Amkor Technology

Amkor Technology
委託の比率が高まっている。この 10 社向けの売上
高に占める比率は 62%に達している。ただし、売
1. 事業戦略
上高比率が 10%を超えているのは Qualcomm1 社
Amkor Technology は世界トップを争う半導体組
となっている。11 年までは TI も 10%超であったが、
立サブコン企業。対応業務はバンプ形成、プロー
Qualcomm の売り上げ拡大により委託量も増加、相
ブテスト、組立、ファイナルテストという半導体
対的に同社比率が高まることとなった。
組立工程から、モジュール形成にまでおよんでい
2011 年の同社売上高の 61%、2013 年の第 3 四
る。ウェーハプロセス以降のシステムメーカ/ EMS
半期までの累積売上高は 62%となっている。さら
メーカに提供するまでに要求される工程をワンス
に、顧客上位 25 社の占める比率は 2011 年で 83%
トップで提供できるようにしている。このため、顧
表 1 Amkor Technology の主要顧客 25 社 (2012 年実績)
客との密接な関連の構築が重要になっている。
Altera
このため、後述するように 3D パッケージなどの
Analog Devices
最先端パッケージ技術の開発、IDM やファンドリ企
Atmel
Broadcom
業との共同開発の進展などを進めている。また、3
Entropic Communications
次元実装や FlipChip、SiP などの最先端パッケージ
Freescale Semiconductor
ング技術の開発にも力を入れている。
GlobalFoundries
同社の事業戦略について、(1) 顧客との関係、(2)
Infineon Technologies
企業・事業や工場・設備の買収/売却、(3) 製品/
Intel
開発戦略の 3 点を中心にまとめていく。
IBM
LSI
Maxim Integrated Products
(1) 顧客との関係
Micron Technology
①顧客数推移
ON Semiconductor
顧客数は 2012 年度で 200 社を上回っている。こ
パナソニック
のうち左の表の上位 25 社向けで売上高の 84%を占
Qualcomm
めている。
ルネサス エレクトロニクス
このうち取引額の上位 10 社は、米 Altera、米
RF Micro Devices
Analog Devices、米 Broadcom、米 Intel、米 LSI、
Samsung Electronics
ソニー
米 Qualcomm/Qualcomm-Atheros、ソニー、スイス
STMicroelectronics
STMicrolectronics、
米 Texas Instruments(TI)
、
東芝。
TSMC
IDM が 6 社、ファブレス企業が 4 社となっている。
Texas Instruments(TI)
しかし、日本メーカーを中心に後工程のファブライ
東芝
ト化を進めている IDM が多く、特に後工程は外部
Xilinx
67
にまで高まっている。上位 25 社を表 1 に示す。
業を中心に行っていく方針であることから、今後も
両社は緊密な関係を維持していくものと予想され
②顧客との関係
る。
FlipChip、WL - CSP や SiP といった先端パッケー
IDM の中では IBM との関係が代表的なものであ
ジ分野では、パッケージの開発・製造とチップ設計、
る。IBM とは 2004 年に長期供給契約を結び、以降、
さらにウェーハ・プロセスとも十分な情報交換が必
同社の後工程外注分の大半を受託しており、前述の
要であり、この点でもウェーハ・プロセスを担当す
ように Amkor の顧客トップ 10 に入っている。さ
る IDM、シリコン・ファンドリとの連携を強化して
らに、IBM を中核に開発が進められている標準最先
いる。
端ウェーハプロセス・プラットフォーム、Common
前述の上位顧客の顔ぶれからもわかるように、
Process Platform に対応したパッケージング、テス
IDM 企業が進めている Fab ライト戦略の影響もあ
トの技術開発を行なうため、2006 年には同プラッ
り、IDM の比率が高まっている。
トフォームの共同開発アライアンスに参加してい
さらにファンドリ企業、システム企業との協力関
る。
係の強化を進めている。
また、IDM との関係では、Fab Lite 化を図る IDM
フ ァ ン ド リ メ ー カ と の 関 係 で は、 ト ッ プ メ ー
から、後工程設備を購入するケースも増えている。
