慶應義塾大学医学部産婦人科学教室)
B2-7
子宮内膜症間質細胞で Tunicamycin は TRAIL 受容体誘導によりアポトーシスを促進する
◎ 長谷川亜希子、大須賀穣、広田 泰、濱崎かほり、児玉亜子、原田美由紀、田島敏樹、
竹村由里、森本千恵子、平田哲也、吉野 修、甲賀かをり、矢野 哲、武谷雄二
(東京大学医学部産婦人科)
B2-8
パスウェイ特異的アレイを用いた子宮内膜症細胞のアポトーシス抵抗性の解明
◎ 谷口文紀、池田綾子、渡邉彩子、田頭由紀子、周防加奈、岩部富夫、原田 省、寺川直樹
(鳥取大産婦人科)
B2-9
正所性子宮内膜における熱ショック転写因子 HSF-1 発現と月経周期との関連
◎ 菅 麻里、谷口佳代、宇賀神奈月、泉谷知明、前田長正、深谷孝夫
(高知大産婦人科)
B2-10
月経期子宮内膜における HLA-G 発現への熱ショック蛋白 Hsp70 の関与について
◎ 谷口佳代、菅 麻里、宇賀神奈月、泉谷知明、前田長正、深谷孝夫
14
(高知大産婦人科)
1月18日(日) A 会場(橘 2F)
9:00-9:36
一般演題 (異所性2)
座長 防衛医科大学 古谷健一
A3-9
腹腔鏡下に摘出した膀胱子宮内膜症の1例
◎ 谷村 悟1、舟本 寛1、炭谷崇義1、舌野 靖1、中島正雄1、南 里恵1、飴谷由佳1、中野 隆1、
瀬戸 親2
(富山県立中央病院産婦人科1、同 泌尿器科2)
A3-10
膀胱子宮内膜症に対する腹腔鏡下手術 ―病変の位置と膀胱の縫合修復の工夫―
◎ 蔵盛理保子、佐伯 愛、松本 貴、奥 久人、山口裕之、久野 敦、伊熊健一郎
(健保連 大阪中央病院 婦人科)
A3-11
子宮内膜症性月経随伴性気胸の病態と発症機序に関する検討
◎ 熊切 順 1、武内裕之 1、宮本秀昭 2、熊切優子 1、北出真理1、菊池 盤 1、黒田恵司 1、
松岡正造 1、竹田 省 1
(順天堂大学産婦人科 1, 呼吸器外科 2)
A3-12
異所性子宮内膜症の発生機序に関する検討 ―当科で経験した 25 例を中心にー
◎ 黒田雅子、武内裕之、地主 誠、白井洋平、黒田恵司、松岡正造、熊切 順、菊地 盤、
北出真理、竹田 省
9:36-10:30
(順天堂大学 産婦人科)
一般演題 (薬物療法)
座長 長崎大学 増崎英明
A4-13
子宮内膜症に対するジェノゲストの使用経験
◎ 田島敏樹1、甲賀かをり2、大里文乃1、安藤一道1、杉本充弘1
(日本赤十字社医療センター産婦人科1、東京大学医学部附属病院女性診療科2)
A4-14
異所性子宮内膜症に対するジェノゲスト療法の検討
◎ 竹村由里、甲賀かをり、大須賀穣、平田哲也、森本千恵子、長谷川亜希子、児玉亜子、
高村将司、矢野 哲、武谷雄二
(東京大学産科婦人科)
15
A4-15
ジェノゲストがヒト子宮内膜症病変における細胞増殖および血管新生に与える影響
◎ 荒井真衣子1、宇都宮裕貴1、村上 節 2、結城広光1、寺田幸弘1、宇賀神智久1、早坂真一1、
八重樫伸生1、岡村州博1
(東北大学産婦人科1 滋賀医科大学産婦人科 2)
A4-16
ジエノゲストのヒト子宮内膜上皮細胞におけるプロスタグランジン E2 産生酵素およびアロマター
ゼ発現に対する影響
◎ 清水 豊 1、三田静香 1、水口 清 1、京 哲 2
(持田製薬(株)開発研究所 1、金沢大学大学院医学系研究科産婦人科 2)
A4-17
当院における GnRH アゴニスト漸減療法の検討
◎ 鎌田泰彦 1、清水恵子 1、佐々木愛子 1、松田美和 1、莎如拉 1、Chekir Chebib1、中塚幹也 2、
平松祐司 1
(岡山大学医学部 産科婦人科 1,同 保健学研究科 2)
A4-18
子宮腺筋症に対するレボノルゲストレル除放型IUS(LNG−IUS)の効果の限界
―子宮体積とLNG−IUSの効果の関係―
◎ 太田郁子 1、太田啓明 3、市村 浩一4、浅川 徹 2、安藤正明 3、吉岡 保 1
(倉敷平成病院 婦人科1、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科病理学教室(腫瘍病理/第
二病理学)4、倉敷成人病センター 放射線科2、倉敷成人病センター 産婦人科3)
10:30-12:00
シンポジウム 2
「子宮内膜症における基礎的検討」
座長 東京大学
武谷雄二
熊本大学
片淵秀隆
S2-1
子宮内膜症における接着因子 CD44 の役割
◎ 吉野 修 1,2、大須賀 穣 2、長谷川亜希子 2、児玉亜子 2、高村将司 2、田島敏樹 2、竹村由里 2、
平田哲也 2、甲賀かをり 2、広田 泰 2、西井 修 1、武谷雄二 2
(帝京大学溝口病院産婦人科 1、東京大学産婦人科 2)
16
S2-2
月経期子宮内膜における HLA-G 抗原の発現と逆流経血への腹腔内免疫応答
◎ 前田長正
(高知大学産科婦人科)
S2-3
子宮内膜症の瘢痕化に対するジェノゲストの効果 ―脱落膜化との関連―
◎ 奈須家栄、津野晃寿、弓削彰利、楢原久司
(大分大学医学部産科婦人科)
S2-4
Narrow Band Imaging System による子宮内膜症症例の正常腹膜血管密度の測定と腹水サイトカ
インの評価
◎ 黒田恵司、武内裕之、黒田雅子、白井洋平、地主 誠、松岡正造、熊切 順、菊地 盤、
北出真理、竹田 省
(順天堂大学医学部 産科婦人科)
S2-5
子宮内膜症間質細胞(ESC)における Th17 系サイトカイン Il-17F の作用について
◎ 平田 哲 也、 大須賀穣 、高村将 司、児 玉亜子、 長谷川亜 希子、 吉野 修 、甲賀かを り、
竹村由里、矢野 哲、武谷雄二
12:00-13:00
(東京大学女性診療科)
ランチョンセミナー1
「卵巣チョコレート嚢胞の癌化 ∼その発生メカニズムと鑑別診断∼」
座長 近畿大学
星合 昊
演者 近畿大学奈良病院 小畑孝四郎
13:30-14:06
一般演題 (症例報告)
座長 岩手医科大学 吉崎 陽
A5-19
術前診断が困難であった卵巣チョコレート嚢胞に合併した mesothelial cyst の 1 例
◎ 東島 愛 1、北島道夫 1、平木宏一 1、カレク・ネワズ・カーン 1、井上統夫 1、林 徳眞吉 2、
増崎英明 1
(長崎大学医学部産婦人科 1、同歯学部附属病院病理部 2)
17
A5-20
他施設での単純子宮全摘出術後に月経様出血をくり返した深部子宮内膜症の 1 例
◎ 岡村佳則、本田律生、宮原 陽、角田みか、田代浩徳、大場 隆、片渕秀隆
(熊本大大学院医学薬学研究部産科学婦人科学)
A5-21
子宮内膜症性嚢胞に感染を起こしショック、DIC に至った付属器膿瘍の1例
◎ 中澤禎子、市川 剛、友部淳子、千島史尚、山本樹生
(日本大学産婦人科)
A5-22
習慣流産患者に対して施行した腹腔鏡下子宮腺筋症切除術の一例
◎ 岸 郁子、田島敏秀、小野寺成実、坂倉啓一、亀井清 (東京都済生会中央病院 産婦人科)
14:06-15:36
シンポジウム 3
「子宮内膜症(子宮腺筋症)における手術療法」
座長
高の原中央病院 杉並 洋
長崎市民病院
藤下 晃
S3-1
子宮腺筋症縮小術(debulking surgery)の妊孕性向上におよぼす効果について
◎
本田律生、岡村佳則、本田智子、宮原 陽、田代浩徳、大場 隆、片渕秀隆
(熊本大学大学院医学薬学研究部 婦人科学産科学)
S3-2
腹腔鏡下子宮腺筋症摘出のポイント∼病巣の形状に注目した術式の使い分け∼
◎ 太田啓明、羽田智則、出浦伊万里、三木通保、高木偉博、金尾祐之、安藤正明
(倉敷成人病センター産婦人科)
S3-3
子宮腺筋症のタイプに応じた 2 つの Laparoscopic adenomyomectomy の開発とその手術成績に
関する検討
◎ 北出真理、武内裕之、黒田雅子、地主 誠、白井洋平、黒田恵司、松岡正造、熊切 順、
菊地 盤、竹田 省
(順天堂大学産婦人科)
18
S3-4
腹腔鏡下ダグラス窩子宮内膜症病巣切除術の定型化と疼痛緩和効果に関する検討
◎ 浅田弘法1、古谷正敬1、梶谷 宇1、内田 浩1、丸山哲夫1、吉村泰典1、升田博隆 2、
岸 郁子 3、田島敏秀 3、寺西貴英 4、木挽貢慈 5
(慶應大・医学部 産婦人科1、日本鋼管病院婦人科 2、済生会中央病院婦人科 3、北里研究所
病院婦人科 4、新川崎こびきウイメンズクリニック 5)
S3-5
腸管・尿管に及ぶ深部子宮内膜症に対する腹腔鏡下手術
◎ 安藤正明、太田啓明、羽田智則、出浦伊万里、三木通保、高木偉博、金尾祐之
(倉敷成人病センター産婦人科)
1月18日(日) B 会場(白橿2 3F)
9:00-9:45
一般演題 (手術1)
座長 日本医科大学 竹下俊行
B3-11
腹腔鏡初心者による子宮内膜症の治療∼手を出して良いのか?悪いのか?∼
◎ 三木通保 金尾祐之 出浦伊万里 羽田智則 太田啓明 高木偉博 安藤正明
(倉敷成人病センター 婦人科)
B3-12
深部子宮内膜症に対する腹腔鏡下手術 ∼ダグラス窩開放と深部病巣切除に関する検討∼
◎ 出浦伊万里、三木通保、羽田智則、太田啓明、高木偉博、金尾祐之、安藤正明
(倉敷成人病センター産婦人科)
B3-13
子宮内膜症における腹腔鏡下ダグラス窩手術時の卵巣吊り上げ法(糸穴法と巻き付け法)につ
いて
◎
山本和重,平工由香,矢野竜一朗,伊藤邦彦
(岐阜市民病院 産婦人科)
B3-14
腹腔鏡下子宮内膜症性嚢胞核出術後の再発に関する検討
◎ 宇賀神智久1、村上 節 2、横溝 玲3、寺田幸弘1、宇都宮裕貴1、早坂真一1、荒井 真衣子1、
八重樫伸生1、岡村州博1
(東北大学産婦人科1、滋賀医科大学産婦人科 2、仙台社会保険病院3)
19
B3-15
子宮内膜症に合併した卵管・卵巣膿瘍の経腟超音波ガイド下膿瘍吸引術(TVUS-A)による管理
とその成績
◎ 松岡正造、武内裕之、黒田雅子、白井洋平、黒田恵司、地主 誠、熊切 順、菊地 盤、
北出真理、竹田 省
9:45-10:30
(順天堂大学医学部産婦人科)
一般演題 (手術2)
座長 大分大学 楢原久司
B4-16
深部膀胱子宮内膜症に対して腹腔鏡下に広範囲に膀胱粘膜のみを残して切除し得た1症例
◎ 谷口文章1、貴志洋平1、本田能久1、杉並留美子1、杉並 洋1、高田 聡2
(高の原中央病院産婦人科1、泌尿器科2)
B4-17
子宮内膜症腹腔鏡下手術症例における尿管走向の確認方法について
◎ 児島信子1、安藤正明 2
(白河産婦人科1、倉敷成人病センター産婦人科 2)
B4-18
卵巣チョコレートのう胞に対する腹腔鏡下付属器摘出に潜む危険∼すぐそこに迫る尿管の危機
∼
◎ 太田啓明、羽田智則、出浦伊万里、三木通保、高木偉博、金尾祐之、安藤正明
(倉敷成人病センター産婦人科)
B4-19
腹腔鏡下に病変切除をしえた嚢胞性子宮腺筋症の 1 例
◎ 谷口智子 内出一郎 土屋雄彦 吉田義弘 中熊正仁 前村俊満 片桐由起子 森田峰人
(東邦大学医療センター大森病院)
B4-20
子宮腺筋症に対する腹腔鏡補助下子宮腺筋症核出術 ̶高周波ループ電極を用いて̶
◎ 菊池芙美、明楽重夫、峯 克也、市川雅男、渡辺美千明、竹下俊行
(日本医科大学産婦人科)
20
10:30-11:24
一般演題 (臨床 その他)
座長 スズキ記念病院 田中耕平
B5-21
卵巣子宮内膜症性嚢胞手術時の出血量、手術時間に関連する因子の検討
◎ 角 玄一郎、中嶋 達也、岡田 英孝、安田 勝彦、神崎 秀陽
(関西医科大学産科学婦人科学教室)
B5-22
妊娠に合併した卵巣子宮内膜症性嚢胞
◎ 上田 豊 1 、榎本隆之 1 、宮武 崇 1 、藤田征巳 1 、三宅貴仁 2 、藤原和子 3 、吉野 潔 3 、
金川武司 1、木村 正 1
(大阪大学 1、大阪労災病院 2、大阪府立成人病センター3)
B5-23
診断困難な子宮内膜症診断の補助検査としての月経中血清 CA125 値
◎ 國宗和歌菜 1、中塚幹也 1,2、佐々木愛子 1,3、Chebib Chekir1、小谷早葉子 1、莎如拉 1,3、
松田美和 1,3、清水恵子 1,3、鎌田泰彦 1、平松祐司 1,3、野口聡一 4
(岡山大学病院産科婦人科 1、岡山大学大学院保健学研究科 2、岡山大学大学院医歯薬学総
合研究科 3、岡山愛育クリニック 4 )
B5-24
子宮内膜症による瘢痕化に対するヘパリンナトリウムの作用
◎ 津野晃寿、奈須家栄、平尾茉里名、小林弘尚、弓削彰利、楢原久司
(大分大学 産科婦人科学)
B5-25
卵巣チョコレート嚢胞における骨盤痛と併存する骨盤腹膜病変との関連
◎ カレク・ネワズ・カーン 1 、北島道夫 1、平木宏一 1、藤下 晃 2、関根一郎 3 、石丸忠之 4 、
増崎英明 1 (長崎大学医学部産婦人科 1、長崎市民病院産婦人科 2、長崎大学原研病理 3、
佐世保中央病院 4)
B5-26
子宮内膜症性嚢胞と PID
1
− 子宮内膜症性嚢胞は PID を合併しやすいか
1
◎ 種市明代 、藤原寛行 、野中宏亮1、高橋寿々代1、竹井裕二1、町田静生1、嵯峨泰1、
根津幸穂 2、今野良 2、鈴木光明1
(自治医科大学産婦人科1、自治医科大学大宮医療センター産婦人科 2)
21
13:30-13:57
一般演題 (手術3)
座長 仙台市立病院 渡辺 正
B6-27
卵巣チョコレート嚢胞破裂に対する緊急腹腔鏡下手術例の検討
◎ 松本亜由美1、藤下 晃1、上嶌佐知子1、福田雅史1、佐藤二葉1、南 和徳 2、入江準二3、
冨安志郎4、橋口順康4
(長崎市立市民病院 産婦人科1、放射線科 2、病理3、麻酔科4)
B6-28
腹腔鏡下卵巣チョコレート嚢胞核出術における希釈 Vasopressin を用いた液性剥離法の有用性
に関する検討
◎ 五十嵐敏雄、重城真智、落合尚美、松本由佳、中川圭介、矢部慎一郎、梁善光
(帝京大学ちば総合医療センター)
B6-29
卵巣チョコレート嚢胞および子宮内膜症ダグラス窩病変に対する腹腔鏡下手術の内容による月
経痛改善に関する中期予後の検討−術前・術後 3 ヶ月・術後 12 ヶ月前後の月経痛 Visual
Analogue Scale(VAS)による比較から−
◎ 久野 敦、佐伯 愛、奥 久人、蔵盛理保子、山口裕之、松本 貴、伊熊健一郎
(健保連大阪中央病院 婦人科)
1月18日(日) C 会場(桜 2F)
12:00-13:00
ランチョンセミナー2
「子宮内膜症の治療―ホルモン製剤をどう使い分けるか?―」
座長 東京医科歯科大 久保田俊郎
演者 京都府立医大
22
北脇 城
13:30-14:06
一般演題 (内膜症と癌化)
座長 東北大学 伊藤 潔
C1-1
SIRS を発症した卵巣癌合併子宮内膜症の一症例
◎ 小出千絵、藤原久也、谷川美穂、山本弥寿子、平田英司、三好博史、工藤美樹
(広島大学大学院医歯薬学総合研究科産科婦人科学)
C1-2
29歳で発見された子宮内膜症性嚢胞合併卵巣類内膜腺癌の1例
◎ 大村 元、天野陽子、生駒直子、三橋洋治、太田 善夫、小畑孝四郎、井上芳樹
(近畿大学医学部奈良病院産婦人科 同臨床検査部)
C1-3
30歳で発見された子宮内膜症性嚢胞合併卵巣明細胞腺癌の1例
◎ 天野陽子、花岡陽子、生駒直子、大村 元、三橋洋治、小畑孝四郎、井上芳樹
(近畿大学医学部奈良病院産婦人科)
C1-4
閉経後女性で確認された卵巣チョコレート嚢腫の悪性転化の一例
◎ 貴志洋平 1、高陽子 2、植野さやか 2、浮田真沙世 2、住友理浩 2、林道治 2、本庄 原 3 (高の
原中央病院産婦人科 1、天理よろづ相談所病院産婦人科 2、天理よろづ相談所病院病理部 3)
23
子宮内膜症研究との出会い
−疼痛、不妊そして癌化―
日本生命済生会付属
日生病院長
鳥取大学名誉教授
寺川
直樹
子宮内膜症は生殖年齢層のおよそ 10%に発生し、疼痛と不妊を主症状とする疾患である。こ
の世に女性が誕生した時から子宮内膜症は存在したと考えられ、紀元前 1600 年、エジプトのパ
ピルスに本症の疼痛症状が記載されている。
月経周期を有する女性に発症する、思春期前女性にはみられない、閉経後に内膜症は退縮
することから、本症はエストロゲン依存性疾患である。月経血の経卵管逆流が誘因となって本症
は発生する。疼痛の発生頻度は高く、その種類と程度は多岐にわたる。本症女性の半数は不妊
である。不妊症との高い合併症状は、生殖医療が進歩し、腹腔鏡手術が普及し始めたわずか 25
年前に認識されるようになった。
鳥取大学教授に赴任した 1990 年から 1995 年の間に教室では 365 例の原因不明不妊患者に
腹腔鏡が施行されたが、そのうち 188 例 (52%) に子宮内膜症が存在した。当時は、本症の進
行とともに卵巣や卵管が強固な癒着をきたし、不妊を惹起すると考えられていたが、188 例のお
よそ 7 割は卵巣、卵管機能が正常に保たれた微症・軽症例であった。
このような症例に対して、内膜症病変の焼灼、切除と腹腔洗浄を行うことで、術後、多数例に
妊娠が成立した。疼痛についても、癒着病変が惹き起こす疼痛以外に、微小な腹膜の活動性病
変も疼痛を発生することが判ってきた。
これらの臨床成績をもとに、「子宮内膜症の病態と骨盤内環境」をリサーチクエスチョンとして、
教室の子宮内膜症研究がスタートした。
子宮内膜症患者腹水中には炎症性サイトカイン TNFα、IL-6 および IL-8 が高濃度に存在する
ことや、腹腔内マクロファージとは別個に子宮内膜症病変において、IL-6 および IL-8 が産生され
ることを見出し、報告してきた。そして、IL-6 は胚発生や精子運動能を阻害し、卵巣顆粒膜細胞
でのエストロゲン産生を抑制することで妊孕能低下に関与する可能性を示した。一方で IL-8 は培
養子宮内膜症細胞の増殖を促進したことから、内膜症病変の発生、進展に係ることが示唆され
た。
古くより、骨盤内局所の炎症が子宮内膜症の増殖、進展を促すことが知られている。炎症反応
24
を惹起する LPS の添加は、受容体である TLR4 を介して TNFαおよび IL-8 発現を誘導し、培養
内膜症細胞の増殖を促進した。一方、PPARγのリガンドで抗炎症作用を有するピオグリタゾン
は、IL-8 産生を減弱して細胞増殖を抑制した。以上の成績から、炎症による本症の増殖、進展機
序の一端が裏付けられた。
また、TNFαは転写因子 NF-κB を介して内膜症細胞での IL6 および IL-8 の産生を誘導する
ことを認め、報告した。次に、子宮内膜症治療薬の作用機序について検討を行った。その結果、
リュープリンなどの GnRH アゴニストや黄体ホルモン剤ディナゲストは転写因子 NF-κB 活性を阻
害し、内膜症病変からの IL-8 産生を抑制することにより本症の増殖、進展を阻止することが明ら
かとなった。
一方で、卵巣チョコレート嚢胞からの悪性化が知られている。その大部分は卵巣明細胞腺癌と
類内膜腺癌であるが、明細胞腺癌は欧米に比して本邦で頻度が高いことが報告されている。
Sampson(1925)が卵巣子宮内膜症性嚢胞の悪性化を最初に報告して以来、小林(2004)の静岡
県における卵巣癌検診の調査成績に至るまで、日米ともにその癌化の頻度を 0.7-0.8%としてい
る。この数字は卵巣癌の自然発生頻度に比べて非常に高いものであり、看過できるものではな
い。
以上の背景から、日産婦学会では世界で初めての前方視的研究「本邦における子宮内膜症
の癌化の頻度と予防に関する疫学研究」を 2007 年度より開始した。本研究の目的は、大規模な
統計学的解析により、その登録集団において(1)卵巣チョコレート嚢胞の正確な癌化率を算出し、
(2)患者背景の解析から癌化のリスク要因を抽出し、(3)嚢胞摘出術による癌発生の予防効果
を検索することである。
具体的には、全国の医療機関を受診した 30 歳以上の卵巣チョコレート嚢胞患者を対象に、4
年間で 12,000 例を集積し、10 年間の追跡調査を行うものである。多数例を長期にわたって追跡
する容易でない疫学研究であるが、その成果を期待したい。
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講演 1
尿路系の子宮内膜症
信州大学大学院医学系研究科泌尿器科学講座
井川靖彦
子宮内膜症が尿路に発生することはまれで全体の 1∼2%程度であり,好発年齢は 25∼40 歳と報告され
ている.膀胱に発生することが最も頻度が高く,次いで,尿管,腎の順であり,40:5:1 の比で発生する.
膀胱子宮内膜症は,膀胱筋層内に発生する”intrinsic” タイプと外膜・腹膜面に発生する”extrinsic”タ
イプに分類される.症状は,病変の部位や大きさによって異なるが,”extrinsic”タイプではしばしば無症状
であることもあるが,”intrinsic” タイプの 75%は,膀胱刺激症状(排尿痛,頻尿,尿意切迫感)があり,患者
の3分の1は肉眼的血尿を自覚しており,通常月経時に出現する.膀胱充満時の恥骨上部痛は 80%に認
められ,間質性膀胱炎の症状に類似する.12%の症例は,膀胱以外に病変のない単発例とされる.診断
には,病歴,理学的所見に加えて,疑わしい場合は,膀胱鏡検査と生検を行うことが重要である.治療は,
年齢,挙児希望,病変の範囲,下部尿路症状の重篤度,他の骨盤内病変の有無などに依存する.基本
的に,若い女性では,生殖機能の温存を図りながら,症状を取り除くことに努めるべきである.”intrinsic”
タイプでは,ホルモン療法や経尿道的病変部切除術(TUR)では,完治を期待することは困難で,膀胱壁
内病変とその周囲の瘢痕部を含めた膀胱部分切除術が最も推奨されている.また,膀胱子宮内膜症は
malignant transformation を起こすことが知られており,その意味でも完全切除が望まれる.
尿管子宮内膜症の発生頻度は,子宮内膜症患者全体の 0.1∼0.4%と極めて低く,膀胱子宮内膜症と同
様に,”intrinsic”と”extrinsic”の2タイプに分類され,1:4の比率で発生する.”intrinsic”タイプでは,異所
性子宮内膜組織が筋層,粘膜固有層,あるいは尿管内面まで浸潤する.一方,”extrinsic”タイプでは,子
宮内膜組織の浸潤は尿管外膜またはその周囲の結合組織のみに限られる.尿管子宮内膜症は,通常,
血尿や側腹痛などの尿管閉塞の臨床像を呈するが,無症候性であることも少なくない.したがって,骨盤
内子宮内膜症の患者では,上部尿路の画像診断スクリーニングが必須であることは疑いの余地がない.
尿管閉塞を認める場合,他の良性もしくは悪性疾患による尿管閉塞との鑑別診断が必要となる.診断が
困難であるため,腎摘出術が施行された症例が高率(23∼47%)に上ることが報告されている.尿管閉塞
をきたしている尿管子宮内膜症には,ホルモン療法と尿管ステント留置による保存療法は一般に効を奏さ
ず,外科的治療が選択されるべきである.尿管剥離術や尿管尿管新吻合術は再発の危険が高く,推奨で
きない.多くの場合,下部尿管が病変に巻き込まれているか,今後巻き込まれる危険が高いため,下部尿
管を含む病変部の完全切除と健常尿管断端を膀胱に吻合する尿管膀胱新吻合術を選択するのが賢明
である.
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講演 2
胸腔内子宮内膜症
東北大学加齢医学研究所呼吸器再建研究分野
岡田克典、近藤 丘
月経に一致して気胸(月経随伴性気胸)や喀血(月経随伴性喀血)を反復発症する症例が稀ながら存
在することは古くから知られており,病因に興味が持たれてきた.開胸術を受けた症例では,肺胸膜,肺
あるいは横隔膜に組織学的に子宮内膜症が証明されることが少なくないことから,これらの疾患が胸腔
内異所性子宮内膜症を原因として発症することが今日では明らかとなり,胸腔内子宮内膜症症候群
(thoracic endometriosis syndrome)という用語も用いられるようになった.胸腔内子宮内膜症症候群の発
症のピークは 30∼35 歳であり,骨盤内子宮内膜症の発症のピークより数年遅れるとされる.発症の形態
は,月経随伴性気胸が最も多く,次いで血胸,月経随伴性喀血,肺野結節影などとされている.発症側の
90%以上は右側であったと報告されている.胸腔内子宮内膜症の発生機序としては,骨盤内子宮内膜症
組織の横隔膜欠損孔を介しての胸腔内への移行,あるいは骨盤静脈を介する血行性の塞栓などが推測
されている.
発症の形態として最も頻度の高い月経随伴性気胸は,1958 年 Maurer1)らによって最初に報告されて
以来、今日まで 200 例以上の報告がみられる.Korom らのレビューによると 2),開胸術を受けた症例の約
40%に横隔膜の穿孔あるいは子宮内膜症,またはその両者がみられたという.肺胸膜に子宮内膜症が
みられた症例が約 30%,ブラやブレブが認められた症例が約 20%であったとされる. Maurer は,気胸の
発生機序として,子宮および卵管より腹腔へ侵入した空気が、子宮内膜の脱落によってできた横隔膜穿
孔部を経て胸腔へ流れ込むという,いわゆる空気腹腔経由説を主張した.これに対し、気胸の原因を肺ま
たは胸膜の子宮内膜症とする報告、さらに,月経時に脱落子宮内膜や血中で濃度が上昇するプロスタグ
ランジン F2 が,肺の血管や気管支を収縮させ肺胞組織を破壊するという説などもみられ,興味深い.
胸腔内子宮内膜症の治療に関しては、従来よりホルモン療法と外科療法とが提唱されている.胸腔鏡
手術が一般的となった今日では,再発率の問題,副作用の問題から外科療法を第一選択とし,外科療法
単独で再発がみられるような場合にホルモン療法を追加すべきとの報告が多く見られる.本講演では,自
験例の画像・術中所見などを供覧しつつ,胸腔内子宮内膜症治療の現状と問題点について概説する.
