見る/開く - 岐阜大学機関リポジトリ

Title
生体捕獲調査における計測, 採材, 器具装着および衛生上の
諸注意( 本文(Fulltext) )
Author(s)
淺野, 玄
Citation
[哺乳類科学 = Mammalian Science] vol.[46] no.[1] p.[111][131]
Issue Date
2006-06-30
Rights
Version
出版社版 (publisher version) postprint
URL
http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/28410
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
哺乳類科学 46(1):111 131,2006
鴎日本哺乳類学会
111
連載「食肉目の研究に関わる調査技術事例集」
生体捕獲調査における計測,採材,器具装着および衛生上の諸注意
淺野 玄1,塚田 英晴2,岸本 真弓3
1
岐阜大学応用生物科学部 2
(独)畜産草地研究所 3
(株)野生動物保護管理事務所関西分室
に,これら衛生上の問題を含め,野生動物研究を進める
1. はじめに
食肉目に限らず,野生哺乳類を対象とした生体捕獲調
上で重要な役割を担いつつある,獣医学関連分野との接
点について簡単に紹介する.
査では,前々章(金子・岸本,2004)および前章(岸
本・金子,2005)で扱った捕獲と保定作業を行った後,
2. 計測と採材
各種計測作業や採材,調査器具の装着などが行われる.
これらの作業は,通常,物理的保定下では数分程度,長
2 1. 計測
くても十数分程度の極めて短時間で,化学的保定の場合
1)計測データの選定と基本的な注意事項
でも30分∼1時間程度の時間内で実施しなければならな
食肉目に限らず,野生動物の体重や外部計測値は記録
い.このように,限られた時間内で必要とする作業を過
すべき最も基本的なデータである.小型哺乳類の外部計
不足なく終えるためには,事前の準備が不可欠となる.
測法には北米式とヨーロッパ式があり,日本では北米式
本章では,限られた時間内で実施すべき作業の取捨選択
(修正北米式)が一般的方法として紹介されることが多
に役立つ事例等を紹介し,より詳細な情報にアクセスす
い(日本哺乳類学会種名・標本検討委員会,2001).得
るための手がかりを提供する.
られた計測値を他の研究データと比較する場合は,計測
はじめに最も基本的な収集データとなる外部形態の計
方法が同一であることを確認しておく必要がある.当然
測項目やその利用方法を紹介する.生体を捕獲した際に
のことながら,計測すべきデータは研究目的に応じて異
は,そこからなるべく多くの情報を得たいと誰しも考え
なるが,外部計測部位として体重,全長,尾長,頭胴長
るだろう.その際,真っ先に思い浮かぶのが外部形態の
は計測すべき必須の部位であろう.これら以外にも,食
計測である.これらの計測値を収集することでどのよう
肉目では首囲,胸囲,耳長,後足長などが研究目的に応
な研究に役立てられるのか,限られた紙面ではあるが簡
じて計測されている.研究者達から得られた各種動物に
単な解説を試みる.次いで生体から採取できる各種試料
おける外部計測項目に関するアンケート結果を表1に,
の項目や採材方法およびそれら試料の利用法について述
主要な外部計測部位を図1に示した.一般的に体重,体
べる.食性,栄養状態,繁殖状態などの情報に関して
長,後足長などは客観性が高く成長や栄養状態の指標と
は,生体以上に死体からより詳細な情報が得られること
なる種も多いが,体高などは計測誤差が大きいため比較
も多いが,死体からの採材については本連載の後章で扱
する際には注意が必要である.代表的な部位の計測方法
う予定である.そして,食肉目研究者へのアンケート
は 多 く の テ キ ス ト や マ ニ ュ ア ル な ど(Nagorsen and
(金子ほか,2003)において捕獲に次いで失敗例の多
Peterson, 1980; 栃木県立博物館,
1986;阿部,
1991;米田
かった器具の装着について,研究者からの回答を中心に
ほか,1996;Martin et al., 2001; 日本哺乳類学会種名・
具体的な失敗・成功事例を交えながら紹介する.また,
標本検討委員会,2001;阿部ほか,2005)にも記載され
生体捕獲作業を通じて野生個体に直接触れる機会が研究
ている.
者自身にどのような疾病への感染をもたらすかについ
計測に用いる道具には,秤(バネばかり,竿ばかり,
て,研究者へのアンケート結果で触れられていた感染症
電子体重計など),メジャー,ノギスなどがあり,対象
を中心に衛生管理上注意すべき点を述べる.そして最後
種や測定部位,測定を実施する場所に応じて選定すると
112
淺野 玄 ほか
の計測では化学的または物理的不動化を伴うことが多い
○
○∼×
×
×
△∼×
○
△∼×
○∼×
×
○
×
後足幅
よい.また,記録用のカメラがあると便利である.生体
が,不動化時間の短縮に努め,動物に不必要なストレス
○
○
○∼×
×
○∼×
○
○∼×
○
○
○
○
人物が行うことが望ましいが,複数で実施する場合には
データシートに計測部位を図示して計測漏れや計測誤差
を小さくするとともに,計測者と記録者が計測値を復唱
○,基本的計測部位または計測意義があり計測すべき;△,研究目的に必要なために計測している;×,計測していないまたは計測する意義は低い.
* その他として頭囲,肩高,陰茎骨長,精巣サイズ,耳介幅,後掌長・幅などの計測もしているという回答あり.
○
○∼×
×
×
△∼×
○
△∼×
○∼×
×
○
×
○
○∼×
○∼×
×
△∼×
○
△∼×
○
○
○
×
△
×
○∼×
×
○∼×
○
○∼×
○∼×
×
×
○
△
○
○∼×
×
○∼×
○
○∼×
○
○
○
○
ツキノワグマ *
キツネ
タヌキ
ノイヌ
アライグマ *
アナグマ
テン *
ニホンイタチ *
イイズナ
ミンク
ノネコ
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○∼△
○
×
○∼×
○
○
○∼×
×
△
×
○
×
○
×
○∼×
○
△∼×
○∼×
×
×
×
○
×
○∼×
×
○∼×
○
△∼×
○∼×
×
×
○
○
×
○
×
○∼×
○
○∼×
○∼×
×
×
×
△
△∼×
○∼△
○
△∼×
×
○∼×
○∼×
×
×
×
耳長(外側)
耳長(内側)
体高
腰囲
胴囲
胸囲
首囲
尾長
頭胴長
全長
体重
種
表 1. 研究者達から得られた各種動物における外部計測項目に関するアンケート結果
前掌長
前掌幅
後足長
を与えることを避けるべきである.また,計測は同一の
するなどして記入間違いを防ぐ工夫をするとよい.
2)計測値や観察データの利用
捕獲個体や生息環境などの情報とともに得られた計測
値は,種の同定,性,繁殖状況,年齢,成長,栄養状
態,地理的変異など様々な指標として用いることができ
る.生体捕獲調査から得られる主な計測および観察デー
タの利用例や注意点を以下に紹介するが,多くのテキス
ト( 例 え ば, 栃 木 県 立 博 物 館,1986;Bookhout, 1994;
田名部ほか,1995;野生動物救護ハンドブック編集委員
会,1996;米田ほか,1996)に記載されているので参照
するとよい.
①種や亜種の判別
日本に生息する食肉目は,外見で判別可能な種が多い
ため,生体捕獲調査において計測値のみから種や亜種の
判別をするケースは少ない.しかし,外見による判別が
困難なニホンイタチ(Mustela itatsi)とチョウセンイタ
チ(Mustela sibirica)は尾率(尾長 / 頭胴長)が判別基準
の目安の1つとなり,尾率0.5以上をチョウセンイタチ
とする記述もある(今泉,1960;阿部ほか,2005)
.ニ
ホンイタチでは尾率が0.40 ∼ 0.45程度,チョウセンイタ
チでは0.50前後であるが(佐々木,1996),識別法とし
ては不完全であり(川口,2006),毛色,性別,体重,
齢などから総合的に判断するしかない.
②性判別と繁殖状況
イタチ科のように体の大きさの性的二型が顕著な種を
除き,体サイズのみからの性判別は正確性を欠く.可能
な限り生殖器を確認して確実な性判別を行うことが望ま
しい.一方,精巣サイズ,陰茎骨サイズ,陰茎の露出状
況,乳頭サイズ,泌乳の有無,外陰部の状態などは性成
熟の判定や繁殖状況の指標となる種も多い.小型および
中型の食肉目の多くが生理的には1∼2歳で性成熟に達
するが,生息地によっては異なることもある.また,ク
マ類やテン類,アナグマ(Meles meles)などは受精卵が
すぐに着床しない着床遅延の現象を示す.生体捕獲調査
では,対象とする動物の繁殖生理を熟知しておき,繁殖
活動に悪影響を与えないようにすることが重要である.
③齢査定
幼獣,亜成獣,成獣などの相対的な齢区分は体サイ
食肉目の生体捕獲調査上の諸注意
113
図 1. 主要な外部計測部位. * 実際には背面に棒などを沿わせて真っすぐにしてから計測する.
** イタチ科などの蹠球をもつ動物では,蹠球までの長さと区別して計測する.
ズ,生殖器,歯の萌出・交換,陰茎骨のサイズや形状な
量(TBW)と除脂肪乾燥重量(LDM)を推定して TBF
ど の 外 部 形 態 か ら 可 能 な 場 合 が 多 い(Dimmick and
(=TBM−TBW−LDM)を得る(Hwang et al., 2005).
Pelton, 1994).温帯以北の動物では季節による栄養条件
種によって異なるので,事前に死体で頭胴長や胸囲など
の差により,歯根部のセメント質に通常1年に1本の年
の外部計測を行い,体脂肪と体測値との相関式を得てお
輪が形成される.食肉目は早い時期に永久歯列となるう
く必要があるが,相関式が得られれば野外で簡単に測定
えにエナメル質が厚く咬耗が少ないため,歯の萌出・交
できる.例えばシマスカンク(Mephitis mephitis)では,
換を終えた1∼2歳以後の年齢推定を行うには,この歯
以下のような推定式が得られている(TBF=0.88×TBM
のセメント質年輪をカウントする絶対年齢査定法が多く
2
−0.058×胸囲−0.25×(頭胴長)
/Rs(生体の電気抵抗)
の 種 で 利 用 さ れ て い る( 大 泰 司,1990;Dimmick and
+0.85;Hwang et al., 2005).一般に体脂肪量は季節に
Pelton, 1994; 八谷・大泰司,1994).
応じて変化するため(Harder and Kirkpatrick, 1994),異
④栄養状態
なる地域間で個体の栄養状態や個体群の質(繁殖率や死
一般的に栄養状態の指標は,皮下,体腔内,骨髄内な
亡率など)を評価する際には,計測時期を統一させるこ
どに蓄積された脂肪の測定値(皮下脂肪厚,腎脂肪量,
とが必要である.死体では,体脂肪量を直接観察あるい
大腿骨骨髄脂肪量など)であり(Harder and Kirkpatrick,
は計測することが可能なため,より精度の高い栄養状態
1994),栄養段階が下がると前記の蓄積部位の順に異化
の評価が可能となる.
が起こる(Riney, 1955).成長が完了した成獣では,個
体の栄養状態の指標となる代表的な外部計測値は体重で
2 2. 採材
ある.その他には,エックス線撮影により皮下脂肪厚を
1)基本的な注意事項
計測する手法(岸本,1997a)や,体重と体長または後
生体捕獲調査における基本作業となる性判別,外部形
足長の比などで間接的に体脂肪量を計測する方法
態計測,年齢査定などが終了後,個体からの試料採取が
(Harder and Kirkpatrick, 1994)もある.近年では,ヒトの
行われる.通常,生体からの採材は物理的あるいは化学
体脂肪率計と同じ原理で微弱の交流電流(50 Hz・800
O アンペア)に対する生体の電気抵抗(9)を測り,体
的不動化を伴うため,外部計測と同様,拘束時間をでき
脂肪(TBF)を推定する方法も利用されている.体重
量が記入されたデータシート,必要な用具が整理された
(TBM)や胸囲,頭胴長などの体測値と合わせて体水分
作業箱などを準備しておき,作業効率の向上と採材漏れ
るだけ短縮する配慮が必要である.必要な試料の項目や
114
淺野 玄 ほか
を防ぐ工夫をするとよい.採材の優先順位をつけておく
性解析(Mizukami et al., 2005)や有刺鉄線を利用した
ことも重要である.また,分析結果に与える影響を小さ
ヘアトラップによる生態遺伝学的な調査(Woods et al.,
くするため,適切な保存容器の準備も怠ってはならな
1999; Posillico and Lorenzini, 2000; Mowat and Strobeck,
い.採取した材料にはすぐにナンバリングをし,紛失や
2001; Poole et al., 2001; Sato, 2002; Boersen et al.,
混乱が生じないよう留意する.なお,採血や組織生検な
2003)も行われている.採材は容易で,毛根部を含むよ
どサンプルによっては採取の際に専門的な技術や知識を
うに引き抜いて採取するのが一般的である.目的とする
要するものがあるため,専門家の協力を得なければなら
分析項目に適した部位から十分量を採取し,乾燥または
ない場合もある.捕獲個体分析については,
「野生動物
冷凍保存(−20℃以下)しておくとよい.
学概論」
(田名部ほか,1995),
「野生動物救護ハンドブッ
④寄生虫
ク」
(野生動物救護ハンドブック編集委員会,1996),
「野
寄生虫は,体表に寄生する外部寄生虫と,血液や各種
生動物調査法ハンドブック」
(米田ほか,1996)などが
臓器内に寄生する内部寄生虫に区別できる.外部寄生虫
参考になる.