カーである Taiwan Semiconductor Manufacturing
売却元である IDM との間に、製品供給を継続的に
(TSMC)社とは Low - k 膜を採用する 0.13μm 以
行うといった緊密な関係の構築を進めている。また、
上の微細プロセスで製造されるデバイスのボンディ
買収により生産能力の拡張ペースを上げることを
ング技術に関して共同開発を行なっている。
図っている。詳細は後述する
し か し、TSV に よ る 3 次 元 実 装 に 関 し て は、
さらに最近では、半導体メーカだけでなく、シス
TSMC が自社による統合ソリューションの提供に力
テムメーカ、OEM メーカとの直接に協業関係を構
をいれていることから、競合関係が生じている。今
築することに力を入れている。小型化、高速化、低
後、ファブレス企業を中心に顧客獲得面でも争う可
消費電力化などの要求が厳しくなるにつれて、最終
能性が生じている。
的なシステム側の要求を直接聞くことが、より適切
また、GlobalFoundries に関しても、買収前のシ
なパッケージを実現するための重要なポイントと
ンガポール Chartered Semiconductor Manufacturing
なってくる。また、今後、SiP ビジネスが拡大して
時代から IBM などと進める標準プロセスプラット
いくためにも、このような関係をこれまで以上に密
フォームの共同開発アライアンスに、Amkor が参
接していくことを進めていく。これらの企業が開発
加していることから、密接な関係を築いている。
する次世代製品の機能、仕様に合わせて、必要とな
GlobalFoundries の Advanced Assembly Solutions に
るパッケージ設計を行っていく。
関するグローバル・アライアンスにも参加している。
2011 年には、組立・テストの統合したソリュー
(2) 企業 ・ 事業や工場 ・ 設備の買収/売却
ションを共同開発することを発表した。同ソリュー
生産能力、新技術への対応能力強化のため、企業・
ションは FAB からバンプ形成、プローブテスト、
事業買収、工場、施設の買収、資本参加も積極的に
組立、テストまでのリードフリーパッケージの一貫
進めている。IDM のパッケージ、テスト関連の工場、
ソリューションが可能になるような協力体制を構築
施設を買収する例も増加している。
している。GlobalFoundries は組立工程に関しては、
日本では 2002 年に岩手東芝エレクトロニクスの
TSV による 3D 実装も含めて、外部サブコンとの協
組立事業を買収してアムコー岩手とし、2004 年に
68 Amkor Technology
は完全子会社としている。東芝との間では、海外工
州セミコンダクタの熊本工場、ならびに北セミの
場であるマレーシア工場の買収でも合意していた
100%子会社である北海電子の半導体後工程製造事
が、東芝のタイの後工程工場が水害の影響を受けた
業を取得することになっている。
ことによりマレーシア工場の重要性が増したことか
ジェイデバイスにおける資本構成の変化にもよる
ら、一旦白紙となっている。
が、国内大手半導体メーカの国内後工程工場の多く
東芝との関係では、2009 年に東芝とともに日本
が、Amkor の工場群の一貫に組み込まれることにな
のサブコン企業である仲谷マイクロデバイスに出資
る。
を行っている。Amkor の出資比率は 30%。仲谷マ
日本企業の買収、資本参加以前でも買収実績を残
イクロデバイスには、その後、2009 年 10 月 31 日
している。
付で株式会社ジェイデバイス(以下、ジェイデバイ
2004 年には IBM からシンガポールのテスト施設
ス)に社名変更している。
を買収している。ただし、シンガポール工場に関し
仲谷マイクロデバイスに対して、東芝は、グルー
ては、2011 年 7 月に売却している。
プ会社である東芝 LSI パッケージソリューション株
ウェーハレベル・バンプ形成技術の開発企業であ
式会社(以下、TPACS)におけるシステム LSI 後工
る米 Unitve 社を買収、2006 年までには同社の台湾
程事業および同技術開発業務を譲渡している。東芝
子会社である Unitive Semiconductor Taiwan(UST)
はさらに、TPACS の大分事業所のシステム LSI・メ
社の買収も完了した。
モリ後工程設備、福岡事業所のシステム LSI 後工程
設備、ならびに東芝の大分工場のウエハーテスト設
(3) 製品/開発戦略
備を、仲谷デバイスおよび Amkor に譲渡している。
製品、技術面では後述するように、FlipChip(FC)
、