文献
1) Maurer ER, et al. JAMA 1985; 168: 2013-2014
2) Korom S, et al. J Thorac Cardiovasc Surg 2004; 128: 502-508
27
S-1
レボノルゲストレル除放型IUS(LNG−IUS)の子宮腺筋症への臨床応用効果の
検討 ∼臨床症状と子宮体積の解離現象について∼
倉敷平成病院 婦人科1、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科病理学教室(腫瘍病理/第二病理学) 4、
倉敷成人病センター 放射線科2、倉敷成人病センター 産婦人科3
◎ 太田郁子1、太田啓明3、市村 浩一4、浅川 徹2、安藤正明3、吉岡 保1
2007 年より本邦で発売になったLNG−IUSはその内膜退縮作用から、子宮腺筋症や子宮内膜増殖症に
臨床応用されている。子宮腺筋症の過多月経に対しての効果は報告されているが、子宮腺筋症病変や
子宮平滑筋への作用に対しては未だ明らかではない。今回充分なインフォームドコンセントを得て、LNG
−IUSを臨床応用した症例に対し、MRI画像上の子宮の変化と臨床症状について検討を行った。
【方法】
8 ヶ月以上LNG−IUSを挿入している子宮腺筋症患者 7 名(43.3±5.8 歳)を対象として、LNG−IUS挿入
前、挿入後 3 ヶ月・6 ヶ月・12 ヶ月後のヘモグロビン値、CA125、VAS、PBACを測定し、MRI検査を行っ
た。MRI画像については、scion image を使用して、子宮筋層の面積を算出し、その総和を体積に近似して
評価を行った。また、患者の同意を得て、LNG−IUSを 9 ヶ月挿入し、6 ヶ月目から子宮体積が再び増大
した症例の子宮筋層に対して、病理学的検討を行った。
【成績】
子宮体積は、挿入前を基準として、3ヶ月後には74.5%±10.50に縮小していたが、その後6ヶ月後、8ヶ月
後は102.3%±15.7と再び増大していた。臨床症状は、挿入後3ヶ月をピークに改善がみられ、再び子宮体
積が増大しているにもかかわらず、その後もCA125の上昇やVASの変化は見られず、炎症反応の上昇も
なかった。また、挿入後増大傾向にあった子宮標本において、子宮筋層漿膜側に特に顕著なedematous
な領域が存在した。
【結論】
LNG−IUS挿入によって、子宮腺筋症は軽快し、約 3 ヶ月をピークに臨床症状や過多月経は改善された。
しかし、6 ヶ月後からは子宮体積が再びもとの大きさまで増大し、臨床検査や臨床症状と解離していた。こ
れは子宮腺筋症にIUSを挿入すると、約6ヶ月以降病変が治癒した領域のリンパ液貯留が示唆された。
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S1-2
子宮腺筋症に対する GnRH アゴニスト漸減療法
̶1 年以上施行し得た症例から̶
日本医科大学産婦人科
◎ 峯 克也、明楽重夫、菊池芙美、阿部 崇、稲川智子、竹下俊行
【目的】子宮腺筋症における慢性骨盤痛や月経困難症などの症状は薬物療法によく反応するが、治療中
止により再発に苦慮することが多い。従って薬物療法は長期投与を視野にいれた投与法の工夫が必要で
ある。今回我々は副作用軽減による長期投与を目指した GnRH アゴニスト漸減療法につき、その有用性
について検討したので、報告する。
【方法】症例は漸減療法を 1 年以上施行しえた 37 例で、開始時平均年齢 43.9±4.3 歳 であった。酢酸ブ
セレリンを6回(900μg)/日投与し、CA125 値が正常範囲になった時点で、十分なインフォームドコンセン
トの上、投与回数を 1-5 回/日に切り替えた。酢酸ブセレリンでエスケープ現象が認められたものは、酢酸
ナファレリンに変更した。投与回数は血中 E2 値が 30-50pg/ml になるように設定した。慢性骨盤痛につき、
投与前と漸減療法中のものを visual analogue scale (VAS)で比較した。また、一日あたりの hot flush 回数
を通常量投与時のものと比較した。さらに、漸減療法中の骨塩量の減少率を DXA 法にて検討した。
【成績】漸減療法中における酢酸ブセレリンの平均投与期間は 23.8±9.9 ヶ月、平均投与回数は 2.2±1.0
回、その間の E2 値の平均は 37.5±14.3pg/ml であった。逃げ込みが成功した症例は 6 例あり、平均 49.5
±1.5 歳で投与回数が 0 回となった。酢酸ブセレリンでエスケープ現象が認められたものは 6 例あり、いず
れも酢酸ナファレリンにて至適 E2 値を維持できた。治療前にみられた慢性骨盤痛は漸減療法により 4.8±
1.2 から 0.6±0.7 と有意に減少していた(p<0.01)。また、Hot flush も 1.1±0.7 回と通常投与治療時の回数
(3.8±0.7 回)より有意に減少していた(p<0.01)。漸減療法中の骨塩量は半年間で 0.96±0.9%の減少に
留まった。副作用による投与中止例はなく、CA125 値の再上昇はほとんどみられなかった。
【結論】 GnRH アゴニスト漸減療法は治療効果を維持しつつ長期投与が可能で、患者コンプライアンスの
点からも優れていると考えられた。しかし、骨密度が減少する症例もあり、慎重にフォローアップする必要
があると思われた。
29
S1-3
子宮腺筋症・深部内膜症に対する3-ethyl pyridine 溶液直接注射の効果
群馬中央総合病院1・帝京大学ちば総合医療センター2・群馬大学3
◎五十嵐正雄1・五十嵐敏雄2・梁善光2・五十嵐茂雄3・安部由美子3・峯岸敬3
(目的):子宮内膜症治療薬の中で現在我が国でももつとも広く使用されている GnRH analog は内膜症組
織に対する直接的抑制作用を殆ど欠くので6ヶ月の治療後の再発率が極めて高い。そこで直接抑制作用
をもつ新薬の開発が世界中で緊急課題になつている。私共は先に danazol の局所投与法を、2008年に
3-ethyl pyridine (3EP)含有膣リング療法を報告したが、今回は 3EP 溶液の局所注射法の効果を 3EP 含有
膣リングおよび IUD の効果と比較したので報告する。
(方法):患者から Informed Consent をもらつた後、3EP 2mg/2ml 含有生理食塩水溶液を、子宮腺筋症患
者の子宮膣部から子宮筋層内に注射する方法、膣内膜症・深部内膜症の病巣に対し経膣的に注射する
方法を 2008 年 8 月から開始した。これらの効果を 3EP 含有 IUD 及び膣リング療法の 1.5 年間の治療成
績と比較検討した。
(成績):子宮腺筋症24例に対する 3EP 含有 IUD の効果は VAS のゼロ化 21.4%,減少 57.1%,不変と悪化
21.4%,CA125 の減少 33.4%,不変と増加 66.6%であつた。一方 3EP 直接注射の11例 2 ヶ月間の成績は VAS
の減少 70.0%,不変 30.0%,CA125 の減少 50.0%,不変 50.0%であつた。膣内膜症・深部内膜症に対する 3EP
含有膣リング 50 例の効果は、VAS のゼロ化 30.8%,減少 48.7%,不変と悪化 20.5%,ダグラス窩硬結の消失
42.0%,減少 32.0%,不変と悪化 26.0%,CA125 の減少 20.0%,不変と増加 80.0%であつた。直接注射 14 例2ヶ月
間の効果は VAS のゼロ化 0%,減少 61.5%,不変と悪化 38.5%,ダグラス窩の硬結の消失 28.5%,減少 35.7%,不
変 35.7%,CA125 の減少 62.5%,不変 25.0%,増加 12.5%であつた。全身的副作用はどの治療でも認められなか
つた。
(結論):子宮内膜症の中で治療がもつとも困難な子宮腺筋症と深部内膜症に対し 3EP 含有 IUD,膣リング、
直接注射のどれも有効で、しかも全身的副作用のない理想に近い治療法であることが明らかになつた。
治療期間は IUD と膣リングは 1.5 年、直接注射は僅かに2ヶ月の成績なので、この結果から直ちに治療法
の優劣を結論することはできないが、IUD と膣リングは間接的局所投与、直接注射は直接的局所投与で
あり、病巣内 3EP 濃度には著差が推測される。今後 2009 年1月までに直接注射の症例を増加する予定。
3EP 療法の作用機序、安全性については昨年の本学会で発表の通りである。
30
S1-4
子宮内膜症性卵巣嚢胞術後低用量ピルの再発率低下に及ぼす影響
東京大学女性診療科 1、日赤医療センター女性診療科 2、虎ノ門病院産婦人科 3、三楽病院産婦
人科4、帝京大学付属溝口病院産婦人科5
◎ 高村将司 1、甲賀かをり 1、児玉亜子1、濱崎かほり1、田島敏樹 2、長谷川亜希3、竹村由里1、
原田美由紀1、森本千恵子4、平田哲也1、広田泰1、吉野修5、大須賀穣1 、武谷雄二1
<目的>子宮内膜症性卵巣嚢胞(EM cyst)に対して腹腔鏡下嚢胞摘出術(LC)を施行した際には、術後再発が
問題となるが、確立された予防策はない。当科では以前、LC 術後再発に影響を与える因子を検討し、術後妊
娠のあった症例で再発率が低いことを報告した。このことから、術後排卵を抑えることが再発率低下に寄与す
ると考え、2005 年より、LC を受けた患者に対し、挙児希望症例、副作用が懸念される患者を除いて、術後、低
用量ピル(OC)の服用を勧めてきた。今回、それらの患者の予後について検討した。
<方法>2005 年 5 月から 2006 年 8 月までに当院にて LC を行った患者 137 人について検討した。患者には、
再発予防の可能性、副作用などのメリットデメリットを説明の上、同意を得た症例に対し、OC の処方を行った。
術後 2 年目の外来において、超音波にて直径 2 cm 以上の EM cyst 典型像を認めたものを再発と定義した。
再発に影響を及ぼす因子(年齢、不妊症/子宮筋腫/子宮腺筋症の有無、嚢胞の最大径、両側か片側か、
薬物療法/嚢胞摘出術既往/術後妊娠の有無、術後2年間 OC 服用の有無、rASRM 病期)について単変量
解析、およびロジスティック回帰分析を用いて検討した。OC 服用が、再発に与える影響については Epi Info を
用いて解析した。
<成績>137 人のうち、2 年間の経過観察を行えたのは 87 人であった。そのうち、48 人が OC 服用を開始し、
そのうち 14 人が服用を中止した。術後2年間の全体の再発率は 23.0%であった。高い再発率に関連する因子と
して、rARSM 分類Ⅳ期(オッズ比 5.283、95%CI 1.288-21.6740)低い再発率に関連する因子として、術後 2 年間
の OC 服用(同 0.050、0.006-0.422)があげられた。OC の服用が再発に与える影響を検討すると、2 年間服用し
た 34 人のうち再発を認めたものは 1 人(2.9%)であるのに対し、全く服用しなかった 39 人のうち 17 人(43.6%)に再
発を認め、途中服用を中止した 14 人のうち 2 人(14.3%)が中止後再発を認めた。2年間続けてピルを服用しなか
った相対危険度は 0.09(0.01-0.61 p<0.001)となり、OC の服用は再発を有意に下げることが示された。なお、OC
を2年間服用した 34 人とそれ以外の 53 人の患者背景を比較したところ、不妊合併と術後妊娠を除いて有意な
差を認めなかった。
<結論>EM cyst 術後の OC 服用群は、他の因子と独立して、有意に低い再発率を示した。術後の OC を服用
は、再発率を 0.09 倍にした。この結果に基づき、当科では、LC 術後の患者に対して、OC の服用の積極的推奨
をつづけている。また、一方で、OC の服用をいつまで続けるのが妥当か、中止した後の再発率はどうか、とい
った点はまだ不明であり、今後検討を続けたい。
31
S2-1
子宮内膜症における接着因子 CD44 の役割
帝京大学溝口病院産婦人科 1、東京大学産婦人科 2
◎ 吉野 修 1,2、大須賀 穣 2、長谷川亜希子 2、児玉亜子 2、高村将司 2、田島敏樹 2、竹村由里 2、
平田哲也 2、甲賀かをり 2、広田 泰 2、西井 修 1、武谷雄二 2
【目的】子宮内膜症の発症および進展機転として、逆流した子宮内膜が生着する所謂、逆流説が広く受け
いれられている。癌細胞を含めた種々の細胞において、接着因子 CD44 はヒアルロン酸と結合することで、
細胞間の接着に寄与することが知られている。今回、我々は CD44 が子宮内膜症の発症および進展に関
与しているかについてヒト検体を用いて検討し、また CD44−ヒアルロン酸間の結合阻害が子宮内膜症の
治療になり得るかマウスモデルを用いて検討した。
【方法】 ヒト)患者の同意の下、検体を採取し実験に用いた。正所性および異所性子宮内膜組織におけ
る CD44 遺伝子発現を PCR 法にて検討した。また、腹腔鏡手術時に、腹腔内貯留液を 63 名(Re-ASRM
分類 0 期: 17 人、I 期: 12 人、II 期: 5 人、III 期: 12 人、IV 期: 17 人)より採取した。腹腔内貯留液中の可溶
型 CD44 濃度を ELISA 法にて測定した。
マウス)卵巣摘出マウスにエストロゲンを投与し、実験に用いた。ドナーマウス由来の子宮内膜をミンチ後、
18 ゲージ針を用いてレシピエントマウスの腹腔内へ接種した。子宮内膜接種時および接種後週一回毎に
ヒアルロン酸(30mg/kg)を腹腔内投与し、子宮内膜接種3週間後にレシピエントマウスに発育した子宮内
膜症様病変の個数および重量を測定した(ヒアルロン酸群)。
尚、コントロール群(C 群)にはヒアルロン酸と同量の PBS を投与した。
【成績】 ヒト)正所性および異所性子宮内膜組織に CD44 遺伝子が発現していることを認めた。腹腔内貯
留液中の可溶型 CD44 濃度は、非子宮内膜症患者では平均で 257 ng/mL(196‒337)であったの対し、I/II
期で 310 ng/mL (261‒442)、III/IV 期で 460 ng/mL(311‒758)であり、子宮内膜症病変の存在(p=0.0004)、
および病期の進行に伴い(p<0.05)有意に濃度が増加した。
マウス)ヒアルロン酸投与により、マウスに体重減少等の副作用を認めなかった。子宮内膜症様病変の個
数は、C 群とヒアルロン酸群で、共に平均 1.9 個と差を認めなかったが、病変重量は C 群で 132±32 mg
に対し、ヒアルロン酸群では 48±17mg と減少した(p<0.01)。
【結論】ヒト検体の解析により、子宮内膜症の発症および病期の進展に接着因子 CD44 が関与しているこ
とが示唆された。また、マウスモデルを用いた検討により、ヒアルロン酸投与は、子宮内膜症様病変を縮
小化させることを認めた。ヒアルロン酸製剤の作用機序として子宮内膜細胞に発現する CD44 と腹膜細胞
に発現する内因性ヒアルロン酸との結合を阻害することで、腹腔内に注入された子宮内膜細胞の腹膜へ
の生着を阻害することが考えられた。同薬剤は既に他科領域では臨床利用されており、子宮内膜症に対
しても使用できる可能性が考えられた。
32
S2-2
月経期子宮内膜における HLA-G 抗原の発現と逆流経血への腹腔内免疫応答
高知大学産科婦人科
◎ 前田長正
【目的】子宮内膜症の原因として逆流経血に伴う内膜移植説が有力である。有経婦人の腹腔内には逆流
抗原に対する免疫学的排除機構が生理的に存在し、NK 細胞とマクロファージがその中心的役割と考えら
れている。㈰NK 細胞:内膜症婦人では NK 細胞の機能低下が報告されているがその認識する抗原は未だ
同定されていない。近年 NK レセプターの一つ KIR のリガンドである HLA-G が内膜症腹膜病変に発現し
ていることが示された。今回は逆流経血の上流である子宮内膜における HLA-G の月経周期毎の発現パ
ターンとその機序とくに近年報告されているストレス蛋白との関連について解析した。㈪マクロファージ:マ
クロファージの中心的役割である抗原提示能について、免疫シナプスを構成する分子発現を検討した。以
上の NK 細胞とマクロファージについての検討成績から、内膜症に特徴的な腹腔内免疫応答について考
察することを目的とした。
【方法】㈰HLA-G および Hsp70:対象は当科において同意の得られた過去 5 年間に開腹もしくは腹腔鏡下
に子宮を摘出した有経婦人とした。子宮内膜組織の HLA-G と Hsp70 を免疫染色で検出し月経周期別に
検討した。染色性は NIH image にて定量化した。㈪同意のもとに腹腔鏡下に得た腹腔貯留液のマクロファ
ージの HLA-class I および class II 分子の発現を flowcytometry で測定した。
【成績】㈰HLA-G は月経期にのみ子宮内膜上皮に発現し、増殖期・分泌期(非月経期)には発現していな
かった。同じ内膜上皮における Hsp70 は、月経期が非月経期に比較し有意に強い発現を認めた。また
Hsp70 と HLA-G の発現の間には有意の正相関を認めた。以上の結果は内膜症群・非内膜症群ともに同
様で群間差を認めなかった。両群とも月経期には腹腔に多くの HLA-G 陽性細胞を認め、逆流して腹腔抗
原となっていることが示唆された。㈪腹腔マクロファージの HLA 発現量は、class I、class Ii ともに内膜症群
が有意に低値であった。腹腔貯留液中の IFN-γ 濃度も内膜症群が有意に低値で、HLA 発現量との間に
有意の正相関を認めた。
【結論】NK 細胞の認識する HLA-G 抗原が正所性内膜に月経期にのみ発現していることを明らかとした。
この HLA-G を発現した月経期剥離内膜の一部が腹腔内に逆流し、KIR を介して NK 細胞の標的となり生
理的に排除されていると考えられる。しかし NK 細胞による細胞傷害が不十分な場合には、内膜組織が遺
残する可能性が示唆された。またこの場合、NK からの IFN-γ 産生が低く、マクロファージの HLA 発現も
不十分で抗原提示能が低下すると予想される。このような腹腔内の NK 細胞とマクロファージによる処理
機構の低下が慢性的に持続し、内膜症の発症と進展に関与している可能性が示された。
33
S2-3
子宮内膜症の瘢痕化に対するジェノゲストの効果 ―脱落膜化との関連―
大分大学医学部産科婦人科
◎ 奈須家栄、津野晃寿、弓削彰利、楢原久司
【目的】子宮内膜症病変は、月経周期に伴って出血、凝血、吸収を繰り返して瘢痕化し、増悪する。我々
は、正常子宮内膜に比べて子宮内膜症組織の contractility は増強しており、より瘢痕化しやすいことを報
告した。子宮内膜症の治療薬として用いられているプロゲスチン製剤および低用量経口避妊薬は、子宮
内膜症病変の脱落膜化を誘導することによって病状の進行を抑え、病変を退縮させると考えられている。
今回、子宮内膜症の瘢痕形成に及ぼすプロゲスチンの効果を明らかにするため、瘢痕形成の in vitro
model として我々が確立した子宮内膜症間質細胞の collagen gel 三次元培養法を用いて、contractility の
観点から検討した。
【方法】卵巣子宮内膜症性嚢胞または子宮筋腫の手術時に、患者の同意を得て子宮内膜症組織および
分泌期後期の正常子宮内膜を採取した。採取した組織から、子宮内膜症間質細胞および正常子宮内膜
間質細胞を分離・培養した。Dibutyryl-cyclic adenosine monophosphate (5.0×10-4 M) + dienogest
(1.0×10-7M)または medroxyprogesterone acetate (MPA) (1.0×10-7 M)を添加して 12 日間培養し、脱落膜
化を誘導した。Type I collagen 溶液内に 6×105 cell/ml の細胞濃度になるように脱落膜化した子宮内膜症
間質細胞および正常子宮内膜間質細胞を懸濁した。35 mm dish に 2 ml ずつ分注し、37℃で 2 時間培養し
て gel 化させた。Tapping して collagen gel を dish から浮遊させ、48 時間培養後に collagen gel の表面積を
測定した。さらに collagen gel の収縮メカニズムについて解明するため、瘢痕形成の際に発現する筋繊維
芽細胞のマーカーである α-smooth muscle actin(α-SMA)、子宮内膜症細胞の contractility に関与する
Rho A、Rho-associated coiled-coil-forming kinase (ROCK) 1、ROCK 2 の発現について、western 法を用
いて検討した。
【成績】子宮内膜症間質細胞を懸濁した collagen gel は、非脱落膜化状態では 89.6±1.6%収縮した。これに
対し、dienogest による脱落膜化では 49.2±1.3%、MPA による脱落膜化では 46.9±0.8%の収縮が認められ、
脱落膜化により collagen gel の収縮が有意に抑制された(ともに p<0.0001)。正常子宮内膜間質細胞を懸濁
した collagen gel は、非脱落膜化状態では 38.4±1.6%収縮したが、dienogest による脱落膜化では 25.2±
1.3%、MPA による脱落膜化では 18.5±0.8%の収縮を認められ、脱落膜化により collagen gel の収縮が有意
に抑制された(ともに p<0.0001)。Western 法では、脱落膜化により子宮内膜症間質細胞、正常子宮内膜間
質細胞ともに α-SMA、Rho A、ROCK 1、ROCK 2 の発現が著明に抑制された。
【結論】脱落膜化により、子宮内膜症間質細胞および正常子宮内膜間質細胞の myofibroblast への分化と
contractility が抑制された。脱落膜化は、子宮内膜症病変の tissue remodeling を調節することにより瘢痕
形成を軽減し、子宮内膜症の病態形成を防止する可能性が示唆された。
34
S2-4
Narrow Band Imaging System による子宮内膜症症例の正常腹膜血管密度の測定
と腹水サイトカインの評価
順天堂大学医学部 産科婦人科
◎ 黒田恵司、武内裕之、黒田雅子、白井洋平、地主 誠、松岡正造、熊切 順、菊地 盤、北出真理、
竹田 省
【目的】子宮内膜症の腹膜病変は血管新生を伴い活動性の高い red lesion、内部に出血を伴う black
lesion、線維化した white lesion と 3 種に分類される。一方 NBI(Narrow Band Imaging)とは、粘膜表面の毛
細血管を強調表示する光学的画像技術であり、これにより NBI システムを用いて子宮内膜症症例の腹膜
を観察し、腹膜血管密度を測定し、同時に腹水サイトカインを測定した。
【方法】2007 年 5 ∼10 月に当院で HDTV NBI system (Olympus 社)を用いて腹腔鏡手術を行った 63 症例
を対象とした。子宮内膜症症例:GnRHa 投与 A 群 27 例、非投与 B 群 10 例、非内膜症症例:GnRHa 投与
C 群 18 例、非投与 D 群 8 例の外腸骨動脈上の腹膜(骨盤内血行状態の指標)を標準光と NBI で撮影し、
血管解析システム「SolemioENDO(ソレミオエンド)」で単位面積当たりの血管密度を解析した。また同時に
腹水を採取し炎症性サイトカインの測定を行った。
【 成 績 】 外 腸 骨 動 脈 上 の 腹 膜 の 血 管 密 度 は A-D 群 で 標 準 光 33.4,35.1,31.9,33.4 % で あ り 、 NBI
36.1,37.8,32.4,32.6%であった。標準光では 4 群で有意差を認めなかった(p=0.228)が、NBI では内膜症症例
(A,B 群)が有意に血管密度が高かった(p=0.036) 。また腹水は IL-6: 28.4,86.6,26.1,37.5pg/ml、IL-8:
17.7,42.8,1.2,1.7 pg/ml、TNFα: 1.9,1.2,1.3,1.2 pg/ml、VEGF: 224.7,253.0,209.5,185.0 pg/ml であった。IL-6、
IL-8 で子宮内膜症、GnRHa 非投与の B 群が有意に高値(p=0.015,0.032)で TNFα,VEGF では有意差を認
めなかった(p=0.827,0.952)。
【結論】NBI を用いることにより、子宮内膜症症例の正常腹膜の血管密度が高いことが明らかとなったが、
GnRHa による血管密度の変化は認めなかった。また NBI により、標準光では観察不可能な初期子宮内膜
症病変の観察が可能であることがわかった。腹水サイトカインは、NBI による腹膜血管密度と相関するも
のは認めなかった。その中でも IL-6、IL-8 は子宮内膜症症例で高く、GnRHa で抑制されていた。
35
S2-5
子宮内膜症間質細胞(ESC)における Th17 系サイトカイン IL-17F の作用について
東京大学女性診療科
◎ 平田哲也、大須賀穣、高村将司、児玉亜子、長谷川亜希子、吉野 修、甲賀かをり、竹村由里、
矢野 哲、武谷雄二
【目的】我々は、子宮内膜症患者の腹腔内貯留液中に Th17 という IL-17A, IL-17F を分泌する病原性の高
い T 細胞の subset が存在し、Th17 系サイトカインである IL-17A が子宮内膜症の進展への関与を示唆す
る結果を報告した。しかし、Il-17A よりも IL-17F が主に炎症性の病態に関わっている疾患の報告が見られ
る。そこで、今回 IL-17F の ESC に与える影響につき検討した。
【方法】患者の同意を得た上で、切除した子宮内膜症性卵巣のう胞より ESC を分離培養し、以下の検討に
供した。(1). ESC における IL-17 受容体A、IL-17 受容体 C の発現を調べた。
(2).ESC を IL-17F(0.01ng/ml-100ng/ml)を添加し、培養上清中の IL-8 の産生を ELISA 法にて測定した。(3).