の採材は,体表を精査することで行う.1個体ずつピン
2)採材項目ごとの注意点(生体)
セットなどで採集するのが困難な場合,市販のノミ取り
①血液
クシなどを使用するとよい.また,殺虫剤を散布して死
生体から採取される最も一般的な試料であるが,採血
亡した個体を収集する方法もある.収集した個体は,
は適切な訓練を受けた技術者が行うべきである.採血方
70%アルコール,グリセリン・アルコール液(70%アル
法は伴侶動物や産業動物と同様であるが,対象種,個体
コールに3∼ 10%量のグリセリンを加える)に入れて
の健康状態,保定方法,必要量などに応じて頚静脈,橈
保存する.ホルマリンも固定液,保存液として一般に用
側皮静脈,外側および内側伏在静脈,大腿静脈などから
いられるが,虫体を硬化させてしまうとともに,長く保
行う.採血量は健康な動物でも体重の1%以下と経験的
存しておくと蟻酸を生じるために体表のクチクラに影響
に判断される.血液は,血液一般性状,血清生化学性
を及ぼすおそれがある(今井ほか,1997).
状,各種ホルモン分析,遺伝学的分析,疫学的分析など
生体からの内部寄生虫の採取は,採血によってミクロ
に利用されるが,性,年齢,健康状態,日内変動,季節
フィラリや住血原虫を得る場合を除き困難である.した
変動,ストレス,不動化薬の使用,サンプルの保存状態
がって生体の場合,寄生虫の存在を示す証拠を血液や糞
など多様な要因が測定値に変動をもたらす可能性がある
などから検出する方法が一般的である.感染に伴う宿主
ことを考慮すべきである.採材にあたっては,動物種に
の免疫反応を調べる免疫学的な診断,寄生虫の産出する
適したサイズの注射器と注射針を使用し,分析項目に合
虫卵を検出する糞便検査が主要な方法となる.これらの
致した採血管に保存する.野外などで,すぐに処理でき
方法は,必ずしも寄生の確実な証拠とならない点に注意
ない場合には保冷剤などを利用して一時的に冷蔵保存し
する.詳細については,
「家畜寄生虫学実習・実験」
(石井
ておくべきである.
ほか,1981),
「Measuring and Monitoring Biological Diversiy
②糞
Standard Medthods for Mammals」
(Gardner, 1996),
「獣医
食性分析,寄生虫などの感染症や疫学的調査などに利
寄生虫検査マニュアル」
(今井ほか,1997)などを参照
用される.捕獲の際に使用した餌が糞に含まれることが
するとよい.これらは,死体からの虫体検出方法につい
あるので食性分析の際には注意が必要である.ワナの中
ても詳しい.
で排泄してあったものではなく,肛門から直腸糞を採取
⑤歯
する場合には,採便棒などの道具を使うとよい.中型ま
年齢査定などに利用される.歯科用エレベーターや抜
たは大型動物ではゴム手袋などをして肛門から指を入れ
歯鉗子などを利用し,分析に必要な歯根部を傷つけない
て採糞することもできる.直腸糞の採取では,直腸粘膜
よう注意して麻酔下で抜歯する.この際,生活に支障の
を傷つけないよう採便棒や指を水で濡らしたりグリセリ
少ない歯(例えば,クマ類では第一または第二前臼歯)
ンを塗るなどするとよい.分析項目によって,サンプル
を選択する必要がある.犬歯は生活への支障があるばか
の必要量,保存方法,処理方法などは異なるので,事前
りか,加齢に伴い歯根部が成長して抜歯が困難になるた
に調べておく必要がある.
め,通常は抜歯しないほうがよい.
③体毛
⑥組織
遺伝学的分析,種の同定,同位体分析などに利用され
バイオプシー(生検)用の針を利用して筋肉,脂肪,
る.例えばクマ類では,炭素・窒素安定同位体による食
精巣などの組織の一部を麻酔下で採取することが可能で
食肉目の生体捕獲調査上の諸注意
115
ある.特殊な器具と技術が必要であるので,獣医師と協
歯のセメント質年輪の観察が困難なマングース
(Herpestes
同で行うとよい.出来る限り無菌的に採材することが重
sp.) で は 有 用 な 齢 査 定 の 1 つ と な っ て い る( 阿 部,
要なので,剃毛や消毒のための器具や薬品の準備も必要
1995).水晶体は冷凍保存すると標本に影響を及ぼすこ
となる.
とに注意する.
⑦分泌液
④骨格
乳汁,膣分泌液,耳漏,鼻汁,唾液,精液,肛門旁洞
形態学的分析,年齢推定,栄養指標,標本資料などの
腺分泌液などが含まれる.分析可能な項目についてはこ
ために採取される.骨格標本の作製法や年齢査定法につ
こ で は 触 れ な い が,
「獣医臨床病理学」
( 小 野 ほ か,
いては骨格標本作製法(八谷・大泰司,1994)が参考に
1998)などを参照してもらいたい.主にヒト用ではある
なる.
が,採取に適した道具も製品化されているので,それら
を利用すると便利である.精液については,電気射精法
などの特殊な技術を要するので,技術者の協力を仰ぐ必
3. 器具の装着・標識
要があるだろう.
3 1. 装着器具および標識の選定
⑧尿
本連載の金子・岸本(2004)の章で紹介された方法に
ヒトでは一般的な検査材料であるが,生体捕獲調査で
より生体捕獲された個体には,前節で紹介した手段で計
は採尿において獣医学的な技術を要する場合が多く,採
測・採材と供に,調査・研究目的に応じて個体識別用の
取されることは少ないようである.外部尿道口からカ
標識(マーキング)や様々な器具の装着が行われる.そ
テーテルを挿入するか注射器で膀胱を穿刺するなどして
の種類や方法は様々であるが,目的を基準に考えると,
採取できるが,いずれの場合でも麻酔下で行う必要があ
対象個体を特定するための補助として用いる器具の装着
る.
もしくは処置,対象個体から様々な情報を収集するため
3)採材項目ごとの注意点(死体)
の器具の装着に大別できる.どのような器具の装着もし
①消化管内容
くは処置をするにせよ,前提条件として,その行為自体
胃や腸管の内容物は,食性分析や寄生虫検査の貴重な
が対象個体に大きな影響を及ぼさないことを仮定してい
試料となる.胃の前端噴門部と直腸端を糸で結紮(けっ
る.しかしながら,このような仮定がきちんと評価され
さつ)後に切断して,胃から腸までをすべて摘出して採
た事例はあまり多くない.現実的には,器具の装着や処
材する方法が便利である.検査の目的に応じて冷凍,ア
置による影響がわからなくても,予想される影響を十分
ルコールまたはホルマリン固定などの方法で保存してお
考慮して装着器具や処置の選択をする必要がある.標識
く.
による影響については,Murray and Fuller(2000)によ
②脂肪組織
る総説が参考になる.また,哺乳類全般の標識法やその
死後の経過時間が短い新鮮な個体であれば,栄養状態
特徴については,Nietfeld et al.(1994)に詳しい.この
の指標となる皮下脂肪,腎周囲脂肪,骨髄脂肪などを採
ような器具や処置に関する既存の情報を十分に得た上
取 で き る. す ぐ に 分 析 で き な い 場 合 に は, 冷 凍保存
で,1)研究目的上,器具の装着や処置が不可欠かどう
(−30℃)しておく.
か(代替方法はあるか),2)器具の装着および処置を何
③臓器・器官
頭に施す必要があるのか,3)器具の装着および処置
形態学,組織学,病理学,繁殖学,寄生虫学的検索な
は,社会的に許容され得るものなのかなどを十分に考慮
どの試料となる.たとえば,卵巣や子宮からは卵胞,胎
し,適切な器具および処置を選択することが必要であ
児,胎盤痕などの肉眼観察または組織学的分析によっ
る.以上の倫理的配慮に関する全般的議論については本
て,繁殖率や産子数などの情報を得ることが可能で,ア
連載の村上・佐伯(2003)を参照するとよい.
ラ イ グ マ(Procyon lotor)
(Asano et al., 2003) や ヒ グ
マ(Urusus arctos)
( 坪 田,1988), タ ヌ キ(Nyctereutes
3 2. 器具の装着および処置を必要としない個体識別法
procyonoides)
(Helle and Kauhala, 1995), ア カ ギ ツ ネ
対象個体への負担を極力軽減することを考慮すれば,
(Vulpes vulpes)
(Englund, 1970),リンクス(Lynx lynx)
器具の装着や処置なしで個体を特定できることが望まし
(Mowat et al., 1996)など多くの動物種で報告がある.
い.個体の持つ様々な特徴を手がかりに個体識別する方
また,新鮮な死体から採取した水晶体重量の計測による
法は,野生動物研究者が従来用いてきた基本的技術の1
年齢推定が試みられており(Dimmick and Pelton, 1994),
つである.この技術の習得には,長期に渡る訓練と経験
116
淺野 玄 ほか
が必要だが,熟達者のこつを知ることは,その習得期間
のため,傷の位置,大きさ,数などを手がかりとして個
の短縮に役立つ.しかしながら,個体の移出入が多い個
体識別可能な場合がある.研究者へのアンケートでは,
体群や識別すべき個体数が多い場合には,識別精度が低
特徴的な傷は,耳,顔,吻部に集中しており,その他の
下する点に注意する必要がある.標識の作業に関わるコ
手がかりとして,尾の欠損や折れ曲がり,四肢や歯の欠
ストと識別精度の優先度に応じて使い分けることが現実
損などの利用が報告された.品種固有の特徴として,耳
的である.
の垂れや巻き尾などがノイヌで認められた.ただし,こ
1)毛色・模様による識別
れらの特徴については,新たにできた傷を絶えず記録し
一般に動物には毛色多型があり,これらは遺伝に基づ
ておく必要があり,定期的な観測が困難な場合には混乱
く固定的な特徴である.野生動物では,毛色の違いによ
を招く可能性がある.
る適応度の差により,毛色が一定のパターンに落ち着い
3)行動上の特徴による識別
ていることが多いと考えられるが(野澤,1996),詳細
行動上の特徴も,個体識別に利用できる.研究者への
に観察すると,個体識別に役立つ特徴が認められる.研
アンケート結果によると,ノネコでは,人によく慣れて
究者へのアンケートで得られた,種別の結果は以下の通
すり寄ってくるかが識別の参考となる.タヌキでも,個
りである.毛色のバリエーションが多いノネコ(Felis
体によって人への警戒心に違いがあり,この行動上の特
catus)では,全身が白色もしくは黒色の個体を除き,個
徴が利用できる.ただし,観察した条件により行動は大
体識別に有効であった.ノイヌ(Canis familiaris)も同
きく変化することがあるので注意が必要である.たとえ
様だが,全身が白色もしくは黒色の個体は識別困難で
ば,著者らの経験では知床国立公園で観光客に餌づけら
あった.キツネ(Vulpes vulpes)では,尾の先の白色部
れたキツネでは,昼間には数 m の距離まで観光客に近
分や足先の黒色部分,吻の両脇,目の上部,尾の背部な
づくのに対し,夜間には 10 m 以上の距離で逃走行動を
どにある黒斑の大きさなどが,換毛にかかわらず一定し
示した.
た特徴を示すと報告されている.タヌキでは,目の周り
の黒色部分が個体識別の手がかりとなった.テン(Martes
3 3. 器具の装着および処置を必要とする個体識別法
melampus)では,喉から胸部にある黄色いパッチ状の形
器具の装着ならびに処置を必要とする個体識別法で
が終生変化せず,パッチ中の黒いスポットも自動撮影法
は,個体に何らかの影響を及ぼすことは避けられない.
などで利用可能な個体識別の手がかりとなるとの報告が
これらの影響を軽減する上で,個々の器具の特徴や処置
ある.また,顔と体の毛色が異なる場合,その境界部分
の性質を理解し,不必要なストレスを与えない工夫が必
に個体差が認められる.クロテン(Martes zibellina)で
要である.
は,首筋の模様に大きな個体変異があると報告された.
1)耳標
アナグマでは,目の周りの模様に個体差があり,ビデオ
個体識別手段として最も一般的に用いられている方法
などで個体識別できる場合があることが報告されてい
の1つである.家畜や実験動物等で使用されているもの
る.ただし,体重の増減による相貌変化に注意が必要で
を野生動物に流用する例が多い.通常,耳標装着部分の
ある.ニホンイタチでは,毛色による個体識別は困難で
毛を剃り,同部位にイソジン等の消毒薬を塗布後,専用
あるが,首の白色部と有色部の模様や吻部の黒色部の大
のタッグパンチャーで装着する.研究者へのアンケート
きさなどに特徴があると報告された.ただし,夏毛と冬
結果では以下のような適用例が報告されている.クマ類
毛で毛色が大きく異なるので注意が必要である.チョウ
では,家畜用合成樹脂製耳標(Allflex 社製)が利用さ
センイタチでも喉の白斑に特徴がある.ミンク(Mustela
れている.キツネやタヌキでもウシ用耳標(Allflex 社
vison)では,全身の毛色に変異が多く,特に腹部の白斑
製)の適用例がある他,家畜豚出荷確認用のアルミ製耳
の位置と形が個体により異なるので,スケッチなどして
標,長さ1cm 程度のネズミ用耳標(タヌキに適用)な
記録するとよいとの指摘が得られた.毛色パターンの記
どの適用例がある.イタチ類では,人用のピアスを接着
載方法については,Ortolani and Caro(1996)が参考に
剤で固定し,装着した例があるほか,オコジョ(Mustela
なる.また Lehner(1996)は,ライオン(Panthera leo)
erminea)やイイズナ(Mustela nivalis)専用の耳標も利用
での調査例をわかりやすく紹介している.
できる(King, 1989).