Amkor は、ジェイデバイスに対し半導体後工程設備
Wafer Level(WL)パッケージングを強化、他社と
のリースを行い、2012 年以降ジェイデバイスの株
の差別化を図っていく。技術開発の詳しい状況は後
式の過半数以上を取得する権利 ( コールオプション )
述する。この戦略を進めるために、共同開発、前述
を取得している。このため、将来的には参加に収め
した企業・事業買収も進めている。2007 年 7 月か
る可能性もある。
らは、にはベルギー IMEC が進めている 3D システ
ジェイデバイスに関しては、その後も国内半導体
ム実装技術の共同開発プロジェクトに参加、WL プ
メーカから後工程工場の買収を進めており、2012
ロセス技術をベースに開発を進めていく。2007 年
年 12 月に富士通から、2013 年 2 月にはルネサス
にはシンガポールの大手サブコン企業である UTAC
エレクトロニクスから後工程工場を取得している。
と QFN、MicroLeadFrame 技術などに関するクロス
富士通セミコンダクターの 100%子会社の富士通イ
ライセンス契約を結んでいる。
ンテグレーテッドマイクロテクノロジ株式会社(以
なお、テスト事業についても、先端製品対応の
下 FIM)の LSI 後工程製造拠点のうち宮城工場と会
た め 増 強 を 続 け て い る が、 非 中 核 事 業 と な っ た
津工場は、ジェイデバイスに譲渡されている。FIM
Specialty Test 事業に関しては 2005 年に売却して
の九州(鹿児島)工場については、順次ジェイデバ
いる。
イスの九州地区工場に設備を移設し、最終的にはす
パッケージング関しては、ファインピッチ化、高
べての製造を移管する予定となっている。
性能フリップチップ、3D パッケージングの強化を
ルネサス エレクトロニクスからは、ルネサス北
進めている。
日本セミコンダクタ ( 北セミ ) の函館工場、ルネサ
2012 年までには 0.5mm ~ 0.4mm ピッチのワイヤ
ス関西セミコンダクタの福井工場およびルネサス九
ボンディング、フリップチップ(FC)の実装に対応
69 Amkor Technology
している。2013 年には 0.4mm 未満の微細ピッチ
る。ダイサイズは 5mm 以下での量産を行っており、
のメモリ、チップの下面に実装端子を全て配置した
2013 年下期からは 12 μ m 以下での量産を開始し
Fan-in FC/CSP への対応を実現する。
ている。ボールピッチについては 0.5mm までの量
2014 年には、WLFO(Wafer Level Fan-Out)で
産を開始、2013 年度下期からは 0.4mm ピッチの
は 3D 製品の TMV への組み込み、F2F の導入を進
量産を開始する予定。
めている。2015 年には TSV と TMV に融合を実現
CSP は第 2PI 層を Solder Brace を転換し、生産性
する。
およびボードレベルでの信頼性の向を実現する新技
ファインピッチでは、従来のはんだバンプに代
術について、2013 年第 2 四半期中にも量産へと展
わって銅ピラーの採用が進めている。サブコン企業
開する計画である。
の中でも最も積極的に導入を進めている。2014 年
3D パッケージではまた、TSV に加えて、パッケー
上半期中には 30 μ m ピッチにまで、ファインピッ
ジ・オン・パッケージ(PoP)に適した TMV(Through
チを図る計画である。銅ピラーは 150mm ピッチ以
Mold Via)技術の開発、実用化を進めている。同社
下から導入を進めている。TSV への応用も進めてお
では、TSV による IC の 3 次元化よりも、TMV によ
り、ミドルエンド製品分野を中心に実製品への応用
る PoP が商業生産への応用という点では、先行する
が進められている。
とみて事業展開を進めている。
高性能フリップチップでは、2013 年には銅ピラー
TMV は 2009 年に同社が発表した技術で、チッ
の導入に加えて、コアレス、Lidde の導入を開始す
プをパッケージングしているモールドに穴をあけて
る。また薄型化では 2.0mm 未満に抑える。パッケー
パッケージ基板間をハンダ接続することで、ファ
ジ厚については、2014 年中に 1.5mm よりも薄型
インピッチ/多ピンでの PoP 実装を可能にする。
化を進める計画である。
Amkor では基板の反り制御を改善し、パッケージ厚
ファインピッチ対応では、WLFO(Wafer Level
を低減するとともに、0.4mm ピッチという高密度
Fan-Out)技術を開発している。同技術はパター
で接続用インターフェースを配置することを可能に