ESC に IL-17 受容体 A の抗体、IL-17 受容体 C の抗体を添加した上で、IL-17F 50ng/ml にて刺激し、上
清 中の IL-8 の産 生 を ELISA 法 にて測 定し た。(4).ESC に IL-17F(10ng/ml) を添 加し、 IL-8mRNA,
COX2mRNA の 発 現 の 変 化 に つ き 検 討 し た 。 (4).ESC を TNF (1ng/ml) の 存 在 下 に
IL-17F(1ng/ml-100ng/ml)を添加し、培養上清中への IL-8 産生を ELISA 法にて測定した。
【成績】(1). ESC において IL-17 受容体 A、IL-17 受容体 C の発現を確認した。(2).IL-17F(10-100ng/ml)添
加によって、ESC による IL-8 産生が有意に増加した。(3). IL-17 受容体 A、受容体 C の中和抗体によって
IL-17F 添加による IL-8 産生は有意に抑制された。(4). IL-17F 添加後 4 時間、8 時間において有意に
IL-8mRNA, COX2mRNA の発現が増加した。(5). IL-17F とTNFを同時添加することにより相乗的に IL-8
産生が増加することがわかった。
【結論】IL-17F は、IL-17 受容体A、受容体 C を介して ESC の IL-8 産生を亢進させた。IL-17F は、IL-17A
と同様に ESC における IL-8 産生、COX2 の発現を増加させ、子宮内膜症の進展に関与することが示唆さ
れた。また、TNFの存在下において、その炎症性の作用を劇的に増強することがわかった。Th17 系サイ
トカインは子宮内膜症の進展において、accelerator としての役割を持つと考えている。
36
S3-1
子宮腺筋症縮小術(debulking surgery)の妊孕性向上におよぼす効果について
熊本大学大学院医学薬学研究部 婦人科学産科学
◎本田律生、岡村佳則、本田智子、宮原 陽、田代浩徳、大場 隆、片渕秀隆
【目的】子宮腺筋症は子宮内膜腺組織および間質組織が子宮筋層内をびまん性に占拠した病態であり、
病巣容積の増大とともに月経困難症、慢性骨盤痛、過多月経などの臨床症状は増悪し、挙児希望例では
妊孕性の低下をきたす。当施設では、1990 年より開腹下に子宮腺筋症病巣を可及的に切除する子宮腺
筋症縮小術(debulking surgery;以下本手術)を行っており、臨床症状の改善ならびに妊孕性向上に有用で
あることを報告してきた。その基本的方針は、①再燃を考慮して未婚例や挙児希望のない例では出来る
限り保存的治療を行い、妊娠を希望した時点で本手術を考慮すること、②術後 3 ヶ月の避妊期間の後
ART を含めた積極的な不妊治療を行うこと、③妊娠成立例では子宮破裂の危険性を考慮し分娩様式は
選択的帝王切開術とすること、である。手術手技に関しては、子宮漿膜と病巣との間を分離し、側方から
病巣と漿膜、あるいは正常筋層との間を十分に分離・切開し病巣最深部を子宮内腔面と平行な面で切断
し病巣を摘出、死腔を生じないように、また結紮糸で断端組織を断裂させないように縫合し、癒着防止策
を講じることを基本としている。今回の検討では、不妊に対する本手術の妊孕性向上に及ぼす効果や妊
娠成立例ではその予後を解析し、妊孕性温存を要する子宮腺筋症に対する治療方針について考察する
ことを目的とした。
【方法】対象は 1990 年から 2005 年までの 16 年間に本手術を行った 51 例で、術前の MRI により子宮の
前壁、後壁のいずれか一方のみに病巣が限局し、病巣摘出後の子宮壁の修復が可能と判断され、他の
不妊因子の有無についても評価が行われ、その程度が軽微で克服可能と判断された例である。これらの
症例の年齢、不妊期間、併施術式、術後の治療内容、妊娠成立の有無、妊娠の転帰について後方視的
に検討した。
【結果】年齢は 34.8±4.5 歳、不妊期間は 46.3±34.7 ヶ月であった。86%の症例には筋腫核出術、癒着剥
離術、チョコレート嚢胞核出術などが併せて施行された。術後 22 症例(43.1%)に妊娠が成立し、妊娠成
立周期は自然周期が 12 周期、体外受精胚移植が 8 周期、クロミフェンが 2 周期であり妊娠成立までの期
間は 16.6±12.0 ヶ月であった。6 例は流産に終わったが、健児を得た 16 例中早産例は 1 例(35 週)のみ
で 15 例は正期産であり、子宮破裂を来たした症例はなかった。妊娠例と非妊娠例の間の比較において、
年齢、経妊・経産回数には差はなく、不妊期間が非妊娠例において長期間となる傾向があった(36.9±6.1
ヶ月 vs 58.4±14.2 ヶ月)。
【考察】子宮腺筋症に対する妊孕性改善を目的とした治療として、適応と要約に基づいた保存的手術を選
択することは有効な手段であると考えられ、術後早期から ART による治療を積極的に行うことで、健児獲
得率の向上が期待できる。
37
S3-2
腹腔鏡下子宮腺筋症摘出のポイント∼病巣の形状に注目した術式の使い分け∼
倉敷成人病センター産婦人科
◎ 太田啓明、羽田智則、出浦伊万里、三木通保、高木偉博、金尾祐之、安藤正明
【緒言】子宮腺筋症は生殖年齢女性の 1%から 36%に認められ、妊孕性温存を希望する場合、Gn-RHa 療
法やダナゾール、OC 療法、レボノルゲストレル付加 IUS などの治療法が選択される。しかしそれらの薬物
療法では効果が認められない場合や短期間での症状の改善を希望された場合、手術療法である子宮腺
筋症切除術が選択される。しかし手術療法は薬物療法に比べ侵襲が大きいばかりか、適切な縫合修復を
行わなければ、術後分娩時の子宮破裂など重篤な合併症につながる恐れがある。そこで当院では、子宮
腺筋症の形状(広がり)に着目し、子宮腺筋症切除術に工夫を行った。
“根治性を損なわず、かつ術後合併症を回避する”術式のポイントを 2003 年から 2008 年 9 月までに行っ
た 26 件の腹腔鏡下腺筋症切除術をもとに解説する。
【方法】子宮腺筋症は主に腫瘤形成型と子宮全体に及んでいる瀰漫型に分類され、稀に嚢胞を形成する
ことも報告される。当院では腺筋症の形状(広がり)に合わせて術式の工夫を行っている。腫瘤形成型に
対しては比較的境界が明瞭であることが多く、平滑筋腫に準ずる方法で核出する。瀰漫型に関しては、病
変が小さい場合には楔状切除(wedge resection)のうえ縫合修復を行う。一方病巣が大きい場合には
defect を縫合修復する際、楔状切除を行うと創面を寄せるのか困難となるため、病巣を広く切除したうえ
に筋層の縫合を容易にする convex lens resection を行っている。この方法は漿膜の欠損が少なく修復容
易に行うことができる。
【成績】2003 年から 2008 年 9 月まで 26 件の腹腔鏡下腺筋症切除術を行なった。年齢:34±5 歳、手術時
間:121±35 分、出血:263±240g、摘出重量:61±68g であった。Convex lens は 4 件、Wedge resection12
件行った。全 26 症例中、妊娠症例は 3 例あり、自然妊娠が 2 例、ART が 1 例であった。妊娠症例はいず
れも妊娠 10 ヵ月で帝王切開を行い、生児を得ている。
【考察】子宮腺筋症切除術は筋腫核出術を異なり、切除範囲を決めるのに苦慮する場合がある。また縫
合修復も筋腫核出術以上に創部に緊張がかかることが多く腹腔鏡下腺筋症摘出術には超えなければな
らないハードルが多い。
病変の摘出範囲の決定に関しては、腹腔鏡手術は病変部の触診ができないものの、正常筋層との断面
の性状や出血量の違いを目安に行っている。
縫合修復に関しては、子宮腺筋症病変部を凸レンズ上にくり抜く手法(convex lens resection)により広範
な病巣(104±77g)の摘出をおこないつつ十分な強度を持って縫合修復が可能であった。
【結語】我々の行う腺筋症の形状(広がり)に着目した腹腔鏡下腺筋症切除術は手術の根治性を損なうこ
となくかつ術後合併症を回避できる有効な方法であると考えられる。
38
S3-3
子宮腺筋症のタイプに応じた 2 つの Laparoscopic adenomyomectomy の開発
とその手術成績に関する検討
順天堂大学産婦人科
◎ 北出真理、武内裕之、黒田雅子、地主 誠、白井洋平、黒田恵司、松岡正造、熊切 順、菊地 盤、
竹田 省
【目的】近年の晩婚化および少子化の影響により、未婚・未産婦人における子宮腺筋症の罹患率が増加
しているが、妊孕能を維持した状態での治療に苦慮することが少なくない。
2006 年に本邦において、開腹による子宮腺筋症切除術が先進医療の適応となったが、当科では 2000 年
から LA を導入し、2 種類の標準術式を開発し、術式の適用基準を作成した上で prospective に長期予後
を追跡している。今回の検討では、LA による手術成績と治療効果に加えて、術式の安全性に関しても検
討した。
【方法】術前治療としては、deep infiltrating endometriosis の合併率が高い後壁の腺筋症に対してのみ、
約 3 か 月 の GnRH agonist の 術 前 投 与 を 行 っ た 。 術 式 の 選 択 基 準 と 手 術 方 法 を 示 す 。 Wedge
Resection(WR)は、腺筋症腫瘤の直径が 5cm 以下で外向性発育のものを対象とし、筋層を V 字型に切り
込み漿膜を病巣とともに切除する。一方、Double Flap (DF)は直径 7cm までの内向性発育の腺筋症に対し
施行し、腺筋症結節を内膜付近まで半切した後、内膜側の病巣をえぐる様に切除し、残った漿膜側の正
常筋層を上下のフラップとして重ね合わせる方法である。術後 6 ヵ月目には second look laparoscopy(SLL)
を施行し、創部の評価を行った。
2000 年∼2006 年に当科で LA を施行した 47 例に対して、以下の 3 項目を検討した。
1) WR 群(19 例)と DF 群(28 例)において、手術成績を比較検討した。
2)SLL により、創部の状態と術後癒着を評価した。
3)術後の症状の推移と、妊娠率、分娩転帰について検討した。
【成績】1) WR 群と DF 群における手術成績は、手術時間がそれぞれ 125.4±52.0、141.2±39.1 (min)、出血
量が 186.1±198.9、201.3±132.9 (ml)、 摘出重量は 21.3±23.3、31.2±18.3 (g)あった。全ての項目で、2
群間で有意差はなかった。2) 22 例に SLL を施行したが、全ての症例で子宮創部の菲薄化や縫合不全は
認めなかった。子宮創部に術後癒着を認めた症例は、軽微な癒着を含めて 10 例(45.4%)、付属器は 1 例
(4.5%)のみであった。3) 術後の VAS(Visual Analog Scale)は術前に比べて有意に低下し(9.4→3.3)、ほと
んどの症例で月経過多も改善した。術後の妊娠率は 45.0%(9/20)で、そのうち 7 例(77.8%)が出産に至った。
妊娠中や分娩時の子宮破裂は認めなかった。
【結論】腹腔鏡下腺筋症切除術は、低侵襲かつ治療効果に優れた有用な手術療法であると考えられた。
39
S3-4
腹腔鏡下ダグラス窩子宮内膜症病巣切除術の定型化と疼痛緩和効果に関する
検討
慶應大・医学部 産婦人科1、日本鋼管病院婦人科 2、済生会中央病院婦人科 3、北里研究所病院婦人
科 4、新川崎こびきウイメンズクリニック 5
◎ 浅田弘法 1 、古谷正敬 1 、梶谷 宇 1、内田 浩 1 、丸山哲夫 1、吉村泰典 1、升田博隆 2 、岸 郁子 3 、
田島敏秀 3、寺西貴英 4、木挽貢慈 5
【目的】ダグラス窩の子宮内膜症病変は、慢性骨盤痛、性交時痛、排便時痛などの疼痛症状を生じさせること
が多い。われわれは、両側仙骨子宮靱帯およびダグラス窩の領域に存在する子宮内膜症病巣を切除する術
式を腹腔鏡下で施行している。今回我々は、(1)ダグラス窩子宮内膜症病巣切除術式を標準化すること、(2)
標準化された術式に対して、疼痛再発率、子宮内膜症再発率、手術合併症について検討を行うことを目的とし
て検討を行った。また、外科的治療によっても疼痛が改善しない症例が存在することから、腹水中の疼痛関連
因子の候補として、(3)腹水中の NGF と骨盤痛の関連についても検討し、今後の治療方針への考察を行った。
【対象および方法】骨盤痛、月経困難症、性交時痛などを主訴として来院し、内診上で著明な圧痛を認めた症
例を対象とした。2004 年 1 月∼2006 年 10 月までにダグラス窩領域の腹腔鏡下子宮内膜症切除術を施行し、2
年以上の経過観察を行った 18 症例を検討した。今回の術式は、標準化されたダグラス窩子宮内膜症切除、卵
巣および腹膜子宮内膜症病巣切除術である。術後の月経困難症、内診時の圧痛、性交時痛について visual
analog scale(VAS)、および verbal rating scale(VRS)で評価を行った。また、子宮内膜症および非子宮内膜症患
者の腹水を採取し、腹水中の NGF を測定した。骨盤痛を月経困難症と骨盤の圧痛に分離して評価し、腹水中
の NGF 濃度と骨盤痛との関連性について検討を行った。
【成績】術前と術後約1年で疼痛の推移を比較し、月経時疼痛は術前の 7.9 か 2.7(VAS)へと減少した。内診時
の圧痛は術前はすべての症例に認めたが、術後約1年では、7%へと減少傾向を認めた。子宮腺筋症を併発し
ている症例においても手術直後はダグラス窩の圧痛のみならず、月経困難症も軽快する傾向を示したが、子
宮腺筋症存在は月経困難症の再発が高い傾向が認められた。また、術前の骨盤痛と腹水中の NGF について
検討を行ったが、子宮内膜症の進行期と NGF 濃度および子宮内膜症と非子宮内膜症において腹水中の NGF
濃度の差は認めなかった。一方、子宮内膜症患者群においては、腹水中 NGF と骨盤痛との関連性を認めた。
【結論】腹腔鏡下ダグラス窩子宮内膜症病巣切除術により、骨盤痛は短期的には著明に改善し、術式の定型
化が可能であると考えられた。子宮腺筋症を合併している症例は、長期的には再発率が高いと予測されるが、
手術後1年程度は月経困難症が改善する可能性が示された。妊孕能を温存し、かつ疼痛緩和効果を得るため
には、外科的治療以外の維持療法の開発が今後必要であると考えられた。NGF を含めた疼痛関連分子や、子
宮内膜症の進展制御をすることができる分子標的治療などの開発が今後必要であると考えられた。
40
S3-5
腸管・尿管に及ぶ深部子宮内膜症に対する腹腔鏡下手術̶
倉敷成人病センター産婦人科
◎ 安藤正明、太田啓明、羽田智則、出浦伊万里、三木通保、高木偉博、金尾祐之
【目的】、子宮内膜症はときに病変が後腹膜へ進展し罹患臓器の機能障害あるいは腫瘤の形成を惹起する場
合がある。尿管・直腸子宮内膜症はこのような深部子宮内膜症の一形態である。尿管子宮内膜症は尿管狭窄
あるいは閉塞を起こし、水腎症から腎機能の低下を招き、極端な場合は無症状に経過し腎機能の廃絶する例
も報告されている。また直腸子宮内膜症は出血・狭窄・悪性化などが問題となり、貧血や排便障害が起こる場
合がある。ひとたび線維化や硬化を起こした狭窄部に薬物療法は限られた効果しか望めず治療法としては手
術が基本となる。これらの疾患では時に腫瘤切除のため臓器の区域切除と再建術など侵襲の大きな手術操作
が必要となる。今回、本疾患に対する低侵襲な腹腔鏡による手術法を紹介する。
【方法】我々は 2002 年から 12 例の尿管子宮内膜症例に腹腔鏡下尿管切除・尿管膀胱新吻合を、また 11 例の
腸管子宮内膜症に High/Low Anterior resection を行ってきた。尿管および直腸狭窄に対し一期的に腹腔鏡下
手術で同時に治療し得た症例を提示しその手術手技をビデオで供覧する。〔症例〕近医で骨盤子宮内膜症およ
び左側骨盤内尿管狭窄を指摘され紹介された。月経時の直腸出血がと排便障害の訴えがあり Ba 注腸造影と
骨盤 MRI で直腸粘膜下腫瘍が疑われ同時に直腸部分切除を予定した。[手術手技]腹腔鏡下子宮全摘術の
後、以後の操作を 2 つのステップに分けて行った。
step 1.後腹膜は著しい線維化がおこり高度の尿管狭窄を認めた。後腹膜を鋭的および鈍的に剥離展開し、尿
管閉塞部を露出しこれを切除した後,尿管膀胱新吻合を施行した。尿管欠損部が大きい場合、泌尿器科領域で
は Psoas hitch や Boari flap など膀胱を切開した後、牽引し膀胱の一部を導管化して欠損部を補う方法などが
行われている。今回尿管の欠損部が大きく Psoas hitch と Boari flap を併用し良好な結果を得られた。膀胱壁の
一部を切開しフラップを作り尿管欠損部方向に延長するように導管を形成した。この膀胱壁フラップで形成した
導管と尿管を吻合するが尿管膀胱逆流の防止に粘膜下トンネルを形成した。吻合は腔内縫合で行った。
Step 2.腹腔鏡下子宮全摘に引き続き S 状結腸・直腸区域切除と double stapling technique による再吻合を行っ
た。直腸病変部の下縁を linear stapler で切断。断端を膣から外に出し、体腔外で病変部の上縁を切断。断端
に anvil を装着し腹腔内にもどし circular stapler を用いて吻合を行った。
【成績】術後の回復は極めて早く翌日歩行と常食摂取が可能となった。縫合不全も認めず、合併症は認めなか
った。その後の follow up で再狭窄や出血は認めていない。
【結論】高度の剥離操作と縫合操作が必要となるが、腹腔鏡下手術はその術野拡大能と深部到達能などの優
位性から骨盤深部で繊細な操作が要求される再建術には合理的な手法であり、また患者の肉体的、また精神
的負担も軽減する有用な手技と考える。
41
A1-1
2 年の経過観察の後に診断された回盲部子宮内膜症の1例
健保連 大阪中央病院 婦人科 1、同外科2
◎ 奥 久人 1、松本 貴 1、佐伯 愛 1、棚瀬康仁 1、久野 敦 1、山口裕之 1、伊熊健一郎 1、吉川正人2、
谷口英治2
【緒言】子宮内膜症は、不妊症や月経困難症だけでなく、病状が進行すると慢性骨盤痛を引き起こすこと
が知られている。この疾患の発生部位は、卵巣を含む生殖臓器を中心に発生する事が多いが、呼吸器系
や尿路系や消化器系などの他臓器にも発症することも知られている。今回、月経時に反復するイレウスを
契機に診断され、腹腔鏡併用下に治療し得た回盲部子宮内膜症を経験したので報告する。
【症例】40 歳、未婚、未経妊。2004 年頃より月経時に心窩部痛を認めていたが、症状は自制内であったた
め経過観察していた。しかし、症状は増悪傾向を認め、2005 年 6 月に上部消化管検査を施行したが、異
常なしであった。2006 年 6 月には月経時の嘔吐で入院管理。その後、婦人科受診もされたが、骨盤内の
異常は指摘されなかった。2007 年 1 月の月経時にもイレウスで再入院管理となったが、CT 検査でも明ら
かな病巣は確認できず。しかし、同年 4 月のイレウス症状にて再々入院管理。施行された経肛門的小腸
内視鏡では、終末回腸から口側への内視鏡挿入が不可能。症状増悪時の CT では、終末回腸壁の肥厚
と癒着、さらにその尾側に 3cm 台の腫隆を認め、同部の子宮内膜症が強く疑われ当科紹介受診となり、
症状改善を目的に 9 月に腹腔鏡下手術となった。腹腔鏡下には、骨盤腹膜に軽度の子宮内膜症病変を
認めたが、子宮と卵巣には異常は認めず。腸管検索で、回盲部から口側に約 20cm の部位に子宮内膜症
によると思われる腫隆を認め、腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した。術後の合併症やトラブルはなく、
1 年経過した現在もイレウスの再発もなく経過は良好である。
【考察】他臓器に発症した子宮内膜症では、月経時であっても症状は腹痛や下血や吐血などのため、多く
の患者は婦人科以外の科を受診していると考えられる。特に、本症例では、月経時に強い腹痛を認めた
ものの、婦人科的な症状には乏しく、婦人科医師の施行した理学的所見では子宮内膜症の診断に至らず、
確定診断に 2 年を要した。適切な治療のためには、婦人科以外の医師であっても日頃より月経との関連
にも意識し、必要時には関連科とも連携した総合診療が必要と考える。また、婦人科医師にとっても、骨
盤内に婦人科疾患を疑う所見が乏しくても、月経周期に応じた症状をきたす症例においては長期にわた
る経過観察の必要性を示唆した症例であったと考える。
42
A1-2
腸閉塞を来した回腸子宮内膜症の2例
慶応義塾大学医学部産婦人科1、 同外科2
◎ 古谷正敬1、浅井哲1、芥川英之1、辻紘子1、浅田弘法1、篠田昌宏2、長谷川博俊2、吉村泰典1
【緒言】腸管子宮内膜症は珍しくなく、子宮内膜症の12%から37%に生じると報告されている。しかしそ
のほとんどはS状結腸から直腸にかけて発症し、小腸子宮内膜症は比較的稀な疾患である。小腸子宮内
膜症は回腸末端にみられることが多いとされる。我々は腸閉塞を来した回腸子宮内膜症の2例を経験し
たので文献的考察を加え報告する。
【症例1】35歳。0経妊0経産。3年前より軽度の月経困難症状と右卵巣に直径5cm大の子宮内膜症性卵
巣嚢腫を認めていた。1ヶ月前より腹部全体の疼痛を自覚していた。1週間前より排便なく、37.5度の発
熱、腹満および腹痛が増悪したため受診となった。CTにて右卵巣嚢腫の頭側で小腸が腫瘤を形成してい
ることが確認され、イレウス管の挿入を行っても減圧が十分にできなかったため緊急開腹手術を行った。
回盲弁より10cm口側に狭窄部を認めたため、回腸末端を部分切除したのち吻合をおこなった。術後経過
は良好で術後16日で退院となった。病理検査にて狭窄部漿膜から筋層にかけて子宮内膜類似腺管構造
を認め回腸子宮内膜症と診断した。
【症例2】40歳。0経妊0経産。以前より軽度の月経困難症状および月経時の下痢があり経過観察されて
いた。1ヶ月前より腹痛が出現、2週間前より食事制限および補液で経過観察していたが改善がみられな
いため受診となった。CTおよびMRIにて回盲部付近の狭窄が疑われ骨盤内子宮内膜症病巣と接してい
ることから腸管子宮内膜症による腸閉塞と診断した。下部消化管内視鏡では回腸末端まで観察したが異
常は確認できなかった。イレウス管の挿入により減圧を行い、待機的に腹腔鏡手術をおこなった。手術は
骨盤内病巣に対する腹腔鏡下子宮内膜症病巣切除および癒着剥離術とともに回腸12cmを含む回盲部
切除を行った。術後発熱があり抗生剤投与を要したが術後21日目に退院となった。病理検査では回腸固
有筋層から漿膜下にかけて繊維化と増殖期相当の子宮内膜腺様組織を認め回腸子宮内膜症と診断し
た。
【考察】回腸末端に発生した小腸子宮内膜症を2例経験した。小腸子宮内膜症の腸管子宮内膜症にしめ
る割合は7%とされ比較的稀であるが、回腸末端は小腸子宮内膜症の好発部位である。2症例とも骨盤
子宮内膜症の経過観察中に腹痛を主訴に発症し、1ヶ月程の経過で緩徐に腸閉塞が進行した。今回 CT
やMRIによる画像検査が術前診断に有用であったが、小腸閉塞を来す疾患は多く必ずしも術前の確定診
断は容易でない。閉塞症状をきたした小腸子宮内膜症の治療は外科的治療が選択される。したがって、
骨盤子宮内膜症の患者が小腸閉塞による腸閉塞を来した場合は小腸子宮内膜症の可能性を考え産婦
人科と外科で連携して管理を進める必要がある。また骨盤子宮内膜症の手術の際に回腸末端から回盲
部にかけての状態を確認することが望ましい。
43
A1-3
腹腔鏡補助下に腸管合併切除を施行した腸管子宮内膜症の2症例
JA 北海道厚生連 帯広厚生病院 産婦人科 1、同院 外科2
◎ 森脇征史 1、明石大輔 1、遠藤大介 1、蒲牟田恭子 1、武井弥生 1、服部理史 1、高田 実2、大野耕一2、
川口 勲 1
【緒言】子宮内膜症は月経困難症や慢性骨盤痛の原因となり、近年増加傾向にある。今回、月経時に繰
り返す腸管狭搾による症状から診断され、腹腔鏡補助下に治療し得た腸管子宮内膜症の 2 症例を経験し
たので報告する。
【症例】症例 1:37 歳、0 経妊 0 経産、未婚。9 年前より子宮内膜症、右卵巣チョコレート嚢胞と診断され、8
年前に腹腔鏡下卵巣チョコレート嚢胞アルコール固定術を施行、以後経過観察されていた。1 年前より合
計 3 回、月経 2-3 日目にイレウスを発症し消化器内科にて入院精査、保存的治療を繰り返した。下部消化
管内視鏡検査では、上行結腸の変形が高度で内視鏡挿入が困難であった。MRI 検査では両側卵巣に
2-3cm のチョコレート嚢胞を認めた。回盲部子宮内膜症を疑い、GnRHa を使用後の腹腔鏡下手術を施行
した。右卵巣チョコレート嚢胞と子宮、回盲部およびその周囲は強固に癒着し、虫垂は埋没しており同定
不可能であった。右子宮附属器摘出、左卵巣チョコレート嚢胞核出、深部病変の摘出後に回盲部を授動
し、右下腹部に 5cm の皮切を加えて自動縫合器を用いた機能的端々吻合を行った。
症例 2:46 歳、0 経妊 0 経産、未婚。1 年前より月経困難症および強い排便痛にて近医を受診し、子宮内
膜症、左卵巣チョコレート嚢胞と診断、下部消化管内視鏡検査にて直腸(Rs)の全周性狭搾及び組織診に
て直腸子宮内膜症と診断された。月に一度の直腸狭窄部バルーン拡張および GnRHa 療法、その後、低
容量ピルを使用したが、月経時より症状の増悪を認めたため、手術目的に当院紹介となった。手術前日
に内視鏡下に直腸狭窄部の口側、肛門側に点墨を行い、腹腔鏡下手術を施行した。完全ダグラス窩閉塞
の状態であり、両側卵巣、子宮および点墨した直腸狭窄部は強固に癒着していた。右卵巣を温存し、左
子宮附属器、子宮及び深部病変を摘出した後、直腸を授動し狭窄部の肛門側で自動縫合器を用いて離
断した。下腹部正中に 5cm の皮切を加え、腹壁上で狭窄部を切除した後、アンビルヘッドを装着し再気腹
した。吻合は double stapling technique (DST) を用いた器械吻合 (circular stapler) で行った。
【考察】腸管子宮内膜症において、薬物療法にも関わらず反復する腸閉塞及び強い疼痛に対して、腸管
切除を考慮すべき症例が存在し、そのためには関連科との連携が必要である。
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A1-4
過敏性腸症候群様の症状を呈する直腸子宮内膜症 −腹腔鏡下手術が有効であ
ったと思われる 2 症例から−
健保連 大阪中央病院 婦人科
◎ 奥 久人、松本 貴、佐伯 愛、久野 敦、蔵盛理保子、山口裕之、伊熊健一郎
【緒言】子宮内膜症は、不妊症や月経困難症の原因にとどまらず、病状の進行により慢性骨盤痛を引き
起こすことが知られている。この疾患は、主に卵巣を含む生殖臓器を中心に発生する事が多いが、呼吸
器系や尿路系や消化器系などの他臓器にも発症することも知られている。今回、慢性骨盤痛と月経困難
症のうえに月経時の過敏性腸症候群様の症状を呈した子宮内膜症に対して、腹腔鏡下手術で病巣除去
により改善したと思われる 2 症例を経験したので報告する。
【症例】症例Ⅰ:30 歳、既婚、未経妊。不妊症、月経困難症 visual analog scale(以下 VAS)10、排便痛 VAS
9 で当院紹介受診。月経時には、頻回の下痢や腸蠕動による下腹部痛を認め、過敏性腸症候群に類似し
た症状であった。MRI ゼリー法で、チョコレート嚢胞、深部子宮内膜症、直腸子宮内膜症の診断の下、低
位前方切除もできる準備をして手術に臨んだ。症例Ⅱ:33 歳、既婚、1回経産。第2子希望、月経困難症
VAS 7、排便痛 VAS 9、慢性骨盤痛 VAS 7 で当院紹介受診。月経時には排便コントロールの出来ない下
痢や腸液のみの排出で、月経時の受診の際には電車通院の 40 分間の排便コントロールができない状況
であった。MRI ゼリー法で深部子宮内膜症の診断の下に手術となった。
2 症例とも、腹腔鏡下に癒着剥離、深部子宮内膜症病巣切除、嚢腫摘出術を施行。直腸の狭窄はなかっ
たが、直腸漿膜面に水疱様の内膜症病変を認め、直腸縦走筋を含む直腸半層切除を施行した。症例 1 で
は、術中に低位前方切除の必要はないと判断。術後 3 カ月目の排便痛は VAS 3 となった。症例2の術後
は VAS 5 と改善し、排便コントロールも出来るようになるなど症状の改善は顕著であった。2 症例ともに現
在妊娠を試みている。
【考察】腸管子宮内膜症の一般的な症状は、腸管の器質的な障害や癒着による通過障害である。しかし、
今回経験した 2 症例は、慢性骨盤痛と強い月経困難症の他に、月経時の過度な骨盤痛とともに過敏性腸
症候群に類似した症状を呈していた。また、共に直腸子宮内膜症にある腸閉塞はなく、術前の腸管子宮
内膜症を疑わす所見は乏しかったが、腹腔鏡所見では直腸漿膜面に red lesion を伴う子宮内膜症病変を
認め、この病巣及び骨盤内の深部子宮内膜症の切除にて症状は改善した。過敏性腸症候群の原因には、
度重なる月経痛による精神的な不安や過度のストレスに加え、子宮内膜症病巣部からのプロスタグラン
ジン産生なども誘因の一つと考えられる。保存的治療にも効のない症例の中には、病巣除去が効果を示
すものも存在する可能性があるものと考えられた。
45
A1-5
腹腔鏡下低位前方切除術(LLAR)により得られた腸管子宮内膜症(CRE)の摘出検
体を用いた病理組織学的アプローチによる発生機序に関する検討
順天堂大学病院 産婦人科
◎ 地主 誠、武内裕之、黒田雅子、白井洋平、黒田恵司、松岡正造、熊切順、菊地 盤、北出真理、
竹田 省
【目的】CRE は月経困難症状に加え粘液便、血便や排便痛などの消化器症状を伴う子宮内膜症の最も重
症なタイプである。しかし、その発生機序については不明な点も多い。LLAR により得られた検体における
内膜症組織の分布を検討し、CRE の発生機序について考察した。
【方法】月経に随伴する消化器症状と注腸造影と大腸ファイバーにより CRE が疑われ、M RI ゼリー法で S
状結腸から直腸に陰影欠損を確認して診断した 10 症例(35.1±4.6 歳)を対象に LLAR 行った。摘出した
検体の最も狭窄した部分(主病変)を中心に、縦方向(口側から肛門側)に切開を入れ、主病変を中心に
口側と肛門側へ 2cm 幅の標本を作成した。腺組織と間質によって形成される1つの集塊を 1 つの内膜島
と定義し、その数をカウントすることで病変の広がりを評価した。内膜症病変の腸管軸に対し垂直方向へ
の広がりを検討するために、主病変の腸管組織を 4 層(外縦筋層、内輪筋層、粘膜下層、粘膜面)に分け、
それぞれの層に存在する内膜島の数をカウントした。また、水平方向への広がりは、2cm 毎に分割した標
本に存在する内膜島の数をカウントした。内膜症病変の存在しない腸管を対照として、主病変と対象部分
における内輪筋層と外縦筋層の厚みを計測し、肥厚の割合を比較した。
【成績】全ての症例で腸管の内膜症主病変は、筋層が肥厚し漿膜面を巻き込むように引き連れ、粘膜面
に突出していた。垂直方向への広がりの検討で、各層毎の内膜島の数(mean±SD)は、それぞれ外縦筋
層:12.2±3.6、内輪筋層:6.9±4.0、粘膜下層:3.5±4.1、粘膜面:0 であり、外縦筋層から粘膜面に向かっ
て減少した。また、水平方向への広がりの検討では、主病変:22.6±9.7、口側 2-4cm:7.0±7.4、口側
4-6cm:0、肛門側 2cm:9.6±8.9、肛門側 4-6cm:2.0±2.8 とマージンに向かって漸減した。筋層の肥厚に
対する検討では、内輪筋層において対象の厚みは 0.15±0.03 cm、主病変は 0.51±0.25 cm、外縦筋層の
対象の厚みは 0.08±0.02 cm、主病変は:0.87±0.35 cm であり、対照に比べ主病変の筋層は肥厚しており、
肥厚の割合は内輪筋層に比べ外縦筋層で有意に高かった。今回得られた検体で内膜細胞のリンパ節浸
潤および血管浸潤が各 1 例認められた。
【結論】CRE は漿膜側に発生した内膜症病変が、線維化と平滑筋化成により内腔に invagination し、狭窄
を伴う漿膜面より粘膜面に向って、直接浸潤していく可能性が示唆された。また、いったん固有筋層や粘
膜下層に侵入した内膜症細胞は脈管浸潤により水平方向に広がってゆく可能性が示され、低位前方切
除に際しては、病巣部周辺の剥離を行い、大きく切除することが必要である。
46
A2-6
子宮内膜症を有する不妊症患者に対する腹腔鏡下手術の検討
国家公務員共済組合連合会 浜の町病院
◎ 宮原明子、渡邊良嗣、宮崎順秀、権丈洋徳、片岡惠子、江上りか、福原正生、中村元一
[目的]当院にて腹腔鏡下手術を行い子宮内膜症と診断した不妊症症例 379 例に対し、後方視的
に検討した。
[方法]対象は、平成 12 年1月より平成 18 年 12 月の間に当科にて腹腔鏡下手術を行い、子宮内
膜症と診断した 379 例である。平均年齢は 32.7±3.9 才、平均不妊期間 43.6±28.7 ヶ月、rAFS 分
類は I 期 109 例、II 期 38 例、III 期 111 例、IV 期 121 例だった。内膜症性嚢胞については嚢胞摘出
を基本術式とし、摘出が困難な嚢胞は開窓術や壁の蒸散を行った。また、付属器周囲癒着につい
ては可能な限り剥離し、腹膜の内膜症性病変は蒸散した。術後、当院外来もしくは紹介元にて経過
観察や不妊治療を行ない、9ヶ月以上追跡した。
[成績]術後の妊娠症例は 162 例(I 期 55 例、50.5%、 II 期 16 例、42.1%、 III 期 48 例、43.2%、
IV 期 43 例、35.5%)、非妊娠症例 93 例、不明 124 例だった。平均年齢は妊娠例 31.68±3.64 歳、
非妊娠例 34.0±4.14 歳だった。平均不妊期間は妊娠例 37.38±21.68 ヶ月、非妊娠例 46.55±33.96
ヶ月だった。妊娠症例の治療法は ART によらない妊娠が 107 例(自然 34 例、タイミング 47 例、人
工授精 26 例)、ART による妊娠が 54 例だった。各治療法の 12 ヶ月以内の妊娠は ART によらない
妊娠が 162 例中 88 例(54.3%)、ART による妊娠が 162 例中 27 例(16.7%)だった。
[結論]子宮内膜症を有する不妊患者に対しては、腹腔鏡下手術後 1 年は個々の症例に応じて ART
によらない治療法を選択して良いと考えられた。
47
A2-7
重症子宮内膜症および子宮腺筋症に対する short 法あるいは ultra-long 法を用い
た IVF-ET の治療成績に関する検討
長崎大学産婦人科
◎ 北島道夫、カレク・ネワズ・カーン、平木宏一、井上統夫、増崎英明
【目的】子宮内膜症あるいは子宮腺筋症合併不妊症では,治療に ART を選択する場合も多いが,チョコレ
ート嚢胞手術後の卵巣予備能の低下や再発による骨盤内炎症の存在が治療成績に影響することが考え
られる.このような症例で,ART の成績向上のための工夫として GnRH アゴニストを用いた調節排卵刺激
法を選択する際は, short 法や ultra-long 法を選択することが多い.今回,当科で III-IV 期の子宮内膜症
あるいは子宮腺筋症に対して short 法あるいは ultra-long 法を用いて排卵誘発を行った場合の治療成績
を検討した.