2)体の傷や一部欠損を利用した識別
耳標の選択には,大きさや材質(熱伝導性や耐食性の
体の傷は,個体が経験した環境との相互作用の履歴が
違い)
,形状(皮膚との接触面の形態)などを考慮する
蓄積されており,個体ごとに固有のパターンを示す.そ
必要がある.研究者へのアンケートでは,キツネやタヌ
食肉目の生体捕獲調査上の諸注意
117
キにウシ用耳標を装着した場合,耳の一部が裂けて耳標
脱落したケースが報告されており,相互グルーミングを
が脱落する事例が確認されている.また,ブタ用アルミ
行うタヌキなどでは,飾りなどの付属物が首輪の強度に
製耳標(断面が長方形で耳に接触)をキツネに使用した
悪影響を及ぼす可能性がある.食肉目への適用例は不明
ところ,装着部位が化膿し,その周囲にマダニが寄生し
だが,装着部分の金具を工夫することで,自動装着型の
た事例が認められた.タヌキでも,アルミ製の場合,腐
首輪が利用できる(Verme, 1962; Siglin, 1966).
食して接触部位が化膿する事例が確認されている.ただ
3)入れ墨・色素
し,タヌキとアメリカテン(Martes americana)に用いた
捕獲を定期的に行うのであれば,歯茎,耳介部,鼠径
モネメタル製(ニッケルと銅からなる耐食性の合金)の
部,下顎部,指間隙などの無毛(もしくは薄毛)かつ薄
耳標(National Band & Tag Co., Kentucky)では障害が
色の部位に入れ墨を施し,再捕獲時に確認する手段があ
認められなかった(佐伯,私信).一方,弾力のあるウ
る.研究者へのアンケートでは,タヌキ,アナグマ,テ
シ用合成樹脂製の耳標(断面が円形)では,顕著な障害
ン,チョウセンイタチ,ミンク,マングースなどで適用
は報告されなかった.素材としては耐食性の高い合金や
例があり,裁縫針などを束ねて市販の墨汁を用いた事例
合成樹脂製が適しているようである.
が報告された.耳介の場合,小型哺乳類や家畜を対象と
イタチ類でも耳標の脱落が確認されている.研究者へ
した入れ墨ペンチを利用すれば,より簡便に番号や記号
のアンケートでは,イタチ類は耳介が小さく皮膚も弱い
を標識できる(Honma et al., 1986).半永久的に利用で
ため,耳標の装着は不適であると多くの研究者が回答し
き,生体へのダメージも少ないため,近年では小型哺乳
ていた.またマングースでも耳標の適用例があるが,時
類を対象に野外でも応用されている
(Lindner and Fuelling,
間がたつと脱落する,遠くからでは目立たないといった
2002).ただし,ミンクでは下顎への入れ墨が数週間で
回答が寄せられた.
色褪せ,アナグマでは数ヶ月でかなり色褪せたとの回答
2)首輪
も得られた.
首輪の装着も比較的簡便な標識の1つである.単独で
組織に低温やけどを引き起こして標識する冷凍焼烙は
用いられることは少なく,首輪型発信器を装着した際に
熱による焼烙と比べて人道的な標識方法とされるが
個体識別の補助としても利用されることが多い.首輪型
(Nietfeld et al., 1994),研究者へのアンケートにおいて
電波発信器については,本連載の次章で紹介されるので
タヌキでは不確実であったとの報告もある.より簡便な
そちらを参照していただきたい.
方法として毛皮に油性マジックや市販のスプレー状塗料
ペット用の首輪は色や飾りが多様なため識別パターン
などで色や番号をつける方法もあるが,耐久性に難があ
の増加に有効である.研究者へのアンケート結果におい
り,短期的な利用に留めた方がよい.また,自己および
て,ノネコでは,毛色による区別が出来ない全身白色も
相互グルーミングを行う種では,塗料の経口摂取による
しくは黒色の個体に首輪を装着して個体識別を行った事
個体への影響も考えられる.研究者へのアンケートで
例が,タヌキでもイヌ用首輪の適用例がある.ノネコの
は,イタチ類やノイヌでの適用例においてあまり良好な
成獣では,少なくとも薬指と人差し指が入る程度の余裕
結果が得られていない.
をもたせて首輪が装着されていた.1歳前後のオスネコ
個体識別には用いることができないが,色素を取り込
にかなり余裕をもたせて首輪の装着をした例では,前肢
んだ特定の個体を把握する方法がある.ローダミン B
が首輪にひっかかる事故が発生している.そのため,成
は,捕獲を必要とせず,経口的に投与できる比較的安全
長に伴い首囲が増大する幼獣や季節的な体重変動の激し
な色素として有効である(Fisher, 1999).消化管などの
い種などに適用する場合,首囲の個体内変動の幅を先行
組織や爪,毛などに蓄積され,紫外線下で確認可能な蛍
研究で確認しておく必要がある.特にイタチ科では,首
光バンドを形成する.ローダミン B の確認は剖検を必
囲と頭囲の差が小さい体型のため,首輪をきつめに装着
要としないが,再捕獲が最低限必要であり,使用可能時
することが事故の原因となりうる.このように首輪の適
期が組織の成長時期に限定されるという制約がある
用が困難な種では,首輪の替わりにハーネスの使用など
(Nietfeld et al., 1994).
も考慮されるべきだろう.
4)組織の切除
素材に関しては,革製の首輪を使用した場合,装着後
組織の一部を切除して個体識別する方法は小型哺乳類
3年程度で首輪の表面が劣化して首輪の色の違いが識別
では一般的である.Kawamichi and Liu(1990)は,カ
できなくなることが研究者へのアンケートで報告されて
ンスーナキウサギ(Ochotona curzoniae)の耳に切れ込み
いる.また,タヌキでは飾りつきの首輪が装着後3日で
を入れることで,130個体の識別が可能であると報告し
118
淺野 玄 ほか
ている.ネズミ類では,標準的標識法として指切りがお
さらにその有効性等については,Elbin and Burger(1994)
こなわれてきたが(村上,1971),個体の生存率に影響
の総説が参考になる.
することも報告されている(Pavone and Boonstra, 1985).
7)その他の標識
食肉類でも,コヨーテ(Canis latrans)で指切りによる
①ベイトマーキング
個体識別の報告(Andelt and Gipson, 1980)はあるが,
アナグマやタヌキなど,ため糞の習性がある動物で
一般的ではない.日本では,環境省の第9次鳥獣保護事
は,識別用のチューブ(たとえば色のついたビーズ)な
業計画における「鳥獣の保護を図るための事業を実施す
どを仕込んだ餌を食べさせることで,餌を食べた個体の
るための基本的な指針」による捕獲許可申請手続きにお
動きを追跡することが可能となる(Kruuk, 1978).餌場
いて,指切りによる標識法が原則として許可されない
を利用する個体の行動圏の把握,また餌場を共有する個
(竹内,2004)
.組織の切除は,研究者へのアンケート
体間関係の分析の際に役立つ.標識回収に労力を要する
において,ニホンイタチでは,創傷等で耳介の一部が切
が,対象個体に与える影響は比較的少ない.タヌキでの
れている個体がいるため,標識による切除との区別自体
適用例は Ikeda et al.(1979)の研究が,アナグマでの適
が困難との報告がある.
用例は Delahay et al.(2000)の総説が参考となる.
5)毛刈り
②化学的標識
毛刈りは,遠目からも確認できる標識法としてすぐれ
テトラサイクリン系抗生物質は,化学的標識として最
ているが,換毛のため,短期間(基本的に1シーズン)
も一般的に用いられる.経口もしくは静注で投与するこ
しか利用することができない.マングースでは,尾部の
とにより,骨や歯の中に蓄積され,紫外線下で特異的な
毛刈りにより,上部・中部・下部の3カ所まで識別でき
蛍光を発する.狂犬病ワクチンを野外に散布してその
た と の 報 告 が 研 究 者 へ の ア ン ケ ー ト か ら 得 ら れ た.
受容率を測定するなど,多くの地域で適用例がある
Stewart and Macdonald
(1997)は,アナグマの粗毛(guard
(Steck et al., 1982; Bachmann et al., 1990; Brochier et
hair)の先端を刈り,毛色のコントラストを明瞭にする
ことで,80頭以上を識別した.ただし毛刈りを行うにあ
al., 1991; Garshelis and Visser, 1997).血清中の経口標識
としては,C メチル 3 ヒドロキシ 2,4,6 トリヨードベ
たっては,耐寒性への影響を考えて冬季は特に注意を払
ンゼンプロパン酸が用いられている(Follmann et al.,
う必要がある.
1987; Trewhella et al., 1991; Fleming, 1997)
.この標識は
6)マイクロチップ
マイクロチップは,比較的安全かつ恒久的な個体識別
血漿中の蛋白結合ヨウ素の上昇により識別できる.同時
に利用可能な標識として C メチル 3 ヒドロキシ 2,4,6
用標識として,近年適用事例が急速に増加しつつある.
トリヨードベンゼンプロパン酸,C n プロピル 3 ヒド
直径2mm,長さ10 mm 程の円柱状のマイクロチップを
ロキシ 2,4,6 トリヨードベンゼンプロパン酸がキツネで
専用の注射器で注入して使用する.マイクロチップ自体
適用されているが(Jones et al., 1997),液体クロマトグ
には電源がなく,固有の周波数の電磁波に反応し,専用
ラフィーによる分析が必要である.糞中に検出される経
のリーダーから識別番号を取り出すことができる.その
口標識としては,ペンタクロロベンゼンが6ヶ月にわた
ため,半永久的に利用できる.研究者へのアンケートで
りコヨーテで検出可能であり,1,2,4,5 テトラクロロベ
は,ツキノワグマ(Ursus thibetanus),テン,ニホンイ
ンゼンが複合的標識として同時に利用できる(Kimball
タチなどで適用例が報告されており,背側頚部の皮下に
et al., 1996; Johnston et al., 1997).ただし,検出にはガ
挿入されていた.特に耳標の適用が困難なイタチ類では
スクロマトグラフィーと電子捕獲型検出器を必要とする
有 効 な 手 法 と 考 え ら れ る. ク ロ ア シ イ タ チ(Mustela
ため,手間とコストがかかる難点がある.また,これら
nigripes)の例では,マイクロチップを挿入した20頭中11
の標識では個体識別できないことに注意する必要があ
頭を再捕獲し,そのうち,10頭で読み込みが可能であ
る.海外では,上記の他に放射性同位体を標識に用いた
り,挿入による感染等は認められなかった(Fagerstone
研究例もあるが(Kruuk, 1989),日本では「放射性同位
and Johns, 1987)
.識別に失敗した1例は,闘争による
元素等による放射線障害の防止に関する法律」の規制を
ケガの際,マイクロチップが破損したと推定された.ア
受けるため,野外での使用は一般的ではない.
ナグマへの適用例では,チップを埋め込んで再捕獲した
174例中12例(6.9%)でマイクロチップを認識できず,
3 4. 生体情報測定のための器具の装着
入れ墨法(100%)と比べて信頼性が劣っていた(Rogers
体温や心拍数などの生理的データを測定したり,個体
et al., 2002).他の野生動物や動物園動物への適用事例,
の位置情報を捕捉したりするために各種インプラントを
食肉目の生体捕獲調査上の諸注意
119
体内に埋め込む場合がある.日本では報告例が少ない
となって免疫機能が抑制され,狂犬病が発症した可能性
が, ア ナ グ マ に お い て 温 度 計 測 ロ ガ ー(18.2 g, 3 cm
を指摘し,論争となった(Creel, 1992; Macdonald, 1992)
.
diameter; StowAway TidbiT, Onset Computer Corp., USA)
器具の装着や生体サンプルの採集などで対象個体に何ら
を皮下および腹腔にインプラントした試みが報告されて
かの処置を施す場合,無菌的に処置することが望ましい
いる(田中,2002).背中側の皮下内に挿入した2頭
が,野外では困難な場合が多い.一方,厳密な無菌的処
(メス成獣1,オス1歳獣1)では行動面での影響は認
置のために専用の設備を導入することは,かえって処置
められなかったものの,6ヶ月後に脱落したケースを確
時間を長引かせるなどの新たなストレス要因ともなりう
認し,脱落しなかった場合でも化膿などの障害が認めら
る.非侵襲的な方法を選択するか,次善策としてイソジ
れた.一方,腹腔内(臍下1∼5cm の部位)に挿入し
ンなどによる創面の消毒や抗生物質の投与などの処置が
た5頭(オス成獣1,オス幼獣2,メス幼獣1)では,
望まれる.
部位の状態および行動面での影響は認められず,再捕獲
4)安楽殺
した個体では癒着の問題なく回収できた.またミンクで
安楽殺は,捕獲,保定,不動化,あるいは外科的処置
は,電波発信器をインプラントした事例が報告されてい
を伴う研究において,不測の事態として避けることので
る.
きない作業となる可能性がある(Friend et al., 1994).
日本では,
「化学的又は物理的方法により,できる限り
3 5. 装着時の注意
処分動物に苦痛を与えない方法を用いて当該動物を意識
器具の装着などで対象個体の体に処置を施す場合,痛
の喪失状態にし,心機能又は肺機能を非可逆的に停止さ
みの軽減,創傷や疾病の予防といった福祉的配慮を行う
せる方法によるほか,社会的に容認されている通常の方
ことが必要である.また,不測の事態に対する最終的な
法によること」と定められている(動物の処分方法に関
対処としてやむを得ず安楽殺を実施しなければならない
する指針,平成7年,総理府告示第40号)
.また,環境
ことがあり,その準備も必要である.