ン配線埋め込み基板(buried-pattern PCB)を応用
している。このため、メモリ製品を中心とする 今
することで、チップの小型化による I/0 面積の限
後のピン数増にも対応できる。14 × 14mm パッケー
界を上回る多ピン化に対応できるようにしている。
ジでは 240 ピン程度の多ピンに対応している。
2013 年第 2 四半期から標準構造製品の量産を開始
TMV ではチップがパッケージ実装されているこ
する。さらに同年第 3 四半期から MCM への応用、
とから、TSV で使用する薄型ウェーハに比べてハン
第4四半期にはセンサでの量産を開始している。
ドリングしやすく、信頼性も高くなる。同一面積に
3D パッケージへの応用についても、2013 年第 3
より大きなチップ、多くのセル、素子を集積するこ
四半期から評価を開始、2014 年第 2 四半期以降の
とが可能となる。また、表面実装スタッキングのた
量産開始を計画している。
めのインフラを新たに開発したり、追加コストをか
構造では、基板パターンのライン&スペースは
けたりせずに、集積度と性能を高め、さらなる小型
20/20 μ m の量産を行っており、10/10μm につい
化を実現することができる。
ても 2014 年度下期から量産を開始している。パッ
また、TMV 技術については、2012 年に新光電
ケージ厚は 400 μ m 品を量産しており、2014 年か
気工業に非独占的ライセンスを供与している。新光
らは 150 μ m 製品の量産を開始する。パッケージ
電気工業が同技術を基盤にパッケージを製造できる
サイズは 7mm 以下の量産を行っており、14mm 以
ようになる。新光電気工業は本契約により、その販
下では 2013 年後半からの量産開始を計画してい
売・マーケティング活動においてアムコーの登録商
70 Amkor Technology
標 TMV を使用する権利を獲得します。
ス事業の売上高は同 37.0%増の 26 億 5000 万米ド
TSV では 2012 年までは CIS、センサなどローエン
ルに拡大した。特にフリップチップを含む BGA の
ドからミドルエンドの製品を中心に実用化を進めて
売上高は同 49.4%増の 7 億 4700 万米ドルとなった。
きた。2013 年にはメモリ - メモリの統合、2014 年
このほか、CSP は同 37.3%増の 9 億 5400 万米ド
にはメモリ - ロジックの統合というハイエンド分野
ルにまで拡大した。
にまで適用範囲を拡張している。
従来型のリードフレームタイプのパッケージング・
また。特殊用途や MEMS 向けなど多様なパッケー
サービスの売上高も、前記先端タイプよりも成長率
ジの対応も進めている。2008 年には、電気特性、
は下がるものの、前年比 29.6%増となった。ウェー
熱特性に優れた FusionQuad パッケージを開発した。
ハバンプ形成を含むその他のパッケージングサービ
同パッケージは 10GHz に対応している。MEMS で
スも同 23.7%増と堅実に成長、1 億 8800 万米ドル
は、通常のモールディングパッケージに加えて、キャ
にまで拡大した。
ビティ・パッケージの提供も行っている。
出荷量もリードフレーム製品と CSP の需要が拡大、
前年の 77 億個から 98 億個へと 21 億個も拡大して
いる。
2.事業/業績動向
2010 年度は収益面、営業利益面も回復が進んだ。
2008 年から 2012 年までの業績動向は以下のよ
営業利益は前年度比 13.7%増の 2 億 9000 万米ドル、
うになっている。同期間の業績推移を図 1 に示す。
純利益は 48.5%増の 2 億 3220 万米ドルにまで拡
半導体市況の影響から 2008 年、2009 年と連続し
大した。売上高増に加えて、製造面を中心にコスト
て、売上高は減少した。
削減が進んだことが要因として挙げられる。
その後 2010 年は前年比 34.9%増という大幅な回
2011 年度の売上高は前年度比 5.5% 減の 27 億
復を示した。中心事業であるパッケージングサービ
7600 万米ドルとなった。このうちパッケージング
3500
3000
2939
2659
2500
2776
2760
2179
2000
1500
1000
500
(単位:百万米ドル)
0
2008
2009
2010
2011
2012
テスト
314
245
289
283
321
パッケージング その他
144
152
188
211
227
パッケージング リードフレーム
753
587
761
692
661
パッケージング BGA
751
500
747
625