【方法】当科で 2001 年 1 月から 2008 年 7 月までに,III-IV 期子宮内膜症あるいは子宮腺筋症合併不妊症
で,short 法あるいは ultra-long 法で調節排卵刺激を開始した 22 例 35 周期を対象とした.当該期間に
short 法で調節排卵刺激を開始した I-II 期子宮内膜症 6 例 13 周期をコントロールとした.そして,臨床背
景や排卵誘発中の各種ホルモン値の推移および採卵数や妊娠率などの治療成績を比較検討した.
【成績】III-IV 期内膜症のうち,short 法で治療したものが 14 例 18 周期,ultra-long 法が 5 例 6 周期であり,
腺筋症では,short 法で治療したものが 2 例 3 周期,ultra-long 法が 3 例 8 周期であった.Short 法で検討
した場合,GnRH アゴニスト開始翌日の血中 FSH 値は I-II 期内膜症に比して III-IV 期内膜症で有意に高
かったが,hCG 日の E2 濃度には有意差は認められなかった.また,採卵数および総ゴナドトロピン投与量
に I-II 期と III-IV 期内膜症で有意差は認められなかった.III-IV 期内膜症,腺筋症ともに short 法に比べ
ultra-long 法で採卵数が少ない傾向が認められ,short 法で採卵キャンセル周期はなかったが,ultra-long
法では 3 周期で反応性不良のためキャンセルとなった.III-IV 期内膜症では short 法で 4 例,ultra-long 法
で 1 例が妊娠し,周期あたりの妊娠率は I-II 期内膜症と有意差はなかった.腺筋症では,1 例が ultra-long
法で 2 回妊娠したが,いずれも流産であった.
【結論】III-IV 期子宮内膜症や子宮腺筋症を合併した難治性不妊例で ART を行う場合,卵巣予備能の低
下が予想される例ではまず short 法で,また,再発などで活動性病変の存在が予想される例では
ultra-long 法で調節排卵刺激を行うことが有用である可能性がある.ART での調節卵総刺激法にはバリ
エーションが多く,今後,重症子宮内膜症や腺筋症合併不妊症での ART 成績に対するその他の排卵誘
発法の影響を検討する必要がある.
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A2-8
卵巣内膜症性嚢胞に対する腹腔鏡下経腟的エタノール固定術後の妊孕性
弘前大学産婦人科
◎ 藤井俊策、福原理恵、木村秀崇、福井淳史、水沼英樹
【目的】卵巣内膜症性嚢胞を有する不妊女性に対して腹腔鏡下経腟的エタノール固定術 (ethanol
sclerotherapy; EST) または核出術を施行し,術後の再発率,妊娠率,生殖補助医療 (ART) での調節性
卵巣刺激 (controlled ovarian hyperstimulation; COH) に対する卵巣の反応性について前方視的に検討し
た。
【方法】2003 年1月から 2006 年 10 月までの期間に当科で卵巣内膜症性嚢胞に対して腹腔鏡手術を行い,
術後 3 年以上経過した症例を対象とした。2004 年 3 月までは核出術,それ以降は EST を行った。EST は
嚢胞内腔を生理食塩水で十分に洗浄した後,無水エタノールで 10 分間固定した。腹膜病変は argon
plasma coagulator (APC) により焼灼し,腹腔内を洗浄した。術後の不妊治療は,重度の卵管病変を認め
た場合は術後速やかに ART を行い,卵管病変が軽度であれば自然妊娠を期待して 6∼12 か月間の待機
療法を行い,妊娠が成立しなければ ART に移行した。COH は GnRH agonist を用いた long protocol で行
い,FSH 総投与量,穿刺卵胞数,採卵数を比較した。
【成績】核出術は 36 例,EST は 35 例であった。対象症例(核出 vs. EST)において年齢(31.8 歳 vs. 32.2
歳),不妊期間 (3.4 年 vs. 3.2 年),腫瘍径 (57.3 mm vs. 55.5 mm),CA-125 値 (52.6 U/ml vs. 59.8 U/ml),
嚢胞数 (1.6 個 vs. 1.5 個),r-ASRM スコア (55.4 vs. 58.9),癒着スコア (14.4 vs. 14.3),術後観察期間
(14.7 カ月 vs. 12.8 カ月) に差を認めなかった。再発率は 21.6% (8/36) vs. 17.1% (6/35),自然妊娠率は
27.2% (6/22) vs. 22.5% (7/31),ART を含めた妊娠率は 54.5% (12/22) vs. 41.9% (13/31) であり,いずれも
有意差を認めなかった。Kaplan-Meyer 法による自然妊娠期間と ART を含めた妊娠期間も有意差を認め
なかった。術後に ART を実施した症例は核出群で 9 例,EST 群で 12 例であった。FSH 総投与量は 1982 IU
vs. 1380 IU (P = 0.058) と核出群で多い傾向を認めたが,穿刺卵胞数と採卵数には差がなかった。
【結論】不妊女性の卵巣内膜症性嚢胞に対する EST は,再発,自然妊娠,ART を含めた妊娠のいずれの
点においても核出術と同等であった。EST では FSH 総投与量が少ない傾向を認めたことから卵巣に対す
る低侵襲性が期待されるが,術前後の卵巣予備能についてより詳細な検討が必要である。
49
A3-9
腹腔鏡下に摘出した膀胱子宮内膜症の1例
富山県立中央病院産婦人科1、同 泌尿器科2
◎ 谷村悟1、舟本寛1、炭谷崇義1、舌野靖1、中島正雄1、南里恵1、飴谷由佳1、中野隆1、瀬戸親2
【緒言】膀胱子宮内膜症は内膜症の1−4%と頻度は低く、症状が軽度から中等度ではホルモン療法の適応と
なることも多い。手術療法は膀胱鏡下での摘出や開腹での膀胱部分切除が行われてきたが、最近では腹腔鏡
下での手術例も報告されるようになってきた。
今回われわれは、不妊を主訴とした両側卵巣内膜症性嚢胞、膀胱子宮内膜症例に対し、腹腔鏡下手術を行
ったので報告する。
【症例】35歳女性、未経妊で主訴は不妊。2年前に3cmの卵巣内膜症性嚢胞を指摘されていた。以後前医で
不妊症の治療を行っていたが、嚢胞径が6cmと増大してきたため当院を紹介され受診。前医でのCA125は
496U/ml CA19−9は 204U/ml と高値であり、受診時に持参したMRIでは両側卵巣内膜症性嚢胞、骨盤子宮
内膜症の所見とともに、膀胱子宮窩から膀胱に突出する2cmの不整な腫瘤を認め膀胱子宮内膜症が疑われ
た。問診では肉眼的血尿はないものの、数年前から頻尿になったとのことであった。月経痛は軽度で、排便痛
はなかったが、性交痛を訴えた。内診では子宮に可動制限、可動痛があり仙骨子宮靭帯付近に硬結を触れた。
当院泌尿器科で行った膀胱鏡では、膀胱底部に突出する不整な隆起とその表面にはブルベリー色の小嚢胞を
複数認めた。以上の所見から、インフォームドコントの上 4 ヶ月間の GnRH agonist 治療後に腹腔鏡下手術を行
うこととした。
手術は両側尿管カテーテル留置後に、臍部、右側腹部 1 箇所、左側腹部 2 箇所の計 4 箇所のトロッカーを
用い行った。まず、両側の卵巣内膜症性嚢胞を核出し、膀胱子宮窩腹膜の癒着剥離を施行した。
その後膀胱内に生理食塩水を注入し腫瘍の部位を特定後、尿管口の位置を確認しながらモノポーラ電極と鋏
鉗子にて腫瘍を摘出した。膀胱容積減少による合併症を避けるため膀胱周囲の癒着を出来る限り剥離し、充
分に受動した後に膀胱粘膜を 3-0 吸収糸連続縫合、筋層を 2-0 吸収糸単結紮で横方向に縫合修復した。骨盤
子宮内膜症によるダグラス窩閉塞を開放後に、仙骨子宮靭帯の硬結を切除し、タココンブを貼付した。手術時
間は 220 分、出血量は 100mlであった。
術後 8 日間尿道バルーン留置を行い、抜去後に膀胱鏡で修復状態を確認後退院となった。
術後に頻尿と性交痛は消失した。
【考察】膀胱子宮内膜症単独ではホルモン療法が行われる場合も多く、手術適応は慎重に判断されるべきであ
ろう。今回の症例は不妊症と卵巣内膜症性嚢胞を合併しており、充分なインフォームドコンセントの上に手術を
行った。腹腔鏡下手術は低侵襲であり、細かい病変を拡大して観察可能で、開腹では視野確保が困難なダグ
ラス窩病変に対しても繊細な手術が可能である。今回の症例では泌尿器科医の指導の下に膀胱の修復も安
全かつ充分に行うことができた。
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A3-10
膀胱子宮内膜症に対する腹腔鏡下手術
―病変の位置と膀胱の縫合修復の工夫―
健保連 大阪中央病院 婦人科
◎ 蔵盛理保子、佐伯 愛、松本 貴、奥 久人、山口裕之、久野 敦、伊熊健一郎
【緒言】膀胱子宮内膜症は,子宮内膜症症例の 1%未満の頻度といわれているが,月経時には排尿痛,血尿な
どを引き起こし QOL を著しく損なう疾患の一つである。我々は,保存的治療では症状のコントロールが困難な
膀胱子宮内膜症症例に対して,腹腔鏡下手術をこれまで 5 症例に行ってきた。本学会においては,最近経験し
た 1 症例についてビデオで供覧し本疾患に対する対応法について報告する。
【症例】40 歳,未経妊。38 歳時,月経時の強い排尿痛(VAS score 8)を主訴に当院泌尿器科を受診。膀胱鏡に
て粘膜面に突出する腫瘤を認め,経尿道的膀胱腫瘍生検の結果,膀胱子宮内膜症の診断下に GnRH アゴニ
ストによる治療を続けていたが,薬剤の継続に限界があるため手術目的で当科紹介となった。経静脈的尿路
造影では異常所見なし。経腟超音波断層法では,子宮および両側卵巣は正常所見であったが,膀胱壁に突出
する 15x22x17mm の腫瘤を認めた。また,骨盤部 MRI(ゼリー法)および内診・直腸診の結果,左仙骨子宮靭帯
から直腸にかけての深部子宮内膜症も疑われた。
腹腔鏡所見では,両側附属器は正常所見。ダグラス窩は直腸が引きつれるように癒着し左仙骨子宮靭帯に
硬結を認めた。同部位の子宮内膜症病変を切除し,ダグラス窩を完全開放した。次いで,右円靭帯から子宮前
面と膀胱の癒着を剥離した。さらに右後腹膜腔を展開し右尿管を剥離し走行を確認した上で,膀胱を切開し膀
胱壁の子宮内膜症病変の切除を開始した。泌尿器科による術前の膀胱鏡では,粘膜面の病変と右尿管口の
距離は十分にあるとの所見であったが,手術時には筋層の病変はさらに広範囲に及んでおり,右尿管口の近
傍まで達していた。粘膜面の病変部位と膀胱筋層の肥厚部位を確認しながら病変を切除した。病変を切除後,
泌尿器科医師と共に検討した結果,膀胱尿管新吻合は不要と判断,尿管ステント留置の上で膀胱壁の縫合修
復の方針とした。膀胱容量と尿管との位置関係に配慮して縫合の方向を決定し膀胱壁を修復した。以前に私
たちが経験した 4 症例は,いずれも子宮内膜症の病変が膀胱のほぼ正中にあった。また,膀胱三角部に病変
が及んでいた 1 症例を除いては,病変は尿管口から離れていた。しかし本症例は,病巣が右側壁にあり,術中
は膀胱が収縮した状態になるため,切除範囲は術前の予想よりも尿管口の近くにまで至ったものと考えられた。
膀胱カテーテルは 14 日間留置の後,逆行性膀胱造影にて異常のないことを確認した上で,膀胱カテーテルを
抜去した。なお術後 9 ヶ月の現在まで排尿障害は認めず,排尿痛は VAS 0 と消失している。
【考察】膀胱子宮内膜症に対する膀胱部分切除術は腹腔鏡下手術のよい適応となり,患者の QOL 向上につな
がる治療法の一つになり得ると考えられる。膀胱の修復には,尿管との位置関係や膀胱容量への配慮し,泌
尿器科との連携の上で尿管ステント留置や膀胱尿管新吻合ができる体制が必要と考えられた。
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A3-11
子宮内膜症性月経随伴性気胸の病態と発症機序に関する検討
順天堂大学産婦人科 1, 呼吸器外科 2
◎ 熊切 順 1、武内裕之 1、宮本秀昭 2、熊切優子 1、北出真理1、菊池 盤 1、黒田恵司 1、松岡正造 1、
竹田 省 1
【目的】胸腔内子宮内膜症の1病態である子宮内膜症性月経随伴性気胸(catamenial pneumothorax
associated with endometriosis;CPTE)は比較的まれな疾患であり、今後の発症機序の解明が待たれる疾
患である。我々は当施設で呼吸器外科と共同して婦人科における視点から CPTE 症例を評価および管理
することで、その発症機序を検討した。
【方法】月経時に関連した反復性気胸を主訴に当施設呼吸器外科を受診し胸腔鏡手術(video assisted
thoracoscopy;VATS)が施行された 11 症例に対して、婦人科外来にて過去の骨盤内子宮内膜症に対する
治療歴の確認や経腟超音波断層法、MRI を含む骨盤内精査で骨盤子宮内膜症の確認を行った。胸腔内
の子宮内膜症の有無は VATS の VTR を review することで胸腔内に観察された病変を骨盤子宮内膜症の
評価法である Revised American Society of Reproductive Medicine (re-ASRM) 分類を用いて評価し、さら
に VATS 時の摘出病理標本から行った。 またこれらの症例に対しての再発予防に婦人科外来にて低用
量ピルの間欠もしくは連続投与による経過観察を 6 カ月行い状況に応じて使用の継続を行った。
【結果】2003.9 から 2008.3 までに月経時に反復する気胸により CPTE が疑われた症例は 21 例であり、こ
れらのうち 11 例に対して VATS が施行された。これらの 11 例の初回気胸発症年齢は平均 42 歳 (range
29 - 47 )で 6 例は VATS 前後で骨盤内子宮内膜症もしくはその他の骨盤内疾患のため腹腔鏡もしくは開
腹術が施行され r-ASRM score は平均 56 (range, 18 - 96)であった。VATS 施行前の 11 例 28 周期の気
胸の発症時期は 14 周期が月経中、10 周期が卵胞期、4 周期が黄体期であり、すべての周期が右側気胸
であった。VATS の VTR review により病側の胸腔側横隔膜上に観察された病変はすべて re-ASRM 分類
で識別され、red lesion 5 例、black lesion 8 例、white lesion 9 例に認められた。摘出された横隔膜病変に
子宮内膜症が認められた症例は 9 例であった。すべての症例で術後低用量ピルによるホルモン療法が再
発予防として行われ、また中止による発症も認められることから、いずれもホルモン療法が継続されてい
る。
【考察】CPTE の発症には横隔膜上の子宮内膜症病変が強く関与しているものと考えられる。またその管
理には低用量ピルなどのホルモン療法が必要であり、我々婦人科医が共同して管理していくべき疾患で
あると考えられる。
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A3-12
異所性子宮内膜症の発生機序に関する検討 ―当科で経験した 25 例を中心にー
順天堂大学 産婦人科
◎ 黒田雅子、武内裕之、地主 誠、白井洋平、黒田恵司、松岡正造、熊切 順、菊地 盤、北出真理、
竹田 省
【目的】子宮内膜症とは、子宮内膜様組織が子宮外に存在することで診断される。子宮内膜症は 3 つの異
なった病態;腹膜病変、卵巣チョコレート嚢腫、ダグラス窩深部病変で識別される。これ以外が異所性子
宮内膜症であり、その発生率は全子宮内膜症の約 10%以下と言われている。好発部位は腸管、膀胱、尿
管などの体腔内や臍部、鼡径の体腔外と様々である。また症状も月経に伴う疼痛、腫脹や出血など、多く
が月経とともに増悪する。これまで、当科で取り扱った異所性子宮内膜症についてまとめ、その病態につ
いて検討した。
【方法】当院において 2001 年 1 月∼2008 年 8 月に手術を施行した全子宮内膜症症例は 1846 例であり、
そのうち異所性子宮内膜症にて手術を施行した 25 例(1.35%)を対象とした。
【成績】異所性子宮内膜症の発生部位は、体腔内では腸管 9 例(0.49%)、膀胱 2 例(0.11%)、横隔膜,胸膜,
肺 3 例(0.16%)、体腔外(表在内膜症)では手術瘢痕部(腹壁)2 例(0.11%)、鼡径 6 例(0.33%)、臍部 1 例(0.05%)、
腟壁 2 例(0.11%)であった。治療法は腸管内膜症では低位前方切除術もしくは腸管部分切除術、膀胱内膜
症では膀胱部分切除術、月経随伴性気胸では内膜症病巣切除や横隔膜・肺部分切除等、腹壁や表在内
膜症では腫瘍摘出術を施行した。すべての症例で摘出物に間質を伴った内膜腺が認められ、異所性子
宮内膜症と診断された。異所性子宮内膜症の発生要因に関する検討では、膀胱または直腸内膜症は膀
胱子宮窩およびダグラス窩深部内膜症が連続性に膀胱または直腸に浸潤性に発育したものと考えられ
る。月経随伴性気胸が右側に多いのは S 状結腸があり、月経血の左上腹部への逆流を妨げているため
と考えられる。体表の内膜症は手術瘢痕部の場合、手術時に内膜症細胞が創部に移植し、臍部の場合、
当該部が背臥位になった時に最も低くなる部位であるためと考える。また、表在内膜症で最も頻度の高い
鼠径部発生例では円靭帯が入る内鼠径輪が広く開口している場合が多く認められた。
【結論】異所性子宮内膜症の発生部位は様々であるが、ほとんどの異所性内膜症の発生は移植説で説
明可能であると思われる。
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A4-13
子宮内膜症に対するジェノゲストの使用経験
日本赤十字社医療センター産婦人科1、東京大学医学部附属病院女性診療科2
◎ 田島敏樹1、甲賀かをり2、大里文乃1、安藤一道1、杉本充弘1
【目的】本年初頭、プロゲスチン製剤であるジェノゲストが子宮内膜症の新しい治療薬として、導入された。
臨床治験の段階では不正出血が高率に出現したものの、内服を継続したいという人が9割近くを占めたと
され、効用が非常に期待できる薬であると考えられている。今回我々は、ジェノゲスト導入後から現在まで
の本薬剤の使用経験をまとめたので報告する。
【方法】ジェノゲスト導入以来、当科では、月経困難症/慢性痛を伴う子宮内膜症 (臨床的子宮内膜症、
子宮腺筋症/子宮筋腫合併の症例も含む)に対し、他の薬物療法/手術療法の選択肢も提示した上で、
ジェノゲストによる治療を希望された患者に対し、投与を開始した。
【成績】ジェノゲストを投与した子宮内膜症の患者は20名であり、内訳は子内膜症性卵巣嚢胞合併10名、
同術後6名、子宮腺筋症合併5名、子宮筋腫合併4名(重複含む)である。既往の薬物治療はNSAIDsのみ
が9例、GnRHアゴニスト製剤2名、低用量ピル5名であった。これらの症例の多くは、既往の薬物療法が無
効、もしくは副作用のため効果が十分に得られていなかった。ジェノゲストの効果は、まず、疼痛に関して
は全員が以前と比較してほとんど消失したと回答している。病変の縮小効果については、現在検討中で
ある(縮小/増大しているものがあるようならここに書く)。副作用は、不正出血が18名に出現し、そのうち
本来の月経周期に類似して出血の増減があるものが8名であり、その他の症例には不規則な出血が間欠
的に認められている。不正出血のあった18名のうち、訴えの非常に強かった1例に対してはエストロゲン
の一時投与を試みたが、その他の患者は許容している。その他の副作用としては更年期症状、消化器症
状が、それぞれ1名ずつに出現したが、いずれも許容範囲内であった。現時点では、治療効果不十分、副
作用といった理由で服薬を中止した患者は皆無である。
【結論】治療効果、安全性の両面より、ジェノゲストは子宮内膜症による疼痛に有効であると考えられた。
特に、2週間毎の処方のための来院の必要性や、薬価が比較的高価であるにもかかわらず、服薬の休止
等の離脱者は非常に少ないことから、他の薬剤と比較しても患者の満足度は高いと考えられる。今後も、
継続的観察により、病変の縮小効果、とくにこれまで報告のない子宮腺筋症、深部子宮内膜症への影響、
また、長期投与による、骨量減少などの副作用についても検討を加えたい。
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A4-14
異所性子宮内膜症に対するジェノゲスト療法の検討
東京大学産科婦人科
◎ 竹村由里、甲賀かをり、大須賀穣、平田哲也、森本千恵子、長谷川亜希子、児玉亜子、高村将司、
矢野 哲、武谷雄二
【緒言】ジ ェ ノ ゲス ト は ,新 しい 子 宮 内 膜 症 治 療 薬 で あ り , 子 宮 内 膜 症 性 卵 巣 嚢 胞 で の報 告 は
あ る が , 異 所 性 子 宮 内 膜 症 で の 検 討 は なさ れて いな い .異 所 性 子 宮 内 膜 症 は , 一 般 に 長 期
に わ た る 月 経 の コ ント ロ ー ルを 必 要 と す る こと が多 く , 当 科 では こ れ ま で 4 0 歳 未 満 か つ軽 症 な
症 例 に は 低用量ピル(LD P ) の 連 続 投 与 , そ れ以 外 の 症 例 には GnRH アゴニスト(GnRH)を使 用 して き
た が , 副 作 用 など のた め に 必 ず し も 十 分 な 治 療 効 果 が 得 ら れな い症 例 も あ っ た .そ こ で 今 回
我 々 は , 異 所 性 子 宮 内 膜 症 に 対 してジェノゲスト療法を行った症例を経験したので報告する.
【症例】症例は,当科子宮内膜症外来を受診した異所性子宮内膜症患者でジ ェ ノ ゲ ス ト 療 法 を 施 行 した 6
例である.<症例 1>44 歳 2G2P,子宮内膜症の部位は直腸・腟,症状は下血・出血,子宮腺筋症・両側子宮
内膜症性卵巣嚢胞に対して子宮全摘・両側卵管卵巣嚢胞摘出の既往あり.GnRH はめまい,LDP は効果不十
分と年齢のため,ジ ェ ノ ゲ ス ト を 選 択 し た . 下 血 ・ 出 血 は 消 失 , 慢 性 痛 は 軽 快 し た . 副 作 用 は 肩 こ
り が あ っ た が 漢 方 薬 で軽 快 . < 症 例 2 > 38 歳 0 G 0 P , 部 位 は直 腸 ・ 腟 ・子 宮 頸 管 ,症 状 は 下
血 ,治 療 の既 往 なし.年 齢 を考 慮 しジェノゲストを選 択 した.下 血 消 失 ,病 変 縮 小 .副 作 用 は
最 初 の 3 ヶ 月 の 不 正 出 血 の み . <症 例 3 > 48 歳 0 G 0 P , 部 位 は 直 腸 ,症 状 は 慢 性 痛 ・ 月 経
痛 , G n R H で う つ 病 発 症 の 既 往 あ り , ジ ェ ノ ゲ スト を 選 択 した . 疼 痛 軽 快 , 副 作 用 な し . < 症 例
4 > 4 0 歳 0 G 0 P , 部 位 は 直 腸 ・膀 胱 , 症 状 は 血 便 ・ 排 尿 時 痛 ・ 月 経 痛 ,子宮内膜症性卵巣嚢胞に
対して卵巣嚢胞摘出・GnRH の既往あり.ダナゾールは多血症,LD P は 年 齢 のた め ,ジ ェノ ゲ スト を 選 択
し た . 症 状 軽 快 , 副 作 用 なし . < 症 例 5 > 36 歳 5 G 2 P , 部 位 は膀 胱 , 症 状 は 排 尿 時 痛 ・ 頻 尿 ,
G n R H は 頭 痛 ・ め ま い の た め L D P は 浮 腫 のた め, ジ ェ ノ ゲス ト を 選 択 した . 症 状 軽 快 , 副 作 用 な
し . < 症 例 6 > 2 3 歳 0 G 0 P ,部 位 は 肺 ,症 状 は血 痰 , G nR H は 頭 痛 ・ 関 節 痛 の ため LD P は乳
房 腫 脹 の ため , ジ ェ ノ ゲ スト を 選 択 した . 血 痰 消 失 , 副 作 用 は 少 量 の 不 正 出 血 の み . 以 上 , 全
症 例 でジェノゲスト療法を 継 続 し てい る .
【考察】異所性子宮内膜症に対してジ ェ ノ ゲス ト 療 法 を 施 行 した 6 症 例 を 経験した.全例で症状の消失(3
例)あるいは軽快(3 例)を認め,副作用もなし(3 例)あるいは軽度(3 例)であり,全例継続できていることから,全
体として異所性子宮内膜症に対するジ ェ ノ ゲ ス ト 療 法 は 有 効 な 治 療 法 で あ る と 考 え ら れ る . ま た , ジ
ェ ノ ゲ スト は , 投 与 期 間 の制 限 がな く 閉 経 まで の長 期 使 用 が可 能 で あ る点 で G nR H より 有 利 で
あ り , 血 栓 症 の 副 作 用 がな い こ と か ら 40 歳 以 降 の 症 例 で も 使 用 可 能 な 点 で LD P より 優 れて
い る と言 え る .今 後 の 検 討 課 題 と して , 症 例 数 の 増 加 と長 期 の 観 察 が 必 要 で あ る と考 え る .
