なぜコシヒカリは高温障害を回避できなかったのか!!

品質低下の要因
「平成22年度稲作」
なぜコシヒカリは高温障害を回避できなかったのか!!
○急激な葉色低下が品質低下を助長
JA越後中央のコシヒカリの1等米比率は9.4%、新潟県全体で21%、しかし8月の気象条件が近い富山県は57%
なぜ新潟で登熟期の高温障害が顕著だったのか!!
今年度品質低下の主な原因は、登熟期間の過高温と
連続無降雨(グラフ1)により籾へのデンプン蓄積が不良、
呼吸によるデンプンの消耗があげられます。
品質低下を助長した要因としては、出穂前の葉色
低下による根の活力低下が考えられます。
○平成22年度産コシヒカリ品質振るわず!!
(表1)H22年度コシヒカリ検査等級数量
平成22年度JA越後中央のコシヒカリの1等米比率は
9.4%(表1)と登熟期の高温障害が顕著に表れた年でした。
検査数量
JA越後中央
24,954
新潟
263,445
富山
96,352
石川
55,132
福井
32,196
8月に入り登熟期の高温が懸念されたため、水管理等で
飽水管理を呼びかけ高温障害を回避しようとしましたが、
大きな品質低下を招きました。
1等
9.4%
21.0%
57.0%
66.0%
85.0%
2等
88.6%
76.0%
42.0%
33.0%
12.0%
(単位t)
3等
規格外
2.0%
0.1%
2.0%
0.0%
1.0%
0.0%
1.0%
0.0%
2.0%
1.0%
また当JAを含む下越南の作況指数は99(表2)ですが、実感
はそれを大きく下回っています。
平均
H11
H20
H21
H22
最高
30.0
31.8
28.0
28.3
32.3
最低
21.8
23.7
20.7
20.9
24.3
平均
等級比率
25.7
-
26.7
16.7%
23.8
81.6%
24.3
88.2%
27.6
9.4%
5月中旬の低温・日照不足による分けつ抑制や梅雨入
り後の高温・日照不足により草丈が長くなりました。
7月10日の生育調査(表4)では草丈が長く、葉色(SPAD)
値も平年より濃いため1回目の穂肥は大半の方が見送り
ました。
その後、葉色(SPAD)値(グラフ3)は急激に褪め
7月20日には平年並みに、7月30日には平年を大きく
下回りました。
○葉色(SPAD)値32~33で品質が良い
○登熟期の高温が品質に影響
登熟期間に最高気温32℃、平均気温27℃、最低気温で
23℃以上の高温が続くと乳白粒等※白未熟粒の発生を
助長し一等米の著しい低下を招くとされています。
※白未熟粒: 乳白粒,心白粒,基白粒,背白粒,腹白粒の総称
(表3)出穂後20日(8/5-8/25)の平均気温(巻)とコシヒカリ等級比率
今年後はこの条件をすべて満たしており(表3)やはり
高温年で品質を落とした平成11年を気温で上回っています。
高温障害はお米通信簿調査結果でも裏付けされており、
高温障害の影響を受けた白未熟粒の割合は平成22年度は
25.8%と過去2年と比べ20~23%上回っています。(グラフ2)
平成22年度越後中央展示圃の葉色(SPAD)値とお米
通信簿調査の平均値を突き合わせした結果、(グラフ4)
葉色(SPAD)値32~33で整粒の割合が高く品質が良く
なっています。
この値はコシヒカリの指標値(目標値)と一致しており
又、過去5年間の平均値でもあります。
その値より低すぎても、高すぎても品質が低下してい
ます。
平成22年度は1回目の穂肥を施用出来ない稲姿であり
1回目の穂肥を施用出来なかったまたは施用しなかった
ため、出穂直前の葉色が維持できず、根の活力を低下
させたと考えられます。
これからの課題
※平成20年~22年度、お米通信簿品質調査より、
○稲が示している、サインを見過ごさない
この調査結果の基部未熟粒には背白粒が含まれます。
グラフ1
グラフ2
H20
H21
H22
登熟期間の長期間の
高温と連続無降雨
H22
平年
調査月日
茎数(㎡) 茎数(㎡)
7月10日
399
475 7月10日
7月20日
376
425 7月20日
7月30日
354
383 7月30日
調査月日
22年産米の作柄と品質状況 (表2)平成22年産水稲の作柄概況 下越南
作況99 平均収量 557kg
穂数 一穂籾数 全籾数 登熟の良否
少ない
多い やや少ない 平年並み
(表4)JA越後中央 生育調査圃 平均
H22
平年
調査月日
調査月日 H22葉数 平年葉数
草丈
草丈
7月10日
72.2
67.1 7月10日
11.0
10.9
7月20日
83.2
80.6 7月20日
12.1
12.0
7月30日
97.8
94.2 7月30日
13.5
13.1
5.6
2.91.6
乳白粒
白未熟粒 年度別割合
25.8
17.4
1.10.5
1.70.62.8
5.7
2.8
基部未熟粒 腹白未熟粒 白未熟粒計
41.0
○一発元肥の追肥施肥基準の早期設定
H22 SPAD(葉色)展示圃平均
37.0
35.0
基部未熟粒
背白粒
グラフ3
H22 SPAD
33.0
平均
(5中3)
31.0
29.0
7/30 SPAD値と整粒重
68.0
66.0
64.0
62.0
60.0
58.0
56.0
54.0
52.0
グラフ4
SPAD値32~33で整粒重が
高い、それより低くても高く
ても品質は劣る
SPAD
26~27
28~29
30~31
32~33
H22肥料銘柄と品質(整粒重)
60.0
59.0
58.0
57.0
56.0
55.0
また現在コシヒカリの元肥一発肥料普及率が50%を
超えています。
高温障害には元肥一発肥料が有効といわれていまし
たが、平成22年度は元肥~穂肥の体系施肥と明確な
差はありません。(グラフ5)
整粒
平年
SPAD
34.5
33.1
32.8
SPAD値が急激に
下がる。(サイン)
39.0
これからの課題は、稲が示した高温障害のサインを
見過ごさないことがあげられます。
高温障害には1回目の穂肥が有効との試験結果、
事例等があります。
平成22年度は7月10~20日にかけて葉色(SPAD)値が
急激に褪めたことから高温障害の危険性を読み取る事が
出来ませんでした。
稲からの信号をどのように読み取るか、幼穂長、葉色等
の生育診断と迅速な分析、情報伝達が重要になります。
H22
SPAD
36.2
32.7
30.7
これは元肥一発肥料の施用量が高温年では少ないため、
出穂前の葉色が褪め平成22年度ような高温に対処出来なかったと考えられます。
元肥一発の追肥基準の設定を急ぐ必要があります。
※現在、新潟県で平成22年産新潟米の品質低下要因と対策について取りまとめており
近日公表の予定です。
34~35
グラフ5