516
パッケージング CSP
697
695
954
965
1035
図 1 Amkor Technology の売上高推移
71 Amkor Technology
サービス事業の売上高は同 5.9%減の 24 億 9300
45 億 4500 万個に達している。
万米ドルとなった。スマートフォン、タブレット
アプリケーション別構成比率は、通信 46%、コ
PC など通信分野向け製品へのサービス需要の拡大
ンシューマ 22%、コンピューティング 12%、ネッ
したものの、コンシューマ、ネットワーキングおよ
トワーク 11%、その他 9%となった。
び PC 分野での需要が低下、売上減につながった。
地域別にみると、売上高構成比率は韓国が 54%、
製品サービス分野別売上高は、CSP はスマート
フィリピンが 19%、台湾 11%、中国 11%、日本
フォンなど無線通信分野にフリップ・チップ、チッ
5%となった。製造工場所在別生産量の比率は、韓
プ積層パッケージが増加、全体としても堅調に推移
国が 32%、フィリピンが 52%、台湾 4%、中国 9%、
したことから 1.2%増の 9 億 6500 万米ドルとわず
日本 3%となった。
かではあるが前年から成長した。さらに、バンプ形
3 四半期累計の収益面は、営業利益は同 26.5%
成などその他パッケージングサービスは同 12.2%
減の 1 億 1030 万米ドル、純利益は同 48.1%減の
増となった。
3500 万米ドルにまで減少した。
一方、
BGA が同 16.3%減
(6 億 2500 万米ドル)
、
リー
2012 年度第 4 四半期の売上高は 7 億 2300 万米
ドフレーム・タイプが同 9.1%減(6 億 9200 万米
ドルで前年度同期比 5.7%、
前期比 4.0%増となった。
ドル)に低下した。
営業利益は前年度同期比 44.2%増の 6300 万米ド
出 荷 量 は リ ー ド フ レ ー ム 製 品 の 需 要 が 低 下、
ル、純利益は同 9.0%増の 2790 万米ドルとなった。
2010 年の 98 億個から 81 億個へ、20%近い減少
売上高に占める上位顧客 10 社向けの比率は 63%と
となった。
なっている。また、アプリケーション別構成比率は、
売上高減少、利益率低下により、営業利益は前年
通信が 58%、コンシューマが 17%、コンピューティ
の約半分の 1 億 9370 万米ドルにまで減少した。純
ングが 9%、ネットワーキングが 9%、その他が 7%
利益は同 60.0%減の 9300 万米ドルにまで減少して
となった。
いる。
組立事業の売上高は 6 億 3100 万米ドルで、前
2012 年度の第 3 四半期までの累積業績(2012
年度同期比 2.6%増、前期比 2.4%増となった。同
年 1 月~ 9 月)のうち、全社売上高は 2.7%減の
事業の設備稼働率は 77%。テストサービス事業は
20 億 3690 万米ドルとなった。パッケージサービ
9200 万米ドルで、前年度同期比 33.3%増、前期比
ス売上高は同 3.8% 減の 18 億 800 米ドルとなった。
16.5%増となった。同事業の設備稼働率は 80%で、
CSP の売上高については、前半は前年比二桁成長を
前期から 3 ポイントの改善となった。
維持した。これに対して、BGA は第 1 四半期が前年
組立サービス事業のうち、チップ・スケール・
比 19%減、第 2 四半期が同 16%減、第 3 四半期は
パッケージ(CSP)が前年度比 10.9%増の 3 億 600
同 22%減と大幅な低下が続き、3 四半期累計売上
万米ドル、出荷量は同 73.5%増の 7 億 7200 万個。
高は、同 19%減の 4 億 200 万米ドルに減少してい
リードフレームが同 7.6%減の 1 億 4600 万米ドル、
る。
CSP、
BGA のうち、
フリップチップおよび先端パッ
出荷量は同 7.8%増の 13 億 8700 万個。BGA が同
ケージ売上高は 10 億 8000 万米ドルとなった。
10.9%減の 1 億 1400 万米ドル、出荷量は同 2.5%
リードフレーム・パッケージの 3 四半期を通じて、
減の 3900 万個。その他パッケージングが同 22.6%
前年割れが続いており 3 四半期累計では同 3.8%減
増、出荷量は同約 5.8 倍増の 5200 万個。
の 18 億 800 万米ドルとなった。
2012 年度通期の売上高は前年度比 0.6%減の 27
製品分野別生産量は、CSP が 14 億 9200 万個、
億 5980 万米ドル、営業利益は同 10.5%減の 1 億
BGA が 1 億 3200 万個、リードフレームタイプが
