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サムスンの変革、韓国経済の変革 - グローバル・マーケティングの林廣茂

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林廣茂の経済・経営コラム 68
サムスンの変革、韓国経済の変革
西安交通大学管理大学院客員教授
林廣茂
012615
サムスンは IoT のチャンポオンに
巨人・サムスン電子が、
「軋み」をあげている。絶対的な総帥である李健煕氏
が心筋梗塞で倒れ、氏と意思の疎通ができない状態で、経営の求心力を欠いた
ままである。氏のカリスマ・リーダーシップに率いられ、間断のない危機意識
の高揚とスピーディな経営変革を重ねて、世界最大・最強のデジタル家電メー
カーになったこれまでの力強さや躍動感が、このところ感じられない。
2014 年初頭、李健煕氏は、「も う 一 度 、 す べ て を 変 え ろ 。 時 代 の 流 れ に
あ わ な い よ う な 思 考 方 式 や 制 度 、慣 行 は す べ て 捨 て さ れ 」とサムスン・グ
ループ全体にさらなる変革を求めた。
「新事業・新製品開発を最優先せよ、それ
もマッハのスピードで」。しかし、2014 年のサムスン電子は守りに入り、変革・
革新は後まわしになったようだ。
グループの中核企業・サムスン電子の 2014 年の業績(暫定値)は、売上高が
前年比 10.2%減の 205 兆 4,800 億ウォン(22 兆 6,000 億円)、営業利益が 32.2%
減の 24 兆 9,400 億ウォン(2 兆7,400 億円)に留まった。9年ぶりの減収減益だ。
半導体部門が好調で全体業績を下支えした。
その最大の理由は、一昨年まではダントツの売上と利益をたたき出していた
スマホ「ギャラクシー」の新興国での大不振に尽きる。とくに世界最大市場の
中国で、低価格で標準性能のスマホ「小米(シャオミ)」が一気にサムスンを抜
き去り、レノボもサムスンを越えた。サムスンの台数シェアは 2013 年の 20%超
から 10%前後に激減した。東南アジア(インドネシア、フィリピンなど)では、
一位サムスンを地場メーカーや中国メーカーがどんどんと食いちぎっている。
サムスン電子がかつて日本のデジタル家電メーカーを突き放した勝利の方程
式は、
「汎用品になったデジタル家電を、現地の人が求める機能・現地の人が買
える値段・現地の人がくる場所」で提供する」の三現主義のビジネスモデルだ
った。そのモデルを中国や東南アジアの現地メーカーが習得し、成功体験から
抜け出せないで動きが鈍くなった巨像・サムスン電子に四方から襲いかかって
いる構図である。スマホの汎用品化は止めようがなく、世界中で三現主義の競
争が激化するのは間違いない。薄型テレビがまさにそうだが、スマホも売れて
も利益がでない悪循環に陥るだろう。
李健煕氏の現役復帰はないとの前提で、経営の求心力の回復と新たな勝利の
方程式の速やかな開発が不可欠ではないか。前者は後継者と言われる李在鎔
(イ・ジェヨン)副会長の資質・リーダーシップが鍵である。ところで、韓国経
済の活力を大きく左右する社会的共通資本ともいえるサムスンの経営を、実力未知数で
かつ経験不足の若い後継者に委ねることは、サムスンはもとより韓国経済にとっても、
大きなリスクではないか。後継者が、世襲でそして密室で決められることについて、公
益性の観点から、韓国社会は発言の場を与えられるべきではないだろうか。
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後者は崔志成(チェ・ジソン)副会長兼未来戦略室長を中心にした専門経営
者の指揮でどれだけ早く、IoT(デジタル家電をネットで繋ぐ、新たなビジネス
分野)での勝者になれるかだろう。そのためには、日本勢のパナソニックやソ
ニーとの連携などが必要だろう。サムスンがそうしなければ、アップルやグー
グルが日本勢との連携を求めてくるだろう。IoT ビジネスは一社単独で創造する
のではなく、デジタル・IT のプレイヤーが国内外で連携しつつクラスター単位
で、他のクラスターと競争して形成されていくだろう。サムスンがクラスター
のチャンピオンになれるかどうかである。
韓国経済は中小のチャンピオン企業の育成を
マクロの経済指標はポジティブだが、国民の体感景気のネガティブが拡大し
ている。円安が持続し世界経済が鈍化している中でも、韓国は 2014 年、2 年連
続で過去最高の貿易黒字(5 兆 6900 億円)を稼ぎ、その経常黒字は 12 兆円を超
えたと推定された。ドイツ、中国などに続いて世界 5 位の黒字大国である。一
人あたりの国民所得は 2 万 8000 ドルで日本の 80%の水準だ。2-3 年以内の日本
超えが射程に入った。購買力換算(PPP)では、日本を追い越したと推定する。
もっとも中国経済の減速で、中国依存の韓国経済の今後の見通しはかなり暗い。
マクロ指標が良好にもかかわらず、国民の所得格差は開く一方だ。2008 年
-2012 年の 4 年間で、年収が 3000 万ウォン(330 万円)以下のサラリーマンの
割合が倍増した(2.0%→4.1%)。年収 1 億ウォン(1100 万円)以上の割合も 1.4%
から 2.6%に上昇した。勤労者世帯の調査では、所得上位 10%の世帯が、下位 10%
の 10 倍以上の年収を稼いでいる。
サムスンなどの財閥グループに偏在集中している富を国民に分配する経済の
民主化は、掛け声だけで一向にはかどらない。財閥に税を追徴してそれを国民
に分配するのが経済の民主化でなない。以下に改めて提言しておきたい。
国民の大多数が所得を稼ぐ中小企業の生産性は(McKinsey Global Institute
による)
、大企業のわずか 27%レベル(大企業 100 対中小企業 27、2010 年)。し
かも、1990 年-2010 年で、その生産性は 50%から 27%に低下したのだ。連続した
技術革新の実現、優秀人材の獲得は大企業だけで、中小企業は、ますます取り
残されている。
中小企業の生産性やイノベーション力の向上のために、
「財閥グループに増税
するのではなく、それらから技術指導・人材育成支援・販売ルートの開拓支援
などの具体的な協力を引き出す制度を創れ」との提案を本コラムでたびたびし
たが、韓国の中小企業対策は、その方向に動いていない。それでも、筆者の考
えは変わらない。
中小企業の中から、大企業が手掛けていないニッチ分野で数多くのチャンピ
オンを育てることだ。そしてそれらのグローバル展開を、国を挙げて支援する
仕組みを創る必要がある。企業の対外直接投資や輸出金額で、ドイツの中小企
業は全体のそれぞれ 17%と 19%を占める(2009 年)。日本の中小企業は、ニッチ
分野で多くのチャンピオン企業を擁しているが、7.5%と 7.8%でドイツの半分未
満。韓国のデータは手元にないが、日本のレベルよりさらに低いに違いない。
日本のレベルを当面の到達目標にするのが妥当ではないか。
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