省の第9次鳥獣保護事業計画における「鳥獣の保護を図
1)痛みに対する配慮
るための事業を実施するための基本的な指針」でも,
痛みを軽減する処置としては,局所麻酔が有効であ
「捕獲個体を致死させる場合は,できる限り苦痛を与え
る.局所麻酔を施したとしても,たとえば耳標装着時に
ない方法によるよう指導するものとする」とされている
は,対象動物が痛みを感じることを完全に制御出来ない
(http://www.env.go.jp/nature/yasei/choju_ho/04.pdf). 侵 襲
場合がある.そのため,不動化状態にあるように見えて
的方法を施す場合には,研究者は安楽殺の具体的な方法
も一時的に強い反応を引き起こすケースが認められる.
について精通し,その準備をしておく必要がある.安楽
ヒグマなどの大型獣を扱っている場合には,保定員の事
殺の方法については米国獣医学会(AVMA)の安楽死に
故にもつながるおそれがあり,注意が必要である.
関 す る 研 究 会 報 告 が 参 考 に な る(AVMA Panel on
2)創傷への配慮
Euthanasia, 2001).日本語での解説は鈴木・黒澤(2005
器具の装着に伴う処置個体の創傷を防ぐには,調査者
a–h)を参照すべきである.
が装着作業に熟達する必要がある.初心者の場合,経験
者のアドバイスを仰いだり,同様の作業をおこなってい
3 6. アフターケア
る研究者の調査に参加して経験を積むなど,事前の準備
1)影響評価
を怠らないことが重要である.
対象個体への影響を最小限に留める器具の装着法の開
3)疾病への配慮
発や処置方法の改良を進める上で,器具の装着や処置が
器具を装着するために個体を捕獲・不動化すること
及ぼす影響の評価は欠かせない.しかしながら,そもそ
は,対象に少なからぬストレスを与えることになる.こ
も何らかの測定値を得るために器具や処置を行うのであ
の様なストレスが免疫力の低下を引き起こし,日和見感
り,これらが未処置の個体から測定値を得ること自体が
染を引き起こす危険性がある.Burrows(1992)は,絶
困難である.そのため,限られた手段により得られた未
滅に瀕したリカオン(Lycaon pictus)において,狂犬病
処置個体における測定値を対照群とせざるを得ず,正確
のワクチン投与および首輪装着を実施した群れが全滅す
な評価を得ることは難しい.我が国ではこのような器具
る一方で,ワクチン投与および首輪装着を実施しなかっ
の装着や処置による影響を評価する試みがほとんどなさ
た群れの生存は確認された事例から,研究者による捕獲
れていないが,世界的に見ても,限られた種でわずかに
や首輪装着などのハンドリングによるストレスが引き金
試みられているにすぎない(Murray and Fuller, 2000).
120
淺野 玄 ほか
表 2. 主な消毒薬とその用途
首輪型電波発信器の装着が対象動物に及ぼす影響につい
て,リカオン(Creel et al., 1997)
,キットギツネ(Vulpes
macrotis)
(Cypher, 1997),アナグマ(Tuyttens et al., 2002)
用途
消毒薬
器具の消毒
2%グルタルアルデヒド(ステリハイド)
0.2%両性石鹸
0.1%逆性石鹸
1−0.5%次亜塩素酸ソーダ
2−5%クレゾール石鹸
0.1−1.5%グルコン酸クロルヘキシジン(ヒビ
テン)
エチレンオキサイドガス(易熱性器材)
0.05−0.1%塩化ベンザルコニウム(オスバン)
70%アルコール
50−70%イソプロピノール
0.1%ポビドンヨード(イソジン)
0.2%ニトロフラゾン
0.2%両性石鹸(テゴー,ハイパール)
2%ヨードチンキ
などで報告されている.日本でも,国内に見られる食肉
類を対象としたデータの蓄積が望まれる.
2)装着器材の除去
調査終了時あるいは装着器材による外傷などによる障
害が認められた場合には,装着器材を除去することが望
ましい.再捕獲が可能な場合には,装着器材の除去を調
査計画に盛り込んでおくことが望まれる.ただし,再捕
手指の消毒
獲自体が対象個体にとってかなりのストレスとなること
も予想されるため,実際には,器材装着によるストレス
と捕獲によるストレスとを比較して,再捕獲を行うかど
うか判断することになる.再捕獲を必要としない機材の
除去法として,自然脱落式器材の利用が挙げられる.ヒ
グマやツキノワグマの首輪型電波発信器の場合,首輪の
清水(2002)を改変
一部を劣化しやすい木綿製や皮革製に改造し,一定期間
後に脱落するように工夫されている.また,耳標の項で
述べたように,装着標識の脱落は頻繁に発生する.その
ため,比較的恒久的に残る入れ墨やマイクロチップなど
的な対策としては,マスクや手袋の着用が有効である.
他の標識を組み合わせることにより,装着器材の脱落率
表2に主な消毒薬とその用途を示す.器具に対しては腐
を推定するなどして(Diefenbach and Alt, 1998),器材
蝕性のない消毒薬を選択し,糞尿等の有機物による汚染
の有効期間を調べることは将来の改善に役立つ.
がある場合には消毒の効果が低下するため,熱湯や蒸気
での洗浄後に消毒薬を撒布する.対象動物に接触した器
4. 衛生上の注意
具や衣服は,作業終了後に洗浄することを心がけ,可能
であれば加熱するなどの滅菌処置を行うことが望まし
近年,野生動物における疾病が人間に対する健康面に
い.
とどまらず,生物多様性保全の観点からも重要視される
2)対象個体の衛生管理
ようになった(Daszak et al., 2000)
.Taylor et al.(2001)
食肉類で流行し,近年問題となっている疾病の多くが
が人の感染源となる1,415種の病原体のうち868種(61%)
家畜由来であるとの指摘がある(Funk et al., 2001).野
が動物由来であり,新興感染症と分類された175種のう
外,特に複数の調査地で研究をする研究者は,調査用具
ち132種(75%)が動物由来であると報告しているよう
や靴などの消毒や使い分けを行い,生息地や対象動物に
に,野生動物は新興・再興感染症の温床であり,捕獲作
疾病を蔓延させない配慮も必要である.研究者による疾
業等で直接動物に接触する機会には,細心の注意を払う
病の導入と蔓延の原因としては,感染源の播種,感染動
必要がある.また,保全生物学的な視点においては,隔
物の不適切な放獣(天敵動物の導入,救護個体の放野,
離された小集団では,疾病の侵入が絶滅の危機を引き起
使役犬の同行なども含む)
,不活化が不十分なワクチン
こ す 事 例 も 報 告 さ れ(Funk et al., 2001; Deem et al.,
等の投与,生き餌の使用などがある.
2001),人間と野生動物,もしくは野生動物間の接触に
注意を払う必要がある.
4 2. 人獣共通感染症
ヒトとヒト以外の脊椎動物の双方が罹患する感染症を
4 1. 作業員および対象個体の衛生管理
人獣(人畜)共通感染症と呼ぶが,我が国には100種ほ
1)作業員の衛生管理
どが存在し(高橋ほか,2000),その約半数は公衆衛生
野生動物由来感染症の防除には,対象動物がどのよう
対策を必要とする(橋本,1998).高橋ほか(2000),
な疾病に感染している可能性があるのかを理解して対応
Williams and Barker(2001),Samuel et al.(2001),清水
する必要がある.詳細については次項で述べるが,一般
ほか(2002)などの過去の報告をもとに作成した国内で
食肉目の生体捕獲調査上の諸注意
121
表 3. 国内で発生報告がある食肉類と関連する主な人獣共通感染症
疾病名
病原体
おもな伝播様式
ウイルス性
狂犬病
細菌性
Rabies virus
咬傷
Leptospira interrogans
Borrelia burgdorferi
Bartonella henselae
Brucella canis
Salmonella Typhimurium
Escherichia coli
Pasteurella multocida
Yersinia enterocolitica
接触,経皮,経口
ダニ媒介
ひっかき傷,咬傷
経皮,咬傷
接触,経口
接触,経口
経皮,咬傷
経口
Coxiella burnetii
ダニ媒介
Dermatophytes
Sporothrix schenckii
経皮
経皮,経気道
Toxoplasma gondii
Cryptosporidium parvum
経口
経口
イヌ回虫,ネコ回虫,アライグマ回虫など
Echinococcus multilocularis
Trichinella spiralis
Dirofilaria immitis
経口
経口
経口
経口
Sarcoptes scabiei
接触
レプトスピラ症
ライム病
猫ひっかき病
ブルセラ病
サルモネラ症
大腸菌症
パスツレラ症
エルシニア症
リケッチア性
コクシエラ症(Q 熱)
真菌性
皮膚糸状菌症
クリプトコックス症
原虫性
トキソプラズマ症
クリプトスポロジウム症
蠕虫性
回虫症
エキノコックス症
トリヒナ症
糸状虫症
その他
疥癬症
高橋ほか(2000)を改変
発生報告がある食肉類と関連する主な人獣共通感染症を
犬病流行地から多種多様な動物が輸入されており,注意
表3に示す.これらのうち,その一部について食肉類研
を払う必要はある(川道,2001).なお,日本では2000
究者を対象としたアンケート結果で触れられていた疾病
年から狂犬病予防法による検疫の対象動物として,イヌ
を中心にその詳細に触れる.その他の疾病の詳細につい
のほかにネコ,アライグマ,キツネおよびスカンクが追
ては感染症に関するテキスト,国立感染症研究所感染症
加されるなど,野生動物の輸入による狂犬病の国内侵入
情 報 セ ン タ ー(http://idsc.nih.go.jp/disease/zoonosis.html)
阻止が強化されている.
や独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構動物衛
②重症急性呼吸器症候群(SARS)
生研究所(http://niah.naro.affrc.go.jp/index-j.html)のホー
SARS コロナウイルスを病原体とする新しい感染症で
ムページなども参照してもらいたい.
(Fouchier et al., 2003; Kuiken et al., 2003),風邪に似た
1)ウイルス病
症状を引き起こし,多くの場合肺炎を併発する.日本で
①狂犬病
の発生は確認されていない.基本的に,咳やくしゃみに
狂犬病ウイルスを保有する野生動物(主として食肉類
よって発症したヒトからヒトへ飛沫感染すると考えられ
や翼手類)に咬まれたり,引っ掻かれたりして感染し,
ている.ハクビシン(Paguma larvata)やタヌキをはじ
発症した場合は重篤な神経症状を伴ってほぼ100%死亡
めいくつかの食肉目を含む野生動物から,ヒトに感染し
する.狂犬病の感染源動物は,発展途上国ではイヌ,欧
た SARS コロナウイルスに非常に類似したウイルスが検
州(アカギツネなど)や米国(アライグマやシマスカン
出され宿主候補として報告されている.しかし,自然宿
クなど)では野生動物である(源,2005).日本では
主であるのか,ヒトへの感染にどのような役割を果たし
1957年以降は発症が確認されていないものの,近年,狂
ているのかを含め,現時点では検討中であり科学的に確
122
淺野 玄 ほか
認されていない.ウイルスは,エタノール(アルコー
染に注意する必要がある(Faine, 1982).野生動物を扱
ル)や漂白剤等の消毒で死滅し,現在のところ患者が触
う際にはゴム手袋やマスクの着用を心がけ,動物を扱っ
れた物品を通じて SARS がヒトへ感染する危険は小さい
た器具の消毒に心がけるとよい.不活化ワクチンも市販
と考えられている.最新の情報は,国立感染症研究所感
されている.
染症情報センターや厚生労働省の HP などを参照しても
④ライム病
らいたい.
スピロヘータの1種である Borrelia burgdorferi の感染
2)細菌病
によって引き起こされる.日本では,ヒトへの病原性を
①猫ひっかき病
持 つ B. garinii,B. afzelii の 2 種 が シ ュ ル ツ ェ マ ダ ニ
文字通りネコによる掻傷や咬傷を受けて発症する.こ
(Ixodes persulcatus)によって,日本固有でヒトへは非病
れは,Bartonella henselae という細菌による感染症で,
原性の3種,B. japonica がヤマトマダニ(I. ovatus)に,
受傷部の丘疹,水疱,発熱などを発症しても通常は2∼
B. tanukii がタヌキマダニ(I. tanuki)に,B. turdi が I.
3週間で自然治癒することが多いが,5∼ 10%の割合で
turdus によってそれぞれ媒介される(増澤,1997;Wang
パリノー症候群(耳周囲のリンパ節炎,眼球運動障害
et al., 1999).主に小型哺乳類がレゼルボア(保有体)
等)や脳炎を発症することがあるので注意が必要である
となるが,これらのダニに寄生されるキツネやイヌなど
(丸山ら,2003)
.保菌ネコのほとんどは無症状である
もレゼルボアになりうる(磯貝・磯貝,1992).そのた
が,国内では平均すると8.8%,高い地域では24%のネ
め,捕獲個体を取り扱う際には,ダニに寄生されないよ
コで抗体陽性が確認されている
(Maruyama et al., 2003)
.
うに注意する必要がある.症状は,ダニの咬傷を受けて
積極的な予防法はまだなく,疫学についても不明な点が
数日から数週間後に咬傷部分に皮膚の紅斑が出現し,関
多い.野生のネコ科動物での抗体陽性率もネコ並みに高
節炎,神経麻痺,慢性萎縮性皮膚炎を起こす(高橋ほ
く(Riley et al., 2004)
,ネコ科以外にも野生のコヨーテ
か,2000).
で近縁の B. vinsonii subsp. berkhoffii の感染が確認され
3)リケッチア病
ており(Chang et al., 1999),ネコ以外の野生食肉目で
①コクシエラ症(Q 熱)
も注意が必要である.保定作業時には皮膚の露出を避
ダニと哺乳類,鳥類を宿主に感染環がある.日本の家
け,厚手の手袋や衣服を着用して掻傷や咬傷を負わない
畜,イヌ,ネコ,野生動物にも広く抗体陽性例が認めら
ように心がける.