7330 万米ドル、純利益は 32.4%減の 6290 万米ド
72 Amkor Technology
ルとなった。設備投資額は同 14.3% 増の 5 億 3400
米 ド ル、 出 荷 量 は 同 12.3 % 減 の 1 億 7100 万 個。
万米ドルに拡大した。
その他パッケージングは売上高が同 7.6%増の 2 億
売上高に占める上位 25 社向けが 84%、上位顧客
2700 万米ドル、出荷量は同 73.0%増の 1 億 2800
10 社向けの比率は 62%となった。このうち、10%
万個。
を上回っているのが Qualcomm で、TI は 10%を割
フリップチップなど先端パッケージの売上高は
り込んでいる。
11 億 6000 万米ドルとなっている。 ま た、 ア プ リ ケ ー シ ョ ン 別 構 成 比 率 は、 通 信 が
工場所在地別売上高の構成比率は、韓国が 53%、
48%、コンシューマが 21%、コンピューティング
フィリピンが 19%、台湾 11%、中国 13%、日本 4%
が 11%、ネットワーキングが 11%、その他が 9%
となっている。販売量比率は、韓国が 32%、フィ
となった。
リピンが 51%、台湾が 5%、中国が 9%、日本が 3%
組立事業の売上高は前年度比 2.2%減の 24 億
となった。販売量は成熟製品の中心であるフィリピ
3900 万米ドル、設備稼働率は 75%となった。テス
ンの比率が高くなっている。
トサービス事業の売上高は同 13.4%増の 3 億 2100
万米ドル、設備稼働率は 79%となった。
3. 設備投資動向
組立サービス事業のうち、チップ・スケール・
パッケージ(CSP)は売上高が前年度比 7.3%増の
09 年度の設備投資額は前年度比 55%減の 1 億
10 億 3500 万米ドル、出荷量は同 24.0%増の 22
7350 万米ドルと大幅に削減された。これは、韓国
億 6400 万個。リードフレームは売上高が同 4.5%
K4 ライン、シンガポール・S3 ライン、台湾 T3 ラ
増の 6 億 6100 万米ドル、出荷量は同 1.8%減の 59
インなどの投資が一段落となったことに加えて、売
億 3200 万個。BGA が同 17.4%減の 5 億 1600 万
上高が前年度から二桁減(前年度比 18%減)となっ
600
533
(百万米ドル)
500
400
446
467
386
300
173
200
100
0
2008年度
2009年度
2010年度
2011年度
図 2 Amkor Technology の設備投資推移
73 Amkor Technology
2012年度
たことから、投資を抑制したことによる。
ケージ、高密度パッケージの製造能力強化に向けて、
これに対して 10 年度の設備投資額は前年度比約
装置購入が中心となった。投資の中心は、韓国 K4、
2.5 倍増(156.3%増)の 4 億 4600 万米ドルと大
中国・上海 C3 工場の強化向け投資となった。しかし、
幅に拡大した。このうち 63%、2 億 8000 万米ド
K4、C3 とも設備投資については前年度がピークと
ルがパッケージング事業に向けられた。売上高が拡
なったことから、2012 年度のパッケージ向け投資
大、中国 C3 工場の新設費用が加わったことにより、
は減少する結果となった。
投資規模が幅に拡大した。
13 年度の投資額は 4 億 5000 万米ドルを計画し
11 年度の設備投資額は前年度比 4.7%増の 4 億
ており、このうち 1 億 5000 万米ドルを韓国の新工
6700 万 米 ド ル と な っ た。 こ の う ち 61 %、2 億
場(K5)の用地購入および建屋建設に費用にあて
8500 万米ドルがパッケージングサービス事業に向
る計画である。2013 年 2 月に取得した用地の価格
けられた。同年度の投資の中心は中国の C3 の増強
は約 1 億米ドルで、2013 年中に支払い完了の予定。
で、前年完成した工場への装置導入を進めた。韓国
今後数年間で合計約 3 億米ドルを投資する計画と
の K4、および台湾の T3 の増強が中心となった。い
なっている。
ずれもフリップチップの増強を中心とする最先端製
品分野の強化に向けられている。
4.工場動向
12 年の設備投資額は前年度比 17.7%増の 5 億
3320 万米ドルとなった。このうちの 42.2%をパッ
同社の製造工場は韓国、中国、日本、台湾、フィ
ケージ事業向け投資額は前年度比 21%減の 2 億
リピンに設けられている。同社の工場と生産パッ
2500 万米ドル(投資額比率 42.2%)となった。携
ケージ、対応機能を表 2 に示す。このほか、資本参