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A4-15
ジェノゲストがヒト子宮内膜症病変における細胞増殖および血管新生に与える影
響
東北大学産婦人科1 滋賀医科大学産婦人科 2
◎ 荒井真衣子1、宇都宮裕貴1、村上 節 2、結城広光1、寺田幸弘1、宇賀神智久1、早坂真一1、
八重樫伸生1、岡村州博1
【目的】これまでの報告からは in vitro において、ジェノゲストが子宮内膜間質細胞に対して細胞増殖抑制
作用があるといわれている。しかし、in vivo でジェノゲストが子宮内膜症細胞にどのような機序で作用する
のか、明らかにされていない。今回、免疫不全マウスにヒト子宮内膜症病変を異種移植し、子宮内膜症動
物モデルを作成した。この実験系を用いてジェノゲストのヒト子宮内膜症病変の増殖、血管新生への関与
を検討した。
【方法】今回の実験は当施設の倫理委員会の承認のもとに行い、インフォームド・コンセントが得られた子
宮内膜症患者より子宮内膜症性嚢胞を採取した。その採取した子宮内膜症性嚢胞を両側卵巣摘出した
6 週齢の雌の免疫不全マウスの皮下に移植した。移植直後よりエストラジオール(E2)を投与した。Control
群(3 例):E2+0.2% Carboxymethyl Cellulose Sodium Salt(CMC)・Na、ジェノゲスト 0.1mg/kg 群(3 例):E2
+ジェノゲスト 0.1mg/kg、ジェノゲスト 1.0mg/kg 群(3 例):E2+ジェノゲスト 1.0mg/kg について、8 週間の
プラセボもしくはジェノゲストを投与し、その後移植片を摘出した。摘出した移植片を子宮内膜症病変の血
管新生の評価として VEGF、増殖能の評価として Ki67 で免疫染色し検討した。
【成績】摘出した移植片を組織学的に検討したところ、Control 群に比べてジェノゲスト 0.1mg/kg 群および
ジェノゲスト 1.0mg/kg 群では病変の縮小を認めたが、有意差は認められなかった(χ2 検定:p>0.05)。ま
た、残存している移植片の内膜症病変について VEGF、Ki67 について免疫組織学的に検討したが、これら
について有意差は全くなかった。
【結論】ジェノゲストを投与することで、病変が縮小もしくは消失しており、8 週間で治療効果を認めた。しか
しながら、回収した移植片に評価できる内膜症病変が少なく、残存する病変の増殖能や血管新生の評価
は困難であった。今後、症例数を重ね、また移植片を経時的に回収することでジェノゲストの子宮内膜症
性病変への影響を検討する必要がある。
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A4-16
ジエノゲストのヒト子宮内膜上皮細胞におけるプロスタグランジン E2 産生酵素およ
びアロマターゼ発現に対する影響
持田製薬(株)開発研究所 1、金沢大学大学院医学系研究科産婦人科 2
◎清水 豊 1、三田静香 1、水口 清 1、京 哲 2
【目的】子宮内膜症治療薬であるジエノゲストは経口投与可能な、選択的プロゲステロン受容体アゴニスト
である。子宮内膜症では病巣局所でのアロマターゼ発現や疼痛関連物質のプロスタグランジン E2(PGE2)
産生が、病態の進展に関与すると考えられている。本研究では、子宮内膜上皮細胞における PGE2 産生
およびアロマターゼ発現に対するジエノゲストの効果を検討した。
【方法】プロゲステロン受容体を恒常的に発現している不死化ヒト子宮内膜上皮細胞株を用いた三次元培
養系(スフェロイド培養)にジエノゲストを添加し、in vitro での薬理作用を検討した。PGE2 産生能について
は、培養上清中の PGE2 濃度を ELISA 法により測定した。PGE2 産生酵素である cyclooxygenase-2
(COX-2)、microsomal prostaglandin E synthase-1(mPGES-1)およびエストロゲン合成酵素であるアロマ
ターゼの mRNA 発現量はリアルタイム PCR 法にて測定し、各タンパク質の発現を免疫組織学的手法によ
り検討した。
【成績】不死化ヒト子宮内膜上皮細胞株の PGE2 産生は、対照群で 7.2 ng/μg protein であったのに対し、
ジエノゲスト 10-9、10-8 および 10-7 mol/L の濃度で、それぞれ 5.4、2.1 および 1.4 ng/μg protein であり PGE2
産生抑制作用を示した。さらに、COX-2 および mPGES-1 mRNA の発現量を検討したところ、ジエノゲスト
は 10-7 mol/L の濃度で、いずれの PGE2 産生酵素のmRNA 発現を抑制し、免疫組織学的検討においても
発現抑制傾向が認められた。また、ジエノゲスト 10-7 mol/L の添加によりアロマターゼ mRNA 発現は抑制
され、免疫組織学的検討においても抑制傾向が認められた。
【結論】ジエノゲストは子宮内膜上皮細胞の COX-2 や mPGES-1 の遺伝子発現を抑制することにより PGE2
産生を抑制した。また、アロマターゼ発現についても抑制作用を示した。以上より、これらのジエノゲストの
薬理作用が、子宮内膜症の進展や疼痛の抑制に関与している可能性が考えられた。
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A4-17
当院における GnRH アゴニスト漸減療法の検討
岡山大学医学部 産科婦人科 1,同 保健学研究科 2
◎ 鎌田泰彦 1、清水恵子 1、佐々木愛子 1、松田美和 1、莎如拉 1、Chekir Chebib1、中塚幹也 2、
平松祐司 1
【目的】子宮内膜症・子宮腺筋症の治療に,低用量ピル(OC)やジェノゲストが広く用いられている現在に
おいても, GnRH アゴニスト(GnRHa)療法の有効性は明らかであり,臨床において必要とされる症例は多
い.しかし下垂体−卵巣系の過度の抑制に伴う副作用,6ヶ月の治療期間,治療にかかるコストが高額と
いった治療上の問題は,今もなお存在する.GnRHa 漸減療法,いわゆる draw back 療法は,従来の
GnRHa 療法の治療効果を維持しながら,副作用の軽減を期待して施行される.本研究では,当院での
draw back 療法施行例について検討したので報告する.
【方法】GnRHa 療法を選択した患者のうち,十分なインフォームドコンセントが得られた 12 症例に対し draw
back 療法を施行した.患者の内訳(重複例あり)は子宮内膜症 8 例,子宮腺筋症 6 例,子宮筋腫 4 例,過
多月経 6 例,月経困難症 6 例であった.また子宮内膜症の術後に draw back 療法を施行したのが 4 例で
あった.治療は全例,酢酸リュープロレリン 1.88mg の皮下注射から開始した.排卵抑制を確認後,酢酸ナ
ファレリン 400μg/日の点鼻に切り替えた.血清 E2 値が 30pg/mL 未満であれば,200μg/日に減量し,さ
らに酢酸ブセレリン(150∼)300μg/日の点鼻に変更した.なお治療中に患者が更年期様症状を訴える場
合には,適宜 add back 療法を追加した.
【成績】GnRHa 療法の総治療期間は 48.8±26.7 週で,draw back に切り替えてからの治療期間は 21.7±
6.1 週であった.GnRHa 投与開始後 6 ヶ月間での脱落例は無かった.酢酸ナファレリン 200μg/日で治療し
た 12 例の血清 E2 値は 18.3±8.6pg/mL であり,7 例で add back を必要とした.酢酸ブセレリン 300μg/
日で治療した 6 例の血清 E2 値は 13.7±8.1 pg/mL であり,3 例で add back を必要としたが,1 例では排
卵を認めた.
【結論】酢酸リュープロレリン 1.88mg の皮下投与を先行させることにより,GnRH 受容体の down regulation
を 1 日 1 回の GnRHa 経鼻投与で維持することができた.そのため本法は患者の服薬コンプライアンスが
高く,とくに OC の禁忌例や無効例に対して有用であると考えられた.しかし実際には血清 E2 低値のため
add back 療法を併用する症例も多く,長期投与を行うにあたっては,今後更なる投与法の工夫が必要で
ある.
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A4-18
子宮腺筋症に対するレボノルゲストレル除放型IUS(LNG−IUS)の効果の限界
―子宮体積とLNG−IUSの効果の関係―
倉敷平成病院 婦人科1、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科病理学教室(腫瘍病理/第二病理学)4、
倉敷成人病センター 放射線科2、倉敷成人病センター 産婦人科3
◎太田郁子 1、太田啓明 3、市村 浩一4、浅川 徹 2、安藤正明 3、吉岡 保 1
【目的】
LNG−IUSはその子宮内膜退縮作用から、一部の子宮腺筋症に臨床応用されている。しかし、もともと子
宮内膜に作用する目的でつくられたツールであり、重症の肥大型子宮腺筋症への効果については疑問の
余地がある。今回、非腫瘤型子宮腺筋症の患者を軽症型と重症型にわけ、LNG−IUSの効果の違いに
ついて検討した。
【方法】
6ヶ月以上LNG−IUSを挿入している子宮腺筋症患者 16 名(43.8±5.6 歳)を対象に、子宮筋層の厚さ4
㎝を基準として、重症群と軽症群に分け、1 ヵ月後、3 ヶ月後、6 ヶ月後のヘモグロビン値、CA125、VAS、
PBAC、子宮体積を Mann-Whitney のU検定にて比較した。子宮体積は MRI 検査で得られた画像の子宮筋
症断面積を Scoin image にて測定し、その総和を体積に近似して検討した。また、LNG−IUS単独の治療
で 6 ヶ月後まで改善がみられなかった症例の子宮筋層を患者の同意を得て、内膜から漿膜までを垂直に
切り出し、腺筋症の程度とその筋層のエストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター(PgR)の発現を
免疫染色にてその発現頻度に深度によって差があるか検討した。
【成績】
軽症群と重症群で、ヘモグロビン濃度、PBAC、子宮体積の変化率は6ヶ月後まで有意差は見られなかっ
たが、CA125とVASは重症群で有意に上昇していた。(p<0.001)また、子宮筋層のPgR発現量は、無治療
腺筋症子宮と比較して治療後の筋層は陽性細胞の密度が低下しており、レセプター発現頻度は深度によ
り差はなかった。
【結論】
LNG−IUSは、子宮筋層が4㎝以下の子宮腺筋症の治療には有効であるが、子宮筋層が4㎝以上の重
症例においては必ずしも有効ではない。これは添加されているレボノルゲストレルが子宮筋層に浸透し、
子宮腺筋症治療濃度に達する深度による問題ではなく、病変の感受性の違いなど他の要因が存在する
ことを示唆するものである。また、子宮筋層が4㎝以上では、LNG−IUS挿入後6ヶ月以上経過しても不
正出血の頻度が減らず症状が改善しない症例が存在し、このような症例は速やかに他の治療法に変更
する必要があると思われる。
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A5-19
術前診断が困難であった卵巣チョコレート嚢胞に合併した mesothelial cyst の 1 例
長崎大学医学部産婦人科 1、同歯学部附属病院病理部 2
◎ 東島 愛 1、北島道夫 1、平木宏一 1、カレク・ネワズ・カーン 1、井上統夫 1、林 徳眞吉 2、増崎英明 1
【緒言】
Mesothelial cyst は,benign multicystic mesothelioma あるいは multilocular peritoneal inclusion cysts とも
称される稀な骨盤内腫瘤性病変で,女性に多く,骨盤内手術既往あるいは子宮内膜症や感染などの骨
盤内炎症と関連するとされる.今回,卵巣出血を疑って腹腔鏡下手術を行ったが,摘出物の組織所見か
ら,卵巣チョコレート嚢胞に合併した mesothelial cyst であった 1 例を経験したので報告する.
【症例】
症例は 25 才の未婚・未妊女性で,骨盤手術の既往はない.発熱感で前医を受診し,膀胱炎を疑われ抗
生剤で加療されたが,その際に左付属器腫瘤と骨盤内液体貯留を指摘され,その後も下腹痛が持続した
ため精査目的で当科へ紹介された.内診上,左付属器に圧痛を伴う腫瘤を触知し,経腟超音波検査では,
左卵巣に内部が微細顆粒状の嚢胞性病変,ダグラス窩およびレチウス窩に液体貯留像を認めた.卵巣
出血を疑ったが,血液検査で貧血や炎症所見がなく,外来での経過観察とした.その後も間欠的な下腹
痛を訴え, MRI を施行したところ,左卵巣チョコレート嚢胞と血性腹水と診断され,腹腔鏡下手術を行った.
腹腔鏡所見では,骨盤内にクラゲのように浮遊している黄色・漿液性の嚢胞を認め,一部多房性であった.
内容を吸引したのち体外へ回収した.左卵巣には 3cm 大のチョコレート嚢胞を認め,体内式に核出した.
病理所見で,嚢胞壁には腹膜中皮,円柱上皮あるいは重層扁平上皮が認められ,免疫組織化学的検討
で は , AE1/AE3(+), EMA(+), WT1(+,weak), HBME1(+,focal), calretinin(+,focal), CK5/6(-), D2-40(-),
MOC31(-)であり,手術所見と併せて扁平上皮化生を伴う simple mesothelial cyst と診断した.術後下腹痛
は消失し再発所見などは認めていない.
【考察】
Mesothelial cyst は,骨盤内の何らかの炎症に反応して生じた腹膜中皮の増殖による嚢胞性病変とされる.
骨盤内手術後に認められることが多いが,本症例は子宮内膜症を背景とした骨盤内炎症により生じた腹
膜の化生病変と考えられ,子宮内膜症の発生病理の観点からも興味深い症例と考えられた.
60
A5-20
他施設での単純子宮全摘出術後に月経様出血をくり返した深部子宮内膜症の 1
例
熊本大大学院医学薬学研究部産科学婦人科学
◎ 岡村佳則、本田律生、宮原 陽、角田みか、田代浩徳、大場 隆、片渕秀隆
【緒言】主に直腸腟中隔に発生する深部子宮内膜症は、その周囲臓器への浸潤から生じる日常生活
の質を低下させる症状と、その病巣の位置に伴う治療の困難さが問題となる。今回他施設で子宮筋
腫の診断で単純子宮全摘出術を行った後に、月経様出血をくり返し、根治手術を行った症例につい
て報告し、深部子宮内膜症に対する対応について考察する。
【症例】症例は 44 歳の 2 回経妊 2 回経産女性で、主訴は子宮全摘出術後に規則的に認められる下
腹部痛、月経様出血と粘血便である。35 歳頃より月経困難症が増悪し、鎮痛剤の内服では日常生
活に支障を来すようになったため、近院を受診した。同院で子宮筋腫を指摘され、単純子宮全摘出
術が施行された。この時の術中所見を確認した結果、骨盤内に子宮内膜症病変が認められ、ダグラ
ス窩は完全に閉鎖しており同部を剥離したものの癒着が強固で、直腸前面に一部子宮組織とともに
子宮内膜症病変が残存したとのことであった。術後 1 ヶ月頃より、約 1 ヶ月周期で下腹部痛ととも
に月経様出血と粘血便が出現するようになった。GnRH analogue の使用を勧められたが、精査加
療を希望して術後 11 ヶ月の時点で当科を受診した。腟鏡診では、腟断端に出血点とともに隆起性
白色調の腫瘤が集簇して認められた。骨盤双合診では、腟断端から直腸にかけて表面不整で圧痛の
強い抵抗が触知され、病巣が直腸と連動する状態であった。MRI 検査では、直腸に接する造影効
果を持つ軟部影が認められ、介在する脂肪織の消失もみられた。月経様の下腹部痛、不正性器出血
ならびに粘血便の症状を改善させるために、治療法として手術療法を説明し、腟断端部・直腸腟靭
帯・直腸子宮内膜症の術前診断で手術を行った。手術では、腟断端、直腸腟靭帯、膀胱子宮靭帯前
層におよぶ病変を準広汎子宮全摘出術に準じて対処し、また直腸低位前方切除術を行い、直腸に浸
潤する病巣とともに完全に切除した。病巣はさらに両側基靭帯に及んでいたが、術後の排尿機能へ
の影響を考慮して基靭帯は切除せず、両側卵巣の摘出で対応した。手術直後は一時頻便がみられた
ものの、その後の排便のコントロールは良好となった。
【考察】単純子宮全摘出術後の深部子宮内膜症症例に対して、病巣の完全切除を施行した。このよ
うな深部子宮内膜症の病変の浸潤様式からは、婦人科悪性腫瘍根治術に準じた対応が必要と考えら
れ、当科ではこれまで 7 例の症例に同様の対応を行っている。生活臓器への浸潤進展がみられる深
部子宮内膜症に対して、積極的且つ適切な手術療法を行うことで QOL を改善することが可能であ
った。
61
A5-21
子宮内膜症性嚢胞に感染を起こしショック、DIC に至った付属器膿瘍の1例
日本大学産婦人科
◎ 中澤禎子、市川 剛、友部淳子、千島史尚、山本樹生
【緒言】子宮内膜症性嚢胞に感染を併発し付属器膿瘍を形成する症例は少なからず報告されている。
また子宮内膜症性嚢胞の患者で付属器膿瘍の頻度が高いと言われる。
今回、我々は子宮内膜症性嚢胞に感染を起こし敗血症性ショック、DIC に至ったと考えられる付属
器膿瘍の1例を経験したので報告する、
【症例】症例は 43 歳の女性、子宮内膜症手術の既往あり。平成 XX 年 8 月 25 日、朝に 39.7℃の
熱発あり、前医を受診した。受診時、血圧 70/40mmHg、脈拍 100 回/分とショック状態であり、
血液検査は WBC 22540/μl, RBC 412 万 /μl, Hb 12.3 g/dl, Ht 35.96%, Plt6.2 万 μ/l, FDP 305.6, CRP 6.3
mg/dl, PT 12.5 sec, APTT 36.6 sec, CEA 1.3 mg/ml, CA 19-9 1.4 mg/ml, CA 125 190.1 mg/ml, であり DIC を認
めた。CT, 超音波断層法にて 7.52cm の cystic mass を認め膿瘍が疑われた。FOY、DOA、抗生
剤 (ABPC/SBT)投与により病状は徐々に改善し1週間後には体温も 36∼37℃台となり、同年 9 月
9 日、当院に転送となった。抗生剤を継続投与するも 37℃台の熱発続くため 9 月 16 日、開腹手術
を行った。右付属器は子宮後方に存在し約 7cm に腫大し膿瘍を形成しており、子宮後面、直腸、
回腸と癒着していた。これらとの癒着を剥離し、右付属器切除を行った。回腸の癒着剥離を行った
部分は狭窄の可能性あり、部分切除し端々吻合術を行った。ドレーンをダグラス窩に設置し閉腹し
た。術後 3 日目には体温 36℃台となり術後 6 日目に排便も確認されたためドレーンを抜去し術後
12 日目に軽快退院した。病理検査は、Endometrial cyst with abscess and salpingitis であり、膿
瘍内容液の細菌培養検査にて Escherichia coli が検出された。膠原病や悪性リンパ腫などの内科的
疾患の可能性も考え検査を行ったがいずれも否定的であった。
【考察】付属器膿瘍を形成するもののうち、子宮内膜症が存在する率が高いことが報告されている。
本症例では腹痛を認めていないため、内科的疾患の合併の可能性も考えながら治療にあたった。付
属器膿瘍が破裂した場合、ショックとなる事が知られており、本症例においても破裂に近い状況が
存在したことがうかがえる。付属器膿瘍が疑われる場合、子宮内膜症の合併も考え強度の癒着が存
在することを想定し腸管処理など十分な準備をして適切なタイミングで手術を行うことが重要で
あると考えられた。
62
A5-22
習慣流産患者に対して施行した腹腔鏡下子宮腺筋症切除術の一例
東京都済生会中央病院 産婦人科
◎ 岸 郁子、田島敏秀、小野寺成実、坂倉啓一、亀井清
【緒言】子宮腺筋症は子宮内膜症の中でも過多月経や月経痛といった月経困難症の訴えが強い場合が
多く、不妊や流産の原因ともなっている。近年、子宮温存を希望する患者に対する手術療法として、子宮
腺筋症切除術が考慮されるようになってきた。しかし、他の部位の内膜症と異なり、子宮腺筋症切除術は
妊娠中の子宮破裂の可能性を考慮にいれて決定しなければならない。今回、月経困難症の増悪とともに
流産後の発熱を繰り返した習慣流産患者に対し、腹腔鏡下子宮腺筋症切除術を施行し、症状の改善を
認めたので報告する。
【症例】33 歳。妊娠分娩歴:2 経妊 2 経産。既往歴:22 歳時に結節性紅斑。現病歴:28 歳頃より過多月経
および月経痛の増強あり、近医にて子宮腺筋症と診断され、GnRHa 治療6ヶ月ののち 2 年間 OC 内服治
療を受けていたが、その後は鎮痛剤内服のみで経過観察となっていた。31 歳および 32 歳時に妊娠したが
いずれも初期に流産となり、流産後に腺筋症部位の炎症による発熱・疼痛に対する入院管理を要した後、
子宮腺筋症治療目的にて当院へ紹介となった。内診所見では、子宮は超鵞卵大で後壁が腫大しており、
MRI 検査にて子宮体部後壁の漿膜下にびまん性に広がる 5∼6cm 大の子宮腺筋症を認めた。挙児希望
があり、子宮温存の手術治療を強く希望されたため、腺筋症切除後の妊娠中における子宮破裂の危険性
をインフォームドコンセントの上、腹腔鏡下子宮腺筋症切除術を施行した。腹腔内所見:子宮体部後壁の
腺筋症部分が子宮頚部および直腸に癒着して極度な子宮後屈となっており、ダグラス窩は完全に閉鎖し
ていた。癒着を剥離してダグラス窩を開放した後に後壁の腺筋症を切除した。この際に上下の漿膜を flap
として残し、修復の際の漿膜欠損がないように心がけた。手術時間 260 分、出血量は 200ml であった。術
後経過は良好にて退院となった。
【考察】子宮腺筋症の手術治療は基本的には子宮全摘術が適当であるが、近年子宮温存希望者が増
加している。子宮腺筋症患者は激しい月経困難症状を訴える場合が多いものの、薬物治療では治療後
の症状再燃などの限界があり、また、挙児希望のある場合の薬物治療継続は困難であることが多い。従
って子宮腺筋症の病変部が限局している場合で、不妊や流産の原因となっていると考えられる場合には、
子宮温存の手術療法として子宮腺筋症切除術が考慮される。術後の月経困難症の症状改善は多くの場
合認められており、今回の症例においても症状の緩和を認めた。患者の QOL の改善に寄与する治療と考
えられるが妊娠時の子宮破裂の危険性については十分な説明が必要である。
63
B1-1
子宮内膜症病巣における Toll-like receptors mRNA の発現
日本大学医学部産婦人科学系産婦人科学分野1、同病理病態学系病理学分野2、同病理病態学系微生
物学分野3、日本大学女性研究者支援促進ユニット 総合科学研究所4
◎ 千島史尚1、中澤禎子1、市川剛1、椙田賢司1、山本樹生1、杉谷雅彦2、早川智3、鈴木(唐崎)美喜4
【目的】近年、自然免疫系は、獲得免疫系に先立って発動し、抗原提示やサイトカイン産生により獲得免
疫系をリンクしコントロールする役割をもつことがわかってきた。子宮内膜は外界と接する最前線にあり、
子宮内膜腺、間質細胞における Toll-like receptors(TLRs)の発現が報告されている。一方子宮内膜症に
おけるその発現についての報告は限られており詳細については不明である。子宮内膜症と自然免疫系と
の関わりについて解明するために TLRs の発現について検討した。
【方法】informed consent のもと、当施設で手術をうけた内膜症患者 28 例を対象とした。内膜症を伴わな
い手術検体の子宮内膜組織 10 例を対照とした。正所性子宮内膜は内膜日付診により、分泌期 5 例と増
殖期 5 例に分類した。検体より RNA 抽出し RT-PCR を行い TLR-1, -2, -3,-4,-5,-6,-7,-8,-9 の mRNA 発
現について解析しその発現頻度について検討した。
【成績】TLR-1, -2, -3,-4,-5,-6,-7,-8,-9mRNA の発現頻度は、増殖期子宮内膜組織では 80%, 20%, 40%, 40%,
80%, 60%, 60%, 20%, 80%であり、分泌期子宮内膜組織では 80%, 20%, 20%, 40%, 100%, 60%,20%, 60%, 100%,で
あった。一方子宮内膜症組織における頻度は、78%, 21%, 36%, 60%, 96%, 78%, 67%, 75%, 85%であった。子宮
内膜組織における 9 つの TLRs mRNA のうち増殖期と比較し分泌期において発現頻度が同等のものは4
つ、高いものが3つ認められた。子宮内膜症組織における 9 つの TLRs mRNA のうち 8 つにおいて発現頻
度は、正所性子宮内膜分泌期と同等ないしは高い傾向にあった。
【結論】子宮内膜症組織における TLRs の発現頻度の高いことより、子宮内膜症に自然免疫系が関連す
る可能性が示唆された。
64
B1-2
子宮内膜症に対する IKH-01 の効果
自治医科大学附属さいたま医療センター 産科婦人科 1、自治医科大学 産婦人科 2
◎ 根津幸穂 1、小田切幸平 2、鈴木有紀 1、松井伴衣 1、藤原寛行 2、山川洋光 1、今野 良 1
目的
子宮内膜症や月経困難症患者に対する疼痛コントロールにおける低用量ピルの有効性は広く知られてい
る。今回、その機序を解明するために子宮内膜症モデルにおいて IKH-01(ノルエチルステロン、エチニル
エストラジオール配合剤)投与による形態学的変化および遺伝子解析を行った。
方法
ラット子宮の腹膜上への自家移植により内膜症モデルを作成した。その後、IKH-01 高容量投与群(2000
μg/kg)、IKH-01 投与群(200μg/kg)、非投与群に分け観期間 7 日、21 日後に屠殺し、内膜症病変の形態
学的変化と cDNAマイクロアレイ解析による遺伝子発現の変化について評価した。
結果
組織学的に内膜症の間質および腺上皮には変化がなかった (0.61±0.30mm、0.02±0.07mm (非投与
群)vs.0.43±0.10mm、0.03±0.01mm(IKH-01 投与群 21 日目)。遺伝子発現解析においては IKH-01 投与群
7 日目で MMP3、MMP8、MMP9、21 日目で calb3、slco1a2、s100a9、tgfbr1、MMP10 の発現低下を認めた。
IKH-01 高容量投与群では tnfaip6 、ptges2、ostr の発現低下を認めた。
結論
ステロイド依存的な反応に伴い初期の段階では内膜症の生着に関わる MMPs が抑制され、時間が経過
すると内膜症の進展に関わると考えられるリモデリング、線維化、神経に関連する遺伝子が抑制されるこ
とがわかった。さらに、高容量では疼痛の原因となる子宮収縮に関わる遺伝子も抑制されることがわかっ
た。IKH-01 による子宮内膜症患者の自覚症状改善の機序は明らかな形態学的変化ではなく、子宮内膜
症に関わる炎症性メディエータの遺伝子発現抑制効果であることが示唆された。
65
B1-3
抗オステオポンチン抗体を用いた子宮内膜症の新しい治療戦略の可能性
名瀬徳洲会病院産婦人科 1、自治医科大学附属さいたま医療センター産婦人科 2、自治医科大学産婦人
科3
◎ 小田切幸平 1、今野 良 2、藤原寛行 3、根津幸穂 2、鈴木光明 3
【目的】子宮内膜症は、異所性に生じた内膜腺上皮の増生による嚢胞の形成とその周囲を取り囲む肥厚
した間質(interstitium)における炎症と平滑筋化生、神経新生、血管新生等のリモデリングが病態の中心
である。我々はヒト内膜症およびラット内膜症モデルにおける免疫組織化学、トランスクリプトミクスにおい
て、オステオポンチン(OPN) 蛋白が高発現し内膜症の病態に関与することを報告してきた。またマウスに
おいても、同様に内膜症モデルを確立し OPN の発現を確認してきた。今回、OPN ノックアウトマウスを用
いた実験で OPN の子宮内膜症発症への関与を明らかにしたうえで、抗 OPN 中和抗体による子宮内膜症
治療の可能性を検討した。
【方法】まず、ノックアウトマウス群(KO 群)と対照群(WT 群:C57BL/6J マウス wild type)に、それぞれ子宮