れる.ヒトは保菌動物の乾燥排泄物から主に吸入感染す
②サルモネラ症
ると考えられている(小川,2003).保菌ダニの咬傷に
脊椎動物に広く宿主域をもつ.カメ類での保菌率が高
よる感染は稀である.ヒトでの急性症状は,発熱,頭
いが,イヌにおける保菌率も20%といわれている(高橋
痛,食欲不振,嘔吐,呼吸器症状などで,およそ12日間
ほか,2000).ヒトでは腹痛,下痢,発熱などの胃腸炎
で回復する.慢性の経過をたどり心内膜炎になると死亡
症状を呈するが,臨床症状だけでは他の胃腸疾患と区別
率が高くなる(Marrie, 1990).
がつかない.ヒトにおける感染予防は食中毒予防と同様
4)原虫病
で,動物や関連するものに触れた後に手を良く洗うこと
①クリプトスポリジウム症
が有効である(高橋ほか,2000;神山,2004).
Cryptosporidium 属の原虫(これまでに15種確認され
③レプトスピラ症
ている)が食肉類を含む多くの哺乳動物の消化管に寄生
全哺乳類に感染すると考えられている.多くは野生動
し(C. parvum だけで155種)
,下痢などの症状を引き起
物で不顕性感染をおこし,これらの排泄物に汚染された
こす(Fayer, 2004).糞中に排出されたオーシスト(接
水などに接触した際に偶発的に経口または経皮的にヒト
合子嚢:原虫の有性生殖期に形成され,野外でも強い耐
も感染して発症する.ヒトでは,発熱,消化器疾患,腎
性を示す感染型)を経口的に摂取することで感染する.
疾患など症状がさまざまで,誤診されることも多い.レ
ヒトでは1994年および1996年に水道水を介した集団感染
プトスピラの主な病原巣はラット,マウス,イヌ,ウ
が発生しているが(黒木ほか,1996;山崎ほか,1997),
シ,ブタ,および野外では野ネズミなどであり,これら
遺伝子型の解析から動物由来の感染ではないと考えられ
の動物では病期活動期または無症候の保菌状態となった
ている(遠藤,2001;山本,2001).ただし,動物由来
際に排泄物とともにレプトスピラを排泄する.本菌は湿
の種からも人体感染例は確認されている(Fayer et al.,
潤な環境(河川,沼沢,湿地)でよく増殖するため,野
2000; Fayer, 2004).感染源となるオーシストは薬剤耐
生動物の尿や排泄物で汚染されているような湿地では感
性が強いので,実用的な感染対策としては使用器具等の
食肉目の生体捕獲調査上の諸注意
123
熱湯消毒と十分な乾燥の併用が推奨される.
コックスに感染した個体に接触していることを認識すべ
②トキソプラズマ症
きである.エキノコックスの虫卵は高温もしくは極低温
Toxoplasma gondii という原虫の1種による感染症であ
で死滅するため,キツネの死体を処理する前処理とし
る.イエネコをはじめとするネコ科動物を終宿主とし
て,加熱(70℃で5分以上)もしくはディープフリー
[イリオモテヤマネコ(Prionailurus bengalensis iriomotensis)
ザー(−80℃)での一定期間(1週間程度)の冷凍等を
では40 ∼ 50%の抗体陽性率(望月,1994)
,ネコでは
行う必要がある.少なくとも北海道では,調査補助員を
9.8%(0 ∼ 20%)の抗体陽性率(Maruyama et al., 2003)],
含め,キツネを扱う人達には,感染の危険性があること
タヌキでも感染例がある(根上ほか,1998).これら終
を周知徹底させなければならない.付着した虫卵の誤飲
宿主の糞中に排出されるオーシストを誤って摂食するこ
を防ぐため,マスク・手袋の装着,合羽等の着用を心が
とでヒトにも感染する.健康な一般成人では支障ない
け,キツネに触った器材や衣服は加熱等の処理(20%程
が,免疫力の低下した人や胎児では病原性が高いため,
度の塩素系漂白剤への浸潤や熱湯処理)を行うべきであ
特に妊婦では注意する必要がある.感染を防ぐには石鹸
る.エキノコックス症に関する情報については,山下・
での手洗い,生肉を処理した道具の石鹸による洗浄など
神谷(1997),奥(2000),松尾(2000)に詳しい.最新
が効果的である.1∼2分間55 ∼ 60℃に加熱すること
の情報については,北海道大学の寄生虫学教室のホーム
でオーシストは死滅する(Dubey, 1998).熱湯消毒も効
ページ(http://www.hokudai.ac.jp/veteri/organization/dis-cont/
果的である.
parasitol/echinococcus.html)やエキノコックス情報ホッ
5)蠕虫病
ト ラ イ ン(http://homepage3.nifty.com/iwaki-t/echino/index.
①回虫症
html)が参考になる.
本来イヌやネコに寄生する Toxocara 属回虫は,ヒト
③旋毛虫(トリヒナ)症
に感染すると,幼虫が体内を移行して肝,肺,脳などの
Trichinella 属の線虫(ここでは旋毛虫と総称)が引き
臓器や眼球に障害を引き起こすことが知られている(幼
起こす寄生虫症で,主に野生動物の生食によって発症す
虫移行症).イヌやネコに限らず,日本の野生食肉類で
る.旋毛虫は,宿主間の肉食によって生活環が維持され
は,キツネにイヌ回虫(Toxocara canis)が,タヌキには
ており,幼虫が宿主の筋肉中で被嚢して長期間生存す
タヌキ回虫(Toxocara tanuki)が高率で感染している
る.日本の食肉目では,ツキノワグマ,タヌキ,キツネ
(森嶋ほか,1999;Sato et al., 1999)
.また,アライグ
での寄生が確認されている(Yiman et al., 2001).感染
マにはアライグマ回虫(Baylisascaris procyonis)が寄生
動物の生食や不完全な加熱調理肉の摂食を防ぐことが重
している可能性がある(宮下,1993).アライグマ回虫
要である.
症はヒトに重篤な症状を起こすことが知られているの
6)その他
で,トキソカラ症以上に注意が必要である(高橋ほか,
①疥癬
2000).日本では,ヒトでのアライグマ回虫症の発症は
疥癬はヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei)が表皮の角質層
ないが,飼育下のカイウサギ(Oryctolagus cuniculus)で
に寄生し,皮膚に病変を引き起こす疾病で,主に接触に
確認されている(Sato et al., 2002, 2003).宿主となる
よって感染を拡大する感染症の1つである.ヒゼンダニ
食肉類の糞中に排出された回虫卵をヒトが誤って経口的
は宿主域が広く,105種(10目,26科)の宿主が確認さ
に摂取することで感染する.そのため,対象個体に接触
れている(Bornstein et al., 2001).形態的変異が大きい
したり(体表中に虫卵が付着している場合がある),糞
ため,動物種ごとに変種として扱われるが,異種間でも
を扱ったりする際には石鹸を用いた手洗いや使用器具の
感 染 す る こ と が あ る の で 注 意 が 必 要 で あ る( 内 川,
熱湯消毒を心がける必要がある.
2001).治療法については,大滝(1998,2001)に詳し
②エキノコックス症
い.近年,中型食肉目の動物を中心に重度の疥癬症が流
エキノコックス症とは,サナダムシの仲間である多包
行しており(野生動物保護管理事務所,1998),宿主個
条虫(エキノコックス Echinococcus multilocularis)の幼
体数の減少を招いていることが報告されている(Shibata
虫がヒトの体内に寄生することで引き起こされる寄生虫
and Kawamichi, 1999; 塚 田 ほ か,1999; 高 橋・ 浦 口,
病である.ヒトは,キツネの糞中に産出された虫卵を誤
2001).そのため,発症個体の治療を行うべきか否か,
飲することで感染する.北海道におけるキツネのエキノ
被食動物や競合種への影響(Dannel and Hörnfeld, 1987;
コックス感染率は多くの場合50%以上であり,研究や調
Lindström et al., 1994; Selås, 1998)など,野生動物の個
査のために複数のキツネを扱う場合,ほぼ確実にエキノ
体群管理を行う上で配慮すべき疾病の1つである.
124
淺野 玄 ほか
②破傷風
②イヌパルボウイルス感染症
本症は人獣共通感染症ではないが,野外調査をする研
本病は,1970年代後半に出現したイヌの代表的なエ
究者が注意を要する重要な疾病の1つである.主に土壌
マージングウイルス病で,ジステンパーとともにイヌの
中に芽胞を形成して存在している破傷風菌(Clostridium
臨床上最も重要な疾患である(池田・土屋,2005).イ
tetani)が刺傷などにより深部に侵入すると,嫌気的に増
ヌパルボウイルス(Canine parvovirus)は主にイヌ科動
殖して毒素を産生する.野生動物やヒトが感染すると筋
物に感染し,血便を伴う消化器症状と白血球減少を引き
肉の硬直やけいれんを起こす(田淵,2002).潜伏期
起こし,感染力は極めて高い.免疫を有していないイヌ
(外傷から発症までの日数)は通常4日∼2週間で,潜
は感染発病し,若齢であるほど死亡率は高くなる.野生
伏期が短いほど予後不良とされる.7日以内に発病した
のイヌ科動物,日本でもタヌキ等に感染し,多くの場合
場合は50%が死亡する.野外調査を行う場合には,感染
は近在の飼い犬からウイルスが伝播している(清水ほ
予防対策としてワクチン(トキソイド)接種をすること
か,2002)
.国内では弱毒化生ワクチン製剤が予防に用
が望ましい.
いられている.
③ネコ汎白血球減少症
4 3. 食肉類固有の疾病
ネコパルボウイルスの1種,ネコ汎白血球減少ウイル
食肉類固有の疾病の流行が,野生食肉目個体群の激減
ス(Feline panleukopenia virus)が原因で,ほとんどの
に 関 与 し て い る こ と が 報 告 さ れ て い る(Funk et al.,
ネコ科動物,ジャコウネコ科,イタチ科,アライグマ科
2001).特にイヌやネコなどの家畜由来の疾病が大きな
の動物に感染する.白血球の減少や下痢を引き起こし,
影響を及ぼすことがあることに注意を払う必要がある
感染個体の糞への直接・間接的接触を通じて伝播する.
(Funk et al., 2001).調査者が不用意に対象動物および
若齢ほど顕性傾向が強く重症で死亡率も高い.イリオモ
その生息環境に疾病を持ち込むことのないよう,さらに
テヤマネコにおいても臨床症状はないものの,抗体陽性
は感染個体の不用意な移動による感染拡大を招かないよ
個体が確認されている(Fushuku et al., 2001).飼いネ
う心がける必要がある.以下に代表的な疾患を紹介する
コから野生動物への感染拡大に注意を払う必要がある.
が,詳細は,清水ほか(2002)などの獣医感染症学のテ
不活化あるいは弱毒化生ワクチン製剤が予防に汎用され
キストを参照するとよい.
ている.
①イヌジステンパー
④ネコ免疫不全ウイルス感染症
原 因 と な る イ ヌ ジ ス テ ン パ ー ウ イ ル ス(Canine
ネコ免疫不全ウイルス(Feline immunodeficiency virus)
distemper virus)は伝染力が強く,致死性も極めて高い.
による疾患で,ヒトのエイズ同様,後天的な免疫不全を
直接接触,感染動物からの分泌・排泄物との接触,飛沫
ネコに引き起こす(石田,2001).ネコ同志の喧嘩など
の吸入によって感染する.1950年代にワクチンが開発さ
により血液の接触を通じて感染するため,メスよりもオ
れて以来,イヌでの発症は比較的よく防除されてきた
スの感染率が2倍以上高い(清水ほか,2002).この疾
が,近年世界各地で野生動物での流行が確認されており
病は,発症すると数ヶ月以内に確実に死に至るが,発症
( 甲 斐,1994;Roelke-Parker et al., 1996; Cleaveland et
しない無症状キャリア期が2∼4年もしくはそれ以上と
al., 2000),保全上の大きな問題を引き起こしている
かなり長く,しかもかなりの割合で存在する(石田,
(Williams, 2001).我が国でも,1991年に東京都西多摩
2001).日本では,イエネコで5.2 ∼ 10.3%程度の抗体陽
地区で収容もしくは回収された野生タヌキのうち,14頭
性率が確認されているほか(Furuya et al., 1990; Ishida
でジステンパーの発症が確認され,西多摩地区でのタヌ
et al., 1990; Maruyama et al., 2003),1996年にはツシマ
キの致死率は70%以上ではないかと推測された
(Machida
ヤマネコでも感染が確認され,保全上の極めて大きな問
et al., 1993).ハクビシンでもジステンパーの発生が確
題となっている(伊澤・土肥,1997;阿久沢,2002)
.
認されている(Machida et al., 1992)
.タヌキで確認さ
また,絶滅危惧個体群であるイリオモテヤマネコの生息
れたジステンパーは,イヌで発生した株と遺伝的に近似
地周辺のノネコでも感染が確認されており,保全を考え
しており,イヌから感染した可能性がある(大橋・甲
る上で大きな懸念材料となっている(佐々木,1997).
斐,2000;Ohashi et al., 2001).流行地域における動物
現在のところ有効なワクチンは開発されていない.
の移動や施設への収容の際,この疾病の潜伏期間(1週
⑤イヌ糸状虫症
間∼1ヶ月程度)を考え,細心の注意を払う必要があ
イヌをはじめとしてイヌ科動物を固有宿主とするイヌ
る.
糸状虫 Dirofilaria immitis(フィラリアとも呼ばれる)が
食肉目の生体捕獲調査上の諸注意
125
原因である.終宿主を吸血した蚊によって媒介される.
大させるだろう.実際,斃死個体と異なりそのほとんど
駆虫薬が普及していない場合,イヌでの感染率は高く,
が健康な状態である捕獲個体の病原体や抗体の保有状況
このような地域の近隣では野生動物での感染率も高いと
や一般生理状態や遺伝的特性の把握は,健全な個体群維
考えられる(中垣・鈴木,1994).蚊に刺されないよう
持のための基本情報となる.