帯電話などコミュニケーション分野向け、小型パッ
加しているジェイデバイスには、前述のように国内
Amkor Technology の工場概要
国
工場名
面積 (ft2) 対応技術
主なパッケージ種類
中国(上海) C3
993,000 Flip chip、 MicroLeadFrame、 ラミネートタイプ (BGA
など)、 ウェーハバンプ形成
PBGA、 CSP、 FlipChip、
MicroLeadFrame、 WLCSP
スタックド CSP、 PoP
日本
J1
211,000 パッケージング、 テスト、 部品実装
PLCC、 SOIC、 PDIP、 QFP、
CABGA、 LGA、 CCD/ カメラモ
ジュール、 スタックド ・ パッケー
ジ
韓国
K1
670,000 パッケージング、 プロセス開発
BGA、 SuperBGA、 リードフレー
ムタイプ
K3
432,000 テスト
K4
888,000 ウェーハバンプ、 パッケージ/テスト、 研究開発
Wafer Level Package
P1
749,000 パッケージ、 テスト、 プロセス開発
P3
400,000 パッケージ、 プロセス開発
P4
225,000 テスト、 テスト開発
TSOP/PSOP、 QFP、 PLCC、
PDIP、 CDIP、 CERDIP、 フリッ
プチップ、 PBGA、 SiP
T1
496,000 パッケージ/テスト
T3
353,000 Flip Chip, WL-CSP、 テスト
フィリピン
台湾
T5
米国
Arizona
A5 : North
Carolina
Flip Chip, WL-CSP、 TSOP、
LQFP/TQFP/MQFP、 DIP
バンプ形成 (200mm / 300mm ウェーハ対応)、 ポリ
イミド再封止、 WL-CSP
6,000 ハイエンドテスト開発 , RF テスト、 試作
37,000 バンプ形成 (200mm / 300mm ウェーハ対応)、 ポリ Flip Chip, WL-CSP
イミド再封止、 WL-CSP
74 Amkor Technology
半導体メーカの後工程工場の集約が進んでいる。な
集約する。
お、ジェイデバイスの工場については、
「ジェイデ
新施設の規模は面積が約 18 万 6000m2。今後 3
バイス」の項にまとめている。
~ 4 年間で約 3 億~ 3 億 5000 万米ドルを投じて、
韓国工場は K1、K3、K4 が稼働中で、K5 の建設
韓国・仁川に用地の取得、建物の建設を行う。土
を計画している。テストを含めた研究開発、設計、
地の取得費用は約 1 億米ドルで、2013 年 2 月に約
バンプ形成が中心となっている。パッケージング
1000 万米ドルを支払っており、2013 年 8 月、11
では、ウェーハレベル・パッケージ(WLP)のほ
月に 4000 万米ドル、5000 万米ドルの支払いを予
か、ラミネートタイプ、リードフレームタイプの
定している。5 ライン、1 ベースメントの構造が予
TSOP、BGA などの製造を行っている。K4 は中核工
定されている。2013 年通年では用地費用、工場建
場で、最先端パッケージの研究開発から製造、さら
設費用で 1 億 5000 万米ドルの投資を計画している。
にウェーハバンプ形成処理の拠点として稼動してい
新 施 設 の 建 設 は 2014 年 に 開 始 す る 予 定 で、
る。
2015 年後半から 2016 年にかけての操業開始を予
韓国では、K5 の新設を計画している。同工場に
定している。工場建設(用地取得費用含む)には今
は製造能力のほか、研究開発センタとしての機能も
後数年間で 4 億米ドルを予定している。さらに今後
Amkor Technology[http://www.amkor.com]
本社所在地 1900 South Price Road, Chandler, AZ 85286-6604 USA
半導体組立拠点
Site K1
所在地 280-8, 2-ga, Seongsu-dong, Seongdong-gu, Seoul 133-706 Korea
Site K3
所在地 516-1, Hyoseong-dong,Gyeyang-gu, Incheon 407-040 Korea
Site K4
所在地 957, Daechon-dong,Buk-gu, Gwangju 500-733 Korea
電話番号
従業員数
電話番号
電話番号
電話番号
1-480-821-5000
2 万 2700 人
822-460-5114
8232-540-3114
8262-970-7114
Site C3
