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ビケンワクチンニュース
【2006年4月号】
子供の病気、成人では・・・
~麻疹、風疹、おたふくかぜ、水痘~
一般に子供の病気とされている麻疹、風疹、おたふくかぜ、水痘ですが、成人が罹患すると
次のような問題が生じます。
成人での問題
麻疹(はしか)
潜伏期間は10~12日で、カタル症状、発疹、
発熱がみられます。合併症のうち、二大死因
は肺炎と脳炎で、その他には中耳炎、クルー
プ症候群、心筋炎、中枢神経系合併症、亜急
性硬化性全脳炎(SSPE)(下記参照)があります。
風疹
潜伏期間は14~21日で、3日ほどで消失す
る発疹と、微熱程度の発熱がみられます。ま
た、発疹出現の数日前からリンパ節腫脹が始
まり、3~6週間持続します。不顕性感染率は
約15%と考えられています。
入院した場合の医療費の面で比較す
ると、小児では医療費と間接費で平均
30万円ですが、成人では治療費が約31
万円、欠勤などによる社会的損失が約
20万円であり、社会経済的損失が大き
くなります。
免疫のない女性が妊娠初期に風疹に罹
患すると、出生児に先天性風疹症候群
(CRS)(下記参照)を引き起こすことがあ
ります。風疹の流行年に一致して、CRS
を危惧した人工流産例も多く見られまし
た。
おたふくかぜ
潜伏期間は2~3週間で、基本的には軽症と
考えられています。唾液腺の腫脹・圧痛、嚥
下痛、発熱を主症状として発症し、通常1 ~
2週間で軽快します。合併症としては無菌性
髄膜炎が最も多く、頻度は低いですが、難聴
や膵炎も重要な合併症です。
水痘
潜伏期間は10~21日で、軽い発熱、倦怠感、
発疹がみられます。発疹は掻痒感が強く、細
菌性二次感染を起こさなければ瘢痕を残しま
せん。免疫抑制状態などでは重症水痘が見ら
れることがあります。
麻疹の合併症
思春期以降の感染では、男性患者の約
20~30%に睾丸炎、女性患者の約7%に卵
巣炎を合併します。
成人は重症化の傾向があり、約15%に
肺炎を合併するといわれています。妊婦
の罹患でも重症化の傾向があり、分娩前
後に水痘を発病した場合、新生児は生後5
~10日頃に、水痘を発病、重症化し、約
30%と高い死亡率です。
麻疹・風疹の重要な合併症
風疹の合併症
先天性風疹症候群
亜急性硬化性全脳炎
(subacute sclerosing panencephalitis;SSPE)
(congenital rubella syndrome; CRS)
風疹に対する免疫のない女性が妊娠初期に風
麻疹ウイルスに感染後、特に学童期に発症す
疹に罹患すると、風疹ウイルスが胎児に感染し、
ることのある中枢神経疾患です。知能障害、運
出生児にCRSと総称される障害を起こすことがあ
動障害が徐々に進行し、発症から平均6 ~9カ月
で死の転帰をとる、進行性の予後不良疾患です。 ります。3 大症状は先天性心疾患、難聴、白内
障です。これ以外には、網膜症、肝脾腫、血小
板減少、糖尿病、発育遅滞、精神発達遅滞、小
眼球などの症状を引き起こします。
(出典:国立感染症研究所感染症情報センター 疾患別情報 【http://idsc.nih.go.jp/disease.html】
病原微生物検出情報 【http://idsc.nih.go.jp/iasr/index-j.html】
感染症発生動向調査 週報 【http://idsc.nih.go.jp/idwr/index.html】)
企画編集
4月号担当
発行
:財団法人阪大微生物病研究会(http://www.biken.or.jp)
:藤田、福田、宮武、藤原、村木、福原、鷹尾、鈴木、武田
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