な対策を施すことが肝要である.高感染率地域からの個
これらの状況を踏まえ,主として生態学を修めた研究
体の移動にも注意する必要がある.
者が獣医師と共同で研究を行うことは今後多くなってい
くと思われる.獣医師はサンプル提供を受けるだけでな
5. 獣医師の役割と協同
く,現場に出て個体と向き合い周辺環境を体感すること
で結果を的確にフィードバックすることができるだろ
5 1. 獣医師の役割
う.生態学研究者は獣医師の視点を得て,より安全で衛
本連載の岸本・金子(2005)の章および本章の前節で
生的に対象動物や周辺環境と接することができるだろ
紹介されてきたさまざまな処置および対処においては,
う.それを積み重ねていくことで野外調査が洗練され,
獣医師との協同が必要あるいは有効なものが多い.
その精度が上がっていくと考える.
獣医師は獣医師法第1条の1に示されるように,その
任は飼育動物の診療と保健衛生の指導に重点が置かれて
5 2. 野生動物に取り組む獣医学的機関
いるが,近年の獣医師自身が自覚する,あるいは非獣医
獣医学的な知見や取り組みに関する情報を収集した
師から期待される責務は野生動物の分野に広がってきて
り,共同研究者を求める場合に有用な情報源を列挙す
いる.すなわち,1995年に設立された日本野生動物医学
る.ただし,鳥類や霊長類など食肉目と異なる動物およ
会の設立企画書(日本野生動物医学会,1995)には「こ
び救護に特化した団体は除いた.
れからの獣医学も野生動物個体あるいは個体群保護,さ
1)学会および研究会
らには生物の多様性保護のために学問的貢献を行うべき
日本野生動物医学会
であると考える」とあり,7th International Theriological
http://www.jjzwm.com/
Congress(現 International Mammalogical Congress)にお
日本獣医学会
いても,アメリカでは当時すでに獣医学は保全医学
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsvs/
(Conservation Medicine)へと発展してきていることが
日本獣医師会
報告されている(岸本,1997b).保全医学は人の健康,
http://nichiju.lin.go.jp/index.html
動物の健康および生態系の健康に関わる領域を連携させ
人と動物の共通感染症研究会
た学問領域であると定義されており(Tabor, 2002),こ
http://www.hdkkk.net/
れまで単独に研究されていた健康や医療に関係する研究
日本動物園水族館協会
領域を結びつけ,生物多様性維持のための生態学的健康
http://www.jazga.or.jp/index.html
(ecological health)を目的とする実学と理解することが
Wildlife Disease Association
できる(村田,私信).日本野生動物医学会学術・教育
http://www.wildlifedisease.org/
委員会では野生動物医学教育における野生動物管理学
American Association of Wildlife Veterinarians
コース実習シラバスを提唱し(日本野生動物医学会学
http://www.aawv.net/
術・教育委員会,2004),野生動物に取り組む獣医師の
American Association of Zoo Veterinarians
育成を目指している.
http://www.aazv.org/
一方,近年重症急性呼吸器症候群(SARS)など前述
European Association of Zoo and Wildlife Veterinarians
した人獣共通感染症における野生動物の関与が注目さ
http://www.eazwv.org/php/
れ,また遺伝解析による調査手法の確立や新知見の発
Canadian Association of Zoo and Wildlife Veterinarians
見,解剖学と行動学の融合など,野生動物を取り扱う際
http://www.cazwv.org/
の注意点や観察・採材内容は重要かつ多岐にわたってき
2)国内の獣医学的研究・調査機関(獣医大学そのもの
ている.調査者が自らそれら全般に留意し取り組むこと
は除く)
はもちろんであるが,感染症学,公衆衛生学,生理学,
国立感染症研究所 感染症情報センター
解剖組織学等を習得している獣医師と共同で調査を行う
http://idsc.nih.go.jp/index-j.html
ことは衛生上の危険性を低減し,調査結果の多様性を増
動物衛生研究所
126
淺野 玄 ほか
http://niah.naro.affrc.go.jp/index-j.html
引 用 文 献
岐阜大学 COE /日本野生動物医学会野生動物感染症セ
阿部 永.1991.形態計測と標本製作.(草野忠治・森 樊
ンター
( 岐 阜 大 獣 医 病 理 学 教 室 HP http://www.gifu-u.ac.jp/
~vetpatho/)
岐阜大学 COE 野生動物救護センター
http://coe-gifu.academy.ne.jp/frames/f_centre.html
酪農学園大学野生動物医学センター
http://www.rakuno.ac.jp/dep19/wildanimal/wildanimal.htm
須・石橋信義・藤巻裕蔵,編:応用動物学実験法)pp. 10
17.全国農村教育協会,東京.
阿部 永・石井信夫・伊藤徹魯・金子之史・前田喜四雄・三浦
慎悟・米田政明.2005.日本の哺乳類〔改訂版〕.東海大
学出版会,東京,206 pp.
阿部慎太郎.1995.水晶体重量による奄美大島産マングースの
齢査定.チリモス,69: 34 43.
阿久沢正夫.2002.ヤマネコと FIV(ネコ免疫不全ウイルス)
感染症∼貴重な野生動物を絶滅に追い込む.
(日本生態学
謝 辞
本連載の掲載にあたっては哺乳類科学編集長の山田文
雄先生,編集委員の木村順平先生,佐々木基樹先生,横
畑泰志先生,永田純子先生,岡田あゆみ先生をはじめ諸
先生方に多大なご配慮をいただきました.また,食肉目
メーリングリスト参加者からは草稿段階から貴重なご意
見を賜りました.なお,原稿の種別の情報は,我々の活
動趣旨を理解して,アンケートやメーリングリストによ
会,編:外来種ハンドブック)pp. 222 223.地人書館,東
京.
Andelt, W. F. and P. S. Gipson.1980.Toe-clipping coyotes for
individual identification. J. Wildl. Manage., 44: 293 294.
Asano, M., Y. Matoba, T. Ikeda, M. Suzuki, M. Asakawa and
N. Ohtaishi.2003.Reproductive characteristics of the feral
raccoon (Procyon lotor) in Hokkaido, Japan. J. Vet. Med. Sci.,
65: 369 373.
AVMA Panel on Euthanasia.2001.2000 Report of the AVMA
Panel on Euthanasia. J. Am. Vet. Med. Assoc., 218: 669–696.
Bachmann, P., R. N. Bramwell, S. J. Fraser, D. A. Gilmore, D. H.
る聞き取りにご協力いただいた下記研究者からの回答を
Johnston, K. F. Lawson, C. D. Maclnnes, F. O. Matejka, H. E.
基に作成しました.深くお礼申し上げます.掲載にあ
Miles, M. A. Pedde and D. R. Voight.1990.Wild carnivore
たっては,文部科学省21世紀 COE プログラムによる研
acceptance of baits for delivery of liquid rabies vaccine. J. Wildl.
究助成(E 1)および科学研究費補助金(No. 16658120)
の補助を受けた.
計測項目に関するアンケート回答者(50音順)
アナグマ:金子弥生氏,田中 浩氏
アライグマ:大西 敬氏,牧野 敬氏,的場洋平氏
イイズナ:阿部 永氏
キツネ:阿部 永氏,浦口宏二氏,神田栄次氏,中園
敏之氏
タヌキ:大西 敬氏,神田栄次氏,東 英生氏,福江
佑子氏,谷地森秀二氏
チョウセンイタチ:荒井秋晴氏,佐々木 浩氏
ツキノワグマ:田中純平氏
Dis., 26: 486 501.
Boersen, M. R., J. D. Clark and T. L. King.2003.Estimating black
bear population density and genetic diversity at Tensas River,
Louisiana using microsatellite DNA makers. Wildl. Soc. Bull.,
31: 197 207.
Bookhout, T. A.1994.Research and Management Techniques for
Wildlife and Habitats. 5th ed. The Wildlife Society, Bethesda,
Maryland. 邦訳:ブックホート編(日本野生動物医学会・
野生動物保護学会監修,鈴木正嗣編訳,2001)野生動物の
研究と管理技術,文永堂出版,東京,926 pp.
Bornstein, S., T. Mörner, and W. M. Samuel.2001.Sarcoptes scabiei
and sarcoptic mange. In (Samuel, W. M., M. J. Pybus and A. A.
Kocan, eds.) Parasitic Diseases of Wild Mammals, 2nd ed. pp.
107 119. Iowa State Press, Iowa.
Brochier, B., M. P. Kieny, F. Costy, P. Coppens, B. Bauduin, J. P.
テン:大西 敬氏,鑪 雅哉氏,中村俊彦氏
Lecocq, B. Languet, G. Chappuis, P. Desmettre, K. Afiademanyo,
クロテン:三好和貴氏
R. Libois and P. P. Pastoret.1991.Large-scale eradication of
ニホンイタチ:上杉哲雄氏,浦口宏二氏,藤井 猛
氏,谷地森秀二氏
ノイヌ:神田栄次氏,中田 篤氏
ノネコ:山根明弘氏
ヒグマ:岡田秀明氏,釣賀一二三氏
マングース:阿部慎太郎氏,小倉 剛氏,竹内正彦
氏,山田文雄氏
ミンク:浦口宏二氏
rabies using recombinant vaccinia-rabies vaccine. Nature, 354:
520 522.
Burrows, R.1992.Rabies in wild dogs. Nature, 359: 277.
Chang, C., K. Yamamoto, B. B. Chomel, R. W. Kasten, D. C.
Simpson, C. R. Smith, and V. L. Kramer.1999.Seroepidemiology of Bartonella vinsonii subsp. Berkhoffii infection in
California coyotes, 1994 1998. Emerg. Infect. Dis., 5: 711 715.
Cleaveland, S., M. G. J. Appel, W. S. K. Chalmers, C. Chillingworth,
M. Kaare, and C. Dye.2000.Serological and demographic
evidence for domestic dogs as a source of canine distemper virus
食肉目の生体捕獲調査上の諸注意
infection for Serengeti wildlife. Vet. Microbiol., 72: 217 227.
Creel, S.1992.Cause of wild dog deaths. Nature, 360: 633.
Creel, S., N. M. Creel and S. L. Monfort.1997.Radiocollaring and
stress hormones in African wild dogs. Conserv. Biol., 11: 544
548.
Cypher, B. L.1997.Effects of radiocollars on San Joaquin kit
foxes. J. Wildl. Manage., 61: 1412 1423.
Dannel, K. and B. Hörnfeld.1987.Numerical responses by
populations of red fox and mountain hare during an outbreak of
127
Res., 24: 335 346.
Follmann, E. H., P. J. Savarie, D. G. Ritter and G. M. Baer.1987.
Plasma marking of arctic foxes with iophenoxic acid. J. Wildl.
Dis., 3: 709 712.
Fouchier, R. A. M., T. Kuiken, M. Schutten, G. V. Amerongen, G. J. J.
V. Doornum, B. G. V. D. Hoogen, M. Peiris, W. Lim, K. Stohrs
and A. D. M. E. Osterhaus.2003.Koch’s postulates fulfilled
for SARS virus. Nature, 423: 240.
Friend, M., D. E. Toweill, R. L. Brownell, Jr., V. F. Nettles, D. S.
Daszak, P., A. A. Cunningham and A. D. Hyatt.2000.Emerging
Davis and W. J. Foreyt.1994.Guidelines for proper care and
use of wildlife in field research. In (Bookhout, T. A., ed.)
infectious disease of wildlife: threats to biodiversity and human
Research and Management Techniques for Wildlife and Habitats.
health. Science, 287: 443 449.
pp. 96 105. The Wildlife Society, Maryland. 邦訳:フレンド,
sarcoptic mange. Oecologia, 73: 533 536.
Deem, S. L., W. B. Karesh and W. Weisman.2001.Putting theory
M. / D. E. トゥエイル/ R. L. ブラウネル,ジュニア/ V. F.
into practice: wildlife health in conservation. Conserv. Biol., 15:
ネトルズ/ D. S. デイビス/ W. J. フォレイト共著.野外研
1224 1233.
究における野生動物の適切なケアと利用のためのガイドラ
Delahay, R. J., J. A. Brown, P. J. Mallinson, P. D. Spyvee, D. Handoll,
L. M. Rogers and C. L. Cheeeseman.2000.The use of marked
bait in studies of the territorial organization of the European
badger (Meles meles). Mammal Rev., 30: 73 87.
イン.(日本野生動物医学会・野生動物保護学会監修,鈴
木正嗣編訳,2001)野生動物の研究と管理技術,pp. 115
125.文永堂出版,東京.
Funk, S. M., C. V. Fiorello, S. Cleaveland and M. E. Gompper.
ear tag loss in black bears. J. Wildl. Manage., 62: 1292 1300.
2001.The role of disease in carnivore ecology and conservation.
In (Gittleman, J. L., S. M. Funk, D. Macdonald and R. K. Wayne,
Dimmick, R. W. and M. R. Pelton.1994.Criteria of sex and age. In
eds.) Carnivore Conservation. pp. 443 466. Cambridge Univer-
Diefenbach, D. R. and G. L. Alt.1998.Modeling and evaluation of
(Bookhout, T. A., ed.) Research and Management Techniques for
sity Press, Cambridge.
Wildlife and Habitats. pp. 169–214. The Wildlife Society,
Fushuku, S., N. Yasuda, M. Matsumoto, M. Izawa, T. Doi, N.
Maryland. 邦訳:ディミック,R. M. / M. R. ペルトン共
Sakaguchi and M. Akuzawa.2001.Reference values and
著.性と齢の基準.