内膜症モデルを作成し、形成された内膜症病変を比較した。次に、抗 OPN 中和抗体治療実験では、マウ
ス(C57BL/6J マウス)を抗体投与群(O 群)、非投与群(C 群)に分け内膜症モデルを作成し、中和抗体を 8
∼11 週齢で投与、12 週齢で sacrifice し、それぞれの内膜症病変の形態学的比較を行い治療効果を検討
した。
【成績】OPN ノックアウトマウスを用いた実験では、内膜症病変形成数(個)は、WT 群に比し、KO 群におい
て半数以下に抑制されていた。また形成された内膜症性嚢胞の重量(mg)、サイズ(mm2)、平滑筋化生(μ
m)は、WT 群に比し、KO 群において約 1/2 に明らかに減少した。免疫組織化学的検討において、KO 群で
は腺上皮における OPN 発現は抑制されていた。
中和抗体による治療実験では、内膜症病変形成数(個)は、C 群に比し、O 群で半数以下に抑制されてい
た。また、重量は C 群に比し、O 群では平均で約 1/3 に減少し、嚢胞径も 1/3 以下に縮小していた。間質
における平滑筋化生の厚さは抗体投与を行なった O 群では、C 群に比し 1/2 に減少する傾向が見られ
た。
【結論】OPN ノックアウトマウスを用いた実験で、OPN 蛋白の内膜症病変形成への関与を確認した。また
抗 OPN 中和抗体投与による内膜腺における OPN の発現低下、嚢胞の形成、重量、サイズ・平滑筋化生
の抑制を来すことが示された。子宮内膜症における OPN の関与に基づく抗 OPN 中和抗体治療の臨床応
用の可能性が期待される。
66
B1-4
CE-TOFMS による子宮内膜症患者腹水のメタボローム解析
慶應大・先端生命研 1、 同・環境情報 2、同・医学部・産婦人科 3
◎ 川田陽子 1・2、浅田弘法 3、杉本昌弘 1、平山明由 1、阿倍しのぶ 1、古谷正敬 3、内田 浩 3、浜谷敏生 3、
梶谷 宇 3、丸山哲夫 3、吉村泰典 3、曽我朋義 1、冨田 勝 1・2
【目的】腹水は腹腔内に貯溜する体液であり、腹腔内の悪性疾患や炎症性疾患において増加し、腹
水中には疾患によって特徴的な物質が存在することがある。子宮内膜症は多臓器にわたる疾患では
あるが、主として腹膜病変、卵巣病変、子宮病変であり、腹腔内病変が最も多い。子宮内膜症患者
腹水では、IL-8、MCP-1 などを中心としたメディエターやプロスタグランディンなどが増加して
いることから、腹腔内環境は子宮内膜症の進展と制御において重要な役割をはたしていると予想さ
れている。本研究では、子宮内膜症の主たる発症環境である腹腔内環境に注目し、(1)腹腔内特
異的環境因子を探索するとともに、(2)子宮内膜症特異的な腹水中分子を探索することを目的と
してメタボローム解析を行った。
【方法】細胞の代謝物質を網羅的に測定できる CE-TOFM(キャピラリー電気泳動時間飛行型質量
分析装置)を用い、代謝物質の精密質量・泳動時間などから代謝物質を特定するメタボローム解析
を行った。子宮内膜症患者腹水と非子宮内膜症患者腹水の比較、子宮内膜症患者血清と子宮内膜症
患者腹水の比較を行った。検出されたピーク値の比較は t 検定により有意水準5%以下として検討
した。
【成績】子宮内膜症患者腹水のメタボローム解析により、分子量 998.80 以下の陽イオン性物質を
網羅的に解析したところ、約 347 のピークが検出された。また、子宮内膜症患者の血清にもメタボ
ローム解析を行い、腹水と血清で検出されたピークについての比較検討を行い、血清中と腹水中に
共通して約 320 個のピークが検出された。腹水に存在する物質のうち、約 52 ピークに当たる物質
はより多く腹水に存在することが明らかになった。血清中の濃度の方が濃い物質は、約 32 ピーク
あり、腹水と血清で差がなかった物質は約 146 ピーク存在した。腹水と血清で有意差を認めた分子
群は子宮内膜症特異的ではなく、腹水特異的分子群であった。また、子宮内膜症患者腹水と非子宮
内膜症患者腹水との比較で、有意差を持って検出されピークは、解析中である。
【結論】腹水と血清のメタボローム解析により、腹腔内環境特異的低分子化合物が検出された。こ
の腹水特異的因子は、子宮内膜症の発症との関連性はなかったものの、子宮内膜症病巣維持とは関
連している可能性があると考えられた。また、子宮内膜症患者腹水特異的物質は現在同定中である
が、エストロゲン代謝に関連している可能性のある分子も検出されているため、バイオマーカーあ
るいは新規治療薬剤開発への手がかりとして、子宮内膜症の病態との関連性について検討していき
たい。
67
B1-5
子宮内膜症の発症に対して、EP300およびAHRR遺伝子多型がおよぼす影響
慶應大・産婦人科1、慶應大学・小児科2、倉敷成人病センター婦人科3、新川崎こびきウィーメンズクリニッ
ク4
◎ 辻 紘子1、浅田弘法1、浅井 哲1、古谷正敬1、内田浩1、浜谷敏生1、丸山哲夫1、小崎健次郎2、
柳橋達彦2、羽田智則3、安藤正明3、木挽貢慈4、吉村泰典1
【目的】子宮内膜症は従来から知られているように、エストロゲン依存性の疾患である。子宮内膜症は多因子
疾患であり、環境因子と遺伝的要因が複雑に関連して発症していると予想されている。一方、ダイオキシン類
の毒性はAhR(aryl hydrocarbon receptor)を経由して発現し、毒性の発現においてエストロゲンレセプターとのク
ロストークが存在することが指摘されていた。今回我々は、AhRを抑制する因子であるAHRR(AhR repressor)お
よび、エストロゲンレセプターのコアクチベーターであ
るP300と子宮内膜症の発症との関連を遺伝子多型により検討することを目的とした。
【方法】同意を得られた、子宮内膜症患者146名、非子宮内膜症患者154名を対象として解析を行った。子宮内
膜症の有無および子宮内膜症の重症度分類(rASRM分類)は、腹腔鏡下手術において、同一術者が診断を行
った。AHRRの多型解析ははSNPID:rs2292596について施行し、P300の多型解析はSNP ID:rs20554、
rs2076577、rs2076578に対して施行した。それぞれの遺伝子多型と、子宮内膜症発症の有無、子宮内膜症の
重症度、子宮内膜症の発症年齢との関連性について検討を行った。
【成績】子宮内膜症の発症とP300の遺伝子多型とは関連性は検出されなかった。一方、AHRRの遺伝子多型に
おいて、子宮内膜症の有無との関連性や、子宮内膜症の発症との関連性は検出されなかったが、早期治療開
始者(30歳以下の外科的治療)と非発症者の間、および、子宮内膜症発症者で、早期治療開始者(30歳以下
の外科的治療)と後期治療開始者(31歳以上での外科的治療)との比較検討で有意な差が検出された。
【結論】子宮内膜症の発症とP300の今回検討した遺伝子多型との関連性は認められなかった。子宮内膜症の
発症にエストロゲンが関与していることは明らかであるが、子宮内膜症発症患者と非発症者の間で、エストロ
ゲン関連の分子挙動でどこが異なるかは明らかにはなっていない。今回検討したP300の多型解析からは、
P300と子宮内膜症の発症との関連性は認められなかったが、エストロゲンレセプターのみならず、エストロゲン
関連遺伝子群(共役因子など)を包括的に検索することにより、今後、子宮内膜症発症と関わりの深い因子が
あらたに明確になってくる可能性がある。また、今回の検討によりAHRRの遺伝子多型と治療年齢との関連性
があることが示唆された。早期
治療開始のリスクが高い患者を事前に検出することができるようになれば、予防的薬剤の使用(ピルの投与)
や計画的妊娠などのライフプランへの情報提供が可能となると考えられた。子宮内膜症の発症する部位や発
症年齢などについて、詳細なデータを集積し、遺伝子多型との関連性を解析することにより、若年発症者や、
悪性化の危険性がある遺伝的背景を今後明確にしていくことができると期待される。
68
B2-6
子宮内膜症組織におけるリポキシゲナーゼ経路関連遺伝子の発現解析
慶應義塾大学医学部産婦人科学教室
◎ 梶谷 宇、丸山哲夫、浅田弘法、内田 浩、各務真紀、小田英之、西川明花、山崎彰子、吉村泰典
【目的】リポキシゲナーゼ(LOX)経路はロイコトリエン類、ヒドロキシ酸類、およびリポキシン類といった脂
質メディエーターの生合成を制御する主要な経路であり、アレルギーや炎症応答、動脈硬化などとの深い
関連が示唆されている。子宮内膜症との関連では、LOX 経路により生成される脂質メディエーターの濃度
やメディエーター受容体の発現に関する報告はあるものの、生合成経路に関する報告はこれまでなされ
ていない。そこで今回、LOX 経路を構成する主要な酵素である 5-LOX、12-LOX、15-LOX について子宮内
膜症組織での発現を検討し、病態との関連づけを行って新たな治療法開発へとつなげていくことを目的に
本研究を計画した。
【方法】患者の同意を得て採取した子宮内膜症患者由来卵巣チョコレート嚢胞組織と、子宮内膜症を発症
していない患者より採取した正所性内膜組織よりそれぞれ Total RNA を抽出し、リアルタイム PCR 法にて
5-LOX、12-LOX、15-LOX のmRNA 量を定量し、両組織間での発現量の差を比較した。
【成績】卵巣チョコレート嚢胞 18 例、正所性内膜 12 例を用いた比較の結果、5-LOX mRNA ならびに
15-LOX mRNA が、卵巣チョコレート嚢胞組織において正所性内膜組織に比して有意に高発現していた。
一方、12-LOX に関しては両組織間で発現量に有意な差は認められなかった。
【結論】5-LOX はロイコトリエン類生成の鍵酵素であり、炎症反応に深く関与している。一方、15-LOX もヒ
ドロキシ酸類やリポキシン類生成に関与する重要な酵素であり、炎症応答を制御していることが示唆され
ている。これらの酵素が子宮内膜症病巣局所で特異的に高発現していることより、子宮内膜症の発症お
よび慢性化にも何らかの重要な役割を果たしている可能性があり、これらの酵素の阻害剤などが子宮内
膜症治療に役立つのではないかと考えられた。
69
B2-7
子宮内膜症間質細胞で Tunicamycin は TRAIL 受容体誘導によりアポトーシスを促
進する
東京大学医学部産婦人科
◎ 長谷川亜希子、大須賀穣、広田 泰、濱崎かほり、児玉亜子、原田美由紀、田島敏樹、竹村由里、
森本千恵子、平田哲也、吉野 修、甲賀かをり、矢野 哲、武谷雄二
【目的】子宮内膜症細胞のアポトーシスの減少は子宮内膜症の病因の1つと考えられている。腹腔内には
アポトーシス誘導因子である Tumor necrosis factor(TNF)-related apoptosis inducing ligand(TRAIL)が存在
しているが、子宮内膜症患者の腹腔内貯留液中ではその阻害因子である osteoprotegerin(OPG)の濃度
が上昇し、TRAIL 抵抗性となり子宮内膜症の原因となることが示唆されている。近年、特定の腫瘍細胞で
Tunicamycin(TM) が TRAIL受容体の発現を増加させ、TRAIL に対する感受性を増強することにより抗腫
瘍効果を持つことが報告された。本研究では TM が子宮内膜症間質細胞(ESC)で TRAIL 感受性を増強さ
せるか否かを TM のもつ小胞体ストレス誘導効果との関連まで含めて検討した。
【方法】倫理委員会の承認を得、文書同意のもと手術で得られた子宮内膜症組織より ESC を分離培養し
て実験に供した。ESC に TM(2ug/ml)を添加し、TRAIL 受容体である DR5 mRNA および小胞体ストレスマ
ーカーである sXBP1 mRNA の経時的発現を定量的 PCR にて測定した。ESC に TM(2ug/ml)を 16 時間添
加した後、TRAIL(200ng/ml)を 24 時間添加し、アポトーシスを flow cytometry にて定量した。また TRAIL
添加の 1 時間前に z-VAD-fmk(caspase 阻害剤、30uM)を添加して同様の実験を施行した。さらに、DR5
siRNA(50nM)を 24 時間導入の後、同様の実験を施行した。また小胞体ストレス経路の1つである
IRE1-sXBP1 系の関与を検討するため、IRE1 siRNA(50nM)を 24 時間導入の後、同様の実験を施行した。
【成績】TM は ESC における DR5 mRNA の発現を 12 時間で対照の 3.7 倍に、sXBP1 の発現を6時間で対
照の 7.8 倍に増加させた。TM の前処置により ESC における TRAIL 誘導性アポトーシス(74.6%)は対照
(4.7%)に比し著明に増加した。このアポトーシス増加は z-VAD-fmk 添加により 26.1%まで抑制され、
caspase 依存性と考えられた。また、DR5 siRNA 導入により TM による DR5 mRNA 発現の増加が抑制され
るとともに TRAIL 誘導性アポトーシスも 33.5%まで有意に抑制された。一方 IRE1 siRNA 導入では TRAIL
誘導性アポトーシスの抑制はみられなかった。
【結論】TM は ESC に DR5 の発現を誘導して TRAIL 誘導性アポトーシスを増強し、子宮内膜症治療に有用
となる可能性が示された。TM の DR5 発現誘導の機序としては IRE-sXBP1 系以外の小胞体ストレス反応
経路が関与している可能性が考えられた。
70
B2-8
パスウェイ特異的アレイを用いた子宮内膜症細胞のアポトーシス抵抗性の解明
鳥取大産婦人科
◎ 谷口文紀、池田綾子、渡邉彩子、田頭由紀子、周防加奈、岩部富夫、原田 省、寺川直樹
【目的】内膜症患者腹水中に高濃度に存在する TNFαが、NFκB 経路を介して内膜症間質細胞 (ESC)
における IL-8 産生と細胞増殖を促進すること、ESC は正所性内膜間質細胞 (EMSC) に比して、薬剤誘
導性アポトーシスへの抵抗性を示すことを報告してきた。本研究では cDNA アレイ解析により、ESC の増
殖とアポトーシス抵抗性に関する遺伝子を明らかにすることを目的とした。
【方法】患者の同意を得て、卵巣チョコレート嚢胞壁から ESC を、子宮筋腫患者の子宮内膜から EMSC を
分離培養した。炎症反応惹起あるいはアポトーシス誘導モデルとして LPS と Staurosporin (SS)を添加し、
パスウェイ特異的アレイにより遺伝子発現プロファイリングを行った。Lipofectine 法により目的遺伝子の
siRNA を導入し、遺伝子と蛋白発現を real time RT-PCR および ELISA で定量化した。アポトーシスの評価
は DNA ラダー法と、Caspase-3 と-7 蛋白発現を Western blot 法で解析した。細胞増殖能は BrdU 法ある
いは WST-8 法により評価した。
【成績】LPS 添加は、ESC の TNFα遺伝子発現を対照の 7 倍に増加させた。LPS 添加後の ESC でみられ
た IL-8 と cIAP-2 の強発現は、TNFαノックダウンにより減弱し、細胞増殖能も対照の 85%に抑制された。
ESC では、IAP family に属する cIAP-1、Survivin、XIAP 遺伝子の強発現がみられた。SS 添加により、
Survivin 発現が ESC では増強したが EMSC では減弱し、生細胞数も ESC で有意に多かった。ESC では、
EMSC でみられた SS 誘導性の Caspase-3 と-7 の活性化が認められなかった。Survivin ノックダウンによ
り、ESC の生細胞数は減少し、DNA 断片化が明らかとなった。
【結論】内膜症細胞の増殖ならびに薬剤誘導性アポトーシス抵抗性には、TNFαと IAP family が関与する
ことが示唆された。
71
B2-9
転写因子ショック熱における正所性子宮内膜HSF-1関連との月経周期と発現
高知大産婦人科
◎ 菅 麻里、谷口佳代、宇賀神奈月、泉谷知明、前田長正、深谷孝夫
【目的】近年、NK 活性低下をきたす子宮内膜症の発生に関わる抗原として、NK レセプターのリガンドであ
る HLA-G が注目されている。HLA-G は、in vitro の培養系(melanoma)で、細胞へのストレスによって発現
することが報告されている。その機序は、ストレスにより細胞質の熱ショック蛋白(Hsp)から遊離した転写因
子(HSF)-1 が核内エレメント(HSE)に結合し、その下流の HLA-G が発現するとされている。今回、in vivo
の子宮内膜における HSF-1 発現を検討し、月経周期との関連性また Hsp70・HLA-G 発現との関連性を明
らかとすることを目的とした。
【方法】対象は過去8年間に開腹もしくは腹腔鏡下に子宮を摘出した有経婦人(内膜症 34 例、非内膜症
30 例)で全て同意書を得て研究に供した。免疫染色(ABC)法にて子宮内膜の HSF-1、HLA-G、および
HSP70 を月経周期別に検討した。各々の抗原の染色性は、NIH image を用いて定量化した。
【成績】HLA-G は月経期にのみ内膜上皮の細胞質に発現し、非月経期には発現していなかった。Hsp70
は月経期の内膜上皮の細胞質に非月経期より強く発現していた。HLA-G と Hsp70 との間には有意の正相
関を認めた。HSF-1 も月経期子宮内膜上皮に強く発現していたが、その発現は核に局在していた。各々
の発現時期、発現量には群間差を認めなかった。
【結論】月経期子宮内膜では、ストレスにより Hsp70 から HLA-G への一連のタンパク合成が生じていると
考えられる、その機序には熱ショック転写因子 HSF-1 の関与が示唆された。このシステムにより、月経期
には HLA-G が発現した内膜細胞が逆流経血によって腹腔に流入し、腹腔 NK 細胞と免疫応答すると考
えられる。
72
B2-10
月経期子宮内膜における HLA-G 発現への熱ショック蛋白 Hsp70 の関与について
高知大産婦人科
◎ 谷口佳代、菅 麻里、宇賀神奈月、泉谷知明、前田長正、深谷孝夫
【目的】子宮内膜症では、腹腔 NK 活性低下が知られているが、NK 細胞の標的抗原は未だ同定されてい
ない。近年、NK 細胞の細胞傷害調節性レセプターである KIR の標的抗原が HLA-G であることが証明さ
れ、内膜症への関与が注目されている。HLA-G はストレス蛋白である熱ショック蛋白(Hsp)によって誘導
されることが明らかとなっている。われわれはこの Hsp および HLA-G に注目し、とくに子宮内膜における
HLA-G の発現と、HLA-G 発現への Hsp の関与を明らかとすることを目的とした。
【方法】対象は過去 8 年間に開腹もしくは腹腔鏡下に子宮を摘出した有経婦人(内膜症 34 例、非内膜症
30 例)で、組織は全て同意を得て研究に供した。免疫染色(ABC)法で子宮内膜組織の Hsp70 と HLA-G
を検出し、月経周期別に検討した。それぞれの組織内の染色性は、定性的また NIH image を用いて定量
化して検討した。
【成績】HLA-G は月経期にのみ子宮内膜上皮に発現し、増殖期・分泌期(非月経期)には発現していなか
った。同じ内膜上皮における Hsp70 は、月経期で非月経期に比較し有意に強い発現を認めた。また
Hsp70 と HLA-G の発現の間には有意の正相関を認めた。以上の結果は内膜症群・非内膜症群ともに同
様で群間差を認めなかった。
【結論】月経期子宮内膜における Hsp70 の強発現は、この時期の内膜へのストレスの存在を示唆している。
この Hsp70 によって HLA-G が誘導され、逆流経血によって腹腔に流入し NK 細胞の標的抗原となってい
ると考えられる。NK 活性低下が一要因とされる内膜症では、月経期に発現する HLA-G は発症に関わる
重要な抗原である可能性が示された。
73
B3-11
腹腔鏡初心者による子宮内膜症の治療∼手を出して良いのか?悪いのか?∼
倉敷成人病センター 婦人科
◎ 三木通保 金尾祐之 出浦伊万里 羽田智則 太田啓明 高木偉博 安藤正明
【緒言】子宮内膜症は産婦人科の一般臨床をする者にとって、よく遭遇する疾患であり、腹腔鏡初心者が
子宮内膜症患者の主治医になる機会も多い。また定義上、子宮内膜症の診断は腹腔鏡を含む直視下で
診断され、歴史的にも腹腔鏡と馴染みがある疾患である。
一方で、子宮内膜症の病態は、単なる軽微な癒着だけのもの∼単房性のチョコレート嚢腫のみのもの∼
後腹膜腔深部にまで病巣が拡がる深部子宮内膜症病変を伴うものまで、非常に多彩である。
では、目の前の子宮内膜症患者が、腹腔鏡手術適応と考えられた場合、腹腔鏡初心者は安易に手術し
ても良いのだろうか?
【症例】当院では、不妊症の診断目的から、尿管や腸管子宮内膜症等の深部子宮内膜症等、数多くの子
宮内膜症症例の治療(診断)を行っている。今回、当院で研修中の腹腔鏡初心者の立場から、当院の内膜
症症例を数例供覧し、初心者の心掛け∼押さえるべきポイント、真似をしたいポイント、真似できないが理
解したいポイントも含めて、有用であると感じた手術手技、留意点を紹介する。
【方法】初心者が子宮内膜症を治療する場合、以下のポイントがある。
・自分の技術レベルの正確な把握
・骨盤解剖の理解
・eye-hand coordination の向上
・正常組織と病変部との境界の認識
・組織障害を最小限に抑える止血法(術後の卵巣機能不全予防)
これらは内膜症手術に限らず、基本的な事である。さらなるレベルアップを目指す場合、
・解剖学的偏位の是正
・鋭的/鈍的剥離の組み合わせ
・温存臓器「尿管や直腸(場合によっては下腹神経)」の分離
・外側から内側へ向かうアプローチ
・層の認識
・脂肪組織の確認
・切除面、切除組織のイメージ
等が有用である。これらの具体例を紹介する。
また参考までに、合併症予防として施行する手術終了時の直腸診、air leak test や、当院の手術病理組織
標本も提示する。
【考察】子宮内膜症は良性疾患でありながら、悪性疾患に類似した振る舞いを示す例もあり、実際の手術
時には、悪性疾患治療以上の手技が必要となることもある。また良性疾患であるがゆえに、合併症や治
療後の再発・再燃に対する患者の許容も低い。筆者の様な腹腔鏡初心者が安易に執刀しても、合併症の
リスクがあがるか、あるいは不完全手術となり、結果的に再発リスクもあがる。当院では合併症のリスクを
減らし、患者の QOL の向上のために、様々な工夫をしているが、腹腔鏡初心者である筆者が将来、執刀
する上で参考になる工夫もあると考える。これらの紹介が手術時の参考になれば幸いである。
74
B3-12
深部子宮内膜症に対する腹腔鏡下手術 ∼ダグラス窩開放と深部病巣切除に関
する検討∼
倉敷成人病センター産婦人科
◎ 出浦伊万里、三木通保、羽田智則、太田啓明、高木偉博、金尾祐之、安藤正明
【目的】深部子宮内膜症に対するダグラス窩開放と深部病巣切除は合併症のリスクを伴う難易度の高い
手術手技であり、疼痛改善における有用性はこれまでのところ明らかになっていない。特に深部病巣を切
除する意義については議論が分かれるところであり、ダグラス窩を開放するだけで十分に疼痛は改善す
るという意見もある。「深部子宮内膜症においてダグラス窩開放に加え深部病巣切除を行う意義はあるの
か?」疼痛改善と合併症をキーワードに検討する。
【方法】2006 年 4 月から 2008 年 3 月までの 2 年間に当院で腹腔鏡下子宮内膜症病巣切除術を施行した
193 例の中でダグラス窩完全閉鎖を伴う 67 例を対象とし、ダグラス窩開放のみを行った A 群とダグラス窩
開放および深部病巣切除を行った B 群に分類した。実際の手術手技(①ダグラス窩開放②深部病巣切除
③損傷臓器の修復)をビデオで供覧する。両群の術前後の月経痛スコアを Visual analog scale ;VAS と
Verbal rating scale ;VRS の 2 つを用いて比較検討した。また、術中臓器損傷と術後合併症についても検討
した。
【成績】ダグラス窩閉鎖を伴う 67 例の中で、A 群は 15 例(22.4%)、B 群は 46 例(68.7%)であった。ダグラス窩
を開放しなかった症例は 6 例(9.0%)であり、高度肥満・開腹手術既往・巨大子宮症例であった。術前の月
経痛スコアは、A 群;VAS64±14/VRS3.6±0.9、B 群;VAS79±7/VRS3.8±0.5 であり、B 群で高い傾向が
あった。術後の月経痛スコアは、A 群;VAS32±13/VRS2.0±0.8、B 群;VAS45±10/VRS2.1±0.5 であり、
いずれも術前と比較して有意に低下した。両群間で月経痛スコアの改善率に有意差はなかった。術中臓
器損傷として、直腸損傷が A 群で 1 例(0.1%)、B 群で 13 例(28.3%)に認められ、尿管損傷はなかった。臓
器損傷の発生率は B 群で有意に高かったが、いずれも腹腔鏡下に縫合修復が可能であった。術後合併
症は B 群で 2 例(一時的自己導尿を要する膀胱神経損傷 1 例・保存的治療可能な腹膜炎 1 例)(4.3%)が認
められ、A 群では 1 例もなかった。
【結論】ダグラス窩開放は深部病巣切除の有無に関わらず疼痛改善に有用であり、深部病巣切除により
術中臓器損傷の発生率は高くなることが示された。深部子宮内膜症における深部病巣切除の意義につ
いては今後さらに検討する必要がある。
75
B3-13
子宮内膜症における腹腔鏡下ダグラス窩手術時の卵巣吊り上げ法(糸穴法と巻き
付け法)について
岐阜市民病院 産婦人科
◎ 山本和重,平工由香,矢野竜一朗,伊藤邦彦
【目的】子宮内膜症における腹腔鏡下手術の際,卵巣腫瘍(卵巣自体)が邪魔でダグラス窩手術(完全ダグラ
ス窩閉塞開放,子宮内膜症病巣除去術など)がやりにくい時に我々は卵巣吊り上げ法により視野確保をしてい
る.直接卵巣に糸を通す方法は以前より散見されるが,それについて詳しく記載された論文は見当たらなかっ
た.当科でも直接卵巣に糸を通す方法を施行してみたが,卵巣刺入部の出血症例が6症例9卵巣中4症例4卵
巣に認められた(2005年11月より2007年5月までに施行した症例).また他施設での卵巣裂傷の報告(パーソナ
ルコミュニケーション)もあった.そこでこれらのトラブルを回避する目的で我々は糸穴法と巻き付け法を操作方
法も含め新たに考案し,その有用性について検討した.
【方法】後方視的調査で,対象は2006年5月より2008年9月までに当科で手術を施行した症例とした.手術手技
であるが,針は2-0プロリーン丸針直針を使用した.刺入点は鼠径部のやや頭側で透過試験により腹壁血管を
避けた位置とした.腹壁上の糸は腹腔内での距離調整用に5cm程度残しモスキートペアンにて鉗圧した.子宮
附属器癒着があれば癒着剥離術を先行した.次に卵巣腫瘍がある時は先に核出縫合し,その後縫合端の糸
穴に針を通す方法を取った.その際,卵巣の垂れ下がりを極力最小限にする目的で縫合は卵巣固有靭帯側よ
り開始し卵巣提靭帯側で糸穴を形成した.卵巣腫瘍がない時は卵巣に巻きつける方法を取った.吊り上げ前
に卵管通色素検査や膀胱子宮窩手術は済ませるが,吊り上げ後に前方操作(骨盤内洗浄など)で子宮の位置
を変更する時は,卵巣損傷(裂創)を避けるために腹壁上のモスキートペアンの鉗圧位置を調整することにより
対応した.卵巣吊り上げ下でダグラス窩手術を施行し,フィブリン糊スプレー剤や癒着防止剤を使用した.終了
時に糸穴法では糸穴糸を鉗子で把持し曲剪刀で切断し,吊り上げ糸を回収してから糸穴糸を体外に回収した.
最後に吊り上げ糸刺入部の出血の有無を確認した.検討項目は症例数,ダグラス窩手術の操作性に対する
術者の感想,トラブルとした.
【成績】施行数は糸穴法単独39症例(両側28症例,片側11症例),巻き付け法単独4症例(両側3症例,片側1症
例),両者併用10症例,合計53症例であった.術者の感想であるが,卵管が垂れて多少邪魔になる症例もあっ
たが,概ねダグラス窩手術はストレスなく施行できた.吊り上げ糸が操作の邪魔になるようなことはなかった.
また卵巣の出血や損傷はなかった.トラブルは4症例7.5%に腹壁刺入部の出血を認めたが,自然あるいはガ
ーゼ圧迫のみで止血でき,全例で重篤なトラブルは無かった.
【結論】卵巣吊り上げ法(糸穴法と巻き付け法)は子宮内膜症における腹腔鏡下ダグラス窩手術時の安全性,
完遂性を高める補助操作として有用と思われた.
