留学生リポート

留学生リポート
カナダ/ヨーク大学
石井大河(経済学部 3 年)
派遣期間 08.2012-04.2013
トロントについて
カナダ最大の都市で経済の中心地。北米でも第四の都市。金融街には大手金融機関が立ち並ぶ。チャ
イナタウンやリトルイタリーなどのエスニックタウンが点在している。移民都市であり、アジア系、イ
ンド系や中東系が多い。ダウンタウンにはトロント大学、北部のノースヨークにはヨーク大学がある。
ダウンタウンは治安も良く、東京と同じように生活できると感じた。当然だが冬は寒く、12 月から 4 月
まで雪が降る。この期間は外出に向かない。アメリカ国境と近く、ニューヨークまで長距離バスで手軽
に行ける。
ヨーク大学について
トロント市北部のノースヨークにあり、ダウンタウンまではバスと地下鉄で 1
時間程かかる。広大なキャンパスとカナダ 3 番目の学生数を誇る。リベラル・ア
ーツ教育が主で内容は多岐に渡り、留学生も自由に履修することができる。学生
は中国系、インド系、ユダヤ系が多い。併設のシューリック・ビジネススクール
は MBA のランキングでトップ 10 に入ることもあり、学生の質も高い。
授業について
一週間に 3~5 コマ取るのが一般的です。1 コマは 180 分(+チュートリアル)で構
成されている物が多い。秋学期が 9 月から 12 月で、冬学期が 1 月から 4 月です。
長期休暇は年末にある 2 週間の冬休みだけでした。
私は、秋学期は Administrative Studies を、冬学期は Political Science をメイ
ンに履修しました。前者はグループワークとプレゼンテーションがメインで、内
容はもちろんですがメンバーとの折衝に苦労しました。後者はライティングがメ
インで、結構な量のエッセイが課され大変でした。結果的にはマーケティングと
中国政治に力を入れて勉強していたように思う。
生活について
キャンパス内の寮に住んでおりダウンタウンが近くないため、基本的にはキ
ャンパス内で過ごしました。キャンパス内にコンビニと飲食店があるので、最
低限の生活は送れます。バスで 10 分ほど移動すると、スーパーやショッピン
グモールにアクセスできます。図書館は広いが、学生も多いのでいつも混んで
いる。
寮はいくつかあり、家賃によってクオリティが大きく異なる。2 人でシャワ
ールームを共有するものと、一人部屋のものがある。
世界中から学生が集まっているので、寮の住民も多種多様でした。もちろん
楽しいこともあるのですが、文化的差異から生じるトラブル等もありますので、
そういったものを乗り越えることも含めて「留学生活における寮生活」と考えたほうがいいでしょう。
米加比較
カナダという国はアメリカと比較して初めてその輪郭を掴
める国だと思います。それを感じたのは 2 週間のアメリカ旅行
を終えた時でした。カナダというとアメリカの子分のようなイ
メージで捉えられることが多いですが、国民の気質や社会制度
などはアメリカと全く異なるものです。留学当初は、カナダに
はアメリカのような派手さが無くつまらない国だと思ってい
ましたが、住民の温和な性格や充実した社会保障に起因する治
安の良さなど、アメリカにはない評価すべき点がたくさんある
ことに気づきました。カナダに留学される際にはぜひアメリカ
を訪問し、カナダを相対的に観察してみることをオススメします。
基本的にカナダ人はアメリカに良い感情を持っていないと思いました。超大国を隣国に有するが故の
苦悩として、飲み込まれまいとする反抗心があるのだと思います。これは外交にも表れており、2002 年
のイラク戦争においてカナダは国連の承認が得られていないことを理由に参戦を頑として拒否しました。
対米従属路線を貫いている我が国がカナダに学ぶべき点は多いと感じました。
加中関係
カナダは移民を積極的に受け入れている多民族国家であり、なかでも中国系の増加は目を見張るもの
がある。特にバンクーバーやトロントなどの移民都市では政治
的にも経済的にも大きな勢力を誇るに至っている。香港返還時
に共産党支配からの脱出先として機能したという歴史的背景
から香港系の移民が多かったが、近年は中国本土系の移民が急
増している。現在はカナダ生まれの所謂 CBC(Canadian Born
Chinese)も増えている。
ヨーク大学にも CBC は多く、彼らはカナダ人としてのアイ
デンティティを持ちながらアジア的価値観を共有できるので、
とても良い友人になることができた。
しかし、急増する中国系移民に対する反感は高まっており、移民規制を強化する動きがある。さらに、
2012 年末に中国国営企業がカナダの大手石油企業を買収する事件があり、連日紙面を賑わせていた。こ
の件に関しては自分も興味があり、エッセイ課題で取り組んだ。
私は中国政治の授業を取っていたのですが、中国共産党の対少数民族政策などに関して中国系、チベ
ット系、モンゴル系の学生が活発に議論するのを見るにつけ、カナダの自由な議論の場としての機能を
感じました。カナダに留学する際には、国内で膨張する華僑社会に目を向けてみるのも面白いかもしれ
ない。
仏語圏
カナダの大きな特徴としてフランス語圏を擁することが挙げられる。モントリオールなどケベック州
がそれに当たる。私は留学中にモントリオールを旅行したのですが、そのヨーロピアンで歴史的な建造
物の並ぶ街並みはトロントと全く異なるもので、カナダの多様性を目の当たりにしました。中心地では
英語併記ですが、少し移動するとフランス語のみの地域に遭遇しました。
面白いのが、使用言語が地域の人種構成に直結していた点です。フランス語圏ということで白人は多
いのですが、フランス語を公用語とするアフリカの旧植民地からの黒人系移民もかなりの数いました。
一方で、フランス語を話せない中国系やインド系はトロントと比較して格段に少なかった。
このような状況を見て、われわれ日本人が如何に日本語という障壁に保護されているかという点につ
いて考えました。グローバル化の名分の下に安易に英語公用化を叫ぶことの弊害を感じずにはいられま
せんでした。
さいごに
この留学は自分の現状を把握するうえでも、将来への考え方を新たにしたとい
う点でも、私にとって大きな転換点になりました。反省すべき点もたくさん見つ
かりましたが、新たな発見も多々あり、将来への展望が少しずつではありますが
着実に開けたように思います。
このような貴重な経験は多くの方々の援助なしでは実現しえませんでした。ト
ロント到着直後に歓迎会を開いてくださった如水会トロント支部の皆様、アメリ
カ訪問時にお世話になりました如水会シカゴ支部の皆様に心よりお礼を申し上
げます。また、留学中にも手厚いサポートをしてくださった国際課の方々にもと
ても感謝しております。最後になりますが、一橋大学派遣留学制度を支援してく
ださっている如水会の皆様、明治産業株式会社様、明産株式会社様にはこの場を借りてお礼申し上げさ
せていただきます。ありがとうございました。
(2013/05/23)