(日本野生動物医学会・野生動物保護
limited serological survey for the Iriomote cat in Japan. J. Wildl.
学会監修,鈴木正嗣編訳,2001,野生動物の研究と管理技
術)pp. 205 256.文永堂出版,東京.
Dubey, J. P.1998.Toxoplasma gondii oocyst survival under defined
temperatures. J. Parasitol., 84: 862 865.
Elbin, S. B. and J. Burger.1994.Implantable microchips for
individual identification in wild and captive populations. Wildl.
Soc. Bull., 22: 677 683.
Dis., 37: 653 656.
Furuya, T., Y. Kawaguchi, T. Miyazawa, Y. Fujikawa, Y. Tohya, M.
Azetaka, E. Takahashi and T. Mikami.1990.Existence of
feline immunodeficiency virus infection in Japanese cat population since 1968. Jpn. J. Vet. Sci., 52: 891 893.
Gardner, S. L.1996.Field parasitology techniques for use with
mammals. In (Wilson, D. E., F. R. Cole, J. D. Nichols, R. Rudran
遠藤卓郎.2001.クリプトスポリジウム症.IDWR, 3: 8 10.
and M. S. Foster, eds.) Measuring and Monitoring Biological
Englund, J.1970.Some aspects of reproduction and mortality rates
in Swedish foxes (Vulpes vulpes) 1961 1963 and 1966 1969.
Diversity Standard Methods for Mammals. pp. 291 198.
Viltrevy, 8: 1 82.
Fagerstone, K. A. and B. E. Johns.1987.Transponders as permanent identification markers for domestic ferrets, black-footed
ferrets, and other wildlife. J. Wildl. Manage., 51: 294 297.
Faine, S.1982.Guidelines for the control of Leptospirosis. World
Health Organization, New York.邦訳:フェイン,S.著編
(吉井善作監訳,1987)レプトスピラ症防疫指針,内田老
鶴圃,東京,237 pp.
Fayer, R.2004.Cryptosporidium: a water-borne zoonotic parasite.
Vet. Parasitol., 126: 37–56.
Fayer, R., U. Morgan and S. J. Upton.2000.Epidemiology of
Cryptosporidium: transmission, detection and identification. Int.
J. Parasitol., 30: 1305 1322.
Fisher, P.1999.Review of using Rhodamine B as a marker for
wildlife studies. Wildl. Soc. Bull., 27: 318 329.
Smithsonian Institution Press, Washigton DC and London.
Garshelis, D. L. and L. G. Visser.1997.Enumerating megapopulations of wild bears with an ingested biomarker. J. Wildl. Manage.,
61: 466 480.
八谷 昇・大泰司紀之.1994.歯の組織標本による年齢査定
法.(八谷 昇・大泰司紀之,共著:骨格標本作製法)pp.
97 122.北海道大学図書刊行会,札幌.
Harder, J. D. and R. L. Kirkpatrick.1994.Physiological methods in
wildlife research. In (Bookhout, T. A., ed.) Research and
Management Techniques for Wildlife and Habitats. pp. 275 306.
The Wildlife Society, Maryland. 邦訳:ハーダー,J. D. / R. L.
カークパトリック共著.野生動物研究の生理学的手法.
(日本野生動物医学会・野生動物保護学会監修,鈴木正嗣
編訳,2001)野生動物の研究と管理技術,pp. 325 357.文
永堂出版,東京.
橋本信夫.1998.人と家畜の共通伝染病.
(高島郁夫・橋本信
Fleming, P. J. S.1997.Uptake of baits by red foxes (Vulpes vulpes):
夫・品川邦汎・品川森一・中村政幸・井関基弘・内田郁
implications for rabies contingency planning in Australia. Wildl.
夫・ 山 内 一 也・ 近 藤 房 生・ 豊 福 肇・ 山 野 淳 一・ 丸 山
128
淺野 玄 ほか
務,共著:人と動物の共通伝染病)pp. 13 22.酪農総合研究
所,札幌.
Helle, E. and K. Kauhala.1995.Reproduction in the raccoon dog in
Finland. J. Mammal., 76: 1036 1046.
Honma, M., S. Iwaki, A. Kast and H. Kreuzer.1986.Experiences
with the identification of small rodents. Exp. Anim., 35: 347
352.
Hwang, T. H., Larivière, S. and F. Messier.2005.Evaluating body
condition of striped skunks using non-invasive morphometric
indices and bioelectrical impedance analysis. Wildl. Soc. Bull.,
33: 195 203.
Ikeda, H., K. Eguchi, and Y. Ono.1979.Home range utilization of
a raccoon dog, Nyctereutes procyonoides viverrinus, TEMMINCK,
in a small islet in Western Kyushu. Jpn. J. Ecol., 29: 35 48.
池田靖弘・土屋耕太郎.2005.犬のウイルス性腸炎.
(望月雅
美,監修:犬,猫および愛玩小動物のウイルス病)pp. 47
62,学窓社,東京.
今井壮一・神谷正男・平詔 亨・茅根士郎編著.1997.獣医寄
生虫検査マニュアル.文永堂出版,東京,306 pp.
今泉吉典.1960.原色日本哺乳類図鑑.保育社,東京,196 pp.
石井俊夫・上野 計・板垣 博・大林正士編著.1981.家畜寄
生虫学 実習・実験.文永堂出版,東京,316 pp.
Kawamichi, T. and J. Liu.1990.Capturing and marking pikas
(Ochotona) with systematic ear clipping patterns. J. Mammal.
Soc. Japan, 15: 39 43.
Kimball, B. A., L. A. Windberg, C. A. Furcolow, M. Roetto and J. J.
Johnston.1996.Two new oral chemical biomarkers for
coyotes. J. Wildl. Dis., 32: 505 511.
King, C. M.1989.The Natural History of Weasels and Stoats.
Christpher Helm, London.
岸本真弓.1997a.飼育下のタヌキにおける体重,皮下脂肪厚
および摂食量の季節変動.哺乳類科学,36:165 174.
岸本真弓.1997b.第7回国際獣類学会に参加して.Zoo and
Wildlife News, 5: 8 11.
岸本真弓・金子弥生.2005.連載「食肉目の研究に関わる調査
技術事例集」食肉目調査にかかわる保定技術.哺乳類科
学,45:237 250.
Kruuk, H.1978.Spatial organization and territorial behaviour of
the European badger Meles meles. J. Zool. Lond., 184: 1 19.
Kruuk, H.1989.The Social Badger: Ecology and Behaviour of a
Group-living Carnivore (Meles meles). Oxford University Press,
Oxford, 155 pp.
Kuiken, T., R. A. M. Fouchier, M. Schutten, G. F. Rimmelzwaan, G. V.
Amerongen, D. V. Riel, J. D. Laman, T. D. Jong, G. V. Doornum,
Ishida, T., A. Taniguchi, T. Kanai, Y. Kataoka, K. Aimi, K. Kariya, T.
W. Lim, A. E. Ling, P. K. S. Chan, J. S. Tam, M. C. Zambon, R.
Washizu and I. Tomoda.1990.Retrospective serosurvey for
Gopal, C. Drosten, S. V. D. Werf, N. Escriou, J. C. Manuguerra,
feline immunodeficiency virus infection in Japanese cats. Jpn. J.
K. Stohr, J. S. M. Peiris and A. D. M. E. Osterhaus.2003.
Vet. Sci., 52: 453 454.
Newly discovered coronavirus as the primary cause of severe
石田卓夫.2001.猫のエイズ― FIV 感染をめぐって.集英社,
東京,198 pp.
磯貝恵美子・磯貝 浩.1992.ライム病.獣医畜産新報,45:
856 860.
伊澤雅子・土肥昭夫.1997.イエネコからのウイルス感染 ツ
シマヤマネコは生き残れるか.科学,67:705 707.
acute respiratory syndrome. Lancet, 362: 263 270.
黒木俊郎・渡辺祐子・浅井良夫・山井志朗・遠藤卓郎・宇仁茂
彦・木俣 勲・井関基弘.1996.神奈川県で集団発生した
水系感染 Cryptosporidium 症.感染症学雑誌,70:132 140.
Lehner, P. N.1996.Handbook of Ethological Methods. 2nd ed.
Cambridge University Press, Cambridge, 672 pp.
Johnston, J. J., C. A. Furcolow and B. A. Kimball.1997.Iden-
Lindner, E. and O. Fuelling.2002.Marking methods in small
tification of metabolites of pentachlorobenzene and 1,2,4,5-tetra-
mammals: ear-tattoo as an alternative to toe-clipping. J. Zool.
chlorobenzene in coyote feces: development of physiological
markers for wildlife damage control. Psestic. Sci., 50: 249 257.
Lond., 256: 159 163.
Lindström, E. R., A. Henrik, P. Angelstam, G. Cederlund, B.
Jones, A., J. Woods, C. Cheeseman, A. Nadian and R. Page.1997.
Hörnfeldt, L. Jäderberg, P. A. Lemnell, B. Martinsson, K. Sköld
Two new iodinated compounds as serum markers in foxes. J.
and J. E. Swenson.1994.Disease reveals predator: sarcoptic
Wildl. Manage., 61: 241 245.
mange, red fox predation, and prey populations. Ecology, 75:
甲斐智恵子.1994.野生動物のジステンパー感染症.獣医畜産
新報,47:25 28.
神山恒夫.2004.これだけは知っておきたい人獣共通感染症.
地人書館,東京,160 pp.
金子弥生・福江佑子・金沢文吾・藤井 猛・中村俊彦.2003.
連載「食肉目の研究に関わる調査技術事例集」企画趣旨.
哺乳類科学,43:141 143.
金子弥生・岸本真弓.2004.連載「食肉目の研究に関わる調査
技術事例集」食肉目調査にかかわる捕獲技術.哺乳類科
学,44:173 188.
川口 敏.2006.香川県産 Mustela 属2種の事故死体の同定と
分布.哺乳類科学,46:35 39.
1042 1049.
Macdonald, D. W.1992.Cause of wild dog deaths. Nature, 360:
633 634.
Machida, N., N. Izumisawa, T. Nakamura and K. Kiryu.1992.
Canine distemper virus infection in a masked palm civet (Paguma
larvata). J. Comp. Path., 107: 439 443.
Machida, N., K. Kiryu, K. Oh-ishi, E. Kanda, N. Izumisawa and
T. Nakamura.1993.Pathology and epidemiology of canine
distemper in raccoon dogs (Nyctereutes procyonoides). J. Comp.
Path., 108: 383 392.
Marrie, T. J.1990.Q Fever, the Disease. CRC Press, Boca Raton,
255 pp.
川道美枝子.2001.動物検疫の現状.(川道美枝子・岩槻邦
Martin, R. E., R. H. Pine and A. F. DeBlase.2001.A Manual
男・堂本暁子,編:移入・外来・侵入種 生物多様性を脅
of Mammalogy with Keys to Families of the World. 3rd ed.
かすもの)pp. 242 249.築地書籍,東京.
McGraw-Hill Higher Education, Dubuque, 333 pp.
食肉目の生体捕獲調査上の諸注意
129
丸山総一,壁谷英則,見上 彪.2003.人と動物の Bartonella
本野生動物医学会・野生動物保護学会監修,鈴木正嗣編
感染症―猫ひっかき病を中心として―.日本獣医師会雑
訳,2001)野生動物の研究と管理技術,pp. 169 204.文永
誌,56:209 217.
堂出版,東京.
Maruyama, S., H. Kabeya, R. Nakao, S. Tanaka, T. Sakai, X. Xuan, Y.
Katsube and T. Mikami.2003.Seroprevalence of Bartonella
日本哺乳類学会種名・標本検討委員会.2001.哺乳類標本の取
henselae, Toxoplasma gondii, FIV and FeLV infections in
日本野生動物医学会.1995.新学会設立企画書.Zoo and Wild-
domestic cats in Japan. Microbiol. Immunol., 47: 147 153.
増澤俊幸.1997.日本のライム病実態の解明と病原体ボレリア
の性状解析.薬学雑誌,117:319 338.
松 尾 加 代 子.2000. エ キ ノ コ ッ ク ス 症 の 現 状. 畜 産 技 術,
544:2 6.
源 宣之.2005.狂犬病について.モダンメディア別冊,57:
160 166.
宮下 実.1993.アライグマ蛔虫 Baylisascaris procyonis の幼虫
移行症に関する研究.生活衛生,37:137 151.
Mizukami, R. N., M. Goto, S. Izumiyama, M. Yoh, N. Ogura and H.
Hayashi.2005.Temporal diet changes recorded by stable
isotopes in Asiatic black bear (Ursus thibetanus) hair. Isotopes
Environ, Health Stud., 41: 87 94.
望月雅美.1994.イリオモテヤマネコ群とウイルス性伝染病.
獣医畜産新報,47:41 45.
森 嶋 康 之・ 塚 田 英 晴・ 野 中 成 晃・ 奥 祐 三 郎・ 神 谷 正 男.
1999.札幌市周辺のキツネの寄生虫感染状況,特に多包条
虫について.北海道家畜寄生虫研究会報,15: 8.
り扱いに関するガイドライン.哺乳類科学,41:215 233.
life News, 1: 2 6.
日本野生動物医学会学術・教育委員会.2004.野生動物医学教
育における理想的な実習シラバス.日本野生動物医学会
誌,9:57 63.
野澤 謙.1996.ネコの毛並み.裳華堂,東京,157 pp.
小川基彦.2003.Q 熱.(神山恒夫・山田章雄,編:動物由来
感染症)pp. 151 155.真興貿易(株)医書出版部,東京.
Ohhashi, H., K. Iwatsuki, K. Murata, M. Miyashita, Y. Hukumoto,
K. Nakamura, C. Wakasa, E. Takahashi and C. Kai.2001.
Properties of a new CDV isolate from a raccoon dog (Nyctereutes
procyonoides viverrinus) in Japan. Vet. Rec., 148: 150.