76
B3-14
腹腔鏡下子宮内膜症性嚢胞核出術後の再発に関する検討
東北大学産婦人科1、滋賀医科大学産婦人科 2、仙台社会保険病院3
◎ 宇賀神智久1、村上 節 2、横溝 玲3、寺田幸弘1、宇都宮裕貴1、早坂真一1、荒井真衣子1、
八重樫伸生1、岡村州博1
【目的】腹腔鏡下子宮内膜症性嚢胞核出術後の再発に関する検討を行い、再発の危険因子について検
討した。
【方法】対象は 1997 年 1 月から 2007 年 12 月までに子宮内膜症性嚢胞と診断され、腹腔鏡下子宮内膜症
性嚢胞核出術を施行した 173 例である。術後の平均フォロー期間は 42.8±33.6 ヶ月であった。再発の定義
は、経過観察中に経腟超音波断層法にて径 2cm 以上の子宮内膜症性嚢胞を認めたものとした。初回手
術後に再発した症例を A 群(n=78)、再発しなかった症例を B 群(n=95)と定義した。検討項目としてこの 2
群間における、初回手術時の初経年齢、妊娠暦、薬物療法の有無、BMI、卵巣腫瘍径、両側性の有無、
子宮筋腫もしくは子宮腺筋症の合併の有無、r-ASRM 分類のステージ及びスコア、術後の薬物療法の有
無、術後妊娠の有無を検討した。
さらに、再発した A 群の中で、再度腹腔鏡下子宮内膜症性嚢胞核出術を行った 24 症例を対象として検
討を行った。再手術後に再々発した症例を C 群(n=10)、再々発しなかった症例を D 群(n=14)と定義した。
検討項目として、初回手術時の年齢、r-ASRM 分類のステージ及びスコア、再発までの期間、再発から再
手術までの期間、再発後の妊娠、再発後の薬物療法、再手術時の年齢、再手術時の卵巣腫瘍径、両側
性の有無、再手術時の r-ASRM 分類のステージ及びスコア、再手術後の薬物療法の有無、術後妊娠の
有無について検討した。検定にはマンホイットニーの U 検定とχ二乗検定を用いた。
【結果】術後の再発率は約45%(78/173)であった。両側の子宮内膜症性嚢胞を有する症例はA群で37例、
B群で21例とA群で有意に多かった(P<0.01)。また、r-ASRM分類の平均スコアはA群で50.1、B群で40.9と
A群で有意に高かった(P<0.01)。また再手術を行った症例の再々発率は42%(10/24)であった。初回手
術から再発までの期間はC群で6.8ヶ月、D群で23.2ヶ月と有意にC群で短かった(P<0.01)。
【結論】腹腔鏡下子宮内膜症性嚢胞核出術後の再発危険因子として、両側性を有する症例、r-ASRM分
類のハイスコア症例、初回手術から再発までの期間が短い症例が挙げられた。再発を来たす進行症例で
の子宮内膜症の活動性は高く、再手術の時期や適応を慎重に見極める必要があると考えられた。
77
B3-15
子宮内膜症に合併した卵管・卵巣膿瘍の経腟超音波ガイド下膿瘍吸引術
(TVUS-A)による管理とその成績
順天堂大学医学部産婦人科
◎ 松岡正造、武内裕之、黒田雅子、白井洋平、黒田恵司、地主 誠、熊切 順、菊地 盤、北出真理、
竹田 省
【目的】卵管卵巣膿瘍は卵巣チョコレート嚢胞に合併することが多いことが知られているが手術既往例が
多く,さらに内膜症による腹腔内癒着に加え感染による周辺臓器の炎症性変化により外科的治療に苦慮
することが多い. 当科では,卵巣膿瘍の管理にまず TVUS-A による起因菌の同定と reduction を施行した
のち,抗生物質の投与を行っている.卵巣膿瘍の背景とその治療法としての TVUS-A の有用性の検討を目
的とした.
【方法】2002 年 1 月より 2008 年 8 月までに卵管・卵巣膿瘍と診断した 15 例を対象とした.TVUS 下に 17G
の採卵針で内容液を吸引し,その後抗生剤の投与を行った.膿瘍吸引後の再発例は外科的治療とした.
【結果】対象の平均年齢(mean±SD)は 38.6 ±5.8 歳、手術既往例は 9 例(60%), 初期症状として全例に下
腹部痛を認めた。明らかな誘因を認めたのは 3 例(20%)で子宮内膜スメア 2 例、子宮鏡検査 1 例であっ
た. 入院時検査成績(mean±SD)はそれぞれ WBC:13773±5339/μL、CRP:17.4±6.9 mg/dL, 膿瘍吸引
量は 112±129.8mL であった. 菌が検出されたのは 9 例(60%)で、E.coli 6 例, Group G streptococcus,
Prevotella bivia , Enterococcus sp 各 1 例であった. 穿刺後、検査成績が正常値(WBC<8000、CRP<5)と
なるまでの日数はそれぞれ WBC:4.2±3.1 日、CRP:4.7±2.0 日であった。吸引後の抗生剤投与のみで寛
解したのが 12 症例(80%),軽快せず腹腔鏡を要したのが 3 例であった. 手術を要した 3 症例とも TVUS-A
を 2 回施行したのち腹腔鏡下手術が行われた. 追加外科的治療を要した群では術後経過良好であった
群に比し入院時 CRP 値が高く、膿瘍吸引量が少なかった. 術後 CRP 値の正常化までの期間は追加外科
的治療を要した群が、術後経過良好であった群に比し有意に短かった。術後経過良好のうち、のちに腹
腔鏡下手術を行ったのは 4 例で、腹腔鏡下手術が行われた 7 例の r-ASRM 分類(mean±SD)は 80.3±8.6
であった。
【結論】卵管卵巣膿瘍は、外科的ドレナージが有効であるといわれているが、開腹や腹腔鏡では術中・術
後合併症のリスクが高い.TVUS-A は低侵襲であり起因菌の同定による抗生剤の選択が可能である上、
初期治療として約 80%の症例に有用である。半数以上の症例で吸引困難な膿瘍や反復する症例の場合
には早期に腹腔鏡手術などを考慮する必要があると考えられた.
78
B4-16
深部膀胱子宮内膜症に対して腹腔鏡下に広範囲に膀胱粘膜のみを残して切除し
得た1症例
高の原中央病院産婦人科1、泌尿器科2
◎ 谷口文章1、貴志洋平1、本田能久1、杉並留美子1、杉並 洋1、高田 聡2
【緒言】
膀胱に子宮内膜症を認めるとき、浅い膀胱子宮内膜症の場合は焼灼したり、その部分のみを切除するこ
とが多い。しかし膀胱筋層の深部に浸潤した場合は、膀胱を開けて子宮内膜症を切除し、その部分を縫
合する方法が行われている。今回我々は膀胱筋層に深く浸潤していた(粘膜内までは達せず)子宮内膜
症に対して、腹腔鏡下に、膀胱を開放せずに粘膜を残して十分に切除を行えた症例を経験したので報告
する。
【症例】
症例は32才、0経妊0経産
月経痛、排尿時痛、挙児希望を主訴に近医を受診。子宮内膜症、不妊症と診断され、手術目的に当院を
紹介され受診した。MRI、超音波検査にて膀胱子宮窩に子宮内膜症性の腫瘤
を認め、膀胱筋層に深く浸潤していた。腹腔鏡にて腹腔内を観察すると、膀胱子宮窩は閉鎖しており、そ
の部分に深部子宮内膜症を認めた。まず膀胱子宮窩を開放して深部子宮内膜症を摘出、この時深部子
宮内膜症を取り残すことなくまた膀胱内に入ることなく切除し得た。その切除したあとの膀胱部分は泌尿
器科医師の指導のもと、2-0ポリソーブにて2層に縫合修復した。またダグラス窩にも認めた深部子宮内膜
症も同時に切除して手術を終了した。手術時間は180分であり、術中、術後の合併症は認めなかった。手
術後の月経痛、排尿時痛は改善した。
【考察】
膀胱子宮内膜症は、全子宮内膜症の 1%程度に認め、排尿時痛,月経痛を認めることが多い.今回、
我々が行った方法は、腹腔内への尿の流出がないために婦人科医の術中のストレスも少なく、また術後
縫合不全による腹腔内への尿の流出の可能性も低い.しかしこの術式は時間を要し,膀胱粘膜を残すこ
とにこだわって粘膜面の子宮内膜症を残す可能性もあり,今後の検討が必要と思われた。
79
B4-17
子宮内膜症腹腔鏡下手術症例における尿管走向の確認方法について
白河産婦人科1、倉敷成人病センター産婦人科 2
◎ 児島信子1、安藤正明 2
【緒言】子宮内膜症腹腔鏡下手術症例では程度の差こそあれ癒着や腹膜の線維化が認められる。特にダ
グラス窩周囲ではその頻度が高く、実際後腹膜の尿管周囲に線維化が多く認められるため、その部分で
の癒着剥離・病巣切除・あるいは焼灼などの処置を行わなければならず、尿路の合併症を減少させるた
めには尿管の位置確認を必要とすることが多くなる。特に後腹膜の線維化が強い症例において尿管の走
向を把握するのはきわめて困難な場合が多い。骨盤解剖の理解と共にある程度の症例数を経験しその
変位のパターンを体得していくことが必要であると思われる。今回我々は、これまでに経験した内膜症手
術での尿管確認の方法を症例で示しながら紹介していく。
【症例】①まず、癒着や内膜症性の腹膜の変化の程度が軽度のものは、子宮広間膜後葉の表面から鉗
子を用いて尿管自体を刺激して蠕動運動を確認する。②これが困難な場合はさらに頭側の外腸骨動脈と
の交叉部で走向を確認し尾側に追っていく。③そして尿管の走向確認を最も困難にしているのは子宮内
膜症の特徴である後腹膜が線維化変性のために拘縮し伸展性が低下している状態である。それらはある
程度の目安をつけて子宮広間膜後葉を一部開放し、尿管を探していくこととなる。後腹膜線維化の部位に
より異なるが、通常の走向よりも内側の仙骨子宮靭帯寄り、あるいは逆に外側の骨盤漏斗靭帯寄りに変
位しているものを経験することが多い。内膜症のない症例で尿管の通常所見を示し、その後①、②、③の
症例について画像で紹介する。
【考察】子宮内膜症の手術症例では尿管の位置確認が必要となることが多い。それらの症例で尿路合併
症の発症を軽減させるため、また確実に深部の子宮内膜症を切除するためには、腹腔鏡下手術での外
腸骨動脈や内腸骨動脈(側臍靭帯)などの骨盤解剖理解が基本であり、手術での実際の経験だけでなく
そういう手術症例を数多く見ることなどで走向位置変位のパターンやバリエーションを記憶し、実際の手術
に応用していくことが大切であると思われる。
80
B4-18
卵巣チョコレートのう胞に対する腹腔鏡下付属器摘出に潜む危険∼すぐそこに迫
る尿管の危機∼
倉敷成人病センター産婦人科
◎ 太田啓明、羽田智則、出浦伊万里、三木通保、高木偉博、金尾祐之、安藤正明
【緒言】腹腔鏡下手術は minimally invasive surgery(術後疼痛が少ない、回復・社会復帰が早い)として確
立しつつある。特に良性の卵巣嚢腫に対する腹腔鏡下付属器摘出は様々な施設で比較的短時間で行わ
れ、まさに腹腔鏡下手術の特徴である低侵襲であることが期待される。また腹腔鏡下子宮全摘術や筋腫
核出術に比べ体内縫合や骨盤深部の操作がなく、技術認定医取得を目指す医師にとってまずマスターす
べき術式である。当院でも比較的初期より技術認定医の指導下、腹腔鏡下の付属器摘出や嚢腫摘出ま
た腹腔鏡下子宮全摘における上部靭帯の切断を行っている。卵巣チョコレートのう胞以外の良性卵巣腫
瘍では癒着や尿管走行の偏移などもなくスムーズに短時間で行える術式も、卵巣チョコレートのう胞では
当然のことながら癒着や偏移により困難さは格段に上昇する。そこで細心の注意を払い、癒着や偏移に
よる解剖学的誤認を避けなければ、尿管損傷などの合併症を引き起こしかねない。そこで、実際の手術ビ
デオから卵巣チョコレートのう胞に対する腹腔鏡下付属器摘出に潜む危険を検証した。
【症例】卵巣皮様嚢腫で癒着のない症例では、尿管は広間膜後葉より透見し蠕動を確認、バイポーラ・は
さみ鉗子を用いて骨盤漏斗靭帯・卵巣固有靭帯を切断し付属器摘出を行っている。一方卵巣チョコレート
のう胞ではまず、卵巣周囲の癒着を剥離し卵巣嚢腫を受動する。広間膜後葉より尿管を透見し、広間膜
後葉から尿管を剥離、卵巣動静脈のみとしてから切断している。ここで広間膜後葉から尿管剥離の操作
行わずに骨盤漏斗靭帯の切断を進めると付属器摘出後に思っていた以上に尿管に骨盤漏斗靭帯の切
断面が近くヒヤリとすることになる。今回実際に軽度の癒着と思われていた症例に尿管剥離の操作行わ
ずに骨盤漏斗靭帯の切断を進め、ヒヤリとした場面を紹介する。
【考察】子宮内膜症では卵巣病変は軽度であっても予想以上に腹膜内膜症・深部内膜症が進行しており、
尿管の走行に強い偏移を認めることがある。卵巣チョコレートのう胞の付属器摘出の場合は今回経験し
たように思った以上に尿管の走行が偏移していることが多い。したがって他の良性卵巣腫瘍のときとは異
なり、骨盤漏斗靭帯切断の際には広間膜後方からの尿管蠕動確認だけでなく、尿管を広間膜後葉からの
剥離し骨盤漏斗靭帯切断面から離しておくことが重要かと思われる。腹腔鏡下手術の場合、低侵襲であ
ることが期待されているだけに、ひとたび合併症が起こった際の患者・家族の失望・反発はきわめて大き
い。特に子宮内膜症の場合には付属器摘出術であっても、十分なインフォームドコンセントおよび細心の
注意が必要である。
81
B4-19
腹腔鏡下に病変切除をしえた嚢胞性子宮腺筋症の 1 例
東邦大学医療センター大森病院
◎ 谷口智子 内出一郎 土屋雄彦 吉田義弘 中熊正仁 前村俊満 片桐由起子 森田峰人
【緒言】子宮体部に発生する嚢胞性病変の頻度は全子宮腫瘍の 0.35%に過ぎないとされている。一方、子宮腺
筋症では病変部が瀰漫性に増殖する例がほとんどであり、嚢胞性病変を呈することはまれである。今回われ
われは、強度の月経困難症を訴え、MRI の所見から嚢胞性子宮腺筋症を疑い腹腔鏡下で病変切除を施行し
た 1 例を経験したので報告する。
【症例】
症例:28 歳 0 回経妊 0 回経産
主訴:月経困難症
月経歴:初経 10 才 月経周期 30 日周期 整
現病歴:初経のころより経時障害を認めていたがここ数年徐々に症状が悪化していた。4 年前より子宮前壁右
側に 3cm 大の腫瘤を認め、変性子宮筋腫と診断されていた。月経困難症が強度のために救急車搬送されるこ
とが数回あったため、精査を希望し当院受診された。内診では子宮前壁右側に強い圧痛を認め、超音波断層
法検査において圧痛部位に約 3cm の腫瘤を認めた。骨盤部 MRI では子宮前壁右側に約 3cm の腫瘤を認め、
T1 強調画像および T2 強調画像で腫瘤の周囲は低信号示し、内部は高信号を示していた。左右の卵巣は正常
大であった。血液生化学所見は特に異常を認めず、CA125 値は 83.5U/ml と上昇を認めた。
以上より嚢胞性子宮腺筋症を疑い、鑑別診断として副角子宮があげられた。十分なインフォームドコンセント
の結果、腹腔鏡による診断および病変切除術を希望した。
術中所見、術後経過:全身麻酔下、気腹法にて腹腔鏡を施行。腹腔内所見は子宮前壁右側に、2cm 程度の突
出する腫瘤を認めた。子宮後壁に子宮内膜症病変および軽度の癒着を認めた。左右卵巣には異常所見を認
めなかった。子宮体部腫瘤性病変付近に 200 倍希釈のバソプレッシン生食を局注した後、筋層をハーモニック
スカルペル®にて切開し腫瘤摘出を行った。術中に腫瘤内容が漏出し、茶褐色の液体の流出を認めた。0PDSⅡにて子宮筋層を 2 層縫合した。両側卵管通過性は術前後ともに異常を認めなかった。
術後経過は良好で術後 5 日目に退院となった。摘出した検体の組織診断は adenomyosis であった。
【考察】嚢胞性子宮腺筋症の主症状は月経困難症、過多月経、貧血、下腹部圧迫感などである。
非常にまれな疾患であり、術前に診断を確定することは困難で、卵巣嚢腫や子宮筋腫の液状変性と診断され
ることも多いとされているが、本症例では詳細な医療面接と診察及び MRI で診断可能であった。
根治的治療法としては子宮全摘術があり、子宮温存症例に対しては薬物療法や病変部の摘出が治療法と
なる。本症例のように若年者や挙児希望のある場合の手術療法は病変部の切除が選択され、腹腔鏡下の病
変切除は十分選択可能な術式であると考えられる。
82
B4-20
子宮腺筋症に対する腹腔鏡補助下子宮腺筋症核出術 ̶高周波ループ電極を用
いて̶
日本医科大学産婦人科
◎ 菊池芙美、明楽重夫、峯 克也、市川雅男、渡辺美千明、竹下俊行
【目的】子宮腺筋症は子宮筋腫とは異なり正常子宮筋層との境界が不明瞭で、妊孕性を保つためには子
宮壁の確実な縫合を必要とする。我々は腹壁つり上げ法を用いて、手指の触覚と高周波ループ電極を用
いた腹腔鏡補助下子宮腺筋症核出術(Laparoscopically assisted adenomyomectomy, LAAM)を開発、良
好な成績を得たので報告する。
【方法】臍底部の縦切開より腹腔内組み立て式腹壁全層吊り上げ鉤を挿入し、下腹部左右に鉗子用の
5mm ポートを刺入した。恥骨上においた約 2.5cm の横切開創にシリコンゴム創部保護器具(ラッププロテク
ターミニ®)を装着、同部位より子宮腺筋症部分にバゾプレッシンを局注後、メスにて縦切開を加えた。腺筋
症結節を内膜付近まで半切して病巣を露出せしめ、高周波ループ電極や手指を挿入して子宮腺筋症組
織の切離をすすめた。その際、腺筋症の境界部を手指による触覚、スコープによる拡大視、鉗子による把
持感などを駆使し、できるだけ遺残のないように心がけた。
【成績】症例は 6 例、平均年齢は 36.3±2.7 歳であった。腺筋症の病変部位はすべて限局型で、病変の最
大直径は平均 6.1cm、前壁と後壁に位置したものがそれぞれ 3 例ずつであった。すべての症例で内膜に
到達したが、術後の合併症や開腹移行例はなく、順調に手術を完遂できた。手術時間は 165.3±32.8 分と
やや長く、出血量も 315.0±186.2ml とやや多い傾向にあったが、術後在院日数は平均 6.0±0.5 日とすべ
ての症例で 1 週間以内に退院となった。術後はすべての症例で月経痛が大幅に軽快していた。
【結論】子宮腺筋症は鏡視下には正常筋層との判別が困難であるが、LAAM では手指による触診でこれ
を補助的に判定することができた。また、ループ電極は繊細な手術操作が可能であり、腺筋症病巣の細
切除が可能であった。このため、病変の遺残を最小限に留め、かつ正常筋層の温存に寄与するものと考
えられる。このことは本法の開腹手術に準じた子宮壁の確実な縫合結紮と相まって、術後妊娠における
子宮破裂のリスク軽減につながると思われる。以上より、限局した子宮腺筋症において、LAAM は有効な
術式であると考えられた。
83
B5-21
卵巣子宮内膜症性嚢胞手術時の出血量、手術時間に関連する因子の検討
関西医科大学産科学婦人科学教室
◎ 角 玄一郎、中嶋 達也、岡田 英孝、安田 勝彦、神崎 秀陽
【目的】卵巣子宮内膜症性嚢胞手術時の術中出血量、手術時間に関連する因子があるかど
うかを調べる。
【方法】当院で 2000 年 1 月から 2006 年 12 月までの間に、卵巣子宮内膜症性嚢胞で嚢胞
摘出術を受けた症例を対象とし、術前に行った画像検査による嚢胞の最大径(両側の場合
は、それぞれの最大径を合計したもの)、血清 CA125 値と術中出血量、手術時間を比較し
た。また、術式、術前 GnRH アゴニスト投与の有無についても比較した。有意水準は 5%
に設定した。
【成績】血清 CA125 値と術中出血量、嚢胞の最大径、血清 CA125 値と手術時間の間に統
計学的な有意差は認められなかったが、術中出血量と嚢胞の最大径との間の相関係数は有
意であった。術式では、手術時間では有意差を認めなかったが、開腹手術より腹腔鏡手術
のほうが出血量が少なく、有意差を認めた。術前 GnRH アゴニスト投与の有無では、出血
量が投与群の方が少ない傾向にあったが、有意差は認めなかった。手術時間では、有意差
は認めなかった。
【結論】術前 GnRH アゴニスト投与が明らかに出血量を減少させるという結果は認められ
なかった。術式(開腹か腹腔鏡)の選択や術前に GnRH アゴニスト投与の有無などによる
バイアスが存在すると考えられるが、嚢胞の最大径が出血量の予測にある程度役立つ可能
性が示唆された。
84
B5-22
妊娠に合併した卵巣子宮内膜症性嚢胞
大阪大学 1、大阪労災病院 2、大阪府立成人病センター3
◎ 上田 豊 1、榎本隆之 1、宮武 崇 1、藤田征巳 1、三宅貴仁 2、藤原和子 3、吉野 潔 3、金川武司 1、
木村 正 1
【目的】
附属器腫瘤は妊娠の 1−2%に合併し、ルテイン嚢胞を除けば卵巣成熟嚢胞性奇形腫が最も多いとされ
てきた。しかし、最近の不妊治療の進歩などにより卵巣子宮内膜症性嚢胞(以下チョコレート嚢胞)を合併
した妊娠の頻度が増加していると考えられる。
そこで当研究は、妊娠に合併したチョコレート嚢胞の頻度およびチョコレート嚢胞の妊娠初期から産褥
期までの性状の変化について解析することを目的とした。
【方法】
まず、1998 年から 2007 年までの 10 年間において当科で分娩した 5655 症例のうち、4cm 以上の附属
器腫瘤(ルテイン嚢胞を除く)を合併した症例を抽出した。次に、妊娠初期から産褥期または手術まで経
過観察できたチョコレート嚢胞症例において、その転帰を解析した。大きさの変化は超音波検査で長径
1cm 以上の増減を有意とした。
【成績】
1998 年から 2002 年までの 5 年間では分娩 2644 症例中 23 症例(0.87%)に附属器腫瘤が認められた。
そのなかでは卵巣成熟嚢胞性奇形腫が 9 症例(39%)で最も多く、チョコレート嚢胞は 2 症例(8.7%)に過ぎ
なかった。しかし、2003 年から 2007 年までの 5 年間では分娩 3011 症例中 35 症例(1.2%)に附属器腫瘤
が認められ、うちチョコレート嚢胞は 14 症例(40%)と有意に増加しており(p=0.015)、妊娠中に認められる
附属器腫瘤のうち最も頻度が高かった。
チョコレート嚢胞の経時的変化については、妊娠中および産褥期に、チョコレート嚢胞は 16 症例中 4 症
例(25%)で増大を来した。うち 2 症例は脱落膜化変化、1 症例は膿瘍形成、他の 1 症例は破裂を起こし、3
症例で手術を要した。16 症例中 2 症例(13%)は不変、10 症例(63%)は縮小した。癌化した症例は認めなか
った。
【結論】
妊娠中に認められるチョコレート嚢胞の頻度は増加している。チョコレート嚢胞は妊娠中および産褥期
に縮小することが多く、保存的に経過観察可能と考えられるが、増大する症例では脱落膜化変化、膿瘍
形成や破裂が認められ、手術を要することが多い。
85
B5-23
診断困難な子宮内膜症診断の補助検査としての月経中血清 CA125 値
岡山大学病院産科婦人科 1、岡山大学大学院保健学研究科 2、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 3、
岡山愛育クリニック 4
◎ 國宗和歌菜 1、中塚幹也 1,2、佐々木愛子 1,3、Chebib Chekir1、小谷早葉子 1、莎如拉 1,3、松田美和 1,3、
清水恵子 1,3、鎌田泰彦 1、平松祐司 1,3、野口聡一 4
【目的】外来レベルでの子宮内膜症の診断では,卵巣チョコレート嚢胞が観察される進行例を除いて困難
な場合が多い.しかし,軽症であっても妊娠率低下が報告されており,子宮内膜症の診断は有用である.
診断には,血清 CA125 値が補助的に用いられるが,月経の影響を避けて測定されることが多い.今回,
私達は月経中の血清 CA125 値と子宮内膜症の存在の有無,進行度との関連を検討した.
【方法】同意のもと腹腔鏡下手術を施行した不妊症 122 症例(子宮内膜症:99 症例,非子宮内膜症:23 症
例)を対象とした.術前の月経 3∼5 日目に測定されたものを月経中 CA125 値とした.
【成績】月経中 CA125 値は,非子宮内膜症群の 13.0±5.6(mean±S.D.)U/ml に対して子宮内膜症群では
66.4±90.3 U/ml で高値の傾向があった.また,rASRM 分類による進行度別に,月経以外の時期の
CA125 の平均値を見てみると,1 期 21.4 U/ml,2 期 36.4 U/ml,3 期 55.7 U/ml,4 期 56.2 U/ml であった.
これに対して,月経中 CA125 の平均値を見てみると,1 期 27.9 U/ml,2 期 57.3 U/ml,3 期 67.5 U/ml,4
期 117.7 U/ml と高値を示した.また,rASRM スコアと月経以外の時期の CA125 値との間には相関はなか
ったが,月経中 CA125 値とは相関が見られた(r=0.449, p<0.002).
CA125 値 25U/ml をカットオフ値とすると,非子宮内膜症症例では,月経中も月経期以外も 25U/ml 以上
の例は見られなかった.しかし,子宮内膜症群の 13.7%は,月経期以外は 25U/ml 未満だが月経中は
25U/ml 以上であった.特に,術前診断が困難な軽症子宮内膜症である rASRM 1 期の 9.1%,rASRM 2
期の 16.7%の症例は,月経中のみ 25U/ml 以上を示していた.
【結論】原因不明の不妊症例などの中に存在する子宮内膜症の可能性のある症例を抽出するために,月
経中の血清 CA125 値上昇は有用であると考えられる.
86
B5-24
子宮内膜症による瘢痕化に対するヘパリンナトリウムの作用
大分大学 産科婦人科学
◎ 津野晃寿、奈須家栄、平尾茉里名、小林弘尚、弓削彰利、楢原久司
【目的】子宮内膜症病変では、月経周期に伴い周期的に出血、凝血、吸収を繰り返して瘢痕化し、増悪す
る。その結果、病状は進行し、不妊症や慢性骨盤痛等の特徴的な症状が出現する。我々は、tissue
remodeling の観点から子宮内膜症における瘢痕形成について検討し、正常子宮内膜間質細胞に比べて
子宮内膜症間質細胞の contractility は増強しており、より瘢痕化しやすいことを報告してきた。ヘパリンナ
トリウムは血液に対して強い抗凝固作用を有し、透析、冠動脈インターベンション、心臓外科手術、急性期
虚血性脳梗塞の治療、術後の深部静脈血栓症予防など、さまざまな領域で広範に使用されている薬剤で
ある。ヘパリンナトリウムは antithrombin III を介した抗凝固作用を有するが、皮膚や角膜の創傷治癒過程
における tissue remodeling の際に、線維芽細胞の contractility を抑制することにより、瘢痕化を抑制する
ことが知られている。今回、子宮内膜症による瘢痕化に対するヘパリンナトリウムの有効性について子宮
内膜症における瘢痕形成の in vitro model として我々が確立した、子宮内膜症間質細胞の collagen gel 三
次元培養法を用いて検討した。
【方法】卵巣子宮内膜症性嚢胞の嚢胞核出もしくは付属器切除術時(n=6)に、文書による患者の同意を得
て嚢胞壁を採取し、卵巣子宮内膜症間質細胞を分離・培養した。Type I collagen 溶液(Cellmatrix type
I-A ; Nitta gelatin 社)内に 6×105 cell/ml の細胞濃度になるように子宮内膜症間質細胞を懸濁した。次に
35 mm dish に 2 ml ずつ分注し、37℃で 2 時間培養して gel 化させた。Tapping して collagen gel を dish か
ら浮遊させ、ヘパリンナトリウム( 1-100 μg/ml)を添加し、10% fetal bovine serum 存在下で培養した。48
時間後に gel の表面積を測定した。さらに collagen gel の収縮メカニズムについて解明するため、瘢痕形成
の際に発現する筋繊維芽細胞のマーカーである α-smooth muscle actin(α-SMA)、子宮内膜症細胞の
contractility に関与する Rho A、Rho-associated coiled-coil-forming kinase(ROCK) 1、ROCK 2 の発現に
ついて、western blot 法を用いて検討した。
【成績】ヘパリンナトリウムを添加しなかった群では 48 時間の培養により collagen gel は 74.8±2.2%収縮し
た。ヘパリンナトリウムの添加により、濃度依存性に collagen gel の収縮は抑制された(ヘパリンナトリウム
100 μg/ml の添加により 34.2±1.1%収縮)。Western blot 法による検討では、ヘパリンナトリウムの添加に
より α-SMA、Rho A、ROCK 1、ROCK 2 の発現が著明に抑制された。
【結論】ヘパリンナトリウムは α-SMA、Rho、ROCK1、ROCK2 の発現を抑制することにより、子宮内膜症
間質細胞の myofibroblast への分化と contractility を抑制することにより、tissue remodeling を調節するこ
とがわかった。ヘパリンナトリウムは、子宮内膜症の瘢痕形成を予防する薬剤として有用な可能性が示唆
された。
87
B5-25
卵巣チョコレート嚢胞における骨盤痛と併存する骨盤腹膜病変との関連
長崎大学医学部産婦人科 1、長崎市民病院産婦人科 2、長崎大学原研病理 3、佐世保中央病院 4
◎ カレク・ネワズ・カーン 1、北島道夫 1、平木宏一 1、藤下 晃 2、関根一郎 3、石丸忠之 4、増崎英明 1
【目的】
骨盤痛は子宮内膜症の主要な臨床症状である.一方.卵巣チョコレート嚢胞と骨盤痛の関連について,
嚢胞それ自体が骨盤痛の原因となるか,あるいは併存する骨盤腹膜病変や骨盤内癒着に関連するかは
必ずしも明らかでない.今回,当科での腹腔鏡検査所見を後方視的に再検討し,卵巣チョコレート嚢胞の
例での骨盤痛の原因について臨床的検討を行った.また,病変および子宮内膜組織を用いて,骨盤痛の
病態に関する基礎的検討を行った
【方法】
1982 年 9 月から 2008 年 4 月までに,当科および関連施設で種々の適応に対して腹腔鏡検査および手術
を行った 2,988 例のなかで,卵巣チョコレート嚢胞が認められた 350 例(11.7%)を対象とした.そして,骨盤
痛の有無と併存する腹膜病変の所見および骨盤内癒着の程度との関連を検討した.一部の例では病変
および正所性子宮内膜組織を採取し,炎症反応の程度を組織内マクロファージに対する免疫染色で評価
した.また,免疫染色で組織内 COX2 の発現・局在を解析し,組織内 PGE2 濃度を ELISA 法で測定した.
