ID: 02053(090603) イヌで後肢のふらつきが認められた症例

2009/12/16
2009.12.17 第1回KyotoARカンファレンス
症例概要
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猫の脳腫瘍を考える
Kyoto AR
中本 裕也
Kyoto Animal Referral Medical Center
病 歴
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•
ネコ
11歳齢
メス(避妊済み)
3.46 Kg
Kyoto Animal Referral Medical Center
診察時
2009.10.中旬 1日中寝ていて、起こしてもボーっとするような様子が認められた。
他院にて栄養剤の投与を実施。その後、夜には落ち着いていたと
のこと。
2009.11.01
後肢のふらつきに気付いた。ソファの上にうまく上れない様子も認
められていた。
2009.11.05
後肢のふらつきを主訴に、他院を受診。椎間板ヘルニアを疑い、
痛み止めおよびステロイド剤の投与を実施。症状の改善が認めら
れなかった。
2009.11.06
主治医を受診。視力の低下が認められた。皮下点滴の実施。
2009.11.07
呼吸が荒い様子が認められ、意識が朦朧としていたとのこと。
2009.11.08
再度主治医を受診。左半身の強い異常が疑われ、MRI検査を提示。
2009.11.10
再度主治医を受診。症状が進行性であることから、ステロイド剤+
抗生剤などの投与を実施。その後、症状の改善が認められた。
2009.11.11
MRI検査の実施。
Kyoto Animal Referral Medical Center
血液検査所見
11600 /μ l
レントゲン検査
RBC
926
万/μ l
WBC
TP
7.5
g/dl
T-Chol
237
mg/dl
HGB
15.4
g/dl
Band
-
/μ l
Alb
3.6
g/dl
Ca
11.3
mg/dl
PCV
49.3
%
Seg
-
/μ l
Glob
3.9
g/dl
CRP
-
MCV
53.2
Fl
Lym
-
/μ l
Glu
135
mg/dl
MCHC
31.2
%
Eos
-
/μ l
Bun
31.4
mg/dl
Na
154
PLT
7.0
Mono
-
/μ l
ALT
71
U/l
K
3.1
Baso
-
/μ l
ALKP
73
U/l
Cl
121
Others
-
/μ l
万/μ l
Kyoto Animal Referral Medical Center
R
mEq/l
mEq/l
mEq/l
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2009/12/16
MRI(横断面)
神経学的検査所見
• 観察
• 脳神経検査
– 傾眠傾向
– 左側旋回運動
• 姿勢反応
– 左前後肢の軽度な低下
• 脊髄反射
– 左眼威嚇瞬目反応の消失
– 左眼綿球落下試験の反応
消失
– 対光反射は正常
– 両側上顎知覚の低下
T2強調画像
T1強調画像
– 明らかな異常なし
• 頭蓋内病変が示唆
• 様々な部位の症状を呈する
• 多発性病変?
• 巨大な病変?
FLAIR強調画像
Kyoto Animal Referral Medical Center
MRI(冠状断面)
MRI(矢状断面)
T2強調画像
T2強調画像
T1強調画像
造影T1強調画像
T1強調画像
造影T1強調画像
Kyoto Animal Referral Medical Center
造影T1強調画像
Kyoto Animal Referral Medical Center
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MRI所見(まとめ)
• 多発性の病変
– 前脳・小脳・脳幹部など
– Mass effectあり
腫瘍性病変
– 造影剤による造影効果あり
– 脳浮腫あり
脳腫瘍
• 頭蓋内腫瘍と同義語
– 頭蓋腔内組織原発腫瘍
•
•
•
•
脳実質
髄膜
下垂体
脳神経など
– 転移性脳腫瘍
– 周囲組織原発性腫瘍の頭蓋腔内浸潤
• 小脳の下垂
– 小脳ヘルニア
Kyoto Animal Referral Medical Center
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2
2009/12/16
脳腫瘍の鑑別
① 原発性腫瘍
– 神経上皮性腫瘍
– 神経鞘細胞腫瘍
– 髄膜腫瘍
– 血管・リンパ系腫瘍
– 胚細胞腫瘍
– 下垂体腫瘍
② 転移性腫瘍
③ 周囲組織原発性腫瘍
の頭蓋腔内浸潤
脳腫瘍の鑑別
– 髄膜腫瘍
① 原発性腫瘍
• 髄膜腫
– 神経上皮性腫瘍
•
•
•
•
•
•
•
•
– 血管・リンパ系腫瘍
星状細胞腫
希突起膠細胞腫
膠芽腫
髄芽腫
脳室上衣腫
脈絡叢乳頭腫
松果体細胞腫
神経節細胞腫
• 血管芽腫