小野憲一郎・太田亨二・鈴木直義 編著.1998.獣医臨床病理
学.近代出版,東京,439 pp.
大橋謙司郎・甲斐智恵子.2000.日本の野生動物におけるモー
ビリウイルス感染症.獣医畜産新報,53:834 838.
奥 祐三郎.2000.体内で増殖・転移する寄生虫“エキノコッ
クス”の拡がり.J. Modern Vet. Med., 48:5 17.
Ortolani, A. and T. M. Caro.1996.The adaptive significance of
counts to estimate litter size and pregnancy rate in Lynx. J. Wildl.
color patterns in carnivores: phylogenetic tests of classic
hypotheses. In (Gittleman, J. L., ed.) Carnivore Behavior,
Manage., 60: 430 440.
Ecology, and Evolution. pp. 132 188. Cornell University Press,
Mowat, G., S. Boutitn and B. G. Slough.1996.Using placental scar
Mowat, G. and C. Strobeck.2000.Estimating population size of
grizzly bears using hair capture, DNA profiling, and markrecapture analysis. J. Wildl. Manage., 64: 183 193.
村 上 興 正.1971. 野 そ 調 査 の 技 術(1) 基 礎 編. 植 物 防 疫,
25: 20 24.
村上隆広・佐伯 緑.2003.連載「食肉目の研究に関わる調査
技術事例集」野生動物研究者の心構え―研究を始める前か
ら,終えるまで―.哺乳類科学,43:145 151.
Murray, D. L. and M. R. Fuller.2000.A critical review of the
effects of marking on the biology of vertebrates. In (Boitani, L.
and T. K. Fuller, eds.) Research Techniques in Animal Ecology.
pp. 15 64. Columbia University Press, New York.
Nagorsen, D. W. and R. L. Peterson.1980.Mammal Collectors’
Manual: A Guide for Collecting, Documenting, and Preparing
Ithaca.
大泰司紀之.1990.歯の年輪による哺乳類の年齢査定.哺乳類
科学,30:19 21.
大滝倫子.1998.疥癬の流行.衛生動物,49:15 26.
大滝倫子.2001.疥癬治療薬の現況.病原微生物検出情報,
22:244 245.
Pavone, L. V. and R. Boonstra.1985.The effects of toe clipping on
the survival of the meadow vole (Microtis pennsylvanicus). Can.
J. Zool., 63: 499 501.
Poole, K. G., G. Mowat and D. A. Fear.2001.DNA-based population estimate for grizzly bears Ursus arctos in northeastern
British Columbia, Canada. Wildl. Biol., 7: 105 115.
Posillico, M. and R. Lorenzini.2000.Abruzzo brown bear DNA
fingerprinting. International Bear News, 9: 20.
Mammal Specimens for Scientific Research. Life Sciences
Riley, S. P. D., J. Foley and B. Chomel.2004.Exposure to feline
Miscellaneous Publications. Royal Ontario Museum, Toronto,
and canine pathogens in bobcats and gray foxes in urban and
79 pp.
中垣和英・鈴木隆史.1994.タヌキ個体群動態に与えるフィラ
リア感染の影響.獣医畜産新報,47:29 32.
根上泰子・酒井健夫・野上貞雄・海保郁男・加藤千晴.1998.
都市近郊地域に生息するタヌキおよびシカの抗体保有状
況.感染症学雑誌,72:331 334.
rural zones of a national park in California. J. Wildl. Dis., 40:
11 22.
Riney, T.1955.Evaluating condition of free ranging red deer
(Cervus elaphus), with special reference to New Zealand. N. Z. J.
Sci. Technol. Sect. B, 36: 429 463.
Roelke-Parker, M. E., L. Munson, C. Packer, R. Kock, S. Cleaveland,
Nietfeld, M. T., M. W. Barrett and N. Silvy.1994.Wildlife Marking
Techniques. In (Bookhout, T. A., ed.) Research and Management
M. Carpenter, S. J. O’Brien, A. Pospischil, R. Hofmann-
Techniques for Wildlife and Habitats. pp. 140 168. The Wildlife
Society, Maryland. 邦訳:ネットフェルド,M. T. / M. W.
Machange, B. A. Summers and M. J. G. Appel.1996.A canine
distemper virus epidemic in Serengeti lions (Panthera leo).
バーネット/ N. シルビー共著.野生動物の標識方法.(日
Nature, 379: 441 445.
Lehmann, H. Lutz, G. L. M. Mwamengele, M. N. Mgasa, G. A.
130
淺野 玄 ほか
Rogers, L. M., T. D. Hounsome and C. L. Cheeseman.2002.An
evaluation of passive integrated transponders (PITs) as a means
of permanently marking badgers (Meles meles). Mammal Rev.,
32: 63 65.
研究報告2000(VII).日本獣医師会雑誌,58:719 721.
鈴木 真・星澤 努.2005h.米国獣医学会:安楽死に関する
研究報告2000(VIII).日本獣医師会雑誌,58:788 790.
Tabor,G. M.2002.Defining conservation medicine. In (Aquirre,
Samuel, W. M., M. J. Pybus and A. A. Koca, eds.2001.Parasitic
A. A., R. S. Ostfield, G. M. Tabor, C. House and M. Pearl, eds.)
Diseases of Wild Mammals. 2nd ed. Iowa State Press, Iowa,
Conservation Medicine: Ecological Health in Practice. pp. 8 16.
559 pp.
佐々木 浩.1996.ニホンイタチとチョウセンイタチ.
(川道
武男,編:日本動物大百科第1巻哺乳類Ⅰ)pp. 128 130,
平凡社,東京.
佐々木 浩.1997.ネコ科.(日本哺乳類学会,編:レッド
データ日本の哺乳類)pp. 108 111,文一総合出版,東京.
Oxford University Press, New York.
田淵 清.2002.グラム陽性芽胞形成桿菌.
(見上 彪,編:
獣医微生物学)pp. 105 111.文永堂出版,東京.
高橋英司・森田千春・平井克哉・丸山 務・松本芳嗣・今井壮
一・長谷川篤彦・木村 哲.2000.人畜共通感染症.学窓
社,東京,202 pp.
Sato, H., T. Inaba, Y. Ihama and H. Kamiya.1999.Parasitological
高橋健一・浦口宏二.2001.わが国における野生動物の疥癬:
survey on wild carnivora in North-Western Tohoku, Japan. J. Vet.
北海道のキツネでの流行について.病原微生物検出情報,
Med. Sci., 61: 1023 1026.
22:246 247.
Sato, H., H. Furuoka and H. Kamiya.2002.First outbreak of
Baylisascaris procyonis larva migrans in rabbits in Japan.
Parasitol. Int., 51: 105 108.
竹内正彦.2004.連載「食肉目の研究に関わる調査技術事例
集」食肉目研究における法的手続き.哺乳類科学,44:
59 73.
Sato, H., H. Kamiya and H. Furuoka.2003.Epidemiological
aspects of the first outbreak of Baylisascaris procyonis larva
田名部雄一・和 秀雄・藤巻裕蔵・米田政明.1995.野生動物
migrans in rabbits in Japan. J. Vet. Med. Sci., 65: 453 457.
田中 浩.2002.ニホンアナグマの生態と社会システム.山口
Sato, Y.2002.An ecological study on human-bear conflicts in
Urahoro, Hokkaido. Ph. D.Thesis. The University of Tokyo,
91 pp.
Siglin, R. J.1966.Marking mule deer with an automatic tagging
device. J. Wildl. Manage., 30: 631 633.
Selås, V.1998.Does food competition from red fox (Vulpes vulpes)
influence the breeding density of goshawk (Accipiter gentilis)?
Evidence from natural experiment. J. Zool. Lond., 246: 325 335.
Shibata, F. and T. Kawamichi.1999.Decline of raccoon dog
populations resulting from sarcoptic mange epizootics.
Mammalia, 63: 281 290.
学概論.朝倉出版,東京,220 pp.
大学博士論文,117 pp.
Taylor, L. H., S. M. Latham and M. E. Woolhouse.2001.Risk
factors for human disease emergence. Phil. Trans. R. Soc. Lond.
B 356: 983 989.
栃木県立博物館.1986.鳥類と哺乳類の計測マニュアル(I).
栃木県立博物館,宇都宮,78 pp.
Trewhella, W. J., S. Harris, G. C. Smith and A. K. Nadian.1991.A
field trial evaluating bait uptake by an urban fox (Vulpes vulpes)
population. J. Appl. Ecol., 28: 454 466.
坪田敏男.1988.エゾヒグマの繁殖生理に関する研究.北海道
大学博士論文,90 pp.
清水悠紀臣・明石博臣・小沼 操・菅野康則・澤田拓士・辻本
塚 田 英 晴・ 岡 田 秀 明・ 山 中 正 実・ 野 中 成 晃・ 奥 祐 三 郎.
元 編著.2002.動物の感染症.近代出版,東京,535 pp.
1999.知床半島のキタキツネにおける疥癬の発生と個体数
Steck, F., A. Wandeler, P. Bichsel, S. Capt and L. Schneider.1982.
Oral immunisation of foxes against rabies. Zbl. Vet. Med. B, 29:
372 396.
Stewart, P. D. and D. W. Macdonald.1997.Age, sex, condition as
の減少について.哺乳類科学,39:247 256.
Tuyttens, F. A. M., D. W. Macdonald and A. W. Roddam.2002.
Effects of radio-collars on European badgers (Meles meles). J.
Zool., Lond., 257: 37 42.
predictors of moult and the efficacy of a novel fur-clip technique
for individual marking of the European badger (Meles meles). J.
内川公人.2001.ヒゼンダニの生物学.病原微生物検出情報,
Zool., Lond., 241: 543 550.
Verme, L. J.1962.An automatic tagging device for deer. J. Wildl.
鈴木 真・星澤 努.2005a.米国獣医学会:安楽死に関する
研究報告2000(I).日本獣医師会雑誌,58:301 304.
鈴木 真・星澤 努.2005b.米国獣医学会:安楽死に関する
研究報告2000(II).日本獣医師会雑誌,58:357 359.
鈴木 真・星澤 努.2005c.米国獣医学会:安楽死に関する
研究報告2000(III).日本獣医師会雑誌,58:443 446.
鈴木 真・星澤 努.2005d.米国獣医学会:安楽死に関する
研究報告2000(IV).日本獣医師会雑誌,58:521 524.
鈴木 真・星澤 努.2005e.米国獣医学会:安楽死に関する
研究報告2000(V).日本獣医師会雑誌,58:581 583.
鈴木 真・星澤 努.2005f.米国獣医学会:安楽死に関する
研究報告2000(VI).日本獣医師会雑誌,58:649 651.
鈴木 真・星澤 努.2005g.米国獣医学会:安楽死に関する
22:246 247.
Manage., 26: 387 392.
Wang, G., A. V. Dam, I. Schwartz and J. Dankert.1999.Molecular
typing of Borrelia burgdorferi sensu lato: taxonomic, epidemiological and clinical implications. Clin. Microbiol. Rev., 12: 633
653.
Williams, E. S.2001.Canine distemper. In (Williams, E. S. and I. K.
Barker, eds.) Infectious Diseases of Wild Mammal. 3rd ed.
pp. 50 59. Manson Publishing Ltd., London.
Williams, E. S. and I. K. Barker, eds.2001.Infectious Diseases of
Wild Mammals. 3rd ed. Manson Publishing Ltd., London,
558 pp.
Woods, J. G., D. Paetkau, D. Lewis, B. N. McLellan, M. Proctor and C.
Storobeck.1999.Genetic tagging of free-ranging black and
食肉目の生体捕獲調査上の諸注意
brown bears. Wildl. Soc. Bull., 27: 616 627.
山本徳栄.2001.水道水汚染によるクリプトスポリジウム症の
集団発生.埼玉医科大学雑誌,28: 77 84.
山下次郎・神谷正男.1997.増補版エキノコックス―その正体
と対策.北海道大学図書刊行会,札幌,274 pp.
山崎 勉・佐々木望・高橋茂樹・里見 昭・橋北義一・沖 深
美・ 板 橋 明・ 平 山 謙 二・ 堀 栄 太 郎.1997.Cryptosporidium parvum による集団下痢症患児の臨床像―医療機
関受診例について―.感染症学雑誌,71:1031 1036.
野生動物保護管理事務所.1998.里地性の獣類に関する緊急疫
131
学調査報告書.野生動物保護管理事務所,神奈川,64 pp.
野生動物救護ハンドブック編集委員会.1996.野生動物救護ハ
ンドブック.文永堂出版,東京,326 pp.
Yiman, A. E., Y. Oku, N. Nonaka, H. Sakai, Y. Morishima, K. Matsuo,
G. L. Rasa, E. Pozio, K. Yagi and M. Kamiya.2001.First
report of Trichinella native in red fox (Vulpes vulpes schrencki)
from Otaru City, Hokkaido, Japan. Parasitol. Int., 50: 121 127.
米田政明・有本 誠・戸田光彦・平田聡子.1996.野生動物調
査法ハンドブック―分布・生態・生息環境―哺乳類・鳥類
編.自然環境研究センター,東京,194 pp.
Makoto Asano, Hideharu Tsukada and Mayumi Kishimoto: The care for measuring, sampling, marking and sanitary requirement in capturing
wild carnivores
著 者:淺野 玄,〒501 1193 岐阜市柳戸1 1 岐阜大学応用生物科学部獣医学講座野生動物医学分野
E [email protected]
塚田英晴,〒329 2793 栃木県那須塩原市千本松768 (独)畜産草地研究所
岸本真弓,〒651 1303 兵庫県神戸市北区藤原台南町4 10 6 (株)野生動物保護管理事務所関西分室