【成績】
卵巣チョコレート嚢胞は 20 代(31.4%)と 30 代(51.7%)が多く,また,rASRM 進行期の III 期(43%)と IV
期(55%)がほとんどであった.併存した腹膜病変は,赤色病変が 8.4%,黒色病変が 23.5%,白色病変が
5.3%で,混在例が 39.7%であり,腹膜病変を認めない例が 23%であった.骨盤内癒着は,フィルミーな癒
着が 61.8%,強固な癒着が 22.5%に認められ,15.7%では癒着が認められなかった.チョコレート嚢胞の
みで腹膜病変がない例の 61.7%に骨盤痛を認めなかったが,骨盤病変を有した例の 85.4%に骨盤痛を
認めた.癒着がフィルミーな例の 81.4%に,また,強固な例の 86.9%に骨盤痛を認めた.癒着がなかった
例の 46.8%に骨盤痛を認めたが,そのほとんどは腹膜病変を有していた.骨盤腹膜病変を有する例は,
病変および正所性子宮内膜での組織中マクロファージ浸潤がチョコレート嚢胞の例に比較して有意に強く,
組織中の COX2 の発現および PGE2 濃度もチョコレート嚢胞より腹膜病変で高い傾向があった.
【結論】
卵巣チョコレート嚢胞を有する例の骨盤痛は,骨盤内癒着の程度に関わらず併存する腹膜病変の有無と
関連し,腹膜病変を有しないチョコレート嚢胞の例は骨盤痛が少ない.組織中の炎症反応とプロスタグラ
ンジン産生量は子宮内膜症における骨盤痛に関与しているものと考えられた.
88
B5-26
子宮内膜症性嚢胞と PID
− 子宮内膜症性嚢胞は PID を合併しやすいか
自治医科大学産婦人科1、自治医科大学大宮医療センター産婦人科 2
◎ 種市明代 1、藤原寛行1、野中宏亮1、高橋寿々代 1、竹井裕二 1、町田静生1、嵯峨泰1、根津幸穂 2 、
今野良 2、鈴木光明1
【目的】臨床的に子宮内膜症嚢胞の経過観察中に pelvic inflammatory disease(PID)が合併することは
よく経験する。しかし実際、内膜症性嚢胞の PID 発生頻度についての報告はほとんどない。われわれは自
験例から内膜症性嚢胞症例の PID の合併頻度とその臨床背景について報告する。
【方法】対象は 2003 年 9 月∼2008 年 8 月の 5 年間に、当院で付属器腫瘤のため手術を行った症例とし
た。内膜症性嚢胞やその他の腫瘤の組織型の決定はいずれも病理組織学的に行った。また PID の診断
は卵管炎や膿瘍を認めたもの、または膿性腹水を認めたものとし、同様に病理組織学的に確認した。PID
の発生頻度、臨床病理学的背景等を内膜症性嚢胞とそれ以外の組織型の二群に分けて検討した。
【成績】5 年間に当院で付属器腫瘤があり手術を行った症例は 1105 例であった。そのうち内膜症性嚢胞は
310 例(28.1%)で年齢中央値は 37 歳(16-83)、腫瘍径の中央値は 7cm(2-35)であった。一方、他の組織
型による付属器腫瘤は 795 例(71.9%)であり、年齢中央値は 48 歳(5-88)、腫瘍径の中央値は 9cm(1-35)
であった。病理学的に確認された PID は 53 例,4.8%に認められ、年齢中央値は 41 歳(20-74)、腫瘍径の
中央値は7cm(2-20)であった。PID 症例のうち、内膜症性嚢胞は 24 例、中央値は 38 歳(24-54)、内膜症
性嚢胞以外の組織型による付属器腫瘤は 29 例、中央値は 44 歳(20-74)であった。各々の母集団からの
PID 発生率は、内膜症性嚢胞は 7.7%(24/310)、非内膜症性付属器腫瘤は 3.6%(29/795)であった
(P=0.004)。
【結論】子宮内膜症性嚢胞は他の付属器腫瘤に比べ PID を高率に合併していた。PID の発生率に違いが
認められたことから、子宮内膜症には感染がおこりやすいと考えられた。また内膜症性嚢胞が合併してい
る PID はその発症年齢が若い傾向があった。子宮内膜症患者においては、PID 発症も視野に入れた管理、
治療も必要であると考えられた。
89
B6-27
卵巣チョコレート嚢胞破裂に対する緊急腹腔鏡下手術例の検討
長崎市立市民病院 産婦人科1、放射線科 2、病理3、麻酔科4
◎ 松本亜由美1、藤下 晃1、上嶌佐知子1、福田雅史1、佐藤二葉1、南 和徳 2、入江準二3、冨安志郎4、
橋口順康4
【目的】当科で取り扱った腹腔鏡下手術のなかで、緊急手術症例を retrospective に解析し、このなかでチ
ョコレート嚢胞破裂を疑い、腹腔鏡下手術を行った症例を検討した。
【方法】2005 年 4 月∼2008 年 9 月までに当科で取り扱った症例を対象とし、カルテおよび一部の症例では
手術記録フィルムおよびビデオで再評価した。
【成績】同期間に取り扱った腹腔鏡手術症例は 1,082 例であり、この中での緊急手術は 204 例(19%)であ
った。対象疾患の内訳は、子宮外妊娠 106 例(52%)が最も多く、ついで卵巣出血 32 例、卵巣腫瘍茎捻転
28 例、チョコレート嚢胞破裂 22 例(10%)およびその他(骨盤腹膜炎、筋腫変性など)16 例であった。
チョコレート嚢胞 22 例の平均年齢は、32.0±7.5(17∼48)歳、r-ASRM スコアの平均は 65±32(24∼122)
点、右側 13 例、左側 6 例および両側 3 例であった。術前 CA125 値は 22 例中 17 例(77%)で測定してお
り、平均値は 186±190(15∼690)IU/L、手術時間は 87±25(49∼130)分であった。
チョコレート嚢胞破裂の疑いで緊急手術を実施したが、実際にチョコレート嚢胞の破裂を認めなかった症
例は 22 例中 5 例 (22%)であり、1 例は虫垂炎を合併していた。また、1 例は高度の癒着のために開腹術
へ切り換えた。
破裂していた 17 例中を検討すると、左チョコレート嚢胞破裂が 6 例あり、このうちの 2 例は両側チョコレー
ト嚢胞あった。残り 11 例は右卵巣チョコレート嚢胞破裂であった。また破裂 17 例中 13 例(76%)では MRI
を施行しており、このなかで 5 例(38%)は破裂が疑われたが、破裂不明の例もみられた。破裂群と非破裂
群において術前所見(臨床所見および検査所見)を比較すると、内診時の圧痛は両群とも同程度にみられ
たが(100%vs 80%)、白血球数増加(65%vs45%)、および CRP 陽性(47%vs20%)および反跳痛(82%
vs 20%)は破裂群が高い傾向にあった。なお、破裂群 17 例中 3 例 (18%)に膿瘍を合併しており、抗生剤
の追加投与が行われた。
【結論】当科での緊急腹腔鏡下手術例の中で、チョコレート嚢胞破裂疑いで緊急手術を施行した症例は 22
例であり、10%に相当した。チョコレート嚢胞破裂は実際に 17 例(77%)にみられ、右チョコレート嚢胞破裂
が 11 例(65%)であった。卵巣チョコレート嚢胞破裂の術前画像診断は必ずしも容易でないが、白血球数
増加、CRP 陽性および反跳痛などが参考になることが示唆された。
90
B6-28
腹腔鏡下卵巣チョコレート嚢胞核出術における希釈 Vasopressin を用いた液性剥
離法の有用性に関する検討
帝京大学ちば総合医療センター
◎ 五十嵐敏雄、重城真智、落合尚美、松本由佳、中川圭介、矢部慎一郎、梁善光
【目的】卵巣チョコレート嚢胞に対する従来の腹腔鏡下手術は嚢腫壁の剥離操作に術者の経験、技術が
必要で、剥離後も健常卵巣部分からの出血が多くて凝固操作の回数が増えるために健常卵巣部分にも
術後の排卵率が少なくするなどダメージを与えることがあった。これに対して健保連大阪中央病院のグル
ープが 2007∼2008 年にエンドメトリオーシス研究会誌に報告した希釈 Vasopressin を用いた液性剥離法
では有意に卵巣嚢腫核出所要時間と凝固止血操作回数が少なくなり、有意ではないが出血量も少なくな
って、卵巣縫合の必要性が有意に少なくなるとされる。本年より当院でも同方法を導入したところ、手術操
作の容易化を実感し、当院のような研修指定病院でこそ有用であると考え、導入後の手術時間、出血量
の改善度、健常卵巣部分への影響を調べるとともに術後出血などの問題点はないのかについて検討し
た。
【方法】2008 年 1 月から当院で腹腔鏡下卵巣チョコレート嚢胞摘出術を行なった 11 症例に関して手術時
間、出血量、手術前後の血中 Hb 値、E2 値、術後の排卵の有無、術後血腫の有無などを検討した。コント
ロール群は 2007 年 1 月から 2008 年初旬まで従来法で手術を行なった 21 例を用いた。
腹腔鏡では術中出血量の評価が難しいが、手術前後の血中 Hb 値の推移(術前日の血中 Hb 値̶術後1
日の血中 Hb 値)は術中出血量を推定出来ると考えた。
【成績】出血量は従来法が 257±338ml に対して Vasopressin 法は 64.5±167ml と有意ではないが、少な
い傾向があった(P=0.09)。手術前後の血中 Hb 値の推移も従来法が 2.5±0.9g/dl に対して Vasopressin 法
は 1.97±1.21g/dl は有意に低下していた(P=0.01)。手術時間も従来法が 140±46 分に対して Vasopressin
法で 103±33 分と有意に短縮した(P=0.01)。手術前後の E2 値は卵胞期の症例数例において低下が軽度
であった。手術直後でも手術側からの排卵を確認できた例もあった。退院診察時の術後血腫を 3/11 例に
認めたが、その頻度は従来法の場合よりも少なく、その後に問題となるケースもなかった。
【結論】1)出血量に関して vasopressin 群で有意に少なくなると考えられ、Hb1=約 300ml と考えると、出血
量にしておよそ 300x0.5=150ml を減量できると推定された。2)手術時間も有意に短縮され、時間にして
30 分以上短縮出来ると考えられた。3)健常卵巣部分に対する影響は、卵胞期に限って検討した数例の
検査結果や術後に病側から排卵を認めることなどから比較的少ないと考えられた。4)術後血腫などの副
作用に関しても問題になることはなかった。
5)本年より当院でも希釈 vasopressin 局所法を導入したところ、手術操作が大変容易になる印象を得た。
当院のような研修施設に対する貢献度は大きいと考えられた。
91
B6-29
卵巣チョコレート嚢胞および子宮内膜症ダグラス窩病変に対する腹腔鏡下手術の
内容による月経痛改善に関する中期予後の検討−術前・術後 3 ヶ月・術後 12 ヶ月
前後の月経痛 Visual Analogue Scale(VAS)による比較から−
健保連大阪中央病院 婦人科
◎ 久野 敦、佐伯 愛、奥 久人、蔵盛理保子、山口裕之、松本 貴、伊熊健一郎
【背景】子宮内膜症における月経痛や骨盤痛などの原因の一つに,子宮内膜症による病変やダグラス窩
癒着などが挙げられる。これらの症状改善を目的とした治療には、薬物療法と手術療法が行われている。
今回我々は、卵巣チョコレート嚢胞およびダグラス窩周辺の子宮内膜症病変に対して行った腹腔鏡下手
術において、深部子宮内膜症病巣切除術施行例と非施行例における疼痛改善効果を中期予後として比
較検討した内容を報告する。
【方法】2006 年 4 月から 2007 年 12 月末までに腹腔鏡下手術を施行した 421 例の子宮内膜症のうち,卵
巣チョコレート嚢胞単独および卵巣チョコレート嚢胞とダグラス窩病変が限局していた 268 例を,ダグラス
窩完全閉鎖 82 例(C (complete)群 ASRM 92.3±26.0)、部分閉鎖 66 例(P (partial)群 ASRM46.0±16.2)、閉
鎖無し例 120 例(N (non)群 ASRM 35.1±15.7)の 3 群に分類。各群間で卵巣チョコレート嚢胞切除術+癒着
剥離術+深部子宮内膜症病巣切除術(切除群)と卵巣チョコレート嚢胞切除術+癒着剥離術(非切除群)を行
い,術前と術後 3 ヶ月目、術後 12 ヶ月前後の Visual Analogue Scale(VAS)で月経痛を比較検討した。
【成績】C-切除群(N=23)の月経痛 VAS は術前の 8.5±1.1 から術後 3 ヶ月では 2.5±1.9、術後 12 ヶ月では
2.4±2.4 とより顕著に改善した。一方,C-非切除群(N=59)は 4.9±3.6 から術後 3 ヶ月では 3.2±2.4、術後
12 ヶ月では 3.3±2.1 と軽度な改善であった。P-切除群(N=18)では 8.1±1.8 から術後 3 ヶ月で 5.0±2.4、
術後 12 ヶ月で 3.9±2.9 と改善した。一方、P-非切除群(N=48)は 5.5±3.5 から術後 3 ヶ月で 2.6±2.3 と改
善したが、術後 12 ヶ月では 3.7±2.7 と悪化傾向をみた。N-切除群(N=24)では 8.3±2.1 から 4.1±3.3 と改
善し、術後 12 ヶ月では 2.9±2.0 とより改善した。一方 N-非切除群(N=96)は 5.9±3.2 から術後 3 ヶ月で 2.1
±2.4 と改善したが、術後 12 ヶ月で 2.9±2.0 と悪化した。術後 12 ヶ月前後の月経痛 VAS は術後 3 ヶ月目
と比較し、切除群においてはすべて改善した。一方、すべての非切除群において不変もしくは悪化した。
【結論】腹腔鏡下に行う子宮内膜症病巣切除は,術後 3 ヶ月ではダグラス窩癒着の程度に関わらず月経
痛の改善に有用であった。術後 12 ヶ月においても症状の改善が期待できる。しかし、長期予後について
は今後のさらなる検討が必要と考えられる。
92
C1-1
SIRS を発症した卵巣癌合併子宮内膜症の一症例
広島大学大学院医歯薬学総合研究科産科婦人科学
◎ 小出千絵、藤原久也、谷川美穂、山本弥寿子、平田英司、三好博史、工藤美樹
【緒言】卵巣子宮内膜症性嚢胞は、卵巣癌発生との関与が明らかとなってきた。子宮内膜症は近年増加
傾向にあり、骨盤内炎症性疾患(PID)を合併する症例もみられる。重篤な PID を合併した子宮内膜症の
報告は散見されるが、今回、汎発性腹膜炎から全身性炎症反応症候群(SIRS)を発症した卵巣癌合併子
宮内膜症の重症感染症例を経験したので報告する。
【症例】47歳、2経産。婦人科の受診暦はなく、下腹部を中心とした強い腹痛を発症し当科を救急搬送受
診した。初診時、顔面は蒼白であり下腹部の強い自発痛および腹部の筋性防御を認めた。超音波・CT 検
査では、充実性部分を有する多房性の卵巣腫瘍を認め卵巣癌を推定し、骨盤部から傍大動脈リンパ節の
多発転移・多発肝転移の所見を認めた。急性腹症の状態であり、緊急手術を施行した。開腹すると、混濁
した腹水と腸管表面には膜状に膿の付着を認め、骨盤内の子宮、卵巣、直腸の癒着は強固であった。左
卵巣は、充実性部分を有する多房性の 15cm 大の腫瘍で、膿瘍の形成と内膜症性病変を認め一部破裂し
ていた。また右卵管留膿腫の形成もみとめ、左付属器切除術および右卵管切除を施行した。右卵巣は、
子宮および直腸と強く癒着、埋没していたため摘出困難であった。子宮内膜症病変は骨盤内腹膜にもみ
られ、r-ASRM 分類では 150 点と重症であった。左卵巣の病理組織所見は、類内膜腺癌、中分化型であり、
子宮内膜症および急性炎症所見がみられ、卵巣癌Ⅳ期(pT3a, N1,M1)と診断した。また、腹水細菌培養
では Clostridium septicum を認め、血中プロカルシトニンが陽性であり、敗血症の状態であった。
術後、汎発性腹膜炎から SIRS の状態(38℃以上の発熱、90 回を超える心拍数、20 回を超える頻回呼
吸、12000 を超える白血球上昇)となり ICU 管理を行った。全身状態改善後も発熱が持続し、CT にて骨盤
内の腫瘍摘出部に腫瘤の再増大を認めたため術後 18 日目に再手術を行った。卵巣癌の残存病巣が急
速に増大し直腸へ浸潤穿孔し、膿瘍を形成していた。直腸および腫瘍合併切除術、人工肛門造設術を施
行した。再手術後の経過は良好であり、術後8日目より化学療法として TC (paclitaxel, CBDCA)療法を開
始した。画像および腫瘍マーカーの結果は PR の状態で、現在も化学療法継続中である。
【考察】卵巣癌を合併した卵巣子宮内膜症性嚢胞に膿瘍の形成がみられ、破裂により汎発性腹膜炎を
呈していた。左卵巣子宮内膜症病巣は、免疫能の低下のため易感染性の状態で、膿瘍を形成した一因と
考えられた。初回手術後の経過中、残存卵巣癌は急速増大した。SIRS という全身的には免疫が賦活化し
た状態にも関わらず、子宮内膜症病巣での局所免疫機能の低下が、残存癌病巣の急速増大に関与した
一因と考えられた。
93
C1-2
29歳で発見された子宮内膜症性嚢胞合併卵巣類内膜腺癌の1例
近畿大学医学部奈良病院産婦人科 同臨床検査部
◎ 大村 元 天野陽子 生駒直子 三橋洋治 太田 善夫 小畑孝四郎 井上芳樹
【緒言】
最近、卵巣子宮内膜症の癌化が話題となり、卵巣子宮内膜症と卵巣癌の合併頻度の調査から20歳代
の卵巣子宮内膜症と卵巣癌の合併頻度は 0.57%であり、40歳代の 4.11%、50歳代の 21.9%に比べ、その
合併頻度は非常に低い。今回、29歳で卵巣チョコレート嚢胞の長径が6.0cmで発見された卵巣子宮内
膜症性嚢胞合併卵巣類内膜腺癌の1例を経験したので報告する。
【症例】
症例は29歳、0 妊 0 産、未婚の女性で、妊娠で近医受診した時に充実性エコーを伴う卵巣嚢腫を指
摘され当科紹介初診となる。その後自然流産(不全流産)となり、子宮内容清掃術を施行した。術後2週
間しても充実性エコー像を伴う長径4.9cmの卵巣嚢腫が残存しているため、MRIを施行した。MRIでは
右卵巣に長径約6cm大の cystic mass(T1 high intensity, T2 middle intensity)内に充実性構造を示す部
分が存在し、造影MRIで造影効果がなかったため、その構造物は clot と判断し、術前診断を endometrial
cyst とした。初診時の超音波カラードップラー法では極一部に血流の存在を認めたが、その後の検査で
は血流の存在ははっきりしなかった。腫瘍マーカー(CA125,CA19-9,STN)はすべて陰性であったが、画像
所見より卵巣チョコレート嚢胞に合併した卵巣癌を完全に否定できなかったので、開腹してまず嚢腫の核
出術を施行した。肉眼的に明かな充実部分を認めたため、術中迅速病理診断に提出した。術中迅速病理
診断は adenosquamous carcinoma であったため、右付属器摘出術、左卵巣楔状切除術、大網部分切除
術を施行した。最終病理診断は卵巣チョコレート嚢胞より発生した卵巣類内膜腺癌であった。
【考察】
今回の症例は29歳と若く、20歳代のチョコレート嚢胞の卵巣癌の合併頻度が低いこと、画像診断で悪
性腫瘍を強く疑う所見がなかったことから、卵巣嚢腫の核出術から入ったが、結果的に卵巣チョコレート嚢
胞より発生した卵巣類内膜腺癌であったことから、術前の鑑別診断の限界を痛感すると共に、あらたな診
断技術の向上が求められた。
94
C1-3
30歳で発見された子宮内膜症性嚢胞合併卵巣明細胞腺癌の1例
近畿大学医学部奈良病院産婦人科
◎ 天野陽子 花岡陽子 生駒直子 大村 元 三橋洋治 小畑孝四郎 井上芳樹
【はじめに】
最近、卵巣子宮内膜症の癌化 1)-3)が話題となり、卵巣子宮内膜症と卵巣癌の合併頻度の調査から30
歳代の卵巣子宮内膜症と卵巣癌の合併頻度は 1.29%であり、40歳代の 4.11%、50歳代の 21.9%に比べ、
その合併頻度は低い4)。今回、30歳で卵巣チョコレート嚢胞の長径が5.5cmで発見された卵巣子宮内
膜症性嚢胞合併卵巣明細胞腺癌の1例を経験したので報告する。
【症例】
症例は30歳、未婚、0 妊 0 産、未婚の女性で、既往歴として25歳時,右卵巣皮様嚢腫にて腹腔鏡下
卵巣嚢腫摘出術を施行されている。家族歴は特記すべきことなし。既往歴として24歳頃より月経痛が増
強していたが、25歳で腹腔鏡下手術後の月経痛は軽快していた。当院来院まで、近医にて3年間ピルを
内服していたが、卵巣嚢腫の急激な増大傾向があり、腹腔鏡下手術希望にて近医より紹介され、当院初
診となった。
初診時の超音波検査では長径5.5cmの卵巣嚢腫の一部に、長径1.4cmの充実性エコー像を認め、
超音波カラードップラー法では拍動性の血流の存在を認めた(図1)。MRI では T1 強調画像、T2 強調画像
共に high intensity を示し、内部に充実性部分を認めた(図2)。造影 MRI では充実部分内に造影後で
enhance 効果を認めた(図3)。血液検査所見は WBC 4100、Hb 10.7 g/dl、Pl 27.3 万、CRP 0.02 mg/dl、
CA125 13.9 U/ml、CA19-9 2 以下 U/ml、STN 24.2U/ml で腫瘍マーカーはすべて陰性であった。
画像所見より卵巣チョコレート嚢胞に合併した卵巣癌を疑って開腹手術を施行した。開腹時所見は左
卵巣は5cm大に腫大し、一部(1/3以下)で強固に癒着していた(Re-ASRM 分類:24点)。癒着剥離時
に極一部が破綻し、チョコレート状の内容液が少量腹腔内に漏れ出た。左付属器摘出術施行し、術中迅
速病理診断提出した。術中病理診断は Serous adenocarcinoma(但し clear cell adenocarcinoma の可能性
否定できず)であったため、右卵巣楔状切除術、大網部分切除術を追加した。最終病理診断は卵巣チョコ
レート嚢胞より発生した卵巣明細胞腺癌であった(図4,5)。
臨床診断は卵巣癌Ⅰc (b)期であり、組織型が明細胞腺癌で基本的には妊孕性温存を希望する症例に
対する保存手術の適応外であること、および、再発リスク等を十分説明し、根治手術を勧めたが、本人お
よび両親ともに妊孕性温存を強く希望されたため、Weekly TC 療法 6コース(パクリタキセル:60mg/m2,パ
ラプラチン:AUC 2)を施行した。
【考察】
卵巣子宮内膜症を発生母地として卵巣明細胞腺癌や卵巣類内膜腺癌が発生することが病理学的、遺
95
伝子学的検討から明らかとなりつつある 1)-3)。また、エンドメトリオーシス研究会会員を対象としたアンケ
ート調査から、卵巣チョコレート嚢胞の卵巣癌合併頻度は年齢が40歳以上、卵巣嚢腫の長径が10cm以
上の症例は癌の合併頻度が高くなるが、30歳代の合併頻度は 1.29%で比較的低い 4)。また、超音波カ
ラードップラー法にて嚢胞内の充実性エコー内に血流が認められれば80%が悪性である 5)。今回、術前
の超音波カラードップラー法で充実性エコー像内に血流を認め、造影MRIにて enhance 効果を認める充
実性部分を嚢胞内に認め、卵巣チョコレート嚢胞から発生した卵巣癌と推測できたが、30歳代で嚢胞の
長径が10cm以下のチョコレート嚢胞にも卵巣癌が合併することがあり、術前診断の重要性をあらためて
教えられた症例であった。
今回の症例は30歳、未婚、未妊女性で妊孕能温存が問題となった。卵巣がん治療ガイドライン 6)での
卵巣癌症例に対して妊孕能温存ができる条件を表1に示す。今回の症例の病理組織診断で明細胞腺癌
であり、妊孕能温存の条件を満たしていないが、明細胞腺癌は抗ガン剤難治性で予後不良であることを
十分説明した上で、妊孕能温存を強く希望されたため、化学療法(Weekly TC 療法)を施行し、経過観察
しているが、妊孕能温存するかどうか非常に苦慮したケースであった。今後、妊孕性温存条件のさらなる
検討が必要と思われる。
【文献】
1) 小畑孝四郎:卵巣子宮内膜症の癌化とその治療.日本産科婦人科学会雑誌、
55,890-902,2003..
2) Obata K,Morland SJ,Watson RH et al:Frequent PTEN?MMAC mutations in endometrioid but not serous
or mucinous epithelial ovarian tumors.Cancer Res 1998;15:2095-2097.
3) K.Obata,H.Hoshiai:Common genetic changes between endometriosis and ovarian cancer.Gynecol
Obstet Invest 2001;50:39-43.
4)子宮内膜症取扱い規約、第2部 治療編・診療編、日本産科婦人科学会編、金原出版、2004.
5) 小畑孝四郎、小池英爾、椎名昌美 他:卵巣子宮内膜症の癌化からみた卵巣子宮内膜症の治療ス
トラテジー.エンドメトリオーシス研究会会誌.55,19-26,2004.
6)卵巣がん治療ガイドライン(2004年版);日本婦人科腫瘍学会編、金原出版、2004.
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C1-4
閉経後女性で確認された卵巣チョコレート嚢腫の悪性転化の一例
高の原中央病院産婦人科 1、天理よろづ相談所病院産婦人科 2、天理よろづ相談所病院病理部 3
◎ 貴志洋平 1、高陽子 2、植野さやか 2、浮田真沙世 2、住友理浩 2、林道治 2、本庄 原 3
【緒言】
子宮内膜症の悪性転化については、統計的には卵巣チョコレート嚢腫の 0.5-1.0% に悪性転化が起こると
推定されており、逆に卵巣類内膜腺癌や卵巣明細胞癌では子宮内膜症の合併頻度が 20-50%と高く、臨
床病理学的な観点から子宮内膜症から卵巣癌への転化の特徴や関連性が指摘されている。また、近年
では内膜症の癌化に関しても分子生物学的な腫瘍性質が徐々に明らかにされつつある。
今回、術前には形態的に悪性腫瘍との鑑別が困難であった、卵巣チョコレート嚢腫の早期悪性転化の一
例を経験した。
【症例】
患者は 52 歳の経産婦で、2 年前の婦人科検診では超音波上の異常を指摘されていなかったが、頻尿を
主訴として受診した泌尿器科で超音波にて右卵巣のチョコレート嚢腫を指摘され、婦人科を紹介受診し
た。
初診時には超音波で、右卵巣に直径 66mmの内部 homogeneous な嚢腫を認め、MRI 画像でも壁在結節
は認めず、卵巣チョコレート嚢腫を第一に疑う所見であった。腫瘍マーカーCA125 は正常であり、年齢以
外には悪性腫瘍を疑う要素は無かった。手術は腹腔鏡下に両側付属器切除を行い、その後の病理組織
検査で右卵巣チョコレート嚢腫の壁内に Clear cell や hobnail cell の tublocystic な増殖巣が散見され、卵
巣チョコレート嚢腫から発生した早期の Clear cell carcinoma との診断となった。
【考察】
今回我々は術前には予測が困難な早期のチョコレート嚢腫の悪性転化症例を経験した。今後、閉経後女
性のチョコレート嚢腫患者の増加が予測され、その取り扱いには十分な検討が必要と考えられた。
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