No. 111 Yinglun Road, Waigaoqiao Free Trade Zone, Pudong, Shanghai,
所在地 200131 PRC China
電話番号 86-21-5064-4590
Site J1
所在地
Site P1/P2
所在地
Site P3/P4
所在地 Technopark, Binan, Laguna Philippines 4024
Site T1
所在地 Hsein Taiwan R.O.C
Site T3
Site T5
Site Arizona
Site A5
6-6 Kita-Kogyo-Danchi, Kitakami, Iwate 024-8510, Japan
電話番号
Km 22, East Service Road, Cupang, Muntinlupa City Philippines 1702
119 North Science Avenue, Special Economic Processing Zone, Laguna
1F, No. 1, Kao-Ping Sec., Chung-Feng Rd., Lung Tan County, 325, Tao Yuan
632-850-7000
電話番号 632-884-3000
電話番号 886-3-4719597
11 Guangfu Road, Hsinchu Industrial Park, Hukou County, Hsinchu 303
所在地 Taiwan, R.O.C.
電話番号 886-3-5982000
Hsin-Chu Industrial Park, No. 39 Kwang-Fu North Road, Hsin-Chu
電話番号 886-3-5972777
所在地 Hsein Taiwan R.O.C.
Chandler,AZ,USA
所在地
電話番号
所在地 3021 Cornwallis Road, Research Triangle Park, NC 27709-4584 USA
電話番号 919-248-1800
所在地
売上高推移
( 百万米ドル )
電話番号
81-197-71-3241
電話番号
2010 年度 (2010 年 12 月期 )
2011 年度 (2011 年 12 月期 )
2012 年度 (2012 年 12 月期 )
2939
2776
2760
対応技術 / 月産能力(万個)
○
SOP、 SOJ
○
DIP、 SIP
○
QFP、 QFJ、 QFN
○
TCP、 COF
○
PGA、 FLGA
BGA
FBGA
CSP、 WL-CSP
チップ積層パッケージ
パッケージ積層
○
○
○
○
システム ・ イン ・ パッケージ
フリップチップ
モジュール化
設計開発
○
○
○
○
○
主なユーザ
Advanced Micro Devices、 Agere Systems、 Analog Devices、 Freescale Semiconductor、 Infineon Technologies、 Intel な
ど 300 社以上。
事業の特徴
世界最大の組立専業メーカ。 12 年のパッケージ別売上高はリード ・ フレーム ・ パッケージが 661 百万米ドル、 BGA が 516
百万米ドル、 CSP が 1035 百万円、 その他が 227 百万円
75 Amkor Technology
10 年間で 10 億米ドルの投資規模を計画している。
中国の工場では最大の処理能力を持つのは中国・
C3 工場。FC パッケージ、MicroLeadFrame パッケー
ジ、ラミネート・タイプといった、同社の中心製品
の製造を行っていく。
台湾では Hu Kuo に 2 工場(T3/5)
、
Lung Tan(T1)
を稼動している。T1 は TSOP、QFP といった成熟製
品の製造を担当している。また、T3/5 はラミネー
トタイプのほか、FC、CSP、バンプ形成といった先
端デバイスの製造を担当している。
フィリピンには P1 と P3/4 の 3 工場があるが、各
工場ではリードタイプの成熟製品の製造を担当して
いる。
日本の工場(アムコー岩手)は旧岩手東芝の組立
工場を買収してもので、現在も東芝向けの投資が中
心となっている。
これらの工場のほか、2011 年まではシンガポー
ル に も 工 場 を 保 有 し て い た。 シ ン ガ ポ ー ル で は
2004 年に IBM から後工程工場を買収(S1 工場と
して運用)
、同社向けの製造を開始した。その後、
2006 年からは台湾工場から技術導入したウェーハ・
バンプ形成も行っていた(S2 工場で展開)
。しかし、
製造コスト削減の一貫として 2011 年 7 月に売却し
た。
76 Amkor Technology