• リンパ腫
– 胚細胞腫瘍
•
•
•
•
•
– 神経鞘細胞腫瘍
胚腫
頭蓋咽頭腫
奇形腫
類表皮腫
類比腫
– 下垂体腫瘍
• 神経鞘腫
• 下垂体腺腫
Kyoto Animal Referral Medical Center
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脳腫瘍の鑑別
② 転移性腫瘍
–
–
–
–
–
MRI上の見え方
③ 周囲組織原発性腫瘍
の頭蓋腔内浸潤
乳腺癌
肺癌
血管肉腫
悪性黒色腫
リンパ腫
–
–
–
–
鼻腔内腺癌
骨軟骨肉腫
扁平上皮癌
脂肪腫
髄膜腫
神経膠腫
Kyoto Animal Referral Medical Center
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猫の脳腫瘍
• 発生年齢
脳腫瘍の猫の臨床症状
臨床症状
– 0.5歳~21.5歳(平均11.3±3.8歳)
• 性別
– メス:オス=1:1.5(有意差なし)
• 好発品種
– 雑種家猫(85%)
– メインクーン・シャム猫(3.1%)
– ヒマラヤン・ペルシャ猫(1.2%)
Troxel MT, et al: Feline Intracranial Neoplasia: Retrospective Review of 160 Cases (1985-2001),
J Vet Intern Med 17, 850-859 (2003)
Kyoto Animal Referral Medical Center
下垂体腺腫
発生数
発生率
発生数
発生率
意識障害
42
26.2
落下
臨床症状
7
4.4
旋回運動
36
22.5
しきりに鳴く
6
3.8
てんかん発作
36
22.5
眼振
6
3.8
運動失調
27
16.9
捻転斜頸
5
3.1
行動の変化
25
15.6
後弓反張
4
2.5
平衡感覚障害
16
10.0
不適切な排泄
3
1.9
視覚障害
16
10.0
頭部振戦
2
1.2
ヘッドプレス
15
9.4
片側不全麻痺
2
1.2
四肢不全麻痺
13
7.5
頭位回旋
1
0.6
見当識障害
9
5.6
ホルネル症候群
1
0.6
Troxel MT, et al: Feline Intracranial Neoplasia: Retrospective Review of 160 Cases (1985-2001),
J Vet Intern Med 17, 850-859 (2003)
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2009/12/16
猫の脳腫瘍の割合
二次性脳腫瘍
原発性脳腫瘍
発生数
発生割合(%)
発生数
発生割合(%)
星状膠細胞腫
腫瘍の種類
7
2.8
肺腺癌
3
1.2
脈絡叢腫瘍
1
0.4
鼻腔腺癌
3
1.2
上衣腫
7
2.8
線維肉腫
1
0.4
髄膜腫
144
59.0
血管肉腫
2
0.8
嗅神経芽細胞腫
2
0.8
リンパ腫
39
16.0
希突起膠細胞腫
6
2.4
悪性線維性組織球腫
1
0.4
未分化神経
外胚葉性腫瘍
1
0.4
粘液肉腫
1
0.4
下垂体腺腫
22
9.0
扁平上皮癌
1
0.4
未分類腺癌
1
0.4
未分類癌腫
1
0.4
未分類肉腫
1
0.4
68.6
転移性脳腫瘍:発生率5.6%
腫瘍の種類
画像診断検査で
多発性病変が認められたら
• 転移性病変 or リンパ腫
– 造影剤への造影効果が明瞭
– 腫瘍周囲の脳浮腫が顕著
31.4
Kyoto Animal Referral Medical Center
今回の症例
※約1年前に乳腺部の腫瘍を認め、今年に入ってから摘出。
Kyoto Animal Referral Medical Center
経 過
• 2009.11.11 プレドニゾロン2mg/kg/day+イソバイドの投与開始。
• 2009.11.13 症状の軽度な改善が認められていた。しかし、全身性の
てんかん発作が1度認められた。
その後、嚥下反射の低下が認められるようになり、強制
的な採食困難となったため、投薬中止。
• 2009.11.17 自宅にて眠るように死亡した。
転移性脳腫瘍と診断
クライアント
今回のMRI検査によって飼い猫の状態が把握できたこと、また、
客観的な事実によって現状を受け止められるようになったことから、
満足しているとの連絡あり
Kyoto Animal Referral Medical Center
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まとめ
• 中齢~高齢
• 腫瘍性疾患の既往歴
– 特に悪性腫瘍
• 神経症状が一定しない
– 様々な神経症状
転移性脳腫瘍等を考慮
胸部・腹部の精査を実施
MRI検査を考慮
Kyoto Animal Referral Medical Center
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